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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】生体試料分析装置及び生体試料分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/76 20060101AFI20240709BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240709BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N21/76
G01N35/10 G
C12M1/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021529907
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2020019535
(87)【国際公開番号】W WO2021002105
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019123882
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】深尾 嘉希
(72)【発明者】
【氏名】木戸 成典
(72)【発明者】
【氏名】中井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】岡 要平
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174766(WO,A1)
【文献】特開2018-169291(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013359(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/013360(WO,A1)
【文献】特表2019-514007(JP,A)
【文献】特開2012-042251(JP,A)
【文献】特開2014-006213(JP,A)
【文献】特開2011-226926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/83
G01N15/00-G01N15/1492
G01N33/00-G01N33/98
G01N35/00-G01N35/10
G01N37/00
C12M 1/00-C12M 1/42
C12M 3/00-C12M 3/10
C12Q 1/00-C12Q 1/70
C12Q 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して前記生体由来の物質を分析する生体試料分析装置であって、
前記発光を検出して光強度信号を出力する光検出器と、
前記試料を収容する前記容器に前記発光試薬を添加した後に得られた光強度信号から前記試料を収容する前記容器に前記発光試薬を添加する前に得られた光強度信号を差し引くことにより前記容器の蓄光及び前記試料由来の蛍光を除去して、生体由来の物質の量に関連する値を算出する算出部とを備える生体試料分析装置。
【請求項2】
複数の前記容器に収容された前記試料を順次発光測定するものであり、
前記算出部は、前記複数の容器それぞれにおいて、前記試料及び前記発光試薬が反応した後に得られた前記光強度信号から前記試薬及び前記発光試薬が反応する前に得られた前記光強度信号を差し引くものである、請求項1記載の生体試料分析装置。
【請求項3】
前記生体由来の物質は、アデノシン三リン酸(以下、ATP)であり、
前記試料及びATP発光試薬が反応して生じるATP由来の発光を検出するものである、請求項1又は2記載の生体試料分析装置。
【請求項4】
前記試料、ATP量が既知のスタンダード液、及びATP量がゼロのゼロ液に試薬を分注する分注機構をさらに備え、
前記分注機構は、前記試料に添加するATP消去液、芽胞反応液、ATP抽出液の混合比と、前記スタンダード液におけるそれらの混合比と、前記ゼロ液におけるそれらの混合比とを同じにするように制御される、請求項3記載の生体試料分析装置。
【請求項5】
前記分注機構は、前記スタンダード液に前記ATP消去液及び前記芽胞反応液を添加した後に、前記ATP抽出液を添加するように制御される、請求項4記載の生体試料分析装置。
【請求項6】
内部に生体試料分析用の測定系機器を収容し、開口部を有する筐体本体と、
前記筐体本体の開口部を開閉する扉と、
前記筐体本体の開口部と前記扉との接触部それぞれに設けられ、前記扉が前記開口部を閉塞した状態で、互いに嵌り合う凹凸構造とを備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の生体試料分析装置。
【請求項7】
前記試薬を前記試料に注入するためのピペットチップを廃棄する廃棄箱を更に備え、
前記廃棄箱は、廃棄される前記ピペットチップ毎に廃棄空間が区切られており、各廃棄空間に廃棄されたピペットチップを所定方向に傾斜させる傾斜部を有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の生体試料分析装置。
【請求項8】
生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して前記生体由来の物質を分析する生体試料分析方法であって、
