(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】アザ二環式化合物とポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ阻害剤を用いたがん併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20240709BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20240709BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240709BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/502
A61K31/55
A61K31/5025
A61K31/454
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021538599
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030980
(87)【国際公開番号】W WO2021024393
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-07-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2018年11月27日 https://portal.uspto.gov/Pair/PublicPair
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 弘美
(72)【発明者】
【氏名】有村 直紀
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046498(WO,A1)
【文献】GABBASOV R. et al.,Targeted blockade of HSP90 impairs DNA-damage response proteins and increases the sensitivity of ova,Cancer Biology & Therapy,2019年03月30日,VOL.20,NO.7,p.1035-1045
【文献】KONSTANTINOPOULOS P. et al.,In vivo synergism between PARP-inhibitor olaparib and HSP90 inhibitor AT13387 in high grade serous o,Journal of Clinical Oncology,2017年,Vol.34,no.15 suppl,e17045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アザ二環式化合物又はその塩と、PARP阻害剤を併用投与することを特徴とする抗腫瘍剤
であって、
アザ二環式化合物が3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドであり、PARP阻害剤がオラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である抗腫瘍剤。
【請求項2】
アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする請求項
1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
アザ二環式化合物又はその塩を有効成分として含むPARP阻害剤の抗腫瘍効果増強剤であって、
アザ二環式化合物が
3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドであり、PARP阻害剤がオラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である抗腫瘍効果増強剤。
【請求項4】
アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする請求項
3に記載の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項5】
アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤を組み合わせてなる抗腫瘍剤であって、
アザ二環式化合物が
3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドであり、PARP阻害剤がオラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である抗腫瘍剤。
【請求項6】
PARP阻害剤と併用投与して腫瘍の治療に使用するため
のアザ二環式化合物又はその塩を含む抗腫瘍剤
であって、
アザ二環式化合物が3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドであり、PARP阻害剤がオラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である抗腫瘍剤。
【請求項7】
アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする請求項6に記載の抗腫瘍剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アザ二環式化合物又はその塩とポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ阻害剤(以下、「PARP阻害剤」ともいう。)を組み合わせた抗腫瘍剤、当該組み合わせに係る治療方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
分子シャペロンと呼ばれる一群の蛋白質は、他の蛋白質の機能的な構造の形成促進や保持、正しい会合の促進、不必要な凝集の抑制、分解からの保護、分泌の促進など多面的に機能する(非特許文献1)。HSP90は細胞内全可溶性蛋白質の約1~2%と豊富に存在する分子シャペロンであるが、他のシャペロン蛋白質と異なり、大部分のポリペプチドの生合成に必要とされない(非特許文献1)。HSP90に相互作用しその構造形成や安定性を制御される主なクライアント蛋白質としては、シグナル伝達関連因子(例えばERBB1/EGFR、ERBB2/HER2、MET、IGF1R、KDR/VEGFR、FLT3、ZAP70、KIT、CHUK/IKK、BRAF、RAF1、SRC、AKT)、細胞周期制御因子(例えばCDK4、CDK6、Cyclin D、PLK1、BIRC5)、転写制御因子(例えばHIF-1α、p53、androgen receptor、estrogen receptor、progesterone receptor)が知られている(非特許文献2、3)。HSP90はこれら蛋白質の正常な機能を維持することで、細胞の増殖、生存に深く関わっている。さらに、癌化や癌の増悪を引き起こす突然変異型あるいはキメラ型の因子(例えばBCR-ABL、NPM-ALK)はその正常な働きにHSP90を必要とすることから、特に癌化・癌の生存・増殖・増悪・転移といった過程におけるHSP90の重要性が示されている(非特許文献2)。
【0003】
HSP90のシャペロン機能をゲルダナマイシン等の特異的な阻害剤で抑制すると、クライアント蛋白質の不活性化及び不安定化と分解が起こり、その結果として細胞の増殖停止やアポトーシスが誘導される(非特許文献4)。HSP90の生理的機能上、HSP90阻害剤は癌の生存・増殖に関わる複数のシグナル伝達経路を同時に阻害できるという特徴を有することから、HSP90阻害剤は広範でかつ効果的な抗癌作用を持つ薬剤となり得る。また、癌細胞由来のHSP90は正常細胞由来のHSP90に比べ活性が高くATPや阻害剤に対する親和性が高いという知見から、HSP90阻害剤は癌選択性の高い薬剤となることが期待されている(非特許文献5)。
現在、抗癌剤として複数のHSP90阻害剤の臨床開発が進行しており、最も先行しているGanetespibは、単剤での開発に加えドセタキセル等の他の抗腫瘍剤との併用試験も実施されている(非特許文献6)。
さらに、新しいタイプのHSP90阻害剤についても報告がなされており(特許文献1)、より抗腫瘍効果が高く且つ副作用の少ないHSP90阻害剤が求められている。
【0004】
一方、PARPは、核DNAに生じた一本鎖切断端を認識してDNAに結合する。核DNAに結合したPARPは活性化され、NAD+を基質としてPARP自身やDNA修復関連タンパク質にADP-リボースを付加し、ポリ-ADP-リボシル化を引き起こす。通常、ポリ-ADP-リボシル化はDNA修復反応を活性化するが、過度のPARPの活性化はNAD+とATPの枯渇、さらにミトコンドリアに局在するアポトーシス誘導因子(AIF)の切断を誘導する。切断されて細胞質に放出されたAIFはミトコンドリアに局在していたエンドヌクレアーゼGとともに核に移行し、核DNAの断片化を引き起こし、細胞死を誘導する。
【0005】
PARPが一本鎖DNA切断を修復するのに対し、BRCA1及びBRCA2は相同組換えによる二本鎖DNA修復に重要な役割を持つ。BRCA1及びBRCA2遺伝子が機能せず相同組換えが欠損した細胞においてPARPを阻害すると、DNA損傷が修復されなくなり、合成致死と呼ばれる細胞死が誘導される。これまでに、BRCA1-欠損細胞及びBRCA2-欠損細胞は、野生型細胞に比べて、PARP阻害により非常に高い腫瘍成長抑制効果を示すことが報告される(非特許文献7)など、PARPを選択的に阻害する分子標的薬を利用したがん治療が進められている。近年、PARP阻害剤であるオラパリブが、抗がん剤として承認されている。
さらに、HSP90を標的としてブロックすることにより、DNA障害修復(DDR)に必要なタンパク質を不活性化及び分解促進し、卵巣がん細胞のPARP阻害剤への感受性を上昇させることが報告されている(非特許文献8)。
しかしながら、現在、HSP90阻害剤とPARP阻害剤の併用に関する確立したがん治療方法は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Nature Reviews Cancer 5,761-772(2005)
【文献】TRENDS in Molecular Medicine 6,17-27(2004)
