(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】適応的に反射板の電波反射方向を制御する制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20240709BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20240709BHJP
H04B 7/145 20060101ALI20240709BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20240709BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240709BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240709BHJP
【FI】
H04W24/02
H01Q15/14 Z
H04B7/145
H04W16/18
H04W16/26
H04W16/28
(21)【出願番号】P 2021151192
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】流田 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】五水井 一浩
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165099(JP,A)
【文献】特開2019-009531(JP,A)
【文献】特開2021-114647(JP,A)
【文献】特開2021-057723(JP,A)
【文献】特開2009-153095(JP,A)
【文献】特開平06-268563(JP,A)
【文献】岩渕 匡史,他,ミリ波通信における方向情報に基づく分散型Intelligent Reflecting Surfacesの特性評価,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.120 No.81 SRW2020-8,2020年06月22日,pp.23-28
【文献】KDDI corporation,NR repeaters and Reconfigurable Intelligent Surface[online],3GPP TSG RAN adhoc_2021_06_RAN_Rel18_WS RWS-210300,2021年06月07日,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_AHs/2021_06_RAN_Rel18_WS/Docs/RWS-210300.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
H04B 7/145
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した電波の反射方向およびビーム幅を変更することが可能なようにメタマテリアルを用いて構成された反射板を制御する制御装置であって、
前記反射板に備えられたセンサによって、当該反射板が移動して、その移動後に所定時間静止したことを検出する検出手段と、
前記反射板が移動した後に所定時間静止したことが検出されたことに応じて、
前記反射板の位置および前記反射板が設置されている向きを特定する第1の情報と、基地局装置から放射された電波が前記反射板に到来する方向を示す第2の情報と、前記基地局装置から放射された電波を反射させて到達させるべき所定の領域の前記反射板から見た方向を示す第3の情報と、を取得する取得手段と、
前記第1の情報と前記第2の情報と前記第3の情報とに基づいて、前記基地局装置または前記所定の領域の端末装置から到来した電波を反射させる角度を決定する決定手段と、
入射した電波を前記決定された方向へ反射させるように前記反射板を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記反射板が移動して直立状態となった後に所定時間静止したことを検出し、
前記反射板が直立状態で所定時間静止したことが検出されたことに応じて、前記取得手段が前記第1の情報と前記第2の情報と前記第3の情報とを取得し、前記決定手段が前記角度を決定し、前記制御手段が前記反射板の制御を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記決定手段は、さらに、前記所定の領域をカバーするように前記反射板から前記所定の領域の方向へ向けるビームのビーム幅を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
複数の前記所定の領域が存在する場合、前記決定手段は、前記当該複数の前記所定の領域をカバーするように前記ビーム幅を決定する、ことを特徴とする請求項
