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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01D5/245 W
G01D5/245 110L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022022294
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119404
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521251039
【氏名又は名称】小関 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】染谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】小関 栄男
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504906(JP,A)
【文献】特開2021-21706(JP,A)
【文献】特開2000-101401(JP,A)
【文献】特開2021-21705(JP,A)
【文献】特表2006-523822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
H02K 7/00-7/20
H03K 3/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持体と、
前記第1の支持体に対して相対移動する第2の支持体と、
前記第1の支持体に配置された発電センサと、
前記第2の支持体の前記相対移動によって前記発電センサの検出領域を通る軌道に沿って前記検出領域に同極性の複数の磁極が順次に進入するように前記第2の支持体に固定された磁界発生源と、を含み、
前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、前記磁性ワイヤの両端部にそれぞれ磁気的に結合され、前記検出領域に対向する磁束伝導端を有する第1磁束伝導片および第2磁束伝導片と、を含み、
前記発電センサの前記コイルは、前記磁界発生源の前記磁極からの磁束が前記第1磁束伝導片から伝導される第1状態で正の電圧パルスを生成し、前記磁界発生源の磁極からの磁束が前記第2磁束伝導片から伝導される第2状態で負の電圧パルスを生成する、位置検出装置。
【請求項2】
前記第1磁束伝導片の前記磁束伝導端と前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端との間に前記磁界発生源の前記磁極が位置しているかどうかを表す識別信号を出力するセンサ要素をさらに含む、請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁性ワイヤは、芯部とそれを取り囲む表皮部とを有し、前記芯部および表皮部の一方がソフト層であり、前記芯部および表皮部の他方がハード層であり、
前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記磁性ワイヤの軸方向の一方である第1軸方向に揃っている第1セット状態で前記磁極が前記軌道に沿って前記第1磁束伝導片の前記磁束伝導端に接近することによって、前記ソフト層の磁化方向が前記磁性ワイヤの軸方向の他方である第2軸方向に反転して前記正の電圧パルスが前記コイルから生成される前記第1状態となり、
前記第1状態から前記磁極が前記軌道に沿って前記第1磁束伝導片にさらに接近することによって、前記ハード層の磁化方向が前記第2軸方向に反転して、前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記第2軸方向に揃った第2セット状態となり、
前記第2セット状態で、前記磁極が前記軌道に沿って前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端に接近することによって、前記ソフト層の磁化方向が前記第1軸方向に反転して前記負の電圧パルスが前記コイルから生成される前記第2状態となり、
前記第2状態から前記磁極が前記軌道に沿って前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端にさらに接近することによって、前記ハード層の磁化方向が前記第1軸方向に反転して、前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記第1軸方向に揃った前記第1セット状態となる、請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、実質的に同形状の軟磁性体部品からなり、
前記軟磁性体部品は、前記磁性ワイヤの端部が貫通するワイヤ配置部と、前記ワイヤ配置部から前記磁性ワイヤの軸方向に直交する所定方向に沿って前記磁束伝導端まで延びたI形に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記軟磁性体部品は、前記磁性ワイヤから前記磁束伝導端までの長さが、前記磁性ワイヤから前記磁束伝導端とは反対側の端部までの長さよりも長く、かつ前記磁性ワイヤとの結合位置における前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片の間の距離の50%以上であるように構成されている、請求項4に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、実質的に同形状の軟磁性体部品からなり、
前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片をそれぞれ構成する前記軟磁性体部品は、前記磁性ワイヤの両端部がそれぞれ結合され前記磁性ワイヤの両端部から前記磁性ワイヤの軸方向に直交する方向に互いに平行に延びる一対の軸直交部と、前記軸直交部の先端部から前記軸方向に沿って互いに接近する方向に延び、近接端同士が前記軸方向に間隔を空けて対向する一対の軸平行部とを備えたL形またはT形に構成されており、前記検出領域に対向する前記磁束伝導端を前記軸平行部に設けている、請求項1~3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記間隔の前記軸方向の距離が、前記磁性ワイヤとの結合位置における前記一対の軸直交部の間の前記軸方向の距離の5%~50%である、請求項6に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、前記検出領域に配置される前記磁極が当該第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端に形成する磁界を前記磁性ワイヤの軸方向の磁界に補正して前記磁性ワイヤに印加するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記第1の支持体に対する前記第2の支持体の相対移動に伴って前記磁界発生源の磁極が前記軌道に沿って前記発電センサの前記検出領域に進入し、
前記発電センサの前記磁性ワイヤの軸方向は、前記軌道上の或る接点を通る接線と平行であり、前記磁性ワイヤの前記軸方向の中心位置は、前記接点において前記接線に立てた垂線上にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記第2の支持体は、前記第1の支持体に対して、所定の回転軸線まわりに相対回転し、
前記第1の支持体および前記第2の支持体は、前記回転軸線に平行な方向に間隔を空けて対向しており、
前記磁界発生源の前記複数の磁極は、前記回転軸線を中心軸とする円周軌道上に等間隔に配置されており、かつ各磁極の着磁方向は前記回転軸線と平行または前記円周軌道の半径と平行であり、
前記発電センサは、前記回転軸線を中心とし前記円周軌道と等しい半径の円周上の或る接点に前記磁性ワイヤの中心位置が位置し、かつ当該接点における接線に前記磁性ワイヤが沿う配置で、前記検出領域を前記第2の支持体の側に向けて、前記第1の支持体に支持されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電センサを用いた位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)を有する磁性ワイヤは、ウィーガンドワイヤまたはパルスワイヤの名で知られている。この磁性ワイヤは、芯部とその芯部を取り囲むように設けられた表皮部とを備えている。芯部および表皮部の一方は弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト(軟磁性)層であり、芯部および表皮部の他方は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード(硬磁性)層である。このような磁性ワイヤにコイルを巻回することにより、発電センサを構成することができる。
【0003】
ハード層とソフト層とがワイヤの軸方向に沿って同じ向きに磁化されているときに、その磁化方向とは反対方向の外部磁界強度が増加して或る磁界強度に達すると、ソフト層の磁化方向が反転する。この磁化方向の反転は、磁性ワイヤの或る部分を開始位置としてワイヤ全体に伝播し、ソフト層の磁化方向が一斉に反転する。このとき、大バルクハウゼン効果が発現し、磁性ワイヤに巻かれたコイルにパルス信号が誘発される。上述の外部磁界強度がさらに増加し、或る磁界強度に達すると、ハード層の磁化方向が反転する。
【0004】
この明細書では、ソフト層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「動作磁界」といい、ハード層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「安定化磁界」という。
【0005】
コイルから得られる出力電圧は、入力磁界(外部磁界)の変化スピードにかかわらず一定であり、入力磁界に対するヒステリシス特性を持つためチャタリングがない、などの特徴を有する。そのため、コイルから生成されるパルス信号は、位置検出装置などに使用される。コイルからの出力は電力を持つため、外部電力の供給を要しない発電型のセンサ(発電センサ)を構成できる。すなわち、外部電力の供給なしに、コイルの出力エネルギーにより、周辺回路も動作させることができる。
