(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】被測定物質の検知装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240709BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240709BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240709BHJP
G01N 21/64 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N21/17 A
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/00 H
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2021530749
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027148
(87)【国際公開番号】W WO2021006356
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019129311
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020006249
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】和田 花奈
(72)【発明者】
【氏名】野崎 孝明
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-133777(JP,A)
【文献】特開平06-207938(JP,A)
【文献】特開2017-219512(JP,A)
【文献】国際公開第2018/081440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
溶液、及び被測定物質と磁気標識物質とが結合した複合粒子を収容する容器と、
前記容器の下部領域以外の領域であって空間光が入射する所定領域に前記複合粒子を集めるように、磁場を印加する磁場印加部と、
空間光が入射した前記所定領域に集められた前記複合粒子を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて、前記複合粒子を検知する検知部と、
を有し、
前記撮像部は、前記磁場印加部を挟んで、前記容器と対向する位置に配置され、
前記磁場印加部は、前記撮像部が撮像する場合、前記撮像部による撮像を妨げない位置に前記容器に対して相対的に移動する、
ことを特徴とする検知装置。
【請求項3】
前記磁場印加部は、
前記溶液の上面と対向する第1平面と、
前記撮像部と対向する第2平面と、を有し、
前記第1平面の面積は、前記第2平面の面積より小さい、
請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記磁場印加部は、前記磁場印加部の下端部から上方に進むにつれて、連続的に又は段階的に断面積が大きくなる形状である、
請求項2に記載の検知装置。
【請求項6】
前記撮像部が撮像する撮像領域は、前記容器が占める領域の一部であり、
前記磁場印加部における前記溶液の上面側の端部は、前記撮像領域に含まれる大きさである、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の検知装置。
【請求項13】
溶液、及び被測定物質と磁気標識物質とが結合した複合粒子を収容する容器と、
前記容器の下部領域以外の領域であって空間光が入射する所定領域に前記複合粒子を集めるように、磁場を印加する磁場印加部と、
空間光が入射した前記所定領域に集められた前記複合粒子を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて、前記複合粒子を検知する検知部と、
を有し、
前記磁場印加部は、前記容器の上方に配置され、
前記撮像部は、前記容器の下方に配置された、
ことを特徴とする検知装置。
【請求項14】
溶液、及び被測定物質と磁気標識物質とが結合した複合粒子を収容する容器と、
前記容器の下部領域以外の領域であって空間光が入射する所定領域に前記複合粒子を集めるように、磁場を印加する磁場印加部と、
空間光が入射した前記所定領域に集められた前記複合粒子を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づいて、前記複合粒子を検知する検知部と、
を有し、
前記磁場印加部は、第1コイルを有し、
前記撮像部は、前記第1コイルを挟んで前記容器と対向する位置に、前記第1コイルの内側を通して前記容器の中を撮像できるように、配置された、
ことを特徴とする検知装置。
【請求項15】
前記磁場印加部は、さらに、第2コイルを有し、
前記第2コイルは、前記第1コイルによって磁場が印加される位置とは異なる位置に磁場を印加できるような位置に配置された、
請求項14に記載の検知装置。
【請求項16】
前記磁場印加部は、さらに、第2コイルを有し、
前記第1コイルによる磁場の印加を開始してから第1所定時間経過後、前記第1コイルによる磁場の印加を停止し、前記第2コイルによる磁場の印加を開始し、前記第2コイルによる磁場の印加を開始してから第2所定時間経過後、前記撮像部が撮像するように制御する制御部をさらに有する請求項14に記載の検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物質の検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、生体試料溶液中に存在するウイルスや細菌・真菌等の生体関連物質を検出する方法のニーズが高まっている。ウイルス等の数百nmの大きさの生体関連物質を検出する方法としては、近接場光を用いた光学的検出方法が知られている(例えば、特許文献1)。ここで、近接場光とは、光が屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質に進む場合、入射角が、ある臨界角を超えると境界面で光は全反射を起こし、屈折率の低い媒質には光が進まなくなるが、屈折率の低い媒質に光の1波長分程度、ごく薄く光がにじみ出る光である。近接場光は空間を伝播しないため回折せず、回折限界によって制限されていた顕微鏡の分解能において、回折限界を超えた光の波長以下の物質に関する情報を得る手段として用いられ、また微小な物質の加工方法として注目されている。
【0003】
しかしながら、細菌・真菌等の生体関連物質は数ミクロンの大きさを有しているため、近接場光を用いた光学的検出方法によっては、細菌・真菌等の生体関連物質を検出することは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態に係る被測定物質の検知装置は、細菌又は真菌等の生体関連物質を簡便に検出することを目的とする。
【0006】
本開示の実施形態に係る検知装置は、溶液、及び被測定物質と磁気標識物質とが結合した複合粒子を収容する容器と、容器の下部領域以外の領域であって空間光が入射する所定領域に複合粒子を集めるように、磁場を印加する磁場印加部と、空間光が入射した所定領域に集められた複合粒子を撮像する撮像部と、撮像部で撮像された画像に基づいて、複合粒子を検知する検知部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、撮像部は、磁場印加部を挟んで、容器と対向する位置に配置され、磁場印加部は、撮像部が撮像する場合、撮像部による撮像を妨げない位置に容器に対して相対的に移動することが好ましい。
【0008】
磁場印加部は、溶液の上面と対向する第1平面と、撮像部と対向する第2平面と、を有し、第1平面の面積は、第2平面の面積より小さいことが好ましい。
【0009】
磁場印加部は、前記磁場印加部の下端部から上方に進むにつれて、連続的に又は段階的に断面積が大きくなる形状であることが好ましい。
【0010】
磁場印加部は、撮像部が撮像する撮像領域内に複合粒子が分布するように、溶液に対して磁場を印加することが好ましい。
【0011】
撮像部が撮像する撮像領域は、容器が占める領域の一部であり、前記磁場印加部における前記溶液の上面側の端部は、撮像領域に含まれる大きさであることが好ましい。
【0012】
磁場印加部は、積層された複数の磁石を有することが好ましい。
【0013】
磁場印加部は、一体成型された磁石を有することが好ましい。
【0014】
複数の磁石は、円柱形状または角柱形状を有することが好ましい。
【0015】
磁場印加部は、前記磁場印加部における前記溶液の上面側の端部が溶液の上面に対向する位置と、磁場印加部が撮像部による溶液の上面の撮像を妨げない位置との間を容器に対して相対的に移動可能であることが好ましい。
【0016】
磁場印加部は、磁場印加部の端部が溶液の上面に対向する位置から鉛直方向上方に、複合粒子に対して磁界の影響が及ばない位置まで移動してから、撮像を妨げない位置に容器に対して相対的に移動することが好ましい。
【0017】
磁場印加部は、容器の上方に配置され、撮像部は、容器の下方に配置されるようにしてもよい。
【0018】
また、磁場印加部は、第1コイルを有し、撮像部は、第1コイルを挟んで容器と対向する位置に、第1コイルの内側を通して容器の中を撮像できるように、配置されていることが好ましい。
【0019】
また、磁場印加部は、さらに、第2コイルを有し、第2コイルは、第1コイルによって磁場が印加される位置とは異なる位置に磁場を印加できるような位置に配置されるようにしてもよい。