3に記載の制御装置。
【請求項5】
複数の前記所定の領域の位置を示す座標の分布に基づいて、前記角度を決定する、ことを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記反射板が適切に設置されている否かを判定する判定手段と、
前記反射板が適切に設置されていないと判定された場合に所定の情報を出力する出力手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記第1の情報によって示される前記反射板が設置されている向きを中心とする所定の角度範囲に、前記第2の情報によって示される基地局装置から放射された電波が前記反射板に到来する方向が含まれない場合に、前記反射板が適切に設置されていないと判定する、ことを特徴とする請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記第1の情報によって示される前記反射板が設置されている向きを中心とする所定の角度範囲に、前記第3の情報によって示される前記所定の領域の方向が含まれない場合に、前記反射板が適切に設置されていないと判定する、ことを特徴とする請求項
6又は
7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第2の情報は、前記反射板から見た前記基地局装置の位置を特定する情報を含み、
前記第3の情報は、前記反射板から見た前記所定の領域の位置を特定する情報を含み、
前記判定手段は、前記反射板と前記基地局装置との間の距離および前記反射板と前記所定の領域との間の距離に基づく伝搬損失の大きさが所定値を超える場合に、前記反射板が適切に設置されていないと判定する、
ことを特徴とする請求項
6から
8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記所定値として、前記反射板において形成されるビーム幅が広いほど小さい値が用いられる、ことを特徴とする請求項
9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記出力手段は、前記所定の情報として、前記反射板が設置される位置を変更すべきことを示すメッセージを出力する、ことを特徴とする請求項
6から
10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記メッセージは、前記反射板が設置されるべき位置を示す情報を含む、ことを特徴とする請求項1
1に記載の制御装置。
【請求項13】
前記出力手段は、前記所定の情報として、追加の反射板が設置されるべきことを示すメッセージを出力する、ことを特徴とする請求項
6から1
2のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記制御装置は前記反射板に備えられる、ことを特徴とする請求項1から1
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項15】
入射した電波の反射方向およびビーム幅を変更することが可能なようにメタマテリアルを用いて構成された反射板を制御する制御装置によって実行される制御方法であって、
前記反射板に備えられたセンサによって、当該反射板が移動して、その移動後に所定時間静止したことを検出することと、
前記反射板が移動した後に所定時間静止したことが検出されたことに応じて、
前記反射板の位置および前記反射板が設置されている向きを特定する第1の情報と、基地局装置から放射された電波が前記反射板に到来する方向を示す第2の情報と、前記基地局装置から放射された電波を反射させて到達させるべき所定の領域の前記反射板から見た方向を示す第3の情報と、を取得することと、
前記第1の情報と前記第2の情報と前記第3の情報とに基づいて、前記基地局装置または前記所定の領域の端末装置から到来した電波を反射させる角度を決定することと、
入射した電波を前記決定された方向へ反射させるように前記反射板を制御することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
入射した電波の反射方向およびビーム幅を変更することが可能なようにメタマテリアルを用いて構成された反射板を制御する制御装置に備えられたコンピュータに、
前記反射板に備えられたセンサによって、当該反射板が移動して、その移動後に所定時間静止したことを検出させ、
前記反射板が移動した後に所定時間静止したことが検出されたことに応じて、
前記反射板の位置および前記反射板が設置されている向きを特定する第1の情報と、基地局装置から放射された電波が前記反射板に到来する方向を示す第2の情報と、前記基地局装置から放射された電波を反射させて到達させるべき所定の領域の前記反射板から見た方向を示す第3の情報と、を取得させ、
前記第1の情報と前記第2の情報と前記第3の情報とに基づいて、前記基地局装置または前記所定の領域の端末装置から到来した電波を反射させる角度を決定させ、
