(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂及び樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08G 63/672 20060101AFI20240709BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C08G63/672
C08G63/91
(21)【出願番号】P 2022024512
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2021042070
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 真一
(72)【発明者】
【氏名】田畠 雄太
(72)【発明者】
【氏名】三好 陽太
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂であって、
前記ポリエステル樹脂は下記一般式(1)~(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエステル構造の二重結合又はビニルエーテル構造の二重結合を有するポリエステル樹脂であって、
アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を(x)の合計モル数を基準として90~100モル%含み、
カルボン酸成分(y)が芳香族ジカルボン酸を(y)の合計モル数を基準として80~100モル%含み、
1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量が0.03~0.08重量%であるポリエステル樹脂。
【化1】
[一般式(1)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれメチル基であり、a及びbはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、aとbの和の値は、1以上16以下である。]
【化2】
[一般式(2)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれメチル基であり、c及びdはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、cとdの和の値は、1以上16以下である。]
【化3】
[一般式(3)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれメチル基であり、e及びfはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、eとfの和の値は、1以上16以下である。]
【請求項2】
酸価が5~40mgKOH/gである請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
テトラヒドロフラン不溶解分が0.1~5.0重量%である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載のポリエステル樹脂を含む樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂及び樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は大部分が炭素-炭素結合で形成されているため疎水性であり、水には殆ど溶解しない。従って、ポリエステル樹脂の水分散体を調整する方法としては、一般的には1)強制乳化法と2)自己乳化法が知られている。
1)強制乳化法とは、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解するか、もしくは溶融して液状化し、これを乳化剤や分散剤などの界面活性剤を使用して強制的に水中に分散させる方法である。この方法では、多量に低分子量の親水性化合物(界面活性剤)を使用するため、耐水性・保存安定性・電気特性などが著しく劣るという課題がある。
2)自己乳化法とは、分子中に極性基(カルボン酸基、スルホン酸基など)を有するポリエステル樹脂を、有機溶剤と水からなる混合溶液に溶解した後、さらに水を添加することにより、転相、自己乳化させる方法(例えば、特許文献1)である。界面活性剤を使用しないことで1)の課題をクリアできるが、逆に樹脂の物性制御が乳化性に大きく影響するので、樹脂の安定化が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、乳化安定性、保存安定性及び帯電性に優れた樹脂粒子が得られるポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂であって、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を(x)の合計モル数を基準として90~100モル%含み、カルボン酸成分(y)が芳香族ジカルボン酸を(y)の合計モル数を基準として80~100モル%含み、1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量が0.03~0.08重量%であるポリエステル樹脂;前記ポリエステル樹脂を含む樹脂粒子である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、乳化安定性、保存安定性及び帯電性に優れた樹脂粒子が得られるポリエステル樹脂を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施例3で得られたポリエステル樹脂(L-3)の
1H-NMRのチャートであり、標準物質を100としたときの二重結合由来(マルチプレット)のピーク面積(5.8~6.1ppm)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳述する。
[ポリエステル樹脂]
本発明のポリエステル樹脂は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)を重縮合して得られるポリエステル樹脂であって、アルコール成分(x)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を(x)の合計モル数を基準として90~100モル%含み、カルボン酸成分(y)が芳香族ジカルボン酸を(y)の合計モル数を基準として80~100モル%含む。前記アルコール成分(x)及びカルボン酸成分(y)は1種単独でもよく2種以上を併用してもよい。
【0009】
本発明のポリエステル樹脂のアルコール成分(x)は、必須構成成分であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の他、後述するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のジオール及び/又は3価以上の価数のポリオールが挙げられる。また、アルコール成分(x)には、必要によりモノアルコールを使用してもよい。
【0010】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノールAにアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる化合物であり、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記する)付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記する)付加物、及びビスフェノールAのブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記する)付加物等が挙げられる。
【0011】
上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のうち、帯電性と保存安定性の観点からビスフェノールAのEO付加物及びビスフェノールAのPO付加物が好ましい。
【0012】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドの付加モル数は、帯電性及び保存安定性の観点から、好ましくは2~30であり、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは2~5である。
【0013】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のジオールとしては、炭素数2~12のアルキレングリコール(例えばエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール)、炭素数4~36のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、炭素数4~36の脂環式ジオール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等)、上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド〔EO、PO、BO等〕付加物(好ましくは付加モル数1~30)、ビスフェノール類(ビスフェノールF、ビスフェノールS等)のアルキレンオキサイド(EO、PO、BO等)付加物(好ましくは付加モル数2~30)、ポリラクトンジオール(ポリε-カプロラクトンジオール等)及びポリブタジエンジオール等が挙げられる。
【0014】
3価以上の価数のポリオールとしては、アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン及びポリグリセリン等)、糖類及びその誘導体(例えばショ糖及びメチルグルコシド等)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)及びアクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物等]等が挙げられる。
【0015】
モノアルコールとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0016】
アルコール成分(x)として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の成分を含む場合は、乳化安定性の観点から、ジオールが好ましく、炭素数2~12のアルキレングリコールがより好ましい。
【0017】
ポリエステル樹脂のカルボン酸成分(y)としては、必須構成成分である芳香族ジカルボン酸の他、後述するジカルボン酸及び/又は3価以上の価数のポリカルボン酸及びこれらの酸の無水物や低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等が挙げられる。また、カルボン酸成分(y)には、必要によりモノカルボン酸を使用してもよい。
【0018】
芳香族ジカルボン酸は、ベンゼン環やナフタレン環等の共役不飽和環構造に2つのカルボキシル基が結合したカルボン酸であれば特に限定されず、例えば、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等)等が挙げられる。
