(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】リン含有難燃剤の調製方法及びポリマー組成物におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20240709BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240709BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20240709BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20240709BHJP
C07F 5/06 20060101ALI20240709BHJP
C07F 9/38 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C09K21/12
C08L101/00
C08K5/5317
C07F19/00
C07F5/06 F
C07F9/38 F
(21)【出願番号】P 2021535891
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 US2019067184
(87)【国際公開番号】W WO2020132075
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-21
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505006666
【氏名又は名称】ランクセス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ジェイ・ボニハディ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ユエ・リ
(72)【発明者】
【氏名】チンリアン・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ・シャーマ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527683(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0032076(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C09K21/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン含有難燃剤の製造方法であって、金属又は好適な金属化合物と、前記金属又は前記好適な金属化合物に対して化学量論的過剰のアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸とを含む混合物を、反応温度で反応させる工程を含み、
- 前記金属が、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択され、ポリカチオンを形成することができるか、又は前記好適な金属化合物が、式M
p
(+)yX
q(式中、MはAl、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは3であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷均衡金属化合物を提供する)で表され;
- 前記好適な金属化合物が、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、又はカルボン酸塩から選択され、
- 前記混合物中の前記アルキル若しくはアリール置換ホスホン酸の、前記金属又は前記好適な金属化合物に対するモル比が4:1より大きく;
- 前記反応温度が105℃以上であり;
- 前記アルキル若しくはアリール置換ホスホン酸が、前記反応温度で溶融状態にある、
方法。
【請求項2】
リン含有難燃剤の製造方法であって、金属又は好適な金属化合物と、前記金属又は前記好適な金属化合物に対して化学量論的過剰のアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸とを含む混合物を、反応温度で反応させる工程を含み、
- 前記金属が、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択され、ポリカチオンを形成することができるか、又は前記好適な金属化合物が、式M
p
(+)yX
q(式中、MはAl、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは3であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷均衡金属化合物を提供する)で表され;
- 前記好適な金属化合物が、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、又はカルボン酸塩から選択され、
- 前記混合物中の前記アルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸の、前記金属又は前記好適な金属化合物に対するモル比が2:1より大きく;
- 前記アルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸が、前記反応温度で溶融状態にある、
方法。
【請求項3】
前記反応温度が、150℃以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応温度が140℃~260℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応温度が、40℃以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記反応温度が60℃~260℃の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記モル比が8:1以上である、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モル比が10:1~50:1の範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モル比が4:1以上である、請求項2、5及び6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モル比が5:1~25:1の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
MがAl又はFeである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
式M
p
(+)yX
qにおけるMがAlである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記好適な金属化合物が、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、及び酢酸鉄(III)から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル若しくはアリール置換ホスホン酸が式(I)
【化1】
(式中、Rは、C
1~12アルキル、又はC
6~10アリールである)
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸が式(Ia)
【化2】
(式中、RはC
1~12アルキル、又はC
6~10アリールである)
によって表される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
Rが非置換C
1~6アルキルである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はt-ブチルである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
リン含有難燃剤を製造するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法であって、前記リン含有難燃剤が、実験式(III)
【化3】
(式中、
Rはアルキル基又はアリール基であり;
MはAl、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される金属であり、yは3であり、したがって、M
(+)y(式中、(+)yは、カチオンに形式的に付与された電荷を表す)は金属カチオンであり;
a、b、及びcは、化合物中の相互に対応する成分の比率を表し、電荷均衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし;
a及びcはゼロではない)
の化合物を含む、方法。
【請求項19】
aが1、bが1、及びcが1である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(i)請求項1から17のいずれか一項に記載の方法を使用することによって難燃
剤を調製する工程及び(ii)得られた難燃
剤をポリマーに組み込む工程を含む、難燃性ポリマー組成物の製造方法。
【請求項21】
前記ポリマーが、ポリオレフィンホモポリマー若しくはコポリマー、ゴム、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー若しくはコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、又はポリアセタールのうちの1種又は複数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーが、スチレンポリマー若しくはコポリマー、ポリオレフィンホモポリマー若しくはコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリアミド、又はポリウレタンのうちの1種又は複数を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーが、ポリアルキレンテレフタレート、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、エポキシ樹脂、又はポリアミドを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーが、ガラス充填ポリアルキレンテレフタレート、ガラス強化エポキシ樹脂、又はガラス充填ポリアミドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマーがポリフタルアミドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーが、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド4T、又はポリアミド9Tを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマーが、ポリアミドMXD,6、ポリアミド12,T、ポリアミド10,T、ポリアミド6,T/6,6、ポリアミド6,T/D,T、ポリアミド6,6/6,T/6,I、ポリアミド6/6,T、又はポリアミド6,T/6,Iを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマーが、ポリフェニレンエーテル/スチレン樹脂ブレンド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル/ABSブレンド、メタクリロニトリル/ABSブレンド、α-メチルスチレン含有ABS、ポリエステル/ABS、ポリカーボネート/ABS、耐衝撃性改良ポリエステル、又は耐衝撃性改良ポリスチレンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
