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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/3234 20190101AFI20240709BHJP
   G06F 1/24 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G06F1/3234
G06F1/24 351
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021103287
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002203
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴義
(72)【発明者】
【氏名】片山 知拓
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-134576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26 - 1/3296
G06F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ所定の機能を備える機能モジュールが配置され、個別に電源電圧が供給される複数の第1電源領域と、
前記複数の第1電源領域において、電源電圧を供給する順番を指定する設定ユニットと、
前記設定ユニットによる指定の順番に従って、前記複数の第1電源領域に前記電源電圧を供給するパワーコントローラと、を備え
前記複数の第1電源領域に前記電源電圧が供給されていないスタンバイ状態において、前記パワーコントローラは、ウェイクアップイベントの発生に応答して、前記指定の順番に従って、前記複数の第1電源領域に前記電源電圧を供給し、
前記複数の第1電源領域のそれぞれは、前記スタンバイ状態において前記電源電圧が供給され、前記スタンバイ状態に遷移する前の状態を保持するリテンション回路を備え、
前記設定ユニットは、前記複数の第1電源領域において、前記リテンション回路を動作させる順番を指定する設定レジスタを備え、
前記ウェイクアップイベントの発生に応答して、前記設定レジスタにより指定された順番に従って、前記リテンション回路を動作させるリテンションコントローラを、さらに備え、
前記複数の第1電源領域と、前記複数の第1電源領域とは異なる複数の第2電源領域との間に接続された複数の第1アイソレータを備え、
前記複数の第1アイソレータは、前記ウェイクアップイベントの発生に応答して、前記複数の第1電源領域と前記複数の第2電源領域を、同時に接続する、半導体装置。
【請求項2】
請求項に記載の半導体装置において、
前記複数の第1電源領域は、前記ウェイクアップイベントの発生に応答して、同時にリセットされる回路を備える、半導体装置。
【請求項3】
請求項に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、所定の機能を備える機能モジュールを備える第3電源領域をさらに備え、
前記ウェイクアップイベントの発生に応答して、第3電源領域には前記電源電圧が供給され、前記第3電源領域に配置されたリテンション回路が動作され、前記第3電源領域と第4電源領域との間に接続された第2アイソレータによって、前記第3電源領域と前記第4電源領域とが接続される、半導体装置。
【請求項4】
請求項に記載の半導体装置において、
前記複数の第1電源領域に前記電源電圧が供給される前に、前記第3電源領域に前記電源電圧が供給され、前記第3電源領域に設けられた前記リテンション回路が動作し、前記第2アイソレータによって前記第3電源領域と前記第4電源領域とが接続される、半導体装置。
【請求項5】
請求項に記載半導体装置において、
前記第3電源領域は、複数であり、互いに異なるタイミングで前記電源電圧が供給される、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、ソフトウェアスタンバイモードのような低消費電力モードを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の低消費電力化技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、低消費電力化技術として、コア電源領域を分割し、分割された領域毎に電源のオン/オフを制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-122437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コア電源領域を分割し、スタンバイモードにおいては、分割された電源領域への電源の供給を遮断することにより、半導体装置の消費電力を低減することが可能である。スタンバイモードから、例えば通常動作モードへ復帰(遷移)するときの復帰時間を短縮するために、例えば複数の電源領域に対して同時に電源の供給を開始すると、大きなラッシュカレント(電流)が流れることになる。ラッシュ電流によって、電源配線において大きな電圧ドロップが発生し、半導体装置の動作に影響が生じることが考えらえる。大きな電圧ドロップを避けるために、分割された電源領域に対して順番に電源を供給することが考えられる。しかしながら、この場合には、分割した電源領域の数に比例して、復帰時間が長くなると言う課題がある。
【0005】
特許文献1では、復帰時間の短縮化を図ることについては、認識も記載もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0007】
すなわち、実施の形態に係る半導体装置は、それぞれ所定の機能を備える機能モジュールが配置され、個別に電源電圧が供給される複数の第1電源領域と、複数の第1電源領域において、電源電圧を供給する順番を指定する設定ユニットと、設定ユニットによる指定の順番に従って、複数の第1電源領域に電源電圧を供給するパワーコントローラとを備えている。
