(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】超高圧電解溶離液生成器の新規構成
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20240709BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20240709BHJP
B01J 47/12 20170101ALI20240709BHJP
【FI】
G01N30/02 B
G01N30/26 E
B01J47/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211508
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ゾンキン ル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リウ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ ルベロ
(72)【発明者】
【氏名】ロン リン
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-526460(JP,A)
【文献】特開2021-096259(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109704444(CN,A)
【文献】特開2015-223566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
B01J 20/281-20/292
G06Q 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶離液生成カートリッジであって、
白金メッシュ電極と、
ポリマースクリーンと、
複数の
イオン交換膜と、
膜ワッシャと、
中央支柱及び環状突起を含むスペーサと、を備え
、
前記膜ワッシャは、前記膜ワッシャと隣接する前記イオン交換膜の積層体との間にギャップが形成されるように、圧縮中に前記環状突起と前記中央支柱との間の環状空間に変形可能である、溶離液生成カートリッジ。
【請求項2】
前記溶離液生成カートリッジは、少なくとも約5,000psiの圧力で動作するように構成されている、請求項1に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項3】
前記溶離液生成カートリッジは、少なくとも約10,000psiの圧力で動作するように構成されている、請求項2に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項4】
前記溶離液生成カートリッジは、約30,000psi以下の圧力で動作するように構成されている、請求項2に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項5】
前記溶離液生成カートリッジは、約15,000psi以下の圧力で動作するように構成されている、請求項4に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項6】
前記複数の
イオン交換膜は、少なくとも約5つのイオン交換膜を含む、請求項1に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項7】
前記複数の
イオン交換膜は、約100個以下のイオン交換膜を含む、請求項6に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項8】
前記膜ワッシャは、少なくとも1つのイオン交換膜を含む、請求項1に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項9】
前記膜ワッシャは、約20個以下のイオン交換膜を含む、請求項8に記載の溶離液生成カートリッジ。
【請求項10】
電解溶離液生成器であって、
電解液リザーバであって、
電解質水溶液を収容するチャンバ、及び
第1の電極を含む、電解液リザーバと、
少なくとも1つの溶離液生成カートリッジであって、
白金メッシュ電極、
ポリマースクリーン、
複数の
イオン交換膜、
膜ワッシャ、並びに
中央支柱及び環状突起を含むスペーサを含む、少なくとも1つの溶離液生成カートリッジと、を備え
、
前記膜ワッシャは、前記膜ワッシャと隣接する前記イオン交換膜の積層体との間にギャップが形成されるように、圧縮中に前記環状突起と前記中央支柱との間の環状空間に変形可能である、電解溶離液生成器。
【請求項11】
前記溶離液生成カートリッジは、少なくとも約5,000psiの圧力で動作するように構成されている、請求項10に記載の電解溶離液生成器。
【請求項12】
前記溶離液生成カートリッジは、少なくとも約10,000psiの圧力で動作するように構成されている、請求項11に記載の電解溶離液生成器。
【請求項13】
