IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボーグワーナー インコーポレーテッドの特許一覧

特許7518108張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可)
<>
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図1
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図2
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図3A
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図3B
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図4
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図5A
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図5B
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図5C
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図6
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図7
  • 特許-張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可) 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】張力を加えてドライブトレイン・ジャンプトルク容量を増加させる方法(複数可)
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20240709BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
F16H7/08 B
F02F7/00 K
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022007748
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2022113145
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】63/140,457
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】クランプ・マシュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ルーン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ・ショーン アール.
(72)【発明者】
【氏名】グッドセル・ジョセフ ピー.
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-042757(JP,A)
【文献】特開平03-134351(JP,A)
【文献】実開昭56-173248(JP,U)
【文献】特開2000-274501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
F02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムであって、
駆動スプロケットと、
被駆動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを前記被駆動スプロケットに接続するチェーンであって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に弛みストランド、および前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に張りストランドを有するチェーンと、
前記駆動スプロケットよりも前記被駆動スプロケットに接近した第1の取り付け位置において前記チェーンの弛みストランドと相互作用するために前記ドライブトレイン・トランスファケース内に取り付けられ、前記被駆動スプロケットに向かって非対称に張力を加え、その結果、前記チェーンの弛みが前記駆動スプロケットに隣接して蓄積して、前記チェーンのジャンプトルクを増加させる第1のテンショナと、
前記駆動スプロケットよりも前記被駆動スプロケットに接近して第2の取り付け位置において前記チェーンの張りストランドと相互作用するために前記ドライブトレイン・トランスファケース内に取り付けられた第2のテンショナと、
を備え、
前記第1のテンショナが、