前記発光を検出して光強度信号を出力し、
前記試料を収容する前記容器に前記発光試薬を添加した後に得られた光強度信号から前記試料を収容する前記容器に前記発光試薬を添加する前に得られた光強度信号を差し引くことにより前記容器の蓄光及び前記試料由来の蛍光を除去して、生体由来の物質の量に関連する値を算出する生体試料分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析する生体試料分析装置及び生体試料分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品製造プラントや食品プラント等の環境管理のために微生物モニタリングが行われている。この微生物モニタリングの一例として、微生物に含まれるATP(アデノシン三リン酸)に、発光試薬を添加し、その生物発光を測定して、得られた発光強度をATPの量に換算することで菌との相関を取ることができる。
【0003】
そしてこのATP等の生体由来の物質により生じる光を分析する装置として、特許文献1に示すものが考えられている。この生体試料分析装置は、生体由来の物質を含む試料に発光試薬を添加し、その発光ピークの発光強度と、当該発光ピーク時から所定時間(例えば10分程度)経過後の発光が収まった状態の発光強度と検出している。そしてこの装置では、「発光ピークの発光強度」から「発光が収まった状態の発光強度」を差し引いた発光強度を用いて、菌数に換算している。
【0004】
しかしながら、上記の方式では、「発光が収まった状態の発光強度」を検出するために発光ピーク時から所定時間(例えば10分程度)経過するのを待つ必要があり、1つの試料の測定時間が長くなってしまう。この問題は、複数の試料を測定する構成とした場合に特に顕著となる。
また、試料を収容する容器が樹脂製の場合には、外部における紫外線や蛍光灯などの光を蓄光してしまい、或いは、生体発光を蓄光してしまい、「発光が収まった状態の発光強度」には容器の蓄光が含まれてしまうことから、測定精度が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-268019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して生体由来の物質を分析する生体試料分析装置において、試料の測定時間を短縮するとともに測定精度を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る生体試料分析装置は、生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して前記生体由来の物質を分析する生体試料分析装置であって、
前記発光を検出して光強度信号を出力する光検出器と、前記試料に前記発光試薬が反応した後に得られた前記光強度信号から前記試料及び前記発光試薬が反応する前に得られた前記光強度信号を差し引くことにより前記容器の蓄光を除去して、生体由来の物質の量に関連する値を算出する算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような生体試料分析装置であれば、試料及び発光試薬が反応した後に得られた光強度信号から試料及び発光試薬が反応する前に得られた光強度信号を差し引いて、生体由来の物質の量に関連する値を算出するので、従来のように「発光が収まった状態の発光強度」を検出する必要がない。その結果、試料の測定時間を短縮することができる。また、試料及び発光試薬が反応した後に得られた光強度信号から試料及び発光試薬が反応する前に得られた光強度信号を差し引くことによって容器の蓄光を除去しているので、容器の蓄光を考慮する必要がなく、測定精度を向上することができる。ここで、容器の蓄光は、試料及び発光試薬が反応して生じる生物発光以外の光であり、容器から出る燐光や蛍光を含む。
【0009】
ここで、生体試料の分析効率化を図るためには、生体試料分析装置は、複数の前記容器に収容された前記試料を順次発光測定するものであることが考えられる。
この場合、複数の容器における蓄光量はそれぞれ異なる。このため、差し引くべき蓄光量は容器毎に異なる。このため、前記算出部は、前記複数の容器それぞれにおいて、前記試料及び前記発光試薬が反応した後に得られた前記光強度信号から前記試薬及び前記発光試薬が反応する前に得られた前記光強度信号を差し引くものであることが望ましい。この構成であれば、複数の容器それぞれにおける測定精度を向上することができる。
【0010】
本発明の生体試料分析装置において、前記生体由来の物質は、アデノシン三リン酸(以下、ATP)であり、前記試料及びATP発光試薬が反応して生じるATP由来の発光を検出するものであることが考えられる。
【0011】
試料に試薬を自動で導入することによって分析効率を向上させるためには、本発明の生体試料分析装置は、前記試料、ATP量が既知のスタンダード液、及びATP量がゼロのゼロ液に試薬を分注する分注機構をさらに備えることが望ましい。具体的に分注機構は、前記試料、前記スタンダード液及び前記ゼロ液にATP消去液、芽胞反応液、ATP抽出液、発光試薬などを分注する。
従来は、スタンダード液と、ゼロ液と、試料とで各試薬の液量が異なっている。このようにスタンダード液とゼロ液と試料とで各試薬の液量が異なることで、液中のpHが異なり、発光強度が変化してしまい、正確な光強度を検出することができない。