【文献】Clin Can Res 15,9-14(2009)
【文献】Current Opinion in Pharmacology 8,370-374(2008)
【文献】Drug Resistance Updates 12,17-27(2009)
【文献】Invest New Drugs. 30(6):2201-9(2012)
【文献】N Engl J Med 361(2):123-134(2009)
【文献】Cancer Biol Ther 20(7):1035-1045(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、抗腫瘍効果が高い新規ながん治療方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、次の一般式(I)で表されるアザ二環式化合物とPARP阻害剤とを組み合わせることにより、抗腫瘍効果が顕著に増強することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔18〕を提供するものである。
【0011】
〔1〕下記一般式(I)
【0012】
【0013】
(式中、X1は、CH又はNを示し;
X2、X3及びX4は、いずれか1つがNであり、他がCHを示し;
Y1、Y2、Y3及びY4は、いずれか1つ又は2つがC-R4であり、他が同一又は相異なって、CH又はNを示し;
R1は、置換基を有していてもよい、N、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性又は二環性の不飽和複素環基を示し;
R2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基を示し;
R3は、シアノ基又は-CO-R5を示し;
R4は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、芳香族炭化水素基、-N(R6)(R7)、-S-R8、又は-CO-R9を示し;
R5は、ヒドロキシル基を有していてもよいアミノ基、又は置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基を示し;
R6及びR7は、同一又は相異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロゲノアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和複素環基、又は置換基を有していてもよい不飽和複素環基を示すか、R6とR7はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和複素環基を形成してもよく;
R8は、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し;
R9は、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシル基を有していてもよいアミノ基、又は置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基を示す。)
で表されるアザ二環式化合物又はその塩と、PARP阻害剤を併用投与することを特徴とする抗腫瘍剤。
〔2〕アザ二環式化合物が、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドである〔1〕に記載の抗腫瘍剤。
〔3〕PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である〔1〕又は〔2〕に記載の抗腫瘍剤。
〔4〕アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔5〕アザ二環式化合物又はその塩を有効成分として含むPARP阻害剤の抗腫瘍効果増強剤であって、
アザ二環式化合物が、下記一般式(I)
【0014】
【0015】
(式中、X1~X4、Y1~Y4、R1~R9は前記と同じ。)
で表される化合物である抗腫瘍効果増強剤。
〔6〕アザ二環式化合物が、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドである〔5〕に記載の抗腫瘍効果増強剤。
〔7〕PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である〔5〕又は〔6〕に記載の抗腫瘍効果増強剤。
〔8〕アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の抗腫瘍効果増強剤。
〔9〕アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤を組み合わせてなる抗腫瘍剤であって、
アザ二環式化合物が、下記一般式(I)
【0016】
【0017】
(式中、X1~X4、Y1~Y4、R1~R9は前記と同じ。)
で表されるアザ二環式化合物である抗腫瘍剤。
〔10〕アザ二環式化合物が、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドである〔9〕に記載の抗腫瘍剤。
〔11〕PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である〔9〕又は〔10〕に記載の抗腫瘍剤。
〔12〕アザ二環式化合物又はその塩並びにPARP阻害剤の予防及び/又は治療に有効な量を患者に投与する工程を含む、腫瘍の予防及び/又は治療方法であって、
アザ二環式化合物が、下記一般式(I)
【0018】
【0019】
(式中、X1~X4、Y1~Y4、R1~R9は前記と同じ。)
で表されるアザ二環式化合物である、腫瘍の予防及び/又は治療方法。
〔13〕アザ二環式化合物が、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドである〔12〕に記載の腫瘍の予防及び/又は治療方法。
〔14〕PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である〔12〕又は〔13〕に記載の腫瘍の予防及び/又は治療方法。
〔15〕アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の腫瘍の予防及び/又は治療方法。
〔16〕PARP阻害剤と併用投与して腫瘍の治療に使用するための、下記一般式(I)
【0020】
【0021】
(式中、X1~X4、Y1~Y4、R1~R9は前記と同じ。)
で表されるアザ二環式化合物又はその塩を含む抗腫瘍剤。
〔17〕アザ二環式化合物が、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミドである〔16〕に記載の抗腫瘍剤。
〔18〕PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、タラゾパリブ及びニラパリブから選ばれる1種以上である〔16〕又は〔17〕に記載の抗腫瘍剤。
〔18'〕 アザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が同時又は間隔を空けて別々に癌患者に投与されることを特徴とする〔16〕~[18〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
【0022】
本発明は、以下の態様にも関する。
・上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩と、PARP阻害剤とを含む腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬組成物。
・PARP阻害剤の抗腫瘍効果を増強するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩。
・PARP阻害剤の抗腫瘍効果を増強するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の使用。
・PARP阻害剤の抗腫瘍効果増強剤を製造するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の使用。
・PARP阻害剤を投与された癌患者を治療するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩を含有する抗腫瘍剤。
・PARP阻害剤の抗腫瘍効果増強に使用するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩。
・PARP阻害剤を投与された癌患者の腫瘍の治療に使用するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩。
・腫瘍の治療に使用するための、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤の組み合わせ。
・腫瘍を予防及び/又は治療する際に同時に、逐次的に、又は間隔をあけて使用するための組み合わせ製剤としての、上記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩と、PARP阻害剤とを含むキット製品。
【発明の効果】
【0023】
本発明の抗腫瘍剤によれば、副作用の発症を抑えつつ、高い抗腫瘍効果(特に、腫瘍縮小効果、腫瘍増殖遅延効果(延命効果)等)を奏する癌治療を行うことが可能であり、よって癌患者の長期間の生存をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩と、PARP阻害剤を併用投与することを特徴とする抗腫瘍剤、抗腫瘍効果増強剤、キット製剤及びこれらの剤の使用、腫瘍治療方法、並びに、抗腫瘍効果増強方法に関する。
【0025】
本発明においてPARP阻害剤と優れた相乗作用をもたらすHSP90阻害剤は、下記一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩である。
【0026】
【0027】
(式中、X1は、CH又はNを示し;
X2、X3及びX4は、いずれか1つがNであり、他がCHを示し;
Y1、Y2、Y3及びY4は、いずれか1つ又は2つがC-R4であり、他が同一又は相異なって、CH又はNを示し;
R1は、置換基を有していてもよい、N、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性又は二環性の不飽和複素環基を示し;
