(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】がんを治療及び/又は予防するためのウレア誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/428 20060101AFI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240709BHJP
C07D 277/82 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20240709BHJP
C07D 235/30 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/428
A61P35/00
A61P25/00
A61P13/12
C07D277/82 CSP
A61K31/4184
C07D235/30 A
(21)【出願番号】P 2021521474
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2019078274
(87)【国際公開番号】W WO2020079184
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】520100435
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・コート・ダジュール
【氏名又は名称原語表記】Universite Cote d’Azur
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラシッド・ベンヒーダ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・パージュ
(72)【発明者】
【氏名】マエヴァ・デュフィ
(72)【発明者】
【氏名】リュック・ドゥマンジュ
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ロンコ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドル・グリサイ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04088768(US,A)
【文献】東ドイツ国経済特許第235018(DD,A1)
【文献】特表2003-521543(JP,A)
【文献】国際公開第2005/037845(WO,A1)
【文献】特表2008-518014(JP,A)
【文献】国際公開第2018/019987(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/025638(WO,A1)
【文献】Li, Zheng et al.,Microwave-promoted environmentally benign synthesis of 2-aminobenzothiazoles and their urea derivatives,Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements ,2008年,183(5),,1124-1133
【文献】Lee, Man Kil et al,Syntheses and antimicrobial activity of substituted benzothiazolyl urea derivatives,Yongnam Taehakkyo Nonmunjip, Chayon Kwahak Pyon (,1981年,Volume Date 1980, 14,231-8
【文献】Siddiqui, Nadeem; Ahsan, Waquar,Benzothiazole Incorporated Barbituric Acid Derivatives: Synthesis and Anticonvulsant Screening,Archiv der Pharmazie (Weinheim, Germany) ,2009年,342(8),,462-468
【文献】Mehanna, Wesam E. et al,Synthesis, ADMET Properties, and Biological Evaluation of Benzothiazole Compounds Targeting Chemokine Receptor 2 (CXCR2),ChemMedChem,2017年,12(13),,1045-1054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K 31/
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:
R
1は、ニトロ基
及び(C
1~C
6)アルキル
基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素、ハロゲン、又は(C
1~C
6)アルキル基を表し、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C
1~C
6)アルキル基であ
り、
R
1
がニトロ基である場合、R
2′
、R
2′′
、及びR
2′′′
は独立して水素、塩素原子又は臭素原子を表し、R
2′
、R
2′′
、及びR
2′′′
の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基は塩素原子又は臭素原子である)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体
を含む、がんの治療のための医薬組成物。
【請求項2】
R
1はニトロ基
及びメチル
基からなる群において選択される基である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を表し、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基は塩素原子、臭素原子又はメチル基である、請求項1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物は、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:及び
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記がんが、髄芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、及びトリプルネガティブ乳がんからなる群において選択される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
シスプラチン、オキサリプラチン、又はカルボプラチンに対する耐
性がある対象における頭頸部がんの治療のための、請求項1から
5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
スニチニブ、アキシチニブ、又はカボザンチニブに対する耐
性がある対象における腎臓がんの治療のための、請求項1から
5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記化合物が、1~1000mg/kg
(体重)の用量で投与される、請求項
1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
経口経路又は非経口経路によ
り投与される、請求項
1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式(II):
【化2】
(式中:
YはNH又はSであり;
R
1は水素原子、ニトロ基
及び(C
1~C
6)アルキル
基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素原子、ハロゲン原子、(C
1~C
6)アルキル基、又は(C
1~C
6)アルキルオキシ基を表す)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体
を含む、髄芽腫、頭頸部がん及び腎臓がんからなる群において選択されるがんの治療のための医薬組成物。
【請求項11】
前記化合物が、1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
である、請求項1
0に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される、化合物、その塩又は互変異性体。
【請求項13】
請求項1
2に記載の化合物及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
がんの治療のための、請求項1
3に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野、特に、がん及び黄斑変性等の望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患の治療におけるCXCR1受容体拮抗薬及びCXCR2受容体拮抗薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、既存の微小血管からの新たな毛細血管の形成を含むプロセスである。血管新生は通常、胚発生、組織再生、創傷治癒、女性の生殖システムにおける周期変動である黄体発生の間に起こる。
【0003】
しかし、調節不全の血管新生により誘発される多数の疾患が存在する。病的状態で発生する血管新生に関連するそのような疾患には、血管腫、血管繊維腫、血管奇形、並びに動脈硬化、血管接着、及び強皮症等の循環器疾患が含まれる。血管新生に関連する眼疾患には、角膜移植血管新生、新生血管緑内障、糖尿病性網膜症、新生血管によって誘発される角膜疾患、黄斑変性、翼状片、網膜変性、水晶体後繊維増殖症、顆粒性結膜炎等が含まれる。さらに、血管新生に関連する疾患には、関節炎等の慢性炎症性疾患、乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、ざ瘡等の皮膚疾患、アルツハイマー病、及び肥満が含まれ得る。
【0004】
これらの疾患の中で、加齢性黄斑変性等の黄斑変性は、毎年何百万人もの高齢者に影響を与えている。この疾患は、中心視野に影響を及ぼし、時には読書や運転又は微細で精密な視野を要する他の活動を困難にし得る。黄斑が変性すると、目は、細かい文字、顔の特徴又は小さな物体等の細部を見る能力を失う。黄斑の損傷を受けた部分は、しばしば暗点又は局所的な視力喪失を引き起こす。黄斑変性又は加齢性黄斑変性のための既知の治療法には、眼球の硝子体液に直接導入することで、異常な血管増殖の退行及び視力の改善をもたらす抗VEGF(血管内皮増殖因子、Vascular Endothelial Growth Factor)剤が含まれる。これらの薬剤の例には、VEGFに対するモノクローナル抗体、ラニビズマブ(「ルセンティス」として市販されている)、ベバシズマブ(「アバスチン」として市販されている)及びペガプタニブ(pegatanib)(「マクジェン」として市販されている)が含まれる。これらの薬の使用を含む治療法はしばしば費用が高く、またしばしば効率が悪い。したがって、黄体変性症の治療のための代替の有益な細胞標的を特定し、これらの標的の周辺で好適な治療を開発することが明らかに必要である。
【0005】
血管新生は、がん細胞の増殖及び転移においても重要な役割を担っている。腫瘍には増殖及び新生血管を介した増殖に必要な栄養及び酸素が供給され、腫瘍に浸透する新生血管により転移しているがん細胞が血液循環系に入ることが可能になり、したがってがん細胞の転移を支える。主要な血管新生促進因子及びこれに関連する受容体である、VEGF-A165を標的とするいくつかの治療薬が、がんの治療に承認されている。例えば、ベバシズマブ(組み換え型ヒト化モノクローナル抗体)及びスニチニブ(特定のVEGF受容体を標的とする小型のキナーゼ阻害剤)が、それぞれ、商標アバスチン(登録商標)及びスーテント(登録商標)の下で市販されている。患者にとって、これらの従来薬は、明白な初期の臨床的有益性をもたらす。しかし、これらは確実にがんを治療することができない。治療された原発腫瘍はしばしば再発し、残っている悪性細胞は遠くの健康な組織に広がり、それによって転移を誘発する。
【0006】
がんでは、炎症及び血管新生は、2つの密接に統合されたプロセスである。実際、サイトカインの特定のファミリーのCXCLファミリーは、それらの配列中のアミノ酸トリプレットELR(グリシン-ロイシン-アルギニン)の有無に応じて血管新生促進シグナル又は抗血管新生シグナルを誘発する。血管新生促進ELR+CXCLサイトカイン(CXCL1-3、及び5-8)は、Gタンパク質共役受容体CXCR1及びCXCR2と結合することでその効果を仲介し、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)及びホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)経路の活性化をもたらす。ELR+CXCLの主要メンバーのCXCL8(インターロイキン8又はIL-8)は、血管新生、炎症、腫瘍形成、及び転移を促進する。さらに、CXCL8のRas依存性分泌は、新血管形成の促進による腫瘍の進行を促進し、そのCXCL2との結合は、前立腺、卵巣、脳、皮膚、及び腎臓等のいくつかのがん細胞の生存に関与する。一方で、CXCL1は、食道がん細胞及びメラノーマがん細胞の増殖に関与し、CXCL7は、乳がんにおけるVEGF-C及びVEGF-Dの調節を介するリンパネットワークの発達に関与する。
【0007】
現在臨床試験中のCXCR1阻害剤及びCXCR2阻害剤は少なく、主に肺炎症疾患の治療に向けたものである。既に販売されている又は臨床試験中であるCXCR拮抗薬の例は、例えば、レパリキシン(Reparixin)、DF2156A、SCH-527123、SB-225002、SB-656933、及びダニリキシン(Danirixin)(GSK-1355756)である。SB225002の可溶性類似体(GSK社によって開発された2-ヒドロキシフェニルウレア誘導体)が、炎症促進サイトカインCXCL1、7及び8の効果に拮抗することにより、in vitro及びin vivoで明細胞腎細胞がんモデル(786-O異種移植マウス)において腫瘍の成長、血管新生及び炎症を抑制することが報告されており、それによって、CXCL1,7,8/CXCR1/CXCR2軸(axis)が、がんにおいて観察される慢性的な血管新生及び炎症の治療のための適切な標的であることが明確に示されている。
【0008】