前記ドライブトレイン・トランスファケースに取り付けられた第1のテンショナ取り付けブラケットであって、前記第1のテンショナ取り付けブラケットから垂直に延びるピボットアクスルを有する、第1のテンショナ取り付けブラケットと、
前記ピボットアクスルを受容するための第1のプレートの第1の端部における第1の穴と、前記第1のプレートの第2の端部における第2の穴と、を規定する第1のプレート、
前記ピボットアクスルを受容するための第2のプレートの第1の端部における第1の穴と、前記第2のプレートの第2の端部における第2の穴と、を規定する第2のプレート、
前記第1のプレートの第2の穴、および前記第2のプレートの第2の穴内に受容されたピボットピンを備える、第1のテンショナ・アーム端部を有する本体を備える第1のテンショナ・アームと、
前記ピボットピンを受容するためのピボット穴を規定し、かつ前記チェーンの弛みストランドと相互作用するように適合されたチェーン滑り面(前記ピボット穴は、前記チェーン滑り面とは反対側にある)を有する本体を備える前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に受容される第1のテンショニング・アーム・テンショニング・フットと、
第1のテンショナ・アーム取り付けブラケットと前記第1のテンショナ・アームとの間に取り付けられ、前記ピボットアクスル上の前記第1のテンショナ・アームの第2の端部を前記チェーンの弛みストランドに向かって付勢するトーションスプリングと、を備え、
前記第2のテンショナが、
前記ドライブトレイン・トランスファケースに取り付けられた第2のテンショナ取り付けブラケットであって、前記第2のテンショナ取り付けブラケットから垂直に延びるピボットアクスルを有する、第2のテンショナ取り付けブラケットと、
前記ピボットアクスルを受容するための第1のプレートの第1の端部における第1の穴と、前記第1のプレートの第2の端部における第2の穴と、を規定する第1のプレート、
前記ピボットアクスルを受容するための第2のプレートの第1の端部における第1の穴と、前記第2のプレートの第2の端部における第2の穴と、を規定する第2のプレート、
前記第1のプレートの第2の穴、および前記第2のプレートの第2の穴内に受容されたピボットピンを備える本体を備える第2のテンショナ・アームと、
前記ピボットピンを受容するためのピボット穴を規定し、かつ前記チェーンの張りストランドと相互作用するように適合されたチェーン滑り面(前記ピボット穴は、前記チェーン滑り面とは反対側にある)を有する本体を備える前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に受容される第2のテンショナ・アーム・テンショニング・フットと、
第2のテンショナ・アーム取り付けブラケットと前記第2のテンショナ・アームとの間に取り付けられ、前記ピボットアクスル上の前記第2のテンショナ・アームの第1の端部を前記チェーンの張りストランドに向かって付勢するトーションスプリングと、を備える、チェーンシステム。
【請求項2】
前記トーションスプリングの第1の端部が、前記第1のテンショナ・アーム取り付けブラケットに接地され、前記トーションスプリングの第2の端部が、前記第1のテンショナ・アームの第1の端部に接触する、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項3】
第1のテンショナ・アーム・テンショニング・フットに取り付けられた第1のテンショナ・アーム停止部であって、前記ドライブトレイン・トランスファケースと前記第1のテンショナ・アーム停止部との間の境界面を介して前記第1のテンショナ・アーム・テンショニング・フットの回転を制限することにより歯飛びイベントによるテンショナ装置の損傷を防止するように適合される、第1のテンショナ・アーム停止部と、
前記第2のテンショナ・アーム・テンショニング・フットに取り付けられた第2のテンショナ・アーム停止部であって、前記ドライブトレイン・トランスファケースと前記第2のテンショナ・アーム停止部との間の境界面を介して前記第2のテンショナ・アーム・テンショニング・フットの回転を制限することにより歯飛びイベントによるテンショナ装置の損傷を防止するように適合される、第2のテンショナ・アーム停止部と、をさらに備える、請求項1に記載のチェーンシステム。
【請求項4】
前記チェーンが、12.70mm~50.8mmの幅を有する、請求項1に記載のチェーンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「チェーンテンショナ」という名称で2021年1月22日付で出願された仮特許出願第63/140,457号に開示されている1つ以上の発明を請求する。米国仮特許出願の35USC§119(e)による利益が本明細書で主張され、上記出願は、本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、チェーンテンショナに関し、より具体的には、ジャンプトルクを増加させるドライブシステム用のチェーンテンショナに関する。
【0003】