【0020】
磁場印加部は、さらに、第2コイルを有し、第1コイルによる磁場の印加を開始してから第1所定時間経過後、第1コイルによる磁場の印加を停止し、第2コイルによる磁場の印加を開始し、第2コイルによる磁場の印加を開始してから第2所定時間経過後、撮像部が撮像するように制御する制御部を有することが好ましい。
【0021】
本開示の実施形態に係る被測定物質の検知装置によれば、細菌又は真菌等の生体関連物質を、近接場光を用いた場合に比べて簡便に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図2】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置を構成する容器の側面図である。
【
図3】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置を構成する容器の側面図であって、溶液に被測定物質と磁気標識物質とを入れて攪拌により反応を促進させる状態を示す図である。
【
図4】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置を構成する撮像部が撮像した溶液中の所定領域における画像の例である。
【
図5】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置を構成する容器の側面図であって、溶液に被測定物質、磁気標識物質及び蛍光標識物質を入れて攪拌により反応を促進させる状態を示す図である。
【
図6】本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置を構成する撮像部が撮像した溶液中の所定領域における画像の他の例である。
【
図7】本開示の実施例2に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図8】本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図9】本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置の変形例の構成図である。
【
図10】本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置の他の変形例の構成図である。
【
図11】本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図12】本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置を構成する撮像部が撮像した溶液中の所定領域における画像であって、(a)は第1コイルのみにより磁場を印加した場合の画像であり、(b)は第1コイルによる磁場の印加を停止し、第2コイル及び第3コイルにより磁場を印加した場合の画像である。
【
図13】本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置を構成する撮像部が撮像した溶液中の所定領域における画像の他の例である。
【
図14】本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図15】本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置の変形例の構成図である。
【
図16】本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置を構成する磁場印加部の他の変形例を示す平面図である。
【
図17】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置の構成図である。
【
図18】(a)~(c)は、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置による検知手順を説明するための図である。
【
図19】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置により撮像した第1撮像領域の画像の例を示す図である。
【
図20】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置により撮像した第2撮像領域の画像の例を示す図である。
【
図21】(a)~(h)は、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置において磁場印加部として使用される磁石の例を示す図である。
【
図22】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置においてホルダに保持された磁石と溶液とを離間させた場合と接触させた場合の位置関係を示す斜視図であって、(a)はホルダに保持された磁石と溶液とを離間させた場合の位置関係を示し、(b)は両者を接触させた場合の位置関係を示す。
【
図23】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置に使用される、径が異なる3個の円柱状の磁石を連結させた場合に生じる磁束線図を示す図である。
【
図24】
図23において磁石の底面からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフである。
【
図25】径が異なる2個の円柱状の磁石を連結させた場合に生じる磁界における、磁石の底面からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフである。
【
図26】円柱状の磁石から生じる磁束線図を示す図である。
【
図27】円柱状の磁石から生じる磁界における、磁石の底面からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフである。
【
図28】円錐状の磁石から生じる磁界における、磁石の先端部からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフである。
【
図29】形状が異なる各種磁石における、磁石の中心部からの距離と磁束密度との関係を表すグラフである。
【
図30】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置において使用される磁石を保持するためのホルダの例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は斜視図である。
【
図31】本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置においてホルダに保持された磁石と溶液との位置関係を示す図であって、(a)は
図30に示したホルダを用いた場合の例を示し、(b)は他のホルダを用いた場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本開示の実施例に係る被測定物質の検知装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0024】
[実施例1]
まず、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図1に本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101の構成図を示す。実施例1に係る被測定物質の検知装置101は、容器3と、磁場印加部2と、撮像装置4と、を有する。
【0025】
容器3は、溶液31、及び被測定物質51と磁気標識物質53とが結合した複合粒子54を収容する。溶液31として、例えば、生体試料溶液が使用される。生体試料溶液の例として、例えば、唾液、血液、尿、汗が挙げられる。
図2に、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101を構成する容器3の側面図を示す。
図3に、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101を構成する容器3の側面図であって、溶液31に被測定物質51と磁気標識物質53とを入れて攪拌により反応を促進させる状態を示す。ここで、溶液31中の被測定物質51の全てに磁気標識物質53が結合して複合粒子54が形成されることが好ましい。また、容器3に、被測定物質51及び磁気標識物質53を入れた時点では、これらの物質は結合していなくてもよい。即ち、容器3において攪拌により発生した溶液31の流れなどによって、被測定物質51に磁気標識物質53が結合する反応が促進されて、複合粒子54が生成されてもよい。被測定物質51の例として、カンジダ菌、大腸菌、CRP(C反応性蛋白)が挙げられる。
【0026】
図1に示すように、所定領域1は、容器3の下部領域以外の領域であって空間光が入射する領域である。容器3の下部領域には、被測定物質51、磁気標識物質53、及び複合粒子54のいずれにも該当しない物質である「他の物質」52が沈殿する。他の物質52には、夾雑物が含まれる。所定領域1は、下部領域以外の領域であって、他の物質52を含まないことが好ましい。
【0027】
