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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】複合シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B29C65/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021191459
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077943
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横堀 一男
(72)【発明者】
【氏名】飛田 隆広
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115258(JP,A)
【文献】特開2015-107524(JP,A)
【文献】米国特許第06190296(US,B1)
【文献】特開2006-231698(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
B23K 20/00-20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート及び第2シートを搬送させながら、回転するアンビルロールと、該アンビルロールの周面に対向する位置に設置された超音波ホーンを備えた超音波接合装置との間を重ね合わせた状態で通し、該超音波ホーンによる超音波振動によって両シートを接合する、複合シートの製造方法であって、
前記アンビルロールはその周面に、複数の凸部を備えており、
前記超音波接合装置は、前記超音波ホーンを受ける圧力を検出する圧力センサを備えており、
両シートが接合されている間に前記圧力センサが検出する圧力を、前記アンビルロールが一回転する間、継続的に且つ連続的に取得し、
前記アンビルロール一回転分の圧力の値に基づき両シートの接合状態の良否を判定する、複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記アンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に分割し、
予め設定された最低圧力について、少なくとも一つの区間における最高圧力の値が、該最低圧力を下回った場合に、両シートの接合状態が不良であると判定する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
予め設定された最高圧力を基準として、該最高圧力を含む一定の圧力範囲を予め設定しておき、
前記アンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に分割し、
少なくとも一つの区間における圧力の値が、前記圧力範囲を上回るか、又は下回った場合に、設備異常であると判定する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
両シートの接合状態が不良であると判定された場合か、又は設備異常であると判定された場合に、警報を発生させるか、複合シートの製造を停止させるか、又は正常に接合されなかった複合シートを搬送経路から排出する、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記凸部が、前記アンビルロールの周面においてロール周方向に沿って規則的に複数配されており、
一の凸部が前記超音波ホーンに当接し、該凸部に周方向で隣接する別の凸部に該超音波ホーンが当接するまでの時間をTとし、前記圧力センサが圧力を取得する時間の間隔をtとしたとき、T≧tとなるように前記tを設定する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
重ね合わせた状態の第1シート及び第2シートを前記アンビルロールと前記超音波ホーンとの間に配置しておき且つ両シートを搬送させる前に、前記超音波ホーンを超音波振動させて、該超音波ホーンによる圧力が設定値以上であることを確認した後にシートの搬送を開始し、
両シートの搬送が完全に停止して所定時間経過した後に、前記超音波ホーンの超音波振動を停止する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のシートを超音波振動によって接合する技術が種々知られている。例えば特許文献1には、超音波ホーンとアンビルロールとの間に連続体を挟み、該超音波ホーンが出力した出力信号を超音波振動に変換して該連続体を接合する技術が記載されている。同文献には、出力信号が所定範囲を満たさない場合、又は接合された連続体の接合面積が所定面積を満たさない場合に、接合状態に不良が発生したと検出できると記載されている。
【0003】
特許文献2には、超音波印加装置とアンビルロールとを備えた超音波接合装置における該超音波印加装置に圧力センサが備えられており、超音波ホーンが被接合物から受ける圧力を圧力センサで計測し、計測された圧力が所定範囲外である場合に、接合不良と判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-99132号公報