【0006】
大バルクハウゼン効果が発現するためには、ハード層およびソフト層の磁化方向が一致している状態から、ソフト層のみの磁化方向が反転することが必要である。ハード層およびソフト層の磁化方向が不一致の状態で、ソフト層のみの磁化方向が反転したとしても、パルス信号は生じないか、あるいは生じたとしても非常に小さい。
【0007】
また、得られる電力を最大化するためには、磁性ワイヤ全体の磁化方向が揃っている状態から、ソフト層の磁化反転が磁性ワイヤ全体に及ぶことが重要である。磁性ワイヤの磁化方向が部分的に揃っていない場合には、非常に小さいパルス信号が得られるに過ぎない。そのため、磁性ワイヤの全体に一様な磁界がかかることが好ましい。
【0008】
発電センサに交番磁界が与えられた場合、1周期に対して正パルス信号1つおよび負パルス信号1つの計2つのパルス信号が発生する。磁界の発生源として磁石を使い、磁石と発電センサとの相対的な運動により発電センサに交番磁界が加わるようにし、発生するパルス信号をカウントすることで位置を検出できる。
【0009】
しかし、1つの発電センサの出力のみでは、運動の方向が変化した場合に運動方向の識別がつかない。そこで複数の発電センサを用いて、各発電センサの出力の位相差を使えば運動方向を識別することができる。
【0010】
ところが、複数の発電センサを用いると、位置検出器のサイズおよびコストの増加につながる。
【0011】
特許文献1には、磁石の運動を、1つの発電センサと、発電センサではない別のセンサ要素とを用いて運動方向を識別し位置を特定することが記載されている。同文献ではN極とS極の2つの磁極が一対で1周期の交番磁界を発生し、発電センサより出力されるパルス電圧の正負と別のセンサ要素の信号により運動方向を特定し、位置のカウントを行う。同文献にはさらに、1つの磁石(2極)を用いた構成と、複数の磁石(多極)を用いて分解能を向上させる構成とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第4712390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発電センサを利用した位置検出器の分解能を向上させるには、変位に対して周期の短い交番磁界を磁性ワイヤに与える必要がある。従来の技術では、検出対象の磁極数を増やすことで分解能の向上を達成している。
【0014】
一方、発電センサから十分な電力のパルス電圧を得るためには磁性ワイヤ全体に一定以上の磁界強度の平行な磁界を与える必要がある。位置検出器の大きさを変えずに磁極数を増やそうとすると、磁極同士が接近し、互いに磁気干渉を起こし、磁性ワイヤ全体に平行な磁界を与えることが難しくなる。小型化と高分解能化の両立は難しい。
【0015】
この発明の一実施形態は、位置検出の分解能が高く、かつ小型の位置検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の一実施形態は、第1の支持体と、前記第1の支持体に対して相対移動する第2の支持体と、前記第1の支持体に配置された発電センサと、前記第2の支持体の前記相対移動によって前記発電センサの検出領域を通る軌道に沿って前記検出領域に同極性の複数の磁極が順次に進入するように前記第2の支持体に固定された磁界発生源と、を含む、位置検出装置を提供する。前記発電センサは、大バルクハウゼン効果を発現する磁性ワイヤと、前記磁性ワイヤに巻回されたコイルと、前記磁性ワイヤの両端部にそれぞれ磁気的に結合され、前記検出領域に対向する磁束伝導端を有する第1磁束伝導片および第2磁束伝導片と、を含む。前記発電センサの前記コイルは、前記磁界発生源の前記磁極からの磁束が前記第1磁束伝導片から伝導される第1状態で正の電圧パルスを生成し、前記磁界発生源の磁極からの磁束が前記第2磁束伝導片から伝導される第2状態で負の電圧パルスを生成する。
【0017】
この構成によれば、第2の支持体が第1の支持体に対して相対的に移動することにより、磁界発生源の磁極が、発電センサの検出領域を通る軌道に沿って移動する。それにより、磁界発生源の一つの磁極が第1磁束伝導片の磁束伝導端に接近すると、その磁極からの磁束が第1磁束伝導片から伝導される第1状態となり、磁性ワイヤに巻回されたコイルから正の電圧パルスが生成される。また、その磁極が第2磁束伝導片の磁束伝導端に接近すると、その磁極からの磁束が第2磁束伝導片から伝導される第2状態となり、磁束ワイヤに巻回されたコイルから負の電圧パルスが生成される。したがって、一つの磁極が検出領域を通過する間に、正負のパルスが一つずつ生成され、合わせて2パルスが生成される。それにより、少ない数の発電センサで分解能の高い位置検出が可能になる。より詳細には、一つの発電センサで、磁界発生源の磁極の数の2倍の分解能での位置検出が可能になる。したがって、少ない磁極数で多数のパルスを生成することができる。それにより、小型で分解能の高い位置検出装置を提供できる。
【0018】
磁界発生源の複数の磁極(同極性の磁極)は、一つの磁極が検出領域を通過している間に、他の磁極が検出領域に入らないように配置することが好ましい。具体的には、複数の磁極は、その軌道上で、磁性ワイヤの軸長よりも大きな間隔(たとえば、磁性ワイヤの軸長の1.5倍以上の間隔)を空けて配置されていることが好ましい。
【0019】
また、磁界発生源が異極性の磁極を有する場合には、検出領域内において、一方の極性の磁極のみが磁束伝導端に対向し、他方の極性の磁極は磁束伝導端に対向しないように配置することが好ましい。すなわち、第2の支持体が第1の支持体に対して相対移動するときに検出領域内で第1磁束伝導片および第2磁束伝導片に対向する磁極は、全て、一方の極性(すなわち同極性)の磁極であることが好ましい。
【0020】
一つの実施形態では、前記位置検出装置は、前記第1磁束伝導片の前記磁束伝導端と前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端との間に前記磁界発生源の前記磁極が位置しているかどうかを表す識別信号を出力するセンサ要素をさらに含む。
【0021】
この構成によれば、第1磁束伝導片および第2磁束伝導片のそれぞれの磁束伝導端の間に磁極が位置しているかどうかを表す識別信号がセンサ要素から出力されるので、発電センサのコイルが出力する正負の電圧パルスとの組合せによって、第2の支持体の第1の支持体に対する相対移動の方向を識別することができる。これにより、相対移動の方向が変化しても、位置の検出が可能になる。とくに、少なくとも一つ(好ましくは一つ)の発電センサと少なくとも一つ(好ましくは一つ)のセンサ要素とを備えることで、相対移動の方向の変化にも対応した位置検出が可能であるので、小型の位置検出装置を提供できる。
【0022】
センサ要素は、発電センサ以外のセンサであることが好ましく、たとえば、磁気抵抗素子やホール素子などの磁気センサを用いることができる。
【0023】
一つの実施形態では、前記磁性ワイヤは、芯部とそれを取り囲む表皮部とを有し、前記芯部および表皮部の一方がソフト層(軟磁性層)であり、前記芯部および表皮部の他方がハード層(硬磁性層)である。前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記磁性ワイヤの軸方向の一方である第1軸方向に揃っている第1セット状態で前記磁極が前記軌道に沿って前記第1磁束伝導片の前記磁束伝導端に接近することによって、前記ソフト層の磁化方向が前記磁性ワイヤの軸方向の他方である第2軸方向に反転して前記正の電圧パルスが前記コイルから生成される前記第1状態となる。前記第1状態から前記磁極が前記軌道に沿って前記第1磁束伝導片にさらに接近することによって、前記ハード層の磁化方向が前記第2軸方向に反転して、前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記第2軸方向に揃った第2セット状態となる。前記第2セット状態で、前記磁極が前記軌道に沿って前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端に接近することによって、前記ソフト層の磁化方向が前記第1軸方向に反転して前記負の電圧パルスが前記コイルから生成される前記第2状態となる。前記第2状態から前記磁極が前記軌道に沿って前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端にさらに接近することによって、前記ハード層の磁化方向が前記第1軸方向に反転して、前記ソフト層および前記ハード層の両方の磁化方向が前記第1軸方向に揃った前記第1セット状態となる。
【0024】
この構成により、磁極がその軌道に沿って第1磁束伝導片の磁束伝導端に接近することによって正の電圧パルスを生成でき、かつ負の電圧パルスを生成するための準備状態である第2セット状態とすることができる。また、磁極がその軌道に沿って第2磁束伝導片の磁束伝導端に接近することによって負の電圧パルスを生成でき、かつ正の電圧パルスを生成するための準備状態である第1セット状態とすることができる。こうして、各磁束伝導片の磁束伝導端の近傍を磁極が通過するたびに、2個の電圧パルスが生成されるので、多数の磁極を必要としない小型の構成で、分解能の高い位置検出が可能になる。
【0025】
一つの実施形態では、前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、実質的に同形状の軟磁性体部品からなる。前記軟磁性体部品は、前記磁性ワイヤの端部が貫通するワイヤ配置部と、前記ワイヤ配置部から前記磁性ワイヤの軸方向に直交する所定方向に沿って前記磁束伝導端まで延びたI形に構成されている。
【0026】
この構成により、第1磁束伝導片および第2磁束伝導片は、実質的に同形状の軟磁性体部品からなるので、いずれの磁束伝導片の磁束伝導端に磁極が接近したときにも、磁性ワイヤに実質的に等しい大きさの磁界をかけることができる。また、磁束伝導片を構成する軟磁性体部品が磁性ワイヤの軸方向に直交するI形に構成されているので、磁束伝導端を磁性ワイヤから離れた位置に配置できる。それにより、磁界発生源の磁極を、磁性ワイヤから離れた軌道を通って移動するように配置できるので、磁極からの磁束の大部分は磁束伝導端に導かれ、磁束伝導片を通って磁性ワイヤに印加される。すなわち、磁極から磁性ワイヤの軸方向途中位置に直接入る磁束を少なくできる。それにより、検出領域を通る軌道に沿って磁極が一対の磁束伝導片の間を移動するときに、磁性ワイヤ内で磁極が徐々に反転することを抑制でき、それによって、磁極が磁束伝導片に達したときに、大バルクハウゼン効果(ソフト層の磁化方向の一斉反転)を発現させることができる。