前記溶離液生成カートリッジは、約30,000psi以下の圧力で動作するように構成されている、請求項11に記載の電解溶離液生成器。
【請求項14】
前記溶離液生成カートリッジは、約15,000psi以下の圧力で動作するように構成されている、請求項13に記載の電解溶離液生成器。
【請求項15】
前記電解質水溶液は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを含む、請求項10に記載の電解溶離液生成器。
【請求項16】
前記電解質水溶液は、メタンスルホン酸を含む、請求項10に記載の電解溶離液生成器。
【請求項17】
前記複数の
イオン交換膜は、少なくとも約5つのイオン交換膜を含む、請求項10に記載の電解溶離液生成器。
【請求項18】
前記複数の
イオン交換膜は、約100個以下のイオン交換膜を含む、請求項17に記載の電解溶離液生成器。
【請求項19】
前記膜ワッシャは、少なくとも1つのイオン交換膜を含む、請求項10に記載の電解溶離液生成器。
【請求項20】
前記膜ワッシャは、約20個以下のイオン交換膜を含む、請求項19に記載の電解溶離液生成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、超高圧電解溶離液生成器(EEG)を含むイオンクロマトグラフィの分野に関する。
【0002】
序論
イオンクロマトグラフィ(IC)は十分に確立された分析手法であり、過去40年ほどにわたり、無機アニオン及び小さな有機アニオンの定量に好適な方法である。ICは、無機カチオン、並びに炭水化物及びアミノ酸の定量にも広く使用されている。
【0003】
イオンクロマトグラフィでは、酸、塩基、又は塩の希釈液がクロマトグラフィ分離溶離液として一般的に使用されている。従来、これらの溶離液は、試薬グレードの化学物質で希釈することによって、オフラインで調製されている。クロマトグラフィ溶離液のオフライン調製は面倒で、オペレーターのミスが生じやすく、多くの場合、汚染を招く可能性がある。例えば、アニオンのイオンクロマトグラフィ分離において溶離液として広く使用されている希釈NaOH溶液は、炭酸塩によって簡単に汚染される。炭酸塩は試薬からの不純物として、または空気からの二酸化炭素の吸着によって導入される可能性があるため、炭酸塩を含まないNaOH溶離液の調製は困難である。NaOH溶離液中の炭酸塩の存在は、イオンクロマトグラフィ方法の性能を損なう可能性があり、また、標的分析物の水酸化物勾配の間、さらには再現不能な保持時間の間に、望ましくないクロマトグラフィ基線変動が生じる可能性がある。近年、水の電気分解と、イオン交換媒体を介したイオンの電荷選択的エレクトロマイグレーションとを利用するいくつかのアプローチが、高純度のイオンクロマトグラフィ溶離液を精製または生成するために研究者によって研究されている。米国特許第6,036,921号、同第6,225,129号、同第6,316,271号、同第6,316,270号、同第6,315,954号、および同第6,682,701号は、水を担体として使用して高純度の酸および塩基溶液を生成するために使用することができる電解装置について説明している。これらの装置を使用して、高純度で汚染物質のない酸又は塩基溶液が、クロマトグラフィ分離の溶離液として使用するためにインラインで自動的に生成される。
【0004】
純粋な溶離液をオンラインで生成するための電解装置の導入により、イオンクロマトグラフィは新しい時代に進む力を与えられた。以来、それは、従来の手作業の調製方法よりもEEGを使用することの利点(高純度の溶離液、定電流の正確な制御による優れた濃度再現性、使いやすさ、その他)により、急速に成長した。電解生成溶離液は、環境保護、バイオテクノロジー、製薬産業、発電所、食品産業、その他にわたる多くの分野で広く使用されている。
【0005】
イオンクロマトグラフィが進化して、超高性能液体クロマトグラフィ(UHPLC)の領域でより小さな直径及びより小さなビーズサイズの分離カラムを利用するようになるにつれ、EEGに必要な動作圧力が増加した。したがって、改善されたEEGが必要である。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様では、溶離液生成カートリッジは、白金メッシュ電極と、ポリマースクリーンと、複数の強化膜と、膜ワッシャと、中央支柱及び環状突起を含むスペーサと、を含むことができる。
【0007】
第1の態様の様々な実施形態では、溶離液生成カートリッジは、少なくとも約10,000psiなど、少なくとも約5,000psiの圧力で動作するように構成することができる。特定の実施形態では、溶離液生成カートリッジは、約15,000psi以下など、約30,000psi以下の圧力で動作するように構成することができる。
【0008】
第1の態様の様々な実施形態では、複数の強化膜は、約100個以下のイオン交換膜など、少なくとも約5つのイオン交換膜を含む。
【0009】
第1の態様の様々な実施形態では、膜ワッシャは、約20個以下のイオン交換膜など、少なくとも1つのイオン交換膜を含む。
【0010】