この問題を好適に解決して正確な光強度を検出するためには、前記分注機構は、前記試料に添加するATP消去液、芽胞反応液、ATP抽出液の混合比と、前記スタンダード液におけるそれらの混合比と、前記ゼロ液におけるそれらの混合比とを同じにするように制御されることが望ましい。
【0012】
ATP抽出液は、ATP消去液を失活させる効果を有する。
このため、前記分注機構は、前記スタンダード液に前記ATP消去液及び前記芽胞反応液を添加した後に、前記ATP抽出液を分注するように制御されることが望ましい。
この順番で各試薬を分注することによって、ATP消去液を含むスタンダード液を作成することができる。
【0013】
さらに、本発明の生体試料分析装置は、内部に生体試料分析用の測定系機器を収容し、開口部を有する筐体本体と、前記筐体本体の開口部を開閉する扉と、前記筐体本体の開口部と前記扉との接触部それぞれに設けられ、前記扉が前記開口部を閉塞した状態で、互いに嵌り合う凹凸構造とを備えることが望ましい。
この構成であれば、筐体本体と扉との間から装置内部に入る光を凹凸構造で遮断することができ、測定精度を向上させることができる。
【0014】
加えて、本発明の生体試料分析装置は、前記試薬を前記試料に注入するためのピペットチップを廃棄する廃棄箱を更に備えることが考えられる。
この構成において、廃棄箱に各ピペットチップを確実に廃棄するためには、前記廃棄箱は、廃棄される前記ピペットチップ毎に廃棄空間が区切られており、各廃棄空間に廃棄されたピペットチップを所定方向に傾斜させる傾斜部を有することが望ましい。なお、前記傾斜部を設けない構成では、廃棄空間に廃棄されたピペットチップの向きがばらついてしまい、廃棄されるピペットチップの邪魔となる恐れがある。
【0015】
また、本発明に係る生体試料分析方法は、生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して前記生体由来の物質を分析する生体試料分析方法であって、前記試料及び前記発光試薬が反応した後に得られた前記光強度信号から前記試料及び前記発光試薬が反応する前に得られた前記光強度信号を差し引くことにより前記容器の蓄光を除去して、生体由来の物質の量に関連する値を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、生体由来の物質を含む試料及び発光試薬を容器に収容し、それらを反応させることにより生じる発光を検出して生体由来の物質を分析する生体試料分析装置において、試料の測定時間を短縮するとともに測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る生体試料分析装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態の生体試料分析装置の外観を示す斜視図である。
図3】同実施形態の装置本体の各部の配置を示す平面図である。
図4】同実施形態の筐体本体及び扉の凹凸構造を示す部分断面図である。
図5】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す斜視図である。
図6】同実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す平面図である。
図7】同実施形態の試料の濃縮工程を示す模式図である。
図8】試料、スタンダード液、ゼロ液における各試薬の注入量を示す表である。
図9】同実施形態の各容器における演算方法を説明するための模式図である。
図10】容器の蓄光影響下でのATP量と発光量の直線性評価を行った結果を示す図である。
図11】変形実施形態の複数の容器を保持したホルダを示す平面図である。
図12】変形実施形態の廃棄空間を模式的に示す断面図である。
図13】変形実施形態のDNA同定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
100・・・生体試料分析装置
2・・・容器
4・・・光検出器
COM1・・・算出部
6・・・分注機構
C1h・・・開口部
C1・・・筐体本体
C2・・・扉
15、16・・・凹凸構造
PT・・・ピペットチップ
10・・・廃棄箱
10s・・・廃棄空間
10y・・・傾斜部
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る生体試料分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態の生体試料分析装置100は、試料に含まれる生体由来の物質により生じる光を分析することによって、その生体由来の物質の量を測定するものである。なお、以下では、生体由来の物質としてATP(アデノシン三リン酸)の量(amol(=10-18mol))を測定するATP量測定装置について説明する。
【0021】
具体的にこの生体試料分析装置100は、図1に示すように、試料を収容する複数の容器2を保持するホルダ3と、所定位置に固定された光検出器4と、ホルダ3を移動させるホルダ駆動機構5と、ホルダ3に保持された容器2内にATPと反応して光を生じさせる発光試薬を分注などする分注機構6とを備えている。
【0022】
なお、本実施形態の生体試料分析装置100は、図2及び図3に示すように、ホルダ3を出し入れするための扉C2を有する筐体Cを備えている。筐体Cは、ホルダ3、ホルダ駆動機構5及び分注機構6等のATP測定に必要な測定系機器類を収容する筐体本体C1と、当該筐体本体C1に設けられた扉C2とを備えている。また、筐体本体C1は、前面に開口部C1hを有している。そして、扉C2は、筐体本体C1の開口部C1hに対して開閉可能に設けられている。具体的には、開口部C1hの上側部分において水平方向の連結軸(不図示)により開閉可能とされており、扉C2を上方向に持ち上げることによって、筐体本体C1の内部に利用者がアクセス可能となる。