【0019】
上記芳香族ジカルボン酸のうち、帯電性と保存安定性の観点からテレフタル酸及びイソフタル酸が好ましい。
【0020】
上記の芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、炭素数2~50のアルカンジカルボン酸{鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、鎖状飽和炭化水素基の末端以外にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(デシルコハク酸等)}、炭素数4~50のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸及びシトラコン酸等)、炭素数6~40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)等〕、また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0021】
3価以上の価数のポリカルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)及び不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(Mn):450~10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0022】
モノカルボン酸としては、炭素数(カルボニル基の炭素を含める)7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等)等が挙げられる。
【0023】
カルボン酸成分(y)として、芳香族ジカルボン酸以外の成分を含む場合は、乳化安定性及び帯電性の観点から炭素数2~50のアルカンジカルボン酸、3価以上の価数のポリカルボン酸が好ましく、より好ましくは鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸、及び炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸であり、さらに好ましくは、アジピン酸、及び無水トリメリット酸である。
【0024】
アルコール成分(x)のうちビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有率は、保存安定性の観点からポリエステル樹脂の構成成分であるアルコール成分(x)の合計モル数を基準として90~100モル%であり、好ましくは95~100モル%であり、より好ましくは100モル%である。
【0025】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のうちビスフェノールAのPO付加物の含有率は、帯電性と保存安定性の観点から、好ましくは50~100モル%であり、より好ましくは80~100モル%であり、さらに好ましくは80~90モル%である。
【0026】
カルボン酸成分(y)のうち芳香族ジカルボン酸の含有率は、帯電性の観点からポリエステル樹脂の構成成分であるカルボン酸成分(y)の合計モル数を基準として80~100モル%であり、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは100モル%である。
【0027】
芳香族ジカルボン酸がイソフタル酸とテレフタル酸を含む場合は、帯電性と保存安定性の観点からイソフタル酸とテレフタル酸の重量比(イソフタル酸/テレフタル酸)が30/70~70/30であることが好ましく、より好ましくは50/50~70/30モル%である。
【0028】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基のモル比{[OH]/[COOH]}として、好ましくは1/2~2/1であり、より好ましくは1/1.3~1.5/1、さらに好ましくは1/1.2~1.4/1である。上記水酸基は、アルコール成分(x)由来の水酸基である。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂は下記一般式(1)~(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエステル構造の二重結合又はビニルエーテル構造の二重結合を有するポリエステル樹脂であることが好ましい。下記一般式(1)~(3)の構造の二重結合を有することによりポリエステル樹脂の乳化安定性が良好となる。
【0030】
【化1】
[一般式(1)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、a及びbはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、aとbの和の値は、1以上16以下である。]
【0031】
【化2】
[一般式(2)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、c及びdはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、cとdの和の値は、1以上16以下である。]
【0032】
【化3】
[一般式(3)中、Pはポリエステル樹脂の残基であり、Xはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、e及びfはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、eとfの和の値は、1以上16以下である。]
本発明のポリエステル樹脂が一般式(1)~(3)の構造の二重結合を有するか否かはポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解させて
1H-NMRを測定したときの前記二重結合に由来する5.8~6.1ppmのピークの有無により判断することができる。
例えば、ポリエステル樹脂の構成成分であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のうちビスフェノールAのPO付加物の含有率を50~100モル%とすることや、イソフタル酸とテレフタル酸の重量比を30/70~70/30とすることで一般式(1)~(3)の構造の二重結合が得られ易くなる。
【0033】
本発明においてポリエステル樹脂は、公知のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とを含む成分を、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、さらに好ましくは170~235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点と乳化安定性の観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間である。反応速度を向上させるために減圧工程を有することが好ましく、減圧度は好ましくは0.5~20kPaであり、より好ましくは0.2~15kPaであり、さらに好ましくは0.1~10kPaである。また減圧工程における反応温度は200~210℃であることが好ましく、反応時間は7~15時間であることが好ましい。さらに、得られるポリエステル樹脂の乳化安定性の観点から、圧力が80~120kPaの工程時間は、8時間以下であることが好ましい。
【0034】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することもできる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}、及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)並びに酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
【0035】
本発明のポリエステル樹脂は1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量が0.03~0.08重量%であり、好ましくは0.04~0.07重量%である。0.03重量%以上であると帯電性が良好となり、0.08重量%以下であるとポリエステル樹脂の乳化安定性が良好となる。
1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量とは、ポリエステル樹脂と既知量の標準物質を重クロロホルムに溶解させて1H-NMRを測定したとき、内部標準法により、標準物質を基準に5.8~6.1ppmの範囲内にあるピークの重量を算出し、二重結合量を樹脂中の重量%に換算した値のことである。内部標準として用いる標準物質は重クロロホルムに溶解し、かつ測定対象物質であるポリエステル樹脂由来のピークとNMR信号(=ピーク)が重ならないものを選べば特に限定されない。1H-NMRで重クロロホルムでの内部標準物質としては、例えば、2,2-ビス(トリメチルシリル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルトリシラン(δ=0.0)、1,4-ビス(トリメチルシリル)ベンゼン‐d4(δ=0.0)、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(δ=1.3、3.0、4.3、6.7、7.8)、テトラメチル‐1,4-ベンゾキノン(δ=2.0)、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン(δ=2.3、7.0)、ジメチルスルホン(δ=3.2)、安息香酸ベンジル(δ=5.4)、テレフタル酸ジメチル(δ=3.9、8.1)、1,2,4,5-テトラクロロ‐3‐ニトロベンゼン(δ=7.8-8.4)、トリフェニルメタン(δ=5.5)、1,3,5-トリメトキシベンゼン(δ=3.1、6.1)、3,5-ジニトロ安息香酸メチル(δ=9.2)が挙げられる。また、添加する標準物質の量は、観測される二重結合量と積分値が近くなるようにすることで測定精度は良好となる。
5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量は樹脂の極性に影響するため、ポリエステル樹脂中に特定量含まれることにより、高度に樹脂極性を制御することができ、乳化安定性が良好となる。また、1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量は、乳化安定性の観点から、5.8~6.1ppmにマルチプレットのピークを有する二重結合量であることが好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂の構成成分であるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のうちビスフェノールAのPO付加物の含有率を50~100モル%とすることや、イソフタル酸とテレフタル酸の重量比を30/70~70/30とすることで上記範囲の達成が容易となる。また、ビスフェノールAのPO付加物、芳香族ジカルボン酸であるイソフタル酸、脂肪族ジカルボン酸の使用量を増やすことにより、二重結合量を増加させることができる。また、二重結合量はポリエステル樹脂合成時の反応温度と反応時間で制御することができる。反応温度を上げれば、二重結合量は増加する。反応時間を長くしても二重結合量は増加する。