第2の態様では、電解溶離液生成器は、電解質リザーバと、少なくとも1つの溶離液生成カートリッジと、を含むことができる。電解質リザーバは、電解質水溶液および第1の電極を収容するチャンバを含むことができる。少なくとも1つの溶離液生成カートリッジは、白金メッシュ電極、ポリマースクリーン、複数の強化膜、膜ワッシャ、並びに中央支柱及び環状突起を含むスペーサを含むことができる。
【0011】
第2の態様の様々な実施形態では、溶離液生成カートリッジは、少なくとも約10,000psiなど、少なくとも約5,000psiの圧力で動作するように構成することができる。特定の実施形態では、溶離液生成カートリッジは、約15,000psi以下など、約30,000psi以下の圧力で動作するように構成することができる。
【0012】
第2の態様の様々な実施形態では、電解質水溶液は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを含む。
【0013】
第2の態様の様々な実施形態では、電解質水溶液は、メタンスルホン酸を含む。
【0014】
第2の態様の様々な実施形態では、複数の強化膜は、約100個以下のイオン交換膜など、少なくとも約5つのイオン交換膜を含む。
【0015】
第2の態様の様々な実施形態では、膜ワッシャは、約20個以下のイオン交換膜など、少なくとも1つのイオン交換膜を含む。
【0016】
ここで、本明細書において開示される原理、およびその利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて考慮される以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】様々な実施形態による、溶離液生成器を含むクロマトグラフィシステムを示す。
【
図2】様々な実施形態による、溶離液生成器を示す。
【
図3A】様々な実施形態による、溶離液生成カートリッジを示す。
【
図3B】様々な実施形態による、溶離液生成カートリッジを示す。
【
図4A】様々な実施形態による、改善された溶離液生成カートリッジを示す。
【
図4B】様々な実施形態による、改善された溶離液生成カートリッジを示す。
【0018】
図は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、図内の物体が互いに対する関係において必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。図は、本明細書で開示された装置、システム、および方法の様々な実施形態に対する明確さおよび理解をもたらすことを意図した描写である。可能な限り、同じ参照番号が、同じまたは同様の部品を指すように全図面を通じて使用される。さらに、図面が、本発明の教示の範囲をいかようにも限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
超高圧EEGの実施形態を本明細書で説明する。
【0020】
本明細書で使用される節の見出しは、構成目的のためのものであって、記載される主題を多少なりとも限定するものと解釈されるべきでない。
【0021】
様々な実施形態のこの詳細な説明では、説明の目的のために、多くの特定の詳細が、開示された実施形態の全体的な理解を提供するために記載される。しかしながら、これらの様々な実施形態はこれらの特定の詳細の有無にかかわらず実行されてもよいことを当業者は理解するだろう。他の例では、構造および装置はブロック図の形態で示されている。さらに、方法が提示および実行される具体的な順序は例示的なものであり、順序は変更されても依然として本明細書で開示される様々な実施形態の趣旨および範囲内にとどまり得ることが企図されていることを、当業者であれば容易に理解することができる。
【0022】
それらに限定されるものではないが、特許、特許出願、記事、書籍、論文、およびインターネットウェブページを含んでいる、本出願で引用されたすべての文献および同様の資料が、任意の目的でそれらの全体が参照によって明示的に組み込まれる。別段記載されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本明細書で記載される様々な実施形態が属する当技術分野における当業者によって共通に理解されるものであるという意味を有する。
【0023】
本教示において論じられる温度、濃度、時間、圧力、流量、断面積などの前に暗黙の「約」が存在し、そのため、極めて小さい僅かな偏差が本教示の範囲内にあることが理解されるであろう。本出願において、単数形の使用は、別段具体的に記載されない限り、複数形を含む。また、「備える/含む(comprise)」、「備える/含む(comprises)」、「備えている/含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含んでいる(including)」の使用は限定することを意図していない。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものにすぎず、本教示を限定するものではないことを理解されたい。