【0008】
複数の第1電源領域において、スタンバイモードから通常動作モードに復帰する際に流れラッシュカレントが比較的小さな例えば2つの第1電源領域については、実質的に同時に電源電圧が供給されるように、設定ユニットに順番が設定される。これにより、大きな電圧ドロップが発生するのを抑制しながら、復帰時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、スタンバイからの復帰時間の短縮化を図ることが可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係るSSTBYモードを説明するためのフローチャート図である。
図3】実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。
図5】実施の形態1に係るリテンション回路の変形例を示す回路図である。
図6】変形例に係るリテンション回路の動作を説明するためのタイミング図である。
図7】実施の形態2に係る半導体装置の構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態2に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。
図9】実施の形態2に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0013】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
以下の説明では、半導体装置として、1つの半導体チップ上に周知の半導体製造技術によって形成されたマイクロプロセッサ(以下、プロセッサと称する)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。また、実施の形態に係るプロセッサは、低消費電力化を図るために、スタンバイモードとしてソフトウェアスタンバイ(以下、SSTBYと称する)モードを備えている。勿論、スタンバイモードは、SSTBYモードに限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
<半導体装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置(プロセッサ)の構成を示すブロック図である。図1において、1はプロセッサを示している。プロセッサ1は、複数の機能ユニットを備えているが、図1には、説明に必要な機能ユニットのみが描かれている。プロセッサ1は、プロセッサコア2、ローパワーモジュールコントローラ(以下、FSMコントローラ)3、クロックコントローラ4、レギュレータコントローラ5、パワーコントローラ6、リテンションコントローラ7およびリセットコントローラ8を備えている。さらに、プロセッサ1は、複数の電源領域(ドメイン電源領域)VD1_1~VD1_n、VD2_1~VD2_n、アイソレータIS_1~IS_n、電圧レギュレータ9、パワースイッチSW1~SWnおよび設定ユニット10を備えている。なお、特に制限されないが、パワースイッチSW1~SWnは、電界効果型トランジスタによって構成されている。
【0016】
電源領域VD1_1~VD1_nおよびVD2_1~VD2_nのそれぞれには、所定の機能を実現する複数の機能モジュール等が配置されている。図1では、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された1つの機能モジュールが、符号FNM_1~FNM_nとして示されている。パワースイッチSW1~SWnは、電源領域VD1_1~VD1_nに対応し、電源領域VD1_1~VD1_nは、対応するパワースイッチSW1~SWnを介して、電源配線VDLに接続されている。通常動作モードにおいて、対応するパワースイッチがオン状態となることにより、電源配線VDLにおける電源電圧Vddが電源領域に供給される。電源領域に配置された機能モジュールは、電源領域に供給された電源電圧Vddを動作電圧として動作する。電源領域VD1_1に配置された機能モジュールFNM_1を例にして述べると、電源領域VD1_1には、対応するパワースイッチSW1を介して電源電圧Vddが供給され、機能モジュールFNM_1は、供給された電源電圧Vddによって動作する。
【0017】
これにより、プロセッサ1に配置された電源領域および電源領域に配置された機能モジュールには、個別に電源電圧Vddが供給されることになる。
【0018】
図1において、電源領域VD1_1~VD1_nに配置されたRETCは、リテンション回路を示している。リテンション回路RETCは、SSTBYモードに遷移する前の通常動作モードにおける機能モジュール(例えばFNM_1)の状態(データ)を保持し、SSTBYモードから通常動作モードに復帰したときに、保持している状態を機能モジュールへ戻す回路である。リテンション回路RETCは、SSTBYモードにおいて、パワースイッチSW1がオフ状態になっても、状態を保持することが可能なように、電源配線VDL_hを介して電源配線VDLに接続されており、電源配線VDL_hを介して供給される電圧を動作電圧として動作する。特に制限されないが、リテンション回路RETCは、状態を取り込み、保持するフリップフロップ回路(FF)によって構成されている。
【0019】
また、図1において、RSTCは、SSTBYモードから通常動作モードに復帰する際に、リセットされ、初期化される回路を示している。
【0020】
