(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20240709BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240709BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240709BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61F13/49 315A
A61F13/532 200
A61F13/53 100
A61F13/51
A61F13/49 312Z
A61F13/49 413
(21)【出願番号】P 2021052456
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】水野 佑
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-104602(JP,A)
【文献】特開2012-010990(JP,A)
【文献】特開2005-161006(JP,A)
【文献】特開2009-219627(JP,A)
【文献】実開平5-44115(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49
A61F 13/532
A61F 13/53
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを具備し、
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを備え、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる方向に対応する長手方向と該長手方向に直交する幅方向とを有し、該腹側部及び該背側部それぞれにおける前記外装体の該長手方向に沿う両側縁部どうしが接合されてウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されてなる吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記腹側部に位置する高剛性領域と、前記高剛性領域よりも剛性が低く且つ前記股下部側に位置する低剛性領域とを有し、
一対の前記レッグ開口部それぞれの開口縁部に沿って伸長可能にレッグ弾性部材が配されており、
前記レッグ弾性部材は、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部を始点として前記股下部まで延びる腹側レッグ弾性部材を含み、
前記外装体を前記幅方向に最大伸長させたときの該外装体の該幅方向の長さをL0として、該外装体の該幅方向の長さがL0の90%の長さとなるまで該外装体を伸長させた後、該外装体の該幅方向の長さをL0の80%の長さとなるまで収縮させた状態を80%伸長状態としたときに、
前記腹側レッグ弾性部材は、前記高剛性領域及び前記低剛性領域の境界を跨ぐように且つ該腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差角が前記80%伸長状態において90度未満となるように配されており、
外部から視認可能な第1の図柄が前記境界を跨ぐように前記外装体の外面に施されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差角が前記80%伸長状態において20度以上85度以下となるように該腹側レッグ弾性部材が配されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記腹側レッグ弾性部材を複数本有し、
前記外装体の前記腹側部における、前記吸収体と重なる位置に、複数本の胴周り弾性部材が前記幅方向に沿って伸長可能に配されており、
複数本の前記腹側レッグ弾性部材のうち、最も前記背側部側に位置する腹側レッグ弾性部材が、複数本の前記胴周り弾性部材のうち2本以上と交差する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、低容量領域と、該低容量領域よりも吸液可能な液量が多い高容量領域とを有し、
前記腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差部が、前記高容量領域と前記幅方向において重なる位置に配されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、繊維材料と吸収性ポリマーとを含んでおり、
前記吸収性ポリマーの質量に対する前記繊維材料の質量の比率が、1/2以下である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、前記長手方向の中央を境界として着用時に着用者の腹側に配される前身頃と着用者の背側に配される後身頃とに区分され、
前記前身頃における前記境界と重ならない位置に、外部から視認可能な第2の図柄が前記外装体の外面に施されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記境界を跨ぐように配されている前記第1の図柄と、該境界と重ならない位置に配された第2の図柄とは、色及び形のいずれか一方又は両方が同じである、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収体は、吸収性コアと、該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有しており、
前記コアラップシートが不織布からなる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品は、前記長手方向の中央を境界として着用時に着用者の腹側に配される前身頃と着用者の背側に配される後身頃とに区分され、
前記前身頃と前記後身頃とを重ね合わせるように前記長手方向の中央において二つ折りしたときの厚みが最大で6mm以上12mm以下である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体は、高坪量部と、該高坪量部よりも坪量が小さい低坪量部とを有しており、
前記境界は、前記低坪量部と重なる位置に存在する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記外装体は、前記ウエスト開口部の開口端から前記股下部側に向かって長さ35mm以内の低伸縮領域と、該低伸縮領域よりも該股下部側に位置し且つ該低伸縮領域よりも伸縮応力が高い高伸縮領域とを有しており、
前記高伸縮領域の伸縮応力が0.02N/mm以上0.04N/mm以下である、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつなどの吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なパンツ型使い捨ておむつが提案されている(特許文献1~4参照)。この種のパンツ型使い捨ておむつを着用した着用者が座位状態の場合、おむつと着用者の身体との間の空間は、一般に臀部側よりも腹側の方が大きいことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-108271号公報