空間光(「伝搬光」ともいう)とは、空間を伝搬する一般的な光を言い、近接場光のように局在する光を含まない。具体的には、空間光とは、一般に発生源から数百ナノメートルから数ミクロン以内の距離だけ離れた位置で急激な減衰を示す近接場光を含まない光とされるが、本明細書においても、近接場光を含まないことを意味し、容器と溶液との界面から数百ナノメートルから数ミクロン以内の距離だけ離れた位置で急激な減衰を示すことのない光を意味する。近接場光を利用した検出方法では、被測定物質を検知可能な領域が溶液の表面から数百ナノメートルオーダーの範囲に限定される。細菌や真菌の大きさは、数ミクロンオーダーであるため、近接場光では検知することが難しく、さらに、近接場光を利用した検出装置は、検出基板や光学系が複雑になるという問題があった。これに対して、本開示の実施形態に係る被測定物質の検知装置は、空間光を用いているため、光の波長以上の物質の観察が可能であり、所定領域1に存在していれば被測定物質51の大きさに制限は無い。そのため、本開示の実施形態に係る被測定物質の検知装置によれば、数ミクロンオーダーのサイズを有する細菌や真菌等を簡便な構造で検知することが可能である。空間光は容器3の下方に配置した照明装置6から所定領域1に向けて照射される。ただし、このような例には限られず、照明装置6は容器3の側面に配置するようにしてもよい。さらに、照明装置6を用いる場合に限られず、自然光を空間光として利用してもよい。
【0028】
容器3における溶液31の攪拌方法としては、検知装置101にセットする前に容器3を手で振って攪拌してもよいし、検知装置101に攪拌機構を備え付けて検知装置101内で攪拌してもよい。検知装置101に備え付ける場合には、ボルテックスミキサーのように回転する円盤上に容器3を押し当てて攪拌する方法や、遠心攪拌、超音波振動等を利用することができる。さらに、溶液31に空間光を照射する場合、照明装置6から照射された光(励起光、白色光)により溶液31が加熱され、加熱により溶液31に対流が生じる。
【0029】
磁場印加部2は、容器3の下部領域以外の領域であって空間光が入射する所定領域1に複合粒子54を集めるように、磁場を印加する。磁場印加部2として、例えば、磁石、または電磁石等を用いることができる。
【0030】
磁場印加部2を容器3の上部に配置した場合には、磁気標識された被測定物質である複合粒子54と未反応の磁気標識物質53が容器3の上部の検知領域である所定領域1に集まる。一方、他の物質52は重力により容器3の底面に沈殿する。容器3の下部領域以外の領域である所定領域1に複合粒子54を集めるのは、容器3の下部領域に沈殿した他の物質52がノイズとなり、複合粒子54の検知が難しくなる場合があるためである。実施例1に係る被測定物質の検知装置101によれば、複合粒子54が集められた所定領域1と、他の物質52が沈殿した下部領域とを分離することができる。ここで、検知装置101の使用時の姿勢において、重力の方向を検知装置の「下」の方向といい、重力の方向とは反対の方向を検知装置の「上」の方向という。
【0031】
撮像装置4は、撮像部41と、検知部42と、制御部43と、を有する。所定領域1に入射した空間光は、所定領域1に含まれる溶液31中の複合粒子54で反射又は散乱等され、撮像装置4の撮像部41に入射して像を形成する。撮像部41は、空間光が入射した所定領域1に集められた複合粒子54を撮像する。撮像部41は、対象物を撮像して画像を取得する機能を有する。撮像部41として、例えば、静止画または動画を撮像するカメラやビデオカメラ等の装置を用いることができる。
図4に、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101を構成する撮像部41が撮像した溶液中の所定領域における画像100の例を示す。
【0032】
撮像装置4の検知部42は、撮像部41で撮像された画像100に基づいて、複合粒子54を検知する。検知部42は、検知領域である所定領域1に集められた複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53を含む画像から複合粒子54を検出する。具体的には、容器3の上面に集められた磁気標識された複合粒子54をその形状、輝度、また磁界や対流による動きによって画像解析する。溶液31の上面には、複合粒子54だけでなく未反応の磁気標識物質53も混在するが、被測定物質51の形状と、被測定物質51と磁気標識物質53とが結合していることをもって、判別ができる。
【0033】
撮像装置4の制御部43は、撮像装置4の全体を制御する。また、制御部43は、必要に応じて、検知装置101に含まれる撮像装置4以外の各部及び装置を制御する。
【0034】
撮像装置4として、例えば、CPU及びメモリを備えたコンピュータ等を用いることができる。検知部42が、撮像部41により撮像された画像100から複合粒子54を検知する機能、及び、制御部43の機能は、撮像装置4内のメモリに予め記憶されたプログラムに従って、撮像装置4内のCPUにより実行される。なお、撮像部41、検知部42、及び、制御部43は、必ずしも1台のコンピュータ等で実現されている必要はなく、複数台のコンピュータ等で実現されてもよい。
【0035】
磁気標識物質53は、被測定物質51に特異的に結合する。磁気標識物質53は、他の物質52には結合しない。
図1に示すように、複合粒子54は、被測定物質51に磁気標識物質53が結合したものであるため、磁場印加部2により印加された磁場の影響を受け、矢印Aの方向に向かって移動する。一方、他の物質52は、磁気標識物質53を含んでいないため、矢印Bで示すように容器3の下方向に働く重力により容器3の下部領域に沈降する。従って、磁場印加部2が印加する磁場により、複合粒子54は容器3の下部領域以外の所定領域1に集められる。この所定領域1に空間光が入射し、所定領域1からの反射光や透過光、散乱光等を撮像部41で撮像することにより複合粒子54を含む画像を得ることができる。
【0036】
さらに、蛍光標識物質等、光学的な特徴を有する物質を併せて標識すれば、S/N比を向上させることができる。
図5に、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101を構成する容器3の側面図であって、溶液31に被測定物質51、磁気標識物質53及び蛍光標識物質55を入れて攪拌により反応を促進させる状態を示す。蛍光標識物質55が被測定物質51と特異的に結合する性質を有する場合、被測定物質51、磁気標識物質53及び蛍光標識物質55を含む溶液31を攪拌することにより、被測定物質51に磁気標識物質53及び蛍光標識物質55が結合した複合粒子54aを形成することができる。
【0037】
この溶液31に、
図1に示すように容器3の上部に磁場印加部2を配置することにより磁場を印加して、複合粒子54a(図示せず)を容器3の下部領域以外の所定領域1に集めることができる。一方、他の物質52は、重力により沈降し容器3の下部領域に集められる。
【0038】
図6に、本開示の実施例1に係る被測定物質の検知装置101を構成する撮像部41が撮像した溶液31中の所定領域1における画像の他の例を示す。撮像部41が撮像した所定領域1における画像100には、磁場印加部2により集められた複合粒子54aと磁気標識物質53の画像が含まれるが、他の物質52は含まれない。また、複合粒子54aには蛍光標識物質55が含まれるため、所定領域1に蛍光を照射することにより、複合粒子54aの観察を容易に行うことができる。
【0039】
以上のように、実施例1に係る被測定物質の検知装置によれば、被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子、及び被測定物質以外の他の物質のそれぞれの空間的位置を分離し、空間光を用いて複合粒子を検出しているため、被測定物質を容易に検知することができる。
【0040】
[実施例2]
次に、本開示の実施例2に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図7に本開示の実施例2に係る被測定物質の検知装置102の構成図を示す。実施例2に係る被測定物質の検知装置102が実施例1に係る被測定物質の検知装置101と異なっている点は、磁場印加部2は、容器3の上方に配置され、撮像部41aは、容器3の下方に配置されている点である。実施例2に係る被測定物質の検知装置102におけるその他の構成は、実施例1に係る被測定物質の検知装置101における構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
実施例1の場合と同様に、実施例2における磁場印加部2は、容器3の上方に配置される。磁場印加部2により矢印Aの方向に生じる磁場勾配により、被測定物質51に磁気標識物質53が結合した複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53が容器3の上方に移動し、容器3の下部領域以外の所定領域1に集められる。一方、磁気標識物質53が結合していない他の物質52は矢印Bの方向に向かう重力により沈降し、容器3の下部領域に集められる。
【0042】
一方、実施例1の場合とは異なり、実施例2における、撮像部41a、検知部42a、及び制御部43aを含む撮像装置4aは、容器3の下方に配置される。撮像部41aが所定領域1の画像を撮像する場合、磁場印加部2に遮られることなく撮像を行うことができる。なお、撮像部41aは容器3の下部領域(底面)越しに所定領域1の画像を撮像することになるが、他の物質52の量が少ない場合は撮像の妨げにはならないと考えられる。
【0043】
また、
図7に示すように、撹拌によって他の物質52を容器3の側方に移動させることで、他の物質52に妨げられずに、撮像部41aが複合粒子54を撮像できるようにしてもよい。このように、攪拌によって、他の物質52が検出領域から吐き出される効果が得られる。
【0044】
また、