【0024】
本明細書において使用されるとき、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を指すこともある。また、「または」の使用は包括的であり、したがって、「AまたはB」という言い回しは、「A」が真であるとき、「B」が真であり、または「A」および「B」の両方が真であるときに、真ある。さらに、文脈によって別段必要とされない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。
【0025】
「システム」は、各成分が全体内の少なくとも1つの他の成分と相互作用するか、またはそれと関連する全体を備えている、実際であれ抽象であれ、成分のセットを示す。
【0026】
クロマトグラフィシステム
図1は、クロマトグラフィシステム100の実施形態を示している。クロマトグラフィシステム100は、ポンプ102、電解溶離液生成器104、連続再生式トラップカラム106、脱ガス器108、サンプルインジェクタ110、クロマトグラフィ分離カラム112、電解サプレッサ114、検出器116、及びマイクロプロセッサ118を含み得る。クロマトグラフィ分離カラム112は、毛管カラム又は分析カラムの形態であり得る。リサイクルライン120は、液体を検出器116の送出から電解サプレッサ114の入口に移送するために使用され得、リサイクルライン122は、液体を電解サプレッサ114の出口から脱ガス器108の入口に移送するために使用され得、リサイクルライン124は、液体を脱ガス器108の出口から、連続再生式トラップカラム106の入口に移送するために使用され得る。
【0027】
ポンプ102は、液体源124から液体をポンプ圧送し、電解溶離液生成器104に流体的に接続されるように構成することができる。一実施形態では、液体は、脱イオン水、電解質(複数可)を含む水溶液、または有機溶媒と脱イオン水もしくは電解質(複数可)水溶液との混合物であってもよい。いくつかの電解質の例は、酢酸ナトリウムおよび酢酸である。有機溶媒を含有する溶離液混合物は、例えば、メタノールなどの水混和性有機溶媒を含んでもよい。ポンプ102は、約20PSI~約15000PSIの範囲の圧力で液体を輸送するように構成することができる。特定の状況下では、15,000PSIを超える圧力が実行されることもある。本明細書に示されている圧力は、周囲圧力(13.7PSI~15.2PSI)を基準として列挙されていることに留意されたい。ポンプ102は、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)ポンプの形態であってもよい。さらに、ポンプ102は、液体がポンプ102の不活性部分にのみ接触するように構成することもでき、これにより、かなりの量の不純物が浸出することはない。この文脈において、かなりとは、意図された測定を妨げる不純物の量を意味する。例えば、不活性部分は、液体に暴露されたときに有意な数のイオンを浸出させることがない、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作るか、又は少なくともPEEKライニングでコーティングすることができる。
【0028】
溶離液は、酸、塩基、塩、またはそれらの混合物を含有する液体であり、クロマトグラフィカラムを介して分析物を溶出するために使用することができる。さらに、溶離液は、液体と水混和性有機溶媒との混合物を含むことができ、液体は、酸、塩基、塩、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。電解溶離液生成器104は、ジェネラントを生成するように構成されている。ジェネラントとは、溶離液に加えることができる特定の種類の酸、塩基、または塩を指す。一実施形態では、ジェネラントは、カチオン性水酸化物などの塩基であってもよく、またはジェネラントは、炭酸、リン酸、酢酸、メタンスルホン酸、またはそれらの組み合わせなどの酸であってもよい。
【0029】
図1を参照すると、溶離液生成器104は、ポンプ102から液体を受け取り、次にジェネラントを液体に加えるように構成することができる。ジェネラントを含有している液体は、溶離液生成器104から、連続再生式トラップカラム106の入口へ送出することができる。
【0030】
連続再生式トラップカラム106は、溶離液からカチオン性またはアニオン性汚染物質を除去するように構成されている。連続再生式トラップカラム106は、溶離液出口に電極を備えたイオン交換床を含むことができる。イオン交換膜界面は、溶離液を第2の電極から分離させることができ、汚染イオンは、イオン交換膜によって第2の電極に向かって一掃することができる。様々な実施形態において、アニオン除去は、アニオン交換膜によってアノードから分離された溶離液出口にカソードを備えたアニオン交換床を利用することができる。あるいは、カチオン除去は、カチオン交換膜によってカソードから分離された溶離液出口にアノードを備えたカチオン交換床を利用することができる。汚染イオンは、脱ガスアセンブリ108の下流にあるリサイクルライン124を介してリサイクル液体を使用して再生式トラップカラム106から一掃することができる。