1H-NMRで5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合はポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解させて1H-NMRを測定したとき、5.8~6.1ppmの範囲内にあるピークを有している二重結合であればどのような構造でもよい。樹脂の乳化安定性の観点から、前記二重結合は一般式(1)~(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエステル構造の二重結合又はビニルエーテル構造の二重結合部分であることが好ましく、下記一般式(4)又は(5)のビニルエステル構造の二重結合部分又は一般式(6)又は(7)のビニルエーテル構造の二重結合部分であることがより好ましい。
【0036】
【0037】
【0038】
一般式(4)及び(5)においてXはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、a及びbはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、aとbの和の値は1以上16以下であり、cは1~100である。
【0039】
【0040】
【0041】
一般式(6)及び(7)においてXはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、d及びeはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、dとeの和の値は1以上16以下であり、fは1~100である。
【0042】
本発明において、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、保存安定性の観点から好ましくは45~80℃であり、より好ましくは50~70℃である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0043】
本発明において、ポリエステル樹脂の酸価は、5~40mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは7~30mgKOH/gであり、さらに好ましくは8~15mgKOH/gである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
【0044】
本発明において、ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、乳化安定性の観点から、好ましくは4,000~100,000であり、より好ましくは7,000~100,000であり、特に好ましくは30,000~70,000である。また、帯電安定性の観点から、好ましくは4,000~100,000であり、より好ましくは7,000~70,000であり、特に好ましくは7,000~20,000である。
【0045】
本発明において、ポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン不溶解分の含有量(重量%)は、乳化安定性の観点から、0.1~5.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~5.0重量%であり、特に好ましくは2.0~4.5重量%である。また、帯電安定性の観点から、0.1~5.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~3.0重量%であり、特に好ましくは0.3~1.0重量%である。
【0046】
[樹脂粒子]
本発明の樹脂粒子は、本発明のポリエステル樹脂を必須成分として含む。ポリエステル樹脂は1種単独でも2種以上を併用してもよく、乳化安定性、帯電性及び保存安定性の両立の観点から2種以上を併用することが好ましい。また必要により公知の本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの種々の添加剤等を混合することができる。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂としては、本発明のポリエステル樹脂を除くポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。分散安定性の観点から、好ましくは本発明のポリエステル樹脂を除くポリエステル樹脂であり、より好ましくは本発明のポリエステル樹脂を除く結晶性ポリエステル樹脂(C)である。
【0048】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂(C)は、結晶性を示し、吸熱ピークトップを示す温度Tp(℃)の範囲が40~100℃であるものを意味する。
なお、本発明における「結晶性」とは後述の示差走査熱量計(DSC)測定の第2回目の昇温過程において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
本発明において、吸熱ピークトップを示す温度TpをDSCにより測定する際は、例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20を用いることができる。また、昇温・冷却条件としては、10℃/分の条件で180℃まで昇温する(第1回目の昇温過程)。次いで、180℃で10分間放置後、10℃/分の条件で0℃まで冷却する(第1回目の冷却過程)。次いで、0℃で10分間放置した後、10℃/分の条件で180℃まで昇温する(第2回目の昇温過程)。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂(C)としては、本発明のポリエステル樹脂で例示したアルコール成分(x)及びカルボン酸成分(y)と同様のものを用いることができ、アルコール成分(x)として好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコールであり、より好ましくはエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールである。また、カルボン酸成分(y)として好ましいものは炭素数2~50のアルカンジカルボン酸であり、より好ましくは鎖状飽和炭化水素基の両末端にカルボキシル基を有するアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸)である。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂の含有量は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは30~97重量%、より好ましくは70~90重量%である。また、結晶性ポリエステル樹脂(C)の含有量は、樹脂粒子の重量に基づき、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~15重量%である。
【0051】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト及びフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~15重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、磁性粉の含有量は、ポリエステル樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは30~120重量部である。
【0052】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ろう、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、及び合成エステルワックス(炭素数10~30の脂肪酸と炭素数10~30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられ、これらの離型剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。離型剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0053】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニ
ウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、本発明のポリエステル樹脂の合計100重量部に対して、0~20重量%であってよく、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%である。
【0054】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、特に制限はなく、公知の、特開昭62-106473号公報や特開昭63-186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法、単分散を特徴とする分散重合法、非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後水中で樹脂粒子化する溶解懸濁法、特開2002-284881号公報に開示されているエステル伸長重合法などが挙げられる。
上記の製造方法のうち、樹脂粒子の粒径制御、保存安定性の観点から少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る乳化凝集法が好ましい。
【0055】
本発明の樹脂粒子の製造方法のうち好ましい製造方法である乳化凝集法は、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂微粒子を得る工程及び樹脂微粒子を凝集させる工程(凝集工程とも記載する)を含む。
【0056】
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂微粒子を得る方法は特に限定されないが、以下の〔1〕~〔2〕が挙げられる。
【0057】
〔1〕ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、ポリエステル樹脂を水性溶媒中に分散させた後、有機溶剤を除去して樹脂微粒子の分散液を製造する方法。
【0058】
〔2〕ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合し、次いでポリエステル樹脂中のカルボキシル基を中和剤により塩とし、ポリエステル樹脂を水性溶媒中に分散させた後、有機溶剤を除去して樹脂微粒子の分散液を製造する方法。
【0059】
上記〔1〕~〔2〕の方法のうち、樹脂微粒子の製造しやすさの観点から、好ましくは〔2〕の方法である。
【0060】
また、複数のポリエステル樹脂を含む場合は、ポリエステル樹脂を別々に分散させてもよく、あらかじめ混合してから分散させてもよいが、粒度分布の観点から、ポリエステル樹脂を別々に分散させることが好ましい。