図7では、撮像部41aを容器3の下方(底面側)に配置した例を示したが、このような例には限られず、撮像部41aを容器3の側面側に配置するようにしてもよい。このような構成とすることにより、撮像部41aは、容器3の底面に集められた他の物質52の影響を受けずに複合粒子54を含む所定領域1の画像を撮像することができる。
【0045】
[実施例3]
次に、本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図8に、本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置103の構成図を示す。実施例3に係る被測定物質の検知装置103が実施例1に係る被測定物質の検知装置101と異なっている点は、磁場印加部は、第1コイル2aを有し、撮像部41は、第1コイル2aを挟んで容器3と対向する位置に、第1コイル2aの内側を通して容器3の中を撮像できるように、配置されている点である。実施例3に係る被測定物質の検知装置103におけるその他の構成は、実施例1に係る被測定物質の検知装置101における構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置103を構成する磁場印加部は、第1コイル2aと、直流電源10とを有する。第1コイル2aに直流電源10を接続し、第1コイル2aに電流を流すと第1コイル2aに磁界20が生じ、容器3に磁場が印加される。容器3の溶液31には、被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子、未反応の磁気標識物質、及び他の物質が含まれている。この磁界20により、容器3内の溶液31に含まれる磁気標識物質を容器3の下部領域以外の所定領域に集めることができる。
【0047】
撮像部41は、第1コイル2aを挟んで容器3と対向する位置に、第1コイル2aの内側を通して容器3の中を撮像できるように、配置されている。容器3の上面に磁石等を配置した場合、容器3内の所定領域1の画像を撮像するときに、磁石が所定領域を遮るため、磁石等を移動させる必要がある。これに対して、第1コイル2aのような空芯コイルの空芯部分を溶液31の上面に配置することにより、磁場を印加したまま上方から撮像部41が所定領域を撮像することが可能となる。
【0048】
図9に本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置103の変形例の構成図を示す。
図9に示すように、容器3は、第1コイル2aが巻回される上部容器3aと、溶液31を収容する下部容器3bとに分かれた構造となっている。このような構成とすることにより、第1コイル2aを容器3の上方に安定して配置させることができる。なお、上部容器3aと下部容器3bは一体形成されていてもよいし、分離可能となっていてもよい。ただし、撮像部41から溶液31を観察できるように、上部容器3aは透明な材質で構成されているか、中空の構造となっていることが好ましい。
【0049】
ここで、上部容器3aには溶液31が入っていないことが好ましい。そして、第1コイル2aの下端部21と、溶液31の液面310とは所定の間隔をあけて配置するようにすることが好ましい。これは、第1コイル2aによって生じる磁界は第1コイル2aを構成する導線に近いほど強くなるため、溶液31の液面310を第1コイル2aの下端部21に近づけ過ぎると磁気標識物質が結合した複合粒子が導線の近傍に引き付けられて集中してしまい、第1コイル2aの中空部を通して観察される領域における複合粒子の密度が低くなり、複合粒子を観察しにくくなるためである。第1コイル2aの下端部21と、溶液31の液面310とを所定の間隔をあけて配置することにより、第1コイル2aの中空部を通して観察される領域において複合粒子の密度が不均一になることを回避することができ、複合粒子を容易に観察することができる。
【0050】
図10に、本開示の実施例3に係る被測定物質の検知装置103の他の変形例の構成図を示す。
図10示すように、容器3は、第1コイル2aが巻回される第1部分3cと、溶液31を収容する第2部分3dとに分けられ、第1部分3c及び第2部分3dは、連続した一体構造となっている。このような構成とすることにより、簡単な構造で第1コイル2aを溶液31上に安定して配置させることができる。ここで、上述した理由と同じ理由により、第1コイル2aの下端部21と、溶液31の液面310とは所定の間隔をあけて配置することが好ましい。
【0051】
[実施例4]
次に、本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図11に、本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置104の構成図を示す。実施例4に係る被測定物質の検知装置104が実施例3に係る被測定物質の検知装置103と異なっている点は、磁場印加部は、さらに、第2コイル2bを有し、第2コイル2bは、第1コイル2aによって磁場が印加される位置とは異なる位置に磁場を印加できるような位置に配置されている点である。実施例4に係る被測定物質の検知装置104におけるその他の構成は、実施例3に係る被測定物質の検知装置103における構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
図11に示すように、第1コイル2aが容器3の上方に配置され、第1コイル2aによって磁場が印加される位置とは異なる位置に磁場を印加できるように、第1コイル2aを挟んで対向する位置に第2コイル2b及び第3コイル2cが配置されている。容器3の溶液31には、被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子、未反応の磁気標識物質、及び他の物質が含まれている。第1~第3コイル(2a、2b、2c)には、それぞれスイッチ(SWa、SWb、SWc)が直列に接続され、直流電源10との接続を個別にオン/オフすることができる。
【0053】
制御部43が、スイッチSWa、SWb、SWcの動作を制御する。なお、検知装置104のユーザが、スイッチSWa、SWb、SWcの動作を制御できるように、スイッチSWa、SWb、SWcが構成されていてもよい。この場合、ユーザが、スイッチSWa、SWb、SWcを直接制御できる。
【0054】
まず始めにスイッチSWaをオンし、第1コイル2aのみに電流を流して、容器3の溶液31内の所定領域に磁場を印加し、所定領域に複合粒子及び磁気標識物質を集める。
図12(a)に、本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置104を構成する撮像部41が撮像した溶液31中の所定領域における画像であって、第1コイル2aのみにより所定領域に磁場を印加した場合の画像100を示す。画像100内には、複合粒子54及び磁気標識物質53が含まれる。
【0055】
容器3の上面に第1コイル2aを設置した場合、磁束密度が高い領域に、未反応の磁気標識物質53と複合粒子54とが凝集することになる。そのため、未反応の磁気標識物質53に複合粒子54が紛れてしまいS/N損失が起こる場合がある。そこで、本実施例では、所定領域に磁気標識物質53及び複合粒子54を集めた後、磁場が印加される領域を移動させて、未反応の磁気標識物質53と複合粒子54との凝集を緩めるようにしている。
【0056】
次に、スイッチSWaをオフし、スイッチSWb及びSWcをオンすると、第1コイル2aから磁場の印加がなくなり、第2コイル2b及び第3コイル2cから溶液31の所定領域に磁場が印加される。
図12(b)に、第1コイル2aによる磁場の印加を停止し、第2コイル2b及び第3コイル2cにより所定領域に磁場を印加した場合の所定領域の画像100を示す。第1コイル2aによる磁場の印加が停止する一方、第2コイル2b及び第3コイル2cにより印加される磁場により、複合粒子54、及び被測定物質51が結合していない未反応の磁気標識物質53は、
図12(b)に示す矢印のように容器3の中心部から離れる方向に移動する。このとき、未反応の磁気標識物質53は複合粒子54に比べて軽いため、複合粒子54よりも速く移動する。その結果、未反応の磁気標識物質53のみを観察領域である所定領域から排除することができ、所定領域には複合粒子54が多く残り、複合粒子54の形状、輝度、動きを捉えやすくなり、S/N比を向上させることができる。
【0057】
図13に、本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置104を構成する撮像部41が撮像した溶液31中の所定領域における画像の他の例を示す。
図13に示すように、画像100の内側に未反応の磁気標識物質53の密度が低下した特定領域200を設定することにより、複合粒子54の密度が高い画像を得ることができる。
【0058】
本開示の実施例4に係る被測定物質の検知装置104では、例えば、次のような制御により画像100が撮像される。
【0059】
(ステップ1)制御部43の制御により、スイッチSWaがオン、スイッチSWb及びSWcがオフの状態とすることにより、第1コイル2aによる磁場の印加を開始して、所定時間(第1所定時間)待つ。
【0060】
(ステップ2)第1所定時間経過後、制御部43の制御により、スイッチSWaがオフ、スイッチSWb及びSWcがオンの状態とすることにより、第1コイル2aによる磁場の印加を停止し、第2コイル2b及び第3コイル2cによる磁場の印加を開始して、所定時間(第2所定時間)待つ。
【0061】
(ステップ3)制御部43の制御により、撮像部41は、第2コイル2b及び第3コイル2cによる磁場の印加を開始してから第2所定時間経過後、画像100を撮像する。
【0062】