したがって、がん及び/又は黄斑変性等の望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患を治療するために、CXCR1/CXCR2受容体を標的とし、炎症及び血管新生を同時に対処できる、新規の拮抗薬を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DF2156A
【文献】SCH527123
【文献】SB225002
【文献】SB656933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この文脈において、驚くべきことに本発明者らは、式(I)のCXCR1受容体拮抗薬及びCXCR2受容体拮抗薬が、がんの3つの主要な特徴に作用することによってがんを治療するために有用であることを特定し実証した。実際、式(I)の化合物、及びより詳細には化合物#1は、腫瘍の成長の抑制に加えて血管新生及び炎症の両方に対する二重の活性を発揮する。本発明者らは、さらに驚くべきことに、式(I)のCXCR1及びCXCR2受容体拮抗薬、特に化合物#3及び#1は、黄斑変性の治療に有用であることを特定した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、黄斑変性の治療に使用するための、式(II):
【化1】
(式中:
YはNH又はSであり;
R
1は水素原子、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素原子、ハロゲン原子、(C
1~C
6)アルキル基、又は(C
1~C
6)アルキルオキシ基を表す)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体に関する。
【0012】
特定の一実施形態において、黄体変性は湿性黄斑変性又は乾性黄斑変性、好ましくは湿性黄斑変性である。
【0013】
さらに特定の一実施形態において、YはSであり、R1は(C1~C6)アルキルオキシ基である。
【0014】
黄体変性、特に湿性黄体変性又は乾性黄体変性の治療に使用するための、好適な式(II)の化合物は、1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(о-トリル)ウレアである。
【0015】
本発明はさらに、がんの治療に使用するための、式(I):
【化2】
(式中:
R
1は、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は、独立して水素、ハロゲン、又は(C
1~C
6)アルキル基を表し、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C
1~C
6)アルキル基である)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体であって、
前記式(I)の化合物は、
・1-(4-クロロフェニル)-3-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-o-トリルウレア;及び
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-m-トリルウレア:
からなる群において選択される化合物ではない、化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体に関する。
【0016】
特定の一実施形態において、R1は、ニトロ基、メチル基、及びエトキシ基からなる群において選択される基である。
【0017】
さらに特定の一実施形態において、R2′、R2′′、及びR2′′′は、独立して水素、塩素原子、臭素原子、又はメチル基を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、他方の置換基は塩素原子、臭素原子又はメチル基である。
【0018】
好ましい一実施形態において、R1はニトロ基であり、R2′、R2′′、及びR2′′′は、独立して水素、塩素原子又は臭素原子を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基は塩素原子又は臭素原子である。
【0019】
がんの治療に使用するための、好適な式(I)の化合物は、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:及び
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される化合物である。
【0020】
さらに好ましい一実施形態において、がんは、髄芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、又はトリプルネガティブ乳がんである。
【0021】
特定の一実施形態において、本発明は、シスプラチン、オキサリプラチン、又はカルボプラチンに対する耐性、好ましくはシスプラチンに対する耐性がある対象における頭頸部がんの治療に使用するための、本明細書で規定する式(I)の化合物に関する。
【0022】
さらに特定の一実施形態において、本発明は、スニチニブ、アキシチニブ、又はカボザンチニブに対する耐性、好ましくはスニチニブに対する耐性がある対象における腎臓がんの治療に使用するための、本明細書で規定する式(I)の化合物に関する。
【0023】
本発明のさらなる目的は、がんの治療における使用のための、本明細書で規定する式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含む、医薬組成物である。
【0024】
特定の一実施形態において、前記組成物は1~1000mg/kg BW、好ましくは10~250mg/kg BW、より好ましくは50~100mg/kg BWの用量で投与される。
【0025】
さらなる特定の一実施形態において、前記組成物は経口経路又は非経口経路により、好ましくは腹腔内経路により投与される。
【0026】
本発明のさらなる目的は、髄芽腫、頭頸部がん及び腎臓がんからなる群において選択されるがんの治療に使用するための、式(II):
【化3】
(式中:
YはNH又はSであり;
R
1は水素原子、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は、独立して水素原子、ハロゲン原子、(C
1~C
6)アルキル基、又は(C
1~C
6)アルキルオキシ基を表す)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体である。
【0027】
髄芽種、頭頸部がん及び腎臓がんからなる群において選択されるがんの治療に使用するための、好適な式(II)の化合物は、
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される化合物である。
【0028】
本発明のさらなる目的は、
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される、化合物、その塩又は互変異性体である。
【0029】
別の目的は、この化合物及び医薬的に許容される担体を含む、医薬である。さらなる目的は、医薬品としての使用のためのこの化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】5μMの化合物#1及び化合物#2での処理後、正常細胞及び悪性細胞によって発現される初期(Annexin AV)アポトーシスマーカー及び後期(ヨウ化プロピジウム、PI)アポトーシスマーカーのFACS分析による観察。CT:ネガティブコントロール。
【
図2】化合物#1は感受性及びスニチニブ耐性786-O細胞に対して細胞毒性効果及び細胞増殖抑制効果を発揮する;A,B:ナイーブ(786-O,A)、及びスニチニブ耐性(786-R,B)786-O細胞を、化合物#1又はスニチニブ(1~10μM)で48時間処理した。細胞生存率をXTTアッセイによって測定した;C:786細胞及び786-R細胞を2.5μMの化合物#1で48時間処理した。細胞をメーカーの指示に従ってPI/Annexin-V-fluo染色キットで染色した。ヒストグラムは、annexin-V
+/PI
-細胞(青色バー)及びannexin-V
+/PI
+細胞(赤色バー)の両方を示す;D,E:786-O(D)、786-R(E)を2.5μMの化合物#1又は2.5μMのスニチニブで24時間~96時間処理した。細胞代謝をXTTアッセイによって測定した;F:細胞を、2.5μM及び5μMの化合物#1、並びに2.5μMのスニチニブで48時間処理した。細胞をカスパーゼバッファーに溶解し、基質として0.2mMのAc-DEVD-AMCを用いてカスパーゼ-3活性を評価した。結果を任意単位(A.U.)として表し、結果は3回の独立した実験の平均値±標準偏差である;G:クローン形成アッセイ:RCC細胞(768及び786-R)を化合物#1又はスニチニブ(1μM)で処理し、10日後にGiemsa blueで染色した(2回(trice)繰り返した実験の代表的結果);H:786-O及び786-Rを2.5μMの化合物#1で1~48時間処理した。p-ERKレベル及びp-AKTレベルをイムノブロッティングによって測定した。ERK及びAKTはローディングコントロールとしての役割を果たした。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
【
図3】化合物#1は感受性及びシスプラチン耐性Cal27細胞に対して細胞毒性効果を発揮する;A,B:ナイーブ(Cal27,A)、及びシスプラチン耐性(Cal27,B)Cal27細胞を、化合物#1又はシスプラチン(1~10μM)で48時間処理した。細胞生存率をXTTアッセイによって測定した;C,D:Cal27(C)、cal27R(D)を2.5μMの化合物#1、2.5μMのシスプラチで24時間~96時間処理した。細胞代謝をXTTアッセイによって測定した。
【
図4】化合物#1は、初代RCC細胞に対して細胞毒性効果を発揮する;A:初代RCC細胞(TF及びCC)及び正常な腎細胞(15S)を化合物#1(1~5μM)で48時間処理した。細胞生存率をXTTアッセイによって測定した;B:初代RCC細胞(TF及びCC)を化合物#1(1μM又は2.5μM)で処理し、10日後にGiemsa blueで染色した(2回繰り返した実験の代表的結果);C:初代RCC細胞(TF及びCC)及び正常な腎細胞(15S)化合物#1(1~5μM)で48時間処理した。細胞をメーカーの指示に従ってPI/Annexin-V-fluos染色キットで染色した。ヒストグラムは、annexin-V+/PI-細胞(白抜きのバー(open bar))及びannexin-V+/PI+細胞(黒抜きのバー(filled bar))の両方を示す。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
【
図5】化合物#1は内皮細胞においてERL+CXCL/CXCR2軸を阻害する;A:HuVECを25ng/mlのCXCL8で1時間刺激した。膜結合性CXCR2タンパク質レベルをフローサイトメトリーで測定した;B:CXCL(50ng/ml)又はVEGFA(50ng/ml)-依存性HuVEC遊走を、化合物#1又はダニリキシンの存在/非存在下でボイデンチャンバーアッセイを用いて分析した;C:HuVECを異なる濃度の化合物#1の存在下で48時間培養した。細胞生存率をXTTアッセイによって測定した;D:HuVECを、0.25μM又は0.5μMの化合物#1の存在下で、100ng/mlのCXCL7又はCXCL5と一緒に48時間インキュベートした。細胞生存率をXTTアッセイによって測定した;E:HuVECを5μMの化合物#1で1時間前処理をし、次に50ng/mlのCXCL5で10分間刺激した。p-ERKレベルをイムノブロッティングによって分析した。ERK及びHSP60はローディングコントロールとしての役割を果たした。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
【
図6】In vivoマウス異種移植実験;A:腫瘍体積を、材料及び方法において記載したように毎週二回測定した。結果を平均値±標準偏差として示す;B:実験後に腫瘍の重量を測定した;C:実験(70日目)後の動物の重量;D:無処置マウス及び処置マウスのヒトKi-67発現。増殖細胞の数を、全細胞数に対する共局在化した4,6ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)/Ki-67陽性細胞の割合を計算することによって測定した;E及びF:腫瘍溶解物におけるpERK、ERK、pAKT及びAKTのレベルをイムノブロッティングによって測定した。グラフは非リン酸化ERK又はAKTに対するpAKT(F)又はpERK(E)の割合を表す;G:腫瘍におけるマウスCD31mRNAのレベルをqPCRによって測定した;H,I,J,K:腫瘍におけるヒトVEGFA、CXCL5、CXCL7及びCXCL8のmRNAのレベルをqPCRによって測定した。
【
図7】化合物#1による、髄芽腫細胞の増殖の抑制。細胞を、表示された日の間1μMの化合物#1で処理した又は処理を行わなかった。細胞を表示された日に数えた。
*P<0.05;
**P<0.01;
***P<0.001。
【
図8】化合物#1による、髄芽腫細胞の増殖の抑制。クローン形成試験;
***P>0.001。
【
図9】黄斑変性に対する化合物#1及び化合物#3の評価。14日目の臨床血管造影:化合物#1及び化合物#3で処理したマウスに対する、病斑部の強度を0~3のスコア(0:漏れ無し;1:軽い強度;2:中程度の強度;3:非常に強いマーキング)によって評価した。病斑部の強度が報告され、それぞれのポイントが病変部に相当している。それぞれのマウスの目に対して3つの病変を行った;
***P>0.05。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明者らは、式(I)及び式(II)の化合物ががんの治療に対するCXCR1/CXCR2受容体の拮抗薬としての治療上の関心を有することを特定した。これらの化合物は、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患の治療に対しても関心を引く。実施例で実証されているように、これらの化合物は、血管新生、炎症、及び腫瘍の成長に対する効果を発揮することで3重の抗がん活性を有する。したがってこれらの化合物はCXCR1及びCXCR2が過剰に発現しているがん、例えば骨髄腫、頭頸部がん、腎臓がん、及びトリプルネガティブ乳がんの治療に特に適している。本発明者らはさらに驚くべきことに、本発明の化合物、より詳細には化合物#1は、従来薬のスニチニブ及びシスプラチン(これらはそれぞれ現在の腎臓がん及び頭頸部がんのための治療のゴールデンスタンダードである)に対する耐性があるがん細胞に対して有意な活性示すことを特定した。本発明者らは驚くべきことに、本発明の化合物、より詳細には化合物#3及び化合物#1は、黄斑変性の治療に対して治療上の関心を有することを特定した。
【0032】