得られた難燃剤およびポリマーと共に、 (iii)追加の難燃剤、相乗剤、及び難燃補助剤から選択される、1種又は複数の化合物を組み込むことを更に含む、請求項20から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド、アルキル又はアリールポリホスフィンオキシド、アルキル又はアリールホスフェート、アルキル又はアリールホスホネート、アルキル又はアリールホスフィネート、アルキル又はアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属亜リン酸塩、金属次亜リン酸塩、金属ケイ酸塩、及び混合金属塩から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート)、亜リン酸水素アルミニウム、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド、メラム、メレム、メロン、メラミンホスフェート、メラミン金属ホスフェート、メラミンシアヌレート、メラミンボレート、タルク、クレイ、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)、酸化アンチモン(III及びV)水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム、及び水酸化ジルコニウムから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、アルミニウムトリス(ジメチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジプロピルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジブチルホスフィネート)、メチレンジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、メラム、メレム、メロン、及びジメラミン亜鉛ピロホスフェートから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
得られた難燃剤およびポリマーと共に、(iii)ハイドロタルサイトクレイ、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物から選択される1種又は複数の化合物を組み込むことを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
前記金属ホウ酸塩、金属酸化物及び金属水酸化物の金属が亜鉛又はカルシウムである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、メラミンポリ(金属ホスフェート)、ポリ-[2,4-(ピペラジン-1,4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-1,3,5-トリアジン]/ピペラジン、次亜リン酸アルミニウム、及びアルミニウムジアルキルホスフィネートから選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ポリシロキサン、カオリン、シリカ、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛複合体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛複合体、及びメラミン-ポリ(リン酸亜鉛)から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、メラム、及び、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛複合体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛複合体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1種又は複数の材料を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
(iii)前記1種又は複数の化合物が、メロン、及び、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛複合体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛複合体、及び酸化亜鉛から選択される任意の1種又は複数の材料を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
実験式(IIIa)
【化4】
(式中、Rはアルキル基、又はアリール基である)
の化合物を含む、難燃性材料。
【請求項40】
Rがアルキルである、請求項39に記載の難燃性材料。
【請求項41】
RがC
1~6アルキルである、請求項39に記載の難燃性材料。
【請求項42】
Rがメチル又はエチルである、請求項39に記載の難燃性材料。
【請求項43】
Rがメチルである、請求項39に記載の難燃性材料。
【請求項44】
前記実験式(IIIa)の化合物が、難燃性材料の少なくとも75質量%を構成する、請求項39から43のいずれか一項に記載の難燃性材料。
【請求項45】
前記実験式(IIIa)の化合物が、難燃性材料の少なくとも90質量%を構成する、請求項44に記載の難燃性材料。
【請求項46】
(i)ポリマー及び(ii)請求項39から45のいずれか一項に記載の難燃性材料を含む、難燃性ポリマー組成物。
【請求項47】
ポリマーの難燃性を高める方法であって、請求項39から45のいずれか一項に記載の難燃性材料を、任意選択で1種又は複数の追加の難燃剤、相乗剤、又は難燃補助剤と共に、ポリマー樹脂に組み込む工程を含む、方法。
【請求項48】
実験式(III)
【化5】
(式中、
Rはアルキル基又はアリール基であり;
MはAl、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される金属であり、yは3であり、したがって、M
(+)y(式中、(+)yは、カチオンに形式的に付与された電荷を表す)は金属カチオンであり;
a、b、及びcは、化合物中の相互に対応する成分の比率を表し、電荷均衡方程式2(a)+c=b(y)を満たし;
a及びcがゼロではない)
の結晶性化合物。
【請求項49】
Mがアルミニウム又は鉄である、請求項48に記載の結晶性化合物。
【請求項50】
Rが非置換C
1~6アルキルである、請求項48又は49に記載の結晶性化合物。
【請求項51】
Rがメチル又はエチルである、請求項50に記載の結晶性化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月20日出願の米国特許仮出願第62/782,948号、及び2019年2019年10月18日出願の米国特許仮出願第62/923,446号に対する優先権の利益を主張し、これらの両出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
非常に効果的で熱的に安定なリン含有難燃剤を、金属又は好適な金属化合物を化学量論的過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸と反応させる工程を含む方法によって製造する。得られた難燃剤の化学組成物は、多くの実施形態では、1つ又は主に1つの化合物として製造され、優れた難燃性をもたらし、高い熱安定性を呈する。本出願で開示されている難燃剤は、例えばポリマー組成物、特に高温で加工される熱可塑性プラスチックにおいて、広範囲の用途にわたって有用である。
【背景技術】
【0003】
ホスホン酸塩、すなわち直下の式
【0004】
【0005】
(式中、Rは、任意選択で置換されているアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、pは典型的には、1~4の数であり、Mは金属であり、yは典型的には、1~4の数であり、したがってM(+)y(式中、(+)yは、カチオンに形式的に付与された電荷を表す)は金属カチオンである)
の化合物は、多くのポリマー組成物において公知の難燃剤である。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0029532号において開示されているように、ポリエステル及びポリアミドの加工の際に遭遇する温度でのホスホン酸塩の分解は知られており、例えば、260又は270℃を超える温度で、加工中のポリマーに損傷を与える。
【0007】
米国特許第5,053,148号は、ホスホン酸塩を高温で加熱することにより、脆性の耐熱性発泡体が得られることを開示している。
【0008】
米国特許第9,745,449号の比較例1及び2では、10~25質量%のメチルホスホン酸アルミニウム塩を含むガラス充填ポリアミド組成物が、高温で加工された。配合中にトルクの低下が観察され、これはポリマーの劣化と一致しており、冷却時にもろくなり、粉砕後には粉末状になった最終製品材料が製造され、これを成形することはできなかった。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び示差走査熱量測定(DSC)による配合材料の分析は、劣化の追加の証拠を提供した。観察された所望のポリマー特性の損失は、米国特許出願公開第2007/0029532で示唆されたポリマーの分解、及び米国特許第5,053,148号で形成された脆性の発泡体と一致している。
【0009】
したがって、単純なホスホン酸塩は、250℃、260℃、270℃、又はそれ以上の温度等の高温で加工されるか、又はその後に高温にさらされる多くのポリマーにおける使用には好適ではなく、これは、単純なホスホン酸塩が、加工中そのような温度で化学的転換を受け、ポリマーに害を与えるためである。これは、配合中、例えば押出成形機内で、又は高温用途において塩がポリマー中に存在している間に発生する場合がある。
【0010】
他方で、米国特許第9,745,449号では、一般に他の材料の非存在下でホスホン酸塩を十分な高温で加熱すると、塩が、ポリマー基材に組み込まれたときに優れた難燃活性を呈する、熱的により安定な別の材料に熱転換されることが開示されている。熱転換された材料は、高温、例えば240℃、250℃、260℃、270℃又はそれ以上でポリマー組成物中で加工された場合、高温でも劣化せず、ポリマーの劣化も引き起こさず、このことは、難燃活性を呈するが、加工中にポリマーを劣化させることが多い、以前から知られているホスホン酸塩に対して重要な利点である。熱転換された材料は、実験式(IV):
【0011】
【0012】
(式中、Rは、アルキル又はアリールであり、Mは、金属であり、qは1~7の数、例えば1、2又は3であり、rは0~5の数、例えば0、1又は2であり、yは1~7、例えば1~4の数であり、nは1又は2であり、但し、2(q)+r=n(y)である)
によって表される1種又は複数の化合物を含むと記載されている。
【0013】
しかし、米国特許第9,745,449号の方法及び材料では、一般に固体塊の形態の製品の製造には、使用前に粉砕、製粉、又はその他の物理的加工を必要とすること;水溶性又は熱的に不安定な化合物を含有する生成混合物が形成されること;及び得られた生成物の、リンの金属に対する比を制御することが困難であること、等の課題に遭遇する。加えて、米国特許第9,745,449号の実施例には、ホスホン酸の中間金属塩を製造し、次に乾燥された塩を200℃超の温度で加熱する、いくつかの工程でリン含有難燃剤を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2007/0029532号
【文献】米国特許第5,053,148号
【文献】米国特許第9,745,449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、上記で特定された課題に対処すると同時に、米国特許第9,745,449号に記載されているような、中間塩の製造又は使用を必要とせずにリン含有難燃剤を製造する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示によれば、リン含有難燃剤が、金属又は好適な金属化合物と、金属又は好適な金属化合物に対して化学量論的過剰の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸とを含む混合物を、反応温度で反応させる工程を含む方法であって、
金属が、ポリカチオン(すなわち、式M(+)y(式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上である)によって対応するカチオン形態で表される金属)を形成することができ、又は、好適な金属化合物が、式Mp
(+)yXq(式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷均衡金属化合物を提供する)で表され;
混合物中の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するモル比が4:1より大きく;
反応温度が、105℃以上であり;
非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸が、反応温度で溶融状態にある、
方法によって製造される。
【0017】
リン含有難燃剤の製造方法であって、金属又は好適な金属化合物と、化学量論的過剰の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸とを含む混合物を、反応温度で反応させる工程を含み、