【0023】
ここで、筐体本体C1と扉C2との接触部それぞれには、図4に示すように、扉C2が開口部C1hを閉塞した状態で、互いに嵌り合う凹凸構造15、16が設けられている。なお、図2及び図3において凹凸構造15、16は省略している。
【0024】
この凹凸構造15、16は、開口部C1hの略全周を取り囲むように設けられている。本実施形態では、筐体本体C1の接触部に設けられた凹凸構造15は、開口部C1hを取り囲むように設けられた本体外側凸条部151と、当該本体外側凸条部151の内側において開口部C1hを取り囲むように設けられた本体内側凸条部152とから構成される。また、扉C2の接触部に設けられた凹凸構造16は、筐体本体C1の本体外側凸条部151の外側において開口部C1hを取り囲むように設けられた扉外側凸条部161と、筐体本体C1の本体外側凸条部151及び本体内側凸条部152の間に挿入される扉内側凸条部162とから構成される。この凹凸構造15、16により外部からの光の経路は蛇行状となり、装置内部に到達する前に遮断され、装置内部が暗室状態となる。これにより、迷光を低減して、測定精度を向上させることができる。その他、扉C2と開口部C1hとの間をシール部材(不図示)によりシールすることにより筐体C内部を暗室状態としても良い。
【0025】
その他、筐体本体C1には、検体が収容された複数の検体チューブFCを保持して温調する温調機構7と、各試薬を収容した試薬容器RC1、RC2がセットされる試薬セット部8と、分注機構6に用いられるピペットチップPTが設けられるピペットチップセット部9とが設けられている。
【0026】
温調機構7は、複数の検体チューブFCを例えばマトリックス状に収容して保持するものである。この温調機構7は、検体チューブFCを保持する金属製(例えばアルミ製)のホルダブロック71と、ホルダブロック71に設けられたヒータ等の熱源部72と、ホルダブロック71の温度を検出する熱電対等の温度センサ73とを備えている。この温度センサ73の検出温度に基づいて、熱源部であるヒータ72は、制御装置COMによってホルダブロック71の温度が所定温度となるように制御される。
【0027】
試薬セット部8は、検体に前処理を施すための前処理用試薬を収容した試薬容器RC1と、発光試薬を収容した試薬容器RC2とがセットされるものである。前処理用試薬としては、検体に含まれる生細胞(生菌)以外のATP(遊離ATP)を消去するATP消去液、芽胞状態の菌を発芽させる芽胞反応液、及び、生細胞からATPを抽出するATP抽出液等である。
【0028】
ホルダ3は、図5及び図6に示すように、複数の容器2を円環状に保持するものであり、具体的には、所定の回転中心に対して同一円上に保持するものである。本実施形態のホルダ3は、サンプル測定用の複数の容器2の他に、ブランク測定用の容器2b及び標準液測定用の容器2sも保持している。また、ホルダ3は、装置本体に対して着脱可能に構成されており、この着脱操作を容易にするために、保持用の複数(ここでは2つ)の保持孔3hが形成されている。なお、容器2は有底筒形状をなす樹脂製のものであり、本実施形態では有底円管状をなす樹脂製のものである。
【0029】
光検出器4は、図1に示すように、ホルダ3に保持された容器2内の試料から出る光を検出するものであり、例えば光電子増倍管(PMT)である。光検出器4は、ホルダ3に保持された容器2よりも下側に設けられている。そして、光検出器4の上方には、容器2内の試料から出る光を光検出器4に導くためのリフレクタ11を有する光学系12が設けられている。このリフレクタ11は、それらの上方に位置する容器2に対して進退移動可能に構成されている。リフレクタ11を容器2に近接させることで容器2内に試料から出る光を効率良く光検出器4に導くことができるとともに、リフレクタ11を容器2から退避させることで容器2の移動を邪魔しないようにできる。なお、リフレクタ11を含むその他の光学系12又は光検出器4も容器2に対して進退移動可能に構成しても良い。
【0030】
ホルダ駆動機構5は、ホルダ3を移動させ、ホルダ3に保持されている各容器2を、光検出器4による検出位置Xdetに順次位置づけるものである。具体的にホルダ駆動機構5は、ホルダ3を前記所定の回転中心周りに回転させるものであり、図1に示すように、ホルダ3が設置される設置台51と、当該設置台51に設置されたホルダ3を回転させるための回転軸52と、当該回転軸52を回転させるアクチュエータ53とを備えている。その他、ホルダ駆動機構5には、ホルダ3の回転位置を検出するための回転位置センサ(不図示)が設けられている。この回転位置センサの検出信号に基づいて、アクチュエータ53は、制御装置COMによって測定すべき容器2を検出位置Xdetに位置付けるように回転制御される。
【0031】
分注機構6は、図1図3に示すように、試料や各試薬を吸引又は吐出するためのノズル61と、ノズル61に接続された流路を介してノズル61の吸引又は吐出を駆動する例えばシリンジ等のポンプ機構62と、ノズル61を所定方向に移動させるノズル移動機構63とを備えている。
【0032】
ノズル61は、試料や各試薬に接触してそれらを保持するためのピペットチップPTを着脱可能に保持するチップホルダ611を備えている。このチップホルダ611は内部流路が形成されたものであり、その基端部に流路が接続されており、先端開口部にピペットチップPTが接続される。