【0031】
脱ガス器108は、溶離液中の残留ガスを除去するために使用され得る。一実施形態では、残留ガスは水素および酸素であってもよい。脱ガス器108は、例えば、アモルファスフルオロポリマーまたはより具体的にはテフロンAFなどの、ガス透過性および液体不透過性であるチュービングセクションを含んでもよい。流れる液体は、ガスのかなりの部分が除去された状態で、脱ガス器108からサンプルインジェクタ110へ送出することができる。ガスは、電解サプレッサ114の下流にあるリサイクルライン122を介してリサイクル液体を使用して脱ガス器108から一掃することができる。残留ガスを含有するリサイクル液体も、脱ガス器108から送出され、連続再生式トラップカラム106へ方向付けられ得る。
【0032】
サンプルインジェクタ110は、液体サンプルのボーラスを溶離液流に注入するために使用することができる。液体サンプルは、複数の化学成分(すなわち、マトリックス成分)および1つ以上の対象の分析物を含み得る。
【0033】
クロマトグラフィ分離カラム112を使用して、液体サンプル中に存在する様々なマトリックス成分を対象の分析物から分離することができる。典型的には、クロマトグラフィ分離カラム112は、充填固定相を収容する中空シリンダの形態であり得る。液体サンプルがクロマトグラフィ分離カラム112を通って流れるとき、マトリックス成分及び標的分析物は、クロマトグラフィ分離カラム112から溶出するために、ある範囲の保持時間を有する可能性がある。標的分析物及びマトリックス成分の特性に応じて、それらは、クロマトグラフィ分離カラム112の固定相に対して異なる親和性を有することができる。クロマトグラフィ分離カラム112の送出口は、電解サプレッサ114に流体的に接続することができる。
【0034】
再生イオンのための溶離液の対イオンの効率的な交換により、溶離液導電率バックグラウンドを低減し、分析物の応答を向上させるために、電解サプレッサ114を使用することができる。電解サプレッサ114は、イオン交換膜によって分離されたアノードチャンバ、カソードチャンバ、および溶離液抑制床チャンバを含むことができる。アノードチャンバおよび/またはカソードチャンバは、再生イオンを生成することができる。溶離液抑制床チャンバは、イオン交換バリアによって再生剤から分離された溶離液の流路を含むことができ、溶離液対イオンは、イオン交換バリアを越えて再生イオンと交換することができる。カソードチャンバまたはアノードチャンバには、導電率検出器116の下流にあるリサイクルライン120を介してリサイクル液体を供給することができる。電解サプレッサ114の送出口は、液体サンプルの分離された化学成分の存在を測定するために、検出器116に流体的に接続することができる。
【0035】
図1に示されるように、検出器116からの溶離液の送出流体は、リサイクルライン120を介して電解サプレッサ114にリサイクルされ、電解サプレッサ114の送出流体は、リサイクルライン122を介して脱ガス器108にリサイクルされ、脱ガス器108からの送出流体は、リサイクルライン124を介して連続再生式トラップカラム106にリサイクルされ、連続再生式トラップカラム106の送出流体は、廃棄部へ流れる。
【0036】
検出器116は、紫外可視分光計、蛍光分光計、電気化学検出器、導電率検出器、電荷検出器、またはそれらの組み合わせの形態であってもよい。帯電バリアおよび2つの電極に基づく電荷検出器に関する詳細は、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国付与前公開第20090218238号に見出すことができる。リサイクルライン120が必要とされない状況では、検出器116もまた、質量分析計または荷電化粒子検出器の形態であってもよい。荷電化粒子検出器は、流出流を霧化し、分析物の濃度に比例した電流として測定することができる荷電粒子を生成する。荷電化粒子検出器に関する詳細は、参照することにより本明細書に完全に組み込まれる米国特許第6,544,484号および同第6,568,245号に見出すことができる。
【0037】
電子回路は、マイクロプロセッサ118、タイマー、およびメモリ部分を含んでもよい。さらに、電子回路は、それぞれ制御信号を適用するように構成された電源を含んでもよい。マイクロプロセッサ118は、クロマトグラフィシステム100の動作を制御するために使用することができる。マイクロプロセッサ118は、クロマトグラフィシステム100に統合されてもよく、またはクロマトグラフィシステム100と通信するパーソナルコンピュータの一部であってもよい。マイクロプロセッサ118は、ポンプ102、溶離液生成器104、サンプルインジェクタ110、および検出器116などのクロマトグラフィシステムの1つ以上の構成要素と通信し、それらを制御するように構成され得る。メモリ部分は、サンプルを注入するサンプルインジェクタ110のスイッチングに関して、電流波形の大きさおよびタイミングを設定するための命令を記憶するために使用され得る。