金属が、ポリカチオン(すなわち、上記の式M(+)yによって対応するカチオン形態で表される金属)を形成することができ、又は、好適な金属化合物が、式Mp
(+)yXq(式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷均衡金属化合物を提供する)で表され;
混合物中の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比が2:1より大きく;
非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸が、反応温度で溶融状態にある、
方法も開示される。
【0018】
本開示の方法において、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸又はピロホスホン酸は、本明細書に記載の化学量論的過剰で使用され、反応のための試薬及び溶媒として作用する。多くの場合、反応生成物はスラリーとして形成され、本発明の得られる難燃性生成物は、反応混合物から沈殿する。反応後に残っている過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸は、濾過及び/又は水等による洗浄によって、考えられ得る副生成物とともに除去することができる。多くの実施形態では、実質的に純粋な難燃性材料、例えば、難燃性活性を有する本質的に単一の化合物又は本質的に活性化合物の混合物を含む難燃剤が製造される。金属又は金属化合物に対する変換率は典型的には高く、生成物は容易に単離することができ、所望であれば、任意選択で更に精製することができる。
【0019】
本方法は、例えば、水溶性又は熱的に不安定な化合物の生成が減少又は回避され、かつ典型的には、粉末又は小粒子として結晶化する難燃性生成物を、容易に加工可能な形態で、つまり、粉砕、造粒、又はその他の物理的加工を要求せずに若しくは必要とせずに、直接製造することができるので、米国特許第9,745,449号に見出されるような方法で見られる困難を克服する。更に、多くの実施形態では、本開示に従って製造された、得られた難燃性材料は、本明細書で更に説明されるように、単純な金属ホスホン酸塩で見られるよりも金属に対するリンの比率がより高い。製造された難燃剤における金属に対するリンの比率が高いと、効率が向上し、したがって、難燃剤を熱可塑性プラスチックに配合する際に、充填レベルをより低くすることができる。
【0020】
本開示の追加の実施形態としては、リン含有難燃剤を調製するための方法であって、金属又は好適な金属化合物と、モル過剰の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸とを、反応温度で反応させる工程を含み、反応温度が、150℃以上であり、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸が、反応温度で溶融状態にあり、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比が4:1より大きい、方法が挙げられるが、これに限定されない、方法である。一実施形態では、反応温度は、約150℃~約300℃、例として、約150℃~約280℃、約160℃~約260℃、又は約160℃~約220℃の範囲である。一実施形態では、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、約5:1~約30:1の範囲である。一実施形態では、好適な金属化合物は、金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、カルボン酸塩、又はホスホン酸塩である。一実施形態では、好適な金属化合物は、アルミナ、三塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はアルミニウムイソプロポキシドである。
【0021】
他の実施形態には、本明細書に開示される方法に従って製造されるリン含有難燃剤;(i)ポリマー及び(ii)本開示のリン含有難燃剤を含む難燃性ポリマー組成物;本開示の難燃剤をポリマーに組み込むことにより、ポリマーの難燃性を改善する方法;及び本開示の難燃剤を含む難燃性組成物をポリマーに組み込む方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
前述の概要は、特許請求された発明の範囲を、いかなる方法でも制限することを意図するものではない。加えて、前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の実施例1に従って製造された例示的な難燃性材料の熱重量分析(TGA)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に明記しない限り、本出願中の「a」又は「an」は「1つ(種)又は複数」を意味する。
【0025】
本出願における「アルキル」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アリールアルキル」を含む。
【0026】
本出願における「アリール」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「アルキルアリール」を含む。
【0027】
本明細書で使用される「ホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸を指す。
【0028】
本明細書で使用される「ピロホスホン酸」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、金属又は好適な金属化合物に対する非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸又はピロホスホン酸の「化学量論的過剰」とは、金属又は好適な金属化合物とホスホン酸又はピロホスホン酸との間の反応に化学量論的に必要とされる量を超えるホスホン酸又はピロホスホン酸の量を指す。化学量論的過剰は、典型的には、本明細書に記載されるように、反応混合物中のホスホン酸又はピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するモル比によって表される。
【0030】
本開示の一態様によれば、金属又は好適な金属化合物と、化学量論的過剰の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ホスホン酸とを反応させて、リン含有難燃剤を形成する。反応温度は、105℃以上であり、ホスホン酸は、反応温度で溶融状態にあり、反応混合物中のホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するモル比は4:1より大きい。反応において、金属は酸化され、式M(+)y(式中、Mは金属であり、(+)yは金属カチオンの電荷を表し、yは2以上である)によって対応するカチオン形態で表すことができる。好適な金属化合物は、式Mp
(+)yXq(式中、Mは金属であり、(+)yは前記金属カチオンの電荷を表し、yは2以上であり、Xはアニオンであり、p及びqの値は、電荷均衡金属化合物を提供する)で表される。
【0031】
別の態様では、上記の金属又は好適な金属化合物及び化学量論的過剰の非置換又はアルキル若しくはアリール置換ピロホスホン酸を反応させて、リン含有難燃剤を形成する。ピロホスホン酸は、反応温度で溶融状態にあり、反応混合物中のピロホスホン酸の、金属又は好適な金属化合物に対するモル比は2:1より大きい。
【0032】
多くの実施形態では、反応混合物中のホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、5:1以上、例として、約6:1以上、約8:1以上、又は約10:1以上である。金属又は好適な金属化合物に対するホスホン酸の大過剰モルは、例として、約12:1以上、約15:1以上、約20:1以上、約25:1以上、約30:1以上、又はその間の任意の範囲を反応混合物中において使用することができる。金属又は好適な金属化合物に対して大過剰モルのホスホン酸を使用することができる。例えば、モル比は、最大約50:1、最大約100:1、最大約300:1、最大約500:1、又はそれらの間の任意の範囲であり得る。しかし、理解されるように、プロセス効率は、ある特定の大過剰モルで損なわれる場合があり、例えば、反応混合物からの生成物の沈殿が妨げられる場合がある。多くの実施形態では、モル比は、約8:1、約10:1、約12:1、又は約16:1から約100:1まで若しくは約50:1まで、例えば約10:1、約15:1、又は約20:1から約50:1まで若しくは約40:1までの範囲である。
【0033】
多くの実施形態では、反応混合物中のピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比は、3:1以上、例として、約4:1以上、約6:1以上、又は約8:1以上である。多くの場合、金属又は好適な金属化合物に対するピロホスホン酸の大過剰モルは、例として、約10:1以上、約12:1以上、約15:1以上、約18:1以上、約20:1以上、又はその間の任意の範囲を反応混合物中において使用する。金属又は好適な金属化合物に対して大過剰モルのピロホスホン酸を使用することができる。例えば、モル比は、最大約30:1、最大約50:1、最大約100:1、最大約250:1、又はそれらの間の任意の範囲であり得る。しかし、理解されるように、プロセス効率は、ある特定の大過剰モルで損なわれる場合があり、例えば、反応混合物からの生成物の沈殿が妨げられる場合がある。多くの実施形態では、モル比は、約4:1、約5:1、約6:1、又は約8:1から約50:1まで若しくは約25:1まで、例えば約5:1、約8:1、又は約10:1から約25:1まで若しくは約20:1までの範囲である。
【0034】
本開示によるリン含有難燃剤を製造するための反応温度は、ホスホン酸又はピロホスホン酸が反応温度で溶融状態になるように選択されるべきである。例えば、ホスホン酸及びピロホスホン酸(例えば、アルキル置換ホスホン酸又はピロホスホン酸)は、多くの場合、室温で固体であり(例えば、メチルホスホン酸は約105℃で溶融し、エチルホスホン酸は約62℃で溶融する)、したがって、ホスホン酸又はピロホスホン酸を加熱して液化した物理的状態(すなわち、溶融状態)にすることは、均一な反応混合物を形成するのに一般的に適切である。当業者が理解するように、ホスホン酸又はピロホスホン酸が溶融状態にある所望の反応温度は、選択される試薬及び熱力学的条件に応じて変化し得る。
【0035】
反応温度は、反応生成物中のモノアニオン性及び/又はジアニオン性ピロホスホン酸配位子の形成を促進するように選択されるべきである。ホスホン酸の場合、105℃以上の反応温度を使用する。特定の理論に拘束されるものではないが、反応温度は、脱水反応によりピロホスホン酸配位子を生成するように選択される。多くの実施形態では、金属又は好適な金属化合物及びホスホン酸は、105℃より高い温度、例として、約115℃以上、約120℃以上、約130℃以上、約140℃以上、約150℃以上、約160℃以上、約170℃以上、約180℃以上、約200℃以上、約220℃以上、約240℃以上、約260℃以上、約280℃以上、又はそれらの間の任意の範囲、で反応する。反応温度は、最大約350℃、最大約400℃、又はそれ以上等、上記の反応温度より高くてもよいが、典型的には、ホスホン酸の沸点に満たないか、又はそれを超えない。例えば、反応温度は、約150℃~約300℃、例として、約150℃~約280℃、約160℃~約260℃、又は約160℃~約240℃の範囲であってもよい。多くの実施形態では、反応温度は、約110℃~約350℃、約115℃~約300℃、約125℃~約280℃、又は約140℃~約260℃の範囲である。脱水反応によって水が形成され、望ましくない逆(加水分解)反応を引き起こす可能性がある。したがって、一部の実施形態では、反応系は、反応からの水の連続除去等の除去を促進するように設計されている。例えば、反応からの水の少なくとも一部又は所望の量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)を沸騰除去するのに必要な程度に、水の沸点より高い反応温度を選択することができる。追加の手段、例としてガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段を使用して、反応系からの水の除去を促進することができる。
【0036】