本発明によると、以下の用語は下記の意味を有する:
式(I)及び式(II)の化合物には、医薬的に許容されるその塩、それらの互変異性体、光学異性体、ジアステレオマー、これらの混合物のラセミ体、水和物及び溶媒和物が含まれる。特に、式(I)及び式(II)の化合物には、これらの互変異性体が含まれる。
【0033】
式(I)の化合物の互変異性体は、以下の式を有してもよい:
【0034】
【化4】
式中、R
1、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は本明細書で定義されるようなものである。
【0035】
式(II)の化合物の互変異性体は、以下の式を有してもよい:
【化5】
式中、Y、R
1、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は本明細書で定義されるようなものである。
【0036】
本明細書において例えばC1~C3又はC1~C6等の接頭語を用いて記載される用語は、C1~C2又はC1~C5等のより少ない数の炭素原子でも使用され得る。例えば、「C1~C3」という用語が使用される場合、対応する炭化水素鎖は1~3個の炭素原子、特に1、2又は3個の炭素原子を含んでもよいことを意味する。例えば、「C1~C6」という用語が使用される場合、対応する炭化水素鎖は1~6個の炭素原子、特に1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含んでもよいことを意味する。
【0037】
「アルキル」という用語は、飽和の、直鎖又は分枝脂肪族基を表す。「(C1~C3)アルキル」という用語は、より詳細には、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルを意味する。「(C1~C6)アルキル」という用語は、より詳細には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル又はヘキシルを意味する。好ましい一実施形態において、「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はtert-ブチル、より好ましくはメチルである。
【0038】
「アルキルオキシ」又は「アルコキシ」という用語は、-O-(エーテル)結合によって分子に結合されている前述で定義したアルキル基に対応する。(C1~C3)アルキルオキシには、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、及びイソプロピルオキシが含まれる。(C1~C6)アルキルオキシには、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシが含まれる。好ましい一実施形態において、「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」は、エトキシである。
【0039】
「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子に対応し、好ましくは塩素原子又は臭素原子、より好ましくは塩素に対応する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される塩」という用語には、無機酸塩及び有機酸塩が含まれる。好適な無機酸の代表例には、塩酸(hydrochloric)、臭化水素酸)、ヨウ化水素酸、リン酸等が含まれる。好適な有機酸の代表例には、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸等が含まれる。医薬的に許容される追加の無機酸塩又は有機酸塩のさらなる例には、J. Pharm. Sci. 1977, 66, 2、並びにP. Heinrich Stahl及びCamille G. Wermuth(2002年)により編集されたHandbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Useに記載されている医薬的に許容される塩が含まれる。好ましい一実施形態において、塩は塩酸塩である。
【0041】
<化合物>
したがって、本発明は、がんの治療に使用するための、式(I):
【化6】
(式中:
R
1は、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素、ハロゲン、又は(C
1~C
6)アルキル基を表し、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C
1~C
6)アルキル基である)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体であって、
前記式(I)の化合物は、
・1-(4-クロロフェニル)-3-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3-フルオロフェニル)-3-(6-メトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-o-トリルウレア;及び
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-m-トリルウレア:
からなる群において選択される化合物ではない、化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体に関する。
【0042】
特定の一実施形態において、式(I)の化合物は、R1がニトロ基である化合物である。
【0043】
特定の一実施形態において、式(I)の化合物は、R1が(C1~C6)アルキル基である化合物である。
【0044】
特定の一実施形態において、式(I)の化合物は、R1が(C1~C6)アルキルオキシ基である化合物である。
【0045】
さらなる特定の一実施形態において、式(I)の化合物は、R1がニトロ基、メチル基、及びエトキシ基からなる群において選択される基である化合物である。
【0046】
前述で定義したように、使用のための式(I)の化合物は、R2′、R2′′、及びR2′′′が独立して水素、ハロゲン、又は(C1~C6)アルキル基を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C1~C6)アルキル基である化合物である。特定の一実施形態において、R2′、R2′′、及びR2′′′は、独立して水素、塩素原子、臭素原子又はメチル基を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基は塩素原子、臭素原子又はメチル基である。
【0047】
表現「R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C1~C6)アルキル基である化合物である」は、特に:
-R2′及びR2′′は水素原子であり、R2′′′はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又は(C1~C6)アルキル基、好ましくはメチル基である;
-R2′及びR2′′′は水素原子であり、R2′′はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又は(C1~C6)アルキル基、好ましくはメチル基である;及び
-R2′′及びR2′′′は水素原子であり、R2′はハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又は(C1~C6)アルキル基、好ましくはメチル基である
を意味する。
【0048】
好ましい一実施形態において、使用のための式(I)の化合物は、
R1がニトロ基であり;及び
R2′、R2′′、及びR2′′′が独立して水素、塩素原子又は臭素原子を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基は塩素原子又は臭素原子である化合物である。
【0049】
さらに好ましい一実施形態において、使用のための式(I)の化合物は、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:及び
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
からなる群において選択される。
【0050】
本発明はさらに、髄芽腫、頭頸部がん及び腎臓がんからなる群において選択されるがんの治療に使用するための、式(II):
【化7】
(式中:
YはNH又はSであり;
R
1は水素原子、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素原子、ハロゲン原子、(C
1~C
6)アルキル基、又は(C
1~C
6)アルキルオキシ基を表す)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体に関する。
【0051】
特定の一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、
YはNH又はSであり;
R1は水素原子、ニトロ基、メチル基、及びエトキシ基からなる群において選択される基であり;
R2′、R2′′、及びR2′′′は独立して水素原子、塩素原子、メチル基、又はメトキシ基を表す、化合物である。
【0052】
さらなる特定の一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、
YはNH又はSであり;
R1は水素原子であり;
R2′、R2′′、及びR2′′′は独立して水素原子、塩素原子、又はメトキシ基を表す、化合物である。
【0053】
さらなる特定の一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、
YはNH又はSであり;
R1はニトロ基であり;
R2′、R2′′、及びR2′′′は独立して水素原子又は塩素原子を表す、化合物である。
【0054】
好ましい一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、R2′、R2′′、及びR2′′′が独立して水素原子、ハロゲン、好ましくは塩素原子、(C1~C6)アルキル基、好ましくはメチル基、又は(C1~C6)アルキルオキシ基、好ましくはメトキシ基を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素原子であり、その他の置換基はハロゲン、好ましくは塩素原子、(C1~C6)アルキル基、好ましくはメチル基、又は(C1~C6)アルキルオキシ基、好ましくはメトキシ基である、化合物である。
【0055】
さらに好ましい一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、R2′、R2′′、及びR2′′′が独立して水素原子又はハロゲンであり、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される1つ又は2つの置換基は水素原子であり、その他の1つの置換基又は2つの置換基は、ハロゲン、好ましくは塩素原子である、化合物である。
【0056】
より好ましい一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-フェニルウレア;
・1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(2-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(3-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア;及び
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-メトキシフェニル)ウレア
からなる群において選択される。
【0057】
さらにより好ましい一実施形態において、使用のための式(II)の化合物は、
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
からなる群において選択される。
【0058】
本発明はさらに、
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
からなる群において選択される、化合物、その塩又は互変異性体に関する。
【0059】
本発明は、がんの治療に使用するための、N-N′-ジアリールウレア及びN-N′-チオウレアにも関する。
【0060】
より詳細には、本発明のさらなる目的は、がん、好ましくは髄芽腫、頭頸部がん又は腎臓がんの治療に使用するための、式(III):
【化8】
(式中:
XはO又はSであり;
R
1′、R
1′′、及びR
1′′′は独立して水素原子、(C
1~C
6)アルキル基、ハロゲン又はヒドロキシ基を表し;及び
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素原子又はハロゲンを表す)
の化合物又は医薬的に許容されるその塩である。
【0061】
特定の一実施形態において、使用のための式(III)の化合物は、
XはO又はS、好ましくはOであり;
R1′、R1′′、及びR1′′′は独立して水素原子、メチル基、塩素原子又はヒドロキシ基を表し;及び
R2′、R2′′、及びR2′′′は独立して水素又は塩素原子を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素原子であり、その他の置換基は塩素原子である、がん、好ましくは髄芽腫、頭頸部がん又は腎臓がんの治療に使用するための化合物である。
【0062】
好ましい一実施形態において、使用のための式(III)の化合物は、
・1-(2-クロロフェニル)-3-(p-トリル)ウレア;
・1-(3-クロロフェニル)-3-(p-トリル)ウレア;
・1-(4-クロロフェニル)-3-(p-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(2,4-ジクロロフェニル)ウレア;
・1-(3-クロロフェニル)-3-(2,4-ジクロロフェニル)ウレア;
・1-(4-クロロフェニル)-3-(2,4-ジクロロフェニル)ウレア;
・1-フェニル-3-(p-トリル)チオウレア;
・1-(2,4-ジクロロフェニル)-3-フェニルチオウレア;
・1,3-ビス(3-クロロフェニル)ウレア;
・1,3-ビス(4-クロロフェニル)ウレア;