また、添加剤を用いる場合、ポリエステル樹脂を含有する樹脂微粒子の分散液と添加剤分散液(着色剤分散液及び離型剤分散液等)とを混合して用いてもよい。
【0061】
本発明の樹脂粒子の製造方法においてポリエステル樹脂の有機溶剤溶液の、有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤、ハロゲン溶剤、エステル、エステルエーテル溶剤、エーテル溶剤、ケトン溶剤、アルコール溶剤、アミド溶剤、スルホキシド溶剤、複素環式化合物溶剤及びこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
有機溶剤の具体例としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等のハロゲン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のエステル又はエステルエーテル溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール及びベンジルアルコール等のアルコール溶剤;ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、N-メチルピロリドン等の複素環式化合物溶剤、並びにこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。上記の有機溶剤の中でも沸点が100℃未満の揮発性のものが好ましい。好ましい有機溶剤としては、酢酸エチル、アセトン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
【0062】
ポリエステル樹脂100重量部に対する有機溶剤の使用量は、好ましくは25~300重量部、より好ましくは25~100重量部、さらに好ましくは25~70重量部である。
【0063】
本発明の樹脂粒子の製造方法においてポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性溶媒と混合する工程の水性溶媒としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、後述する、水、有機溶剤の水溶液、界面活性剤(s)の水溶液、水溶性ポリマー(t)の水溶液及びこれらの2以上の混合物等が用いることができる。
【0064】
水性溶媒へのポリエステル樹脂の分散性を良好にする観点から、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和するために中和剤を使用してもよい。中和剤としては、アンモニア、トリエチルアミン等の有機化合物、水酸化ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0065】
中和剤の使用量は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基に対して、分散性の観点から、好ましくは1~150モル%、より好ましくは5~100モル%である。
【0066】
樹脂を水性溶媒に分散させる際、必要に応じて乳化剤又は分散剤として、公知の界面活性剤(s)及び無機分散剤を用いることができる。
【0067】
界面活性剤(s)としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤(s-1)、カチオン界面活性剤(s-2)、両性界面活性剤(s-3)及び非イオン界面活性剤(s-4)等が挙げられる。界面活性剤(s)は2種以上の界面活性剤を併用したものであってもよい。
【0068】
アニオン界面活性剤(s-1)としては、カルボン酸又はその塩、硫酸エステル塩、カルボキシメチル化物の塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(s-2)としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤及びアミン塩型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤(s-3)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤(s-4)としては、AO付加型非イオン界面活性剤及び多価アルコ-ル型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤(s)の具体例としては、特開2002-284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0069】
無機分散剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等のリン酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
【0070】
樹脂を水性溶媒に分散させる際、乳化剤又は分散剤として、公知の水溶性ポリマー(t)を用いることができる。水溶性ポリマー(t)を用いた方が樹脂微粒子の体積平均粒径が小さくなり、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)小さくなり易い点で好ましい。
【0071】
水溶性ポリマー(t)としては、セルロース化合物(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びそれらのケン化物等)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0072】
本発明のポリエステル樹脂の有機溶剤溶液を水性媒体と混合する際の、分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体中の微粒子の粒径を小さくするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、一般的に1000~30000rpm、好ましくは5000~20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、一般的に0.1~5分である。温度は5~200℃が好ましく、より好ましくは20~100℃である。
分散装置は、例えばホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー[特殊機化工業(株)製]等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー[(株)荏原製作所製]、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー[特殊機化工業(株)製]、コロイドミル[神鋼パンテック(株)製]、ウルトラビスコミル(アイメックス(株)製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機[日本コークス工業(株)製]、キャピトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル[太平洋機工(株)製]等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー[みずほ工業(株)製]、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、APVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機[冷化工業(株)製]等の膜乳化機、バイブロミキサー[冷化工業(株)製]等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。これらのうち粒径の均一性の観点から好ましいのは、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス及びTKパイプラインホモミキサーである。
【0073】
ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液100重量部に対する水性媒体の使用量は、好ましくは100~500重量部、より好ましくは150~400重量部、さらに好ましくは150~300重量部である。
【0074】
本発明の樹脂粒子のおける分散液中の樹脂粒子等の固形分濃度及び揮発分は、以下の方法で求めたものである。
樹脂粒子等の沈澱が起こらないよう注意しながら、乾燥前の試料約2.00gをはかりとり、120℃で1時間の条件で乾燥する。乾燥後の試料を取り出し重量を小数点第2位まで測定し、(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100から固形分濃度(重量%)を算出し、{(乾燥前の試料の重量-乾燥後の試料の重量)/乾燥前の試料の重量}×100から揮発分(重量%)を算出する。
【0075】
前記の樹脂微粒子を得る工程で得られた樹脂微粒子を凝集させる方法は特に限定されず、攪拌装置を備えた槽内に入れた〔1〕~〔2〕の方法等で得られた樹脂微粒子の分散液を加熱する方法、加熱せずに凝集剤を加える方法、及び加熱と凝集剤の添加を組み合わせる方法等が挙げられる。
樹脂微粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか、凝集剤を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
【0076】
凝集剤としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸及びシュウ酸等)、無機酸の金属塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅及び炭酸ナトリウム等)、脂肪酸の金属塩(酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム及びシュウ酸ナトリウム等)、芳香族脂肪酸の金属塩(安息香酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム及びサリチル酸カリウム等)、フェノール類の金属塩(ナトリウムフェノレート等)、アミン塩(アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩及びアニリン塩酸塩等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、無機酸の金属塩及び脂肪酸の金属塩であり、より好ましいのは無機酸の金属塩である。
【0077】
樹脂微粒子を凝集させる際の槽内に入れた分散液の温度は、樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、好ましくは5~100℃、より好ましくは20~100℃である。
また、凝集体を形成させる工程において、分散液のpHは樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、好ましくは2~10、より好ましくは3~6である。
【0078】
凝集剤の添加量は、樹脂粒子の体積平均粒径及び粒度分布制御の観点から、樹脂微粒子100重量部に対して好ましくは1~20重量部であり、より好ましくは1~15重量部である。