【文献】特開2018-79058号公報
【文献】特開2018-134482号公報
【文献】国際公開第2020/065942号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パンツ型使い捨ておむつの着用者が座位状態で排泄を行った場合、例えば排尿した場合、着用者の身体とおむつとの間の空間が広い腹側部に向けて尿が広がりやすい。排泄された尿は、その量が多い場合には瞬時に吸収体へ吸収されず、一時的に吸収体上に尿が留まることがある。場合によっては、吸収体による尿の吸収速度が排尿量に追いつかず、尿が吸収体へ吸収される前におむつの外へあふれ出てしまうことがある。特に男性は排尿点が女性よりも前側にあることから、座位状態での排尿時におむつの腹側から尿があふれ出てしまう可能性が高い。
【0005】
特許文献1ないし4に記載のおむつは、腹側から尿が漏れることを防止する観点からの検討はなされておらず、改善の余地があった。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを具備し、
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを備え、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる方向に対応する長手方向と該長手方向に直交する幅方向とを有し、該腹側部及び該背側部それぞれにおける前記外装体の該長手方向に沿う両側縁部どうしが接合されてウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されてなる吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記腹側部に位置する高剛性領域と、前記高剛性領域よりも剛性が低く且つ前記股下部側に位置する低剛性領域とを有し、
一対の前記レッグ開口部それぞれの開口縁部に沿って伸長可能にレッグ弾性部材が配されており、
前記レッグ弾性部材は、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部を始点として前記股下部まで延びる腹側レッグ弾性部材を含み、
前記外装体を前記幅方向に最大伸長させたときの該外装体の該幅方向の長さをL0として、該外装体の該幅方向の長さがL0の90%の長さとなるまで該外装体を伸長させた後、該外装体の該幅方向の長さをL0の80%の長さとなるまで収縮させた状態を80%伸長状態としたときに、
前記腹側レッグ弾性部材は、前記高剛性領域及び前記低剛性領域の境界を跨ぐように且つ該腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差角が前記80%伸長状態において90度未満となるように配されており、
外部から視認可能な第1の図柄が前記境界を跨ぐように前記外装体の外面に施されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、おむつの腹側からの尿漏れが起こりづらい吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すパンツ型使い捨ておむつの、尿を吸収した後の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の吸収性物品の他の実施形態の展開且つ伸長状態における肌対向面側を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明のパンツ型使い捨ておむつの一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」とも言う。)1が示されている。
図1に示すとおり、おむつ1は、その着用時に着用者の腹側に配される腹側部A及び背側に配される背側部Bと、腹側部A及び背側部Bの間に位置する股下部Cと有している。おむつ1は、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延びる方向に対応する長手方向Xと該長手方向Xに直交する幅方向Yとを有する。
【0010】
おむつ1は、
図2に示すように、長手方向Xの中央に位置する縦方向中心線CLxを境界として着用時に着用者の腹側(前側)に配される前身頃Fと着用者の背側(後側)に配される後身頃Rとに区分される。腹側部Aはおむつ1の前身頃Fの一部であり、背側部Bはおむつ1の後身頃Rの一部である。股下部Cは、おむつ1の前身頃Fから後身頃Rにかけて存在する。
【0011】
おむつ1は、吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に配された外装体3とを具備する。おむつ1においては、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける外装体3の長手方向Xに沿う両側縁部3e,3fどうしが接合されてウエスト開口部WH及び一対のレッグ開口部LHが形成されている。
【0012】
おむつ1における吸収性本体2は、平面視長方形形状をなし、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の長手方向Xに一致させて、外装体3の幅方向Yの中央部に配置されている。吸収性本体2は、接着剤等の接合手段によって外装体3に接合されている。
【0013】
吸収性本体2は、
図2に示すとおり、長手方向Xに沿って延びる吸収体23と、該吸収体23の肌対向面側に配置された表面シート21と、該吸収体23の非肌対向面側に配置された裏面シート22とを備えている。吸収体23は、吸収性本体2と同様に、おむつ1の長手方向Xに長い形状を有しており、表面シート21と裏面シート22との間に介在配
置されている。
【0014】
「肌対向面」は、おむつ又はその構成部材(例えば吸収体)に着目したときに、おむつの着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、おむつの着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。また「着用時」及び「着用状態」は、おむつの適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0015】
吸収体23は、
図4に示すように、吸収性コア23aと、該吸収性コア23aの肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート23bとを備えている。
【0016】
吸収体23は、高坪量部27と、該高坪量部27よりも坪量が小さい低坪量部26とを有する。高坪量部27は腹側部Aに位置しており、低坪量部26は高坪量部27よりも股下部C側に位置している。高坪量部27と低坪量部26との境界28は、
図2に示すとおり吸収体23の幅方向Yに沿って延びている。本実施形態においては、
