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特許7518153光学ガラス、光学素子ブランク、および光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子ブランク、および光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/21 20060101AFI20240709BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240709BHJP
   C03C 3/19 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
C03C3/21
G02B1/00
C03C3/19
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022511545
(86)(22)【出願日】2021-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2021000161
(87)【国際公開番号】W WO2021199554
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020061857
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】桑谷 俊伍
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001675(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221128(WO,A1)
【文献】特開2016-074581(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006998(WO,A1)
【文献】特開2018-002520(JP,A)
【文献】特開2014-159343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率ndが1.80~2.00であり、
アッベ数νdが17~22であり、
25の含有量が25~40質量%であり、
Nb25の含有量が15~40質量%であり、
TiO2の含有量が10~35質量%であり、
23の含有量が3~12質量%であり、
BaOの含有量が0~15質量%であり、
Li2Oの含有量が0質量%より多く、10質量%以下であり、
Li2O、Na2O、K2O、およびCs2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O+Cs2O]が0質量%より多く、15質量%以下であり、
TiO2の含有量とNb25、TiO2、WO3、Bi23、およびTa25の合計含有量との質量比[TiO2/(Nb25+TiO2+WO3+Bi23+Ta25)]が0.33~0.60であり、
Fを実質的に含まない、光学ガラス。
【請求項2】
2 5 の含有量が25~40質量%であり、
Nb 2 5 の含有量が15~40質量%であり、
TiO 2 の含有量が10~35質量%であり、
2 3 の含有量が3~12質量%であり、
Li 2 Oの含有量が0質量%より多く、10質量%以下であり、
25、B23、SiO2およびAl23の合計含有量と、TiO2、Nb25、WO3およびBi23の合計含有量との質量比[(P25+B23+SiO2+Al23)/(TiO2+Nb25+WO3+Bi23)]が0.50~0.85であり、
屈折率ndと比重dとが下記(1)を満たす、リン酸塩光学ガラス。
nd≧0.5×d+0.225 ・・・ (1)
【請求項3】
アッベ数νdが17以上である、請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
25の含有量が30~40質量%である、請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項5】
Nb25の含有量が15~38質量%である、請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスからなる導光板。
【請求項9】
画像表示素子と、前記画像表示素子より出射した光を導光する導光板とを備える画像表示装置において、前記導光板が請求項1~のいずれかに記載の光学ガラスからなる画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子ブランクおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AR(拡張現実)技術の進展に伴い、ARデバイスとして、例えばゴーグル型あるいは眼鏡型の表示装置が開発されている。例えばゴーグル型の表示装置には、高屈折率かつ低比重であるレンズが要求され、このようなレンズに適用できるガラスの需要が高まっている。
【0003】
特許文献1は、高屈折率の光学ガラスが開示されている。しかしながら、ARデバイス用レンズとして採用するには、屈折率に対して比重が大きすぎるという問題があった。
【0004】
そこで、高屈折率を維持しながら、比重が低減された光学ガラスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-2520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、屈折率が高く、比重が比較的低い光学ガラスおよび光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 屈折率ndが1.80~2.00であり、
アッベ数νdが17~22であり、
の含有量が25~40質量%であり、
Nbの含有量が15~40質量%であり、
TiOの含有量が10~35質量%であり、
の含有量が3~12質量%であり、
BaOの含有量が0~15質量%であり、
LiOの含有量が0質量%より多く、10質量%以下であり、
LiO、NaO、KO、およびCsOの合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]が0質量%より多く、15質量%以下であり、
TiOの含有量とNb、TiO、WO、Bi、およびTaの合計含有量との質量比[TiO/(Nb+TiO+WO+Bi+Ta)]が0.33~0.60であり、
Fを実質的に含まない、光学ガラス。
【0008】
(2) NbおよびTiOを含み、
屈折率ndと比重dとが下記(1)を満たす、リン酸塩光学ガラス。
nd≧0.5×d+0.225 ・・・ (1)
【0009】
(3) 上記(1)または(2)に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
【0010】
(4) 上記(1)または(2)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0011】
(5) 上記(1)または(2)に記載の光学ガラスからなる導光板。
【0012】
(6) 画像表示素子と、前記画像表示素子より出射した光を導光する導光板とを備える画像表示装置において、前記導光板が上記(1)または(2)に記載の光学ガラスからなる画像表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈折率が高く、比重が比較的低い光学ガラスおよび光学素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る光学ガラスの一例と、特許文献1の実施例に開示された光学ガラスとを、屈折率ndを縦軸とし、比重を横軸としてプロットしたグラフである。
図2図2は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を示す図である。
図3図3は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明および本明細書において、ガラス組成は、特記しない限り、酸化物基準で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいう。酸化物基準で表示する全てのガラス成分(清澄剤として添加するSb(Sb)およびCe(CeO)を除く)の合計含有量は100質量%とする。各ガラス成分の表記は慣習にならい、SiO、TiOなどと記載する。ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り質量基準であり、「%」は「質量%」を意味する。
【0016】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量することができる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0017】
本明細書では、屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0018】