入射した電波を前記決定された方向へ反射させるように前記反射板を制御させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、到来した電波を反射する反射板における電波反射方向の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信では、基地局装置が送出した電波を受信可能な位置に存在する端末装置に対して無線通信サービスが提供されるため、電波を受信可能でないエリア(不感地帯)を可能な限り小さくすることが肝要である。特に高周波数帯を使用する傾向のある近年の無線通信環境では、基地局装置からの距離が十分に近い位置であってもビルなどの障害物の陰において不感地帯が発生することが想定されるため、このような不感地帯への対応が重要となる。
【0003】
このような不感地帯への対応策として反射板を用いることが検討されている。なお、反射板は、物理的な向きを変更することによって信号を反射させる方向を変更することができるが、メタマテリアル反射板(非特許文献1参照)を用いることにより、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Shimin Gong, et al.、「Toward Smart Wireless Communications via Intelligent Reflecting Surfaces: A Contemporary Survey」、IEEE COMMUNICATIONS SURVEYS & TUTORIALS、VOL. 22、NO. 4、2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不感地帯への対応策として反射板を用いる場合、基地局装置から送出された電波が不感地帯へ到達するように、かつ、不感地帯の端末装置から送出された電波が基地局装置へ到達するように、電波反射方向が適切に設定される必要がある。しかしながら、このような設定は煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、反射板の電波反射方向の設定の簡素化技術に関する。
【0007】
本発明の一態様による制御装置は、入射した電波の反射方向およびビーム幅を変更することが可能なようにメタマテリアルを用いて構成された反射板を制御する制御装置であって、前記反射板に備えられたセンサによって、当該反射板が移動して、その移動後に所定時間静止したことを検出する検出手段と、前記反射板が移動した後に所定時間静止したことが検出されたことに応じて、前記反射板の位置および前記反射板が設置されている向きを特定する第1の情報と、基地局装置から放射された電波が前記反射板に到来する方向を示す第2の情報と、前記基地局装置から放射された電波を反射させて到達させるべき所定の領域の前記反射板から見た方向を示す第3の情報と、を取得する取得手段と、前記第1の情報と前記第2の情報と前記第3の情報とに基づいて、前記基地局装置または前記所定の領域の端末装置から到来した電波を反射させる角度を決定する決定手段と、入射した電波を前記決定された方向へ反射させるように前記反射板を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射板の電波反射方向の設定を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】反射板による電波の反射を概説する図である。
【
図3】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】制御装置によって実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムでは、基地局装置101が、端末装置102との間で接続を確立して無線通信サービスを提供するように構成される。なお、
図1のように、特に高周波数帯の電波が使用される場合、例えば、基地局装置101から送出された電波が遮蔽物103によって遮蔽され、端末装置102が存在する領域にその電波が届かない場合がある。本実施形態では、このように、遮蔽物103によって遮蔽された所定の領域を、無線品質の改善が必要な品質改善エリア104と呼ぶ。ここで、無線品質の改善のためには、基地局装置101とは異なる別の基地局装置を設置することが想定されうるが、その設置コストが高額となりうる。このため、本実施形態では、反射板111を用いて、品質改善エリア104における無線品質を改善することを想定する。ここで、例えば、遮蔽物103が恒常的な物体である場合、反射板111も恒常的に設置されうるが、例えば、イベントなどによって一時的に遮蔽物103が設置される場合、反射板111も一時的に設置されることが想定される。また、被災地などの一時的に基地局装置が使用できない環境において遠方の基地局装置101からの電波を反射させて、所定のエリア(品質改善エリア104)の無線品質を改善するために反射板111が使用されることもありうる。この場合、例えば反射板111を備えた自動車などを用いて、品質改善エリア104に対して電波を照射させることができる位置にその反射板111が配置される。このような反射板111は、日ごとに又は時間ごとに、配置可能な位置が異なりうる。このため、