図4に示すとおり、高坪量部27の吸収性コア23aは、低坪量部26の吸収性コア23aに比して厚くなっている。
【0017】
外装体3は、
図2に示すとおり、外層シート32と、内層シート31とを有する。外層シート32は、おむつ1の外面を形成する。内層シート31は、外層シート32よりも肌対向面側に位置する。
【0018】
外装体3は、
図2に示すとおり、外層シート32と内層シート31との間に複数の弾性部材を有する。弾性部材は、ウエスト弾性部材33と胴周り弾性部材34とレッグ弾性部材4とを含んでいる。おむつ1は、ウエスト弾性部材33、胴周り弾性部材34及びレッグ弾性部材4をそれぞれ複数本有している。
【0019】
ウエスト弾性部材33は、ウエスト開口部WHの開口端WEの近傍に幅方向Yに沿って伸長状態で配されている。これにより、ウエスト開口部WHの全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。
【0020】
図2に示すとおり、胴周り弾性部材34は、吸収体23と重なる位置に幅方向Yに沿って伸長可能に配されている。胴回り弾性部材34を伸長可能とするためには、例えば、胴回り弾性部材34を伸長状態で配すればよい。本実施形態においては、胴周り弾性部材34は、吸収性本体2と厚み方向に重なる領域で、細かく分断する等の処理によって弾性伸縮性を発現しないように配されている。胴周り弾性部材34は、前記領域で弾性伸縮性を発現してもよい。
【0021】
図2に示すとおり、レッグ弾性部材4は、一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部LE,LEに沿って伸長可能に配されている。これによりレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部LEには、その全周にわたって実質的に連続した環状のレッグギャザーが形成される。
【0022】
レッグ弾性部材4は、腹側部Aにおける外装体3の側縁部3eを始点として股下部Cまで延びる腹側レッグ弾性部材41を有している。腹側レッグ弾性部材41は、腹側部Aにおける外装体3の一方の側縁部3eを始点として股下部Cにおいて終端していてもよく、あるいは腹側部Aにおける外装体3の一方の側縁部3eを始点として股下部Cを横断して、他方の側縁部3eにおいて終端していてもよい。
またレッグ弾性部材4は、背側部Bにおける外装体3の側縁部3fを始点として股下部Cまで延びる背側レッグ弾性部材42を有している。背側レッグ弾性部材42は、背側部Bにおける外装体3の一方の側縁部3fを始点として股下部Cにおいて終端していてもよ
く、あるいは背側部Bにおける外装体3の一方の側縁部3fを始点として股下部Cを横断して、他方の側縁部3fにおいて終端していてもよい。
腹側レッグ弾性部材41及び/又は背側レッグ弾性部材42が股下部Cを横断している場合、これらの弾性部材は、股下部Cにおける吸収性本体2と重なる領域において、弾性伸縮性を発現しないように細かく分断される等の処理が施されていてもよい。
【0023】
本実施形態のおむつ1は、剛性の異なる2つの領域を有している。詳細には、おむつ1は、
図1及び
図2に示すとおり、高剛性領域12と、高剛性領域12よりも剛性が低い低剛性領域11とを有する。本明細書にいう剛性とは、おむつ1を、幅方向Yに沿って折り曲げ線が形成されるように長手方向Xに折り曲げたときの剛性のことである。おむつ1が高剛性領域12及び低剛性領域11を有することで、後述する腹側レッグ弾性部材41との配置状態との相乗作用によって、腹側からの尿漏れを効果的に抑制できる。この理由について後述する。
【0024】
図2に示すとおり、高剛性領域12は腹側部A及び股下部Cの一部に位置している。低剛性領域11は高剛性領域12よりも股下部C側に位置している。詳細には、低剛性領域11は股下部Cの一部及び背側部Bに位置している。高剛性領域12及び低剛性領域11がこのような配置状態になっていることで、腹側からの尿漏れを効果的に抑制できる。この理由についても後述する。
【0025】
本実施形態のおむつ1においては、高坪量部27と低坪量部26との境界28に沿って幅方向Yに延びる仮想線Lよりも腹側部Aにおけるウエスト開口部WHの開口端WE側の領域が、高剛性領域12であり、前記仮想線Lよりも背側部B側の領域が低剛性領域11である。前記仮想線Lと同じ位置に、低剛性領域11と高剛性領域12との境界13が位置している。つまり、高坪量部27と低坪量部26との境界28と、低剛性領域11と高剛性領域12との境界13とは同位置に存在している。
【0026】
低剛性領域11及び高剛性領域12の剛性は以下の方法により測定することができる。<剛性の測定方法>
剛性の測定は、カトーテック(株)製KES-FB2-AUTO-A曲げ測定試験機を用いて行うことができる。具体的には、吸収性物品から取り出した吸収性本体を長手方向で10分割し、各々をサンプルとする。次に、各サンプルを吸収性物品における横方向に沿って折り曲げたときの曲げ剛性を測定できるように、測定試験機のチャック間に各サンプルを固定し、曲げ剛性を測定する。横方向に沿って折り曲げるとは、折り曲げ線が横方向に延びるように折り曲げることを意味する。曲げ剛性は、具体的には以下のようにして測定する。各サンプルを、最大曲率+2.5cm-1まで肌対向面側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで非肌対向面側に曲げた後に、肌対向面側に曲げる前の状態に戻す。曲げ剛性の値は、肌対向面側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きと、非肌対向面側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きとの平均値から算出する。各サンプルにつき曲げ剛性の測定を5回繰り返し、その平均値を各サンプルの剛性とする。各サンプルの剛性と10個のサンプルの剛性の平均値とを比較し、該平均値よりもサンプルの剛性が高い場合、吸収性本体を取り出す前の吸収性物品における該サンプルの位置と、該吸収性物品における長手方向の位置が同じ領域を高剛性領域とする。前記平均値よりもサンプルの剛性が低い場合、吸収性本体を取り出す前の吸収性物品における該サンプルの位置と、該吸収性物品における長手方向の位置が同じ領域を低剛性領域とする。
【0027】
低剛性領域の剛性に対する高剛性領域の剛性の比は、腹側からの尿漏れを効果的に抑制する観点から、好ましくは1.03以上、より好ましくは1.05以上、更に「好ましくは1.10以上であり、また好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは
2以下であり、また好ましくは1.03以上4以下、より好ましくは1.05以上、3以下、更に好ましくは1.10以上2以下である。
【0028】
本実施形態では、腹側レッグ弾性部材41は、該腹側レッグ弾性部材41の収縮力が、前記境界13を跨ぐ領域に対して長手方向Xに加わるように配されている。詳細には、腹側レッグ弾性部材41は、高剛性領域12及び低剛性領域11の境界13を跨ぐように且つ該腹側レッグ弾性部材41と、腹側部Aにおける外装体3の側縁部3eとの交差角α(