【0038】
図2は、電解溶離液生成器カートリッジ200の動作原理を示す。カートリッジは、高圧溶離液生成チャンバ202および低圧電解質リザーバ204を含むことができる。様々な実施形態において、高圧生成チャンバ202は、少なくとも約5,000psi、さらには少なくとも約10,000psiなど、約2,000psiを超えるが、約15,000psi以下など、約30,000psi以下の、圧力で動作することができる。
【0039】
溶離液生成チャンバ202は、有孔白金(Pt)電極206を含むことができる。電解質リザーバ204は、Pt電極208および電解質溶液を収容することができる。様々な実施形態において、電解溶離液生成器カートリッジ200は、KOHなどの塩基を生成することができ、電極206は、水酸化物イオンを形成することができるカソードとすることができ、電極208は、アノードとすることができる。他の実施形態では、電解溶離液生成器カートリッジ200は、炭酸、リン酸、酢酸、メタンスルホン酸などの酸を生成することができ、電極206は、ヒドロニウムイオンを形成することができるアノードとすることができ、電極208は、カソードとすることができる。溶離液生成チャンバ202は、電解質リザーバ204から高圧生成チャンバ202へ1つの電荷のみのイオンの通過を可能にすることができる交換コネクタ210によって、電解質リザーバ204に接続することができる。交換コネクタ210はまた、低圧電解質リザーバ204と高圧生成チャンバ202との間の高圧物理的バリアという重要な役割を果たすことができる。電解溶離液生成器カートリッジ200が塩基生成器である様々な実施形態では、交換コネクタ210は、電解質リザーバ204から生成チャンバ202へのアニオンの通過を実質的に防止しながら、カチオンの通過を可能にすることができる。電解生成器カートリッジ200が酸生成器である代替的な実施形態では、交換コネクタ210は、電解質リザーバ204から生成チャンバ202へのカチオンの通過を実質的に防止しながら、アニオンの通過を可能にすることができる。
【0040】
様々な実施形態において、溶離液生成チャンバ202及びイオン交換コネクタ210を、溶離液生成カートリッジに組み込むことができる。
【0041】
KOH溶離液を生成するためには、脱イオン水を溶離液生成チャンバ202を通じてポンプ圧送することができ、DC電流を電極208と電極206との間に印加することができる。印加された電界の下で、水の電気分解が、装置200の電極208および電極206の両方において生じ得る。電解質リザーバ204の電極208においてH+イオンおよび酸素ガスを形成するために水を酸化させることができる:H2O→2H++1/2O2↑+2e-。KOH生成チャンバ202の電極206においてOH-イオンおよび水素ガスを形成するために水を還元することができる:2H2O+2e-→2OH-+H2↑。アノード206において生成されたH+イオンが電解質リザーバ204においてK<2>+</2>イオンを置換するため、置換されたイオンは、カチオン交換コネクタ210を横切って溶離液生成チャンバ202へ移動することができる。これらのK<8>+</8>イオンは、カソード206において生成された水酸化物イオンと結合してKOH溶液を生成することができ、このKOH溶液を、アニオン交換クロマトグラフィの溶離液として使用することができる。生成されたKOHの濃度は、生成器カートリッジ200に印加される電流および生成チャンバ202を通る担体としての水の流量によって決定することができる。
【0042】
メタスルホン酸溶離液を生成するためには、脱イオン水を溶離液生成チャンバ202を通じてポンプ圧送することができ、DC電流を電極208と電極206との間に印加することができる。印加された場の下で、水の電気分解が、装置200の電極208および電極206の両方において生じ得る。KOH生成チャンバ202の電極206においてH+イオンおよび酸素ガスを形成するために水を酸化させることができる:H2O→2H++1/2O2↑+2e-。電解質チャンバ204の電極208においてOH-イオンおよび水素ガスを形成するために水を還元することができる:2H2O+2e-→2OH-+H2↑。電極206において生成されたOH<14>-</14>イオンが電解質リザーバ204においてメタスルホン酸塩イオンを置換するため、置換されたイオンは、アニオン交換コネクタ210を横切って溶離液生成チャンバ202へ移動することができる。これらのメタスルホン酸塩イオンは、電極206において生成されたヒドロニウムイオンと結合してメタスルホン酸溶液を生成することができ、このメタスルホン酸溶液を、カチオン交換クロマトグラフィの溶離液として使用することができる。生成されたメタスルホン酸の濃度は、生成器カートリッジ200に印加される電流および生成チャンバ202を通る担体としての水の流量によって決定することができる。
【0043】