【0033】
また、ノズル移動機構63は、ノズル61を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に直線移動させるとともに、ノズル61を鉛直方向(Z軸方向)に直線移動させるものである。具体的にノズル移動機構63は、ノズル61を保持する可動部材631と、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向にそれぞれ設けられたスライド機構632と、当該スライド機構632に沿って前記可動部材631を各方向に移動させるためのアクチュエータ633とを備えている。このアクチュエータ633及び前記ポンプ機構62が制御装置COMによって制御されることによってATP測定における各動作が実行される。なお、ATP測定における各動作には、当然、チップホルダ611へのピペットチップPTの装着及び取り外しが含まれる。
【0034】
さらに生体試料分析装置100は、図1に示すように、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光を光検出器4に導く一方で、それ以外の容器2(具体的には測定が終了した容器2)内の試料から出る光が光検出器4に導かれることを防止する遮光機構13を備えている。
【0035】
この遮光機構13は、各容器2に設けられ容器側遮光部131と、検出位置Xdetにある容器2に対して進退移動する可動側遮光部132とを備えている。
【0036】
容器側遮光部131は、光透過性を有さない部材からなり、各容器2の上側部分の全周を覆うものである。本実施形態では、ホルダ3の容器保持部に円筒状の容器側遮光部131を設けておき、当該容器側遮光部131に容器2を収容することによって、ホルダ3に保持された容器2の上側部分の全周を容器側遮光部131が覆う構成としている。
【0037】
可動側遮光部132は、光透過性を有さない部材からなり、検出位置Xdetにある容器2において容器側遮光部131により覆われた上側部分を除いた下側部分の全周を覆うものである。この可動側遮光部132は、検出位置Xdetにある容器2の下側部分を覆う遮光位置と、当該容器2の下側部分から下方に離間して、ホルダ3の移動時にその移動を邪魔しない退避位置との間で昇降移動する。なお、可動側遮光部132の昇降移動は例えばアクチュエータを用いた昇降装置14により行われる。この昇降装置14は、制御装置COMによってホルダ駆動機構5及び分注機構6の動作と連動して制御される。
【0038】
そして、本実施形態の生体試料分析装置100は、分注機構6のピペットチップPTを廃棄するための廃棄チップ収容部である廃棄箱10がホルダ3に一体に設けられている。具体的に廃棄箱10は、ホルダ3においてデッドスペースとなる複数の容器2の内側に設けられている。この廃棄箱10は、平面視において複数の容器2の配置方向に沿った円弧状の開口10xを有している。廃棄箱10の平面視の形状は、図5に示す概略八角形の環状をなすものであるが、例えば円環状をなすものなどその他の形状であっても良い。廃棄箱10がホルダ3に設けられているので、廃棄箱10はホルダ3とともに扉C2を介して出し入れされることになる。その結果、装置本体に廃棄箱10を引き出すための引き出し構造を設ける必要が無くなり、外光を確実に遮断することができる。また、引き出し構造が不要になることに加えて、ホルダ3における容器保持部分以外のデッドスペースを有効に利用することができるので、装置100をコンパクト化することができる。
【0039】
このホルダ3において、円弧状の開口10xよりも内側に指を挿入して保持するための保持孔3hが形成されている。この構成により、保持孔3hによりホルダ3を保持した状態で、保持した手よりも外側に廃棄箱10及び容器2が位置する状態となり、廃棄されたピペットチップPT及び測定済みの容器2への不用意な接触を防ぎやすくできる。
【0040】
そして、分注に使用したピペットチップPTの取り外しは、ホルダ3の廃棄箱10の上方において行われる。具体的には、廃棄箱10の上方に配置されたチップ外し部材(不図示)にノズル61を移動させることによって行っても良いし、可動部材631にチップ外し部材を設けておき、可動部材631を廃棄箱10の上方に移動させた後にチップ外し部材を用いて行っても良い。
【0041】
また、各ピペットチップPTの取り外す場合に、制御装置COMは、ピペットチップPTが廃棄箱10の一箇所に偏在しないように、ホルダ駆動機構5及び分注機構6を制御する。この制御態様としては、(1)各ピペットチップPTを取り外す毎にホルダ3を所定角度回転させて、廃棄箱10に対する廃棄位置を変更すること、(2)所定数のピペットチップPTの廃棄位置を同じとしつつ、所定数のピペットチップPTを取り外す毎に所定角度回転させて、廃棄箱10に対する廃棄位置を変更すること、等が考えられる。このように制御することによって、廃棄箱10に廃棄されるピペットチップPTを全体的にばらけさせることができ、一箇所に偏在して廃棄箱10からはみ出てしまうことを防ぐことができる。
【0042】
<分析方法>
次にこのように構成した生体試料分析装置100の動作とともに分析方法について説明する。
【0043】
例えば大容量(例えば50mlから200ml)の検体を所定量(例えば1μlから1000μl)に濃縮させて試料を生成する。
【0044】