【文献】特開2017-115258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の技術によれば、複数枚のシートを接合する場合に生じ得るシート間の接合異常を検出することが一応可能である。しかし、近年、複合シートを備えた製品には、従来よりも高品質であることが望まれている。高品質な製品を製造する手段の一つとして、複合シートの製造工程において、シート間の接合状態を従来よりも精密に観察・評価することが求められている。
したがって本発明の課題は、シート間の接合状態の良否を高い精度で判定し、且つ安定的に複合シートを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第1シート及び第2シートを搬送させながら、回転するアンビルロールと、該アンビルロールの周面に対向する位置に設置された超音波ホーンを備えた超音波接合装置との間を重ね合わせた状態で通し、該超音波ホーンによる超音波振動によって両シートを接合する、複合シートの製造方法であって、
前記アンビルロールはその周面に、複数の凸部を備えており、
前記超音波接合装置は、前記超音波ホーンを受ける圧力を検出する圧力センサを備えており、
両シートが接合されている間に前記圧力センサが検出する圧力を、前記アンビルロールが一回転する間、継続的に取得し、
前記アンビルロール一回転分の圧力の値に基づき両シートの接合状態の良否を判定する、複合シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート間の接合状態の良否を高い精度で判定し、且つ安定的に複合シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、複合シートの製造装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の複合シートの製造方法の一実施形態についてのフローチャートである。
図3図3は、本発明の製造方法において取得された圧力値に基づき接合不良を判定する手法を示すグラフである。
図4図4は、本発明の製造方法において取得された圧力値に基づき設備異常を判定する手法を示すグラフである。
図5図5は、本発明の製造方法において取得された圧力値に基づき接合不良を判定する別の手法を示すグラフである。
図6図6は、本発明の製造方法において取得された圧力値に基づき設備異常を判定する別の手法を示すグラフである。
図7図7は、本発明の製造方法に用いられるアンビルロールの要部を拡大して示す模式図である。
図8図8は、本発明の製造方法に用いられる装置を運転するときのタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の製造方法に好適に用いられる装置の一例が示されている。同図に示す製造装置1は、原反の繰り出し部20と、繰り出された原反の接合部30とに大別される。
【0010】
繰り出し部20は、本発明の製造対象である複合シート10の原料である第1シート21の原反ロール21aと、第2シート22の原反ロール22bとが備えられている。各原反ロール21a,22bは、これらのロールの駆動源(図示せず)によって、図1中、矢印Rで示される方向に回転し、第1シート21及び第2シート22を繰り出すようになっている。
【0011】
接合部30は、アンビルロール31と超音波接合装置35とを具備する。
アンビルロール31は、駆動源(図示せず)によって、図1中、矢印Rで示される方向に回転するようになっている。アンビルロール31はその周面に複数の凸部32を有している。凸部32は少なくともアンビルロール31の周方向、換言すれば回転方向Rに沿って規則的且つ間欠的に配置されている。
超音波接合装置35は、超音波ホーン36を備えている。超音波接合装置35は、超音波ホーン36の先端、すなわち超音波振動印加面がアンビルロール31の周面と対向するように設置されている。また、超音波接合装置35は、超音波ホーン36の先端がアンビルロール31の周面と接離可能なように設置されている。
超音波接合装置35は、上述した超音波ホーン36に加えて圧力センサ37を備えている。圧力センサは、第1シート21と第2シート22とを超音波接合するときに超音波ホーン36が受ける圧力を検出して、検出した圧力情報をPLCなどの制御装置(図示せず)に送信する機能を有している。
【0012】
以上の構造を有する装置1を用いた本発明の複合シートの製造方法を以下に説明する。
本製造方法においては、重ね合わせた状態の第1シート21及び第2シート22を搬送させながら、回転するアンビルロール31と、アンビルロール31の周面に対向する位置に設置された超音波ホーン36との間を通し、該超音波ホーン36による超音波振動によって両シート21,22を接合する。詳細には、図1に示すとおり、原反ロール21a,22bから長尺帯状の第1シート21及び第2シート22をそれぞれ繰り出し、搬送方向MDに沿って搬送する。繰り出された第1シート21及び第2シート22は、アンビルロール31において合流し互いに重ね合わされる。
【0013】