図3参照)が、80%伸長状態において90度未満となるように配されている。こうすることにより、おむつ1の着用状態において腹側レッグ弾性部材41が収縮したときに、前記境界13を跨ぐ領域が長手方向Xに沿って収縮しやすくなる。前記境界13は高剛性領域12と低剛性領域11との境界であるので、前記境界13を跨ぐ領域が長手方向Xに沿って収縮したときに、
図4に示すように、該境界13を起点としておむつ1が折れ曲がりやすく、おむつ1の腹側部Aに、内部に空間Kを有するポケット構造Pが形成されやすい。このように、本実施形態のおむつ1は、腹側部Aに、空間Kを有するポケット構造Pを形成することができるので、腹側に向かって広がった尿を前記空間Kに一時ストックすることができる。したがって、本実施形態のおむつ1によれば、着用者が座位状態の排尿したときに、おむつ1の腹側から尿があふれ出てしまうことを効果的に防ぐことができる。つまり本実施形態のおむつ1によれば、腹側からの尿漏れが起こりづらくなるという利点がある。おむつ1が腹側レッグ弾性部材41を複数本有し、腹側レッグ弾性部材41と前記側縁部3eとの前記交差角αが複数存在する場合、少なくとも1つの前記交差角αが90度未満であれば上述の利点が得られる。上述の利点を一層顕著にする観点から、複数の前記交差角αのうち、半分以上が90度未満であることが好ましく、全てが90度未満であることがより好ましい。
【0029】
上述の利点を一層顕著にする観点から、前記交差角αは、好ましくは85度以下であり、より好ましくは80度以下であり、更に好ましくは75度以下である。
交差角αの下限値としては、長手方向Xに沿う腹側レッグ弾性部材41の収縮力が過剰に大きくなり、おむつ1が長手方向Xに過剰に収縮してポケット構造Pの空間Kが小さくなることを防ぐ観点から、好ましくは20度以上であり、より好ましくは25度以上であり、更に好ましくは30度以上である。
以上のことを総合すると、交差角αは、好ましくは20度以上85度以下であり、より好ましくは25度以上80度以下であり、更に好ましくは30度以上75度以下である。
なお、おむつ1が腹側レッグ弾性部材41を複数有し、前記交差角αが複数存在する場合、該複数の交差角αのうち、1つ以上が前記範囲内にあることが好ましく、半分以上が前記範囲内にあることがより好ましく、全てが前記範囲内にあることがより好ましい。
【0030】
上述の「80%伸長状態」とは、外装体3を幅方向Yに最大伸長させたときの該外装体3の方向Yの長さをL0としたときに、外装体3の幅方向Yの長さがL0の90%の長さとなるまで外装体3を伸長させた後、該外装体3の幅方向Yの長さがL0の80%の長さとなるまで収縮させた状態を意味する。
【0031】
前記交差角αは、以下の方法により測定することができる。
<レッグ弾性部材と外装体の側縁部との交差角αの測定方法>
吸収性物品の80%伸長状態において、外装体の側縁部と交差するレッグ弾性部材それぞれの交差角を分度器にて測定する。具体的には、吸収性物品の幅方向におけるサイドシール部の内側端を通り外装体の側縁部に平行な仮想線と、レッグ弾性部材とのなす角を分度器により測定し、得られた値を、レッグ弾性部材と外装体の側縁部との交差角αとする。
【0032】
本実施形態のおむつ1においては、上述のように、低剛性領域11は高剛性領域12よ
りも股下部C側に位置している。低剛性領域11は、高剛性領域12よりも相対的に剛性が低く折れ曲がりやすい領域である。そのため、前記境界13を起点としておむつ1が折れ曲がったときに、低剛性領域11は、該境界13の近傍の部分がウエスト開口部WHの開口端WE側に持ち上げられ、該境界13の近傍よりも股下部C側の部分が該股下部C側に向かって折れ曲がった形状となりやすい。つまり、空間Kを有するポケット構造Pがより容易に形成されるようになっている。このことに起因して本実施形態のおむつ1によれば、腹側からの尿漏れを効果的に抑制できる。
【0033】
本実施形態のおむつ1には、
図1に示すとおり、外部から視認可能な第1の図柄61が前記境界13を跨ぐように外装体3の外面に施されている。
図1に示すように、前記境界13を跨ぐ領域が長手方向Xに沿って収縮し、おむつ1の腹側部Aに、内部に空間Kを有するポケット構造Pが形成されているときには、第1の図柄61は歪んでおり、その一部が視認できない状態となっている。これに対し、おむつ1の着用者が排尿し、吸収体23が尿を吸収したときには、
図5に示すように、尿を吸収して膨らんだり、重くなった吸収体23が自重により下方に引き下げられたりすることに起因して、おむつ1の折れ曲がりが解除される。その結果、第1の図柄61の歪みが解消され、該第1の図柄61の全体を外部から視認できる状態となる。このように、本実施形態のおむつ1によれば、吸収体23が尿を吸収しているか否かを、外部から視認可能な第1の図柄61の状態によって判断することができる。したがって、おむつ1の使用者や母親等の装着補助者は、おむつ1の交換時期を簡便に知ることができる。そのため、既に吸収体23が尿を吸収している状態で着用者が排尿し、吸収体23の吸液量を越えた尿がおむつ1の腹側から漏れ出てしまうことをより効果的に防ぐことができる。
【0034】
本実施形態のおむつ1には、前身頃Fにおける前記境界13と重ならない位置に、外部から視認可能な第2の図柄62が外装体3の外面に施されていることが好ましい。こうすることで、おむつ1に外面に、歪んでいない第2の図柄62が施されることになる。この第2の図柄62の状態によって、おむつ1を正しく装着できているかを判断できる。具体的には、おむつ1の着用時に第2の図柄62が歪んでいる場合には該おむつ1を正しく装着できていないと判断することができ、該第2の図柄62が歪んでいない場合には、該おむつ1を正しく装着できていると判断することができる。
【0035】
また、第1の図柄61の状態と第2の図柄62の状態とを比較することによって、おむつ1の交換時期をより一層簡便に知ることもできる。以下、この点について詳述する。第1の図柄61は、吸収体23が尿を吸収する前(
図1参照)は歪んでいるが、吸収体23が尿を吸収した後(
図5参照)は歪みが解消される。これに対し、第2の図柄62は、吸収体23が尿を吸収する前(
図1参照)、及び吸収体23が尿を吸収した後(
図5参照)のいずれの状態でも歪んでいない。したがって、第1の図柄61の歪みの程度を、第2の図柄62の状態を基準として判断することで、おむつ1の交換時期をより簡便に知ることができる。この効果を一層顕著にする観点から、第1の図柄61と第2の図柄62とは、色及び形のいずれか一方又は両方が同じであることが好ましい。
【0036】
上述のとおり本実施形態のおむつ1は、腹側レッグ弾性部材41及び胴周り弾性部材34をそれぞれ複数本有している。おむつ1においては、