積層イオン交換膜は、電解溶離液生成器の心臓部である。イオンクロマトグラフィ用の純粋な溶離液をオンラインで生成するには、膜の物理的特性及び化学的特性の両方が、電解溶離液生成器の品質及び性能にとって重要である。これら2つ以外にも、電解溶離液生成器に定電流が印加されたときに動作電圧を決定する積層膜の連続性という、別の重要な要因が存在する。膜の連続性の課題は、EGCの組み立て及び動作中に発生し、過電圧の問題により、不十分な生産歩留まり、及び不満足な性能となる可能性がある。本明細書では、高圧条件下での組み立て及び適用の間に高トルク力に由来して遭遇する課題を解決するための、上部膜ワッシャ及びディスク包含ペーサからなる新しい構成を開示する。この新規構成を利用して、高トルク力の印加を伴うカートリッジ組み立ての間の過電圧の問題を克服することができる。さらに、この構成を使用して、EGC KOH及びMSAカートリッジを首尾よく組み立てて、純粋な溶離液を超高圧下で電解的に生成できるこれらのカートリッジを可能にすることができる。
【0044】
図3A及び
図3Bは、溶離液生成カートリッジ300を示す。溶離液生成カートリッジ300は、白金メッシュ電極302、ポリマースクリーン304、複数のイオン交換膜積層体306、308、及び310、並びにスペーサ312を含むことができる。スペーサ312は、イオン交換膜310とともに密封を形成する環状突起314を含み、一方で、環状突起314の内側の空間316において電解質溶液がイオン交換膜310と接触することを可能する。
【0045】
複数のイオン交換膜306、308、及び310は、スペーサ312によって圧縮される。圧縮ボルト(図示せず)にトルク力が加えられる。次いで、圧縮力は、スペーサ312を介してイオン交換膜306、308、及び310に伝達され、周縁近くに環状突起314を有するスペーサ312が、密封のために押し下げられる。環状突起314による膜306、308、及び310の圧縮は、
図3Bに示されるように、膜の変形をもたらす。変形は、周縁から中心まで変化する。中央付近の膜が最も変形し、それにより、膜310全体が空間316内に膨らみ、膜308と310との間に空隙318を作り出す可能性がある。膜の変形は、中程度のトルク力では小さく、組み立て及び動作中の積層膜の連続性への影響は無視し得る。しかしながら、超高圧EEGカートリッジに高いトルク力が要求されるとき、トルクプロセス中の膜の不連続性は、問題になる可能性がある。超高圧の圧縮中に形成される空隙は、電気的不連続性につながり、電圧スパイク及び抵抗増加をもたらす可能性がある。
【0046】
図4A及び
図4Bは、溶離液生成カートリッジ400を示す。溶離液生成カートリッジ400は、白金メッシュ電極402、ポリマースクリーン404、複数のイオン交換膜積層体406及び408、膜ワッシャ410、並びにスペーサ412を含む。スペーサ412は、スペーサ312と同様の環状突起414と、中央支柱416とを含む。電解質溶液は、環状突起414と中央支柱416との間の環状空間418内で膜積層体408及び膜ワッシャ410と接触することができる。
【0047】
様々な実施形態において、複数のイオン交換膜積層体406及び408は、いくつかのイオン交換膜を含むことができ、その少なくとも一部分は強化膜とすることができる。様々な実施形態において、強化及び非強化イオン交換膜を含むイオン交換膜の総数は、少なくとも約5つのイオン交換膜とすることができる。一般に、イオン交換膜積層体406及び408は、合わせて、約100個以下のイオン交換膜を含み得る。
【0048】
様々な実施形態において、膜ワッシャ410は、1つ以上のイオン交換膜を含むことができる。一般に、膜ワッシャ410は、約20個以下のイオン交換膜を含み得る。
【0049】
図4Bに示されるように、膜ワッシャ410は、圧縮中に環状空間418内に変形して、膜ワッシャ410とイオン交換膜408との間にギャップ420を形成することができる。しかしながら、電解質溶液422がギャップ420内に流れ込み、
図3A及び
図3Bに示された実施形態に見られる不連続を回避することができる。
【0050】
本教示を様々な実施形態と併せて記載するが、本教示をかかる実施形態に限定することを意図していない。むしろ、本教示は、当業者が理解するように、様々な代替物、変形物、および等価物を包含する。
【0051】
さらに、様々な実施形態の記載において、本明細書は、方法および/またはプロセスを特定の順序のステップとして提示している場合がある。しかしながら、本方法またはプロセスが本明細書に記載されたステップの特定の順序に依拠しないかぎりにおいて、本方法またはプロセスは、記載されたステップの特定の順序に限定されるべきではない。当業者であれば理解するように、ステップの他の順序が可能であり得る。したがって、本明細書に記載されたステップの特定の順序を、請求項における限定として解釈すべきではない。加えて、本方法および/またはプロセスを対象とする特許請求の範囲は、書かれた順序でのそれらのステップの実行に限定されるべきではなく、順序は変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨および範囲内にとどまり得ることを当業者であれば容易に理解することができる。