図1に示すように、反射板の位置を変更することが想定される。
【0012】
このような一時的に設置される反射板111においては、その反射板111が適切な位置に適切な向きで設置されることが重要である。特に一般的な金属反射板においては、電波が正反射するため、基地局装置から反射板へ電波が入射する方向と反射板の表面とのなす角が、品質改善エリアの方向と反射板の表面とのなす角と等しくなるように、反射板の位置及び向きが決定される必要がある。これに対して、メタマテリアルを用いた反射板では、反射して出力される電波の進行方向やビームの幅を調整することができる。このため、反射板の位置及び向きの制約が、金属反射板と比して緩和される。本実施形態では、特に反射板111がメタマテリアルを用いた反射板である場合の例について説明する。メタマテリアルを用いた反射板111では、メタマテリアルを構成する導体パターンや誘電率等を調整することにより、また、必要に応じて反射板111の位置や向きを変更することにより、電波の反射方向を設定させることができる。一方で、その設定が適切に行われないと、品質改善エリア104内の端末装置102と基地局装置101との間の通信を中継することができない。この設定は、逐次的に、メタマテリアルの調整を行うことによって、又は、反射板111の位置や向きを物理的に変化させることによって、遂行することができるが、そのような手順での設定は極めて煩雑である。
【0013】
そこで、本実施形態では、反射板111の設定の煩雑さを解消するための仕組みを提供する。本実施形態では、反射板111の内部に備えられた又は反射板111の外部に用意された制御装置が、反射板111における電波の反射方向が適切な向きとなるように、メタマテリアルの設定を決定し、反射板111に、その決定した設定値を通知することにより、反射板111を制御する。制御装置は、例えば、反射板111の位置および反射板111が設置されている向きを特定する第1の情報と、基地局装置101から放射された電波が反射板111に到来する方向を示す第2の情報と、品質改善エリア104の反射板101から見た方向を示す第3の情報と、を取得する。制御装置は、取得した第1の情報~第3の情報に基づいて、基地局装置101と品質改善エリア104内の端末装置102から到来した電波の反射角度を決定する。そして、制御装置は、その決定された反射角度で入射された電波を反射するように、反射板111のメタマテリアルの導体パターンや誘電率等を変更するように反射板111を制御する。
【0014】
なお、制御装置は、上述のような設定処理を所定のタイミングにおいて実行する。制御装置は、例えば、前回設定処理を実行してから所定期間が経過した場合や、所定の日付・所定の時刻に達した場合に、上述の設定処理を開始しうる。例えば、毎日所定の時刻に上述の設定処理が行われてもよいし、例えば6時間ごとに上述の設定処理が行われるようにしてもよい。また、制御装置は、反射板111の移動が検出された場合、その移動の完了後に、上述の設定処理を開始しうる。例えば、反射板111に取り付けられた加速度センサ等のセンサによって反射板111が移動し、その後静止したことを判定し、所定時間以上静止している状態となった場合に、上述の設定処理が開始されるようにしてもよい。所定時間以上静止した状態となったことに応じて、反射板111の設置が完了したと判定されうるからである。また、反射板111の姿勢が直立状態となった場合、すなわち、鉛直面上に又は鉛直面から所定の角度だけ傾いた状態で反射板111が配置された場合にも、反射板111の設置が完了したと判定されうる。したがって、反射板111の姿勢が直立状態となった場合にも、上述の設定処理が開始されてもよい。なお、直立状態となったか否かは、反射板111に備えられたジャイロセンサ等のセンサによって特定されうる。また、反射板111に電源スイッチが備えられている場合、その電源スイッチがオンとされた際に、上述の設定処理が開始されてもよい。また、設定処理のためのスイッチが操作されたことに応じて、上述の設定処理が開始されてもよい。
【0015】