図3に示すとおり、複数本の腹側レッグ弾性部材41のうち、最も背側部B側に位置する腹側レッグ弾性部材41bが、複数本の胴周り弾性部材34と交差していることが好ましい。こうすることにより、長手方向Xに沿う腹側レッグ弾性部材41bの収縮力をより大きくすることができるので、おむつ1が長手方向Xに沿ってより大きく収縮されやすくなり、ポケット構造Pの空間Kをより大きく形成することができるという利点がある。この利点を一層顕著にする観点から、最も背側部B側に位置する腹側レッグ弾性部材41bと交差する胴周り弾性部材34の本数は、好ましくは2本以上であり、より好ましくは3本以上であり、更に好ましくは4本
以上である。
胴周り弾性部材34の本数の上限値は、長手方向Xに沿う腹側レッグ弾性部材41の収縮力が過剰に大きくなり、おむつ1が長手方向Xに過剰に収縮してポケット構造Pの空間Kが小さくなることを防ぐ観点から、好ましくは10本以下であり、より好ましくは9本以下であり、更に好ましくは8本以下である。
以上のことを総合すると、胴周り弾性部材34の本数は、好ましくは2本以上10本以下であり、より好ましくは3本以上9本以下であり、更に好ましくは4本以上8本以下である。
【0037】
本実施形態のおむつ1においては、高剛性領域12及び低剛性領域11の境界13と、吸収体23の高坪量部27及び低坪量部26の境界28とは同じ位置に配されているが、おむつ1においては、吸収体23の低坪量部26が、
図2に示すおむつ1の展開且つ伸長状態において、高剛性領域12と低剛性領域11との境界13と重なる位置に配されていることも好ましい。前記境界13の位置は、長手方向Xにおけるレッグ弾性部材4の収縮力によりおむつ1が折れ曲がる起点となるので、こうすることにより、該境界13の位置において、おむつ1を折り曲げやすくすることもできる。
【0038】
本実施形態のおむつ1においては、吸収体23は、吸液可能な液量が異なる2つの領域を有している。より具体的には、吸収体23は、
図1及び
図4に示すとおり、低容量領域24と、該低容量領域24よりも吸液可能な液量が多い高容量領域25とを有する。本実施形態では、高坪量部27が高容量領域25であり、低坪量部26が低容量領域24である。そして、おむつ1においては、腹側レッグ弾性部材41と、腹側部Aにおける外装体3の側縁部3eとの交差部7が、
図2に示すおむつ1の展開且つ伸長状態において、高容量領域25と幅方向Yにおいて重なる位置に配されていることが好ましい。こうすることにより、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止することができる。以下、この点について詳述する。
【0039】
排泄された尿は、腹側部Aに形成されたポケット構造Pの空間Kに一時的にストックされることは上述したとおりである。この場合、交差部7を、高容量領域25と幅方向Yにおいて重なる位置に配することで、腹側レッグ弾性部材41が長手方向Xに沿って収縮したときに、該高容量領域25がポケット構造Pの近傍に配されるようになる。その結果、ポケット構造Pの空間Kにストックされた尿を、高容量領域25においてより効果的に吸収することができるようになる。そのことによって、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止することができる。
おむつ1が交差部7を複数有する場合、
図3に示すとおり、複数の交差部7のうち、少なくとも1つが高容量領域25と幅方向Yにおいて重なる位置に配されていれば上述の効果が奏される。
【0040】
低容量領域24及び高容量領域25の吸液可能な液量(以下、「容量」と言う。)は以下の方法により測定することができる。
<容量の測定方法>
<吸収体の容量の測定方法>
吸収体の容量の測定は、JISK7223(1996)に準拠して行う。具体的には、まず、ナイロン製の織布(メッシュ開き250、三力製作所販売、品名:ナイロン網、規格:250×メッシュ巾×30m)を幅50cm、長さ80cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、幅方向の両端を1cm幅でヒートシールして幅50cm(内寸49cm)、長さ40cmのナイロン袋を作製する。
この操作とは別に、おむつ1から取り出した吸収体を幅方向と平行に長手方向に10分割し、分割された各々をサンプルとする。吸収体がコアラップシートを有する場合、該吸収体はコアラップシートを有する状態で取り出す。
作製したナイロン袋の底部に、各々のサンプルを均一になるように入れる。その後、サンプルの入ったナイロン袋を試験液に1時間浸漬させる。試験液は、ドイツ硬度4°dHの水又は生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)である。ナイロン袋を試験液に1時間浸漬させた後、ナイロン袋を試験液から取り出し、1時間垂直状態に吊るして液切りした後、該ナイロン袋の質量を測定する。目的とする容量は次式から算出される。
容量(g/g)=(a-b-c)/c
式中、aは、試験液に浸漬させた後に1時間液切りした後のサンプル及びナイロン袋の総質量(g)、bは、試験液に浸漬させる前(乾燥時)のナイロン袋の質量(g)、cは、試験液に浸漬させる前(乾燥時)のサンプルの質量(g)を表す。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を、サンプルの容量とする。
各サンプルの容量と、10個のサンプルの容量の平均値(以下、「容量平均値」という。)とを比較し、該容量平均値よりもサンプルの容量が大きい場合、吸収体における該サンプルが存在していた領域を高容量領域とする。前記容量平均値よりもサンプルの容量が小さい場合、吸収体における該サンプルが存在していた領域を低容量領域とする。
【0041】
前記容量平均値に対する高容量領域25の容量の比は、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止する観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.3以上であり、また好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下であり、また好ましくは1.1以上4以下、より好ましくは1.2以上3以下、更に好ましくは1.3以上2.5以下である。
【0042】
前記容量平均値に対する低容量領域24の容量の比は、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止する観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下であり、また好ましくは0.2以上1以下、より好ましくは0.3以上0.9以下、更に好ましくは0.5以上0.8以下である。
【0043】
低容量領域24の容量に対する高容量領域25の容量の比は、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止する観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上であり、また好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下であり、また好ましくは1.2以上5以下、より好ましは1.3以上4以下、更に好ましくは1.4以上3以下である。
【0044】