実施の形態1においては、特に制限されないが、電源領域VD2_1~VD2_nは、電源領域VD1_1~VD1_nと異なり、パワースイッチSW1~SWnを介さずに、電源配線VDLに接続されている。これにより、SSTBYモードにおいても、電源領域VD2_1~VD2_nには、電源電圧Vddが供給され、電源領域VD2_1~VD2_nに配置された機能モジュールは、電源電圧Vddによって動作可能とされている。特に制限されないが、電源領域VD2_1~VD2_nには、機能モジュールとして、IP(Intellectual Property)モジュールが配置されている。勿論、電源領域VD2_1~VD2_nも、電源領域VD1_1~VD1_nと同様に、パワースイッチを介して電源電圧Vddが供給されるようにしてもよい。
【0021】
電源領域VD1_1~VD1_nと電源領域VD2_1~VD2_nとの間には、アイソレータIS_1~IS_nが配置されている。アイソレータIS_1~IS_nは、例えば通常動作モードからSSTBYモードへ遷移したとき、電源領域VD1_1~VD1_nと電源領域VD2_1~VD2_nとの間を電気的に分離する。これに対して、SSTBYモードから通常動作モードへ復帰したとき、アイソレータIS_1~IS_nは、電源領域VD1_1~VD1_nと電源領域VD2_1~VD2_nとの間を電気的に接続する。これにより、SSTBYモードにおいて、不所望なデータが電源領域VD1_1~VD1_nから電源領域VD2_1~VD2_nに伝達されるのが防がれる。
【0022】
電圧レギュレータ9は、プロセッサ1の外部に設けられた電源から電源電圧Vccが供給され、電源電圧Vccの電圧値を、機能モジュールFNM_1~FNM_n等に適した電圧値に変換し、電源電圧Vddとして電源配線VDLへ供給する。
【0023】
プロセッサコア2は、図示しない記憶回路に格納されたプログラムを実行することにより、種々の処理を実行する。SSTBYモードに関する所定のプログラムを、プロセッサコア2が実行することにより、プロセッサコア2は、FSMコントローラ3との間でデータの送受信を行うとともに、SSTBYモードへの遷移を指示するスタンバイ命令をFSMコントローラ3へ発行する。
【0024】
FSMコントローラ3は、スタンバイ命令が発行されたとき、およびウェイクアップイベント(Wakeup Event)の発生が通知されたとき、クロックコントローラ4、レギュレータコントローラ5、パワーコントローラ6、リテンションコントローラ7およびリセットコントローラ8との間でデータの送受信を行い、これらのコントローラを制御する。
【0025】
FSMコントローラ3の制御に従って、クロックコントローラ4は、クロック信号CKを出力し、レギュレータコントローラ5は、電圧レギュレータ9を制御するレギュレータ制御信号RCを出力し、リセットコントローラ8は、リセット信号RSTを出力する。
【0026】
パワーコントローラ6は、FSMコントローラ3による制御と設定ユニット10からのパワースイッチ順序情報PSInfとに従って、パワースイッチ制御信号PSWとアイソレーション制御信号ISCを出力する。また、リテンションコントローラ7は、FSMコントローラ3による制御と設定ユニット10からのリテンション順序情報RTInfとに従って、リテンション制御信号RFCを出力する。
【0027】
設定ユニット10は、バスBSに接続され、バスBSを介して、パワースイッチ順序情報PSInfがユーザによって設定される設定レジスタReg_PDと、リテンション順序情報RTInfがユーザによって設定される設定レジスタReg_RTを備えている。設定ユニット10は、設定レジスタReg_PDおよびReg_RTに設定された情報をパワースイッチ順序情報PSInfおよびリテンション順序情報RTInfとして出力する。
【0028】
実施の形態1においては、図1に示すように、パワースイッチ制御信号PSWは、電源領域VD1_1~VD1_nに対応するパワースイッチ制御信号PSW_1~PSW_nによって構成され、対応するパワースイッチSW1~SWnに供給されている。同様に、リテンション制御信号RFCも、電源領域VD1_1~VD1_nに対応するリテンション制御信号RFC_1~RFC_nによって構成され、対応する電源領域に配置されたリテンション回路RETCに供給されている。
【0029】
これに対して、リセット信号RSTは、電源領域VD1_1~VD1_nに対して共通となっており、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された回路RSTCに、共通に供給されている。アイソレーション制御信号ISCも同様に、アイソレータIS_1~IS_nに対して共通となっている。
【0030】
<SSTBYモード>
次に、SSTBYモードへの遷移および復帰を、図1および図2を用いて説明する。ここで、図2は、実施の形態1に係るSSTBYモードを説明するためのフローチャート図である。図2には、通常動作モード(ACTV mode)で動作しているプロセッサ1が、SSTBYモードに遷移し、ウェイクアップイベント(Wakeup Event)の発生が通知されることにより、SSTBYモードから通常動作モードへ復帰する場合が示されている。
【0031】
プロセッサ1は、ステップS0において通常動作モードで動作している。ステップS1において、SSTBYモードへの遷移を指示するスタンバイ命令が、プロセッサコア2によって発行される。スタンバイ命令に応答して、FSMコントローラ3が、プロセッサ1を、通常動作モードからSSTBYモードへ遷移するように、クロックコントローラ4、レギュレータコントローラ5、パワーコントローラ6およびリテンションコントローラ7を制御する。図2には、これらの制御のうち、クロックコントローラ4、パワーコントローラ6およびレギュレータコントローラ5の制御が、ステップS2~S4として示されている。
【0032】