上述の第1の情報のうち、反射板111の位置は、例えば、反射板111に備えられたGPS(全地球測位システム)受信器による測位結果でありうる。また、反射板111の位置は、セルラ通信システムの基地局や、無線LANのアクセスポイントなどの位置の定まった通信装置からの電波に基づく、三点測位やフィンガープリント測位に基づく測位結果であってもよい。また、反射板111の位置は、反射板111の近傍に存在しており、反射板111と近距離無線通信機能を用いて接続した携帯端末で測位された結果であってもよい。この場合、その携帯端末が、近距離無線通信機能を用いて、反射板111へ測位結果を通知してもよいし、反射板111の外部に存在する制御装置へ直接その測位結果を示す情報を通知してもよい。上述の第1の情報のうち、反射板111が設置されている向きを示す情報は、例えば、反射板111に備えられた地磁気センサやジャイロセンサ等のセンサによる測定結果の値として取得されうる。
【0016】
また、例えば、反射板111に備えられた複数のアンテナや、メタマテリアルの導体パターン内の各導体を用いた到来方向推定が実行されることにより、基地局装置101からの電波の到来方向が特定されることにより、第2の情報が取得される。一例において、反射板111は、基地局装置101からの電波を測定して、十分な電力で受信された電波の送信元の基地局装置101からの電波に関して、到来方向推定が実行されうる。なお、電波の受信電力に基づいて、基地局装置101と反射板111との間の距離も推定されうる。到来方向推定は、例えば、ビームの方向を変更しながら基地局装置101からの電波を検出し、その電波が最も強く受信される方向を電波の到来方向として推定する、という形式で行われうる。なお、ビームは、事前に用意された複数のビームパターンから選択されてもよい。その場合、その複数のビームパターンを時分割で切り替えながら、基地局装置101からの電波が最も強く受信されるビームパターンを選択して、そのビームパターンに対応する方向が電波の到来方向として推定されうる。制御装置は、これらの推定結果を反射板111から取得しうる。
【0017】
また、第2の情報は、例えば基地局装置101の位置を示す情報でありうる。例えば、制御装置は、基地局装置と位置情報とを関連付けたデータベースを事前に保持しておき、反射板111が設置される位置から所定距離の範囲に存在する基地局装置を電波の反射対象として選択しうる。また、反射板111は、反射板111に到来する電波から基地局装置を特定可能な情報(例えばセル識別子)を受信して、その情報を制御装置へ通知してもよい。制御装置は、そのセル識別子に対応する基地局装置の位置情報に基づいてデータベースを検索して、基地局装置の位置情報を特定してもよい。なお、データベースは、制御装置の外部に存在してもよく、制御装置は、例えば反射板111の設置位置や反射板111に到来した電波の送出元の基地局装置の識別情報をデータベースへ送信して、対応する基地局装置の位置情報を取得するようにしうる。
【0018】
第3の情報は、例えば、事前にネットワーク事業者から指定された品質改善エリア104の範囲を示す情報でありうる。なお、品質改善エリアの情報が蓄積されたデータベースを用意しておき、その品質改善エリア104を指定する情報が制御装置に入力されることにより、制御装置がその品質改善エリア104の位置情報を特定可能とするようにしてもよい。このデータベースは、制御装置内に備えられてもよいし、制御装置の外部に備えられてもよい。なお、品質改善エリアの位置情報は、例えば、品質改善エリア104の中心などの代表点の位置を示す情報でありうる。また、品質改善エリア104の中心から最も離れた点と中心点との距離の情報が品質改善エリアの位置情報に含まれてもよい。また、端末装置102が、無線品質が所定値より低いエリアに存在する間に測位を実行し、制御装置又はデータベースにその測位の結果を集積して、品質改善エリア104が特定されるようにしてもよい。
【0019】
なお、反射板111、基地局装置101、及び品質改善エリア104の位置情報は、緯度・経度・高度の情報を含みうる。
【0020】
制御装置は、上述の情報に基づいて、例えば基地局装置101から反射板111に入射される電波の入射角度と、反射板111がその電波を反射して出力すべき出射角度とを推定する。ここで、
図2を用いて、この推定手法について説明する。例えば、反射板111の位置を原点とした基地局装置101の位置座標を(x
bs,y
bs,z
bs)とする。なお、(x
bs,y
bs)は水平方向の位置を示し、z
bsは垂直方向の位置を示す。この場合、水平方向において反射板111から見た基地局装置101の角度は、φ
bs=tan
-1(y
bs/x
bs)と表現することができる。また、仰角方向において反射板111から見た基地局装置101の角度は、θ
bs=tan
-1(z
bs/d
bs)と表現することができ、ここで、d
bs=(x
bs
2+y
bs
2)
1/2である。このとき、反射板111の設置された方向(すなわち、反射面側の法線方向)が、方位角φ
Rおよび仰角θ
Rによって表される場合、基地局装置101から入射される又は品質改善エリア104内の端末装置102から送出されて反射板111において反射されるべき電波の方向は、方位角φ
IN=φ
bs-φ
Rおよび仰角θ
IN=θ
bs-θ
Rとなる。なお、-π≦φ
IN≦πであり、-π/2≦θ