【0027】
一つの実施形態では、前記軟磁性体部品において、前記磁性ワイヤから前記磁束伝導端までの長さが、前記磁性ワイヤから前記磁束伝導端とは反対側の端部までの長さよりも長い。また、前記磁性ワイヤから前記磁束伝導端までの長さが、前記磁性ワイヤとの結合位置における前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片の間の距離の50%以上であることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、I形の軟磁性体部品は、その長手方向の中心に対して一方向にオフセットした位置で磁性ワイヤと磁気的に結合されている。それにより、I形の軟磁性体部品を小型にしながら、磁性ワイヤと磁束伝導端までの距離を長くすることができる。したがって、発電センサの小型化を図りながら(したがって、位置検出装置の小型化を図りながら)、磁性ワイヤの軸方向途中位置に磁極からの磁束が直接入ることを抑制でき、大バルクハウゼン効果による大きな電圧パルスを得ることができる。とくに、磁性ワイヤから磁束伝導端までの軟磁性体部品の長さを、磁性ワイヤから磁性ワイヤとの結合位置における第1磁束伝導片および第2磁束伝導片の間の距離の50%以上とすることにより、磁極からの磁束の大部分を磁束伝導片に導き、磁束伝導片から磁性ワイヤへと伝導することができる。こうして、小型で高出力の可能な発電センサを備え、しかも分解能の高い位置検出装置を提供できる。
【0029】
一つの実施形態では、前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、実質的に同形状の軟磁性体部品からなる。そして、前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片をそれぞれ構成する前記軟磁性体部品は、前記磁性ワイヤの両端部がそれぞれ結合され前記磁性ワイヤの両端部から前記磁性ワイヤの軸方向に直交する方向に互いに平行に延びる一対の軸直交部と、前記軸直交部の先端部から前記軸方向に沿って互いに接近する方向に延び、近接端同士が前記軸方向に間隔を空けて対向する一対の軸平行部とを備えたL形またはT形に構成されており、前記検出領域に対向する前記磁束伝導端を前記軸平行部に設けている。
【0030】
この構成によれば、軸直交部の先端部から軸方向に沿って延びる軸平行部は、検出領域と磁性ワイヤとの間に位置するので、検出領域を通る磁極から磁性ワイヤを遮蔽する作用を有する。そのため、磁極から磁性ワイヤの軸方向途中位置に直接入り込む磁束を一層確実に少なくすることができる。したがって、軸平行部において検出領域に対向する磁束伝導端に磁極からの磁束のほぼ全てを導くことができ、その磁束を、磁束伝導片によって磁性ワイヤの端部へと導くことができる。その結果、磁性ワイヤのほぼ全体に渡って、その軸方向の磁界を印加することができ、大バルクハウゼン効果を効率的に発現させることができる。しかも、L形またはT形に構成される軟磁性体部品によって構成される磁束伝導片を用いることによって、磁性ワイヤの軸方向に直交する方向に関して、発電センサの大きさを小さくすることができる。それに応じて、位置検出装置の小型化を図ることができる。したがって、小型で高出力の可能な発電センサを備え、しかも分解能の高い位置検出装置を提供できる。
【0031】
一つの実施形態では、前記間隔の前記軸方向の距離が、前記磁性ワイヤとの結合位置における前記一対の軸直交部の間の前記軸方向の距離の5%~50%(より好ましくは20%~40%)である。
【0032】
軸平行部の近接端同士の間隔を上記の範囲に定めることによって、優れた磁気遮蔽効果が得られる。したがって、磁性ワイヤの軸方向の広い範囲にわたってその軸方向の磁界を印加することができるので、大バルクハウゼン効果を十分に引き起こすことができ、発電センサは、高出力の信号を出力できる。
【0033】
一つの実施形態では、前記第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片は、前記検出領域に配置される前記磁極が当該第1磁束伝導片および前記第2磁束伝導片の前記磁束伝導端に形成する磁界を前記磁性ワイヤの軸方向の磁界に補正して前記磁性ワイヤに印加するように構成されている。
【0034】
この構成によれば、磁束伝導片は、検出領域に配置される磁界発生源からの磁界を補正する磁界補正機能を有し、それにより、磁性ワイヤの両端部の間に、その軸方向の磁界を印加することができる。それにより、発電センサは、大バルクハウゼン効果を十分に引き出して、高出力のパルス信号を発生することができる。
【0035】
一つの実施形態では、前記第1の支持体に対する前記第2の支持体の相対移動に伴って前記磁界発生源の磁極が前記軌道に沿って前記発電センサの前記検出領域に進入し、前記発電センサの前記磁性ワイヤの軸方向は、前記軌道上の或る接点を通る接線と平行であり、前記磁性ワイヤの前記軸方向の中心位置は、前記接点において前記接線に立てた垂線上にある。
【0036】
この構成により、磁界発生源の磁極からの磁界を効率的に磁束伝導片へと導くことができ、第1磁束伝導片および第2磁束伝導片の磁束伝導端に磁極が接近するたびに、電圧パルスを生成させることができる。
【0037】
磁極の軌道が直線軌道である場合には、前記接線は当該直線軌道に一致する。したがって、磁性ワイヤの軸方向は直線軌道と平行になる。
【0038】
磁極の軌道が回転軸線まわりの円周軌道である場合に、前記垂線は、回転軸線と平行であってもよく、回転半径と平行(回転軸線に垂直)であってもよい。
【0039】
一つの実施形態では、前記第2の支持体は、前記第1の支持体に対して、所定の回転軸線まわりに相対回転し、前記第1の支持体および前記第2の支持体は、前記回転軸線に平行な方向に間隔を空けて対向しており、前記磁界発生源の前記複数の磁極は、前記回転軸線を中心軸とする円周軌道上に等間隔に配置されており、かつ各磁極の着磁方向は前記回転軸線と平行または前記円周軌道の半径と平行であり、前記発電センサは、前記回転軸線を中心とし前記円周軌道と等しい半径の円周上の或る接点に前記磁性ワイヤの中心位置が位置し、かつ当該接点における接線に前記磁性ワイヤが沿う配置で、前記検出領域を前記第2の支持体の側に向けて、前記第1の支持体に支持されている。
【0040】
この構成によれば、磁界発生源の複数の磁極は回転軸線まわりの円周軌道に沿って移動し、かつその円周軌道上に等間隔に配置されている。したがって、磁極が発電センサの検出領域を通過することによって生成される電圧パルスにより、第2の支持体の第1の支持体に対する相対回転位置を検出できる。第1の支持体および第2の支持体は回転軸線に平行な方向に対峙しており、第1の支持体に支持される発電センサは、検出領域を第2の支持体の側に向けて配置されているので、回転軸線まわりの径方向の大きさの小さな回転位置検出装置を提供できる。磁極の着磁方向は、回転軸線に平行でも、径方向に平行でもよい。径方向に平行である場合、発電センサは、径方向外側の磁極に応答するように配置しても、径方向内側の磁極に応答するように配置してもよい。
【発明の効果】
【0041】
この発明によれば、位置検出の分解能が高く、かつ小型の位置検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A-1B】図1Aおよび図1Bは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の検出原理を説明するための図である。
図1C-1D】図1Cおよび図1Dは、前記位置検出装置の検出原理を説明するための図である。
図1E図1Eは、前記位置検出装置の検出原理を説明するための図である。
図2A-2B】図2Aおよび図2Bは、前記位置検出装置における移動方向(回転方向)の特定を説明するための図である。
図2C-2D】図2Cおよび図2Dは、前記位置検出装置における移動方向(回転方向)の特定を説明するための図である。
図3A-3B】図3Aおよび図3Bは、比較例の構成および動作を説明するための図である。
図3C-3D】図3Cおよび図3Dは、比較例の構成および動作を説明するための図である。
図3E-3F】図3Eおよび図3Fは、比較例の構成および動作を説明するための図である。
図4A-4B】図4Aは、発電センサの具体的な構成例を説明するための図であり、図4Bは、磁性ワイヤの軸方向の各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を示す。
図5A-5B】図5Aは、発電センサの他の具体的な構成例を説明するための図であり、図5Bは、磁性ワイヤの軸方向の各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を示す。
図6A-6B】図6Aは、発電センサのさらに他の具体的な構成例を説明するための図であり、図6Bは、磁性ワイヤの軸方向の各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を示す。
図7図7は、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための斜視図であり、直動型位置検出装置の構成例を示す。
図8A図8Aは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための図であり、L形の磁束伝導片を有する発電センサを用いた回転型位置検出装置を示す。
図8B図8Bは、前記位置検出装置の構成例を説明するための図である。
図8C図8Cは、前記位置検出装置の構成例を説明するための図である。
図9A-9C】図9A図9Cは、L形の磁束伝導片を有する発電センサの作用を詳しく説明するための図である。
図9D-9F】図9D図9Fは、L形の磁束伝導片を有する発電センサの作用を詳しく説明するための図である。