ここで、上記の濃縮工程は、図7(A)に示すように、大容量の検体を貯留したボトルBTの下端開口部に、内部にフィルタFC1が形成されたカートリッジ(検体チューブFC)の上端部を差し込み、当該検体チューブFCの下端部からポンプで吸引することにより、前記検体チューブFCのフィルタFC1上に検体を濃縮する。ところが、ボトルBTの下端開口部と検体チューブFCの接続部に空気層ができてしまい、吸引がうまくいかないことがある。このため、図7(B)に示すように、ボトルBT及び検体チューブFCからなる試料容器200を振動式撹拌機300にかけて空気層を除去することが考えられる。このとき、ボトルBTに対して検体チューブFCが細いことから、試料容器200を振動式撹拌機300にセットするための容器ホルダ400を用いることが望ましい。この容器ホルダ400は、検体チューブFCを収容するとともに、ボトルBTの下面及び側面に接触して、試料容器200を保持するものである。ここで、容器ホルダ400に検体チューブFCが接触して検体チューブFCが汚染されないように、検体チューブFCを収容するチューブ収容部401は、収容した検体チューブFCとの間に空間400sを形成するように構成されている。
【0045】
上記の通り、濃縮された試料を収容した検体チューブFCを温調機構7にセットする。所定数の検体チューブFCをセットした状態で扉C2を閉じ、測定を開始する。なお、この状態でホルダ3に保持された各容器2は空であるが、標準液測定用の容器2にはATP量が既知の標準液が収容されている。
【0046】
測定が開始されると制御装置COMは、分注機構6を制御して温調機構7に保持された検体チューブFCそれぞれに各前処理試薬を所定のシーケンスに従って分注する。これにより検体チューブFC内の試料に所定の前処理(ATP抽出)が行われる。なお、前処理試薬毎にピペットチップPTは交換され、使用済みのピペットチップPTは廃棄箱10に廃棄される。
【0047】
具体的には、検体チューブFC内の試料に、ATP消去液及び芽胞反応液の混合液を分注し、各試薬の反応が完了するまで、所定温度に保温しながら待機する。その後、検体チューブFC内の試料にATP抽出液を分注して、ATPの抽出が完了するまで、所定温度に保温しながら待機する。なお、ATP消去液及び芽胞反応液の混合液ではなく、ATP消去液及び芽胞反応液を別々に分注してもよい。
【0048】
また、校正液については、上記の試料への試薬分注後の待ち時間の間に、ATP量が既知のスタンダード液、及びATP量がゼロのゼロ液に各前処理試薬を所定のシーケンスに従って分注する。具体的には、スタンダード液及びゼロ液にATP消去液及び芽胞反応液を分注した後に、ATP抽出液を分注する。なお、スタンダード液は、標準液測定用の容器2sに収容されており、ゼロ液は、ブランク測定用の容器2bに収容されていることから、分注機構6は、各前処理試薬を容器2s及び容器2bに分注する。なお、ゼロ液への各前処理試薬の分注順は上記に限られない。
【0049】
このとき、図8に示すように、試料、ATP消去液、芽胞反応液及びATP抽出液の混合比と、スタンダード液、ATP消去液、芽胞反応液及びATP抽出液の混合比と、ゼロ液、ATP消去液、芽胞反応液及びATP抽出液の混合比とが同じとなるようにされている。具体的には、それらの混合比が所定の値となるようにされている。このように試料とスタンダード液とゼロ液とで各試薬の液量を同じにすることで、液中のpHを同一にすることができる。その結果、発光試薬を分注する前の液の前提条件を同一にすることができ、正確な光強度を検出することができる。
【0050】
その後、分注機構6は、各検体チューブFC内の前処理済み試料を、ホルダ3に保持された各容器2内にそれぞれ分取する。
【0051】
そして、制御装置COMは、ホルダ駆動機構5を制御して測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させた後、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を遮光位置に移動させる。この状態とした後に、制御装置COMは、分注機構6を制御して発光試薬を検出位置Xdetにある容器2内に導入する。これにより、検出位置Xdetにある容器2内の試料から出る光が光検出器4により検出される。なお、各容器2の発光測定前に、ブランク測定及び標準液測定が実施されて、ゼロ点校正及びスパン校正が行われる。
【0052】
光検出器4により得られた光強度信号は、制御装置COMの算出部により演算処理が施されてATP量(amol)が算出される。
【0053】
具体的には、制御装置COMの算出部COM1は、「試料に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号」から「発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」を差し引くことにより容器2の蓄光を除去して、生体由来の物質の量に関連する値を算出する。
【0054】