R2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基を示し;
R3は、シアノ基又は-CO-R5を示し;
R4は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、芳香族炭化水素基、-N(R6)(R7)、-S-R8、又は-CO-R9を示し;
R5は、ヒドロキシル基を有していてもよいアミノ基、又は置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基を示し;
R6及びR7は、同一又は相異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロゲノアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい飽和複素環基、又は置換基を有していてもよい不飽和複素環基を示すか、R6とR7はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和複素環基を形成してもよく;
R8は、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し;
R9は、水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシル基を有していてもよいアミノ基、又は置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基を示す。)
【0028】
本願明細書において「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、アルコキシ-アルキル基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アラルキルオキシ-アルキル基、アルキルチオ基、シクロアルキル-アルキルチオ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、シクロアルキル-アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、オキソ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、飽和若しくは不飽和複素環基、芳香族炭化水素基、飽和複素環オキシ基等が挙げられ、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1~3個である。
【0029】
前記の置換基において、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
前記の置換基において、アルキル基、ハロゲノアルキル基としては、好ましくは炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又はこれらのアルキル基の1個~全ての水素原子が前記のハロゲン原子で置換した基を示し、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基などのハロゲノアルキル基が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3~7のシクロアルキル基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルキル基としては、好ましくは炭素数3~7のシクロアルキルで置換された炭素数1~6のアルキル基であり、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アラルキル基としては、好ましくは炭素数6~14の芳香族炭化水素基で置換された炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、ヒドロキシアルキル基としては、好ましくはヒドロキシ基を有する前記の炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルケニル基としては、炭素-炭素二重結合を含む、好ましくは炭素数2~6のアルケニル基を示し、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルキニル基としては、炭素-炭素三重結合を含む、好ましくは炭素数2~6のアルキニル基を示し、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0030】
前記の置換基において、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基、又はこれらのアルコキシ基に前記のハロゲン原子が置換した基を示し、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、2-メチル-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、ペンタン-2-イルオキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、パーフルオロエトキシ基、3-フルオロ-2-(フルオロメチル)-プロポキシ基、1,3-ジフルオロプロパン-2-イルオキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロポキシ基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルコキシ-アルキル基としては、好ましくは、前記の炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基で置換された前記の炭素数1~6のアルキル基を示し、メトキシメチル基、エトキシメチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルコキシ基としては、好ましくは炭素数3~7のシクロアルコキシ基であり、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルコキシ基としては、好ましくは炭素数3~7のシクロアルキルで置換された炭素数1~6のアルコキシ基であり、シクロプロピルメトキシ基、シクロプロピルエトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロペンチルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、等が挙げられる。
前記の置換基において、アラルキルオキシ基としては、好ましくは、前記のアラルキル基を有するオキシ基を示し、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基、ナフチルエチルオキシ基等が挙げられる。
前記の置換基において、アラルキルオキシ-アルキル基としては、好ましくは、前記のアラルキルオキシ基を有する前記の炭素数1~6の直鎖又は分枝を有するアルキル基を示し、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基等が挙げられる。
【0031】
前記の置換基において、アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキルチオ基を示す(炭素数1~6)アルキルチオ基であり、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルキルチオ基としては、好ましくは炭素数3~7のシクロアルキルで置換された炭素数1~6のアルキルチオ基であり、シクロプロピルメチルチオ基、シクロプロピルエチルチオ基、シクロブチルメチルチオ基、シクロペンチルメチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基等が挙げられる。
【0032】
前記の置換基において、モノ又はジアルキルアミノ基としては、前記の炭素数1~6の直鎖又は分枝を有するアルキル基によりモノ置換又はジ置換されたアミノ基を示すモノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基であり、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルキルアミノ基としては、前記のシクロアルキル基で置換されたアルキルアミノ基を示し、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロブチルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基等が挙げられる。
【0033】
前記の置換基において、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基などの直鎖又は分枝を有する炭素数1~6のアシル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、n-ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基などの直鎖又は分枝を有する炭素数1~6のアシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、グリシルオキシ基、アラニルオキシ基、ロイシルオキシ基等のアミノ酸由来アシルオキシ基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルコキシカルボニル基としては、前記のアルコキシ基により置換されたカルボニル基を示し、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、1-メチルプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、2-メチル-ブトキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、ペンタン-2-イルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アラルキルオキシカルボニル基としては、好ましくは、前記のアラルキルオキシ基により置換されたカルボニル基を示し、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、フェニルプロピルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基、ナフチルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記の置換基において、カルバモイル基としては、-CONH2基、(モノ又はジアルキル)カルバモイル基、(モノ又はジアリール)カルバモイル基、(N-アルキル-N-アリール)カルバモイル基、ピロリジノカルバモイル基、ピペリジノカルバモイル基、ピペラジノカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基等が挙げられる。