・1-(3-クロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)ウレア;及び
・1-(4-クロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)ウレア
からなる群において選択される。
【0063】
血管新生を調節するそれらの能力により、本発明の化合物は、望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患、例えば黄斑変性、より好ましくは加齢性黄斑変性の治療のために使用され得る。
【0064】
したがって本発明のさらなる目的は、望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患、例えば黄斑変性、特に加齢性黄斑変性の治療に使用するための前述で定義した式(I)又は式(II)の化合物である。
【0065】
したがって本発明の特定の目的は、黄斑変性の治療に使用するための、式(II):
【化9】
(式中:
YはNH又はSであり;
R
1は水素原子、ニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素原子、ハロゲン原子、(C
1~C
6)アルキル基、又は(C
1~C
6)アルキルオキシ基を表す)
の化合物、医薬的に許容されるその塩又は互変異性体である。
【0066】
特定の一実施形態において、黄斑変性は湿性黄斑変性又は乾性黄斑変性である。好ましくは、黄斑変性は湿性黄斑変性である。
【0067】
さらなる特定の一実施形態において、黄斑変性は加齢性黄斑変性である。好ましくは、黄斑変性は加齢性湿性黄斑変性症である。
【0068】
好ましい一実施形態において、黄斑変性の治療に使用するための式(II)の化合物は、YがSである化合物である。
【0069】
さらに好ましい一実施形態において、黄斑変性の治療に使用するための式(II)の化合物は、R1が(C1~C6)アルキルオキシ基、好ましくはエトキシである化合物である。
【0070】
より好ましい一実施形態において、黄斑変性の治療に使用するための式(II)の化合物は、YがSであり、R1が(C1~C6)アルキルオキシ基、好ましくはエトキシである化合物である。
【0071】
さらに好ましい一実施形態において、望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、及びより好ましくは加齢性黄斑変性の治療に使用するための式(II)の化合物は、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-フェニルウレア;
・1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(2-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(3-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア;
・1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-メトキシフェニル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(imidazole)-2-イル)ウレア
からなる群において選択される。
【0072】
より好ましい一実施形態において、前述の化合物は1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレアである。
【0073】
本発明のさらなる特定の目的は、望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、及びより好ましくは加齢性黄斑変性の治療に使用するための、式(I):
【化10】
(式中:
R
1はニトロ基、(C
1~C
6)アルキル基、及び(C
1~C
6)アルキルオキシ基からなる群において選択される基であり;
R
2′、R
2′′、及びR
2′′′は独立して水素、ハロゲン、又は(C
1~C
6)アルキル基を表し、R
2′、R
2′′、及びR
2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C
1~C
6)アルキル基である)
の化合物又は医薬的に許容されるその塩であって、
前記式(I)の化合物は、
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-o-トリルウレア;及び
・1-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-m-トリルウレア:
からなる群において選択される化合物ではない、化合物又は医薬的に許容されるその塩である。
【0074】
特定の一実施形態において、黄斑変性の治療に使用するための式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩は、R1が(C1~C6)アルキルオキシ基であり、R2′、R2′′、及びR2′′′は独立して水素、ハロゲン、又は(C1~C6)アルキル基を表し、R2′、R2′′、及びR2′′′の中から選択される2つの置換基は水素であり、その他の置換基はハロゲン又は(C1~C6)アルキル基である、化合物である。
【0075】
本発明の好ましい目的は、望ましくない過度な血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、及びより好ましくは加齢性黄斑変性の治療に使用するための、
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;及び
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
からなる群において選択される化合物又はその塩、好ましくは1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア又はその塩である。
【0076】
<用途>
本発明によると、以下の用語は下記の意味を有する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」又は「治療すること」という用語は、患者の健康状態を改善することを意図した、疾患の治療、予防及び遅滞等の任意の行為を指す。
【0078】
特定の実施形態において、前述の用語は疾患の改善若しくは根絶、又はそれに関連する症状を指す。他の実施形態において、この用語は、そのような疾患を有する患者に一つ又は複数の治療薬を投与した結果、疾患の拡散又は悪化の最小限に抑えることを指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、互換可能であり、動物、好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくはヒトを指す。
【0080】
「分量」、「量」、及び「用量」という用語は、本明細書において互換可能に使用され、分子の絶対定量を指してもよい。
【0081】
本明細書で使用される場合、「活性成分(active principle、active ingredient)」及び「医薬品有効成分」という用語は同意義であり、治療効果を有する医薬組成物の成分を指す。詳細には、前述の用語は式(I)又は式(II)の化合物を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、有効成分、又は本発明による医薬組成物によって誘発される効果を指し、疾患や病気の出現若しくは進行を予防する又は遅滞させることができ、又は疾患や病気、特にがん若しくは黄斑変性等の望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる病気を治療する又はその影響を弱めることができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、疾患、特にがん又は望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる病気の有害な影響を予防、除去又は軽減する有効成分又は医薬品化合物の量を指す。
【0084】
投与されるべき量は、治療対象、疾患の性質等に応じて、当業者によって適応され得ることは明らかである。特に、投与の用量及び処方は、治療する疾患の性質、ステージ及び重症度、並びに治療対象の体重、年齢及び国際保健(global health)、並びに医者の判断に適応されてもよい。
【0085】
本明細書で使用される場合、「賦形剤(excipient)又は医薬的に許容される担体」という用語は、医薬組成物に存在する活性成分以外の任意の成分を指す。その添加は最終生成物の特定の一貫性、又は他の物理的若しくは味覚的な特性を与えることを目的とし得る。賦形剤又は医薬的に許容される担体は、あらゆる活性成分との相互作用、特に化学的な相互作用がないものでなければならない。
【0086】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、癌の原因となる細胞の典型的な特徴(例えば無制御な増殖、不死、転移能、急速な成長及び増殖率、並びに特定の特徴的な形態学的特色等)を持つ細胞の存在を指す。がんは、固形腫瘍又は造血腫瘍であり得る。より詳細には、がんは、白血病、腎臓がん、髄芽腫、頭頸部がん、及びトリプルネガティブ乳がん等のCXCR1及びCXCR2受容体を過剰発現するがんである。「トリプルネガティブ乳がん」という表現は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)及びHER2/neuの遺伝子を発現していない乳がんを指す。好ましい一実施形態において、がんは腎臓がん、髄芽腫、頭頸部がん、又はトリプルネガティブ乳がん、好ましくは、腎臓がん又は頭頸部がん、より好ましくは腎臓がんである。
【0087】
本明細書で使用される場合、「望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患」という表現は、望ましくない過度の(新生)血管形成又は望ましくない血管透過を意味する。前述の表現は、特に異常に増加した血管新生を意味する。より詳細には、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患には、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化症、強皮症;角膜移植片の血管新生、血管新生緑内障、糖尿病性網膜症、新生血管によって誘発される角膜疾患、黄斑変性又は加齢性黄斑変性、翼状片、網膜変性、後水晶体線維形成、顆粒性結膜炎等の血管新生に関連する眼疾患;関節炎等の慢性炎症性疾患、乾癬、毛細血管拡張、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、にきび等の皮膚疾患、アルツハイマー病、及び肥満が含まれるが、これらに限定されない。特に、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患は、湿性及び乾性黄斑変性、好ましくは加齢性黄斑変性を含む黄斑変性である。
【0088】
本発明は、がんの治療に使用するための本明細書で定義された式(I)の化合物又は医薬的なその塩に関する。
【0089】
本発明はさらに、本明細書で定義された式(I)の化合物又は医薬的なその塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含むがんを治療するための方法に関する。
【0090】
本発明は、がんを治療するための医薬品、薬剤、又は医薬組成物の製造のための、本明細書で定義された式(I)の化合物の使用にも関する。
【0091】
本発明は、
・髄芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、若しくはトリプルネガティブ乳がんの中から選択されるがん、好ましくは頭頸部がん又は腎臓がん、より好ましくは腎臓がんの治療に使用するための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩;
・本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、髄芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、及びトリプルネガティブ乳がんからなる群において選択されるがんを治療するための方法;及び
・髄芽腫、頭頸部がん、腎臓がん、及びトリプルネガティブ乳がんからなる群において選択されるがんを治療するための医薬品、薬剤、又は医薬組成物の製造のための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物の使用
にも関する。
【0092】
式(I)及び式(II)の本発明の化合物、より詳細には化合物#1は、現行の治療に耐性がある対象におけるがんの治療に驚くほど効率的である。
【0093】
したがってより詳細には、本発明は、
・シスプラチン、オキサリプラチン、若しくはカルボプラチンに対する耐性、好ましくはシスプラチンに対する耐性がある対象における頭頸部がんの治療に使用するための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩;
・本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩の有効量を、シスプラチン、オキサリプラチン、若しくはカルボプラチンに対する耐性、好ましくはシスプラチンに対する耐性がある対象に投与することを含む、頭頸部がんを治療するための方法;及び
・シスプラチン、オキサリプラチン、若しくはカルボプラチンに対する耐性、好ましくはシスプラチンに対する耐性がある対象における、頭頸部がんを治療するための医薬品、薬剤、又は医薬組成物の製造のための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物の使用
に関する。
【0094】
本発明はさらに、
・スニチニブ、アキシチニブ、若しくはカボザンチニブに対する耐性、好ましくはスニチニブに対する耐性がある対象における腎臓がんの治療に使用するための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩;
・本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩の有効量を、スニチニブ、アキシチニブ、若しくはカボザンチニブに対する耐性、好ましくはスニチニブに対する耐性がある対象に投与することを含む、腎臓がんを治療するための方法;及び