油圧テンショナなどの張力付与装置は、チェーンが複数のスプロケット間を走行する際に、動力伝達チェーン、またはエンジンタイミングシステム内の同様の動力伝達装置の制御装置として使用される。この装置では、チェーンが駆動軸から被駆動軸に動力を伝達し、その結果、チェーンの一部が弛み、チェーンの一部が張る。一般に、歯付きチェーンの場合、騒音、滑り、または歯の非噛み合い(歯飛び)を防止するために、ある程度の張力をチェーンに付与して維持することが重要である。内燃機関のチェーン被駆動カムシャフトの場合、歯飛びがカムシャフトのタイミングを狂わせ、損傷を引き起こしたり、エンジンを動作不能にさせたりする可能性があるため、このような滑りの防止は特に重要である。
【0004】
内燃機関の過酷な環境では、様々な要因によってチェーン張力の変動をもたらす可能性がある。たとえば、エンジンの各部間の温度および熱膨張係数の幅広いばらつきは、チェーン張力を過度に高いレベルと低いレベルとの間で変化させる可能性がある。長期間使用すると、動力伝達システムの構成要素の摩耗が、チェーン張力を低下させる可能性がある。さらに、カムシャフトとクランクシャフトによって誘起される捩り振動は、チェーン張力の相当なばらつきを引き起こす。たとえばエンジンの停止中や始動の試みの失敗時に発生する、エンジンの逆回転はまた、チェーン張力の変動を引き起こす可能性がある。これらの理由から、チェーンの張り側にかかる過度の緊張力を取り除き、チェーンの弛み側に必要な張力を確保するメカニズムが望まれる。
【0005】
現在、エンジンタイミングシステムでは、スナバ、ガイド、またはテンショナを使用して、チェーンの少なくとも1つのストランドに張力をかけ、ストランドの共振を制御することにより、騒音、振動、ハーシュネス(NVH)を改善する。ただし、このようなチェーンストランド管理は、ドライブトレイン・トランスファケースには見られない。
【0006】
張力付与装置は、いくつかの理由でドライブトレイン・トランスファケースで使用されてこなかった。従来技術の教示によると、弛みストランドに張力をかけてチェーンの弛みを吸収することにより歯飛びが遅延し得、これは高い緊張力に相当し、より大きなジャンプトルクをもたらす。ただし、チェーンの少なくとも1つのストランドに、絶えず荷重を加える張力付与装置は、システム効率を低下させ、その結果、高い緊張力は、ジャンプトルクをより大きくするが、システム効率を相当に悪化させる。改善されたジャンプトルク性能に伴う利点は、従来技術の図1にジャンプトルク(Nm)対張力付与装置のスプリング荷重(N)の関係が示されているように効率の犠牲を上回らない。張力付与装置のスプリング荷重が増加すると、ジャンプトルクの改善効果が高まる。張力付与装置のスプリング荷重が65Nを超え、220Nまでの場合、ジャンプトルクの改善が見られる。ただし、従来技術のグラフ(図2)に示されているように、張力付与装置のスプリング荷重が増加すると、システム効率が低下する。図2では、テンショナのないシステムは、約99.3%のシステム効率をもたらすのに対して、ジャンプトルクがより大きい215Nのスプリングは、約96.8%のシステム効率が得られるという、大幅な効果をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、チェーン張力付与装置は、チェーンの弛みの自然な蓄積を抑制する。チェーンの弛みを制御する際に、チェーンジャンプが発生するトルクを遅延させると、より高いジャンプトルク性能をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エンジンタイミングシステムで使用される従来の張力付与装置のジャンプトルク(Nm)対張力付与装置のスプリング荷重(N)のグラフを示している。
図2】従来のドライブトレイン・トランスファケース、および使用されるスプリング荷重に応じた関連効率のグラフを示している。
図3A】被駆動スプロケットを基準にした弛みの蓄積の概略箇所の概略図を示している。
図3B】駆動スプロケットを基準にした弛みの蓄積の概略箇所の概略図を示している。
図4】被駆動スプロケットに向かって非対称に張力付与装置が適用された状態のチェーンシステムの概略図を示している。
図5A】第1の実施形態の第1および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムの概略図である。
図5B図5Aの第1のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナの詳細図である。
図5C図5Aの第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナの詳細図である。
図6】第2の実施形態のトーションスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケースの部分図である。
図7】第3の実施形態のブレードスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムの概略図を示している。