重ね合わされた両シート21,22は、アンビルロール31の回転とともに搬送され、超音波ホーン36と対向する位置に到達し、超音波ホーン36によって生じる超音波振動によって両シート21,22が接合される。両シート21,22の接合は、超音波ホーン36がアンビルロール31の凸部32と対向するときに生じるので、両シート21,22の接合によって形成された複合シート10における接合部の形成パターンは、アンビルロール31の周面に設けられた凸部32の配置パターンと一致する。
【0014】
第1シート21と第2シート22との接合によって複合シート10を製造する場合、例えばアンビルロール31の回転軸が意図せず傾いたり、アンビルロール31の周面が膨張したり、アンビルロール31の凸部32が摩耗・破損したり、あるいは超音波ホーン36の超音波振動印加面が摩耗したりする場合、シートの幅方向全域にわたって接合が均一に行われない場合がある。このことは、得られる複合シート10の品質を低下させる一因となり、延いては該複合シート10を備えた製品の品質を低下させる一因となる。そこで本発明においては、両シート21,22を接合している間に生じる可能性のある接合不良及び装置異常の有無並びにそれらの程度を、超音波接合装置35に備えられた圧力センサ37によって検出される圧力に基づき判定する。
【0015】
圧力センサ37は、上述のとおり、第1シート21と第2シート22とを超音波接合するときに超音波ホーン36が受ける圧力を検出する。本発明においては、両シート21,22が接合されている間に圧力センサ37が検出する圧力を、アンビルロール31が一回転する間、継続的に取得する。そして、取得されたアンビルロール一回転分の圧力の値に基づき両シート21,22の接合状態の良否を判定する。判定の手順の一例を図2に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0016】
図2に示すとおり、先ずステップS101を行う。ステップS101においては、超音波接合装置35を起動させる前に、第1シート21及び第2シート22を重ね合わせた状態で、両シート21,22をアンビルロール31と超音波ホーン36との間に配置しておく(S101)。この状態においては、両シート21,22はアンビルロール31と超音波ホーン36との間に位置しているだけであり、搬送は行われていない。アンビルロール31と超音波ホーン36との間に両シート21,22を配しておくことで、両シート21,22が未接合状態のままで接合部30よりも下流に搬送されることが防止される。また、アンビルロール31と超音波ホーン36との間に両シート21,22を配しておくことで超音波接合装置35の起動時に、超音波ホーン36とアンビルロール31とが直接に接触しないので、超音波ホーン36及び/又はアンビルロール31に摩耗やがたつき等が生じることを抑制できる。
【0017】
次に、ステップS102において、超音波接合装置35を起動して超音波ホーン36を超音波振動させ、両シート21,22を接合させる。超音波ホーン36は、互いに重ね合わされた第1シート21及び第2シート22を介してアンビルロール31に当接し、それによって圧力を受ける。この圧力を圧力センサ37で検出する。圧力センサ37で検出された圧力値はPLC等の制御装置(図示せず)に送信されて、予め定められた設定値との間で大小関係が判定される。
圧力センサ37で検出された圧力値が設定値に満たない場合には、ステップS101へ手順を戻し、超音波接合装置35を再度起動する。一方、圧力センサ37で検出された圧力値が設定値以上であることが確認された場合には、超音波接合装置35が正常に作動していると判定し、次の手順であるステップS103へ進む。
なお、ステップS102以降においては、超音波ホーン36が受ける圧力が継続的に圧力センサ37で検出され、検出された圧力値は制御装置(図示せず)へ送信される。
【0018】
ステップS103においては、超音波ホーン36を振動させた状態を維持しつつ、重ね合わされた状態の第1シート21及び第2シート22の搬送を開始する。これによって、両シート21,22の接合が連続的に行われる。
【0019】
次に、重ね合わされた状態の第1シート21及び第2シート22の搬送を開始した時点を始点として、超音波ホーン36が受ける圧力を継続的に取得する(ステップS104)。
本発明においては、超音波ホーン36が受ける圧力を取得するときに、アンビルロールが一回転する間に生じた圧力を継続して取得することに特徴がある。圧力値の取得をこのように行うことで、両シート21,22の接合状態の安定性、アンビルロール31の組み付け及び設置状態の異常、並びにアンビルロール31における凸部32の配置パターンの異常を精度よく検出できる。これに対して、従来は、一般に、超音波ホーン36が受ける最大圧力を取得して、最大圧力の値に基づき接合不良や装置異常を判定していた。しかし、アンビルロールの周面には凸部及び凹部が存在することから、超音波ホーンがアンビルロールのいずれの部位に対向するか(つまり凸部に対向するか、あるいは凹部に対向するか)に応じて、該超音波ホーンが受ける圧力が大きく変動し、またアンビルロール偏芯等も圧力の変動に影響することから、正確な判定を行うことが容易でなかった。
超音波ホーン36が受ける圧力の取得は、アンビルロール31が一回転する間、継続的に行われればよく、圧力の取得は連続的であってもよく、あるいは所定間隔を置いた不連続的であってもよい。後者の場合、圧力の取得は、アンビルロール31の回転角度で表すと、例えば90度以下ごとに行うことが好ましい。