【0034】
前記の置換基において、飽和若しくは不飽和複素環基としては、N、S、Oのいずれかのヘテロ原子を、好ましくは1~4個有する単環性又は二環性の飽和又は5~10員の不飽和複素環基を示し、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、イミダゾリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリル基等が挙げられる。
前記の置換基において、芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6~14の芳香族炭化水素基を示し、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、飽和複素環オキシ基としては、N、S、Oのいずれかのヘテロ原子を1個又は2個有する単環性の5~7員の飽和複素環基、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペラジニル基等を有するオキシ基を示し、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基が挙げられる。
【0035】
一般式(I)中、X1はCH又はNを示す。また、一般式(I)中、X2、X3及びX4は、いずれか1つがNであり、他がCHを示す。これらのX1~X4の定義から、一般式(I)中のアザ二環骨格の例としては、次の構造が挙げられる。
【0036】
【0037】
(式中、R1及びR2は前記と同じ)
【0038】
これらの骨格のうち、(A-3)及び(A-6)が特に好ましい。
【0039】
一般式(I)中、R1で表される「置換基を有していてもよい、N、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性又は二環性の不飽和複素環基」の「N、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性又は二環性の不飽和複素環基」としては、N、S及びOから選ばれるヘテロ原子を1~3個有する単環性又は二環性の5~10員の不飽和複素環基が好ましく、N、S及びOから選ばれるヘテロ原子を1~3個有する単環性の5~6員の不飽和複素環基及びN、S及びOから選ばれるヘテロ原子を1~3個有する二環性の9~10員の不飽和複素環基がより好ましい。
当該複素環基としては、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、ピロロピリジン、インダゾール、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、キノリン、テトラヒドロキノリン、イソキノリン、キメゾリン又はキノキサリンを有する基が好ましい。さらに、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、ピリジン、インドール、ピロロピリジン、ベンゾフラン、キノリン又はテトラヒドロキノリンを有する基が好ましく、イミダゾール、ピリジン又はキノリンを有する基が特に好ましい。
【0040】
具体例としては、1H-イミダゾール-1-イル基、1H-イミダゾール-2-イル基、1H-イミダゾール-4-イル基、1H-ピラゾール-1-イル基、1H-ピラゾール-3-イル基、1H-ピラゾール-4-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピロール-3-イル基、オキサゾール-2-イル基、オキサゾール-4-イル基、オキサゾール-5-イル基、イソオキサゾール-3-イル基、イソオキサゾール-4-イル基、イソオキサゾール-5-イル基、チアゾール-2-イル基、チアゾール-3-イル基、チアゾール-4-イル基、チアゾール-5-イル基、イソチアゾール-2-イル基、イソチアゾール-4-イル基、イソチアゾール-5-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、ピラゾール-4-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-4-イル基、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-トリアゾール-4-イル基、テトラゾール-1-イル基、テトラゾール-5イル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基、ピリミジン-6-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、インドール-1-イル基、インドール-2-イル基、インドール-3-イル基、インドール-4-イル基、インドール-5-イル基、インドール-6-イル基、インドール-7-イル基、イソインドール-1-イル基、イソインドール-2-イル基、イソインドール-4-イル基、イソインドール-5-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-1-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-6-イル基、1H-インダゾール-1-イル基、1H-インダゾール-3-イル基、1H-インダゾール-4-イル基、1H-インダゾール-5-イル基、1H-インダゾール-6-イル基、1H-インダゾール-7-イル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、ベンゾフラン-2-イル基、ベンゾフラン-3-イル基、ベンゾフラン-4-イル基、ベンゾフラン-5-イル基、ベンゾフラン-6-イル基、ベンゾフラン-7-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-3-イル基、ベンゾイミダゾール-1-イル基、ベンゾイミダゾール-2-イル基、ベンゾイミダゾール-4-イル基、ベンゾイミダゾール-5-イル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、ベンゾオキサゾール-4-イル基、ベンゾオキサゾール-5-イル基、ベンゾチアゾール-2-イル基、ベンゾチアゾール-4-イル基、ベンゾチアゾール-5-イル基、プリン-2-イル基、プリン-6-イル基、プリン-7-イル基、プリン-8-イル基、キノリン-2-イル基、キノリン-3-イル基、キノリン-4-イル基、キノリン-5-イル基、キノリン-6-イル基、キノリン-7-イル基、キノリン-8-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-2-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-4-イル基、イソキノリン-1-イル基、イソキノリン-3-イル基、イソキノリン-4-イル基、イソキノリン-5-イル基、イソキノリン-6-イル基、イソキノリン-7-イル基、イソキノリン-8-イル基、キナゾリン-4-イル基、キノキサリン-2-イル基、キノキサリン-5-イル基、キノキサリン-6-イル基等が挙げられ、好ましくは1H-イミダゾール-1-イル基、ピラゾール-4-イル基、チオフェン-3-イル基、フラン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、インドール-5-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、ベンゾフラン-2-イル基、キノリン-3-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル基であり、より好ましくは1H-イミダゾール-1-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、インドール-5-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、ベンゾフラン-2-イル基、キノリン-3-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル基であり、特に好ましくは1H-イミダゾール-1-イル基、ピリジン-3-イル基、キノリン-3-イル基である。
【0041】
一般式(I)中、R1で表される上記の不飽和複素環基の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルコキシ-アルキル基、アラルキル基、アラルキルオキシ-アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、アシル基、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和複素環基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基から選ばれ、その個数は1~3個である。より好ましくはアルキル基;アルコキシ基;アルキル基、ハロゲノアルキル基、アラルキル基又はヒドロキシアルキル基を有していてもよい不飽和複素環基;アルキル基、アルコキシ基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族炭化水素基から選ばれ、その個数は1~3個である。ここでR1で表される不飽和複素環上に置換し得る不飽和複素環基としては、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、フラン、チオフェン等が挙げられる。また、芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチルが挙げられる。
【0042】