ステップS2において、FSMコントローラ3は、クロックコントローラ4が所定の状態でクロック信号CKの出力を停止するように制御する。ステップS3において、FSMコントローラ3は、パワーコントローラ6がパワースイッチ制御信号PSWによって所定のパワースイッチをオフ状態にするよう制御する。例えば、ステップS3において、パワーコントローラ6は、パワースイッチ制御信号PSW_1~PSW_nによって、パワースイッチSW1~SWnの全てをオフ状態にする。また、ステップS3において、パワーコントローラ6は、アイソレーション制御信号ISCによって、アイソレータIS_1~IS_nが、電源領域VD1_1~VD1_nとVD2_1~VD2_nとの間を電気的に分離するように制御する。次に、ステップS4において、FSMコントローラ3は、電圧レギュレータ9の電源電圧の供給能力を低下させるようなレギュレータ制御信号RCを出力するようにレギュレータコントローラ5を制御する。
【0033】
また、図2では示していないが、電源領域VD1_1~VD1_nに配置されたリテンション回路RETCは、特に制限されないが、ステップS2において、そのときの機能モジュールFNM_1~FNM_nの状態を保持するように制御される。すなわち、リテンション回路RETCは、SSTBYモードへ遷移する前の状態、すなわち通常動作モードのときの機能モジュールFNM_1~FNM_nの状態を保持する。
【0034】
ステップS2~S4が実行されることにより、クロック信号CKは所定の状態で停止し、電源領域VD1_1~VD1_nに対しては、電源電圧Vddの供給が遮断される。これにより、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nには動作電圧が供給されなくなり、動作が停止する。このとき、電源領域VD1_1~VD1_nに配置されたリテンション回路RETCには、電源配線VDL_hによって給電が行われているため、リテンション回路は動作を継続し、通常動作モードの際の状態が保持されている。
【0035】
これにより、ステップS5のSSTBYモードでは、プロセッサ1の消費電力が低減されることになる。
【0036】
次に、ウェイクアップイベントの発生が、FSMコントローラ3に通知されると、FSMコントローラ3は、SSTBYモードから通常動作モードへ復帰するように、クロックコントローラ4、レギュレータコントローラ5、パワーコントローラ6およびリテンションコントローラ7およびリセットコントローラ8を制御する。図2には、これらの制御のうち、レギュレータコントローラ5、パワーコントローラ6、クロックコントローラ4の制御が、ステップS6~S8として示されている。
【0037】
ステップS6において、FSMコントローラ3は、電圧レギュレータ9の電源電圧Vddの供給能力を上昇させるようなレギュレータ制御信号RCを出力するようにレギュレータコントローラ5を制御する。
【0038】
ステップS7において、FSMコントローラ3は、パワースイッチSW1~SWnを順次オン状態にさせるようなパワースイッチ制御信号PSWを出力するように、パワーコントローラ6を制御する。この制御に応じて、パワーコントローラ6は、設定レジスタReg_PDに設定されているパワースイッチ順序情報PSInfに従って、パワースイッチSW1~SWnを順次オン状態にするパワースイッチ制御信号PSWを出力する。これにより、パワースイッチSW1~SWnが、パワースイッチ順序情報PSInfに従って、順次オン状態となり、対応する電源領域VD1_1~VD1_nに順次電源電圧Vddが供給される。電源電圧Vddが供給されることにより、電源領域に配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nが、順次動作可能となる。
【0039】
次に、ステップS9において、FSMコントローラ3が、クロックコントローラ4に対して、クロック信号CKの出力を開始するように制御する。これにより、クロックコントローラ4から出力されたクロック信号CKが、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nに供給され、機能モジュールFNM_1~FNM_nがクロック信号CKに同期して動作する。
【0040】
図2には示されていないが、リセットコントローラ8は、パワースイッチSW1~SWnがオン状態にされた後、リセット信号RSTを出力するように、FSMコントローラ3によって制御される。これにより、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュール内の回路RSTCは、リセットされ、初期化される。また、リテンションコントローラ7は、リセットコントローラ8がリセット信号RSTを出力した後、リテンション制御信号RFCを順次出力するようにFSMコントローラ3によって制御される。この場合、リテンションコントローラ7は、設定レジスタReg_RTからのリテンション順序情報RTInfに従って、リテンション制御信号RFC_1~RFC_nを出力する。リテンション制御信号が供給されると、電源領域に配置されたリテンション回路RETCは、保持している状態(データ)を出力する。これにより、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nの状態は、リテンション回路RETCから出力された状態に、順次復帰する。すなわち、機能モジュールの状態は、SSTBYモードに遷移する前の通常動作モードの際の状態に復帰することになる。
【0041】
また、パワーコントローラ6は、ステップS8の後、アイソレータIS_1~IS_nを導通にするようなアイソレーション制御信号ISCを出力する。これにより、電源領域VD1_1~VD1_nとVD2_1~VD2_nとの間が電気的に接続されることになり、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nによって生成されたデータが、電源領域VD2_1~VD2_nに配置された機能モジュールに伝達可能となる。
【0042】
その後、ステップS9において、プロセッサ1が動作を開始し、ステップS10において、プロセッサ1は通常動作モードで動作することになる。
【0043】
<復帰時の動作例1>