特定領域200は、例えば、次のように予め定められる。すなわち、このステップ3の状態のときに、複合粒子54のみが特定領域200に含まれ、未反応の磁気標識物質53は特定領域200の外に移動しているように、特定領域200を予め定める。複合粒子54より未反応の磁気標識物質53の方が軽くて移動速度が速いため、このように特定領域200を定めることが可能である。第1、第2所定時間、及び、特定領域200は予め実験等で定めておくことができる。
【0063】
検知部42(撮像装置4)は、画像100に含まれる、予め定められた特定領域200のみを対象に、複合粒子54を検知する処理を行う。なお、撮像部41は、特定領域200のみが映るように、画像を撮像してもよい。
【0064】
特定領域200には、複合粒子54のみが存在するため、処理の簡素化及び高速化、並びに、検知精度の向上を実現できる。
【0065】
なお、
図11には、第2コイル2b及び第3コイル2cを設けた例を示したが、第2コイル2bのみを配置するようにしてもよい。また、第2コイル2b及び第3コイル2cを空芯コイルとした例を示したが、このような例には限られず、鉄芯コイルを用いるようにしてもよい。あるいは、第1コイル2aによる磁場の印加を停止すると同時に、第1コイル2aを挟んで対向する位置に永久磁石等を配置するようにしてもよい。
【0066】
[実施例5]
次に、本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図14に、本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置105の構成図を示す。実施例5に係る被測定物質の検知装置105が実施例1に係る被測定物質の検知装置101と異なっている点は、撮像部41は、磁場印加部2を挟んで、容器3と対向する位置に配置され、磁場印加部2は、撮像部41が撮像する場合、撮像部41による撮像を妨げない位置に容器3に対して相対的に移動する点である。実施例5に係る被測定物質の検知装置105におけるその他の構成は、実施例1に係る被測定物質の検知装置101における構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0067】
実施例5に係る検知装置105は、容器3の上面に磁場印加部2である磁石を配置して複合粒子54と未反応の磁気標識物質53を集めた後に、磁場印加部2である磁石を容器3に対して相対的に移動して、観察領域を確保し、容器3の上面からの観察を可能にする点を特徴としている。即ち、容器3及び撮像装置4を固定して、磁場印加部2である磁石を容器3に対して移動してもよいし、磁場印加部2である磁石を固定して、容器3及び撮像装置4を磁場印加部2に対して移動してもよい。あるいは、磁場印加部2である磁石と、容器3及び撮像装置4とを互いに逆方向に移動してもよい。溶液31の上面に磁場印加部2により磁場を印加するまでの工程は実施例1と同様である。
【0068】
磁場印加部2である磁石の移動機構として、3つの例を挙げて説明する。以下の説明では、容器3及び撮像装置4を固定して、磁場印加部2である磁石を容器3に対して移動する場合を例にとって説明するが、磁場印加部2である磁石を固定して、容器3及び撮像装置4を磁場印加部2に対して移動してもよいし、磁場印加部2である磁石と、容器3及び撮像装置4とを互いに逆方向に移動してもよい。第1の例に係る検知装置は、
図14に示すように、接続部9を介して磁場印加部2を水平方向に摺動可能な駆動部8を有する。まず、
図14における点線で示す位置に磁場印加部2を配置し、磁場勾配により溶液31の上面に複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53を集める。その後、制御部43により駆動部8を制御することにより矢印Cで示すように磁場印加部2を水平移動させる。そうすると、撮像部41と所定領域1との間に配置されていた磁場印加部2が移動することにより、撮像部41は所定領域1を直接撮像することができる。このとき、磁場印加部2の移動に伴って、磁場印加部2からの磁場により複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53が点線矢印Dの方向に移動するように、磁場印加部2を溶液31に近づけることが好ましい。磁場印加部2と溶液31との間の距離が大きすぎると磁場印加部2からの磁場が弱くなりすぎ、複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53は重力によって沈降し他の物質52との分離が難しくなるためである。
【0069】
第2の例に係る検知装置は、磁場印加部である磁石を、回転軸を中心として回転移動させる構成を有する。
図15に本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置の変形例105aである第2の例の構成図を示す。磁場印加部である磁石7aの端部は、駆動部81により回転駆動される回転軸71により軸支されている。制御部43により駆動部81を制御することにより、回転軸71が回転し、磁石7aを、回転軸71を中心に回動させることができる。
図15の点線で示すように、磁石7aは回動前の状態においては容器3の上部に配置される。このとき、磁石7aから磁場が印加され、被測定物質51に磁気標識物質53が結合した複合粒子54及び未反応の磁気標識物質53が溶液31の上面部に集められる。一方、他の物質52は重力の影響により容器3の底面に沈殿する。この状態では撮像部41と容器3との間に磁石7aが配置されているために、撮像部41は溶液31の上面部の画像を撮像することができない。
【0070】
次に、制御部43により駆動部81を制御して、磁石7aを、回転軸71を中心に回転させ、磁石7aを
図15の実線で示す位置に移動させる。この状態では撮像部41と容器3との間に磁石7aが配置されなくなり、撮像部41は溶液31の上面部の画像を撮像することが可能となる。
【0071】
ただし、磁石7aを容器3の上部から、溶液31の上面部に磁場が印加されなくなる位置まで移動させると、複合粒子54は重力の影響により沈降し始める。そこで、撮像部41による撮像を妨げず、かつ、複合粒子54が沈降しない程度の磁場が溶液31の上面部に印加されるように、磁石7aを容器3の近傍に配置することが好ましい。このようにすることで、撮像部41が所定領域の画像を撮像できるようにしながら、複合粒子54の重力による沈降を一定程度抑制することができる。
【0072】
第3の例に係る検知装置は、磁場印加部である磁石を溶液上面に複数個配置して、観察時には、観察領域の周り、即ち溶液上面の外周領域に配置される構成を有する。
図16に、本開示の実施例5に係る被測定物質の検知装置の他の変形例である第3の例を構成する磁場印加部の平面図を示す。
図16は容器3の上方から、磁場印加部である磁石70a、70b及び容器3を俯瞰した図であり、撮像部の図示は省略している。磁石70a及び70bは、それぞれ、接続部9a及び9bを介して、駆動部8a及び8bに接続されている。駆動部8a及び8bは、磁石70a及び70bを水平方向に摺動可能な機構を有する。
【0073】
まず、
図16の点線で示すように、磁場印加部である磁石70a及び70bを容器3の上面部に配置して複合粒子を溶液の上面部に集める。この状態では撮像部と容器3との間に磁石70a及び70bが配置されているために、撮像部は溶液の上面部の画像を撮像することができない。
【0074】
次に、
図16の矢印E及びFで示すように、制御部43により駆動部8a及び8bを制御することにより、接続部9a及び9bを介して、磁石70a及び70bを容器3から離れるように水平方向に移動させる。この状態では撮像部と容器3との間に磁石70a及び70bが配置されなくなり、撮像部は溶液の上面部の画像を直接撮像することが可能となる。
【0075】
ただし、磁石70a及び70bを容器3の上部から、溶液の上面部に磁場が印加されない位置まで移動させると、複合粒子は重力の影響により沈降し始める。そこで、撮像部による撮像を妨げず、かつ、複合粒子が沈降しない程度の磁場が溶液の上面部に印加されるように、磁石70a及び70bを容器3の近傍に配置することが好ましい。このようにすることで磁石70a及び70bからの磁場が溶液の上面部に印加されるため、複合粒子の重力による沈降を一定程度抑制することができる。
【0076】
[実施例6]
次に、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置について説明する。
図17に、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置106の構成図を示す。実施例6に係る被測定物質の検知装置106が実施例1に係る被測定物質の検知装置101と異なっている点は、磁場印加部2を構成する磁石20aは、溶液31の上面31aと対向する第1平面(20a-1s)と、撮像部41と対向する第2平面(20a-3s)と、を有し、第1平面(20a-1s)の面積は、第2平面(20a-3s)の面積より小さい点である。実施例6に係る被測定物質の検知装置106におけるその他の構成は、実施例1に係る被測定物質の検知装置101における構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0077】
実施例6に係る被測定物質の検知装置106において、後述するように磁場印加部2は、磁石20aと、磁石20aを保持するホルダ90から構成される。
図18(a)~(c)は本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置106による検知手順を説明するための図である。本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置106の検知手順について