「試料に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号」は、発光試薬を導入した時点から所定時間(例えば数秒~数十秒間)までの積算信号の平均値である積算平均信号であり、「発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」は、発光試薬を導入する以前の所定時間(例えば数秒から数十秒)までの積算信号の平均値である積算平均信号である。ここで、「発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」は、容器2に蓄光した光に基づくものである。例えば測定開始前に容器2を生体試料分析装置100の外に置いておくと、紫外線や蛍光灯等の光が容器2に蓄光することがある。したがって、算出部COM1は、「容器2由来の光強度信号と生体由来の光強度信号とを含む第1光強度信号」から「容器2由来のみの光強度信号である第2光強度信号」を差し引く。これにより、生体試料分析装置100は、生体由来の光強度信号のみを正確に算出できる。なお、ブランク測定及び標準液測定における信号処理も同様である。また、光強度信号は、積算平均信号に限られず、発光試薬を導入した時点から所定時間(例えば数秒~数十秒間)までの単なる積算信号であっても良いし、その他の演算処理を施した信号であっても良い。
【0055】
このようにして、制御装置COMの算出部COM1は、各容器2それぞれについて、以下の式により、ATP[amol]を算出する(図9参照)。
【0056】
【数1】
【0057】
Samplesignalは、サンプル測定で得られる信号であり、「試料に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号」から「試料に発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」を差し引いた信号である。
STDsignalは、標準液測定で得られる信号であり、「スタンダード液に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号」から「スタンダード液に発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」を差し引いた信号である。
Zerosignalは、ブランク測定で得られる信号であり、「ゼロ液に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号」から「ゼロ液に発光試薬を添加する前に得られた光強度信号」を差し引いた信号である。なお、図9においては、ブランク測定において発光試薬を添加した際に発光ピークが生じているが、生じない場合もある。
上記の演算により、標準液測定用の容器2s、ブランク測定用の容器2b及びサンプル測定用の容器2それぞれの蓄光量のばらつきを除去して、精度良くATP量を算出することができる。
【0058】
1つの容器2の発光測定が終了した後に、制御装置COMは、昇降装置14を制御して遮光機構13の可動側遮光部132を退避位置に移動させ、その後、ホルダ駆動機構5を制御して次の測定すべき容器2を検出位置Xdetに移動させる。このようにして順次各容器2内の試料の発光測定が行われる。ここで、各容器2内の試料の発光測定毎にピペットチップPTは交換され、使用済みのピペットチップPTは廃棄箱10に廃棄される。
【0059】
このようにして全ての試料について測定が終了した後に、扉C2を開けて温調機構7に保持された検体チューブFCを交換するとともに、ホルダ3に保持された容器2を交換する。ここで、ホルダ3の保持された容器2を交換する場合には、ホルダ3の保持孔3hを持ってホルダ3を装置本体から取り外す。このホルダ3には、使用済みの廃棄されたピペットチップPTがホルダ3の廃棄箱10に入っているので、ホルダ3を装置本体から取り外すことによって廃棄されたピペットチップPTも同時に装置本体から取り出すことができる。
【0060】
次に、紫外線を照射した容器と紫外線を照射しない容器とを用いて、0,1,2,4,10,20amol/μLに調整したATP液を生体試料分析装置100を用いて測定した。各容器における発光量を図10に示す。
蓄光影響下におけるダーク測定の発光量(発光試薬を添加する前に得られた光強度信号)は、紫外線照射された容器の方が大きいことが分かる。また、蓄光影響下におけるピーク測定の発光量(発光試薬を添加した後に得られた光強度信号)においても、紫外線照射された容器の方が大きいことが分かる。
一方で、ピーク測定の発光量からダーク測定の発光量を差し引くことにより、紫外線を照射した容器の発光量と紫外線を照射しない容器の発光量とで略一致しており、上記の演算方式により、容器の蓄光量を除去してATP量を算出できることが分かる。
【0061】
<本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態に生体試料分析装置100によれば、試料に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号から発光試薬を添加する前に得られた光強度信号を差し引いて、生体由来の物質の量に関連する値を算出するので、従来のように「発光が収まった状態の発光強度」を検出する必要がない。その結果、試料の測定時間を短縮することができる。また、試料に発光試薬を添加した後に得られた光強度信号から発光試薬を添加する前に得られた光強度信号を差し引くことによって容器2の蓄光を除去しているので、試料を収容する容器2の蓄光を考慮する必要がなく、測定精度を向上することができる。
【0062】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0063】
例えば、ホルダ3は複数の容器2を円環状に保持するものであったが、複数の容器2の配置が例えば矩形状、多角形状又は楕円形状となるように環状に保持するものであってもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、廃棄箱10は2つの開口10xを有するものであったが、1つ又は3つ以上の開口10xを有するものであってもよい。