【0079】
凝集剤を用いないで加熱のみによって凝集を行う場合の凝集温度は、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~100℃である。
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、樹脂粒子の粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で、少なくとも30分以上保持することが望ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温しても良いし、段階的に昇温することもできる。
【0080】
凝集工程で得られた凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程行うことが好ましい。
熟成工程とは加熱処理等により、凝集体における樹脂微粒子同士を融着一体化する工程のことであり、形状は球形に近いものとなる。熟成工程前の凝集体は、樹脂微粒子の静電的あるいは物理的凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、凝集体を構成する樹脂微粒子は互いに融着しており、樹脂粒子の形状を球状に近いものとすることが可能となる。この様な熟成工程によれば、熟成工程の温度及び時間等を制御することにより、樹脂微粒子が凝集した形状である葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状の樹脂粒子を製造することができる。
【0081】
凝集体を融着させる際の温度は、得られる樹脂粒子の形状制御性の観点から、5~200℃が好ましく、さらに好ましくは30~100℃である。凝集体を融着させる際の液のpHは、好ましくは3~10、より好ましくは5~10である。また、熟成工程に要する時間は、目的とする樹脂粒子の形状により異なるが、前記した所定の温度で、0.1~10時間、好ましくは1~6時間保持することが望ましい。
【0082】
なお、凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pH値を上げることが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、公知の界面活性剤(s)を用いることができるが、特に樹脂微粒子を製造した際に用いた界面活性剤(s)と同じものを用いることが好ましい。凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pH値を上げることにより、凝集工程で凝集した凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0083】
本発明の樹脂粒子の製造方法は、さらに、樹脂微粒子を凝集させる工程により得られた凝集体の分散体から水性溶媒を除去する工程を有していることが低温定着性の点から好ましい。
【0084】
分散体から水性溶媒を除去する方法としては、以下の〔3〕~〔5〕及びこれらの2以上の組合せの方法等が適用できる。
〔3〕分散体を減圧下又は常圧下で乾燥する方法。
〔4〕分散体を遠心分離器、スパクラフィルター及び/又はフィルタープレスなどにより固液分離し、必要に応じて水等を加え固液分離を繰り返した後、得られた固体を乾燥する方法。
〔5〕分散体を凍結させて乾燥させる方法(いわゆる凍結乾燥)。
【0085】
上記〔3〕及び〔4〕の方法において、乾燥機として、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機等公知の設備を用いて乾燥を行うことができる。また、必要に応じ、風力分級器又はふるい等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
【0086】
樹脂粒子100重量部に対する残存する水性溶媒量は低温定着性の観点から、好ましくは0~2重量部、より好ましくは0~1重量部、さらに好ましくは0~0.1重量部、特に好ましくは0~0.01重量部である。
【0087】
本発明の樹脂粒子は、公知の流動化剤(シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等)を添加することでトナーとして使用することができ、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料として使用される。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【0088】
本発明の製造方法により得られる樹脂粒子は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に好ましく用いることができる。更に好ましくは、フルカラー用の静電荷像又は磁気潜像の現像に用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0090】
ポリエステル樹脂の各物性値については次の方法により測定した。
【0091】
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
示差走査熱量計(TA Instruments(株)製、DSC Q20)を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で、以下の条件により測定した。
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析しガラス転移温度を求めた。
【0092】
<酸価の測定方法>
JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)、水酸基価の測定溶媒はTHFとした。
【0093】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
【0094】
<テトラヒドロフラン不溶解分の測定方法>
試料0.5gに50mLのテトラヒドロフランを加え、3時間撹拌還流した。冷却後、グラスフィルターにて不溶解分をろ別し、グラスフィルター上の樹脂分を80℃で3時間減圧乾燥した。グラスフィルター上の乾燥した樹脂分の重量をテトラヒドロフラン不溶解分として重量%を算出した。
【0095】
<吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法>
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定した。ポリエステル樹脂を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度をポリエステル樹脂の吸熱ピークのピークトップ温度とした。
【0096】
<二重結合量の測定方法>
ポリエステル樹脂に含有される二重結合量は、1H-NMRにより求めた二重結合由来のピーク面積(S)を用いて、内部標準法により以下の手順で算出した。
(1H-NMRの測定条件)
装置:AVANCE III HD400N型(BRUKER製)
試料:ポリエステル樹脂30mg
標準物質:テトラメチル‐1,4-ベンゾキノン(δ= 2.0)3.0mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
測定核周波数:400MHz
積算回数:4
まず、δ=2.0~2.1付近の標準物質であるテトラメチル‐1,4-ベンゾキノンのメチル基由来のプロトンのピーク面積を100としたときのδ=5.8~6.1の熱分解由来のピーク面積(S)を求めた。
次に、例えば実施例3で得られたポリエステル樹脂(L-3)の場合では、δ=2.0~2.1付近の標準物質のメチル基のピークは12H、δ=5.8~6.1の熱分解由来の二重結合のピークは2Hであるため、標準物質の秤量した重量を用いて、式(1)から算出される標準物質のモル数を求めた。
さらに秤量した樹脂中の二重結合と標準物質のモル数の関係から導かれる式(2)から二重結合のモル数を求めた。
最後に二重結合(CH=CH)のモル質量26(g/モル)を用いて、樹脂中の二重結合量を以下の式(3)から算出した。
標準物質のモル数(モル)=秤量した標準物質の重量(g)/標準物質のモル質量(g/モル)・・・・(1)
二重結合のモル数(モル)=(12/100)×(S/2)×標準物質のモル数・・・(2)
二重結合量(重量%)=二重結合のモル数×26÷秤量したポリエステル樹脂の重量(g)×100・・・(3)
【0097】
<製造例1>[チタン含有触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、TC-310(オルガチック製)634.0部(33.3モル%)、トリエタノールアミン366.0部(66.6モル%)を入れ、80℃で約1時間反応させて、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)を得た。
【0098】
<製造例2>[結晶性ポリエステル樹脂(C)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、1,6-ヘキサンジオール392.1部(51.1モル%)、ドデカン二酸731.2部(48.9モル%)、チタン化合物としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で10時間反応させ、酸価が8になった時点で取り出し、結晶性ポリエステル樹脂(C)を得た。なお、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)は、上記製造例1のチタン含有触媒を用いた。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の酸価は8mgKOH/g、吸熱ピークトップの温度は72℃、重量平均分子量(Mw)は20,000だった。
【0099】
<実施例1>[ポリエステル樹脂(L-1)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)103.3部(7.5モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)539.6部(35.0モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBPE-20」)97.1部(7.5モル%)、テレフタル酸131.6部(20.0モル%)、イソフタル酸197.3部(30.0モル%)、チタン化合物としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で12時間反応させ、酸価が11mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(L-1)を得た。
ポリエステル樹脂(L-1)の酸価は11mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量(Mw)は13,000、テトラヒドロフラン不溶解分は0.9重量%、5.8~6.1ppmにマルチプレットのピークを有する二重結合量は0.05重量%だった。
【0100】
<実施例2>[ポリエステル樹脂(L-2)の製造]