ピロホスホン酸は脱水の必要がないため、ピロホスホン酸の反応温度は、上記のホスホン酸の反応温度より低くてもよい。一般に、ピロホスホン酸を使用する場合の好適な反応温度の選択に関する限定基準は、ピロホスホン酸が反応温度で溶融状態にあるという要件である。多くの場合、金属又は好適な金属化合物とピロホスホン酸は、20℃以上の温度で反応する。多くの実施形態では、金属又は好適な金属化合物とピロホスホン酸は、20℃より高い温度、例として、約40℃以上、約60℃以上、約80℃以上、約100℃以上、約140℃以上、約180℃以上、約200℃以上、又はそれらの間の任意の範囲、で反応する。反応温度は、最大約300℃、最大約400℃、又はそれ以上等、上記の反応温度より高くてもよいが、典型的には、ピロホスホン酸の沸点に満たないか、又はそれを超えない。多くの実施形態では、反応温度は約25℃~約350℃、約25℃~約280℃、約30℃~約260℃、約40℃~約260℃、約60℃~約260℃、約80℃~約240℃、約100℃~約240℃、約110℃~約240℃、又は約120℃~約240℃の範囲である。例えば、ピロホスホン酸との反応に使用される金属化合物に応じて、反応により水が生成される場合がある。上記のように、一部の実施形態では、反応系は、反応からの水の連続除去等の除去を促進するように設計されている。例えば、反応からの水の少なくとも一部又は所望の量(例えば、大部分、実質的にすべて、又はすべて)を沸騰除去するのに必要な程度に、水の沸点より高い反応温度を選択することができる。追加の手段、例としてガスパージ、真空、及び/又は他の公知の手段を使用して、反応系からの水の除去を促進することができる。
【0037】
多くの場合、反応が進行するにつれて、得られた難燃性生成物は、生成反応混合物から沈殿するため、生成物はスラリーとして形成される。したがって、反応は典型的には、そのような沈殿を達成するのに十分な時間実行される。一般に、金属又は好適な金属化合物に基づいて、難燃性生成物への少なくとも実質的な変換を達成するために必要な時間は、反応温度に依存し、温度がより高ければ一般的に反応時間がより短くなる。多くの実施形態では、金属又は好適な金属化合物とホスホン酸又はピロホスホン酸とを、反応温度で約0.1~約48時間、例として、他の期間を使用してもよいが、約0.2~約36時間、約0.5~約30時間、約1時間~約24時間、例えば、約1時間~約12時間、約1時間~約8時間、又は約2時間~約5時間、加熱させる。
【0038】
金属又は好適な金属化合物及びモル過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を、反応混合物を形成するのに好適な任意の方法で合わせることができる。例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸及び金属又は金属化合物を、一緒に混合(例えば、撹拌)して、例として均質な反応混合物を形成してもよい。一部の実施形態では、金属又は好適な金属化合物を、反応温度に予熱したホスホン酸又はピロホスホン酸に加える。一部の実施形態では、ホスホン酸又はピロホスホン酸を、窒素雰囲気又は減圧/真空下等で、溶融時に予熱し、撹拌する。なおさらなる実施形態では、金属又は金属化合物を、反応の発熱性による反応温度の大きな変化を引き起こさないで、できるだけ迅速に加える。一部の実施形態では、ホスホン酸又はピロホスホン酸及び金属又は好適な金属化合物を、ホスホン酸を予熱せずに、又はホスホン酸若しくはピロホスホン酸を液化するために十分に加熱することなく合わせ、続いて成分を反応温度まで加熱する。金属又は好適な金属化合物、又はホスホン酸若しくはピロホスホン酸の全量を、一度にすべて又は少しずつ反応に加えることができる。モル過剰で使用されるホスホン酸又はピロホスホン酸は試薬及び溶媒として作用するため、追加の溶媒は必要ではないが、所望であれば、追加の溶媒を使用してもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示されるモル比の下限境界又はそれに近い、ホスホン酸又はピロホスホン酸の金属又は好適な金属化合物に対するモル比を使用する場合、追加の溶媒を使用する。
【0039】
一部の実施形態では、難燃性生成物への所望の変換、例えば完全又は実質的に完全な変換が達成された後、生成反応混合物を、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸の溶融温度よりも高いか又はそれ以上の温度まで冷却し、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を液化状態で保持する。過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を、濾過/洗浄により除去し、任意選択で回収することができる。回収した過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を、例えば金属又は好適な金属化合物がホスホン酸又はピロホスホン酸と反応する反応器内に戻して再利用してもよい。反応生成物への変換後、溶媒、例えば、水、アルコール、及び/又は別の好適な(例えば、極性)液体を任意選択で加えて、過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸を溶解又はそうでなければ除去するのを助けることができる。難燃性生成物を、多くの場合、濾過によって分離し、続いて任意選択で追加の後処理(例えば、洗浄、乾燥、篩分け等)を行う。得られた難燃性生成物は、一般に粉末又は小粒子の形態で、容易に加工可能であり、すなわち、使用前に粉砕、製粉、又は他の物理的加工を要求若しくは必要としない。本出願で開示されている方法に従って、難燃性材料を粉末又は小粒子として「直接」製造することにより、難燃性生成物の単離(例えば、難燃性生成物を過剰のホスホン酸又はピロホスホン酸又は残留溶媒から分離する)等の反応生成物の後処理が可能になり、後処理には例えば、濾過、篩分け、洗浄、乾燥等による反応生成物の加工が含まれる、ことを理解すべきである。反応後、得られた生成反応混合物、すなわち、多くの場合、スラリーを、過剰のホスホン酸の溶融温度まで又はそれをちょうど超えるまで冷却してもよく、スラリーを、水と合わせてもよい。形成された可能性のある大きな塊を破壊するために、必要に応じて水/スラリー混合物を撹拌してもよい。固体生成物を濾過により単離し、任意選択により水で洗浄し、乾燥させて、粉末又は小粒子の形態の生成物を得ることができる。場合によっては、生成物を篩にかけて粒径を調整してもよい。
【0040】
本開示の方法では、1つ又は複数の金属並びに1つ又は複数の単座及び/若しくは二座ピロホスホン酸配位子を含む難燃剤を得る。一部の実施形態では、ホスホン酸配位子を更に含む化合物を製造することができるが、すべての実施形態において、ピロホスホン酸モノアニオン性配位子及び/又はピロホスホン酸ジアニオン性配位子を含む化合物が得られる。
【0041】
金属ホスホネート塩の熱処理を含む先行技術の方法で得られる化合物の混合物とは対照的に、この方法により、難燃性化合物の混合物を得ることができるが、多くの実施形態では、この方法により、金属又は金属化合物に対して高い変換率、例として、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%又はそれ以上の変換率、又はそれらの間の任意の範囲で、1つ、又は主に1つの化合物として難燃性材料が得られる。ホスホネート配位子が難燃性生成物に存在し得る一般的な実施形態では、反応は一般的に以下に示すように進行する:
【0042】
【0043】
(式中、Mは、金属カチオンであり、(+)yはカチオンの電荷を表し、例えば、Mは、ジ、トリ、テトラ、ペンタカチオン金属であり; Xは、金属に結合した1つ又は複数のアニオン性配位子であり、M及びX(すなわち、p及びq)の化学量論は、電荷均衡化合物を提供し; RはH、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルであり; a、b、c、及びdは、反応生成物中の相互に対応する成分の比率を表し、yは2以上であり、a又はcのいずれか1つだけが0であり得る(多くの場合、cはゼロではない)という条件で、y、a、b、c、及びdは、電荷均衡生成物を提供する値である)。
一部の実施形態では、係数dを有する上記のホスホン酸配位子は、存在する場合、ジアニオンとして存在し得る。多くの実施形態では、dは0である。
【0044】
さらなる態様では、本開示に従って製造される難燃性生成物は、典型的には粉末又は小粒子の形態であり、実験式(II)
【0045】
【0046】
(式中、RはH、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル基であり、a、b、c、及びdは、化合物中の相互に対応する成分の比率を表し、aは一般に、0~8の数、例えば0~6、0~4、又は0~2であり、cは一般に、0~10の数、例えば0~8、0~6、0~4、又は0~2であり、dは一般に、0~6の数、例えば0~4、又は0~2であり、Mは、金属であり、yは2~5の数であり、例として2、3又は4、多くの場合2又は3であり、M(+)y(式中、(+)yは、カチオンに形式的に付与された電荷を表す)は金属カチオンである)
の化合物又は実験式(II)の異なる化合物の混合物を含む。a、b、c、d、yの値は変化する場合があるが、電荷均衡方程式2(a)+c+d=b(y)を満たし、a又はcのうちの1つだけが0であり得る。多くの実施形態では、cはゼロではない。化合物中にジアニオン性ホスホン酸配位子が存在する場合、電荷均衡方程式は2(a)+c+d+2(d)=b(y)となる。bの値は、前述の方程式を満たさなければならないという点でのみ限定されるが、多くの実施形態では、bは1~4の数、例えば1又は2である。一部の実施形態では、aは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、cは1又は2であり、dは0、1、又は2(例えば、0又は1)であり、生成物は電荷均衡がとれている。
【0047】
多くの実施形態では、
【0048】
【0049】
(式中、R、M、y、a、b、及びcは前述の通りであり、生成物電荷均衡方程式は、2(a)+c=b(y)になる)
におけるように、dは0である。
【0050】
多くの場合、上記の式(II)及び(III)のcは、ゼロではない(例えば、cは、1~10、1~8、1~6、1~4、又は1若しくは2である)。
【0051】
本出願で開示されている方法によれば、驚くべきことに、ジカチオン性又はトリカチオン性金属を使用する場合等、多くの実施形態において、上記式におけるcがゼロではない難燃性化合物が製造され、生成物は、当技術分野において記載されているリン含有難燃剤と比較して、難燃性を提供するための、リン原子の金属原子に対するより好ましい比率(すなわち、Mに対するP)を有する。例えば、トリカチオン金属(例えば、アルミニウム)及びジカチオン金属(例えば、亜鉛)は、それぞれ三置換及び二置換電荷均衡化合物を形成することが知られている。当技術分野で見られるように、リンのアルミニウムに対する比が3:1のトリスホスホネートアルミニウム塩、及びリンの亜鉛に対する比が2:1のジホスホネート亜鉛塩は難燃剤として知られている。しかし、本開示のピロホスホン酸配位子形成によれば、特に上記式におけるcがゼロでない場合、リンの難燃性生成物中の金属に対する比は、より高くなる。例えば、本明細書に開示される実施例に示されるように、本開示の方法を使用する場合、得られた難燃性生成物におけるリンのアルミニウムに対する比、又はリンの鉄に対する比は、4:1であった。このように金属に対するリンの比率が高いと、効率が高くなり、熱可塑性ポリマーに配合する場合の充填量を減らすことができる。
【0052】
ある特定の具体的な実施形態では、式(III)におけるyは2であり(すなわち、M(+)yは、本明細書に記載されたジカチオン性金属である)、aは0であり、bは1であり、cは2である。ある特定の実施形態では、ジカチオン金属Mは、Mg、Ca、又はZnである。他の実施形態では、式(III)におけるyは3であり(すなわち、M(+)yは、本明細書に記載されたトリカチオン性金属である)、aは1であり、bは1であり、cは1である。ある特定の実施形態では、トリカチオン金属Mは、Al、Ga、Sb、Fe、Co、B、及びBiから選択される。ある特定の実施形態では、トリカチオン金属Mは、Al、Fe、Ga、Sb、又はBである。
【0053】
無機配位化合物と同様に、上記の反応における反応生成物及び実験式(II)及び(III)の化合物は、反応生成物又は化合物が、配位ポリマー、錯塩、ある特定の原子価を共有している塩等を含むことができるように理想化されている。
【0054】
例えば、多くの実施形態では、実験式(II)又は(III)は、配位ポリマーのモノマー単位(すなわち、配位実体)を表し、拡張配位ポリマー構造は、それにより、本開示の難燃性化合物を形成する。
【0055】
一例において、MがAlであり、yが3である場合、実験式(III)の化合物を、以下の実験式(IIIa)