上記のR1で表される不飽和複素環基の「置換基」の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、1-メチルプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、1H-ピラゾール-4-イル基、1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル基、1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル基、1-イソプロピル-1H-ピラゾール-4-イル基、1-ベンジル-1H-ピラゾール-4-イル基、1-(ジフルオロメチル)-1H-ピラゾール-4-イル基、1-(ヒドロキシエチル)-1H-ピラゾール-4-イル基、1H-イミダゾール-1-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-3-イル基、フェニル基、4-メトキシフェニル基、4-カルバモイルフェニル基、4-イソプロピルカルバモイルフェニル基、4-ジメチルカルバモイルフェニル基が例示できる。
【0043】
具体的な好ましいR1としては、1H-イミダゾール-1-イル基、4-フェニル-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(4-カルバモイルフェニル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(4-メトキシフェニル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(チオフェン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリジン-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、5-メチル-4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリミジン-5-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(フラン-2-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(フラン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-メチル-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-エチル-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-イソプロピル-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-ヒドロシキメチル)-(1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-(ジフルオロメチル)-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-(ヒドロキシエチル)-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-(ヒドロキシメチル)-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-ベンジル-1H-ピラゾール4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-(ベンジルオキシエチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、1’H-1,4’-ビイミダゾール-1’-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、5-メトキシピリジン-3-イル基、6-メトキシピリジン-3-イル基、1-ベンジル-1H-ピラゾール-4-イル基、1-メチル-1H-インドール-5-イル基、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、1-メチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、1-メトキシメチル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル基、キノリン-3-イル基、チオフェン-3-イル基、フラン-2-イル基、ベンゾフラン-2-イル基が挙げられ、より好ましくは1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリジン-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-エチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-イソプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(1-ベンジル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、キノリン-3-イル基、4-(1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基であり、特に好ましくは4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-1-イル基、キノリン-3-イル基である。
【0044】
一般式(I)中、R2で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基」の「炭素数1~6アルキル基」は、炭素数1~6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を示し、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である。
R2で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。このうち、置換基としては、ハロゲン原子が好ましい。
ハロゲン原子が置換したアルキル基としては、炭素数1~6ハロゲノアルキル基が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0045】
R2で表される「炭素数2~6のアルケニル基」は、前記の炭素数2~6のアルケニル基を示し、好ましくはビニル基である。当該アルケニル基の置換基としては、前記の置換基が例示される。
R2としては、置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基がより好ましく、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6アルキル基、炭素数2~6のアルケニル基がさらに好ましく、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~4アルキル基が特に好ましい。
【0046】
Y1、Y2、Y3及びY4は、いずれか1つ又は2つがC-R4であり、他が同一又は相異なって、CH又はNを示す。このうち、Y1、Y2、Y3及びY4のいずれか1つ又は2つがC-R4であり、他がCHである場合が好ましく、Y1及びY3がCHであり、Y2及びY4のいずれか1つ又は2つがC-R4であり、他がCHである場合がより好ましい。これらの好ましい態様を構造式で示せば、次のとおりである。
【0047】
【0048】
(式中、R3及びR4は前記と同じ)
【0049】
上記のうち、(b1)及び(b2)が特に好ましい。
【0050】
一般式(I)中、R3は、シアノ基又は-CO-R5を示す。このうち、-CO-R5が特に好ましい。
【0051】
一般式(I)中、R4は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基、炭素数2~6アルケニル基、炭素数1~6アルコキシ基、芳香族炭化水素基、-N(R6)(R7)、-S-R8又は-CO-R9を示す。このうち、R4はハロゲン原子、モノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基又はN、S、Oのいずれかのヘテロ原子を1個又は2個有する単環性の5~7員の飽和複素環基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、-N(R6)(R7)、-S-R8又は-CO-R9であるのが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、-N(R6)(R7)であるのがより好ましい。
【0052】
一般式(I)中、R4で表される「ハロゲン原子」は、前記のハロゲン原子を示し、好ましくは塩素原子である。
【0053】
一般式(I)中、R4で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基」の「炭素数1~6のアルキル基」は、前記の炭素数1~6のアルキル基を示し、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基である。
R4で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示され、好ましくはエチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のモノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基、ピロリジル基、モルホリノ基等のN、S、Oのいずれかのヘテロ原子を1個又は2個有する単環性の5~7員の飽和複素環基である。
【0054】
一般式(I)中、R4で表される「炭素数2~6アルケニル基」は、前記の炭素数2~6アルケニル基を示し、好ましくはビニル基、プロペ-1-エン-2-イル基である。
【0055】
一般式(I)中、R4で表される「炭素数1~6のアルコキシ基」は、前記の炭素数1~6のアルコキシ基を示し、好ましくはメトキシ基である。
【0056】
一般式(I)中、R5で表される「置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」の「モノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」は、前記のモノ又はジアルキルアミノ基を示し、好ましくはモノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基である。