表1の実施例2に記載の原料を用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-2)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0101】
<実施例3>[ポリエステル樹脂(L-3)の製造]
表1の実施例3に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、11時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-3)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0102】
<実施例4>[ポリエステル樹脂(L-4)の製造]
表1の実施例4に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、10時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-4)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0103】
<実施例5>[ポリエステル樹脂(L-5)の製造]
表1の実施例5に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、13時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-5)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0104】
<実施例6>[ポリエステル樹脂(L-6)の製造]
表1の実施例6に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、11時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-6)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0105】
<実施例7>[ポリエステル樹脂(L-7)の製造]
表1の実施例7に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、13時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-7)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0106】
<実施例8>[ポリエステル樹脂(L-8)の製造]
表1の実施例8に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を205℃、10時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-8)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0107】
<実施例9>[ポリエステル樹脂(L-9)の製造]
表1の実施例9に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、10時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-9)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0108】
<実施例10>[ポリエステル樹脂(L-10)の製造]
表1の実施例10に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、9時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-10)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0109】
<実施例11>[ポリエステル樹脂(L-11)の製造]
表1の実施例11に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を205℃、11時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-11)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0110】
<実施例12>[ポリエステル樹脂(L-12)の製造]
表1の実施例12に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、8時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-12)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0111】
<実施例13>[ポリエステル樹脂(L-13)の製造]
表1の実施例13に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、15時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-13)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0112】
<実施例14>[ポリエステル樹脂(L-14)の製造]
表1の実施例14に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、7時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-14)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0113】
<実施例15>[ポリエステル樹脂(L-15)の製造]
表1の実施例15に記載の原料を用いたことと、減圧エステル化反応の条件を200℃、7時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(L-15)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0114】
<実施例16>[ポリエステル樹脂(H-1)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)757.6部(51.8モル%)、テレフタル酸270.4部(43.4モル%)、無水トリメリット酸34.7部(4.8モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で10時間反応させ、酸価が12mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(H-1)を得た。
ポリエステル樹脂(H-1)の酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は61℃、重量平均分子量(Mw)は50,000、テトラヒドロフラン不溶解分は2.2%、5.8~6.1ppmにマルチプレットのピークを有する二重結合量は0.06重量%だった。
【0115】
<実施例17>[ポリエステル樹脂(H-2)の製造]
表2の実施例17に記載の原料を用いた以外は実施例16と同様にしてポリエステル樹脂(H-2)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表2に記載した。
【0116】
<実施例18>[ポリエステル樹脂(H-3)の製造]
表2の実施例18に記載の原料を用いた以外は実施例16と同様にしてポリエステル樹脂(H-3)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表2に記載した。
【0117】
<実施例19>[ポリエステル樹脂(H-4)の製造]
表2の実施例19に記載の原料を用いた以外は実施例16と同様にしてポリエステル樹脂(H-4)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表2に記載した。
【0118】
<比較例1>[ポリエステル樹脂(LR-1)の製造]
表1の比較例1に記載の原料を用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(LR-1)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0119】
<比較例2>[ポリエステル樹脂(LR-2)の製造]
表1の比較例2に記載の原料を用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(LR-2)を得た。得られたポリエステル樹脂の酸価、Tg、Mw、テトラヒドロフラン不溶解分、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量を表1に記載した。
【0120】
<比較例3>[ポリエステル樹脂(LR-3)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)179.0部(12.5モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)280.5部(17.4モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBPE-20」)269.1部(19.9モル%)、イソフタル酸343.4部(50.1モル%)、チタン化合物としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に210℃まで昇温し、210℃で7時間反応させ、酸価が11mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(LR-3)を得た。
ポリエステル樹脂(LR-3)の酸価は11mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は62℃、重量平均分子量(Mw)は12,500、テトラヒドロフラン不溶解分は0.8重量%、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量は0.10重量%だった。
【0121】
<比較例4>[ポリエステル樹脂(LR-4)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)727.0部(50.0モル%)、テレフタル酸345.7部(50.0モル%)、チタン化合物としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に220℃まで昇温し、220℃で5時間反応させ、酸価が13mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(LR-4)を得た。
ポリエステル樹脂(LR-4)の酸価は13mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は63℃、重量平均分子量(Mw)は10,000、テトラヒドロフラン不溶解分は0.7重量%、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量は0.20重量%だった。