図17及び
図18(a)~(c)を用いて説明する。なお、
図17及び
図18(a)~(c)においては、容器3及び撮像装置4を固定して、磁場印加部2を移動させる例を示したが、このような例には限られない。即ち、磁場印加部2を固定して、容器3及び撮像装置4を移動させてもよいし、磁場印加部2と、容器3及び撮像装置4とを互いに逆方向に移動させてもよい。
【0078】
まず、
図17及び
図18(a)に示すように、磁場印加部2を磁石20aの第1平面(20a-1s)が溶液31の上面31aに対向する第1の位置P1に移動させる。磁場印加部2の移動は、制御部43の制御によって実現される。このとき、磁石20aの磁界により、未反応の磁気標識物質53、及び被測定物質51と磁気標識物質53とが結合した複合粒子54が溶液31の上面31aに引き寄せられる。一方、他の物質52は磁石20aの磁界によって引き寄せられないため、容器3の底部に留まったままである。
【0079】
次に、
図17及び
図18(b)に示すように、磁場印加部2を矢印Gに示すように鉛直方向上方の第2の位置P2に容器3に対して相対的に移動させる。このとき、実施例5の場合のように磁場印加部を横方向に移動するものではないため、未反応の磁気標識物質53及び複合粒子54は横方向に移動することはない。従って、未反応の磁気標識物質53及び複合粒子54は重力によって沈降するだけである。
【0080】
実施例6において、未反応の磁気標識物質53及び複合粒子54のいずれの沈降速度が速いかは、それぞれの粒子の重さや大きさ、生体試料溶液の粘度等により決まり、一概には決まらないと考えられる。即ち、未反応の磁気標識物質53は複合粒子54よりも沈降速度が遅い場合もあれば、溶液31の粘度等により、未反応の磁気標識物質53は複合粒子54よりも沈降速度が速い場合もあると考えられる。未反応の磁気標識物質53の沈降速度が複合粒子54の沈降速度よりも遅い場合、磁場印加部2を第1の位置P1から第2の位置P2を経て第3の位置P3に移動させると、未反応の磁気標識物質53及び複合粒子54は次のようになる。即ち、複合粒子54が多く存在する領域よりも上方の領域に未反応の磁気標識物質53が多く存在するようになる。即ち、溶液31の上面31a近傍の領域には未反応の磁気標識物質53が多く存在し、この領域より底面側の領域には複合粒子54が多く存在することとなる。このとき、撮像部41が、底面側の領域に焦点が合うように撮像することにより、複合粒子54を効率よく撮像することができる。
【0081】
一方、上記とは逆に未反応の磁気標識物質53の沈降速度が複合粒子54の沈降速度よりも速い場合、磁場印加部2を第1の位置P1から第2の位置P2を経て第3の位置P3に移動させると、未反応の磁気標識物質53及び複合粒子54は次のようになる。即ち、複合粒子54が多く存在する領域よりも下方の領域に未反応の磁気標識物質53が多く存在するようになる。即ち、溶液31の上面31a近傍の領域には複合粒子54が多く存在し、この領域より底面側の領域には未反応の磁気標識物質53が多く存在することとなる。このとき、撮像部41が、溶液31の上面31a近傍の領域に焦点が合うように撮像することにより、複合粒子54を効率よく撮像することができる。
【0082】
なお、
図17においては、第1撮像領域R1を溶液31の上面31a近傍に設定する例を示したが、このような例には限られず、溶液31の上面31a近傍よりも下方の領域に第1撮像領域R1を設定するようにしてもよい。
【0083】
次に、
図17に示すように、磁場印加部2を撮像部41による溶液31の上面31aの撮像を妨げない第3の位置P3に移動させる。即ち、磁場印加部2を矢印Hの方向に移動させ、撮像部41が被測定物質を撮像できるようにする。撮像部41による撮像は、制御部43の制御によって実現される。このとき、例えば、磁気標識物質53の沈降速度が複合粒子54の沈降速度よりも遅い場合、複合粒子54は磁気標識物質53よりも速い速度で沈降を続け、磁気標識物質53が多く存在する領域よりも下方方向に複合粒子54が多く存在するようになる。即ち、
図17及び
図18(c)に示すように、溶液31の上面31a近傍の第1撮像領域R1には未反応の磁気標識物質53のみが存在し、第1撮像領域R1より底面側の第2撮像領域R2には複合粒子54のみが存在することとなる。このとき、撮像部41が、第2撮像領域R2に焦点が合うように撮像することにより、複合粒子54を効率よく撮像することができる。このように、磁場印加部2は、磁場印加部2における溶液31の上面側の端部である磁石20aの第1平面(20a-1s)が溶液31の上面31aに対向する第1の位置P1と、磁場印加部2が撮像部41による溶液31の上面31aの撮像を妨げない第3の位置P3との間を容器3に対して相対的に移動可能であることが好ましい。
【0084】
このとき、磁場印加部2は、第1の位置P1から鉛直方向上方に、複合粒子54に対して磁界の影響が及ばない第2の位置P2まで容器3に対して相対的に移動してから、第3の位置P3に移動するようにすることが好ましい。これは、磁場印加部2は、第1の位置P1から鉛直方向上方に、わずかに移動させただけでは、複合粒子54に対して磁界の影響が及ぶ場合が有り、そのような状態で磁場印加部2を水平方向に移動させると、磁界の影響を受けて複合粒子54も水平方向に移動してしまい、撮像部41の撮像範囲から外れてしまう恐れがあるためである。磁場印加部2を、第1の位置P1から鉛直方向上方に、複合粒子54に対して磁界の影響が及ばない第2の位置P2まで容器3に対して相対的に移動してから、第3の位置P3に移動するようにすることにより、複合粒子54は重力の影響を受けて鉛直方向下方に沈降していくため、複合粒子54を撮像部41の撮像範囲に収めた状態を維持することができ、複合粒子54を確実に観察することが可能となる。
【0085】
磁場印加部2を溶液31から遠ざけると、溶液31に印加された磁場は解除され、複合粒子54および未反応の磁気標識物質53は重力によって沈降を始める。このとき、複合粒子54は未反応の磁気標識物質53に比べ重力の影響をより大きく受けるため、複合粒子54の沈降の速さが、未反応の磁気標識物質53の沈降の速さより速い場合には
図18(c)のようになり、溶液31の深さによって存在する粒子が異なることになる。第1撮像領域R1に焦点を合わせると、
図19のように未反応の磁気標識物質53がくっきりとした粒子として認識することができる。一方、時間経過ともに、複合粒子54は沈降していくため、ぼやけた像になる様子を確認することが出来る。また、第2撮像領域R2に焦点を合わせると、
図20のように複合粒子54がくっきりとした粒子として認識することが可能となる。併せて、未反応の磁気標識物質53は、溶液31の上面31aから沈降し第2撮像領域R2を通過したものは、くっきりとした粒子として認識可能となり、第2撮像領域R2の焦点位置から外れているものはぼやけた像となる様子を確認することが可能になる。
【0086】
また、磁場印加部2は、撮像部41が撮像する第1撮像領域R1及び第2撮像領域R2(以下、単に「撮像領域(R1、R2)」ともいう。)内に複合粒子54が分布するように、溶液31に対して磁場を印加する。
図19及び
図20において、撮像領域(R1、R2)と磁場印加部2を構成する磁石20aの底面部である第1平面(20a-1s)との位置関係を示す。撮像領域(R1、R2)内に磁石20aの底面部である第1平面(20a-1s)の領域が収まる形状としているため、撮像領域(R1、R2)内に強い磁場が印加されることとなり、複合粒子54を撮像領域(R1、R2)内に集めることができる。
【0087】
また、撮像部41が撮像する撮像領域(R1、R2)は、容器3が占める領域の一部であり、磁場印加部である磁石20aにおける溶液31の上面側の端部である第1平面(20a-1s)は、撮像領域(R1、R2)に含まれる大きさであることが好ましい。このように、撮像部41が撮像する撮像領域(R1、R2)を容器3が占める領域よりも小さくすることにより、撮像部41が撮像する画像の分解能を高めることができる。また、上述したように、磁石20aの底面部である第1平面(20a-1s)を撮像領域(R1、R2)に含まれる大きさとすることにより、撮像領域(R1、R2)に複合粒子54を集めることができる。その結果、溶液31内に存在する複合粒子54を効率よく観察することができるようになる。
【0088】
実施例6に係る被測定物質の検知装置において磁場印加部として使用する磁石について説明する。
図21(a)~(h)に、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置において磁場印加部として使用する磁石の例を示す。
図21(a)は、径が異なる3個の円柱状の磁石(20a-1、20a-2、20a-3)を積層した磁石20aの斜視図である。磁石20aの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20aの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、溶液側に配置される磁石(20a-1)の溶液側から見た第1平面(20a-1s)の面積が最も小さく、撮像部側に配置される3段目の磁石(20a-3)の溶液側から見た第2平面(20a-3s)の面積が最も大きくなるように配置される。即ち、2段目の磁石(20a-2)の溶液側から見た平面を(20a-2s)とすると、以下の関係が成り立つ。
(20a-1s)の面積<(20a-2s)の面積<(20a-3s)の面積
【0089】