・スニチニブ、アキシチニブ、若しくはカボザンチニブに対する耐性、好ましくはスニチニブに対する耐性がある対象における、腎臓がんを治療するための医薬品、薬剤、又は医薬組成物の製造のための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物の使用
に関する。
【0095】
本発明のさらなる目的は、がんの治療に使用するための、本明細書で定義された式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含む医薬組成物である。
【0096】
本発明のさらなる目的は、髄芽腫、頭頸部がん、及び腎臓がんからなる群において選択されるがんの治療に使用するための、本明細書で定義された式(II)の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含む医薬組成物である。
【0097】
本発明はさらに、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、より詳細には加齢性黄斑変性の治療に使用するための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩に関する。
【0098】
本発明はさらに、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物又は医薬的なその塩の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、より詳細には加齢性黄斑変性を治療するための方法に関する。
【0099】
本発明は、望ましくない過度の血管新生によって特徴づけられる疾患、特に黄斑変性、より詳細には加齢性黄斑変性を治療するための医薬品、薬剤、又は医薬組成物の製造のための、本明細書で定義された式(I)又は式(II)の化合物の使用にも関する。
【0100】
特定の一実施形態において、本明細書で定義された医薬組成物は、1~1000mg/kg BW、好ましくは10~250mg/kg BW、より好ましくは50~100mg/kg BWの用量で、式(I)又は式(II)の化合物を含む。したがって本発明の目的は、本明細書で開示された使用のための医薬組成物であって、前述の組成物は1~1000mg/kg BW、好ましくは10~250mg/kg BW、より好ましくは50~100mg/kg BWの用量で投与される。本明細書で使用される場合、「BW」という用語は、体重を意味する。
【0101】
特定の一態様において、本発明の使用のための化合物及び医薬組成物は、1、2、3、4、5、6又は7週間の間、週に4、5、6又は7日投与され得る。
【0102】
任意選択で、2つの治療サイクルの間に、例えば1、2、3、4または5週間の休止期間を任意選択で設けて、複数の治療サイクルを実施し得る。
【0103】
投与経路は、局所、経皮、経口、直腸、舌下、鼻腔内、髄腔内、腫瘍内又は非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内及び/若しくは皮内を含む)であり得る。好ましくは、投与経路は、経口又は非経口である。より好ましくは、がんの治療に関係する場合、投与経路は腹腔内である。医薬組成物は、前述の経路の一つ又は複数に適合する。医薬組成物は、好ましくは好適な滅菌溶液の注射又は静脈内注入により、又は消化管を経由する液状若しくは固形薬の形態で投与される。より詳細には、医薬組成物は、注射経路により投与される。
【0104】
医薬組成物は、医薬的に許容される溶媒中で溶液として、又は適切な医薬的溶媒若しくは賦形剤 (vehicle) 中で乳剤、懸濁剤若しくは分散体として、又は固形賦形剤を含有する丸剤、錠剤若しくはカプセル剤として、当技術分野において公知の方法で製剤化することができる。
【0105】
経口投与に適した本発明の製剤は、所定の量の有効成分をそれぞれ含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤若しくはトローチ剤として別個の単位の形態;粉剤若しくは顆粒剤の形態;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁剤の形態;又は水中油型乳剤若しくは油中水型乳剤の形態とすることができる。
【0106】
直腸経路用製剤は、活性成分及び担体(例えばカカオ脂)を組み合わせた坐剤の形態、又は浣腸の形態であってもよい。
【0107】
非経口投与に適した製剤は、好都合には、好ましくはレシピエントの血液と等張な、無菌で油性又は水性の有効成分の調製物を含む。そのような製剤は全て、他の医薬的に許容され、無毒性の助剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、結合剤、色素、乳化剤又は香味物質等も含有することができる。本発明の製剤は、医薬的に許容される担体と共に有効成分、及び任意選択で他の治療成分を含む。担体は、製剤の他の成分と相溶性であり、そのレシピエントにとって有害とならないという意味で、「許容される」ものでなければならない。医薬組成物は、有利には、適切な無菌溶液の注射若しくは静脈内注入により、又は消化管を経由する経口薬として適用される。これらの化学療法剤の大半の安全で有効な投与方法が、当業者に公知である。さらに、これらの投与は標準的な文献に記載されている。
【0108】
本発明の別の目的は、
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
からなる群において選択される化合物又はその塩;及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0109】
本発明のさらなる目的は、医薬品としての使用のための、
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア;
・1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;
・1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア:
・1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア;及び
・1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
からなる群において選択される化合物又はその塩である。
【実施例】
【0110】
実施例A:化学的性質
【0111】
1.概説
メタノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル及びジクロロメタンをCarlo Erba社から購入した。無水DMF(99.8%隔膜下保存)をSigma Aldrich社から購入した。全ての化学製品をAldrich社、Fisher社又はAlfa Aesar社から購入した。薄層クロマトグラフィー(TLC)をプレコート Merck 60 GF254シリカゲルプレート上で実行し、はじめに紫外線(254nm及び360nm)下での可視化により明らかにされ、1H NMR及び13C NMRスペクトルをBruker Advance 200 MHz又はBruker Advance 400 MHz又はBruker Advance 500 MHzのスペクトロメーターで記録した。質量スペクトル(ESI-MS)をBruker(Daltonics Esquire 3000+)で記録した。HRMSスペクトルを、ThermoFisher Q Exactive(ESI-MS)でm/z200での分解能140000において記録した。化合物の純度を、さらにJASCO PU-2089装置でのHPLC分析によって以下の方法を用いてさらに分析した:
・方法1:Phenomenex Jupiter C18、5μm、250×300mm、300A。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:水100%。溶離液B:CH3CN100%。グラジエント:5分間30%のBでのアイソクラティック、続いて30分かけて30%のBから90%のBまで勾配をつけ(ramp)、続いて1分以内に初期条件に戻す。
・方法2:Supelco分析カラムAscentis Express C18、100mm×46mm、5μm。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:1‰のギ酸を有する水、溶離液B:1‰のギ酸を有するCH3CN。0~1分:30%のB;1~6分:30~100%のB;6~26分:100%のB;26~27分:100~30%のB;27~30分:30%のB。
・方法3:Supelco分析カラムAscentis Express C18、100mm×46mm、5μm。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:1‰のギ酸を有する水、溶離液B:1‰のギ酸を有するCH3CN。0~1分:30%のB;1~6分:30~100%のB;6~8.5分:100%のB;8.5~9分:100~30%のB;9~16分:30%のB。
・方法4:Supelco分析カラムAscentis Express C18、100mm×46mm、5μm。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:1‰のギ酸を有する水、溶離液B:1‰のギ酸を有するCH3CN。0~1分:30%のB;1~6分:30~100%のB;6~8.5分:100%のB;8.5~9分:100~30%のB。
・方法5:Supelco分析カラムAscentis Express C18、100mm×46mm、5μm。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:1‰のギ酸を有する水、溶離液B:1‰のギ酸を有するCH3CN。0~1分:30%のB;1~6分:30~100%のB;6~8.5分:100%のB;8.5~9分:100~30%のB;9~13分:30%のB。
・方法6:Waters Alliance 2695、Supelco Ascentis Express C18、100mm×46mm、5μm。UV検出:214;254;280;320nm。溶離液A:1‰のギ酸を有する水、溶離液B:1‰のギ酸を有するCH3CN。0~10分:10%のB;10~18分:10~95%のB;18^20分:95%のB;20~24分:95~10%のB;24~25分:10%のB。
【0112】
<方法Aに従ったウレアの調整のための基本手順>
室温で、DMF(5mL/100mg)中の対応する2-アミノベンザゾール(1.0当量)の溶液に、連続して水素化ナトリウム(油中で60%、1.5当量)を加え、20分後に対応するイソシアネート(1.0当量)を加えた。得られた溶液を反応が完了するまで90℃で攪拌した(一晩、約18時間)。室温まで冷却した後、混合物を酢酸エチル(20mL/100mg)で希釈し、水(20mL/100mg)で注意深く冷却した。反応混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチルで抽出した。混ぜ合わさった有機層を水、続いて飽和食塩水(brine)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残留物を、エタノールからの再結晶により、又はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、期待されたウレアをもたらした。
【0113】
<方法Bによるウレアの調製のための基本手順>
DMF(8mL/mmol)中の対応するアニリン(1.0当量)の溶液に、対応するイソシアネート(1.0当量)を加え、混合物を室温で一晩攪拌した。反応が完了した後、反応混合物を水(60mL/mmol)に注ぎ、沈殿物を集めてメタノール(2×8mL/mmol)及びジエチルエーテル(2×8mL/mmol)で洗浄した。
【0114】
2.化合物
【0115】
実施例#1:1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#1を、2-アミノ-6-ニトロベンゾチアゾール(500mg、2.56mmol)及び3-クロロフェニルイソシアネート(0.28mL、2.30mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色粉体(802mg、90%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.44 (s, 1H, N-H), 9.41 (s, 1H, N-H), 8.95 (d, J = 1.9 Hz, 1H, HAr), 8.23 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H, HAr), 7.76 (d, J = 8.8 Hz, 1H, HAr), 7.72 (s, 1H, HAr), 7.41 - 7.32 (m, 2H, HAr), 7.12 (dd, J = 8.9, 1.7 Hz, 1H, HAr); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6): δ 164.86, 153.40, 152.37, 142.54, 139.76, 133.29, 131.87, 130.57, 122.93, 121.85, 119.20, 118.73, 118.42, 117.53; HRMS-ESI(m/z): C14H10ClN4O3S+に対して[M+H]+を計算した:349.01567; 実測値: 349.01569. HPLC (λ280): 純度 100.0%; tR: 7.708分(方法5)。
【0116】
実施例#2:1-(2-クロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#2を、2-アミノ-6-ニトロベンゾチアゾール(500mg、2.56mmol)及び2-クロロフェニルイソシアネート(0.280mL、2.30mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した、白色粉体(810mg、91%)として表題の化合物を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.79 (s, 1H, N-H), 8.93 (s, 1H, N-H), 8.90 (d, J = 2.4 Hz, 1H, HAr), 8.17 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H, HAr), 8.12 (dd, J = 8.3, 1.2 Hz, 1H, HAr), 7.74 (d, J = 8.9 Hz, 1H, HAr), 7.47 (dd, J = 8.0, 1.3 Hz, 1H, HAr), 7.36 - 7.30 (m, 1H, HAr), 7.10 (td, J = 7.9, 1.4 Hz, 1H, HAr); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6): δ 164.50, 153.86, 151.28, 142.48, 134.53, 132.19, 129.37, 127.74, 124.73, 122.84, 121.66, 121.63, 119.80, 118.58; HRMS-ESI(m/z): C14H10ClN4O3S+に対して[M+H]+を計算した:349.01567; 実測値: 349.01569. HPLC (λ254): 純度 97.7%; tR: 10.642分(方法3)。