【0122】
<比較例5>[ポリエステル樹脂(HR-1)の製造]
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)744.8部(52.2モル%)、テレフタル酸159.0部(23.4モル%)、イソフタル酸87.4部(12.9モル%)、アジピン酸39.8部(6.6モル%)、無水トリメリット酸38.3部(4.9モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、常圧、180℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。さらに、0.5~2.5kPaの減圧下に200℃まで昇温し、200℃で10時間反応させ、酸価が12mgKOH/gになった時点で取り出し、ポリエステル樹脂(HR-1)を得た。
ポリエステル樹脂(HR-1)の酸価は12mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)は59℃、重量平均分子量(Mw)は51,000、テトラヒドロフラン不溶解分は2.3%、5.8~6.1ppmにピークを有する二重結合量は0.06重量%だった。
【0123】
ポリエステル樹脂(L-1)~(L-15)、(LR-1)~(LR-4)の配合部数及び樹脂物性を表1に示す。
【0124】
【0125】
ポリエステル樹脂(H-1)~(H-4)、(HR-1)の配合部数及び樹脂物性を表2に示す。
【0126】
【0127】
<実施例20>[樹脂粒子(Z-1)]
[樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器にポリエステル樹脂(L-1)100部、メチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌、均一化を行いポリエステル樹脂(L-1)の有機溶剤溶液を得た。ポリエステル樹脂(L-1)の有機溶剤溶液を25℃に温調し、中和剤として10.0重量%アンモニア水を2.2部添加し、5分間撹拌した。その後、25℃のイオン交換水300部を1時間かけて滴下して転相乳化させ、40℃において30kPaの減圧下でメチルエチルケトンを留去することで樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を得た。樹脂微粒子(Cl-1)の体積基準のメジアン径は0.15μm、分散液(Clb-1)の固形分濃度は20重量%であった。
【0128】
[樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造]
樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(H-1)に置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Chb-1)を得た。
【0129】
[樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に結晶性ポリエステル樹脂(C)100部、メチルエチルケトン100部を仕込み、撹拌、均一化を行い結晶性ポリエステル樹脂(C)の有機溶剤溶液を得た。結晶性ポリエステル樹脂(C)の有機溶剤溶液を50℃に温調し、中和剤として10.0重量%アンモニア水を2.2部添加し、5分間撹拌した。その後、50℃のイオン交換水300部を1時間かけて滴下して転相乳化させ、40℃において30kPaの減圧下でメチルエチルケトンを留去することで樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)を得た。樹脂微粒子(Cc)の体積基準のメジアン径は0.15μm、分散液(Ccb)の固形分濃度は20重量%であった。
【0130】
[着色剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、カーボンブラック[三菱化学(株)製:MA100]10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、イオン交換水40部を投入し、回転数300rpmで撹拌下30℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、更にウルトラビスコミルで湿式粉砕し、黒色着色剤分散液を得た。得られた黒色着色剤分散液の体積基準メジアン径は0.05μm、固形分濃度は20重量%であった。
【0131】
[離型剤分散液の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管および温度計を備えた反応容器に、フィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製:FT-0070]10部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、イオン交換水15部を投入し、回転数300rpmで撹拌下95℃に昇温し、同温度で30分間撹拌後、1時間かけて30℃まで冷却してフィッシャー・トロプッシュワックスを微粒子状に晶析させ、さらにウルトラビスコミルで湿式粉砕し、離型剤分散液を得た。得られた離型剤分散液の体積基準のメジアン径は0.25μm、固形分濃度は50重量%であった。
【0132】
[樹脂粒子(Z-1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、冷却管、温度計および窒素導入管の付いた反応容器に樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)、樹脂微粒子(Cc)の分散液(Ccb)、着色剤分散液、及び離型剤分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、イオン交換水を300部仕込み、液温を30℃に調整した後、撹拌しながら濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整して分散液を得た。
次いで、樹脂微粒子(Cl-1)、樹脂微粒子(Ch-1)、樹脂微粒子(Cc)、着色剤、および離型剤の凝集を行うため、回転数300rpmで撹拌しながら凝集剤として濃度10重量%の塩化マグネシウム水溶液を加えていき、適宜にサンプリングを行い体積平均粒径5μmになったことを確認した後、系の温度を60℃に調整し、続いて0.3M硝酸水溶液を添加することにより、pHを4.5に調節し、30分後にpHを4.0に調整した。撹拌を3時間保持することにより融着及び球状化を行った。
その後、30℃まで冷却してポリエステル樹脂、離型剤及び着色剤を含有する樹脂粒子の水性分散液を得た。次いで、樹脂粒子を濾過と水による洗浄を3回繰り返したあと、濾別し、40℃の送風循環式乾燥機で18時間乾燥を行い、揮発分が0.5重量%以下である樹脂粒子(Z-1)を得た。
【0133】
<実施例21~22>[樹脂粒子(Z-2)~(Z-3)]
樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-2)~(H-3)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子の分散液(Chb-2)~(Chb-3)を得たのち、
実施例20において、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Ch-2)の分散液(Chb-2)、樹脂微粒子(Ch-3)の分散液(Chb-3)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子(Z-2)、(Z-3)を得た。
【0134】
<実施例23~31>[樹脂粒子(Z-4)~(Z-12)]
樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(L-2)~(L-10)にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子の分散液(Clb-2)~(Clb-10)を得たのち、
実施例20において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Cl-2)の分散液(Clb-2)~樹脂微粒子(Cl-10)の分散液(Clb-10)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、樹脂粒子(Z-4)~(Z-12)を得た。
【0135】
<実施例37>[樹脂粒子(Z-18)]
樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(L-15)に置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子の分散液(Clb-15)を得たのち、
実施例20において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Cl-15)の分散液(Clb-15)に置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子(Z-18)を得た。
【0136】
<実施例38>[樹脂粒子(Z-19)]
樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(H-4)に置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子の分散液(Chb-4)を得たのち、
実施例20において、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Ch-4)の分散液(Chb-4)に置き換えた以外は同様にして、樹脂粒子(Z-19)を得た。
【0137】
<比較例6~8>[樹脂粒子(Z’―1)~(Z’-3)]
樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造において、ポリエステル樹脂(L-1)をポリエステル樹脂(LR-1)~(LR-3)にそれぞれ置き換え、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)の製造においてポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(HR-1)に置き換えた以外は同様にして、樹脂微粒子の分散液(Clrb-1)~(Clrb-3)、(Chrb-1)を得たのち、
実施例20において、樹脂微粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)を樹脂微粒子(Clr-1)の分散液(Clrb-1)~樹脂微粒子(Clr-3)の分散液(Clrb-3)に、樹脂微粒子(Ch-1)の分散液(Chb-1)を樹脂微粒子(Chr-1)の分散液(Chrb-1)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、樹脂粒子(Z’―1)~(Z’-3)を得た。
【0138】
<実施例32>[樹脂粒子(Z-13)]
[顔料マスターバッチ[MB1]の製造]