図3は、実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。同図には、プロセッサ1が、SSTBYモードから通常動作モードに復帰する場合が示されている。同図において、横軸は時間tを示している。図3には、設定ユニット10(図1)内の設定レジスタReg_PDに、電源領域VD1_1からVD1_nに向けて、順次電源電圧Vddを供給する順番が、パワースイッチ順序情報PSInfとして設定されている場合が示さている。また、図3には、設定ユニット10内の設定レジスタReg_RTに、電源領域VD1_1に配置されているリテンション回路RETCから電源領域VD1_nに配置されているリテンション回路RETCに向けて、順次リテンション(保持状態の出力)を行う順番が、リテンション順番情報RTInfとして設定されている場合が示されている。
【0044】
図3においては、プロセッサ1は、時刻t1の前は、SSTBYモードに存在する。ここでは、電源領域VD1_1~VD1_nに対応するパワースイッチSW1~SWnは全て、オフ状態(P-OFF)にされているものとする。時刻t1において、ウェイクアップイベントの発生が、FSMコントローラ3に通知されると、FSMコントローラ3が、SSTBYモードから通常動作モードへ復帰するための動作(図2のステップS6~S9)を開始する。FSMコントローラ3は、図2で述べたように、ウェイクアップイベントが通知されると、パワーコントローラ6を制御する。復帰の場合には、電源領域への電源電圧Vddの供給を開始するため、図3では、このときのFSMコントローラ3の状態が、Power Domain ON Controlとして示されている。
【0045】
パワーコントローラ6は、復帰の場合、パワースイッチSWの状態(PD_S)をオン状態(VDD ON)にするように制御し、その後、アイソレータIS_1~IS_nの状態(IS_S)を接続(Isolate:CNT)状態にするように制御する。また、図3に示すように、パワーコントローラ6が復帰の状態にあるとき、リセットコントローラ8の状態(RS_S)が、リセット信号RSTを出力する状態(Reset)となり、リテンションコントローラ7の状態(RT_S)が、リテンションを実行させる状態(FF Restore)となる。
【0046】
パワーコントローラ6の状態がオン状態(VDD ON)となると、パワーコントローラ6は、設定レジスタReg_PDからのパワースイッチ順序情報PSInfに従って、パワースイッチ制御信号を出力する。すなわち、図3に示した例では、パワーコントローラ6は、パワースイッチ制御信号PSW_1からPSW_nに向けて、順次にハイレベルにする。これにより、図において、“ON”で示すタイミングでパワースイッチが、オフ状態から、順次オン状態に変化する。その結果、電源領域VD1_1からVD1_nに向けて、電源領域に電源電圧Vddが順次供給されることになる。なお、図3において、“ON”は、パワースイッチSW1~SWnが、オフ状態からオン状態に変化するタイミングを示しており、オン状態に変化した後は、オン状態が維持されるものである。
【0047】
図3に示すように、電源領域VD1_nへの電源電圧Vddの供給が最後になる。電源領域VD1_nへの電源電圧Vddの供給が完了した後、リセットコントローラ8が、共通のリセット信号RSTを電源領域VD1_1~VD_nに出力する。これにより、電源領域VD1_1~VD_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_n内において、実質的に同時に初期化が行われる。
【0048】
リテンションコントローラ7は、リテンションを実行させる状態(FF Restore)になると、設定レジスタReg_RTからのリテンション順序情報RTInfに従って、電源領域VD1_1からVD1_nの順に、電源領域に配置されているリテンション回路RETCに対してリテンションを実行させる。すなわち、リテンションコントローラ7は、リテンション制御信号RFC_1からRFC_nの順に出力する。これにより、電源領域VD1_1からVD1_nの順に、電源領域に配置されているリテンション回路RETCでリテンションが実行され、SSTBYモードに移行する前の状態が、順次リストアされる。
【0049】
その後、パワーコントローラ6が、共通のアイソレーション制御信号ISCを出力する。これにより、実質的に同時にアイソレータIS_1~IS_nが、接続の状態となり、電源領域VD1_1~VD1_nと電源領域VD2_1~VD2_nとが電気的に接続されることになる。この後、時刻t2において、FSMコントローラ3は、通常動作モード(ACTV)に復帰し、プロセッサコア2からの指示、例えばスタンバイ命令を待機することになる。一方、電源領域VD1_1~VD1_nに配置された機能モジュールFNM_1~FNM_nは、時刻t2以降は、復帰後の通常動作モード(Normal)となる。
【0050】
図3に示した例では、電源領域VD1_1~VD1_nに対応したパワースイッチSW1~SWnが、順次オン状態に変化する。すなわち、パワースイッチがオン状態となるタイミングを異なるようにすることができる。その結果、電源領域に電源電圧Vddを供給するときに、電源配線VDLを流れるラッシュ電流(rush current(Vdd total))のピーク値を低くすることが可能である。また、リテンションのタイミングも、電源領域VD1_1~VD1_n間で異なるようにされている。その結果、リテンション時においても、電源配線VDLを流れるラッシュ電流(rush current(Vdd total))のピーク値を低くすることが可能である。
【0051】
図3において、破線PRCは、電源領域VD1_1~VD1_nに対する電源電圧Vddの供給動作と、電源領域VD1_1~VD1_nに対するリテンション動作とを同時に行った場合のラッシュ電流のピーク値を示している。図3から理解されるように、実施の形態1によれば、ラッシュ電流のピーク値を低く抑制することが可能である。ラッシュ電流のピーク値を低くすることが可能であるため、ラッシュ電流により生じる電源配線VDLにおける電源電圧(Internal Power Supply(Vdd))の電圧変動、例えば電圧ドロップを抑制することが可能である。