【0056】
【0057】
に従って製造する。
【0058】
ここに示すように、実験式に添え字a、b、及びcがないことは、添え字がそれぞれ1であることを示し、成分の比率が1:1:1であることを意味する(これは、実験式(IIIa)の場合、ジアニオン性ピロホスホン酸配位子、金属原子、及びモノアニオン性ピロホスホン酸配位子が、1:1:1の比率である)。この例では、実験式(IIIa)は、配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表し、拡張配位ポリマー構造は、それにより、本開示の難燃性化合物を形成する。
【0059】
多くの場合、実験式(II)又は(III)の化合物は、多くの実施形態では本明細書に記載の拡張配位ポリマーであり、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分、例として、難燃性生成物の少なくとも75質量%、85質量%、90質量%、95質量%、98質量%若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0060】
実験式(II)又は(III)(例えば、(IIIa))の化合物を、金属又は金属化合物に対して、高い変換率、例として、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%又はそれ以上の変換率、例えば少なくとも70~95%の変換率で製造することができる。これらのある特定の実施形態では、Mは、アルミニウム(すなわち、反応生成物は、アルミニウム又は本明細書に記載のもの等の1種若しくは複数のアルミニウム化合物を使用して製造される)、又は鉄(すなわち、反応生成物は、鉄又は本明細書に記載のもの等の1種若しくは複数の鉄化合物を使用して製造される)である。
【0061】
本方法で使用されるホスホン酸は、式(I)
【0062】
【0063】
(式中、RはH、アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルである)
で表すことができる。多くの実施形態では、Rは、H、C1~12アルキル、C6~10アリール、C7~18アルキルアリール、又はC7~18アリールアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1~4アルキルアミノ、ジ-C1~4アルキルアミノ、C1~4アルコキシ、カルボキシ若しくはC2~5アルコキシカルボニルによって置換される。一部の実施形態では、前記アルキル、アリール、アルキルアリール、又はアリールアルキルは、非置換C1~12アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキル、例えば、C1~6アルキル、フェニル、又はC7~9アルキルアリールである。一部の実施形態では、Rは、置換又は非置換C1~6アルキル、C6アリール、C7~10アルキルアリール、又はC7~12アリールアルキル、例えば、C1~4アルキル、C6アリール、C7~9アルキルアリール、又はC7~10アリールアルキルである。多くの実施形態では、Rは非置換C1~12アルキル、例えばC1~6アルキルである。多くの実施形態では、低級アルキルホスホン酸、例えば、メチル-、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、ブチル-、t-ブチル-等が使用される。
【0064】
アルキルとしてのRは、指定された炭素数を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、非分岐鎖アルキル、例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及び分岐鎖アルキル、例として、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、エチルヘキシル、t-オクチル等を含む。例えば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルから選択することができる。多くの実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピル、例えばメチル又はエチルである。
【0065】
多くの場合、Rがアリールである場合、Rはフェニルである。アルキルアリールとしてのRの例には、1つ又は複数のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル等から選択される基で置換されたフェニルが含まれる。アリールアルキルとしてのRの例には、例えば、ベンジル、フェネチル、スチリル、クミル、フェンプロピル等が含まれる。
【0066】
多くの実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、フェニル及びベンジルから選択される。
【0067】
本方法で使用されるピロホスホン酸は、式(Ia):
【0068】
【0069】
(式中、Rは、式(I)について上に開示したものと同じである)
で表すことができる。
【0070】
ピロホスホン酸と好適な金属化合物とを使用した一般的な反応スキームは、次のように表すことができる:
【0071】
【0072】
(式中、R、M、X、p、q、y、a、b及びcは、本明細書に記載されている通りである)。
【0073】
本開示の方法では、ホスホン酸及び/又はピロホスホン酸の混合物が反応温度で溶融状態である限り、複数のホスホン酸、複数のピロホスホン酸、又はホスホン酸及びピロホスホン酸の組み合わせを使用することができる。一部の実施形態では、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、インサイチュで生成される。例えば、ホスホン酸又はピロホスホン酸は、高級オリゴマーホスホン酸及び/又は環状ホスホン酸無水物出発物質の加水分解等によって調製することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「好適な金属化合物」等は、式Mp
(+)yXq(式中、Mは、ポリカチオンを形成することができる金属、例えば、2+、3+、4+、又は5+、典型的には2+、3+又は4+のカチオンを形成する金属であり、Xは、金属Mとの電荷均衡化合物を提供する任意のアニオンである)の化合物を指す。Xの好適な例としては、金属Mと一緒に酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、及びホスホン酸塩を形成するアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。p及びqの値は、電荷均衡金属化合物、例えば、アルミナ、Al2O3を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載された非置換金属Mを使用する。好適な金属(M)の例としては、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Co、Ga、Bi、Mn、Sn又はSbが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、Mは、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ga、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn又はSbから選択される。一部の実施形態では、Mは、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Fe、Sn又はSbから選択され、例えば、Mは、Mg、Zn、Ca、Fe又はAlであり得る。
【0075】
好適な金属化合物としては、金属-酸素結合、金属-窒素結合、金属-ハロゲン結合、金属-水素結合、金属-リン結合、金属硫黄結合、金属ホウ素結合等を有する化合物、例えば、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ge、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Co、Ga、Bi、Mn、Sn又はSbの酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、カルボン酸塩、炭酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホナイト、リン酸塩、亜リン酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、水素化物、スルホン酸塩、硫酸塩、硫化物等、例えば、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Ga、B、Al、Si、Ti、Cu、Fe、Sn又はSbの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシド;例として、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、B、Al、Si、Ti、Fe、Sn又はSbの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシド、例えば、Mg、Zn、Ca、Fe又はAlの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、又はアルコキシド、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
一部の実施形態では、金属又は好適な金属化合物の金属Mは、アルミニウム又は鉄である。一部の実施形態では、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、及びホスホン酸塩から選択される。一部の実施形態では、好適な金属化合物は、アルミニウムのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、及びアルコキシドから選択される。一部の実施形態では、好適な金属化合物は、アルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム、及び酢酸アルミニウムから選択される。一部の実施形態では、好適な金属化合物は、鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、及び酢酸塩から選択される。一部の実施形態では、好適な金属化合物は、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、及び酢酸鉄(III)から選択される。
【0077】
ある特定の実施形態では、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル又はブチルであり、MはAl、Fe、Zn又はCaである。さらなる実施形態では、Xは、酸素、ヒドロキシ、アルコキシ又はハロゲンである。
【0078】
本明細書に記載の反応は、減圧下又は真空下で行うことができるが、減圧下又は真空下で必ずしも行う必要はない。
【0079】
本明細書に記載の反応から形成され、多くの場合、スラリーとして存在する生成反応混合物を、液体(例えば、水)と合わせてもよく、所望であれば、形成された可能性のある塊を破壊するために、撹拌してもよい。固体生成物を濾過により単離し、任意選択で洗浄し、乾燥させて、粉末又は小粒子の形態の生成物を得ることができる。場合によっては、生成物を篩にかけて粒径を調整してもよい。
【0080】
本明細書に記載の反応を、任意選択で、シーディング材料で促進してもよい。例えば、シーディング材料を使用すると、難燃性生成物への変換を達成する時間が短縮され、生成物の物理的特性の一貫性が高まる場合がある。多くの場合、反応温度に加熱するとき又は加熱した後に、シーディング材料を反応混合物に加える。一部の実施形態では、シーディング材料は、本開示の方法に従って生成される難燃性材料、例として、本明細書に記載の実験式(II)、(III)、又は(IIIa)の難燃性化合物を含む。シーディング材料は、所望の粒径を有するように選択又は精製することができる。
【0081】
一部の実施形態では、好適な金属化合物はアルミナであり、難燃性材料は以下のように製造される:
【0082】
【0083】