図8】デュアルストランド・テンショナを備えたチェーンシステムの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ、チェーンシステム1の被駆動スプロケット6および駆動スプロケット2を基準にした弛みの蓄積30、32の概略箇所を示している。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8はスプロケット2、6と噛み合い、スプロケット間で回転運動を伝達する。テストの結果、チェーン8は、チェーンシステム1の被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2のいずれかでジャンプできることが明かになった。被駆動スプロケット6の近傍でチェーン8がジャンプすることによって、チェーン8のジャンプトルク蛇はより低くなり、駆動スプロケット2の近傍でチェーン8がジャンプすることによって、チェーン8のジャンプトルクは高くなる。したがって、駆動スプロケット2のみでジャンプを強制的に発生させると、チェーンのジャンプトルク性能を高めることが可能になる。テストを通じて、被駆動スプロケットまたは駆動スプロケット6、2を基準にしてチェーンの弛みが集まる特定の箇所があることが解明されたので、チェーン8がジャンプするのはどちらのスプロケットかが決定される。図3Aは、被駆動スプロケット6で発生する、参照番号30で表示される弛みの蓄積を示し、図3Bは、駆動スプロケット2で発生する、参照番号32で表示される弛みの蓄積を示している。
【0010】
トランスファケース内の被駆動スプロケットと駆動スプロケットとの間のチェーンのチェーンストランド上の特定の場所に少なくとも1つの従来の張力付与装置を配置する構成を用いて、駆動スプロケットのジャンプを強制し、チェーンのジャンプトルク定格を上げ、その結果システムのジャンプトルク要件を維持しながら、より狭いチェーンを適用することが可能になる。したがって、狭いチェーンおよびスプロケットに対して駆動スプロケットのジャンプを強制すると、質量低減とコスト削減の利点が提供される。たとえば、駆動スプロケットに近接してジャンプを強制的に発生させることにより、チェーンの幅を1/4インチ(6.35mm)減らすことができる。したがって、1.5インチ(38.10mm)幅のチェーンを必要とするチェーンを備えた従来のチェーンシステムでは、本発明の張力付与装置の適用により、より狭い(例えば幅1.25インチ(31.75mm)の)チェーンを使用することが可能になる。適用設計と要件を変えると、幅を1/4インチ(6.35mm)よりも大きいまたは小さい幅の減少が可能になり得る。本発明の実施形態は、直径が1/2インチ(12.70mm)~2インチ(50.8mm)であるチェーンに適用することができる。
【0011】
追加の研究により、図4に示されるように、張力付与装置が被駆動スプロケットに向かって非対称に適用されると、ローフォーススプリングが駆動スプロケットのジャンプを強制する可能性があることが解明された。図4において、単一のピボット点を有する第1のテンショナ装置40は、チェーン8の第1のストランド8aと係合することができ、かつ第1の取り付け位置におけるチェーン8を基準に取り付けられるチェーン滑り面44を有する。一実施形態では、第1のテンショナ装置40は、三角形の形状にすることができ、チェーン滑り面44の反対側の中心点にあるピボットピン穴54で受容される単一のピボットピン42を備える。第1のテンショナ装置40の反対側には、単一のピボット点と、チェーン8の第2のストランド8bと係合することができ、かつ第2の取り付け位置に取り付けられるチェーン滑り面52と、を有する第2のテンショナ装置48がある。一実施形態では、第2のテンショナ装置48は、三角形の形状にすることができ、チェーン滑り面52の反対側の中心点にあるピボットピン穴55で受容される単一のピボットピン50を備える。ピボットピン42、50は、好ましくは、ドライブトレイン・トランスファケースに取り付けられる。第1および第2のテンショナ装置40、48の配置または取り付け位置は、駆動スプロケット2よりも被駆動スプロケット6に接近しており、その結果、チェーン8の両ストランド8a、8bへの張力が被駆動スプロケット6に向かって非対称に加えられており、したがって、チェーン8の弛みが、代わりに、図3Bのように、箇所32の駆動スプロケット2の近傍に蓄積することを可能にすることに留意されたい。
【0012】
さらに、緊張力が被駆動スプロケット6において加えられた状態で、駆動スプロケット2において歯飛びが発生するように強制し、テンショナ装置に加えられるようなローフォーススプリングが必要とされ、これにより、例えば25Nのトーションスプリングが使用されて、約98.9%の効率をもたらし、図6に示されるようにシステム効率への悪影響を軽減させることが可能になる。加えて、従来知られているように、チェーンストランドに張力をかけると、ストランドの共振を制御することによりNVHを改善することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、ドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムは、少なくともチェーンとともに、駆動スプロケット、被駆動スプロケット、および少なくとも1つの張力付与装置を含む。