R5で表される「置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。
R5としては、アミノ基、ヒドロキシルアミノ基、モノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基がより好ましく、アミノ基が特に好ましい。
【0057】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基」の「炭素数1~6アルキル基」は、前記の炭素数1~6アルキル基を示し、好ましくはエチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基である。
R6、R7で表される「置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。好ましくはヒドロキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~7シクロアルキル基、ピロリジル基、モルホリノ基等の飽和複素環基、ピリジル基等の不飽和複素環基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のモノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基、メチルチオ基等の(炭素数1~6アルキル)チオ基、ヒドロキシル基を有していてもよい炭素数1~6アルコキシ基である。
【0058】
一般式(I)中、R6、R7で表される「炭素数1~6のハロゲノアルキル基」は、前記の炭素数1~6のハロゲノアルキル基を示し、好ましくは2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0059】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよい炭素数3~7シクロアルキル基」の「炭素数3~7シクロアルキル基」としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられ、好ましくはシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
R6、R7で表される「置換基を有していてもよい炭素数3~7シクロアルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸基由来アシルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基等である。
【0060】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、前記のアラルキル基を示し、好ましくは炭素数7~12のアラルキル基であり、具体的にはベンジル基である。
R6、R7で表される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。具体的な置換基としては、ピロリジニル基等の飽和複素環基等が挙げられる。
【0061】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「芳香族炭化水素基」としては、前記の炭素数6~14の芳香族炭化水素基を示し、好ましくはフェニル基である。R6、R7で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。好ましくはハロゲン原子、メチルチオ基等のアルキルチオ基、モルホリノ基等の飽和複素環基、ピロリジン-カルボニル基等の置換カルバモイル基である。
【0062】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよい飽和複素環基」の「飽和複素環基」は、前記の飽和複素環基を示し、好ましくはピペリジニル基、テトラヒドロピラニル基である。
R6、R7で表される「置換基を有していてもよい飽和複素環基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。好ましくはメチル基等の炭素数1~6のアルキル基、アセチル基等のアシル基、2,6-ジヒドロキシピリミジニル-4-カルボニル基等の飽和複素環基を有するカルボニル基、2-アミノアセチル基等のアミノアルキルカルボニル基である。
【0063】
一般式(I)中、R6、R7で表される「置換基を有していてもよい不飽和複素環基」の「不飽和複素環基」は、前記の不飽和複素環基を示し、好ましくはピリジル基、オキサゾリル基である。
R6、R7で表される「置換基を有していてもよい不飽和複素環基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。
【0064】
一般式(I)中、R6、R7が、それらが結合する窒素原子と一緒になって形成していてもよい「飽和複素環基」は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を、好ましくは1~4個有する単環性又は二環性の飽和複素環基を示し、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペラジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基を示す。
【0065】
一般式(I)中、R6とR7の組み合せとしては、R6が水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基であり;R7が水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7~12のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいN、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性若しくは二環性の飽和複素環基又は置換基を有していてもよいN、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性若しくは二環性の不飽和複素環基を示すか、R6とR7がそれらが結合する窒素原子と一緒になって5~7員の飽和複素環基を形成してもよいものが好ましい。さらに好ましくは、R6が水素原子であり、R7が水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいN、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性若しくは二環性の飽和複素環基である場合であり、特に好ましくは、R6が水素原子であり、R7が置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基である場合である。
【0066】
一般式(I)中、R8で表される「置換基を有していてもよい炭素数3~7シクロアルキル基」の「炭素数3~7シクロアルキル基」は、前記の炭素数3~7シクロアルキル基を示し、好ましくはシクロヘキシル基である。
R8で表される「置換基を有していてもよい炭素数3~7シクロアルキル基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示され、好ましくはヒドロキシル基である。
【0067】
一般式(I)中、R8で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「芳香族炭化水素基」は、前記の炭素数6~14の芳香族炭化水素基を示し、好ましくはフェニル基である。
R8で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示され、好ましくはヒドロキシル基である。
【0068】
R8としては、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0069】
一般式(I)中、R9で表される「置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」の「モノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」は、前記のモノ又はジアルキルアミノ基を示し、好ましくはモノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基である。
R9で表される「置換基を有していてもよいモノ-若しくはジ-アルキルアミノ基」の「置換基」としては、前記の置換基が例示される。
R9としては、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ-若しくはジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0070】