【0020】
図3にはアンビルロール31一回転分の圧力を継続的に取得したグラフの一例が示されている。同図において、横軸は圧力の取得開始時点からの経過時間を示し、縦軸は取得した圧力値を示す。同図に示すとおり、取得された圧力は、山と谷が交互に現れるものとなる。このグラフにおいて、山の位置での圧力は、超音波ホーン36がアンビルロール31の凸部32に対向したときに検出されるものである。一方、谷の位置での圧力は、超音波ホーン36がアンビルロール31の凹部に対向したときに検出されるものである。
【0021】
アンビルロール31一回転分の圧力が取得できたら、次にステップS105へ進み、アンビルロール31一回転分の圧力が正常であるか否かを判定する。この判定は、(i)両シート21,22の接合状態についての判定と、(ii)製造設備についての判定とに大別される。(i)は図におけるステップS106、S107及びS108を含む。(ii)は図におけるステップS109、S110及びS111を含む。以下、(i)及び(ii)についてそれぞれ説明する。
【0022】
(i)の第1シート21と第2シート22との接合状態についての判定を行うときには、好適には、先ず前もって接合の最低圧力Pnを定めておく。最低圧力Pnの設定は、予備試験を行って複数の複合シート10を製造し、両シート21,22が十分に接合される最低の圧力を見出して、その圧力を、予め設定された最低圧力Pnと定める。
最低圧力Pnの具体的な決定方法は次のとおりである。すなわち、予備試験として接合時の圧力の設定を異ならせた複数の条件で複合シート10を製造し、各複合シート10についてシート間の接合強度を測定する。所望の接合強度が満たされなかった圧力条件の中で、最も高い条件で製造した複合シート10の製造において検出されたアンビルロール31一回転分の圧力のうち、最高圧力を最低圧力Pnとして決定する。
【0023】
ステップS105における判定で、アンビルロール31一回転分の圧力のうちの最高圧力Pyが最低圧力Pnを下回った場合には、両シート21,22の接合状態が不良であると判定され(ステップS106)、更にステップS107において不良品排出信号が制御装置から発せられ、正常に接合されなかった複合シート10を搬送経路から排出する。あるいは、ステップS107において警報が制御装置から発せられる。
【0024】
ステップS106において両シート21,22の接合状態が不良であるとの判定が複数回連続して発生した場合には、ステップS108において装置1の停止信号が制御手段から発せられ、複合シート10の製造を停止する。
【0025】
次に(ii)について説明すると、(ii)の製造設備についての判定は、好適には、先ず前もって接合の最高圧力Pxを定めておく。最高圧力Pxの設定は、予備試験を行って複数の複合シート10を製造し、穴開きや切れ、破れ等を生じさせることなく両シート21,22が接合される最高の圧力を見出して、その圧力を、予め設定された最高圧力Pxと定める。そして最高圧力Pxを基準として、該最高圧力Pxを含む一定の圧力範囲Prを予め設定する。圧力範囲Prの設定の仕方は、接合対象である第1シート21及び第2シート22の性状等に応じて適切に設定することができる。例えば最高圧力Pxに対して±X(%)とすることができる(Xは0超の正数を表す)。あるいは、最高圧力Pxに対してマイナスX1(%)以上プラスX2(%)以下という設定の仕方もある(X1及びX2は0超の正数を表す)。
なお、最高圧力Pxの具体的な決定方法は次のとおりである。すなわち、予備試験として実生産時の圧力を一つ設定した後、該圧力条件で複合シート10を製造し、圧力値の振れを測定する。測定された振れの最大の圧力値に対して10%加算した値を最高圧力Pxとして決定する。複合シート10の製造において、実生産時の圧力の設定を変更した場合には、変更した圧力条件で再度予備試験を行い、該変更した圧力条件における最高圧力Pxを決定する。
【0026】
ステップS105における判定で、アンビルロール31一回転分の圧力のいずれかが圧力範囲Prを上回るか、又は下回った場合には、ステップS109において設備異常であると判定され、更にステップS110において不良品排出信号が制御装置から発せられ、複合シート10を搬送経路から排出する。あるいは、ステップS110において警報が制御装置から発せられる。設備異常としては、例えば、アンビルロール31の回転軸の傾き、アンビルロール31の周面における凹みの発生、アンビルロール31や超音波ホーン36の熱膨張などが挙げられる。
【0027】
アンビルロール31一回転分の圧力のいずれかが圧力範囲Prを上回る場合とは、装置1において、例えばアンビルロール31の偏芯、アンビルロール31における凸部32の配置パターンの変形等の異常、圧力センサ37の故障のような設備異常が生じた場合である。
一方、アンビルロール31一回転分の圧力のいずれかが圧力範囲Prを下回る場合とは、装置1において、例えばアンビルロール31の偏芯、アンビルロール31における凸部32の配置パターンの変形等の異常、超音波ホーン36の摩耗や欠け、圧力センサ37の故障のような設備異常が生じた場合である。
【0028】
ステップS109において設備異常が発生したとの判定が複数回連続して発生した場合には、ステップS111において装置1の停止信号が制御手段から発せられ、複合シート10の製造を停止する。