従って、磁石20aは、溶液の上面と対向する第1平面(20a-1s)と、撮像部と対向する第2平面(20a-3s)と、を有し、第1平面(20a-1s)の面積は、第2平面(20a-3s)の面積より小さい。さらに、第1平面(20a-1s)が占める範囲を撮像部の撮像領域内に設定することにより、複合粒子を第1平面(20a-1s)内に集めることができ、効率よく複合粒子を検出することができる。さらに、第1平面より大きな断面積を有する磁石を積層することにより、断面積が第1平面の面積で一定の円柱を用いる場合よりも大きな磁界を発生させることができ、複合粒子を効率よく引き寄せることができる。
【0090】
図21(b)は、径が異なる2個の円柱状の磁石(20b-1、20b-2)を積層した磁石20bの斜視図である。磁石20bの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20bの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、溶液側に配置される磁石(20b-1)の溶液側から見た第1平面(20b-1s)の面積が、撮像部側に配置される磁石(20b-2)の溶液側から見た第2平面(20b-2s)の面積よりも小さくなるように配置される。即ち、以下の関係が成り立つ。
(20b-1s)の面積<(20b-2s)の面積
【0091】
従って、磁石20bは、溶液の上面と対向する第1平面(20b-1s)と、撮像部と対向する第2平面(20b-2s)と、を有し、第1平面(20b-1s)の面積は、第2平面(20b-2s)の面積より小さい。さらに、第1平面(20b-1s)が占める範囲を撮像部の撮像領域内に設定することにより、複合粒子を第1平面(20b-1s)内に集めることができ、効率よく複合粒子を検出することができる。
【0092】
図21(c)は、円錐型の磁石20cであって、先端部に平面部を有する構成の例を示す。磁石20cの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20cの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、磁場印加部である磁石20cは、磁石20cの下端部から上方に進むにつれて、連続的に又は段階的に断面積が大きくなる形状である。即ち、溶液の上面と対向する第1平面(20c-s1)を有し、第1平面(20c-s1)から垂直方向上方に所定の距離離れた位置における第1平面(20c-s1)と平行な断面(20c-s(d))での断面積が、第1平面(20c-s1)の面積よりも大きくなる構成を有する。これは、第1平面(20c-s1)より大きな断面積を有する磁石を複数積層することと等価である。従って、円錐構造の磁石20cは、断面積が第1平面(20c-s1)の面積で一定の円柱を用いる場合よりも大きな磁界を発生させることができ、複合粒子を効率よく引き寄せることができる。
【0093】
図21(d)は、軸方向と垂直な断面の面積が異なる3個の角柱状の磁石(20d-1、20d-2、20d-3)を積層した磁石20dの斜視図である。磁石20dの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20dの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、溶液側に配置される磁石(20d-1)の溶液側から見た第1平面(20d-1s)の面積が最も小さく、撮像部側に配置される磁石(20d-3)の溶液側から見た第2平面(20d-3s)の面積が最も大きくなるように配置される。即ち、2段目の磁石(20d-2)の溶液側から見た平面を(20d-2s)とすると、以下の関係が成り立つ。
(20d-1s)の面積<(20d-2s)の面積<(20d-3s)の面積
【0094】
従って、磁石20dは、溶液の上面と対向する第1平面(20d-1s)と、撮像部と対向する第2平面(20d-3s)と、を有し、第1平面(20d-1s)の面積は、第2平面(20d-3s)の面積より小さい。さらに、第1平面(20d-1s)が占める範囲を撮像部の撮像領域内に設定することにより、複合粒子を第1平面(20d-1s)内に集めることができ、効率よく複合粒子を検出することができる。さらに、第1平面より大きな断面積を有する磁石を積層することにより、断面積が第1平面の面積で一定の角柱を用いる場合よりも大きな磁界を発生させることができ、複合粒子を効率よく引き寄せることができる。
【0095】
図21(e)は、軸方向と垂直な断面の面積が異なる2個の角柱状の磁石(20e-1、20e-2)を積層した磁石20eの斜視図である。磁石20eの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20eの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、溶液側に配置される磁石(20e-1)の溶液側から見た第1平面(20e-1s)の面積が、撮像部側に配置される磁石(20e-2)の溶液側から見た第2平面(20e-2s)の面積よりも小さくなるように配置される。即ち、以下の関係が成り立つ。
(20e-1s)の面積<(20e-2s)の面積
【0096】
従って、磁石20eは、溶液の上面と対向する第1平面(20e-1s)と、撮像部と対向する第2平面(20e-2s)と、を有し、第1平面(20e-1s)の面積は、第2平面(20e-2s)の面積より小さい。さらに、第1平面(20e-1s)が占める範囲を撮像部の撮像領域内に設定することにより、複合粒子を第1平面(20e-1s)内に集めることができ、効率よく複合粒子を検出することができる。
【0097】
図21(a)、(b)、(d)、(e)において、複数の磁石を積層する例として、径が異なる円柱形状または角柱形状を有する磁石を2個または3個積層する例を示したが、このような例には限られず、4個以上積層するようにしてもよい。また、上記の例では複数の磁石を重ね合わせる例を示したが、積層する複数の磁石は一体成型されていてもよい。
【0098】
図21(f)は、角錐型の磁石20fであって、先端部に平面部を有する構成の例を示す。磁石20fの鉛直方向の下方に被測定物質に磁気標識物質が結合した複合粒子を含む溶液が配置され、磁石20fの鉛直方向の上方に撮像部が配置されるものとする。このとき、溶液の上面と対向する第1平面(20f-s1)を有し、第1平面(20f-s1)から垂直方向上方に進むにつれて第1平面(20f-s1)と平行な断面(20f-s(d))での断面積が大きくなる構成を有する。これは、第1平面(20f-s1)より大きな断面積を有する磁石を複数積層することと等価である。従って、角錐構造の磁石20fは、断面積が第1平面(20f-s1)の面積で一定の角柱を用いる場合よりも大きな磁界を発生させることができ、複合粒子を効率よく引き寄せることができる。
【0099】
図21(g)に示した円柱状の磁石20gは、単一の円柱からなり、両端部の面積が等しい構造を有する。
図21(h)に示した円錐形状の磁石20hは、単純な円錐からなり、先端部に所定の大きさの平面部が設けられていない。磁石20g及び20hは、後述するように、複数の円柱状の磁石を積層した構成と対比するために例示したものである。
【0100】
本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置において、ホルダに保持された磁石と溶液とを離間させた場合の位置関係を
図22(a)に示し、両者を接触させた場合の位置関係を
図22(b)に示す。3つの円柱状の磁石を積層した磁石20aにおける溶液31側の1段目の磁石(20a-1)の溶液31側の第1平面(20a-1s)と溶液31の上面31aとの間の距離をhとする。
図22(b)において、「h=0」は、磁石20aから溶液31の上面31aまでの距離がゼロであることを示している。なお、
図22(a)、(b)において、磁石20aはホルダに保持されて、溶液31との間の距離が決められるが、説明を簡単化するために、ホルダの記載を省略している。
【0101】
図23に本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置に使用される、径が異なる3個の円柱状の磁石(20a-1、20a-2、20a-3)を連結させた磁石20a(
図21(a)参照)に生じる磁束線図を示す。
図23に示した磁石20aの径φの最大値は8[mm]であり、鉛直方向下方の先端部での径は1[mm]である。磁石20aはネオジム磁石を用いている。「h」は磁石20aの第1平面(20a-1s)からの距離であり、単位は[mm]である。
図23において、磁石20aの中心付近から縦方向に延びる点線は磁石20aの中心の位置を示している。
【0102】
図24に、
図23において磁石20aの第1平面(20a-1s)からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフを示す。横軸は磁石20aの径が最大の部分である3段目の磁石(20a-3)の端部からの位置を示し、縦軸は磁束密度[mTesla]である。磁石20aと溶液31とが接するh=0の場合、磁石20aの先端部である1段目の磁石(20a-1)の形状に対応して、3.5[mm]及び4.5[mm]の位置において磁束密度が極大値を示している。一方、磁石20aと溶液31と間の距離hが1[mm]の場合、磁石20aの先端部である1段目の磁石(20a-1)の形状による影響は、h=0の場合よりも減少して、比較的なだらかな曲線を描きつつ、磁束密度はある程度の大きさを維持している。一方、距離hを2[mm]以上とすると、磁束密度が急激に減少し、複合粒子及び未反応の磁気標識物質を引き寄せるための磁力が弱くなることが分かる。従って、