本発明の好適なアザ二環式化合物は、一般式(I)中、X1が、CH又はNであり;X2がNであり、X3及びX4がCHであり;Y1及びY3がCHであり、Y2及びY4のいずれか1つ又は2つがC-R4であり、他がCHであり;R1が、置換基を有していてもよい1H-イミダゾール-1-イル基、置換基を有していてもよいピラゾール-4-イル基、置換基を有していてもよいチオフェン-3-イル基、置換基を有していてもよいフラン-2-イル基、置換基を有していてもよいピリジン-3-イル基、置換基を有していてもよいピリジン-4-イル基、置換基を有していてもよいインドール-5-イル基、置換基を有していてもよい1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル基、置換基を有していてもよいベンゾフラン-2-イル基、置換基を有していてもよいキノリン-3-イル基、置換基を有していてもよい5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-3-イル基のいずれかであるであり;R2が、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基又は炭素数2~6のアルケニル基であり;R3が、-CO-R5であり;R4が、ハロゲン原子、モノ又はジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基又はN、S、Oのいずれかのヘテロ原子を1個又は2個有する単環性の5~7員の飽和複素環基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、-N(R6)(R7)、-S-R8又は-CO-R9であり;R5が、アミノ基、又はモノ-若しくはジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基であり;R6が水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基であり;R7が水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7~12のアラルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基、N、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性若しくは二環性の置換基を有していてもよい飽和複素環基、又はN、S及びOから選ばれる1~4個のヘテロ原子を有する単環性若しくは二環性の置換基を有していてもよい不飽和複素環基であるか、R6とR7がそれらが結合する窒素原子と一緒になって5~7員の飽和複素環基を形成し;R8が置換基を有していてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり;R9が水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、又はモノ-若しくはジ(炭素数1~6アルキル)アミノ基である化合物である。
【0071】
より具体的なアザ二環式化合物としては、3-エチル-4-{3-イソプロピル-4-(4-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-イミダゾール-1-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-1-イル}ベンズアミド(以下、化合物1と称す)である。
【0072】
本発明のアザ二環式化合物の塩としては、薬学的に許容できる塩であれば特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、グルタミン酸などの有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、メグルミン、エタノールアミンなどの有機塩基、又はリジン、アルギニン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩が挙げられる。
なお、本発明のアザ二環式化合物又はその塩は、例えば、国際公開第WO2011/004610号パンフレットに記載の方法に準じて合成することができる。
【0073】
後述する実施例のとおり、本発明のアザ二環式化合物又はその塩は、PARP阻害剤と併用投与すると、抗腫瘍効果が相乗的に増強する。
本発明における「PARP阻害剤」は、DNA一本鎖切断修復の主要酵素であるポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)を選択的に阻害する作用を有する分子標的薬である。
具体的なPARP阻害剤としては、本発明のアザ二環式化合物又はその塩と併用した場合の抗腫瘍効果の相乗作用の観点から、オラパリブ(AZD2281)、ルカパリブ(AG-014699)、タラゾパリブ(BMN673)、ベリパリブ(ABT-999)、イニパリブ(BSI-201)、4-ヒドロキシキナゾリン、パミパリブ(BGB-290)、AG-14361、INO-1001、A-966492、PJ34 HCl、ニラパリブ(MK-4827)、UPF1069、AZD2461、ME0328、BGP-15 2HCl、ニラパリブ(MK-4827)トシレート、NU1025、G007-LK、NVP-TNKS656、E7449、NMS-P118、ベンズアミド、ピコリンアミドが挙げられる。なかでも、オラパリブ(AZD2281)、ルカパリブ(AG-014699)、ベリパリブ(ABT-999)、イニパリブ(BSI-201)、パミパリブ(BGB-290)、ニラパリブ(MK-4827)及びニラパリブ(MK-4827)トシレートから選ばれる1種以上がより好ましく、オラパリブ(AZD2281)、ルカパリブ(AG-014699)、タラゾパリブ(BMN673)及びニラパリブ(MK-4827)から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0074】
本発明において、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の投与日における1日あたりの投与量としては、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物によるPARP阻害剤の抗腫瘍効果の増強効果の観点から、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩を単独で投与する場合における推奨用量の50~200%が好ましく、50~112.5%がより好ましく、50%~100%が特に好ましい。ヒトにおける推奨用量は、80~340mg/body/dayが好ましく、80~180mg/body/dayがより好ましく、80mg/body/day~160mg/body/dayが特に好ましい。具体的には、80mg/body/day、120mg/body/day、及び160mg/body/dayが好ましく、160mg/body/dayが更に好ましい。
【0075】
本発明において、PARP阻害剤の投与日における1日あたりの投与量としては、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物によるPARP阻害剤の抗腫瘍効果の増強作用の観点から、PARP阻害剤を単独で投与する場合における推奨用量の50~200%が好ましく、100%がより好ましい。
具体的には、オラパリブを単独で投与する場合の推奨用量は、日本において承認を受けた投与量である300mg/日である。ルカパリブを単独で投与する場合の推奨用量は、600mg/日であり、タラゾパリブを単独で投与する場合の推奨用量は、1mg/日であり、ニラパリブを単独で投与する場合の推奨用量は、300mg/日である。
なお、本発明において「推奨用量」とは、臨床試験などにより決定された、重篤な副作用を発症せずに安全に使用できる範囲で、最大の治療効果をもたらす投与量であり、具体的には、日本独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)、米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration)、欧州医薬品庁(EMA;European Medicines Agency)等の公的機関や団体により承認・推奨・勧告され、添付文書・インタビューフォーム・治療ガイドライン等に記載された投与量が挙げられ、PMDA、FDA又はEMAのいずれかの公的機関により承認された投与量が好ましい。
【0076】
本発明の一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩、及びPARP阻害剤の投与スケジュールは、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。
一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の場合は、5日間連続投与と2日間休薬を繰り返す投与スケジュール、具体的には1週間のうち5日間の投与後に2日間休薬する投与法を用いた3週間の投与を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す投与スケジュールが好ましい。
また、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の別の投与スケジュールとしては、連日投与が好ましい。
PARP阻害剤の場合は、各PAPR阻害剤で推奨された投与スケジュールが好ましい。
【0077】
本発明の一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩、及びPARP阻害剤の1日の投与回数は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。
一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩の場合は、1日1回又は1日2回が好ましく、1日1回がより好ましい。オラパリブの場合は、1日1回又は1日2回が好ましく、1日2回がより好ましい。ルカパリブの場合は、1日1回又は1日2回が好ましく、1日2回がより好ましい。タラゾパリブの場合は、1日1回又は1日2回が好ましく、1日1回がより好ましい。ニラパリブの場合は、1日1回又は1日2回が好ましく、1日1回がより好ましい。
一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤の投与順序は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうるが、どちらを先に投与しても、同時に投与しても構わない。ここで両剤を同時に投与しない場合、両剤の投与間隔は、抗腫瘍効果の増強効果を奏するかぎり適宜選択しうるが、1~14日が好ましく、1~7日がより好ましく、1~5日がより好ましく、1~3日が特に好ましい。
【0078】
本発明において対象となる腫瘍は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくは一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩が抗腫瘍効果を発揮する腫瘍であり、より好ましくはHsp90が関与する悪性腫瘍である。
【0079】