【0117】
実施例#3:1-(6-エトキシベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(o-トリル)ウレア
化合物#3を、2-アミノ-6-エトキシベンゾチアゾール(500mg、2.57mmol)及び2-トリルイソシアネート(0.319mL、2.57mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体(802mg、90%)。収率:774mg、92%。1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 10.97 (br. s, 1H, N-H), 8.64 (s, 1H, N-H), 7.86 (d, J = 7.7 Hz, 1H, HAr), 7.63 - 7.42 (m, 2H, HAr), 7.20 (t, J = 8.5 Hz, 2H, HAr), 7.09 - 6.89 (m, 2H, HAr), 4.05 (dd, J = 13.7, 6.6 Hz, 2H, CH2), 2.28 (s, 3H, CH3), 1.34 (t, J = 6.8 Hz, 3H, CH3); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 157.52, 154.98, 151.65, 143.04, 136.36, 132.58, 130.37, 127.97, 126.36, 123.64, 121.13, 120.41, 114.76, 105.54, 63.58, 17.81, 14.74; HRMS-ESI(m/z): C17H18N3O2S +に対して[M+H]+を計算した, 328.11142; 実測値: 328.11154; HPLC (λ280): tR: 10.567分 : 純度 97.0%(方法3)。
【0118】
実施例#4:1-(2-クロロフェニル)-3-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#4を、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール(500mg、3.05mmol)及び2-クロロフェニルイソシアネート(0.368mL、3.05mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体。収率:870mg、90%。1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.39 (s, 1H, N-H), 9.14 (s, 1H, N-H), 8.18 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 1H, HAr), 7.73 (s, 1H, HAr), 7.63 - 7.45 (m, 2H, HAr), 7.42 - 7.30 (m, 1H, HAr), 7.22 (dd, J = 8.3, 1.2 Hz, 1H, HAr), 7.12 (td, J = 7.6, 1.5 Hz, 1H, HAr), 2.40 (s, 3H, CH3); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 158.38, 151.37, 146.74, 134.91, 132.41, 131.37, 129.27, 127.64, 127.18, 124.24, 122.52, 121.48, 121.12, 119.52, 20.83; HRMS-ESI(m/z): C15H13ClN3OS+に対して[M+H]+を計算した, 318.04624; 実測値: 318.04630; HPLC (λ280): tR: 11.367分: 純度 99.2% (方法3)。
【0119】
実施例#5: 1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-フェニルウレア
化合物#5を、2-アミノベンズイミダゾール(133 mg, 1 mmol)及びフェニルイソシアネート(119 mg, 1 mmol)を用いて、基本手順(A)に従って合成し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン、9/1~4/6、v/v)により精製した。ベージュ色固体。収率:25.2 mg, 10 %。Rf (シクロヘキサン/EtOAc, 75/25, v/v) = 0.47; 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.16 (br. s, 2H, 2N-H), 9.57 (s, 1H, N-H), 7.57 (d, J = 7.1 Hz, 2H, HAr), 7.48 - 7.21 (m, 4H, HAr), 7.17 - 6.90 (m, 3H, HAr); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 154.04, 148.95, 139.36, 135.03 (2C), 128.83 (2C), 122.32, 120.95 (2C), 118.55 (2C), 112.88 (2C); ESI (m/z): C14H13N4O+に対して[M+H]+を計算した, 253.11, 実測値: 253.13; HPLC (λ280): tR: 5.1分; 純度 96.4 % (方法1)。
【0120】
実施例#6: 1-(1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア
化合物#6を、2-アミノベンズイミダゾール(133 mg, 1 mmol)及び4-クロロフェニルイソシアネート(154 mg, 1 mmol)を用いて、基本手順(A)に従って合成し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン、9/1~4/6、v/v)により精製した。ピンク色固体。収率:56.0 mg, 19 %。Rf (シクロヘキサン/EtOAc, 75/25, v/v) = 0.52; 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.33 (s, 2H, 2N-H), 9.61 (s, 1H, N-H), 7.63 (d, J = 8.6 Hz, 2H, HAr), 7.34 (d, J = 6.1 Hz, 4H, HAr), 7.07 (dd, J = 4.6, 3.4 Hz, 2H, HAr); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 149.68, 138.79, 138.62, 133.86, 128.58 (2C), 125.51, 121.12 (2C), 119.95 (2C), 119.75, 112.45 (2C); ESI (m/z): C14H12ClN4O+に対して[M+H]+を計算した, 287.07, 実測値 287.13; HPLC (λ280): tR: 8.9分: 純度 96.0 % (方法1)。
【0121】
実施例#7: 1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(2-クロロフェニル)ウレア
化合物#7を、2-アミノベンゾチアゾール(500 mg, 3.33 mmol)及び2-クロロフェニルイソシアネート(0.390 mL, 3.33 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体。収率:919 mg, 92%。 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.46 (br. s, 1H, N-H), 9.14 (br. s, 1H, N-H), 8.18 (d, J = 8.1 Hz, 1H, HAr), 7.94 (d, J = 7.2 Hz, 1H, HAr), 7.69 (d, J = 8.1 Hz, 1H, HAr), 7.52 (d, J = 7.4 Hz, 1H, HAr), 7.46 - 7.21 (m, 3H, HAr), 7.12 (t, J = 7.2 Hz, 1H, HAr); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 159.31, 151.50, 148.93, 134.93, 131.33, 129.39, 127.76, 126.03, 124.48, 123.10, 122.74, 121.71, 121.55, 119.95; HRMS-ESI(m/z): C14H11ClN3OS +に対して[M+H]+ を計算した, 304.03059; 実測値: 304.03064; HPLC (λ280): tR: 10.583 分: 純度 95.2% (方法3)。
【0122】
実施例#8: 1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(3-クロロフェニル)ウレア
化合物#8を、2-アミノベンゾチアゾール(500 mg, 3.33 mmol)及び3-クロロフェニルイソシアネート(0.410 mL, 3.33 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体。収率:930 mg, 92%。1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.17 (br. s, 1H, N-H), 9.41 (s, 1H, N-H), 7.90 (d, J = 7.3 Hz, 1H, HAr), 7.76 (d, J = 1.9 Hz, 1H, HAr), 7.63 (d, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.46 - 7.30 (m, 3H, HAr), 7.25 (td, J = 7.7, 1.2 Hz, 1H, HAr), 7.10 (dt, J = 7.1, 1.9 Hz, 1H, HAr); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 160.32, 153.03, 146.80, 140.27, 133.36, 130.70, 130.44, 126.05, 122.95, 122.50, 121.62, 118.71, 118.25, 117.28; HRMS-ESI(m/z): C14H11ClN3OS+に対して[M+H]+ を計算した, 304.03059; 実測値: 304.0306; HPLC (λ280): tR: 10.350 分: 純度 99.4% (方法3)。
【0123】
実施例#9: 1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-クロロフェニル)ウレア
化合物#9を、2-アミノベンゾチアゾール(500 mg, 3.33 mmol)及び4-クロロフェニルイソシアネート(511 mg, 3.33 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体。収率:889 mg, 88%。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.97 (br. s, 1H, N-H), 9.33 (s, 1H, N-H), 7.90 (d, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.64 (d, J = 7.7 Hz, 1H, HAr), 7.57 (d, J = 8.7 Hz, 2H, HAr), 7.43 - 7.34 (m, 3H, HAr), 7.28 - 7.21 (m, 1H, HAr); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 160.11, 152.74, 147.16, 137.66, 130.83, 128.77, 126.54, 126.04, 122.95, 121.60, 120.39, 118.95; HRMS-ESI(m/z): C14H11ClN3OS+に対して[M+H]+ を計算した, 304.03059; 実測値: 304.03076; HPLC (λ280): tR: 6.917 分: 純度 100.0% (方法4)。
【0124】
実施例#10: 1-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-3-(4-メトキシフェニル)ウレア
化合物#10を、2-アミノベンゾチアゾール(500 mg, 3.33 mmol)及び4-メトキシフェニルイソシアネート(496 mg, 3.33 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色固体。収率:897 mg, 90%。 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 10.81 (s, 1H, N-H), 9.00 (s, 1H, N-H), 7.90 (d, J = 7.8 Hz, 1H, HAr), 7.65 (d, J = 7.9 Hz, 1H, HAr), 7.50 - 7.33 (m, 3H, HAr), 7.23 (t, J = 7.5 Hz, 1H, HAr), 6.92 (d, J = 8.9 Hz, 2H, HAr), 3.73 (s, 3H, OCH3); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 159.85, 155.32, 152.26, 148.23, 131.45, 131.28, 125.95, 122.83, 121.49, 120.83 (2C), 119.37, 114.13 (2C), 55.19; HRMS-ESI(m/z): C15H14N3O2S+に対して[M+H]+ を計算した, 300.08012; 実測値: 300.08023; HPLC (λ280): tR: 10.092 分: 純度 97.3% (方法2)。