図10A図10Aは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための図であり、I形の磁束伝導片を有する発電センサを用いた回転型位置検出装置を示す。
図10B図10Bは、前記位置検出装置の構成例を説明するための図である。
図10C図10Cは、前記位置検出装置の構成例を説明するための図である。
図11A-11B】図11Aおよび図11Bは、発電センサのさらに他の具体的な構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
図1A図1Eは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の検出原理を説明するための図である。この位置検出装置100は、発電センサ10と、磁界発生源20とを含む。発電センサ10は、第1の支持体31に配置され、当該第1の支持体31に支持されている。磁界発生源20は、第2の支持体32に固定されている。
【0045】
第2の支持体32は、第1の支持体31に対して相対移動する。それにより、磁界発生源20は、第2の支持体32とともに、第1の支持体31に対して相対移動する。第2の支持体32は、この例では、回転軸線33まわりに回転運動する。磁界発生源20は、回転軸線33から離れた位置に配置された複数の磁石M1,M2を含む。複数の磁石M1,M2は、第2の支持体32の相対運動、具体的には回転軸線33まわりの回転運動によって、発電センサ10の検出領域SRに順に進入するように、第2の支持体32に固定されている。複数の磁石M1,M2は、検出領域SRにおいて、発電センサ10に同じ極性の磁極P1,P2が対向するように着磁されている。磁極P1,P2は、回転軸線33まわりの円周軌道21に沿って移動する。この円周軌道21が検出領域SRを通るように、発電センサ10と磁界発生源20との配置が定められている。複数の磁極P1,P2は、円周軌道21上で等間隔に配置されている。
【0046】
発電センサ10は、磁性ワイヤFEと、磁性ワイヤFEに巻回されたコイルSP(誘導コイル)と、一対の磁束伝導片、すなわち第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2とを備えている。磁性ワイヤFEは、大バルクハウゼン効果を発現するように構成されている。具体的には、磁性ワイヤFEは、芯部と、それを被覆する表皮部とを有している。芯部および表皮部の一方は、弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト(Soft)層(軟磁性層)であり、芯部および表皮部の他方は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード(Hard)層(硬磁性層)である。
【0047】
一対の磁束伝導片FL1,FL2は、磁性ワイヤFEの両端部にそれぞれ磁気的に結合されている。各磁束伝導片FL1,FL2は、検出領域SRに対向する磁束伝導端11,12を有している。磁性ワイヤFEは、一対の磁束伝導端11,12の間における円周軌道21上の点(接点)における接線と平行に軸方向xを設定し、かつ当該接点において当該接線に立てたの垂線上に軸方向xの中心位置15(以下「軸中心位置15という。」を設定して配置されている。コイルSPは、磁石M1,M2の磁極P1,P2からの磁束が第1磁束伝導片FL1から伝導される第1状態で正の電圧パルスを生成し、磁石M1,M2の磁極P1,P2からの磁束が第2磁束伝導片FL2から伝導される第2状態で負の電圧パルスを生成する。
【0048】
より具体的に説明すると、図1Aは、正の電圧パルスを出力するための準備状態である第1セット状態を示す。すなわち、磁性ワイヤFEのソフト層およびハード層の両方の磁化方向が磁性ワイヤFEの軸方向xの一方である第2軸方向x2に揃っている。この第1セット状態で、図1Bに示すように、第2の支持体32が回転し、磁石M1の磁極P1(図示の例ではN極)が円周軌道21を通って第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11に接近すると、磁極P1からの磁束が第1磁束伝導片FL1から伝導される第1状態となり、それによって、磁性ワイヤFEには、磁性ワイヤFEの軸方向xの他方である第1軸方向x1の動作磁界が印加される。これにより、大バルクハウゼン効果が発現して、ソフト層の磁化方向が第1軸方向x1に反転する。それに伴い、コイルSPから正の電圧パルスが生成される。
【0049】
第1状態から、図1Cに示すように、第2の支持体32の回転によって磁極P1が第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11にさらに接近すると、磁性ワイヤFEに印加される第1軸方向x1の磁束が強まることにより、安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第1軸方向x1に反転する。それにより、ソフト層およびハード層の両方の磁化方向が第1軸方向x1に揃った第2セット状態となる。第2セット状態は、負の電圧パルスを生成するための準備状態である。
【0050】
第2セット状態から、図1Dに示すように、第2の支持体32がさらに回転して、磁極P1が円周軌道21を通って第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12に接近すると、磁極P1からの磁束が第2磁束伝導片FL2から伝導される第2状態となり、それによって、磁性ワイヤFEには、第2軸方向x2の動作磁界が印加される。これにより、大バルクハウゼン効果が発現して、ソフト層の磁化方向が第2軸方向x2に反転する。それに伴い、コイルSPから負の電圧パルスが生成される。
【0051】
第2状態から、図1Eに示すように、第2の支持体32の回転によって磁極P1が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12にさらに接近すると、磁性ワイヤFEに印加される第2軸方向x2の磁束が強まることにより、安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第2軸方向x2に反転する。それにより、ソフト層およびハード層の両方の磁化方向が第2軸方向x2に揃った第1セット状態に戻る。
【0052】
第2の支持体32の一方向の回転に伴って次に第1磁束伝導片FL1に接近する磁石M2の磁極P2も同極(N極)であるので、同様の動作が繰り返される。
【0053】
こうして、一つの磁極P1が発電センサ10の検出領域SRを通過するときに、一つの正パルスおよび一つの負パルスの合計2パルスがコイルSPから出力される。他の磁極P2が発電センサ10の検出領域SRを通過するときも同様であるので、第2の支持体32が一回転することによって4パルスのパルス電圧が得られる。これらのパルス電圧を用いて、第2の支持体32の第1の支持体31に対する相対回転位置を検出できる。
【0054】
検出領域SRは、磁極P1,P2の通過に伴って、磁性ワイヤFEに動作磁界および安定化磁界が印加される空間領域である。
【0055】
位置検出装置100は、回転方向を識別するためのセンサ要素をさらに備えている。センサ要素HSは、磁石M1,M2が発生する磁界を検出する磁気センサであってもよい。磁気センサとしては、磁気抵抗素子およびホール素子を例示できる。センサ要素HSは、第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11と第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12との間の軌道21上に磁極P1,P2が位置しているときに識別信号を出力するように配置および構成されている。図示の例では、センサ要素HSは、磁極P1,P2のうちの一方が第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間の軌道21上に位置するときに、磁極P1,P2のうちの他方からの磁界を検出して識別信号を発生する。2つの磁極P1,P2が円周軌道21上に等間隔で配置されており、それらの間隔は磁性ワイヤFEの軸長よりも大きいので、2つの磁極P1,P2が同時に検出領域SR内に位置する場合はない。
【0056】
図2A図2Dは、パルス電圧が生成される4つの状態を示す。図2Aは、第2の支持体32が回転軸線33まわりに正転方向R1に回転して磁極P1が第1磁束伝導片FL1に接近する状態を示し、このとき、第1セット状態から第1状態となって、コイルSPは正パルスを生成する。図2Bは、第2の支持体32が正転方向R1に回転して磁極P1が第2磁束伝導片FL2に接近する状態を示し、このとき、第2セット状態から第2状態となって、コイルSPは負パルスを生成する。図2Cは、第2の支持体32が逆転方向R2に回転して磁極P1が第1磁束伝導片FL1に接近する状態を示し、このとき、第1セット状態から第1状態となって、コイルSPは正パルスを生成する。図2Dは、第2の支持体32が逆転方向R2に回転して磁極P1が第2磁束伝導片FL2に接近する状態を示し、このとき、第2セット状態から第2状態となって、コイルSPは負パルスを生成する。
【0057】
正パルスが生成される図2Aおよび図2Cの状態は、センサ要素HSが出力する識別信号によって識別される。すなわち、図2Aの状態では、検出領域SR内に位置している磁極P1は、第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間には位置していないので、センサ要素HSは識別信号を出力しない。それに対して、図2Cの状態では、検出領域SR内に位置している磁極P1は、第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間に位置しているので、センサ要素HSは識別信号を出力する。
【0058】
同様に、負パルスが生成される図2Bおよび図2Dの状態は、センサ要素HSが出力する識別信号によって識別される。すなわち、図2Bの状態では、検出領域SR内に位置している磁極P1は、第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間に位置しているので、センサ要素HSは識別信号を出力する。それに対して、図2Dの状態では、検出領域SR内に位置している磁極P1は、第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間に位置していないので、センサ要素HSは識別信号を出力しない。