【0029】
以上の(i)及び(ii)の説明は、アンビルロール31一回転分の圧力全体を対象としたものであったが、これに代えて図5及び図6に示すとおり、アンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に分割し、分割されたそれぞれの区間について上述の(i)及び/又は(ii)の処理を行うことができる。分割されたそれぞれの区間について(i)及び/又は(ii)の処理を行うことで、両シート21,22の接合状態や、装置1の設備異常を一層精密に判定することができる。
【0030】
図5には、アンビルロール一回転分の圧力を例えばa-dの4つの区間に区分し、上述の(i)の処理を行う方法が示されている。この処理においては、図2におけるステップS105において、各区間について共通に且つ予め定められた最低圧力Pnに対し、4つの区間a,b,c,dにおける最高圧力a1,b1,c1,d1のうち、少なくとも一つの区間における最高圧力の値が、最低圧力Pnを下回った場合に、ステップS106において両シート21,22の接合状態が不良であると判定され、上述の手順に従いステップS107及びステップS108が行われる。このようにアンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に区分することで、両シート21,22の接合状態を一層精度よく判定することができ、延いては製造された複合シート10の品質を一層高めることができる。
【0031】
図6には、アンビルロール一回転分の圧力を例えばa-dの4つの区間に区分し、上述の(ii)の処理を行う方法が示されている。この処理においては、図2におけるステップS105において、区間に応じて予め定められた最高圧力Pa,Pb,Pc,Pdを基準として、該最高圧力Pa,Pb,Pc,Pdを含む一定の圧力範囲P,P,P,Pを予め設定する。
【0032】
ステップS105における判定で、区間a,b,c,dの少なくとも一つにおいて、当該区間で検出された圧力値が、当該区間において予め設定された一定の圧力範囲(すなわちP,P,P,Pのいずれか。)を上回るか、又は下回った場合には、ステップS109において設備異常であると判定され、上述の手順に従いステップS110及びステップS111が行われる。このようにアンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に区分することで、装置1の設備異常を一層精度よく判定することができ、延いては製造された複合シート10の品質を一層高めることができる。
【0033】
図6に示す操作において、最高圧力Pa,Pb,Pc,Pdを予め設定する手法としては、以下のようなものが挙げられる。例えば、最高圧力Paについては、予備試験として実生産時の圧力を一つ設定した後、該圧力条件で複合シート10を製造し、区間aにおける圧力値の振れを測定する。測定された振れの最大の圧力値に対して10%加算した値を最高圧力Paとして決定する。複合シート10の製造において、実生産時の圧力の設定を変更した場合には、変更した圧力条件で再度予備試験を行い、該変更した圧力条件における最高圧力Paを決定する。最高圧力Pb,Pc,Pdについても同様にして、それぞれの区間b,c,dにおいて測定された振れの最大の圧力値に対して10%加算した値を最高圧力Pb,Pc,Pdとして決定する。
【0034】
図5及び図6に示すとおり、アンビルロール一回転分の圧力を複数の区間に分割して区間ごとに上述の判定を行う、各区間は等間隔であってもよく、あるいは異なる間隔であってもよい。
【0035】
本実施形態においては、図1を参照して述べたとおり、図4に示すとおり、アンビルロール31の周面には、ロール周方向に沿って凸部32が規則的且つ間欠的に複数配されている。図7は、アンビルロール31を軸方向から見た要部拡大図である。同図に示すとおり、アンビルロール31は、ロール周方向に沿って間欠的に配置された凸部32の間に凹部33を有する。凸部32は規則的に配置されていることから、凸部32間に位置する凹部33も規則的に存在している。ところで本実施形態においては、これまで説明したとおり、第1シート21と第2シート22との接合状態の良否を判定するときに、凸部32と超音波ホーン36とが当接したときに超音波ホーン36が受ける圧力を圧力センサ37で検出する。したがって、アンビルロール31における凸部32及び凹部33の配置のピッチ及び超音波ホーン36の厚さT(図7参照)によっては、超音波ホーン36が受ける圧力が例えば図3等に示すとおり周期的に上下することになる(つまり、超音波ホーン36と凸部32とが当接したときには圧力が上昇し、超音波ホーン36が凹部33に対向するときには圧力が低下する)。そこで、両シート21,22の接合状態の良否を高い精度で判定することを目的として、超音波ホーン36と凸部32とが当接したときに生じる圧力を取りこぼさずに取得できるように、圧力センサ37が圧力を取得するサンプリング周期を、アンビルロール31の凹凸ピッチに合わせて調節することが好ましい。具体的には、一の凸部32が超音波ホーン36に当接し、該凸部32に周方向で隣接する別の凸部32に超音波ホーン36が当接するまでの時間をTとし、圧力センサ37が圧力を取得する時間の間隔をtとしたとき、T≧tとなるように取得時間間隔tを設定することが好ましい。このように取得時間間隔tを設定することで、凸部32と超音波ホーン36とが当接したときに生じる圧力を取りこぼさずに取得することが可能となる。この利点を一層顕著なものとする観点から、T/tの値を1以上10以下に設定することが好ましい。