【0125】
実施例#11: 1-(3,5-ジクロロフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#11を、6-ニトロ-2-アミノベンゾチアゾール(4.00 g, 26.00 mmol)及び1,3-ジクロロ-5-イソシアナトベンゼン(4.50g, 24.00 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。黄色粉体。収率:6.44g, 70%。 1H NMR (400 MHz, Acetone-d6): δ 11.20 (br.s, 1H), 9.65 (br. s, 1H), 9.34 (s, 1H), 8.74 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.25 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.63 (s, 1H); 13C NMR (101 MHz, Acetone-d6): 165.6, 162.9, 144.5, 141.8, 135.8, 133.2, 123.7 (2C), 122.7, 120.4, 119.1, 118.4 (2C), 118.3; HRMS-ESI (m/z): C14H7Cl2N4O3Sに対して[M+H]+ を計算した, 382.97665 実測値: 382.97669; HPLC (λ254): 純度 98.0%; tR: 3.78 分 (方法6)。
【0126】
実施例#12: 1-(4-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#12を、6-ニトロ-2-アミノベンゾチアゾール(2.00g, 13.30 mmol)及び1-ブロモ-4-イソシアナトベンゼン(2.39g, 12.09 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色粉体。収率:3.77g, 79%。 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.33 (br. s, 1H), 9.37 (s, 1H), 8.99 (s, 1H), 8.25 (dd, J = 8.9, 2.3 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.52 (s, 4H), 7.43 (s, 1H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 164.85, 152.25, 142.52, 138.95, 137.61, 132.05, 131.71, 131.51, 121.83, 120.98, 120.23, 118.71, 114.89, 113.38; HRMS-ESI(m/z): C14H10BrN4O3Sに対して[M+H]+ を計算した, 392.9652; 実測値: 392.9652; HPLC (λ254): 純度 > 99.9 %; tR: 12.60 分 (方法6)。
【0127】
実施例#13: 1-(2-ブロモフェニル)-3-(6-ニトロベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ウレア
化合物#13を、6-ニトロ-2-アミノベンゾチアゾール(2.00g, 13.30 mmol)及び(420.50 mg, 2.80 mmol)及び1-ブロモ-2-イソシアナトベンゼン(500.00 mg, 2.50 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色粉体。収率:655.30 mg, 66%。 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.92 (br. s, 1H), 8.98 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 8.86 (s, 1H), 8.23 (dd, J = 8.9, 2.0 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.40 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.08 (t, J = 7.5 Hz, 1H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6): 164.71, 162.38, 154.04, 151.50, 142.62, 135.68, 132.76, 132.25, 128.36, 125.72, 122.92, 121.81, 119.99, 118.76, 114.16; HRMS-ESI(m/z): C14H10BrN4O3Sに対して[M+H]+ を計算した, 392.9649; 実測値: 392.9651 HPLC (λ254): 純度 96.3 %; tR: 12.23 分 (方法6)。
【0128】
実施例#14: 1-(3-クロロフェニル)-3-(6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ウレア
化合物#14を、6-ニトロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(500 mg, 2.80 mmol)及び3-クロロフェニルイソシアネート(0.34 mL, 2.80 mmol)を用いて、基本手順(B)に従って合成した。白色粉体。収率:667 mg, 72%。 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 11.65 (br. s, 2H), 9.81 (s, 1H), 8.26 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 8.03 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.53 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.44 - 7.30 (m, 2H), 7.16 - 7.05 (m, 1H). 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ 152.53, 151.50, 142.40, 141.58, 140.34, 135.38, 133.35, 130.54, 122.46, 118.14, 117.36, 117.12, 113.52, 109.07. HRMS-ESI(m/z): C14H11ClN5O3
+に対して[M+H]+ を計算した, 332.05449; 実測値: 332.05447; HPLC (λ280): 純度 99.4%; tR: 19.183 分 (方法1)。
【0129】
比較例#5-1: 1-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3-フェニルウレア
化合物#5-1を、2-アミノベンズオキサゾール(134 mg, 1 mmol)及びフェニルイソシアネート(119 mg, 1 mmol)を用いて、基本手順(A)に従って合成し、エタノールからの再結晶により精製した。茶色個体。収率:59.3 mg, 24 %。 Rf (シクロヘキサン/EtOAc, 70/30, v/v) = 0.48; 1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ (ppm): 6.96 (t, J = 7 Hz, 1H, HAr), 7.27 (t, J = 7 Hz, 2H, HAr), 7.35-7.55 (m, 6H, HAr), 8.73 (s, 1H, N-H); 13C NMR (50 MHz, DMSO-d6): δ (ppm): 118.5 (2C), 122.0, 129.0 (2C), 129.1, 129.1 (2C), 129.2 (2C), 135.0, 140.0, 149.2, 152.9; ESI (m/z): C13H11N2O+に対して[M+H-NHCO]+ を計算した, 211.09, 実測値: 211.27; HPLC (λ280), tR: 16.8 分: 純度 98.3 % (方法1)。
【0130】
実施例B:生物学
【0131】
1.材料及び方法
<試薬及び抗体>
スニチニブ、SB203580、SB225002、シスプラチン及びダニリキシンを、Selleckchem社(ヒューストン、米国)から購入した。抗HSP60抗体をSanta Cruz Biotechnology社(サンタクルーズ、カリフォルニア州、米国)から購入した。抗AKT、抗ホスホ-AKT、抗ERK、抗ホスホ-ERK抗体をCell Signaling Technology社(ビバリー、マサチューセッツ州、米国)からのものであった。
【0132】
<細胞培養>
RCC4、786-0 (786)及びA498 (498) RCC細胞株、MDA-MD-231乳腺細胞株、Cal 27及びCal 33頭頸部細胞株を、American Tissue Culture Collection (ATTC)から購入した。耐性細胞の786R (スニチニブに耐性を示す)、CAL27RR (光子及びシスプラチンによる多重照射(multi-irradiation)に耐性を示す)、及びCAL33RR (光子及びシスプラチンによる多重照射に耐性を示す)は発明者により提供された。OCI-AML2、OCI-AML3、Molm13及びMolm14急性骨髄性細胞株(AML)、並びにK562慢性骨髄性細胞株(CML)、SKM1骨髄異形成細胞株(MDS)は、Dr. P. Auberger (C3M、ニース、フランス) により提供された。初代細胞(CC、TF、15S)は、すでに説明したとおり、腎細胞に対して特異的な培地(PromoCell、ハイデルベルク、ドイツ)で培養した。
【0133】
<イムノブロッティング>
細胞を3%のSDS、10%のグリセロール及び0.825mMのNa2HPO4を含有するバッファー中に溶解した。30~50μgのタンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、PVDF膜(Immobilon、Millipore、フランス)上に転写し、続いて適した抗体にさらした。タンパク質を、西洋ワサビペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗ウサギ二次抗体又は抗マウス二次抗体を用いてECLシステムで可視化した。
【0134】
<遊走アッセイ>
CXCL7又はVEGFA-促進走化性アッセイを、ポリカーボネート膜(8-μmポア、Transwell;Corning、Sigma)を含有する改変ボイデンチャンバーを用いて測定した。細胞をフィルターの上側に播種し、チャンバーをCXCL7 (50ng/ml)又はVEGFA (50ng/ml)を含有する24-ウェルプレート上に置いた。37℃、5%CO2中において24時間細胞を郵送させた。下部の膜表面の遊走細胞を3%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。
【0135】
<コロニー形成アッセイ>
細胞(1条件に付き5000細胞)を、化合物#1及びスニチニブ、及びシスプラチンで処理した、又は処理しなかった。培養10日後に、コロニーを検出した。その後、細胞を洗浄し、3%パラホルムアルデヒド(PFA; Electron Microscopy Sciences)を用いて室温で20分間固定し、GIEMSA (Sigma)によって染色した。
【0136】
<カスパーゼアッセイ>
カスパーゼ 3 活性を基質としてz-DEVD-AMCを用いて4回測定し、蛍光を測定した。
【0137】
<フローサイトメトリー>
CXCR2測定:促進後、細胞をPBSで洗浄し、室温で30分間CXCR2-PE抗体(Miltenyi)を用いて染色した。蛍光活性セルソーター装置(Calibur サイトメーター)のFL2 (PE)チャンネルを用いて蛍光を測定した。
アポトーシス分析:促進後、細胞を氷冷したPBSで洗浄し、アネキシン-V-fluos 染色キット(Roche、メラン、フランス)を用いてメーカーの指示に従って染色した。蛍光活性セルソーター装置(Calibur サイトメーター)のFL2 (AV)及びFL3(ヨウ化プロピジウム、PI)チャンネルを用いて蛍光を測定した。
【0138】
<細胞バイアビリティ(XTT)>
細胞(5×103細胞/100μl)を、図の凡例に示した時間の間、異なるエフェクターとともに96ウェルプレートでインキュベートした。50マイクロリットルのナトリウム3’-[1-(フェニルアミノカルボニル)-3,4-テトラゾリウム]-ビス(4-メトキシ-6-ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物(XTT)試薬を各ウェルに添加した。このアッセイは、代謝的に活性な細胞によって黄色いテトラゾリウム塩XTTが分解されて、オレンジ色のフォルマザン色素が形成されることに基づいている。フォルマザン生成物の吸光度は、細胞バイアビリティを示し、490nmで測定される。各アッセイを、4回行った。
【0139】
<定量リアルタイムPCR (qPCR)実験>
1マイクログラムのトータルRNAを、QuantiTect Reverse Transcription kit(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)を用いて、オリゴ(dT)とランダムプライマーのブレンドを使用して逆転写し、第一鎖の合成の準備を行った。SYBR master mix plus (Eurogentec、リエージュ、ベルギー)をqPCRに使用した。mRNAレベルは36B4 mRNAに標準化した。
【0140】
<腫瘍異種移植実験>
RCCの転位モデル:700万個のA498細胞を5週齢のヌード(nu/nu)雌マウス(Janvier、フランス)の脇腹に皮下注射した。腫瘍の体積をカリパス(caliper、v = L×l2×0.5)で測定した。腫瘍が100mm3に達した場合、マウスにプラセボ(デキストロース水賦形剤)又は化合物#1 (50 mg/kg)をチューブにより補給することにより(by gavage)、4週間にわたって週に5回処理した。この研究は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsのガイドにおける推奨事項に厳密に従って行った。実験は、''Comite national institutionnel d’ethique pour l’animal de labatoire (CIEPAL)''によって承認された。