低容量領域24の坪量に対する高容量領域25の坪量の比は、おむつ1の腹側からの尿漏れをより効果的に防止する観点から、好ましくは1.2以、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上であり、また好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下であり、好ましくは1.2以上5以下、より好ましくは1.3以上4以下、更に好ましくは1.4以上3以下である。
【0045】
本実施形態のおむつ1における外装体3は、伸縮応力が異なる2つの領域を有することが好ましい。具体的には、外装体3は、低伸縮領域51と該低伸縮領域51よりも伸縮応力が高い高伸縮領域52とを有することが好ましい。低伸縮領域51は、ウエスト開口部WHの開口端WEから股下部C側に向かって幅35mm以内の領域である。高伸縮領域52は、低伸縮領域51よりも該股下部C側に位置する。
おむつ1においては、高伸縮領域52の伸縮応力は、腹側レッグ弾性部材41の収縮力によってウエスト開口部WHが下方に引っ張られたときに、該ウエスト開口部WHが下方に移動できる程度の強さであることが好ましい。こうすることにより、おむつ1を着用するとき等に、長手方向Xに沿う腹側レッグ弾性部材41の収縮力よりも強い力で外装体3がウエスト側に引っ張られる。このことに起因して、おむつ1の折れ曲がりが解除されてしまった場合であっても、おむつ1の着用状態において、腹側レッグ弾性部材41の収縮
力が作用して、該おむつ1のウエスト開口部WHを下方に移動させやすい。おむつ1のウエスト開口部WHが下方に移動しやすいと、おむつ1が折れ曲がりやすくなるので、ポケット構造Pが形成されやすくなる。
【0046】
以上の効果を一層顕著にする観点から、高伸縮領域52の伸縮応力は、好ましくは0.02N/mm以上であり、より好ましくは0.022N/mm以上であり、更により好ましくは0.025N/mm以上である。
一方、おむつ1の着用時におけるウエスト開口部WHのフィット性を維持する観点から、高伸縮領域52の伸縮応力は、好ましくは0.04N/mm以下であり、より好ましくは0.038N/mm以下であり、更により好ましくは0.035N/mm以下である。
以上の点を総合すると、高伸縮領域52の伸縮応力は、好ましくは0.02N/mm以上0.04N/mm以下であり、より好ましくは0.022N/mm以上0.038N/mm以下であり、更により好ましくは0.025N/mm以上0.035N/mm以下である。
【0047】
ポケット構造Pを形成しやすくする観点、及びおむつ1の着用時におけるウエスト開口部WHのフィット性を維持する観点から、低伸縮領域51の伸縮応力は、好ましくは0.01N/mm以上0.035N/mm以下であり、より好ましくは0.015N/mm以上N0.033/mm以下であり、更により好ましくは0.02N/mm以上0.030N/mm以下である。
【0048】
低伸縮領域51の収縮応力に対する高伸縮領域52の収縮応力は、ポケット構造Pを形成しやすくする観点、及びおむつ1の着用時におけるウエスト開口部WHのフィット性を維持する観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上であり、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下であり、好ましくは1.2以上7以下、より好ましくは1.3以上5以下、更に好ましくは1.4以上3以下である。
【0049】
伸縮応力は、以下の方法により測定することができる。
<伸縮応力の測定方法>
吸収性物品の低伸縮領域及び高伸縮領域それぞれから、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける外装体の長手方向に沿う両側縁部どうしが接合された環状のサンプルを切り出す。切り出すサンプルの幅は適宜調整できる。一例としては25mm程度であるが、低収縮領域および高収縮領域が25mmより狭い場合は弾性体の設計に合わせ更に幅を狭くしても良い。そして各サンプルについて、該サンプルを幅方向に最大伸長させたときの周長を測定し、得られた周長をLとする。サンプルを幅方向に最大伸長させたときの周長は、該サンプルから各弾性部材を取り除き、外装体のみの状態で最大伸長させたときの周長と同じである。そして、各サンプルを、テンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC-1210A」)にて、300mm/minの速度で、該サンプルの周長が0.8L(mm)になるまで伸長させる。その後、同じ速度で収縮させ、サンプルの周長が0.71L(mm)となった時の引張荷重(cN)を該サンプルの幅で除した値を、低伸縮領域及び高伸縮領域の伸縮応力とする。
【0050】
本実施形態のおむつ1は、長手方向Xにレッグ弾性部材4の収縮力が加わったときに、ポケット構造Pが容易に形成される程度の厚みを有していることが好ましい。具体的には、おむつ1は、前身頃Fと後身頃Rとを重ね合わせるように長手方向Xの中央において二つ折りしたときの厚みが最大で、好ましくは6mm以上12mm以下であり、より好ましくは7mm以上11mm以下であり、更に好ましくは8mm以上10mm以下である。
おむつ1の厚みを6mm以上にすることで、おむつ1の剛性が過度に低くなることが防止される。その結果、レッグ弾性部材4の収縮力が長手方向Xに沿って加わったときに、
おむつ1が折れ曲がることなく該おむつ1に皺が形成されやすくなるという不都合や、ポケット構造Pが形成されにくくなってしまうという不都合が起こりにくい。
一方、おむつ1の厚みを12mm以上にすることで、レッグ弾性部材4の収縮力が長手方向Xに沿って加わったときに、おむつ1が折れ曲がりにくくなってしまい、ポケット構造Pが形成されにくくなることを効果的に防止できる。
【0051】
おむつ1の厚みは以下の方法により測定することができる。
<厚みの測定方法>
まず、おむつ1を、前身頃と後身頃とを重ね合わせるように、該おむつ1の長手方向の中央において二つ折りする。そして、二つ折りしたおむつ1における吸収体が存在する領域を、幅方向及び長手方向それぞれに3等分し、合計9個のサンプルを得る。各サンプルについて、該サンプルの平面視における中心で厚みを測定する。サンプルの厚みは、該サンプルに49hPaの荷重をかけた状態で測定する。厚みが最も大きいサンプルの厚みを、吸収性物品を二つ折りしたときの最大厚みとする。
【0052】
図6には本発明の別の実施形態が示されている。同図に示す実施形態のおむつ1は、吸収性コア23aが上層部と下層部とを備えた2層構造になっている。上層部は、少なくとも繊維材料及び吸収性ポリマーを形成材料とする第1コア15から構成されている。下層部は、第1コア15の非肌対向面に接触し、第1コア15よりも厚みが薄い第2コア16から構成されている。
【0053】
図6に示す実施形態では、第1コア15は、第2コア16に比べて、長手方向Xの長さ及び幅方向Yの長さの双方が短く、第1コア15の周縁(輪郭線)の全体が、第2コア16の周縁(輪郭線)よりも内方に位置している。
【0054】
第1コア15は、