【0059】
このようにして、コイルSPが生成するパルスの正負とセンサ要素HSが出力する識別信号との組合せによって、第2の支持体32の回転方向(正転方向R1または逆転方向R2)を特定することができる。よって、回転方向が反転した場合であっても、発電センサ10が出力する電圧パルスを用いて、第2の支持体32の第1の支持体31に対する相対回転位置を検出できる。
【0060】
図3A図3Fは、比較例の構成および動作を説明するための図である。これらの図において、図1A図1Eに示した各部の対応部分に同一参照符号を付す。この比較例では、磁界発生源20は、検出領域SRにおいて磁束伝導片FL1,FL2に対向可能な2つの磁極P1,P2を備え、これらの2つの磁極P1,P2は、極性が異なっている。すなわち、一つの磁極P1はN極であり、他の磁極P2はS極である。よって、第2の支持体32が一方向に回転するとき、発電センサ10の検出領域SRにN極およびS極が交互に進入する。
【0061】
図3Aに示すように、N極(磁極P1)が円周軌道21に沿って第1磁束伝導片FL1に接近するとき、磁性ワイヤFEのソフト層およびハード層の両方が第1軸方向x1に磁化されている。したがって、N極(磁極P1)が第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11の近傍を通過するとき、磁性ワイヤFEにおいては、第1軸方向x1の磁界が強められるので、ソフト層およびハード層のいずれの磁化方向も変化しない。
【0062】
この状態から第2の支持体32が回転し、図3Bに示すように、N極(磁極P1)が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12に接近すると、N極(磁極P1)からの磁束が第2磁束伝導片FL2から伝導されることにより、磁性ワイヤFEに動作磁界が印加され、ソフト層の磁化方向が第2軸方向x2へと反転し、大バルクハウゼン効果によって、コイルSPは負パルスを生成する。
【0063】
さらに第2の支持体32が回転し、図3Cに示すように、N極(磁極P1)が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12に対向するときには、磁性ワイヤFEには第2軸方向x2へのさらに強い磁界が印加されるので、磁性ワイヤFEに安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第2軸方向x2へと反転する。これにより、正パルスを生成するためのセット状態になる。
【0064】
この状態から、第2の支持体32が回転し、図3Dに示すように、S極(磁極P2)が第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11に接近するとき、磁性ワイヤFEに印加される第2軸方向x2の磁界が強まり、ソフト層の反転は起きない。
【0065】
さらに第2の支持体32が回転して、図3Eに示すように、S極(磁極P2)が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12に接近すると、S極(磁極P2)からの磁束が第2磁束伝導片FL2から伝導されることにより、磁性ワイヤFEに動作磁界が印加され、ソフト層の磁化方向が第1軸方向x1へと反転し、大バルクハウゼン効果によって、コイルSPは正パルスを生成する。
【0066】
さらに第2の支持体32が回転し、図3Fに示すように、S極(磁極P2)が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12に対向するときには、磁性ワイヤFEには第1軸方向x1へのさらに強い磁界が印加されるので、磁性ワイヤFEに安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第1軸方向x1へと反転する。これにより、負パルスを生成するためのセット状態になる。
【0067】
このように、この比較例の構成では、N極(磁極P1)の通過によって一つの負のパルスが生成され、S極(磁極P2)の通過によって一つの正のパルスが生成される。したがって、第2の支持体32が1回転する間に、2パルスのパルス電圧が出力される。
【0068】
よって、この比較例と比較すると、前述の実施形態は、2倍のパルス数のパルス電圧を生成できる。すなわち、前述の実施形態の構成によれば、一つの発電センサ10が磁界発生源20の磁極の数の2倍の分解能の位置検出パルスを生成する。したがって、少ない磁極数で多数の位置検出パルスを生成できるので、小型で分解能の高い位置検出装置を提供できる。
【0069】
図4Aは、発電センサ10の具体的な構成例を説明するための図である。この発電センサ10Aは、磁性ワイヤFEと、磁性ワイヤFEの両端部に磁気的に結合された第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2を備えている。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、実質的に同形同大の構成を有している。各磁束伝導片FL1,FL2は、円筒状に構成された軟磁性体部品で構成されており、中心軸に沿って貫通孔13Aが形成されている。この貫通孔13Aに磁性ワイヤFEの端部が挿入されている。第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間で、磁性ワイヤFEにコイルSPが巻回されている。
【0070】
図4Aには、発電センサ10Aの近傍に磁石MのN極を配置したときの磁束の伝導をベクトルで表してある。具体的には、磁性ワイヤFEの全長が11mmであり、磁性ワイヤFEの軸方向xの磁石Mの長さは10mmである。磁石M(磁極)は、軸方向xの中心位置を磁性ワイヤFEの軸中心位置15から1mmだけ、第1磁束伝導片FL1の側にずらして配置してある。このときの磁性ワイヤFEの軸方向xの各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を図4Bに示す。ワイヤ位置は、磁性ワイヤFEの第1磁束伝導片FL1側の端を原点「0」とし、第2磁束伝導片FL2側の端を「11」として、原点からの軸方向xの距離によって表してある。
【0071】
図4Bから、磁性ワイヤFEの軸中心位置15に対して第1磁束伝導片FL1側に磁界の向きが反転するワイヤ位置があることが分かる。このことは、磁極が軸方向xに沿って移動するときに、磁性ワイヤFE内(とくにソフト層)の部分的な磁化反転が起こることを意味する。
【0072】
図5Aは、発電センサ10の他の具体的な構成例を説明するための図である。この発電センサ10Bは、磁性ワイヤFEと、磁性ワイヤFEの両端部に磁気的に結合された第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2を備えている。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、実質的に同形同大の軟磁性体部品からなる。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、磁性ワイヤFEの軸方向xに直交する所定方向に平行に延びている。各磁束伝導片FL1,FL2は、実質的に直線的に延びた直方体形状を有し、いわばI形の構成を有する。
【0073】
各磁束伝導片FL1,FL2は、磁性ワイヤFEと磁気的に結合された基端部と、基端部とは反対側の先端面からなる磁束伝導端11B,12Bとを有する。磁束伝導端11B,12Bは、磁性ワイヤFEの軸方向xに平行な平坦面であり、検出領域SRに対向する検出領域対向面を成している。磁束伝導片FL1,FL2の基端部には、磁性ワイヤFEの軸方向に沿って貫通した貫通孔または貫通溝で構成されるワイヤ配置部13Bが設けられている。磁性ワイヤFEの端部は、ワイヤ配置部13Bにおいて、磁束伝導片FL1,FL2を軸方向xに貫通している。たとえば、ワイヤ配置部13Bには、磁束伝導片FL1,FL2と磁性ワイヤFEとを結合して固定するための樹脂(図示せず)が配置されている。第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間で、磁性ワイヤFEにコイルSPが巻回されている。
【0074】
この発電センサ10Bは、磁束伝導端11B,12B(検出領域対向面)に対向する空間領域を、磁界を検出するための検出領域SRとしたものである。
【0075】
図5Aには、発電センサ10Bの近傍に磁石MのN極を配置したときの磁束の伝導をベクトルで表してある。具体的には、磁性ワイヤFEの全長が11mmであり、磁性ワイヤFEの軸方向xの磁石Mの長さは10mmである。磁石M(磁極)は、軸中心位置15を磁性ワイヤFEの軸方向xの中心位置から1mmだけ、第1磁束伝導片FL1の側にずらして配置してある。このときの磁性ワイヤFEの軸方向xの各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を図5Bに示す。ワイヤ位置は、磁性ワイヤFEの第1磁束伝導片FL1側の端を原点「0」とし、第2磁束伝導片FL2側の端を「11」として、原点からの軸方向xの距離によって表してある。
【0076】
図5Bから、ワイヤ位置による強弱はあるものの、磁性ワイヤFE内の磁界方向は、磁性ワイヤFEの全軸長範囲で一致していることが分かる。
【0077】
図6Aは、発電センサ10のさらに他の具体的な構成例を説明するための図である。この発電センサ10Cは、磁性ワイヤFEと、磁性ワイヤFEの両端部に磁気的に結合された第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2を備えている。第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間で、磁性ワイヤFEにコイルSPが巻回されている。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、実質的に同形同大の軟磁性体部品からなる。より詳細には、第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、磁性ワイヤFEの軸中心位置15において軸方向xに直交する対称面17(幾何学的配置を説明するための仮想的な平面)に対して互いに対称に構成されている。