【0052】
実施の形態1によれば、電源領域VD1_1~VD1_nに電源電圧Vddを供給する動作および電源領域VD1_1~VD1_nに対するリテンション動作は、順番に実行される。すなわち、これらの動作はシリアルに制御(Serial control)される。これに対して、リセット動作および電源領域間を接続するアイソレーション動作(Isolation:CNT)は、電源領域VD1_1~VD1_nに対して、実質的に同時に実行されるように制御(Simultaneous control)される。
【0053】
本発明者らが検討したところでは、リセット動作および電源領域間を接続するアイソレーション動作で流れるラッシュ電流は、電源領域に電源電圧を供給する動作およびリテンション動作時に比べて小さいことが判明した。そのため、図3に示したように、リセット動作および電源領域間を接続するアイソレーション動作は、実質的に同時に実行するようにしても、ラッシュ電流のピーク値を低くすることが可能である。また、リセット動作および接続のアイソレーション動作を、電源領域VD1_1~VD1_nにおいて、実質的に同時に実行することにより、SSTBYモードから通常動作モードへの復帰時間の短縮化を図ることが可能である。
【0054】
図3では、電源領域VD1_1からVD1_nに向けて、順次パワースイッチをオン状態にし、同じく電源領域VD1_1からVD1_nに向けて、順次リテンションを実行するように、パワースイッチ順序情報PSInfおよびリテンション順序情報RTInfを設定ユニット10内の設定レジスタReg_PD、Reg_RTに設定した例を示したが、これに限定されるもではない。すなわち、ユーザが、設定レジスタReg_PD、Reg_RTに任意の順番を設定することにより、電源電圧を電源領域に供給する順番とリテンションを実行する順番を任意に設定することが可能である。
【0055】
例えば電源領域VD1_1、VD1_2に電源電圧Vddを供給したときに流れるラッシュ電流のピーク値が低い場合には、この2つの電源領域を実質的に同時に、電源電圧Vddが供給されるような順番を、設定レジスタReg_PDに設定してもよい。同様に、リテンション動作についても、2つの電源領域に対して実質的に同時に実行されるような順番を、設定レジスタReg_RTに設定してもよい。これにより、さらにSSTBYモードからの復帰時間の短縮化を図ることが可能である。勿論、実質的に同時に実行することを指定する数は、2に限定されず、電源領域の最大数未満であればよい。
【0056】
<復帰時の動作例2>
図4は、実施の形態1に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。図4は、図3と類似しているので、主に相違点を説明する。
【0057】
相違点は、図4には、電源電圧Vddを電源領域VD1_1~VD1_nに供給したときに流れるラッシュ電流が、電源領域VD1_nからVD1_1に向かって大きくなる場合に適した設定のタイミングが示されていることである。
【0058】
図4では、ラッシュ電流の小さい電源領域VD1_nから大きな電源領域VD1_1に向けて、電源電圧Vddの供給が行われるようなパワースイッチ順序情報PSInfが、設定レジスタReg_PDに設定されている。これにより、パワースイッチSWnからSW1に向かって順次オフ状態からオン状態に変化する。このようにすることで、パワースイッチがオン状態に変化した後で、電源配線VDLにおける電源電圧Vddが安定になるまでの安定待ち時間を短縮することが可能である。図4において、符号PTT1は、図3に示したように、パワースイッチSW1からSWnの順でオン状態にした場合の制御時間を示し、PTT2は、図4に示したようにパワースイッチSWnからSW1の順でオン状態にした場合の制御時間を示している。制御時間PTT2後に、リセット動作等を実行することが可能であるため、復帰時間をさらに短縮化することが可能である。
【0059】
図3および図4では、リセット処理とアイソレーション処理を、複数の電源領域に対して、実質的に同時に行う例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、アイソレーション処理のみを実質的に同時に実行してもよいし、他の処理を複数の電源領域に対して実質的に同時に実行するようにしてもよい。
【0060】
<変形例>
図5は、実施の形態1に係るリテンション回路の変形例を示す回路図である。同図には、電源領域VD1_1の配置されたリテンション回路RETCとこれに対応したアイソレータIS_1の構成が示されている。他の電源領域VD1_2~VD1_nおよびアイソレータIS_2~IS_nも同様な構成である。
【0061】
電源領域VD1_1には、機能モジュールFNM_1と機能モジュールFNM_1から出力されたデータ(DATA)が供給されるマスター・スレーブ型のフリップフロップ回路(以下、MSFF回路)とが配置されている。MSFF回路において、マスターフリップフロップ回路(以下、MFF回路)は、入出力が交差接続されたノア(NOR)回路NR1とクロックドインバータCIV1によって構成されている。また、MSFF回路において、スレーブフリップフロップ回路(以下、SFF回路)は、クロックドインバータCIV2、インバータIV3、転送ゲートTG3およびクロックドノア回路NR2によって構成されている。機能モジュールFNM_1のデータは、転送ゲートTG1を介して、MFF回路に供給され、MFF回路の出力は、転送ゲートTG2を介して、SFF回路に供給される。SFF回路またはMFF回路の出力が、2段直列接続されたインバータIV4、IV5を介して、機能モジュールFNM_1の出力Outとして、電源領域VD1_1からアイソレータIS_1に供給される。
【0062】