一例では、C1~C12アルキルホスホン酸(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はt-ブチルホスホン酸)等のホスホン酸を、その融点である105℃まで、又はそれを超えるまで、例として、115℃、125℃、140℃、150℃、160℃、180℃、200℃、220℃、又は240℃以上まで加熱して、溶融時に(例えば、窒素下で)撹拌する。Alの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、炭酸塩又はカルボン酸塩、例としてアルミナ、三塩化アルミニウム、三水酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、炭酸アルミニウム又は酢酸アルミニウムを、化学量論的過剰のホスホン酸に、例として、本明細書に記載の金属化合物に対するホスホン酸のモル比、例えば、5:1以上、10:1以上、又は15:1以上で、撹拌しながら加える。典型的には、反応が進行するにつれてスラリーが形成され、固体難燃性生成物を、濾過、洗浄等によって単離し、粉末又は小粒子の形態で生成物を得ることができる。固体生成物を単離する前に、生成反応混合物に対する追加の後処理を行ってもよく、例として、生成反応混合物を過剰のホスホン酸の融点を超えるか又はそれ以上に冷却し、液体、例えば水と合わせ、任意選択で上記のように撹拌してもよい。固体難燃性生成物を濾過により単離し、任意選択により追加の溶媒で洗浄し、乾燥させて、粉末又は小粒子の形態の生成物を得ることができる。難燃性生成物は、以下の実験式:
【0084】
【0085】
に従って、リンとアルミニウムを4:1の比で含有している。さらなる例において、真上に記載された例は、鉄又は好適な鉄化合物、例として鉄のハロゲン化物、酸化物、アルコキシド、炭酸塩、又は酢酸塩、例えば、酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、鉄(III)イソプロポキシド、又は酢酸鉄(III)を用いて実施される。難燃性生成物は、以下の実験式:
【0086】
【0087】
に従って、リンと鉄を4:1の比で含有している。
【0088】
多くの場合、上記の実験式の化合物は(多くの実施形態では本明細書に記載の拡張配位ポリマーである)、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分、例として、難燃性生成物の少なくとも75質量%、85質量%、90質量%、95質量%、98質量%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0089】
一部の実施形態では、好適な金属化合物は、金属ホスホン酸塩である。金属ホスホン酸塩中の金属は、本明細書に記載の金属、Mであり得る。好適な金属化合物は、以下の式:
【0090】
【0091】
(式中、R及びMは上記の通りであり、pは2~5の数、例えば2、3又は4であり、yは2~5の数、例えば2、3又は4であり、したがってM(+)y(式中、(+)yは、カチオンに形式的に付与された電荷を表す)は金属カチオンである)
の金属ホスホン酸塩であり得る。典型的には、金属ホスホン酸塩は、電荷均衡がとれている(すなわち、p=y)。金属ホスホン酸塩は、当技術分野において公知の方法に従って調製することができる。
【0092】
一部の実施形態では、金属ホスホン酸塩を、初期金属化合物とホスホン酸用の溶媒(例えば、水)を伴うホスホン酸との反応から調製する。初期金属化合物は、本明細書に記載の好適な金属化合物による化合物であり得る。一部の実施形態では、初期金属化合物及びホスホン酸は、室温若しくは室温付近の温度で、又は約0~約20℃の範囲の温度で反応する。得られた金属ホスホン酸塩を、本明細書の本発明の方法による好適な金属化合物として使用することができる。
【0093】
例えば、ホスホン酸、例としてアルキルホスホン酸、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル又はt-ブチルホスホン酸と、溶媒(例えば、水)とを撹拌して、均質な溶液を形成することができる。水のホスホン酸に対する任意の好都合な質量比、例えば、10:1~1:10、より典型的には5:1~1:5、を使用してもよく、2:1~1:2の混合物を使用して良好な結果が達成された。溶液を、例えば約0~約20℃の範囲まで冷却し、初期金属化合物、例として金属酸化物、ハロゲン化物、アルコキシド、又は水酸化物を加えて、ホスホン酸と反応させることができる。金属ホスホン酸塩が形成され、次に、本開示の方法に従って好適な金属化合物として使用する。例えば、別々の反応器中で、本明細書に記載のモル過剰のホスホン酸を(ホスホン酸の金属ホスホン酸塩に対するモル比5:1等で)、溶融状態に予熱し、金属ホスホン酸塩と反応させて、難燃性生成物を形成する。好適な金属化合物としてホスホン酸アルミニウム塩を含む実施形態では、難燃性生成物は、以下の実験式:
【0094】
【0095】
に従って、リンのアルミニウムに対する比が4:1で、リンとアルミニウムを含有している。多くの場合、実験式の化合物は(多くの実施形態では本明細書に記載の拡張配位ポリマーである)、難燃性生成物のすべて、実質的にすべて、又は少なくとも大部分、例として、難燃性生成物の少なくとも75質量%、85質量%、90質量%、95質量%、98質量%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲を構成する。
【0096】
本発明の難燃剤は、当技術分野において公知の様々な他の難燃剤及び/又は相乗剤又は難燃補助剤と共に使用することができる。例えば、本発明の難燃剤は、
カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン。ポリフェニレンエーテル(PPE)、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、例えば、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド等;
メラミン、メラミン誘導体及びメラミン縮合生成物、メラミン塩、例としてメラミンシアヌレート、メラミンホウ酸塩、メラミンリン酸塩、メラミン金属リン酸塩、メラム、メレム、メロン等;
クレイ、金属塩、例として水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、混合金属塩等を含む無機化合物、例えばタルク及び他のケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩(DRAGONITE)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、HALLOYSITE若しくはリン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、及びホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛(又はその複合体、例えば、Kemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体(例えば、Kemgard 911A)、リン酸亜鉛(又はその複合体、例えば、Kemgard 981)、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化アンチモン水和物、酸化チタン及び酸化亜鉛若しくは酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウム等から選択される1種又は複数の材料とともに配合することができる。
【0097】
特に明記しない限り、本出願の文脈において、「リン酸塩(ホスフェート)」という用語は「リン酸塩」における、例として、金属リン酸塩、メラミンリン酸塩、メラミン金属リン酸塩、における成分として使用される場合、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、又はリン酸縮合生成物アニオン若しくはポリアニオンを指す。
【0098】
同様に、特に明記しない限り、本出願の文脈において、「亜リン酸塩(ホスファイト)」という用語は、「亜リン酸塩」における、例として金属亜リン酸塩における成分として使用される場合、亜リン酸塩又は亜リン酸水素塩を指す。
【0099】
本発明の難燃剤を、他の難燃剤、例として、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド難燃剤、アルキル又はアリールホスフェート難燃剤、アルキル又はアリールホスホネート、アルキル又はアリールホスフィネート、及びアルキル又はアリールホスフィン酸の塩と配合することもできる。一部の実施形態では、難燃剤は、本開示による難燃剤と以下の式のホスフィン酸塩(例えば、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート))
【0100】
【0101】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、本明細書に記載のRによる基であってもよく、Mは本明細書に記載の金属(例えば、Al又はCa)であり、nは2~7の数、例えば2~4、多くの場合、2又は3である)
との混合物を含む。
【0102】
多くの実施形態では、本開示による難燃性ポリマー組成物は、(i)ポリマー、(ii)本開示の難燃性材料、及び(iii)1種若しくは複数の追加の難燃剤及び/又は1種若しくは複数の相乗剤又は難燃補助剤を含む。
【0103】
例えば、一部の実施形態では、難燃性ポリマー組成物は、1種又は複数の追加の難燃剤、例えば、ハロゲン化難燃剤、ホスフィンオキシド難燃剤、アルキル若しくはアリールホスホネート、又はアルキル若しくはアリールホスフィネートの塩、例えば、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート)、例として、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)を含む。
【0104】
一部の実施形態では、難燃性ポリマー組成物は、1種若しくは複数の相乗剤又は難燃補助剤、例えば、メラミン、メラミン誘導体及びメラミン縮合生成物(例えば、メラム、メレム、メロン)、メラミン塩、ホスフィンオキシド及びポリホスフィンオキシド、金属塩、例として水酸化物、酸化物、酸化物水和物、ホウ酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜リン酸塩、ケイ酸塩等、例えば亜リン酸水素アルミニウム、メレム又はメラミン金属リン酸塩、例えば、金属がアルミニウム、マグネシウム又は亜鉛を含むメラミン金属リン酸塩、を含む。特定の実施形態では、1種又は複数の追加の難燃剤、相乗剤又は難燃補助剤は、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート)、亜リン酸水素アルミニウム、メチレンジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、エチレンビス-1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、メレム、メラム、メロン、又はジメラミン亜鉛ピロホスフェート、を含む。
【0105】
ある特定の実施形態は、ハロゲンを含まないポリマー組成物を提供する。そのような実施形態では、ハロゲン含有難燃剤又は相乗剤は可能な限り除外される。
【0106】
本開示の難燃性材料は、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対する本発明の難燃剤の質量が、100:1~1:100の範囲で、追加の難燃剤、相乗剤又は補助剤と合わせることができる。一部の実施形態では、本開示の難燃性材料は、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対する本発明の難燃剤の質量が10:1~1:10の範囲で、例えば、7:1~1:7、6:1~1:6、4:1~1:4、3:1~1:3、2:1~1:2の範囲の質量比で、存在する。本発明の難燃剤は、多くの場合、そのような組み合わせにおける主要成分であり、例えば、追加の難燃剤、相乗剤及び/又は補助剤の総質量に対する本発明の難燃性材料の質量比は、10:1~1.2:1又は7:1~2:1であるが、本発明の材料は、混合物の微量の成分、例えば、1:10~1:1.2の比率又は1:7~1:2の比率であってもよい。
【0107】
本発明の熱安定性難燃剤は、ポリマーを分解したりポリマーの物理的性質に悪影響を与えたりすることなく、高温で熱可塑性ポリマー、例として高温ポリアミド及びポリテレフタレートエステルに配合することができ、難燃活性は優れている。本発明の難燃剤は、他の相乗剤及び従来のポリマー添加剤とともに、他のポリマーに使用することができる。
【0108】