IN≦π/2である。
【0021】
同様に、品質改善エリア104の位置座標を(xi,yi,zi)とすると、水平方向及び仰角方向において反射板111から見た品質改善エリア104の角度は、φi=tan-1(yi/xi)、θi=tan-1(zi/di)と表現することができる。なお、di=(xi
2+yi
2)1/2である。そして、品質改善エリア104内の端末装置102から入射される又は基地局装置101から送出されて反射板111において反射されるべき電波の方向は、方位角φOUT=φi-φRおよび仰角θOUT=θi-θRとなる。なお、-π≦φOUT≦πであり、-π/2≦θOUT≦π/2である。
【0022】
このようにして、制御装置は、上述の第1の情報~第3の情報に基づいて、基地局装置101側の角度(φIN,θIN)及び品質改善エリア104側の角度(φOUT,θOUT)を決定することができる。そして、制御装置は、そのような反射角度を実現するように、メタマテリアルを構成する導体パターンや誘電率等を調整するように反射板111に指示しうる。なお、反射方向とメタマテリアルの構成との関係は、事前に実験環境などにおいて特定されうる。例えば、複数の入射角および出射角の組み合わせのそれぞれに対するメタマテリアルの設定値のテーブルを事前に用意しておき、制御装置は、テーブルを参照することによって、上述のようにして決定した入射角および出射角の関係に最も近い関係の反射が可能となるような設定値を取得して、その設定値に従う調整が行われるように反射板111に指示しうる。また、制御装置は、所定の計算式に従って、上述のようにして決定した入射角および出射角を達成するように、メタマテリアルの設定値を算出してもよい。
【0023】
なお、上述の例では、品質改善エリア104の一点に向けて電波が反射されるように反射板111の調整を行う例について説明した。なお、このような調整によっても、反射板111から反射される電波は、一定のビーム幅のビームを形成するように構成されるが、制御装置は、このビーム幅が適切な幅となるようにメタマテリアルの調整を反射板111に指示しうる。また、複数の品質改善エリア104が存在する場合、制御装置は、その複数の品質改善エリア104を全てカバーするように、ビーム幅を決定してもよい。なお、このとき、制御装置は、複数の品質改善エリア104のそれぞれの位置を示す座標の分布に基づいて、反射角を決定してもよい。例えば、制御装置は、複数の品質改善エリア104のそれぞれの方向(φi,θi)を特定し、その最小値(φmin,θmin)と最大値(φmax,θmax)とを特定し、その中間の値((φmin+φmax)/2,(θmin+θmax)/2)を、ビームの方向として決定してもよい。これによれば、複数の品質改善エリア104を、最も狭いビーム幅でカバーすることができる。また、複数の品質改善エリア104のそれぞれの方向(φi,θi)の平均値((Σi=1
Iφi)/I,(Σi=1
Iθi)/I)によって、ビームの方向を決定してもよい。この場合、複数の品質改善エリア104のうちの多くのエリアが存在する方向に向けて、ビームの利得を高く設定することができる。
【0024】
一例において、制御装置は、上述のようにして決定した反射角(入射/出射方向)が、適性値であるかを判定するように構成されうる。例えば、基地局装置101又は品質改善エリア104が、反射板111の反射面の後方に存在する場合、反射板111による反射では、品質改善エリア104における無線品質を改善することができない。このため、制御装置は、このように、基地局装置101や品質改善エリア104と反射板111との位置関係が不適切である場合に、所定の情報を出力するように構成されうる。例えば、制御装置は、反射板111に備えられた表示装置に反射板111の位置を変更されるべきことを示すエラーメッセージを表示させるための所定の情報を出力しうる。また、制御装置は、自装置に接続されたディスプレイに同様のエラーメッセージを表示させてもよい。また、エラーメッセージにおいて、どの位置に反射板111が設置されるべきかを示す情報が含められてもよい。例えば、制御装置は、基地局装置101の位置と、品質改善エリア104の位置とに基づいて、これらの位置が反射板111の反射面の前方に位置することを可能とする反射板111の地理的な範囲を算出し、その範囲へ反射板111を移動させることを指示するメッセージを出力しうる。また、制御装置は、例えば、反射板111の向き(姿勢)を変更することによって、基地局装置101の位置と品質改善エリア104の位置とを反射板111の反射面の前方とすることが可能である場合、反射板111の向きの変更を推奨するメッセージを出力してもよい。なお、上述の例では、基地局装置101及び品質改善エリア104が反射板111の反射面の前方に存在すること、すなわち、上述のφbsおよびφiが、-π/2<φbs<π/2及び-π/2<φi<π/2であることが、反射板111が適切に配置されていると評価される条件である場合について説明した。ただし、これに限られず、例えば、反射板111が設置されている向きを中心とする所定の角度範囲内に、基地局装置101からの電波の到来方向が含まれ、かつ、品質改善エリア104の方向がその所定の角度範囲内に含まれることが、反射板111が適切に配置されていると評価されるようにしうる。すなわち、所定の角度範囲が-π/2~π/2であってもよいし、それよりも狭い角度範囲又は場合によってはそれよりも広い角度範囲であってもよい。