SFF回路において、クロックドインバータCIV2とインバータIV3の入出力は、交差接続されている。これにより、クロックドインバータCIV2とインバータIV3とによってフリップフロップ回路R_FFが構成され、転送ゲートTG3を介して、転送ゲートTG2からのMFF回路の出力が、フリップフロップ回路R_FFに供給される。一方、フリップフロップ回路R_FFの出力は、クロックドノア回路NR2を介してSFF回路の出力として出力される。
【0063】
転送ゲートTG1~TG3は、ゲート電極に〇が付されたPチャンネル型FET(Trp)とNチャンネル型FET(Trn)を並列接続することによって構成されている。転送ゲートTG1およびTG2は、図5に示すようにクロック信号CKと、位相反転された反転クロック信号/CKによってスイッチ制御される。これに対して、転送ゲートTG3は、リテンション制御信号RFC_1と、位相反転された反転リテンション制御信号/RFC_1によってスイッチ制御される。
【0064】
また、クロックドインバータCIV1およびクロックドノア回路NR2は、その出力をフローティング状態にするか否かが、クロック信号CKおよび反転クロック信号/CKによって制御され、クロックドインバータCIV2は、その出力をフローティング状態にするか否かが、リテンション制御信号RFC_1および反転リテンション制御信号/RFC_1によって制御される。さらに、ノア回路NR1およびクロックドノア回路NR2は、2入力となっており、それぞれの1つの入力としてリセット信号RSTが供給されている。また、リセット信号RSTは、機能モジュールFNM_1にも供給されており、リセット信号RSTによって、機能モジュールFNM_1内の回路RSTC(図1)をリセットし、初期状態にすることが可能となっている。
【0065】
同図には、クロック信号CKおよびリテンション制御信号RFC_1に基づいて、反転クロック信号/CKおよび反転リテンション制御信号/RFC_1を出力するインバータが、IV1およびIV2として示されている。勿論、インバータIV1、IV2は、電源領域VD1_1の外側に配置するようにしてもよい。
【0066】
アイソレータIS_1は、電源領域VD1_1と電源領域VD2_1との間に接続された転送ゲートTG4とインバータIV6とを備えている。転送ゲートTG4は、転送ゲートTG1等と同様に、Pチェンネル型FETとNチャンネル型FETとによって構成され、アイソレーション制御信号ISCと、インバータIV6によって形成された反転アイソレーション制御信号/ISCによってスイッチ制御される。
【0067】
変形例においては、SFF回路の一部分の回路が、リテンション回路RETCとして機能する。すなわち、フリップフロップR_FFおよび転送ゲートTG3によって、リテンション回路RETCが構成されている。リテンション回路RETCには、図1で述べたように、電源配線VDL_hによって電源電圧Vddが供給されている。
【0068】
リテンション制御信号RFC_1は、通常動作モードのときには、ハイレベル(論理値“1”)となり、SSTBYモードにおいては、機能モジュールFNM_1のデータを保持し続けるように、ロウレベル(論理値“0”)となる。次にリテンションの動作を、図面を用いて説明する。
【0069】
図6は、変形例に係るリテンション回路の動作を説明するためのタイミング図である。通常動作モードにおいては、リテンション制御信号RFC_1がハイレベルであるため、転送ゲートTG3がオン状態となる。クロック信号CKが変化することにより、機能モジュールFNMからのデータは、MFF回路に保持され、クロック信号CKの次の変化で、SFF回路内のフリップフロップ回路R_FFに取り込まれ、保持されるとともに、出力Outとして、アイソレータIS_1を介して、電源領域VD2_1に伝達される。なお、このときは、クロックドノア回路NR2の出力はフローティング状態となるため、フリップフロップ回路R_FFの出力は、インバータIV4に供給されない。クロック信号CKがロウレベルに変化すると、今度は、フリップフロップ回路R_FFの出力が、出力Outとして出力される。これにより、クロック信号CKの1サイクル期間、“Q(n)”が出力Outとして出力される。
【0070】
次にクロック信号CKをハイレベルに変化させた後、SSTBYモードへ遷移するためにリテンション制御信号RFC_1をロウレベルに変化させる前に、クロック信号CKをロウレベルに変化させ、ロウレベルを維持させる。これにより、クロック信号CKがハイレベルの期間においては、MFF回路の出力(Q(n+1))が出力Outとして出力され、クロック信号CKがロウレベルに変化すると、フリップフロップ回路R_FFの出力(Q(n+1))が、出力Outとして出力される。このとき、リテンション制御信号RFC_1をロウレベルにすることで、転送ゲートTG3がオフ状態となり、フリップフロップ回路R_FFは、出力(Q(n+1))を保持することになる。
【0071】
通常動作モードへの復帰において、クロック信号CKをロウレベルにすることで、クロックドノア回路NR2を介して、フリップフロップ回路R_FFに保持されていた出力(Q(n+1))が、出力Outとして出力される。その後、リテンション制御信号RFC_1をハイレベルにすることで、転送ゲートTG3がオン状態となり、機能モジュールFNM_1からの新たなデータが、フリップフロップ回路R_FFに保持されることになる。
【0072】
これにより、SSTBYモードから通常動作モードに復帰したとき、通常動作モードのときの機能モジュールFNM_1の状態を復元して、出力することが可能となる。
【0073】
変形例においては、SSTBYモードから通常動作モードへ復帰させる際に、リテンション順序情報RTInfに従って、クロック信号CKをロウレベルからハイレベルへ変化させる順番が制御される。これにより、図1で説明したのと同様に、リテンションの動作を、リテンション順序情報RTInfに従って定めることが可能である。
【0074】
図1においては、電源領域VD1_1~VD1_nを第1電源領域と見なし、電源領域VD2_1~VD2_nを、第1電源領域とは異なる第2電源領域と見なすことができる。また、図1において、パワーコントローラ6とパワースイッチSW1~SWnとによって、パワーコントローラが構成されていると見なしてもよい。