チェーン、駆動スプロケット、および被駆動スプロケットは、ドライブトレイン・トランスファケース内の従来のチェーンシステムと比較して、幅が1/4インチ(6.35mm)縮小されている。少なくとも1つの張力付与装置の質量は、チェーン、駆動スプロケット、および被駆動スプロケットに対する縮小において節約された質量を下回る。例えば、従来の適用が1.5インチ(38.10mm)幅のチェーンを必要とする場合、本発明は、効率を変えずに、より狭い1.25インチ(31.75mm)幅のチェーンを使用する。適用設計と要件を変えると、幅を1/4インチ(6.35mm)よりも大きいまたは小さい幅の減少が可能になり得る。1/4インチの幅縮小は、一般的なチェーンサイズの命名に関連していることに留意されたい。実際の寸法はわずかに異なる。さらに、チェーンを狭くすると、スプロケットも狭くすることができる。
【0014】
図5A図8は、ドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムを示し、チェーンシステムは少なくとも1つの張力付与装置を含み、張力付与装置はシステム効率を維持しながら、かつコストを増加させることなく、チェーンシステムのサイズおよび質量を削減させた。
【0015】
図5A図5Cは、第2の実施形態の第1および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムの概略図を示している。ドライブトレイン・トランスファケース60は、駆動スプロケット2、被駆動スプロケット6、チェーン8、第1のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナ61、および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナ63を受容する。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8はスプロケット2、6と噛み合い、2つのスプロケット間で回転運動を伝達する。
【0016】
第1および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナ61、63は、それぞれ、ピボットアクスル64a、64bを備えた取り付けブラケット62a、62bを有し、ピボットアクスル64a、64bは取り付けブラケット62a、62bから垂直に延びている。
【0017】
各テンショナ61、63は、本体75a、75bを有するアーム68a、68bも含み、本体75a、75bは、第1のプレート81a、81b、第2のプレート82a、82b、およびピボットピン70a、70bを含む。各アーム68a、68bの第1のプレート81a、81bおよび第2のプレート82a、82bは、それぞれ、第1の端部67a、67bおよび第2の端部69a、69bを有する。第1のプレート81a、81bは、第1の端部67a、67bに第1の穴83a、83bを有し、第2の端部69a、69bに第2の穴84a、84bを有する。第2のプレート82a、82bは、第1の端部67a、67bに第1の穴85a、85bを有し、第2の端部69a、69bに第2の穴86a、86bを有する。第1のプレート81a、81bおよび第2のプレート82a、82bは、互いに接続され、取り付けブラケット62a、62bのピボットアクスル64a、64bと、第1のプレート81a、81bおよび第2のプレート82a、82bの第2の穴84a、84b、86a、86b内に受容されたピボットピン70a、70bと、によって位置合わせされる。第1のプレート81a、81bと第2のプレート82a、82bとの間の距離は、ピボットアクスル64a、64bおよびピボットピン70a、70bの長さの少なくとも一部分に等しい。第1のプレート81a、81bおよび第2のプレート82a、82bの第1の端部67a、67bの第1の穴83a、83b、85a、85bは、ピボットアクスル64a、64bおよびトーションスプリング66a、66bを受容する。トーションスプリング66a、66bの第1の端部が、アーム68a、68bをチェーン8に向かって付勢し、トーションスプリング66a、66bの第2の端部が、取り付けブラケット62a、62bに取り付けられた状態で、ピボットアクスル64a、64bは、トーションスプリング66a、66bによって取り囲まれている。
【0018】
第1のプレート81a、81bおよび第2のプレート82a、82bの第2の端部69a、69bにおいて、かつ第1のプレート81a、81bと第2のプレート82a、82bとの間で、テンショ二ング・フット72a、72bがピボットピン70a、70bに取り付けられている。テンショ二ング・フット72a、72bは、ピボット点穴88a、88bおよびチェーン滑り面74a、74bを備えた本体87a、87bを有する。テンショ二ング・フット72a、72bは、本体87a、87bのピボット点穴88a、88b内にピボットピン70a、70bを受容し、関連ピボット点は、チェーン滑り面74a、74bとは反対側にある。一実施形態では、ピボット点穴88a、88bは、チェーン8と相互作用するチェーン滑り面74a、74bの反対側に中央に配置されている。