【0025】
また、例えば、反射板111と基地局装置101又は品質改善エリア104との距離が離れすぎていると、品質改善エリア104における無線品質改善効果が不十分となりうる。このため、制御装置は、このような場合にも、基地局装置101と品質改善エリア104とを結ぶ通信経路の経路長が短くなるように、反射板111の位置を移動させることを指示するエラーメッセージを出力してもよい。なお、制御装置は、例えば、基地局装置101と反射板111との間の距離に基づいて第1の伝搬損失を算出し、品質改善エリア104と反射板111との間の距離に基づいて第2の伝搬損失を算出し、その第1の伝搬損失と第2の伝搬損失との和の大きさが所定値を超える(すなわち、品質改善エリア104における無線品質が十分な値とならない)場合に、反射板111の位置が適切でないと判定しうる。なお、伝搬損失L[dB]は、例えば、距離をd[m]とした場合に、L=61.4+20log10dのように算出されうる。なお、伝搬損失は、反射板111の利得を考慮して算出されてもよい。反射板111の利得は、反射板のサイズが大きいほど高い値を有し、ビーム幅が広いほど低い値を有する。また、反射の方向(ビームの方向)によって利得が変化しうる。第1の伝搬損失をL1[dB]とし、第2の伝搬損失をL2[dB]とし、反射板111の利得をG[dB]とすると、トータルの伝搬損失の大きさはL0=L1+L2-Gのように表現されうる。このL0の値が所定値より大きいか否かによって、反射板111によって、品質改善エリア104における無線品質が十分に改善されるか否かを評価することができる。すなわち、L0の値が所定値を超える場合、伝搬損失が大きいため、無線品質が十分に改善されず、反射板111が適切に設置されていない可能性があると判定されうる。なお、反射板111の利得Gについては考慮しなくてもよい。
【0026】
一方、反射板111の利得Gを考慮する場合、上述のように、この利得Gは、ビーム幅が広いほど低くなる。このため、ビーム幅が広い場合は、ビーム幅が狭い場合と比して小さい伝搬損失でも、無線品質が不十分と評価されることが想定されうる。すなわち、反射板111の利得を除いた、伝搬損失L1+L2が相対的に小さい所定値を超えた際に、反射板111の配置が不適切と判定されうる。例えば、複数の品質改善エリア104に対して電波を反射させる場合、無線品質が不十分と判定されることが想定される。この場合、反射板111の位置や向きを調整しても、無線品質の改善効果が不十分となることが想定される。したがって、この場合、制御装置は、追加の反射板を設置すべきことを示す情報を、上述のエラーメッセージに付して出力してもよい。
【0027】
このように、無線品質の改善効果が十分でない場合に、制御装置は、反射板111の配置されている状況に応じた対処法を出力しうる。これにより、反射板111の設置者の利便性を向上させることができる。
【0028】
(装置構成)
図3を用いて、上述の制御装置のハードウェア構成例について説明する。制御装置は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、各装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、例えば、反射板111との通信のためのインタフェースを提供する回路を含んで構成される。
【0029】
図4は、制御装置の機能構成例を示す図である。制御装置は、例えば、調整開始部401、反射板情報取得部402、基地局方向特定部403、品質改善リア特定部404、設定処理部405、及び情報出力部406を有する。これらの機能は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。また、これらの機能の一部または全部が専用のハードウェアによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは各機能部の動作を概説するにとどめる。
【0030】