図6に示すように、幅方向Yの長さ(幅)が長手方向Xの全長にわたって一定ではなく、長手方向Xの一端側に、相対的に幅方向Yの長さが長く幅広である幅広部15aを有し、長手方向Xの他端側に、相対的に幅方向Yの長さが短く幅狭である幅狭部15bを有する。吸収体23は通常、おむつ1において、第1コア15の長手方向Xの両端部のうち、幅広部15aが、おむつ1の着用者の腹側(前側)に位置するように配置される。
【0055】
図6に示す実施形態のおむつ1においては、第1コア15の幅広部15aと幅狭部15bとの境界17に沿って延びる仮想線Nが、高剛性領域12と低剛性領域11との境界13となっている。
図6に示す実施形態のおむつ1においては、低剛性領域11に、第1コア15の幅狭部15bと第2コア16とが積層しており吸液可能な液量が相対的に多い部分を有している。そのため、低剛性領域11において吸収体23の吸液可能な液量が少なくなることを防ぐことができ、より効果的に腹側からの尿漏れを防ぐことができる。
【0056】
なお
図6に示す実施形態に関し、特に説明しない点については、
図1ないし
図5に示す実施形態についての説明が適宜適用される。
【0057】
次に、上述した各実施形態について共有する事項について説明する。
表面シート21としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シートは、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シートを形成することもできる。
【0058】
一方、裏面シート22としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シートの外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0059】
吸収性コア23aは、繊維材料を含んでいてもよい。繊維材料としては吸水性繊維が好ましい。吸水性繊維としては、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ(以上、セルロース系繊維);親水性合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸収性コア23aは、典型的には、繊維材料としてセルロース系繊維を含有する。
【0060】
また吸収性コア23aは、繊維材料に加えて更に粉粒体を含んでいてもよい。粉粒体としては、吸収性コア23aに所定の機能を付与し得るものが用いられる。例えば吸収性ポリマーや無機化合物からなる消臭剤が挙げられるがこれらに限定されない。
粉粒体として吸収性ポリマーを用いる場合、該吸収性ポリマーは例えば、球状、塊状、俵状、不定形状の形状であり得る。吸収性ポリマーはヒドロゲル材料からなることが好ましく、典型的にはアクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を主体とする。
【0061】
吸収体23が、繊維材料と吸収性ポリマーとを含む場合、吸収性ポリマーの質量に対する繊維材料の質量の比率が小さく、吸収体23の密度が小さいことが好ましい。こうすることにより、ポケット構造Pの空間Kの大きさを一定以上の大きさとすることができる。この効果を一層顕著にする観点から、吸収性ポリマーの質量に対する繊維材料の質量の比率は、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下、更に好ましくは1/4以下である。吸収性ポリマーの質量に対する繊維材料の質量の比率は小さければ小さい程好ましく、吸収体23は、繊維材料を含んでいないことが最も好ましい。
【0062】
コアラップシート23bとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。吸収体23が吸液し湿った状態となった場合であっても、該吸収体23と他の部材との接着力を維持し、該吸収体23がおむつ1から剥がれることを防止する観点からは、コアラップシート23bとして不織布を用いることが好ましい。
【0063】
以上、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の積層不織布は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0064】
例えば、高剛性領域12と低剛性領域11とでおむつ1を構成するシートの積層枚数を変えることにより、両者の剛性が異なるようにしてもよい。具体的には、おむつ1を構成するシートの積層枚数が多い領域を高剛性領域12とし、おむつ1を構成するシートの積層枚数が少ない領域を低剛性領域11とすることもできる。この場合、シートの積層枚数が変化する部分が、高剛性領域12と低剛性領域11との境界13となる。
【0065】
また、吸収性コア23aは、例えば繊維材料の積繊体、該繊維材料と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成されていてもよい。
図6に示す実施形態においては、第1コア15及び第2コア16のいずれか一方又は両方が、繊維材料の積繊体、該繊維材料と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成されていてもよい。
【0066】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
吸収体と、該吸収体の非肌対向面側に配された外装体とを具備し、
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを備え、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる方向に対応する長手方向と該長手方向に直交する幅方向とを有し、該腹側部及び該背側部それぞれにおける前記外装体の該長手方向に沿う両側縁部どうしが接合されてウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されてなる吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、前記腹側部に位置する高剛性領域と、前記高剛性領域よりも剛性が低く且つ前記股下部側に位置する低剛性領域とを有し、
一対の前記レッグ開口部それぞれの開口縁部に沿って伸長可能にレッグ弾性部材が配されており、
前記レッグ弾性部材は、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部を始点として前記股下部まで延びる腹側レッグ弾性部材を含み、
前記外装体を前記幅方向に最大伸長させたときの該外装体の該幅方向の長さをL0として、該外装体の該幅方向の長さがL0の90%の長さとなるまで該外装体を伸長させた後、該外装体の該幅方向の長さをL0の80%の長さとなるまで収縮させた状態を80%伸長状態としたときに、
前記腹側レッグ弾性部材は、前記高剛性領域及び前記低剛性領域の境界を跨ぐように且つ該腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差角が前記80%伸長状態において90度未満となるように配されており、