【0019】
この実施形態では、マルチピボット・トーションスプリング・テンショナ61、63は、2つのピボット点と、ピボットアクスル64a、64bと、アーム68a、68bをテンショ二ング・フット72a、72bに接続するピボットピン70a、70bと、を有する。アーム68a、68bは、好ましくは剛体を有する。
【0020】
第1および第2のトーションスプリング・テンショナ61、63は、それぞれ、取り付けブラケット62a、62bを介して、駆動スプロケット2よりも被駆動スプロケット6に接近してトランスファケース60に固定され、その結果、チェーン8の両ストランド8a、8bへの張力は、被駆動スプロケット6に向かって非対称に加えられており、したがって、チェーン8の弛みが、代わりに、弛み箇所32において駆動スプロケット2の近傍に蓄積することを可能にする。
【0021】
第1および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナ61、63は、以下を提供する。
●駆動スプロケットへの歯飛びを防止または強制するためにチェーンに対する最小の弛みストランドの機械的予負荷または力、
●最小化された張りストランドの機械的予負荷または力、
●前進および後進駆動に対する動的チェーン弛みと、静的チェーン摩耗と、を管理するための、テンショナのチェーン滑り面の走行、および
●チェーンの歯飛びイベント中のチェーン滑り面およびチェーンの動きの制限。
【0022】
歯飛びイベントによるテンショナ装置の損傷を防止するために、停止特徴部95を追加することができる。歯飛びイベントの間、張力付与装置は、チェーンストランド8a、8bから離れて回転することができ、この回転は、停止特徴部95とドライブトレイン・トランスファケース60との間の境界面によって制限されたている。停止特徴部95は、図5Aおよび図5Bのテンショナフット72a、72bに適用されるものとして示されているが、停止特徴部95は、テンショナアームまたはテンショナ面にも適用することができる。停止特徴部95は、テンショナを損傷させないように、またはチェーンの弛みを制御するテンショナの能力を低下させないように、「低応力」接触を作り出す。
【0023】
トーションスプリング66a、66bは、低いスプリングレートで設計することができる。すなわち、スプリング力を最小化する適用を伴うテンショナ位置と最適化されたチェーンの弛み8a、8b制御と効率に適応したスプリングレートとの間のバランスを達成するためにチェーン8のストランド8a、8bにより小さい力を加える。
【0024】
この実施形態では、第1および第2のマルチピボット・トーションスプリング・テンショナ61、63のアーム68a、68bは、関節動作中にテンショナフット72a、72bと共に一定モーメントアームとして機能し、その結果、可動域全体にわたって一定力を生じさせ、制御およびシステム効率を最適化する。加えて、テンショナ61、63が大きな関節動作の角度をカバーするので、パッケージを縮小することができる。
【0025】
図6は、第3の実施形態のトーションスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケースの部分図である。ドライブトレイン・トランスファケース60は、駆動スプロケット2、被駆動スプロケット6、チェーン8、および単一のピボット・トーションスプリング・テンショナ261を受容する。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8はスプロケット2、6と噛み合い、2つのスプロケットの間に回転運動を伝達する。
【0026】
単一のピボット・トーションスプリング・テンショナ261は、ピボットアクスル264を備えた取り付けブラケット262を有し、ピボットアクスル264は、取り付けブラケット262から垂直に延びている。ピボットアクスル264は、アーム268を受容する。アーム268は、好ましくは、一体型本体278を有するが、複数のピースから製造することができる。アーム268は、第1の端部268a、第2の端部268b、およびチェーン滑り面274を備えた本体278を有し、チェーン滑り面274は被駆動スプロケット6に接近している単一のチェーンストランド8aと相互作用する。本体278の第1の端部268aには、ピボットアクスル264を受容するための穴279がある。
【0027】
トーションスプリング266は、取り付けブラケット262の間に存在し、ピボットアクスル264上の一体型アーム268の第1の端部267に作用する。スプリング266の一方の端部266aは、取り付けブラケット262に対して接地され、第2の端部266bはアーム268に接触する。
【0028】
駆動スプロケット2よりも被駆動スプロケット6に接近して取り付けられた単一のピボット・トーションスプリング・テンショナ261の配置は、ストランド8aに加えられる非対称張力をもたらし、その結果、チェーンの弛みは、駆動スプロケット2の近傍に蓄積する。