【0078】
第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、磁性ワイヤFEの両端部から軸方向xに直交する方向に互いに平行に延びる軸直交部41と、軸直交部41の先端部から軸方向xに沿って互いに接近する方向に延びる軸平行部42とを備えている。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の軸直交部41の基端部に、磁性ワイヤFEの両端部がそれぞれ固定されている。より具体的には、軸直交部41の基端部には、軸方向xに貫通する穴または溝が形成されたワイヤ配置部13Cが設けられている。磁性ワイヤFEの両端部は、ワイヤ配置部13Cにおいて、第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の軸直交部41をそれぞれ貫通して、軸直交部41に固定されている。たとえば、ワイヤ配置部13Cを構成する穴または溝に配置された樹脂(図示せず)によって、磁性ワイヤFEと第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2とが互いに結合されて固定されている。それにより、磁性ワイヤFEの両端部は、第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2にそれぞれ磁気的に結合されている。
【0079】
発電センサ10Cは、軸平行部42に対して磁性ワイヤFEとは反対側を、磁界を検出するための検出領域SRとするように構成されている。
【0080】
軟磁性体部品からなる各磁束伝導片FL1,FL2は、略直方体形状の軸直交部41と、軸直交部41の検出領域SR側の端部である先端部に連設された略直方体形状の軸平行部42とを有し、軸直交部41と軸平行部42との結合部で直角に曲がったL字形状を有している。軸平行部42は、磁性ワイヤFEを覆うように、すなわち、磁性ワイヤFEと検出領域SRとの間を遮蔽するように、軸方向xに沿って延びている。互いに対称な形状を有する第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2は、磁性ワイヤFEの軸中央側に向かって延びており、それらの近接端42aは、磁性ワイヤFEの軸中心位置15の付近で間隔43を空けて互いに対向している。近接端42aは、軸方向xに直交する平面をなしており、2つの近接端42aをそれぞれ形成する2つの平面は互いに平行であり、それらが軸方向xに対峙している。
【0081】
第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の軸平行部42は、検出領域SRに対向する検出領域対向面を成す磁束伝導端11C,12Cを有している。磁束伝導端11C,12C(検出領域対向面)は、軸方向xに平行な平坦面である。この磁束伝導端11C,12C(検出領域対向面)は、検出領域SRに磁極が配置されたときに、その磁極からの磁束を第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の内部へと導く。
【0082】
図6Aには、発電センサ10Cの近傍に磁石MのN極を配置したときの磁束の伝導をベクトルで表してある。具体的には、磁性ワイヤFEの全長が11mmであり、磁性ワイヤFEの軸方向xの磁石Mの長さは10mmである。磁石M(磁極)は、軸方向xの中心位置を磁性ワイヤFEの軸中心位置15から1mmだけ、第1磁束伝導片FL1の側にずらして配置してある。このときの磁性ワイヤFEの軸方向xの各位置(ワイヤ位置)における磁束密度を図6Bに示す。ワイヤ位置は、磁性ワイヤFEの第1磁束伝導片FL1側の端を原点「0」とし、第2磁束伝導片FL2側の端を「11」として、原点からの軸方向xの距離によって表してある。
【0083】
図6Bから、磁性ワイヤFE内の磁界方向は、磁性ワイヤFEの全軸長範囲で一致しており、しかも、第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の間の全区間において、磁性ワイヤFEに均一な磁界が印加されていることが分かる。
【0084】
これらより、図6AのL形の磁束伝導片FL1,FL2を用いる構成が最も好ましく、図5AのI形の磁束伝導片FL1,FL2を用いる構成が次に好ましいことが分かる。
【0085】
図7は、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための斜視図であり、直動型位置検出装置の構成例を示す。位置検出装置110は、第1の支持体31に対して所定の運動方向50に沿って直線運動する第2の支持体32の位置を検出する。発電センサ10Bは、I形の磁束伝導片FL1,FL2を備えた構成(図5A参照)を有している。発電センサ10Bは、磁性ワイヤFEの軸方向xを運動方向50に一致させて配置されている。
【0086】
第1の支持体31は、たとえばプリント配線板である。第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端11B,12B(検出領域対向面)が第1の支持体31の一方の主面に接合されており、これにより、発電センサ10Bが第1の支持体31に支持されている。
【0087】
第1の支持体31において、発電センサ10Bが実装された主面には、磁気センサで構成されたセンサ要素HSが実装されている。センサ要素HSは、第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間に配置されており、より具体的には、軸方向xに関して、第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の中間位置に配置されている。また、センサ要素HSは、磁束伝導片FL1,FL2が互いに対向する空間内に配置されており、磁束伝導片FL1,FL2の幅内に収められている。それにより、発電センサ10Bおよびセンサ要素HSを含む検出部全体が、ほぼ発電センサ10Bの幅内に収まっている。
【0088】
第2の支持体32は、図示の例では、長尺な板状体であり、運動方向50にその長手方向を一致させてある。第2の支持体32の発電センサ10Bに対向する主面には、運動方向50(すなわち第2の支持体32の長手方向)に等しい間隔を空けて複数の磁石M1~M5が配置されている。運動方向50に隣り合う磁石M1~M5の間隔は、磁性ワイヤFEの長さよりも長いことが好ましく、磁性ワイヤFEの長さの約1.5倍以上が好ましい。複数の磁石M1~M5は、同じ極性の磁極(N極およびS極のうちの一方。たとえばN極)が、発電センサ10Bに対向するように第2の支持体32に固定されている。各磁石M1~M5の着磁方向は、I形の磁束伝導片FL1,FL2の長手方向に平行である。換言すれば、各磁石M1~M5の着磁方向は、磁性ワイヤFEからその軸方向xに直角に検出領域SRに向かう方向と平行である。
【0089】
運動方向50に沿う第1方向51に第2の支持体32が直線運動するとき、各磁石M1~M5は、運動方向50に平行で、検出領域SRを通る直線軌道22に沿って移動する。それにより、各磁石M1~M5は、第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11Bに対向し、次に第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12Bに対向する。このとき、図1A図1Eを用いて説明した動作原理に従い、発電センサ10BのコイルSPは、一つの正パルスと一つの負パルスとを順に生成する。反対に、運動方向50に沿う第2方向52に第2の支持体32が直線運動するとき、各磁石M1~M5は、第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12Bに対向し、次に第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11Bに対向する。このとき、発電センサ10BのコイルSPは、一つの負パルスと一つの正パルスとを順に生成する。したがって、一つの磁石M1~M5が発電センサ10Bの検出領域SRを通過するごとに、2パルスの電圧パルスが生成される。
【0090】
磁気センサからなるセンサ要素HSは、各磁石M1~M5が第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間の直線軌道22上で発電センサ10Bに対向しているときに識別信号を生成する。したがって、図2A図2Dを用いて説明したセンサ要素HSと実質的に同様の働きを有する。
【0091】
発電センサ10Bの代わりに、図6Aに示したL形の磁束伝導片FL1,FL2を備える発電センサ10Cを用いてもよい。この場合には、一対の磁束伝導片FL1,FL2の軸平行部42の近接端42a同士の間に磁気センサからなるセンサ要素HSを配置すればよい。
【0092】
なお、図7には、第1の支持体31の発電センサ10B側の主面にセンサ要素HSを実装した例を示したが、第1の支持体31の発電センサ10Bとは反対側の主面にセンサ要素HSを実装してもよい。
【0093】
磁気センサからなるセンサ要素HSは、運動方向50に関して第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の間に配置される必要はなく、図7に二点鎖線で例示する配置とすることもできる。すなわち、或る磁石(図7では磁石M3)が第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の間の直線軌道22上に位置するときに他の磁石(図7では磁石M4)に対向する位置に磁気センサからなるセンサ要素HSを配置してもよい。この場合、磁気センサからなるセンサ要素HSは、第1の支持体31に支持されていてもよいし、第1の支持体31との相対位置が変化しないように設けられた別の第3の支持体に支持されていてもよい。
【0094】