本発明の難燃性組成物のポリマーは、当技術分野において公知の任意のポリマー、例として、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、ゴム、ポリアルキレンテレフタレートを含むポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、及び生分解性ポリマー、であってもよい。異なるポリマーの混合物、例として、ポリフェニレンエーテル/スチレン樹脂ブレンド、ポリ塩化ビニル/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、又は他の耐衝撃性改良ポリマー、例として、メタクリロニトリル及びα-メチルスチレン含有ABS、及びポリエステル/ABS若しくはポリカーボネート/ABS、及びポリエステル若しくはポリスチレン+いくつかの他の耐衝撃性改良剤も使用することができる。そのようなポリマーは市販されており、或いは当技術分野において周知の手段によって作製される。
【0109】
本発明の難燃剤は、高温で加工及び/又は使用される熱可塑性ポリマー、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル等を含むスチレンポリマーにおいて、特に有用である。
【0110】
例えば、ポリマーは、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、又はポリウレタンであってもよい。ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性樹脂であってもよく、例えばガラス強化等の強化がされていてもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、熱可塑性ポリウレタンである。一部の実施形態では、ポリマーは、熱硬化性エポキシ樹脂である。複数のポリマー樹脂が存在してもよい。特定の実施形態では、ポリマーは、エンジニアリングポリマー、例えば、熱可塑性又は強化熱可塑性ポリマー、例えば、ガラス強化熱可塑性ポリマー、例として、任意選択でガラス充填ポリエステル、エポキシ樹脂又はポリアミド、例えば、ガラス充填ポリエステル、例として、ガラス充填ポリアルキレンテレフタレート、又はガラス充填ポリアミド、である。
【0111】
ポリエステル系樹脂としては、例えばジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、及びヒドロキシカルボン酸又はラクトン成分の重縮合によって得られるホモポリエステル及びコポリエステル、芳香族飽和ポリエステル系樹脂、例としてポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0112】
ポリアミド(PA)系樹脂としては、ジアミンとジカルボン酸由来のポリアミド;必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との組み合わせにおける、アミノカルボン酸から得られるポリアミド;並びに必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸との組み合わせにおける、ラクタム由来のポリアミド;が挙げられる。ポリアミドには、少なくとも2種類の異なるポリアミド構成成分由来のコポリアミドも含まれる。ポリアミド系樹脂の例としては、脂肪族ポリアミド、例としてPA46、PA6、PA66、PA610、PA612、PA11、及びPA12、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸及び/又はイソフタル酸と、脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン又はノナメチレンジアミンから得られるポリアミド;並びに、芳香族と脂肪族の両方のジカルボン酸、例えばテレフタル酸及びアジピン酸の両方と、脂肪族ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン及びその他から得られるポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、PA6を含む。一部の実施形態では、ポリマーは、PA66を含む。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリフタルアミドを含む。
【0113】
少なくとも280℃の融点を有するポリアミドは、成形物品の製造を可能にする、例えば、電気及び電子産業用の成形組成物の製造に広く使用されており、高温での優れた寸法安定性と非常に優れた難燃特性を備えている。このタイプの成形組成物は、例えば電子産業において、いわゆる表面実装技術、SMTによってプリント回路基板に実装される部品を製造するために必要とされている。この用途では、これらの部品は、寸法変化なしで短期間、最高270℃の温度に耐える必要がある。
【0114】
このような高温ポリアミドには、ポリアミド4,6等のアルキルジアミン及び二酸から製造されるある特定のポリアミドが含まれるが、多くの高温ポリアミドは芳香族及び半芳香族ポリアミド、すなわち、芳香族基を含有するモノマーから誘導されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は高級ポリマーである。単一の芳香族若しくは半芳香族ポリアミドを使用してもよく、又は芳香族及び/又は半芳香族ポリアミドのブレンドを使用する。上記のポリアミド及びポリアミドのブレンドを、脂肪族ポリアミドを含む他のポリマーとブレンドすることも可能である。
【0115】
これらの高温芳香族又は半芳香族ポリアミドの例としては、ポリアミド4T、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T);ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,l);ポリ(カプロラクタム-ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T);ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)コポリマー等、が挙げられる。
【0116】
したがって、本発明のある特定の実施形態は、高温、例えば280℃以上、300℃以上、一部の実施形態では320℃以上、例えば280~340℃で溶融するポリアミド、例としてポリアミド4,6並びに上記の芳香族及び半芳香族ポリアミドを含む組成物、高温ポリアミド及び本発明の難燃性材料を含む物品、組成物の調製方法、及び物品の成形方法、に関する。
【0117】
本明細書に記載されるように、本開示の多くの実施形態では、難燃性ポリマー組成物は、(i)ポリマー、(ii)本開示の難燃剤、及び(iii)1種若しくは複数の追加の難燃剤及び/又は1種若しくは複数の相乗剤又は難燃補助剤を含む。したがって、難燃剤(ii)は単独でポリマー系において優れた活性を呈するが、(iii)他の難燃剤、相乗剤及び補助剤から選択される1種又は複数の化合物と組み合わせて使用してもよい。化合物(iii)の例としては、ハロゲン化難燃剤、アルキル又はアリールホスフィンオキシド、アルキル又はアリールポリホスフィンオキシド、アルキル又はアリールホスフェート、アルキル又はアリールホスホネート、アルキル又はアリールホスフィネート、アルキル又はアリールホスフィン酸の塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、ポリフェニレンエーテル、メラミン、メラミン誘導体、メラミン縮合生成物、メラミン塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属ホウ酸塩、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属亜リン酸塩、金属次亜リン酸塩、金属ケイ酸塩、及び混合金属塩、が挙げられる。例えば、1種又は複数の化合物(iii)は、アルミニウムトリス(ジアルキルホスフィネート)、亜リン酸水素アルミニウム、ベンジルホスフィンオキシド、ポリベンジルホスフィンオキシド、メラム、メレム、メロン、メラミンホスフェート、メラミン金属ホスフェート、メラミンシアヌレート、メラミンボレート、タルク、クレイ、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、中空管としてのアルミノケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リン酸亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、シリカ、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)、酸化アンチモン(III及びV)水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、から選択してもよい。例えば、1種又は複数の化合物(iii)は、アルミニウムトリス(ジメチルホスフィネート)、アルミニウムトリ
ス(ジエチルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジプロピルホスフィネート)、アルミニウムトリス(ジブチルホスフィネート)、メチレンジフェニルホスフィンオキシド置換ポリアリールエーテル、キシリレンビス(ジフェニルホスフィンオキシド)、1,2-ビス-(9,10-ジヒドロ-9-オキシ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド)エタン、4,4'-ビス(ジフェニルホスフィニルメチル)-1,1'-ビフェニル、メラム、メレム、メロン、及びジメラミン亜鉛ピロホスフェート、から選択してもよい。
【0118】
一部の実施形態では、難燃性相乗剤は、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、及びメラミンポリ(金属ホスフェート)(例えば、メラミンポリ(リン酸亜鉛)(Safire400))から選択される材料を含む。一部の実施形態では、相乗剤は、トリアジン系化合物、例として、トリクロロトリアジン、ピペラジン及びモルホリンの反応生成物、例えば、ポリ-[2,4-(ピペラジン-1,4-イル)-6-(モルホリン-4-イル)-1,3,5-トリアジン]/ピペラジン(MCA(登録商標)PPMトリアジンHF)、を含む。一部の実施形態では、相乗剤は、金属次亜リン酸塩、例として、次亜リン酸アルミニウム(例えば、Italmatch Phoslite(登録商標)IP-A)を含む。一部の実施形態では、相乗剤は、アルミニウムジアルキルホスフィネート、例えば、アルミニウムジエチルホスフィネート(Exolit OP)等の有機ホスフィネートを含む。
【0119】
一部の実施形態では、難燃性ポリマー組成物は、ハイドロタルサイトクレイ、金属ホウ酸塩、金属酸化物、及び金属水酸化物、例として、金属が亜鉛若しくはカルシウムである、金属ホウ酸塩、金属酸化物、又は金属水酸化物から選択される1種又は複数の化合物を含む。
【0120】
ポリマー組成物中の本発明の難燃剤の濃度は、もちろん、最終ポリマー組成物に見られる難燃剤、ポリマー、及び他の成分の正確な化学組成に依存する。例えば、本発明の難燃剤は、ポリマー配合物の唯一の難燃剤成分として使用される場合、最終組成物の総質量の1~50質量%、例えば1~30質量%の濃度で存在し得る。典型的には、唯一の難燃剤として使用される場合、本発明の材料が少なくとも2%、例えば3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、又は25%以上存在する。多くの実施形態では、本発明の難燃剤は、最大45%の量で存在するが、他の実施形態において、本発明の難燃剤の量は、ポリマー組成物の40%以下、例えば、35%以下である。他の難燃剤又は難燃性相乗剤と組み合わせて使用する場合、必要な本発明の材料を少なくすることができる。
【0121】
任意の公知の配合技術を使用して、本開示の難燃性ポリマー組成物を調製することができ、例えば、難燃剤は、ブレンド、押出、繊維又はフィルム形成等によって溶融ポリマーに導入することができる。場合によっては、難燃剤を、ポリマーの形成又は硬化時にポリマーに導入し、例えば、本発明の難燃剤は、架橋前のポリウレタンプレポリマーに加えてもよく、又は、ポリアミド形成前のポリアミン又はアルキル-ポリカルボキシル化合物若しくは硬化前のエポキシ混合物に加えてもよい。
【0122】