水1200部、カーボンブラック(三菱化学(株)製:MA100)40部、実施例11で製造したポリエステル樹脂(L-11)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ[MB1]を得た。
【0139】
[微粒子分散液[PD1]の製造]
攪拌機、加熱冷却装置及び温度計をセットした反応容器に、水780部、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(三洋化成工業製、エレミノールJS-20)8部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。これを加熱して、系内温度85℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液9部を加えてから、スチレン30部、ブチルアクリレート40部、及びメタクリル酸30部からなるモノマー混合液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃で4時間熟成させることで微粒子分散液を得た。微粒子分散液に含まれる微粒子の体積平均粒径は0.031μmであった。また、微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂を単離した該樹脂分のMnは18700、Mwは154000、Tgは64℃、酸価は196mgKOH/gであった。
【0140】
[[水相s1]の製造]
攪拌棒をセットした容器に、水955部、微粒子分散液[PD1]15部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム水溶液(エレミノールMON7、三洋化成工業製)30部を投入し、乳白色の液体[水相s1]を得た。
【0141】
[[ワックス分散液]の製造]
冷却管、温度計及び撹拌機を備えた反応容器に、フィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製:FT-0070]15部及び酢酸エチル85部を投入し、80℃に加熱して溶解し、1時間かけて30℃まで冷却し、フィッシャー・トロプッシュワックスを微粒子状に晶析させ、更に「ウルトラビスコミル」(アイメックス製)で湿式粉砕し[ワックス分散液]を作製した。
【0142】
[樹脂粒子(Z-13)の製造]
ビーカー内にポリエステル樹脂(L-11)、ポリエステル樹脂(H-1)、結晶性ポリエステル樹脂(C)、顔料マスターバッチ[MB1]、ワックス分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、さらに50重量%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解・混合均一化し、油相を得た。この油相中に[水相s1]600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、25℃で、回転数12000rpm、1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、ポリエステル樹脂を含有する樹脂粒子の分散体を得た。
前記分散体100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級装置[エルボジェット〔マツボウ(株)製〕]で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して樹脂粒子(Z-13)を得た。
【0143】
<実施例33~35>[樹脂粒子(Z-14)~(Z-16)]
実施例32において、ポリエステル樹脂(L-11)をポリエステル樹脂(L-12)~(L-14)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、樹脂粒子(Z-14)~(Z-16)を得た。
【0144】
<実施例36>[樹脂粒子(Z-17)]
[顔料マスターバッチ[MB2]の製造]
水1200部、カーボンブラック(三菱化学(株)製:MA100)40部、実施例13で製造したポリエステル樹脂(L-13)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ[MB2]を得た。
[樹脂粒子(Z-17)の製造]
ビーカー内にポリエステル樹脂(L-13)、結晶性ポリエステル樹脂(C)、顔料マスターバッチ[MB2]、ワックス分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、さらに50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解・混合均一化し、油相を得た。この油相中に[水相s1]600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、25℃で、回転数12000rpm、1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、ポリエステル樹脂を含有する樹脂粒子の分散体を得た。
前記分散体100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級装置[エルボジェット〔マツボウ(株)製〕]で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して樹脂粒子[Z-17]を得た。
【0145】
<比較例9>[樹脂粒子(Z’-4)]
実施例32において、ポリエステル樹脂(L-11)をポリエステル樹脂(LR-4)に、ポリエステル樹脂(H-1)をポリエステル樹脂(HR-1)にそれぞれ置き換える以外は同様にして、樹脂粒子(Z’-4)を得た。
【0146】
<比較例10>[樹脂粒子(Z’-5)]
[顔料マスターバッチ[MB3]の製造]
水1200部、カーボンブラック(三菱化学(株)製:MA100)40部、比較例1で製造したポリエステル樹脂(LR-1)20部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を3本ロールを用いて90℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して顔料マスターバッチ[MB3]を得た。
[樹脂粒子(Z’-5)の製造]
ビーカー内にポリエステル樹脂(LR-1)、結晶性ポリエステル樹脂(C)、顔料マスターバッチ[MB3]、ワックス分散液を固形分が表3の部数となるように仕込み、さらに50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解・混合均一化し、油相を得た。この油相中に[水相s1]600部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)を使用し、25℃で、回転数12000rpm、1分間分散操作を行い、さらにフィルムエバポレータで減圧度-0.05MPa(ゲージ圧)、温度40℃、回転数100rpmの条件で30分間脱溶剤し、樹脂粒子の分散体を得た。
前記分散体100部を遠心分離し、更に水60部を加えて遠心分離して固液分離する工程を2回繰り返した後、35℃で1時間乾燥した後に、分級装置[エルボジェット〔マツボウ(株)製〕]で、3.17μm以下の微粉が12個数%以下、8.0μm以上の粗粉が3体積%以下となるように、微粉及び粗粉を除去して樹脂粒子[Z’-5]を得た。
【0147】
各実施例及び比較例で得られた樹脂粒子の配合部数及び評価結果を表3に示す。
【0148】
【0149】
[評価方法]
以下に、得られたポリエステル樹脂の乳化安定性、および樹脂粒子の帯電性、保存安定性の測定方法と評価方法を説明する。
【0150】
<乳化安定性>
乳化安定性は本発明のポリエステル樹脂を下記方法で分散液とした直後と室温で1週間静置後のメジアン径の変化率(%)で評価した。
具体的には、それぞれのポリエステル樹脂を樹脂粒子(Cl-1)の分散液(Clb-1)の製造の手順に従って、樹脂粒子の分散液とし、固形分濃度が10重量%となるようにイオン交換水で調整した後、動的光散乱式粒子分布測定装置「SZ-100」(株式会社堀場製作所製)を用いて分散液とした直後のメジアン径を測定した。その後、1週間室温で静置した後の分散液のメジアン径を再測定して以下の式で変化率を算出した。
変化率(%)=(|1週間後のメジアン径―分散液とした直後のメジアン径|/分散液とした直後の粒径)×100(%)
変化率が小さいほど、乳化安定性に優れていることを示す。
【0151】
樹脂粒子の帯電性と保存安定性の評価については、得られた樹脂粒子(Z-1)~(Z-19)、(Z’-1)~(Z’-5)と疎水性シリカとを以下の配合比率で均一混合しトナーとすることで評価した。
樹脂粒子(Z):疎水性シリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]
=99重量部:1重量部。
【0152】
<帯電性>(帯電量)
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)10gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて90rpm×2分間摩擦攪拌し、攪拌後の混合粉体0.2gを目開き20μmステンレス金網がセットされたブローオフ粉体帯電量測定装置に装填し、ブロー圧10kPa,吸引圧5kPaの条件で、残存フェライトキャリアの帯電量を測定し、定法によりトナーの帯電量(μC/g)を算出した。なお、トナー用としてはマイナス帯電量が高いほど帯電性が優れおり、-15μC/g以下であることが好ましい。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた
【0153】
<保存安定性>
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.013gをシェイカーで1時間混合し、混合物を密閉容器に入れ、温度45℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、パウダーテスターで凝集性を測定し、保存安定性を評価した。
下記方法により求められる凝集性試験の数値が低いほど、保存安定性に優れることを意味する。この評価条件では、3%以下であることが好ましい。
装置: POWDER TESTER model PT-X(ホソカワミクロン製)
篩の目開き: 355μm、250μm、150μm
振動幅: 1mm
振動時間: 30秒
操作方法: パウダーテスターの振動台に、篩を上段355μm、中段250μm、下段150μmの順でセットし、上段の篩にトナーを1g乗せ、1mmの振動幅で30秒間振動させて、各篩上に残存したトナーの重量を測定。
凝集性: 測定に使用したトナー重量と篩後の残存トナー重量から算出。
凝集性(%)=(U/N+M/N×3/5+L/N×1/5)×100
U:上段の重量、M:中段の重量、L:下段の重量、N:サンプルの重量(1g)
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のポリエステル樹脂を含む樹脂粒子は乳化安定性、保存安定性及び帯電性に優れ、電子写真、静電記録及び静電印刷等に用いるトナーとして好適に使用できる。さらに、塗料用添加剤、接着剤用添加剤及び電子ペーパー用粒子などの用途として有用である。