図24のグラフから、磁石20aと溶液31と間の距離hを1[mm]程度とすることが好ましいといえる。
【0103】
図25に、
図21(b)に示した、径が異なる2個の円柱状の磁石(20b-1、20b-2)を連結させた場合に生じる磁界における、磁石(20b-1)の底面である第1平面(20b-1s)からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフを示す。磁石20bにおいて、溶液側の磁石(20b-1)の形状は、磁石20aの溶液側の磁石(20a-1)と同様であるため、磁束密度の強度は
図24の場合と類似している。しかしながら、磁石20bの場合は2個の円柱状の磁石(20b-1、20b-2)を積層しており、撮像部側の磁石(20b-2)も溶液に近い距離にあるため、
図24の場合よりも中心から離れた位置において曲線が盛り上がっている。このことは、溶液側の磁石(20b-1)の周辺にも強い磁界が生じ、複合粒子及び未反応の磁気標識物質が磁石(20b-1)の周辺にも引き寄せられる可能性があることを示している。従って、溶液側の狭い範囲に複合粒子及び未反応の磁気標識物質を集めるという目的を達成するためには、磁石20bよりも磁石20aのように、溶液側の磁石の径が小さくなるように構成することが好ましいと考えられる。
【0104】
図26に、
図21(g)に示した円柱状の磁石20gから生じる磁束線図を示す。径φは8[mm]とした。
【0105】
図27に、
図26において磁石の底面からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフを示す。横軸は磁石20gの径が最大の部分の端部からの位置を示し、縦軸は磁束密度[mTesla]である。磁石20gと溶液とが接するh=0の場合、磁石20gの両端部に相当する、0[mm]及び8[mm]の位置において磁束密度が極大値を示している。さらに、磁石20gと溶液と間の距離hが1[mm]の場合においても、磁石20gの両端部の形状に対応した極大値は、h=0の場合よりも急激に減少するが、依然として両端部の磁界は中央部よりも強くなっていることがわかる。また、距離hを2[mm]とすると、約2~6[mm]の広い範囲に渡って磁束密度を均一化できる一方で、中央付近に強い磁界を生じさせることは難しいと考えられる。従って、観察領域の水平方向の距離が2[mm]以下の場合は、磁石20gにより集められる複合粒子は観察領域の外部にも分布することとなり、観察領域内に複合粒子を集める場合には、磁石20gよりも磁石20aを用いることが好ましいと考えられる。
【0106】
図28に、
図21(h)に示した円錐状の磁石20hから生じる磁界における、磁石の先端部からの距離を変えた場合の水平方向の磁束密度の大きさを表すグラフを示す。横軸は磁石20hの径が最大の部分の端部からの位置を示し、縦軸は磁束密度[mTesla]である。磁石20hと溶液とが接するh=0の場合、磁石20hの中心部に相当する、4[mm]の位置において磁束密度が極大値を示している。さらに、磁石20hと溶液と間の距離hが1[mm]の場合、磁石20hの中心部の磁界の極大値は、h=0の場合よりも減少する。従って、強い磁界を得るためには磁石20hの先端部を溶液に近づける必要がある。しかしながら、近づけ過ぎると中心部のみにおいて磁界が極大となり、複合粒子が1ヶ所に集中してしまい、複合粒子の数を計測することが難しくなると考えられる。従って、磁石の溶液と対向する部分の形状はある程度の面積をもった平面であることが好ましいと考えられる。
【0107】
また、磁石20aから磁石20f(
図21(a)から(f))は、磁石20h(
図21(h))より、所定の直方体状の空間を充填する体積を大きくすることができる。したがって、所定の直方体状の空間が磁石を配置するスペースとして与えられた場合、磁石20aから磁石20fは、磁石20hより、この空間の充填率を大きくできるため、磁界を大きくすることができる。
【0108】
図29に、形状が異なる各種磁石における、磁石の中心部からの距離と磁束密度との関係を表すグラフを示す。横軸は磁石の中心部における溶液側の先端部からの距離h[mm]であり、縦軸は磁束密度[mTesla]である。計算に使用した磁石は、
図21(a)、(b)、(g)、(h)にそれぞれ示した、円柱を3個連結した磁石20a、円柱を2個連結した磁石20b、単体の円柱状の磁石20g、及び円錐状の磁石20hである。
図29から、溶液上面の中心の磁束密度は、溶液と磁石との距離がゼロに近いほど、対向する磁石の形状を反映した分布になり強くなることを示している。このことから、複合粒子及び未反応の磁気標識物質を引き寄せるには磁石の形状を先細りの形状とすることが有利であることがわかる。
【0109】
図30に本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置において使用される磁石を保持するためのホルダの例を示す。
図20(a)~(c)は、それぞれホルダ90の平面図、側面図、斜視図である。ホルダ90の端部付近に磁石(図示せず)を装着するための開口部91が設けられ、ホルダ90の底面側には磁石を保持するための保持部92が設けられている。
【0110】
図31(a)及び(b)に、本開示の実施例6に係る被測定物質の検知装置においてホルダに保持された磁石と溶液との位置関係を示す。
図31(a)に、
図30(a)~(c)に示したホルダ90に3個の円柱状の磁石を積層した磁石20aを装着した例を示す。磁石20aを構成する3個の磁石のうち、2段目の磁石(20a-2)が保持部92で保持される。また、1段目の磁石(20a-1)がホルダ90から突出して、磁石20aを容器3に近づけたときに、第1平面(20a-1s)が溶液31の上面31aと距離h
1だけ離隔して対向する。1段目の磁石(20a-1)の全体がホルダ90から飛び出ている(ホルダ90の下側に配置されている)ことで、1段目の磁石(20a-1)の第1平面(20a-1s)を溶液31の上面31aに近づけやすくなっている。さらに、ホルダ90の下面が容器3の上端(容器3の縁)に接触するように、ホルダ90を配置し、かつ、容器3に入れる溶液31の量を予め定めておくことで、次のメリットが得られる。即ち、第1平面(20a-1s)と溶液31の上面31aとの距離h
1が測定ごとにばらつくことを抑制できる。また、保持部92の幅を、容器3の幅に合わせることで、保持部92が容器3に嵌るため、上面31aに平行な方向についての1段目の磁石(20a-1)の位置について、測定ごとにばらつくことを抑制できる。また、3段目の磁石(20a-3)はホルダ90の上側に露出する。ホルダ90の位置を制御することにより、磁石20aと溶液31との間の位置関係を制御することができる。
【0111】
図31(b)に、他のホルダ90aの構造を示す。ホルダ90aは磁石の保持部93をホルダ90aの表面に設けず、ホルダ90aの内部に設けた構造を有する。ホルダ90aの内部に設けられた保持部93が2段目の磁石(20a-2)を保持する。
図31(a)に示したホルダ90の構成では、ホルダ90の厚さが2段目の磁石(20a-2)の厚さと同じであるのに対して、
図31(b)に示したホルダ90aの構成では、ホルダ90aの厚さは2段目の磁石(20a-2)より厚くなっている。このため、
図31(a)に示したホルダ90の構成は、
図31(b)に示したホルダ90aの構成と比べて、1段目の磁石(20a-1)の厚さが同じであれば、1段目の磁石(20a-1)を溶液31の上面31aに近づけやすくなっている。即ち、
図31(a)に示したホルダ90と
図31(b)に示したホルダ90aにおいて、容器3の形状及び溶液31の量を同一とした場合、
図31(b)に示したホルダ90aにおける第1平面(20a-1s)と溶液31の上面31aとの距離をh
2とすると、h
1をh
2より小さくすることができる。同様に、
図31(a)に示したホルダ90の構成は、
図31(b)に示したホルダ90aの構成と比べて、2段目の磁石(20a-2)を溶液31の上面31aに近づけやすい。ホルダ90aのその他の構造は
図31(a)に示したホルダ90の構成と同様である。ホルダ90aの位置を制御することにより、磁石20aと溶液31との間の位置関係を制御することができる。
【0112】
なお、実施例6の説明において、撮像部を容器の上方に配置した例を示したが、このような例には限られず、撮像部を容器の下方に配置するようにしてもよい。即ち、
図17及び18(a)~(c)には、撮像部41、検知部42、制御部43を備えた撮像装置4を、容器3の上方に配置した例を示したが、
図7に示す撮像部41a、検知部42a、制御部43aを備えた撮像装置4aのように、撮像装置4を容器3の下方に配置するようにしてもよい。このような構成とすることにより、撮像部は、磁場印加部に遮られることなく、所定領域に集められた複合粒子を撮像することができる。
【0113】
以上の説明においては、測定対象物ではない他の物質が溶液中で重力により沈降する場合を例にとって説明した。しかしながら、他の物質が溶液中で重力とは反対方向に移動する場合であっても、本開示の実施形態の検知装置を利用することができる。即ち、磁気標識物質を結合させた被測定物質を、他の物質とは反対方向に移動させるように容器の下部に磁場印加部を設置するようにしてもよい。溶液内における他の物質の挙動の仕方に応じて、磁場印加部を適切な位置に配置することにより、溶液中における他の物質と被測定物質の位置を分離することができる。
【0114】
以上説明した本開示の実施例に係る被測定物質の検知装置によれば、溶液中の数ミクロンのサイズの細菌・真菌等を検知することができる。