本発明の難燃性ポリマー組成物は、多くの場合、当技術分野で頻繁に遭遇する一般的な安定剤又は他の添加剤、例として、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸塩、ホスホナイト、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、金属酸化物、ホウ酸塩、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第三級アミンオキシド、ラクトン、第三級アミンオキシドの熱反応生成物、チオ相乗剤、塩基性補助安定剤、例えばメラミン、メレム等、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、シアヌル酸トリアリル、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ハイドロタルサイト、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸Ca、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸Zn、オクタン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na、及びパルミチン酸K、ピロカテコール酸アンチモン、又はピロカテコール酸亜鉛、造核剤、透明化剤等、のうちの1種又は複数を含む。
【0123】
他の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、染料、蛍光増白剤、他の防炎剤、帯電防止剤、発泡剤、ドリップ防止剤、例えば、PTFE等も存在し得る。
【0124】
任意選択で、ポリマーは、フィラー及び強化剤、例えば、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック及びグラファイトを含んでもよい。そのようなフィラー及び強化剤は、フィラー又は強化剤が、最終組成物の質量に対して50質量%を超える濃度で存在する配合を含み、多くの場合比較的高濃度で存在する。より典型的には、フィラー及び強化剤は、全ポリマー組成物の質量に対して、約5~約50質量%、例えば、約10~約40質量%又は約15~約30質量%存在する。
【0125】
一部の実施形態では、本開示の難燃性ポリマー組成物を、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、シロキサン、ポリシロキサン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩中空管(Dragonite)、ハロイサイト、リン酸ホウ素、モリブデン酸カルシウム、剥離バーミキュライト、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛(又はその複合体、例えば、Kemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体(例えば、Kemgard 911A)、リン酸亜鉛(又はその複合体、例えばKemgard 981)等;2、4、12、13、14、15族(半)金属の水酸化物、酸化物、及び酸化物水和物、例えば、酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(ベーマイト)、アルミニウム三水和物、シリカ、ケイ酸塩、酸化スズ、酸化アンチモン(III及びV)及び酸化アンチモン水和物、酸化チタン及び酸化亜鉛又は酸化亜鉛水和物、酸化ジルコニウム及び/又は水酸化ジルコニウム等;メラミン及び尿素系樹脂、例としてメラミンシアヌレート、メラミンボレート、メラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェート、ポリフェニレンエーテル(PPE)等;並びに例えば、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、ウォラストナイト、ナノクレイ又は有機修飾ナノクレイ等を含むクレイから選択される1種又は複数の材料とともに配合する。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の難燃性ポリマー組成物を、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ポリシロキサン、カオリン、シリカ、水酸化マグネシウム、モリブデン酸亜鉛複合体(例えば、Kemgard 911B)、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体(例えば、Kemgard MZM)、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体(Kemgard 911C)、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体(例えば、Kemgard 911A)、リン酸亜鉛複合体(例えば、Kemgard 981)、及びメラミン-ポリ(リン酸金属)(例えば、メラミン-ポリ(リン酸亜鉛)(Safire 400))から選択される1種又は複数の材料とともに配合する。
【0127】
一部の実施形態では、ポリマー(本明細書に記載のもの等)及び本開示の難燃剤に加えて、難燃ポリマー組成物は、メラム、及び、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛複合体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛複合体、及び酸化亜鉛から選択される1種又は複数の材料を、任意選択で本明細書に記載されている追加の添加剤とともに含む。
【0128】
一部の実施形態では、ポリマー(本明細書に記載のもの等)及び本開示の難燃剤に加えて、難燃性ポリマー組成物は、メロン、及び、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛複合体、モリブデン酸亜鉛/水酸化マグネシウム複合体、モリブデン酸亜鉛/ケイ酸マグネシウム複合体、モリブデン酸カルシウム/亜鉛複合体、リン酸亜鉛複合体、及び酸化亜鉛から選択される1種又は複数の材料を、任意選択で本明細書に記載されている追加の添加剤とともに含む。
【0129】
さらなる非限定的な開示は、以下の実施例で提供されている。
【実施例】
【0130】
(実施例1)
【0131】
【0132】
250mLの三つ口フラスコに、114.6gのメチルホスホン酸を充填し、次にこれを加熱した。105℃でメチルホスホン酸が溶融し、N
2ブランケット下で激しく撹拌を開始した。メチルホスホン酸を240℃に加熱し、大きな発熱を起こさないで7.78gのアルミナをできるだけ素早く加えた。過剰のメチルホスホン酸の融点である約110℃をわずかに超えるまでスラリーを冷却し、次に、添加速度によって過剰な蒸気が発生しないことを確認しながら、250mLのH
2Oに加えた。得られた混合物を撹拌して、形成された可能性のある大きな塊を破壊し、生成物を濾過により単離し、750mLの追加のH
2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、45.08gの生成物を微細な無色の結晶として87%の収率で得た。上記の生成物の実験式は、純粋な結晶生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表す。生成物の熱重量分析(TGA)を
図1に示す。
【0133】
(実施例2)
【0134】
【0135】
250mLの三つ口フラスコに149.8gのエチルホスホン酸を充填し、これを62℃で溶融するまで加熱した。N2ブランケット下で激しく撹拌を開始し、エチルホスホン酸を240℃に加熱し、大きな発熱を起こさないで6.9gのアルミナをできるだけ素早く加えた。スラリーを約80℃まで冷却し、次に、添加速度によって過剰な蒸気が発生しないことを確認しながら、250mLのH2Oに加えた。得られた混合物を撹拌して、形成された可能性のある大きな塊を破壊し、生成物を濾過により単離し、750mLの追加のH2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、49.07gの生成物を微細な無色の結晶として84%の収率で得た。上記の生成物の実験式は、純粋な結晶生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表す。
【0136】
(実施例3)
【0137】
【0138】
樹脂ケトルに83gのメチルホスホン酸を充填し、これを120℃まで加熱した。水の存在下で50gのメチルホスホン酸と35.4gのアルミニウムトリス(イソプロポキシド)から調製した中間物質を、シロップとして樹脂ケトルに加えた。得られた溶液は、モル比が5:1のメチルホスホン酸:アルミニウムメチルホスホン酸中間体を含有し、これを機械的に撹拌しながら240℃まで加熱した。固体が形成された後、撹拌を240℃で約30分間続けた。500mLのH2Oを加え、混合物を16時間撹拌しながら均一なスラリーを作製した。上記のように、生成物を濾過により単離し、750mLの追加のH2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、64.3gの生成物を微細な無色の結晶として93%の収率で得た。上記の生成物の実験式は、純粋な結晶生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表す。
【0139】
(実施例4)
【0140】
【0141】
1Lの三つ口フラスコに1305gのメチルホスホン酸を充填し、次にこれを加熱した。105℃でメチルホスホン酸が溶融し、真空下にて激しく撹拌を開始した。メチルホスホン酸を180℃に加熱し、大きな発熱や過度の発泡を起こさないで61gのアルミナをできるだけ素早く加えた。過剰のメチルホスホン酸の融点である約110℃をわずかに超えるまでスラリーを冷却し、次に、添加速度によって過剰な蒸気が発生しないことを確認しながら、1LのH2Oに加えた。得られた混合物を撹拌して、形成された可能性のある大きな塊を破壊し、生成物を濾過により単離し、1.5Lの追加のH2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、408gの生成物を微細な無色の結晶として84%の収率で得た。上記の生成物の実験式は、純粋な結晶生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表す。
【0142】
実施例1~4のそれぞれからの生成物は、PのAlに対する比が4:1(ICP元素分析)であった。
【0143】
(実施例5)
【0144】
【0145】
1Lの反応容器に1412.6gのメチルホスホン酸を充填し、次に、これを、250RPMで撹拌しながら、窒素パージ(4L/分)下で165℃まで加熱した。大きな発熱を起こさないように、78.2gの酸化鉄を少しずつ加えた。反応混合物を、165℃で約24時間加熱した。次に、オフホワイトのスラリー生成物を含有する生成反応混合物を約130℃まで冷却し、氷水浴で冷却したビーカー中の1.5Lの水に注いだ。生成物を濾過により単離し、500mL×3の追加の水を用いて洗浄し、乾燥させて、83%の収率で微細なオフホワイト色の結晶を得た。この生成物は、以下の実験式によると、リンの鉄に対する比が4:1(ICP元素分析)であった。
【0146】
【0147】
上記の生成物の実験式は、純粋な結晶生成物を形成する配位ポリマーの繰り返しモノマー単位(すなわち、配位実体)を表す。
【0148】
(実施例6)
ポリマー組成物を調製し、UL-94試験下で難燃剤活性を評価した。厚さ0.8mmでのUL-94 V-0等級を、ポリアミド6,6;ポリアミド6、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び上記の実施例1、3、及び4に従って製造された難燃剤を含む高温ポリアミド(以下に示す):
【0149】
【0150】
のガラス充填ポリマー組成物について測定した。
【0151】
【0152】
上記の実施例1、3及び4に従って製造された難燃剤を、ガラス充填PA66、PBT及びポリフタルアミド中に種々の相乗剤と合わせて含有する追加のポリマー組成物を調製し、0.8mmの厚さでUL-94試験下にて評価した。結果を、表2(PA66)、表3(PBT)及び表4(ポリフタルアミド)に提供する。本発明の難燃剤を含有しない試料15、20及び22は、UL-94試験に不合格であった。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
(実施例7)
PA66に、上記の実施例5に従って製造された難燃剤を含有するポリマー組成物を調製し、0.8mmの厚さでUL-94試験下にて難燃活性について評価した。結果を表5に提供する。本発明の難燃剤を含有しない試料24は、試験に不合格であった。
【0157】
【0158】
本発明の特定の実施形態を図示し説明したが、本開示の明細書及び実施を考慮すれば、特許請求された本発明の範囲から逸脱することなく種々の修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本明細書及び実施例は、単に例示として考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって示されている。