【0141】
<免疫組織染色>
ホルマリン固定パラフィン包埋した腫瘍のブロックからの切片を免疫染色で調べた。切片を、モノクローナル抗Ki67 (クローン MIB1, DAKO, Ready to use) 抗体とインキュベートした。ビオチン化二次抗体 (DAKO) を適用し、ヘマトキシリン対比染色に対する基質ジアミノベンジジンとの結合を検出した。
【0142】
<遺伝子発現マイクロアレイ解析>
The Cancer Genome Atlas (TCGA) により作成された正規化RNAシーケンス (RNA-Seq) データを、cBiopotal (www.cbioportal.org, TCGA Provisional; RNA-Seq V2)からダウンロードした。
【0143】
<統計解析>
全てのデータは、平均値±標準誤差 (SEM) で表した。統計的優位性及びp値は、両側スチューデントt-検定 (two-tailed Student’s t-test) により測定した。統計比較には一元配置分散分析 (one way ANOVA) を用いた。データは、Prism 5.0b(GraphPad Software)を用いて、Bonferroni post hocを用いた一元配置分散分析により解析した。
【0144】
2. 結果
【0145】
<2.1 In vitro試験>
化合物#1~#14は、ヒトの乳房、頭頸部、腎臓の腫瘍細胞及び血液悪性腫瘍のうち、攻撃性の高いものを選択して、それらのパネルに対する潜在的な抗増殖剤として測定された (例えば、不治のトリプルネガティブ乳がん細胞: MDA-MB-231; 腎臓 ccRCC 細胞: RCC4, A498 及び 786-O 及び 786R; 頭頸部がん細胞: CAL33, CAL33RR, CAL27, 及び CAL27RR; 急性骨髄性細胞株(AML): OCI-AML2, OCI-AML3, MolM13, 及び MolM14; 骨髄異形成細胞株(MDS): SM1; 慢性骨髄性細胞株: CML)。これらの全ての細胞株は、CXCR1及びCXCR2の発現を共通の特徴として共有する。EC50値をXTT比色分析により測定し、参照として使用したSB-225002のEC50値と比較した; 結果を表1に示す。
【0146】
【0147】
結果は、本発明の化合物は、参照分子 SB-225002 及び比較例として用いた 1-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3-フェニルウレア(実施例 #5-1) よりも強い細胞障害活性を与えることを示す。
【0148】
結果はさらに、R1位が置換された化合物は (実施例#1~#4及び#11~#14)は、R1位が置換されていない化合物よりも強い細胞障害活性を与えることを示す。より詳細には、R1位がニトロ基により置換され、クロロフェニルを含む化合物#1、#2及び#11~14が、最も強い活性を示す。
【0149】
これらのXTTアッセイを完了するために、悪性細胞(ccRCC及び血液系)並びに正常細胞(ヒト線維芽細胞FHN)を化合物#1又は#2と培養し、48時間後、細胞死マーカー(AV及びPI)の発現をFACS解析により定量する(
図1)。
【0150】
結果は、化合物#1又は#2は、悪性細胞に対して細胞障害効果を与えることを示す。化合物#1は、化合物#2よりも、早期(AV)及び後期(PI)のアポトーシスメーカーの誘導においてより効率的であると見受けられる。また、細胞株によっていくつかの相違が観察される。例えば、早期アポトーシスの割合は、血液系腫瘍細胞(AML, MolM14, 及びSKM1)においてよりも、ccRCC (786-O及びA498)においての方がはるかに高い。正常ヒト線維芽細胞 (FHN) のFACS解析では、比較例に比べてアポトーシスの増加は見られず、化合物#1及び#2は正常組織に対して毒性がないことが示唆された。これらの結果は、XTTアッセイで得られたデータを裏付け、さらなる生物学的研究のために化合物#1を選択することを可能にした。
【0151】
スニチニブ感受性細胞及び抵抗性細胞に対する化合物#1の細胞毒性効果並びに細胞増殖抑制効果を評価し、その結果を
図2で詳述した。
【0152】
用量-反応曲線(
図2A及び2B)、並びに対応するEC
50値(いずれも2 μM)により示されているように、化合物#1は、感受性および耐性を持つ786-O細胞に対して、その細胞毒性効果を顕著に維持する。
【0153】
さらに、これら2種類の悪性細胞に化合物#1を2.5μM(約EC
50濃度)で処理すると、処理の約65時間後(786-O細胞)及び100時間後(786-R細胞)の細胞増殖の完全抑制をもたらす(
図2D及び2E)。
【0154】
細胞死マーカーのFACS解析により、化合物#1は細胞毒性剤であり、同様の方法で感受性細胞及び耐性(
図2C)細胞を死滅させることが明らかになった。細胞死の誘導にはカスパーゼ-3活性の増加が関与している可能性があり、2.5μMで使用される場合、両方の細胞株で化合物#1によって著しく強化されている(
図2F)。さらに、クローン形成アッセイは、化合物#1が786-O細胞及び786-R細胞の両方に対しても細胞増殖抑制効果を発揮することが明確に示す(
図2G)。
【0155】
最後に、化合物#1は、CXCLサイトカインによってCXCR受容体が刺激されることで活性化されるERK及びAKTのリン酸化を阻害する。重要なことに、これらのキナーゼは、増殖、生存促進、及び血管新生促進のプロセスにつながるいくつかの細胞シグナル伝達経路の分岐点に位置している。これらの結果は、化合物#1がERL+CXCL/CXCR経路を阻害することを裏付ける(
図2H)。
【0156】
シスプラチン感受性細胞及び耐性細胞に対する化合物#1の細胞毒性効果も評価され、その結果を
図3で詳述した。
【0157】
用量-反応曲線(
図3A及び3B)並びに対応するEC
50値(いずれも2 μM)により示されているように、化合物#1は、感受性及び耐性Cal27細胞に対する細胞毒性効果を顕著に維持している。さらに、これら2種類の悪性細胞に化合物#1を2.5μM(約EC
50濃度)で処理すると、処理の約70時間後(Cal27細胞)及び70時間後(Cal27R細胞)の細胞増殖の完全抑制をもたらす(
図3C及び
図3D)。
【0158】
初代RCC腫瘍細胞及び腎臓がん患者から採取した正常な腎細胞に対する化合物#1の生物学的効果を調べた(
図4)。
【0159】
化合物#1は初代腎臓腫瘍細胞の増殖を著しく低下させるが(
図4A、2μMでのEC
50、TF及びCC;並びに
図4B)、化合物#1を高濃度(5μM)で使用した場合であっても初代正常腎臓細胞(15S)には影響を及ぼさないことが観察される。さらに、FACS解析は1μMでの化合物#1の存在下でTF細胞及びCC細胞を培養する際のアポトーシスマーカーを強調したが(put into exergue)、これは正常細胞15Sの場合では見られなかった(
図4C)。
【0160】
さらに、抗血管新生剤としての化合物#1の潜在的使用を正常内皮細胞(HuVECs)において評価した(
図5)。
【0161】
CXCR2はCXCL-8により活性化されると内皮細胞に内在化されるため、HuVEC細胞におけるCXCR2リサイクリングに対する化合物#1の効果を調べた。化合物#1(2.5 μM)の存在下でのCXCL-8刺激に続いて、CXCR2は膜表面で固定され、したがって化合物#1がCXCR2のCXCL-8依存性の内在化を妨げることが証明される(
図5A)。
【0162】
さらに、化合物#1はHuVECの運動性を50%超で低下させた(ボイデンチャンバーアッセイ、
図5B)。逆に、VEGFAによりHuVECを刺激すると、化合物#1は同じ濃度で目に見える活性を示さないことから、この分子はCXCR受容体のCXCL7依存性刺激を特異的に阻害することを裏付ける。重要なことに、ELR+CXCL/CXCR2相互作用の強力な拮抗薬(15nM範囲でのEC50)であり、RSウイルス (RSV) 感染症の治療に対する第II相臨床試験に達したダニリキシンは、HuVECのCXCL7依存性の運動性の減少において化合物#1よりも効率性が低いことが示されている(
図5B)。
【0163】
さらに、化合物#1は、基礎的なCXCL5/CXCL7依存性のHuVECの増殖も阻害し(
図5C及び5D)、これはERKシグナル伝達経路の阻害と整合している(
図5E)。
【0164】
2.2 In vivo 試験
【0165】
まず、化合物#1の安定性を、まずUPLC/HRMS分析によってin celluloで786-O細胞株において評価した。室温で24時間処理後、ヒット化合物 (hit) の分解は見られず、したがって化合物#1の高い安定性が証明された。
【0166】
次に、化合物#1を7.6 mg/mLで製剤し、50 mg/Kg(n =12匹のマウス)で経口胃管栄養法 (oral gavage) により投与し、薬物動態パラメータを測定した(表2)。
【0167】
【0168】
化合物#1は、30分で0.9μg/mlのCmaxと合わせて、190分を超える優れた半減期の時間を示す。全体的な暴露 (global exposure) は高いままであり、AUCは85000分・ng/mLに近い値を示した。
【0169】
さらに、マウスの腫瘍の成長において化合物#1を評価した(
図6)。
【0170】
マウスは、高度に血管新生された腫瘍を形成する侵攻性の高いccRCC細胞(A498)を異種移植した。7.106個の細胞 (7.106 cells) の皮下接種後、30日以内に約100mm
3の腫瘍が発生したが、実験終了時(70日目)に腫瘍の体積が65%超減少していたため、化合物#1は腫瘍の成長を著しく妨げることが観察された。この結果は、35%超の腫瘍の重量の減少と相互に関係している可能性がある(
図6Aおよび6B)。処置群の動物の体重減少は観察されておらず、これは化合物が急性毒性を示さないことを示唆している(
図6C)。
【0171】
免疫染色アッセイは、化合物#1が増殖マーカーKi-67の標識を著しく減少させることを明らかにする(
図6D)。腫瘍溶解物の分析は、化合物#1がAKTのリン酸化を阻害するが、ERKのリン酸化は阻害しないことを示す(
図6Eおよび6F)。血管の関連マーカーであるマウスCD31(
図6G)のmRNAレベルは、処置された動物の群において75%超低下している。ERL+CXCLサイトカイン(CXCL5(
図6I)、CXCL7(
図6J)、及びCXCL8(
図6K))のmRNAレベルは、化合物#1によって著しく減少しているが、VEGFA(
図6H)のmRNAレベルでは著しい減少はなく、これはCD31レベルのダウンレギュレーションと整合している。
【0172】
実施例C:髄芽種
【0173】
1. 材料及び方法
【0174】
<細胞培養>
DAOY細胞株及びHD-MBO3細胞株は、ATCCから購入した。これらの細胞を、ウシ胎児血清10%(D. Dutscher)及びピルビン酸ナトリウム1mM(Gibco(登録商標) Life Technologies)を含むMEMα(1X)+Glutamax(Invitrogen(登録商標))を用いてインキュベーター内で37℃で培養した。
【0175】
<細胞バイアビリティ(XTT)>
5000個のDAOY細胞及び50000個のHD-MB03細胞を96ウェルプレートにおいて異なる阻害剤濃度で24時間及び48時間インキュベートした。細胞を含まないコントロールを実行した。50マイクロリットルのナトリウム3’-[1-(フェニルアミノカルボニル)-3,4-テトラゾリウム]-ビス(4-メトキシ-6-ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物(XTT)試薬を各ウェルに添加した。このアッセイは、代謝的に活性な細胞によって黄色いテトラゾリウム塩XTTが分解されて、オレンジ色のフォルマザン色素が形成されることに基づいている。フォルマザン生成物の吸光度は、細胞バイアビリティを示し、450nmで測定される。各アッセイを、3回行った。
【0176】
<増殖試験>
1500個のDAOY細胞及びHD-MB03細胞を、37℃で5%CO2インキュベーター内で(1μMの化合物#1若しくはコントロール「CONT」としてのDMSOの)処理を有する又は処理を有しない6ウェルプレートに播種した。トリプソン(tripsone)1X-EDTA(Gibco(登録商標) Life Technologies)を用いて細胞を解離し、1、4、6、7、8日目にCoulter Beckman(登録商標) counter(Villepinte)でカウントした。各アッセイを、3回行った。
【0177】
<クローン形成能>
150個のDAOY細胞及び300個のHD-MB03細胞を、(1μMの化合物#1若しくはコントロール「CONT」としてのDMSOの)処理を有する又は処理を有しない6ウェルプレートに播種した。6ウェルプレートに播種し、処理の有無を確認した(コントロール「CONT」として1μMの化合物#1またはDMSOを用いた)。+7日目(DAOY)及び+11日目(HD-MB03)において、細胞を無水エタノールと20分間混合し、PBSで洗浄した後、Giemsa 50%で30分間染色した。洗浄後、ボックスをスキャンし、ImageJ(登録商標)ソフトウェアを用いてクローンの数を定量した。各アッセイを、2回行った。
【0178】
2. 結果
図7の結果は、化合物#1が、DMSOで処理したコントロール細胞と比較して、DAOY細胞及びHD-MB03細胞の増殖を著しく減少させることを示す。
【0179】
図8の結果は、化合物#1が、DAOYのクローン及びHD-MB03のクローンの形成を著しく減少させることを示す。
【0180】
実施例D: 黄斑変性
【0181】
本発明の化合物を、黄斑変性モデルで評価した。
【0182】
1. プロトコル
12匹のマウスの4群を、以下のようにして目にレーザー熱傷によって誘導した。
G1: 賦形剤 (vehicle);
G2及びG3: 化合物#1及び#3: 400μgの生成物を週に3回腹腔内に注射; 及び
G4: デキサメタゾン(2 mg / kg / 日)を経口投与。
【0183】
2. 結果
12匹の動物の14日目の臨床血管造影: 0~3のスコアによる損傷の強度(intensity)の評価(0 = 漏れなし、1 = 軽い強度、2 = 中程度の強度、3 = 非常に強いマーキング)。
14日目において、阻害剤、特に化合物#3による治療の優れた効果が、in vivoの血管造影図で観察される(
図9)。