調整開始部401は、反射板111に備えられたメタマテリアルの調整を開始するためのトリガを与える。調整開始部401は、上述のように、特定のタイマの満了や特定の日時、反射板111の設置時などに、調整を開始させるように動作しうる。反射板情報取得部402は、反射板111の位置及び向きの情報を取得する。基地局方向特定部403は、反射板111から見た基地局装置101の位置情報や基地局装置101から送出された電波の反射板111への到来方向を特定する情報を取得する。品質改善エリア特定部404は、反射板111から見た品質改善エリア104の位置情報や、品質改善エリア104内の端末装置102から送出された電波の反射板111への到来方向を特定する情報を取得する。設定処理部405は、反射板情報取得部402と基地局方向特定部403と品質改善リア特定部404とによって取得された情報に基づいて、反射板111の電波反射方向の設定処理を実行する。設定処理部405は、例えば、反射板111のメタマテリアルの設定情報を反射板111へ出力することにより、メタマテリアルの設定を行わせうる。なお、制御装置が反射板111内部に備えられる場合は、制御装置が直接メタマテリアルの設定を行ってもよい。情報出力部406は、反射板111の位置に応じて、必要に応じて反射板111の設置位置や方向の変更又は追加の反射板の設置を促すエラーメッセージを出力する。
【0031】
(処理の流れ)
続いて、制御装置によって実行される処理の流れの例について
図5を用いて概説する。この処理は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。なお、各処理の順序は一例に過ぎず、一部の処理の順序が入れ替えられてもよい。また、各処理ステップの詳細については、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。
【0032】
本処理では、制御装置は、まず、調整処理を実行する条件が満たされたか否かを判定する(S501)。例えば、制御装置は、所定時刻になった場合や事前に設定したタイマが満了した場合、反射板111が設置されたと判定可能な状態となった場合などに、調整処理を実行する条件が満たされたと判定する。制御装置は、調整処理を実行する条件が満たされたと判定した場合(S501でYES)、反射板111の設置された位置及び向きを特定可能な第1の情報を取得する(S502)。また、制御装置は、基地局装置101からの電波の到来方向(又は基地局装置101の位置)を特定可能な第2の情報と、品質改善エリア104の位置を特定可能な第3の情報とを取得する(S503、S504)。そして、制御装置は、取得した第1の情報~第3の情報に基づいて、反射板111における反射角(例えば、基地局装置101からの電波の入射角と品質改善エリア104の方向への電波の出射角)を決定する(S505)。
【0033】
その後、制御装置は、反射板111の設置状態が適切であるか否かを判定する(S506)。すなわち、制御装置は、現在の反射板111の設置状態で、基地局装置101と品質改善エリア104との間で送受信される電波を適切に反射することができる状態であるかを判定する。制御装置は、例えば、入射角および出射角が、反射板111の向いている方向を中心とする所定の角度範囲内(例えば-π/2~π/2の範囲内)に含まれる場合に、反射板111の設置状態は適切であると判定しうる。一方、制御装置は、入射角と出射角との少なくともいずれかが反射板111の向いている方向を中心とする所定の角度範囲内に含まれない場合、反射板111の設置状態が適切でないと判定する。また、制御装置は、基地局装置101と反射板111との距離、及び、品質改善エリア104と反射板111との距離に基づいて特定される伝搬損失の大きさが所定値を超える場合には、反射板111の設置状態が適切でないと判定し、その伝搬損失の大きさが所定値以下である場合には、反射板111の設置状態が適切であると判定しうる。なお、ここでの所定値は、例えば、反射板111から品質改善エリア104へ向けられたビームのビーム幅が広くなるほど、小さくなるように設定されうる。すなわち、ビーム幅が広い場合には、伝搬損失の大きさが相対的に小さくても、反射板111の設置状態が適切でないと判定されやすくなるようにしうる。制御装置は、反射板111の設置状態が適切であると判定した場合(S506でYES)、決定した入射角及び出射角での反射が行われるように反射板111へ設定値を出力して、反射板111のメタマテリアルの設定を制御する(S507)。一方、制御装置は、反射板111の設置状態が適切でないと判定した場合(S506でNO)、例えば、反射板111の位置や向きを変更させるべきことや、追加の反射板が設置されるべきことを示すエラーメッセージを出力する(S508)。なお、エラーメッセージには、反射板111が設置されるべきことが推奨される位置や、追加の反射板が配置されるべき位置を示す情報などが含められてもよい。
【0034】
以上のようにして、反射板111の設定が制御装置によって自動で行われることにより、設置者による煩雑な設定が不要となる。また、これにより、反射板111の設定のための専用の知識も不要となるため、例えば反射板111の位置を移動させて使用させる際の運用のコストを低減することができる。
【0035】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。