本発明の抗腫瘍剤の対象となる癌としては、具体的には、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌など)、膵臓癌、小腸癌、大腸癌(結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌など)など)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌等)、乳癌、卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌など)、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、皮膚癌(悪性黒色腫、表皮癌等)、血液がん(多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病等)、肉腫(骨肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、消化管間質腫瘍等)等が挙げられる。このうち、本発明のアザ二環式化合物又はその塩と併用した場合の抗腫瘍効果の相乗作用の観点から、消化器癌、肺癌、乳癌、皮膚癌又は血液がんが好ましく、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、胆嚢癌、膵癌、胃癌、皮膚癌、肉腫又は血液がんがより好ましい。なお、ここで癌には、原発巣のみならず、他の臓器(肝臓など)に転移した癌をも含む。
【0080】
本発明において「治療」には、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のために行われる術後補助化学療法に用いるものであっても、腫瘍を外科的に摘出するために事前行われる術前補助化学療法が包含される。
【0081】
本発明において、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩、及びPARP阻害剤は、各有効成分の投与形態や投与スケジュールに基づき、各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化してもよく、一つの剤形にまとめて製剤化(すなわち、配合剤として製剤化)してもよい。また、各製剤を併用に適した1個のパッケージにまとめて製造販売してもよく、また各製剤を別個のパッケージに分けて製造販売してもよい。
【0082】
本発明の抗腫瘍剤の投与形態としては特に制限は無く、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には経口剤(錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤など)、注射剤、坐剤、貼付剤、軟膏剤等が例示できる。好ましくは経口剤である。
【0083】
このような種々の剤型の製剤は、必要に応じて、薬学的に許容される担体を用いて、通常公知の方法により調製することができる。斯かる担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
【0084】
本発明はまた、癌患者に対するPARP阻害剤の抗腫瘍効果を増強するための一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩を有効成分として含む抗腫瘍効果増強剤に関する。当該抗腫瘍効果増強剤は、上記抗腫瘍剤の製剤形態を有する。
【0085】
本発明はまた、PARP阻害剤を投与された癌患者を治療するための一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩を含む抗腫瘍剤に関する。当該抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0086】
本発明はまた、一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩と、癌患者に対して一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩とPARP阻害剤が併用投与されることを記載した使用説明書を含むキット製剤に関する。
ここで「使用説明書」とは、上記投与量が記載されたものであればよく、法的拘束力の有無を問わないが、上記投与量が推奨されているものが好ましい。具体的には、添付文書、パンフレット等が例示される。また、使用説明書を含むキット製剤とは、キット製剤のパッケージに使用説明書が印刷・添付されているものであっても、キット製剤のパッケージに抗腫瘍剤とともに使用説明書が同封されているものであってもよい。
【実施例】
【0087】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0088】
実施例1:化合物1およびオラパリブとのインビトロ組み合わせ分析
A 材料及び方法
10%ウシ胎仔血清(Sigma-Aldrich)を含むMcCoy’5A培地(Thermo Scientific)中において、ヒト膵がん細胞株Capan-1(American Type Culture Collection,ATCC)を,10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地(和光純薬工業)中において、ヒト乳がん細胞株HCC38、HCC1395及びHCC1428(ATCC)を,10%ウシ胎仔血清及び10μg/mLウシインスリンを含むD-MEM培地(和光純薬工業)中において、ヒト乳がん細胞株Hs578T(European Collection of Cell Cultures)を、10%ウシ胎仔血清、0.1mM NEAA及び1mMピルビン酸Naを含むMEM培地(ナカライテスク)中において、ヒト乳がん細胞株MCF7を増殖させた。いずれの細胞も37℃、5% CO2で維持し、1週当たり1~2回、1:2~1:10の比で継代した。
【0089】
細胞生存率アッセイ
CellTiter-Gloを使用して、細胞生存率を測定した。細胞を常法により回収し、それぞれの培地に懸濁し、96ウェルプレートに播種した。播種数は1ウェルあたり200個/50μL(Hs578T)、1000個/50μL(MCF7)、2000個/50μL(Capan-1及びHCC1428)あるいは4000個/50μL(HCC38及びHCC1395)とした。37℃、5% CO2で24時間インキュベートしたのち、オラパリブと化合物1又はVehicle(DMSO)を含む培地を50μL添加した。Capan-1、HCC1428及びMCF7については、オラパリブは1,3,10,30,100,300,1000,3000,10000nMの9点およびゼロ濃度(DMSO)、化合物1は100,300,1000,3000,10000nMの5点およびゼロ濃度(DMSO)とし、それらの全ての60通りの組み合わせを検討した。各組み合わせに対し、2ウェルを割り当てた。HCC38、HCC1395及びHs578Tについては、オラパリブは1000,3000,10000,30000nMの4点およびゼロ濃度(DMSO)、化合物1は100,300,1000,3000,10000nMの5点およびゼロ濃度(DMSO)とし、それらの全ての30通りの組み合わせを検討した。各組み合わせに対し、4ウェルを割り当てた。
さらに37℃、5% CO2で72時間(Hs578T)あるいは168時間(Capan-1、HCC38、HCC1395、HCC1428およびMCF7)インキュベートした。1ウェルあたり100μLのCellTiter-Glo液を添加し、10分間室温でインキュベートしたのち、化学発光をプレートリーダーであるEnspireで測定した。得られたデータから各組み合わせの平均値を算出し、Vehicleを含む培地を添加したコントロールに対して標準化された細胞生存率を計算した。細胞生存率を1から減算することにより、Fa(Fraction of Affect)値を算出した。
メジアンエフェクト解析ソフトウェアCalcuSyn 2.0(CalcuSyn,Inc.)を使用して、各薬剤についての半数阻害濃度(IC50)を決定した。引き続いて、薬剤の各組み合わせ濃度におけるコンビネーションインデックス(CI)を決定した。1を超える、1に等しい、または1未満のCIは、それぞれ、拮抗、相加または相乗作用を示す(表1)(Pharmacol Rev.2006;58(3):621-81、 BMC Complement Altern Med.2013;13:212、Anticancer Res.2005;25(3B):1909-17.)。
【0090】
【0091】
また、Fa値が1に近ければ一方の薬剤の効果が強すぎる濃度域、0に近ければいずれの薬剤の効果が弱すぎる濃度域と考えられ、相乗効果を議論するには適当では無いため、各細胞において化合物1とオラパリブの全30通りの濃度の組み合わせによって算出されたFa値から、0.2≦Fa≦0.8となるような両薬剤の濃度の組み合わせを抽出し、CalcuSynによる線形曲線フィッティングへ供して、CIを得た。
【0092】
B 結果
得られたCIと、それを与える両薬剤の濃度を検討し、CIが中程度以上の相乗作用(0.85未満)となる両薬剤のそれぞれの濃度域を見出した(表2)。
【0093】
【0094】
HCC38細胞において、化合物1が300nMでありオラパリブが10000及び30000nMである濃度では、相乗作用を示す組み合わせが見出された。
また、HCC1395細胞において、化合物1が300nMでありオラパリブが300及び1000nMである濃度では強力な相乗作用が見出された。
さらに、Hs578T細胞では化合物1が300及び1000nMであり,オラパリブが3000及び10000nMにおいて相乗作用を示す組み合わせが見出され,中でも化合物1が300nMでオラパリブ10000nMでは強力な相乗作用が見出された。
Capan-1細胞において、化合物1が300nMでありオラパリブが300nMである濃度では中程度の相乗作用を,化合物1が300nMでありオラパリブが1000nMである濃度では、相乗作用を示すことが見出された。
HCC1428細胞では化合物1が300nMでありオラパリブが3000及び10000nMである濃度では、相乗作用を示す組み合わせが見出された。
MCF7細胞において化合物1が300nMでありオラパリブが1000及び3000nMである濃度では、相乗作用を示す組み合わせが見出された。
【0095】
実施例2:化合物1およびルカパリブとのインビトロ組み合わせ分析
上記以外の細胞株に対する、化合物1とルカパリブとの組み合わせについても、同様のインビトロ組み合わせ分析を行った。表3に示すとおり、化合物1とルカパリブとの組み合わせは、相乗作用(CI<0.7)を示した。また、HCC1395細胞株によって得られた結果では、1つ以上の濃度の組み合わせにおいて強力な相乗効果(CI<0.30)を示した。
【0096】
【0097】
以上のとおり、本発明の一般式(I)で表されるアザ二環式化合物又はその塩は、PARP阻害剤との併用により強力な相乗作用を示すことが明らかになった。