【0029】
図7は、第4の実施形態のブレードスプリング・テンショナを含むドライブトレイン・トランスファケース内のチェーンシステムの概略図を示している。
【0030】
ドライブトレイン・トランスファケース60は、駆動スプロケット2、被駆動スプロケット6、チェーン8、第1のブレードスプリング・テンショナ361、および第2のブレードスプリング・テンショナ363を受容する。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8はスプロケット2、6と噛み合い、2つのスプロケットの間に回転運動を伝達する。
【0031】
第1および第2のブレードスプリング・テンショナ361、363は、それぞれ、取り付けブラケット362a、362b(ピボットアクスル364a、364bは、取り付けブラケット362a、362bから垂直に延びる)、および取り付け面375a、375bを有する。ピボットアクスル364a、364bは、ピボット穴381a、381bを介して、弾性ブレード・テンショナアーム本体368a、368bの第1の端部367a、367bをピボット可能に受容する。弾性ブレード・テンショナアーム本体368a、368bの第2の端部369a、369bは、取り付け面375a、375bに隣接しており、それらと相互作用する。弾性ブレード・テンショナアーム本体368a、368bは、チェーン8のチェーンストランド8a、8bと相互作用する新しいチェーンの経路のプロファイルを備えたチェーン滑り面374a、374bを有する。チェーン滑り面374a、374bの反対側には、ブレードスプリング366a、366bの少なくとも端部を受容および収容するための手段がある。ブレードスプリング366a、366bは、テンショナのテンショナアーム本体368a、368bによって形成されるポケット、ブレードスプリング366a、366bの少なくとも端部をテンショナ本体368a、368bに固定するタブまたは他の手段によって収容することができ、その結果、ブレードスプリング366a、366bが反り得る。弾性ブレード・テンショナアーム本体368a、368bおよびブレードスプリング366a、366bは外向きに、かつ取り付け面375a、375bから離れて撓みかつ反り得る。
【0032】
第1および第2のブレードスプリング・テンショナ361、363は、それぞれ、取り付けブラケット362a、362bを介して、駆動スプロケット2よりも被駆動スプロケット6に接近してトランスファケース160に固定され、その結果、チェーン8の両ストランド8a、8bへの張力は、被駆動スプロケット6に向かって非対称に加えられており、したがって、チェーン8の弛みが、代わりに、駆動スプロケット2の近傍に蓄積することを可能にする。
【0033】
図8は、デュアルストランド・テンショナを備えたチェーンシステムの概略図を示している。
【0034】
ドライブトレイン・トランスファケースは、駆動スプロケット2、被駆動スプロケット6、チェーン8、第1のテンショナ461、および第2のテンショナ463を受容する。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8はスプロケット2、6と噛み合い、2つのスプロケットの間に回転運動を伝達する。
【0035】
この実施形態では、第1のテンショナ461および第2のテンショナ463は、被駆動スプロケット6に隣接しているチェーンストランド8a、8bに作用する。第1のテンショナ461および第2のテンショナ463は、互いに機械的に接続され480、その結果、第1のテンショナ461によるチェーン8のストランド8aに向かって回転することにより、第2のブレードスプリング・テンショナ463が反対側のチェーンストランド8bから離れるように揺動する。
【0036】
第1および第2のテンショナ461、463は、それぞれ、駆動スプロケット2よりも被駆動スプロケット6に接近して取り付けられ、その結果、チェーン8の両ストランド8a、8bへの張力は、被駆動スプロケット6に向かって非対称に加えられており、したがって、チェーン8の弛みが、代わりに、駆動スプロケット2の近傍に蓄積することを可能にする。
【0037】
例示されていないが、代替の実施形態において、第1の張力付与装置は、第2の張力付与装置とは異なる装置であり得る。一例では、第1の張力付与装置は、第1のマルチピボット・トーションスプリング61であり、第2の張力付与装置は、第2のブレードスプリング・テンショナ363である。この例は限定的なものではなく、他の組み合わせも可能である。
【0038】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用を単に例示するものであることを理解されたい。本明細書において例示された実施形態の詳細を参照することは、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲自体は、本発明に不可欠とみなされる特徴を列挙する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8