【0075】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る半導体装置の構成を示すブロック図である。図7は、図1と類似しているので、主に相違点を説明する。相違点は、図7では、設定ユニット10に設定レジスタReg_SMが追加されていることである。
【0076】
設定レジスタReg_SMは、SSTBYモードから通常動作モードに復帰する際の処理を、電源領域毎に指定する復帰指定情報SMInfが設定されるレジスタである。この設定レジスタReg_SMも、バスBSを介してユーザが復帰指定情報SMInfを設定する。実施の形態2においては、復帰指定情報SMInfは、パワーコントローラ6、リテンションコントローラ7およびリセットコントローラ8に供給される。
【0077】
復帰指定情報SMInfは、シリアルな復帰制御(以下、シリアル復帰制御またはシリアル制御と称する)を実行するか、実施の形態1で述べた、シリアルと同時(並列)を組み合わせて復帰制御(以下、ミックス復帰制御またはミックス制御と称する)を実行するかを、電源領域毎に指定する情報である。具体的な例を、図面を用いて説明する。
【0078】
図8および図9は、実施の形態2に係る半導体装置の動作を説明するためのタイミング図である。図8および図9は、図3と類似しているので、主に相違点を説明する。
【0079】
図8には、設定レジスタReg_SMに、シリアル復帰制御(Serial control)を行う対象として、電源領域VD1_1を指定し、ミックス復帰制御(Mixed control)を行う対象として、電源領域VD1_2~VD1_nを指定する復帰指定情報が設定された場合が示されている。ミックス復帰制御は、実施の形態1で述べた制御に相当するので、説明は省略する。
【0080】
パワーコントローラ6は、シリアル復帰制御が指定された電源領域VD1_1に対応するパワースイッチSW1をオン状態にした後、当該電源領域VD1_1に係るリセット処理、リストア処理およびアイソレータIS_1による接続処理が終了するまで、ミックス復帰処理が指定された電源領域VD1_2~VD1_nに対応するパワースイッチSW2~SWnをオフ状態に維持する。その後、リセットコントローラ8およびリテンションコントローラ7は、シリアル復帰制御が指定された電源領域VD1_1に係るリセット動作およびリテンション動作を実行する。この後で、パワーコントローラ6が、アイソレータIS_1によって電源領域VD1_1を電源領域VD2_1に接続させる。
【0081】
その後、パワーコントローラ6、リテンションコントローラ7およびリセットコントローラ8は、電源領域VD1_2~VD1_nに対して、ミックス復帰制御を実行する。すなわち、実施の形態1で述べたように、電源領域VD1_2~VD1_nに対して電源電圧Vddを順次供給し、リテンションを順次実行する。また、電源領域VD1_2~VD1_nに対して、並列的にリセット動作およびアイソレータによる接続の動作が行われる。
【0082】
図9には、設定レジスタReg_SMに、シリアル復帰制御を行う対象として、電源領域VD1_1およびVD1_3を指定し、ミックス復帰制御を行う対象として、電源領域VD1_2、VD1_4~VD1_nを指定する復帰指定情報SMInfが設定された場合が示されている。これにより、電源領域VD1_1およびVD1_3については、シリアル復帰制御が実行され、残りの電源領域については、ミックス復帰制御が実行されることになる。
【0083】
実施の形態2によれば、ラッシュ電流値、処理時間を考慮して、ユーザが復帰対象の電源領域の制御順を固定することが可能である。例えば、図8においては、電源領域VD1_1からVD1_3の順に復帰するように制御順を固定することが可能である。
【0084】
図7においては、シリアル復帰制御が指定された電源領域(例えば、図8では、VD1_1)を第3電源領域と見なし、ミックス復帰制御が指定された電源領域を第1電源領域と見なすことができる。この場合、シリアル復帰制御が指定された電源領域VD1_1に対応する電源領域VD2_1は、第4電源領域と見なすことができる。
【0085】
実施の形態1では、パワースイッチ順序情報およびリテンション順序情報のような順序の情報を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば、ウェイクアップイベントの発生が通知されてから、パワースイッチをオン状態にするまでの時間を、パワースイッチに関する順序情報としてもよい。同様に、ウェイクアップイベントの発生が通知されてから、リテンション動作を実行するまでの時間を、リテンションに関する順序情報としてもよい。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、図1では、レギュレータ制御信号RCによって、電圧レギュレータ9の供給能力を制御することを述べたが、これに限定されるものではない。レギュレータ制御信号RCによって、SSTBYモードでは、電源電圧Vddが低電圧となるように、電圧レギュレータ9が制御されるようにしてもよい。この場合、SSTBYモードから通常動作モードへ遷移したときに、電圧レギュレータ9は、低下した電源電圧Vddを上昇させるように動作するようにレギュレータ制御信号RCによって制御される。
【符号の説明】
【0087】
1 プロセッサ
2 プロセッサコア
3 FSMコントローラ
6 パワーコントローラ
7 リテンションコントローラ
10 設定ユニット
FNM_1~FNM_n 機能モジュール
RETC リテンション回路
Reg_PD、Reg_RT、Reg_SM 設定レジスタ
SW1~SWn パワースイッチ
VD1_1~VD1_n、VD2_1~VD2_n 電源領域
VDL、VDL_h 電源配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9