【0065】
廃棄箱10は、図10に示すように、廃棄されるピペットチップPT毎に廃棄空間10sが区切られている。この廃棄空間10sは、図11に示すように、廃棄箱10の上面に開口する開口部10s1と、当該開口部10s1よりも鉛直下方に形成され、開口部10s1よりも開口面積の小さい絞り部10s2とを有している。この例では、各廃棄空間10sの開口部10s1は廃棄箱10の上面板101に貫通孔101hを形成することにより構成され、各廃棄空間10sの絞り部10s2は、廃棄箱10の内部に設けられた中間板102に貫通孔102hを形成することにより構成されている。このようにピペットチップPT毎に廃棄空間10sが区切られているので、既に廃棄されたピペットチップPTが邪魔になることがなく、スムーズにピペットチップPTを廃棄することができる。また、廃棄箱10に廃棄されたピペットチップPTは互いに分離された状態であるので、廃棄箱10から廃棄されたピペットチップPTを取り外す作業も容易となり、さらに、例えばピペットチップPTに残留した廃液をピペットチップPTから除去する作業も行いやすくなる。
【0066】
さらに、廃棄箱10は、各廃棄空間10sに廃棄されたピペットチップPTを所定方向に傾斜させる傾斜部10yを有してもよい。この傾斜部10yは、各廃棄空間10sに廃棄されたピペットチップPTの上端部が互いに干渉しないように傾斜させるものである。図11の例では、傾斜部10yは、廃棄箱10の底面又は内側面に形成されたテーパ面であり、ピペットチップPTの先端をホルダ3の回転中心軸側に移動させることにより、ピペットチップPTの上端部を径方向外側に位置させるものである。これにより、廃棄箱10に廃棄されたピペットチップPTは、平面視において放射状となる。なお、傾斜部10yは、廃棄箱10とは別の部材により構成してもよい。このような傾斜部10yにより、各廃棄空間10sに廃棄されたピペットチップPTの向きを揃えることができ、廃棄されるピペットチップPTの邪魔となることを防止することができる。
【0067】
前記実施形態では、ホルダ3と廃棄箱10とを一体に形成しているが、それぞれが別体に設けられたものであってもよい。
【0068】
前記実施形態では、生体試料を収容した容器に発光試薬を添加する構成であったが、発光試薬を収容した容器に生体試料を添加する構成としても良い。
【0069】
その上、前記実施形態の生体試料分析装置でATPを測定した試料に含まれる菌種を同定するようにしてもよい。
【0070】
具体的には、図12に示すように、発光試薬を添加した後の残液(ATP測定後の試料)又は、検体チューブFC内の残液(ATP測定前の試料)を用いて、残液中に含まれるDNA又はRNAから菌種を同定することが考えられる。より詳細には、DNAシーケンサを用いて、前記残液から菌種を同定する。なお、RNAの場合は、逆転写によりDNAを合成した後に、DNAシーケンサを用いることができる。
【0071】
DNAシーケンサで分析する前処理としては、DNA増幅法(PCR)により増幅することが考えられる。ここでは、残液から例えばDNA捕集ビーズを用いて捕集し、捕集したDNAをPCRにより増幅する。残液には、ATP抽出液が含まれている。ATP抽出液は、例えば、界面活性剤、エタノールとアンモニアの混合液、メタノール、エタノール、トリクロロ酢酸、過塩素酸、トリス緩衝液等を好適に使用することができる。界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、モノラウロイルリン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。ATP抽出液は、DNAを分解する酵素の働きを阻害するものもある。その他、ATP測定後の試料の場合には、ATP抽出液がPCRの酵素を失活させる恐れがあるため、ATP抽出液を除去する前処理を行ってもよい。
【0072】
さらに、前記実施形態の生体試料分析装置により、芽胞状態の菌(芽胞菌)のATP量を測定することもできる。つまり、芽胞菌を発芽させた後のATP量から芽胞菌が発芽する前のATP量を差し引くことによって、芽胞菌のATP量を測定することができる。
【0073】
具体的には、試料に芽胞反応液を入れないで、或いは、芽胞反応液を入れた場合には芽胞菌が発芽する前に、ATP測定を行うことにより、芽胞菌が発芽する前の通常状態の菌(生菌)のみのATP量(Y[amol])を測定することができる。また、試料の芽胞反応液を入れて芽胞菌を発芽させた後に、ATP測定を行うことにより、芽胞菌及び生菌の両方のATP量(X[amol])を測定することができる。そして、X-Y[amol]により、芽胞菌のATP量を算出することができる。X-Yの値が大きい場合には、芽胞菌が生成されていることが分かり、ユーザは殺芽胞剤などを用いて清掃するなどの対策を取ることができる。また、ある手法(例えば、ヒートショック法)を用いて試料中の生菌を死滅させる。そして、加熱により芽胞菌を発芽させたり、栄養を添加することにより芽胞菌を発芽させることで芽胞菌のATP量を測定することもできる。
【0074】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、試料の測定時間を短縮するとともに測定精度を向上することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13