外部から視認可能な第1の図柄が前記境界を跨ぐように前記外装体の外面に施されている、吸収性物品。
【0067】
<2>
前記腹側レッグ弾性部材を複数本有し、前記交差角が複数存在しており、
複数の前記交差角のうち、少なくとも1つが90度未満であり、半分以上が90度未満であることが好ましく、全てが90度未満であることがより好ましい、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記低剛性領域の剛性に対する前記高剛性領域の剛性の比が、1.03以上4以下、好ましくは1.05以上3以下、より好ましくは1.10以上2以下である、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差角が前記80%伸長状態において20度以上85度以下、好ましくは25度以上80度以下、より好ましくは30度以上75度以下となるように該腹側レッグ弾性部材が配されている、前記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<5>
前記腹側レッグ弾性部材を複数本有し、
前記外装体の前記腹側部における、前記吸収体と重なる位置に、複数本の胴周り弾性部材が前記幅方向に沿って伸長可能に配されており、
複数本の前記腹側レッグ弾性部材のうち、最も前記背側部側に位置する腹側レッグ弾性部材が、複数本の前記胴周り弾性部材のうち2本以上、好ましくは2本以上10本以下、より好ましくは3本以上9本以下、更に好ましくは4本以上8本以下と交差する、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<6>
前記吸収体は、低容量領域と、該低容量領域よりも吸液可能な液量が多い高容量領域とを有し、
前記腹側レッグ弾性部材と、前記腹側部における前記外装体の前記側縁部との交差部が、前記高容量領域と前記幅方向において重なる位置に配されている、前記<1>ないし<5>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<7>
前記低容量領域の容量に対する前記高容量領域の容量の比が、1.2以上5以下、好ましくは1.3以上4以下、より好ましくは1.4以上3以下である、前記<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記低容量領域の坪量に対する前記高容量領域の坪量の比が、好ましくは1.2以上5以下、より好ましくは1.3以上4以下、更に好ましくは1.4以上3以下である、前記<6>又は<7>に記載の吸収性物品。
<9>
前記吸収体は、繊維材料と吸収性ポリマーとを含んでおり、
前記吸収性ポリマーの質量に対する前記繊維材料の質量の比率が、1/2以下、好ましくは1/3以下、より好ましくは1/4以下である、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<10>
前記吸収体は、吸収性ポリマーを含み、繊維材料を含まない、前記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0068】
<11>
前記吸収性物品は、前記長手方向の中央を境界として着用時に着用者の腹側に配される前身頃と着用者の背側に配される後身頃とに区分され、
前記前身頃における前記境界と重ならない位置に、外部から視認可能な第2の図柄が前記外装体の外面に施されている、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<12>
前記境界を跨ぐように配されている前記第1の図柄と、該境界と重ならない位置に配された第2の図柄とは、色及び形のいずれか一方又は両方が同じである、前記<11>に記載の吸収性物品。
<13>
前記吸収体は、吸収性コアと、該吸収性コアを被覆するコアラップシートとを有しており、
前記コアラップシートが不織布からなる、前記<1>ないし<12>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<14>
前記吸収性物品は、前記長手方向の中央を境界として着用時に着用者の腹側に配される前身頃と着用者の背側に配される後身頃とに区分され、
前記前身頃と前記後身頃とを重ね合わせるように前記長手方向の中央において二つ折りしたときの厚みが最大で6mm以上12mm以下、好ましく7mm以上11mm以下、より好ましくは8mm以上10mm以下である、前記<1>ないし<13>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<15>
前記吸収体は、高坪量部と、該高坪量部よりも坪量が小さい低坪量部とを有しており、
前記低坪量部が、前記境界と重なる位置に配されている、前記<1>ないし<14>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【0069】
<16>
前記外装体は、前記ウエスト開口部の開口端から前記股下部側に向かって幅35mm以内の低伸縮領域と、該低伸縮領域よりも該股下部側に位置し且つ該低伸縮領域よりも伸縮
応力が高い高伸縮領域とを有しており、
前記高伸縮領域の伸縮応力が、好ましくは0.02N/mm以上0.04N/mm以下であり、より好ましくは0.022N/mm以上0.038N/mm以下であり、更により好ましくは0.025N/mm以上0.035N/mm以下である、前記<1>ないし<15>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<17>
前記低伸縮領域の伸縮応力が、好ましくは0.01N/mm以上0.035N/mm以下であり、より好ましくは0.015N/mm以上N0.033/mm以下であり、更により好ましくは0.02N/mm以上0.030N/mm以下である、前記<16>に記載の吸収性物品。
<18>
前記低収縮領域の収縮応力に対する前記高収縮領域の収縮応力の比が、1.2以上7以下、好ましくは1.3以上5以下、より好ましくは1.4以上3以下である、前記<16>又は<17>に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0070】
1 おむつ
11 低剛性領域
12 高剛性領域
13 高剛性領域と低剛性領域との境界
2 吸収性本体
21 表面シート
22 裏面シート
23 吸収体
24 低容量領域
25 高容量領域
26 低坪量部
27 高坪量部
3 外装体
3e 腹側部における外装体の側縁部
31 内層シート
32 外層シート
33 ウエスト弾性部材
34 胴周り弾性部材
4 レッグ弾性部材
41 腹側レッグ弾性部材
42 背側レッグ弾性部材
51 低伸縮領域
52 高伸縮領域
61 境界を跨ぐように配されている図柄
62 境界とは重ならない位置に配されている図型
7 レッグ弾性部材と外装体の側縁部との交差部
α レッグ弾性部材と外装体の側縁部との交差角
WH ウエスト開口部
LH レッグ開口部
S サイドシール部
A 腹側部
B 背側部
C 股下部
F 前身頃
R 後身頃
X 長手方向
Y 幅方向