【0036】
なお、図7に要部を示すアンビルロール31は、これを正面から見たときに、各凸部32が、ロール軸方向に沿って連続した一直線状に延びる形状をしていてもよく、あるいは各凸部32が、ロール周面に沿って列状をなし、各列が軸方向に多列に配置されていてもよい。あるいは、各凸部32は、ロールの周面に千鳥格子状に配置されていてもよい。
【0037】
図8には、本実施形態で用いられる装置1を運転するときのタイムチャートの一例が示されている。先に述べたとおり、装置1を運転するのに先立ち、第1シート21及び第2シート22を重ね合わせた状態で、両シート21,22をアンビルロール31と超音波ホーン36との間に配置しておく。この状態から超音波接合装置35を起動して超音波ホーン36を振動させる。それによって超音波ホーン36とアンビルロール31との間に所定の圧力が発生したことを確認した後(図8中、時間T1経過後)、同図に示すとおり、両シート21,22の搬送を開始する。
一方、装置1を停止する場合には、図8に示すとおり、先ず両シート21,22の搬送を停止する。この時点では超音波ホーン36の振動は継続している。両シート21,22の搬送が停止してから所定時間T2が経過した後、超音波ホーン36の振動を停止する。
このように、両シート21,22を搬送する前から且つ両シート21,22の搬送を停止した後まで、超音波ホーン36によって超音波振動を両シート21,22に印加することによって、両シート21,22が接合されない状態で、接合部30(図1参照)よりも下流側に搬送されることを防止することができる。両シート21,22が接合されない状態で下流側に搬送されると、下流の工程において、両シート21,22が意図せず分離してしまい、分離したシートが搬送ロールに巻き付いて搬送不良等のトラブルの発生の一因となることがある。
【0038】
次に、上述した各実施形態に共通の事項について説明する。
複合シート10の原料となる第1シート21及び第2シート22は、同一の又は異なる材料から構成されたシート材料である。シート材料としては、例えば不織布、織布及び編み地などの繊維シートや、フィルムなどを用いることができる。
【0039】
第1シート21及び第2シート22を構成するシート材料として不織布を用いる場合、該不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体や、これらの不織布とフィルム等とを組み合わせた積層体を用いることもできる。
【0040】
第1シート21及び第2シート22を構成する材料としては、各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブデン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド;アクリル樹脂;ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;などが挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上のブレンド物として用いることができる。第1シート21及び第/又は第2シート22が繊維シートである場合は、これらの樹脂を2種以上用いた芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの複合繊維を用いることができる。
【0041】
第1シート21及び第2シート22は両者が平坦なシート、すなわち表面に凹凸を有さない一定厚みのシートであってもよく、あるいは少なくとも一方のシートが、少なくとも一方の表面に凹凸を有するシートであってもよい。
【0042】
本製造方法で得られる複合シートは様々な用途に適用できる。例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料として、本製造方法で得られる複合シートを用いることができる。
【0043】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、前記実施形態では、超音波接合装置35は超音波ホーン36を一つのみ具備するが、該超音波ホーン36を二つ以上用い、それらをアンビルロール31の軸方向に沿って配置してもよい。この場合、各超音波ホーン36が受ける圧力をそれぞれ検出してもよい。
また、図5及び図6に示す実施形態では、アンビルロール31一回転分の圧力ピークを4つの区間a,b,c,dに分割して両シート21,22の接合状態の良否を判定したが、これに代えて、2若しくは3又は5以上の区間に分割してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 複合シートの製造装置
10 複合シート
20 繰り出し部
21 第1シート
22 第2シート
30 接合部
31 アンビルロール
32 凸部
33 凹部
35 超音波接合装置
36 超音波ホーン
37 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8