図8A図8Cは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための図であり、L形の磁束伝導片を有する発電センサ10C(図6A参照)を用いた位置検出装置120を示す。この位置検出装置120は、回転軸線33まわりの回転位置を検出する装置である。図8Aは、位置検出装置120の斜視図であり、図8Bは回転軸線33に沿って見た平面図であり、図8Cは、磁性ワイヤFEの軸方向xに平行な回転半径方向から見た側面図である。
【0095】
位置検出装置120は、発電センサ10Cと、磁界発生源20とを含む。発電センサ10Cは、第1の支持体31に配置され、第1の支持体31に支持されている。磁界発生源20は、第2の支持体32に固定されている。第2の支持体32は、この例では、第1の支持体31に対して、回転軸線33まわりに相対回転運動する。第1の支持体31は、具体的には、プリント配線板であり、回転軸線33に直交する平面に沿って配置されている。
【0096】
第1の支持体31(プリント配線板)の一方の主面に発電センサ10Cが実装されている。より具体的には、発電センサ10Cの第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の軸平行部42が第1の支持体31(プリント配線板)の一方の主面に形成された配線パターン(図示せず)に接合され、それによって、発電センサ10Cが第1の支持体31(プリント配線板)に面実装されている。発電センサ10Cは、回転軸線33を中心軸とする円周上の一つの点(接点)における接線に磁性ワイヤFEの軸方向xが沿うように配置されており、磁性ワイヤFEの軸中心位置15が当該接点に一致する配置となっている。
【0097】
発電センサ10Cの検出領域SRは、軸平行部42に対して磁性ワイヤFEとは反対側であり、この例では、第1の支持体31(プリント配線板)の他方の主面側の領域である。磁界発生源20は、第2の支持体32の回転に伴って、検出領域SRを順に通過する複数の磁石M1,M2(この例では2つの磁石)を備えている。複数の磁石M1,M2は、同じ極性の磁極P1,P2(図示の例ではN極)を第1の支持体31(プリント配線板)に対向させて配置されている。第2の支持体32は、この例では、回転軸線33を取り囲む円環状に構成されている。より具体的には、第2の支持体32は、円環状の板状体で構成されており、回転軸線33と直交する平面に沿って配置されていて、第1の支持体31(プリント配線板)と平行になっている。第2の支持体32において、第1の支持体31(プリント配線板)の前記他方の主面に対向する面に、複数の磁石M1,M2が固定されている。複数の磁石M1,M2は、回転軸線33まわりの周方向に等間隔で配置されている。図示の具体例では、回転軸線33まわりに180度の角度間隔で2つの磁石M1,M2が配置されている。各磁石M1,M2の着磁方向は、回転軸線33に平行である。そして、同じ極性の磁極P1,P2(図示の例ではN極)が第1の支持体31(プリント配線板)に対向するように、複数の磁石M1,M2が第2の支持体32に固定されている。磁石M1,M2は、この実施形態では、回転軸線33に沿って見た平面視において、回転軸線33を中心とする円周に沿う円弧形状に構成されている。回転軸線33から磁石M1,M2(より詳しくは、第1の支持体31に対向する磁極P1,P2の中心)までの距離は、回転軸線33から磁性ワイヤFEの軸中心位置15までの距離に等しい。すなわち、回転軸線33に沿う平面視において、磁性ワイヤFEおよび磁石M1,M2は、回転軸線33を中心軸とする等しい半径の円周上に位置し、それによって、回転軸線33に平行な方向に対向可能な位置関係となっている。第2の支持体32は、軟磁性体で構成されたヨークであることが好ましい。
【0098】
第2の支持体32が回転軸線33まわりに回転することにより、磁極P1,P2は、回転軸線33を中心とし、検出領域SRを通る円周軌道21上を移動する。磁性ワイヤFEの軸方向xは、円周軌道21上の或る点(接点)を通る接線と平行であり、軸中心位置15は、当該接点において当該接線に立てた垂線(この例では、回転軸線33に平行な垂線)上にある。換言すれば、磁性ワイヤFEの軸中心位置15は、回転軸線33を中心とし、円周軌道21と等しい半径の円周上の或る点(接点)に位置し、磁性ワイヤFEは、当該接点における接線に沿っている。
【0099】
第1の支持体31および第2の支持体32の回転軸線33に沿う方向の距離は、第2の支持体32の回転によって、磁石M1,M2が発電センサ10Cの検出領域SRに進入可能な適切な値に定められる。
【0100】
第1の支持体31を構成するプリント配線板において、発電センサ10Cが実装されている主面には、さらに、磁気センサからなるセンサ要素HSが実装されている。センサ要素HSは、この例では、回転軸線33に対して、磁性ワイヤFEの軸方向xの中心位置と対称な位置、すなわち、回転軸線33を挟んで磁性ワイヤFEの軸中心位置15に対向する位置に配置されている。それにより、センサ要素HSは、磁極P1,P2の一方が第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の間の円周軌道21上で発電センサ10Cに対向するときに、磁極P1,P2の他方からの磁界を検出して識別信号を出力する。
【0101】
前述の図1A図1Eに示した構成と比較すると、図1A図1Eの構成では、磁束伝導端11,12に対して回転半径方向に沿って磁極P1,P2が対向するのに対して、この実施形態の構成では、回転軸線33に平行な方向に沿って磁束伝導端11C,12Cに磁極P1,P2が対向する。このような構成においても、図1A図1Eと同様の動作原理によって、回転軸線33まわりの正転方向R1の回転によって、一つの磁石M1,M2の磁極P1,P2が円周軌道21に沿って検出領域SRを通過するたびに、一つの正パルスと一つの負パルスとが順に生成される。また、回転軸線33まわりの逆転方向R2の回転によって、一つの磁石M1,M2の磁極P1,P2が円周軌道21に沿って検出領域SRを通過するたびに、一つの負パルスと一つの正パルスとが順に生成される。そして、磁石M1,M2が第1磁束伝導片FL1と第2磁束伝導片FL2との間の円周軌道21上にあるときに識別信号を出力するセンサ要素HSによって、回転方向を識別することができる。
【0102】
第1の支持体31に支持される発電センサ10Cは、検出領域SRを第2の支持体32の側に向けて配置されているので、回転軸線33まわりの径方向の大きさの小さな位置検出装置120を提供できる。
【0103】
図9A図9Fは、L形の磁束伝導片FL1,FL2を有する発電センサ10Cの作用を詳しく説明するための図である。図9A(Initial State)は、正の電圧パルスを出力するための準備状態である第1セット状態を示す。すなわち、磁性ワイヤFEのソフト層およびハード層の両方の磁化方向が第2軸方向x2に揃っている。この第1セット状態で、図9B(Trigger Positive)に示すように、磁石M1の磁極P1(図示の例ではN極)が第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11C(軸平行部42の検出領域対向面)に接近すると、磁極P1からの磁束が第1磁束伝導片FL1から伝導される第1状態となり、それによって、磁性ワイヤFEには、第1軸方向x1の動作磁界が印加される。これにより、大バルクハウゼン効果が発現して、ソフト層の磁化方向が第1軸方向x1に反転する。それに伴い、コイルSPから正の電圧パルスが生成される。
【0104】
第1状態から、図9C(Set (Negative))に示すように、磁極P1が第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端11Cにさらに接近すると、磁性ワイヤFEに印加される第1軸方向x1の磁束が強まることにより、安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第1軸方向x1に反転する。それにより、ソフト層およびハード層の両方の磁化方向が第1軸方向x1に揃った第2セット状態となる。第2セット状態は、負の電圧パルスを生成するための準備状態である。
【0105】
第2セット状態から、図9E(Trigger Negative)に示すように、磁石M1がさらに移動し、磁極P1が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12C(軸平行部42の検出領域対向面)に接近すると、磁極P1からの磁束が第2磁束伝導片FL2から伝導される第2状態となり、それによって、磁性ワイヤFEには、第2軸方向x2の動作磁界が印加される。これにより、大バルクハウゼン効果が発現して、ソフト層の磁化方向が第2軸方向x2に反転する。それに伴い、コイルSPから負の電圧パルスが生成される。
【0106】
第2状態から、図9F(Set (Positive))に示すように、磁石M1がさらに移動して磁極P1が第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端12Cにさらに接近すると、磁性ワイヤFEに印加される第2軸方向x2の磁束が強まることにより、安定化磁界が印加され、ハード層の磁化方向も第2軸方向x2に反転する。それにより、ソフト層およびハード層の両方の磁化方向が第2軸方向x2に揃った第1セット状態に戻る。
【0107】
磁極P1が発電センサ10Cの近傍を通って移動するとき、磁性ワイヤFEとの間には、磁束伝導片FL1,FL2の軸平行部42が位置しており、この軸平行部42が磁性ワイヤFEを磁気的に遮蔽する。そのため、磁極P1からの磁束は軸平行部42の検出領域対向面である磁束伝導端11C,12Cに引き寄せられ、そこから磁束伝導片FL1,FL2に入って磁性ワイヤFEの端部へと導かれる。それにより、磁性ワイヤFEのほぼ全軸長範囲において、軸方向xの磁界を印加することができる。すなわち、磁束伝導片FL1,FL2は、磁極P1が磁束伝導端11C,12Cに形成する磁界を軸方向xの磁界に補正して磁性ワイヤFEに印加する磁界補正機能を有するように構成されている。
【0108】
このような磁界補正機能のために、図9D(Balanced)に示すように、一対の磁束伝導片FL1,FL2の中間位置に磁極P1が位置しているときにも、磁極P1から磁性ワイヤFEの軸方向途中位置に直接導かれる磁束はほとんど存在しない。このとき、磁束伝導片FL1,FL2の両方を伝導して磁性ワイヤFEの両端部から印加される磁力がバランスすることにより、磁性ワイヤFEには磁界がかからず、磁性ワイヤFEの磁化方向は変化しない。そして、図9Eの状態に至って、ソフト層の一斉反転が生じて、パルス電圧が生成される。
【0109】
もしも、前述のような磁界補正機能がなければ、第1磁束伝導片FL1の磁束伝導端と第2磁束伝導片FL2の磁束伝導端との間で磁極P1が移動する際に、磁極P1の移動に伴って磁性ワイヤFEが一方端から他方端に向かって徐々に磁化反転する可能性がある。すなわち、磁性ワイヤFEの部分的な磁化反転が生じる可能性がある。このような部分的な磁化反転が生じると、有効な出力を得るのに十分な大バルクハウゼン効果の発現は期待できない。
【0110】
この実施形態では、図9Aに示すように、一対の軸平行部42の近接端42a同士の間隔43の軸方向xの距離Lは、磁性ワイヤFEとの結合位置における一対の軸直交部41の間の軸方向xの距離Dの5%~50%(より好ましくは20%~40%)である。この比率が5%以下のときは、狭い間隔43を通って形成される磁気通路の影響で大バルクハウゼン効果が低下する可能性がある。また、上記比率が50%以上では、磁束伝導端11C,12C(検出領域対向面)の面積が少なくなることにより、大バルクハウゼン効果が低下する可能性がある。上記比率が5%~50%の範囲において、磁性ワイヤFEの素性の90%以上の大バルクハウゼン効果を引き起こすことが可能である。上記比率が20%~40%の範囲であれば、磁性ワイヤFEの素性が有する大バルクハウゼン効果のほぼ100%を引き出すことができる。
【0111】
図10A図10Cは、この発明の一実施形態に係る位置検出装置の構成例を説明するための図であり、I形の磁束伝導片を有する発電センサ10B(図5A参照)を用いた位置検出装置130を示す。この位置検出装置130は、回転軸線33まわりの回転位置を検出する装置である。図10Aは、位置検出装置130の斜視図であり、図10Bは回転軸線33に沿って見た平面図であり、図10Cは、磁性ワイヤFEの軸方向xに平行な回転半径方向から見た側面図である。これらの図面において、図8A図8Cの各部に対応する部分は同一参照符号で示す。
【0112】
この実施形態では、I形の磁束伝導片FL1,FL2を有する発電センサ10Bを用いているほか、磁石M1,M2の着磁方向および第2の支持体32の形状が図8A図8Cの実施形態とは異なる。
【0113】
磁石M1,M2の着磁方向は、この実施形態では、回転軸線33まわりの回転半径方向(回転軸線33に直交する方向)である。そして、回転半径方向の外方に同じ極性の磁極P1,P2(図示の例ではN極)が配置されている。各磁石M1,M2は、回転軸線33を中心軸とした円周に沿う円弧形状に構成されており、外側にN極が配置され、内側にS極が配置されている。第2の支持体32は、リング状の軟磁性体ヨークであり、各磁石M1,M2のS極に外周面が結合されている。
【0114】
発電センサ10Bは、回転軸線33を中心軸とする円周上の点(接点)における接線上に磁性ワイヤFEを沿わせて配置されている。磁性ワイヤFEの軸中心位置15が当該接点に一致している。回転軸線33に沿う平面視において、磁性ワイヤFEの軸中心位置15は、第2の支持体32の回転に伴って、各磁石M1,M2の外側磁極および内側磁極のうちの一方(図示の例では外側磁極)の中心に対向可能な位置にある。発電センサ10Bは、その対向可能な磁極P1,P2からの磁界に応答する。
【0115】
第2の支持体32が回転軸線33まわりに回転することにより、磁極P1,P2は、回転軸線33を中心とし、検出領域SRを通る円周軌道21上を移動する。磁性ワイヤFEの軸方向xは、円周軌道21上の或る点(接点)を通る接線と平行であり、軸中心位置15は、当該接点において当該接線に立てた垂線(この例では、回転軸線33に平行な垂線)上にある。換言すれば、磁性ワイヤFEの軸中心位置15は、回転軸線33を中心とし、円周軌道21と等しい半径の円周上の或る点(接点)に位置し、磁性ワイヤFEは、当該接点における接線に沿っている。
【0116】
このような構成によっても、図8A図8Cの位置検出装置120と同様の回転位置検出が可能である。
【0117】
磁束伝導片FL1,FL2を構成するI形の軟磁性体部品は、図5Aに示すように、磁性ワイヤFEから磁束伝導端11B,12Bまでの長さHが、磁性ワイヤFEから磁束伝導端11B,12Bとは反対側の端部までの長さhよりも長い。すなわち、I形の軟磁性体部品は、その長手方向の中心に対して一方向にオフセットした位置で磁性ワイヤFEと磁気的に結合されている。それにより、I形の軟磁性体部品を小型にしながら、磁性ワイヤFEと磁束伝導端11B,12Bまでの距離を長くすることができる。
【0118】
I形の軟磁性体部品における磁性ワイヤFEから磁束伝導端11B,12Bまでの長さHは、磁性ワイヤFEとの結合位置における第1磁束伝導片FL1および第2磁束伝導片FL2の間の距離Dの50%以上であることが好ましい。それにより、磁極P1,P2からの磁束の大部分を磁束伝導片FL1,FL2に導き、磁束伝導片FL1,FL2から磁性ワイヤFEへと伝導することができる。
【0119】
このような構成によって、磁束伝導片FL1,FL2は、磁極P1が磁束伝導端11B,12Bに形成する磁界を軸方向xの磁界に補正して磁性ワイヤFEに印加する磁界補正機能を強化することができる。したがって、発電センサ10Bの小型化を図りながら(したがって、位置検出装置の小型化を図りながら)、磁性ワイヤFEの軸方向途中位置に磁極P1,P2からの磁束が直接入ることを抑制でき、大バルクハウゼン効果による大きな電圧パルスを得ることができる。よって、小型で高出力の可能な発電センサ10Bを備え、しかも分解能の高い位置検出装置130を提供できる。
【0120】
図10A図10Cの構成において、L形の磁束伝導片FL1,FL2を有する発電センサ10C(図6A参照)を用いることもできる。
【0121】
なお、図8A図8Cおよび図10A図10Cの位置検出装置120,130においては、第2の支持体32が、軟磁性体ヨークで構成されているが、必ずしも、第2の支持体32が軟磁性体ヨークである必要はない。
【0122】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、次に例示するとおり、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0123】
前述の実施形態では、磁界発生源が複数の磁石を有する例を示したが、たとえば、一つの磁石の一方の磁極面に接する板状のヨークを設け、そのヨークの磁石とは反対側の面に複数の凸部を間隔を空けて設けることにより、それらの複数の凸部を複数の磁極として用いてもよい。すなわち、磁石の数よりも磁極数を多くすることができる。
【0124】
図6A図8A図8Cなどに示したL形の軟磁性体部品(磁束伝導片FL1,FL2)は、軸直交部41と軸平行部42とを別部品で構成することもできる。この場合、軸直交部41と軸平行部42とを互いに突き当てて組み合わせることにより、L形にできるほか、T形の軟磁性体部品としてもよい。図11Aおよび図11Bには、例として、T形(図11Aは倒立T字形、図11Bは横向きT字形)の軟磁性体部品を構成して磁束伝動片FL1,FL2とした発電センサ10D,10Eを示す。また、軸直交部41および軸平行部42を有する一体型の軟磁性体部品をT形に構成してもよい。
【0125】
図7の位置検出装置110では、磁界発生源20が5個の磁石M1~M5を備え、同極の5個の磁極が発電センサ10Bに対向可能な例を示したが、磁極の数はこれに限られない。また、図8A図8Cの位置検出装置120および図10A図10Cの位置検出装置130においては、磁界発生源20の2個の磁極P1,P2が発電センサ10C,10Bに対向可能な例を示したが、3個以上の同極性の磁極を回転軸線33まわりの周方向に等間隔で配置してもよい。この場合のセンサ要素HS(磁気センサ)の配置は、一つの磁極が一対の磁束伝導片FL1,FL2の間の軌道上で発電センサ10C,10Bに対向するときに、他の一つの磁極からの磁界を検出できるように設計すればよい。複数の磁極の軌道上での間隔は、磁性ワイヤFEの軸長よりも長く、好ましくは当該軸長の1.5倍以上とすることが好ましい。
【0126】
前述の実施形態では、一つの発電センサ10(10A,10B,10C)を備える位置検出装置を示したが、2つ以上の発電センサを用いてもよい。ただし、一つの発電センサ10を備える構成とすることにより、位置検出装置を小型化でき、コストも低減できるので好ましい。すなわち、典型的には、一つの発電センサを用いる構成とすることで、最も小型化された高分解能の位置検出装置を実現できる。
【0127】
前述の実施形態では、一つのセンサ要素HSを備える位置検出装置を示したが、2つ以上のセンサ要素を備えてもよい。ただし、一つのセンサ要素HSを備える構成とすることにより、位置検出装置の小型化および低コスト化を図ることができるので、好ましい。
【0128】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0129】
10,10A,10B,10C,10D,10E :発電センサ
11,11B,11C :磁束伝導端
12,12B,12C :磁束伝導端
13A :貫通孔
13B,13C :ワイヤ配置部
15 :軸中心位置
20 :磁界発生源
21 :円周軌道
22 :直線軌道
31 :第1の支持体
32 :第2の支持体
33 :回転軸線
41 :軸直交部
42 :軸平行部
42a :近接端
50 :運動方向
51 :第1方向
52 :第2方向
100,110,120,130 :位置検出装置
FE :磁性ワイヤ
SP :コイル
SR :検出領域
FL1 :第1磁束伝導片(軟磁性体部品)
FL2 :第2磁束伝導片(軟磁性体部品)
x :軸方向
x1 :第1軸方向
x2 :第2軸方向
HS :センサ要素
D :距離
L :距離
M,M1~M5 :磁石
P1,P2 :磁極
R1 :正転方向
R2 :逆転方向
図1A-1B】
図1C-1D】
図1E
図2A-2B】
図2C-2D】
図3A-3B】
図3C-3D】
図3E-3F】
図4A-4B】
図5A-5B】
図6A-6B】
図7
図8A
図8B
図8C
図9A-9C】
図9D-9F】
図10A
図10B
図10C
図11A-11B】