また、アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。ここで、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0019】
以下に、本発明の光学ガラスを第1実施形態と第2実施形態とに分けて説明する。なお、第2実施形態における各ガラス成分の作用、効果は、第1実施形態における各ガラス成分の作用、効果と同様である。したがって、第2実施形態において、第1実施形態に関する説明と重複する事項については適宜省略する。
【0020】
第1実施形態
第1実施形態に係る光学ガラスは、
屈折率ndが1.80~2.00であり、
アッベ数νdが17~22であり、
の含有量が25~40%であり、
Nbの含有量が15~40%であり、
TiOの含有量が10~35%であり、
の含有量が3~12%であり、
BaOの含有量が0~15%であり、
LiOの含有量が0%より多く、10%以下であり、
LiO、NaO、KO、およびCsOの合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]が0%より多く、15%以下であり、
TiOの含有量とNb、TiO、WO、Bi、およびTaの合計含有量との質量比[TiO/(Nb+TiO+WO+Bi+Ta)]が0.33~0.60であり、
Fを実質的に含まない。
【0021】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndは1.80~2.00である。屈折率ndの下限は、好ましくは1.810であり、1.820、1.830、または1.840としてもよい。また、屈折率ndの上限は、好ましくは1.950であり、1.920、1.910、1.900、または1.890としてもよい。
【0022】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、アッベ数νdは、17~22である。アッベ数νdの下限は、好ましくは18であり、18.5としてもよい。また、アッベ数νdの上限は、好ましくは21であり、20.5としてもよい。
【0023】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Pの含有量は25~40%である。Pの含有量の下限は、好ましくは27%であり、さらには28%、29%、30%、31%の順により好ましい。また、Pの含有量の上限は、好ましくは39%であり、さらには38%、37%、36%、35%の順により好ましい。
【0024】
は、ネットワーク形成成分であり、ガラス中に高分散成分を多く含有するために必須の成分である。Pの含有量を上記範囲とすることで、熱的安定性を向上できる。
【0025】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nbの含有量は15~40%である。Nbの含有量の下限は、好ましくは20%であり、さらには22%、24%、25%、26%、27%、28%の順により好ましい。また、Nbの含有量の上限は、好ましくは39%であり、さらには38%、37%、36%、35%の順により好ましい。
【0026】
Nbは、高屈折率化、高分散化に寄与する成分である。また、Nbの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善できる。一方、Nbの含有量が多くなりすぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、また、ガラスの着色が強まる傾向がある。また、ガラスの比重が大きくなるおそれがある。
【0027】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiOの含有量は10~35%である。TiOの含有量の下限は、好ましくは12%であり、さらには14%、15%、16%、17%、18%の順により好ましい。また、TiOの含有量の上限は、好ましくは34%であり、さらには32%、31%、30%、29%、28%の順により好ましい。
【0028】
TiOは、高屈折率化、高分散化に大きく寄与する。また、高屈折率化成分の中では低比重化に寄与する。TiOの含有量を上記範囲とすることで、高屈折率化と低比重化を両立できる。一方、TiOの含有量が多すぎると、熔融ガラスを成形、徐冷して光学ガラスを得る過程で、ガラス内における結晶生成が促進されて、ガラスの透明性が低下(白濁)する傾向がある。また着色が増大する。
【0029】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bの含有量は3~12%である。Bの含有量の下限は、好ましくは3.00%であり、さらには3.50%、4.00%、4.50%の順により好ましい。また、Bの含有量の上限は、好ましくは10.0%であり、さらには9.0%、8.0%、7.5%の順により好ましい。
【0030】
は、ガラスのネットワーク形成成分である。また、ガラスのネットワーク形成成分の中では高屈折率化に寄与する。Bの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性を改善できる。一方、Bの含有量が多すぎると、高分散化を妨げ、また、耐失透性が低下する傾向がある。
【0031】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量は0~15%である。BaOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%の順により好ましい。また、BaOの含有量は0%でもよい。
【0032】
BaOの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善できる。一方、BaOの含有量が多すぎると、高分散性が損なわれ、また、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。また、ガラスの比重が大きくなるおそれがある。
【0033】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、LiOの含有量は0%より多く、10%以下である。LiOの含有量の上限は、好ましくは8.00%であり、さらには6.00%、5.00%、4.00%の順により好ましい。また、LiOの含有量の下限は、好ましくは0.20%であり、さらには0.30%、0.40%、0.50%、0.60%の順により好ましい。
【0034】
LiOの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性を改善できる。また、LiOはアルカリ成分の中では高屈折率化に寄与する。一方、LiOの含有量が多すぎると、熱的安定性、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。
【0035】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、LiO、NaO、KO、およびCsOの合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]は0%より多く、15%以下である。該合計含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、さらには2.0%、3.0%、3.5%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは14.5%であり、さらには14.0%、13.7%の順により好ましい。
【0036】
合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]を上記範囲とすることで、熱的安定性を改善できる。一方、該合計含有量が大きすぎると、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。また、屈折率が低下するおそれがある。
【0037】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiOの含有量とNb、TiO、WO、Bi、およびTaの合計含有量との質量比[TiO/(Nb+TiO+WO+Bi+Ta)]は0.33~0.60である。該質量比の下限は、好ましくは0.34であり、さらには0.35、0.36、0.37の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.58であり、さらには0.55、0.52、0.51、0.50、0.49の順により好ましい。
【0038】
Nb、TiO、WO、Bi、およびTaは、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiOは、Nb、WO、BiおよびTaと比較して高屈折率化に寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、Nb、TiO、WO、Bi、およびTaにおけるTiOの含有割合を上記範囲とすることにより、高屈折率で、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0039】
第1実施形態に係る光学ガラスは、F(フッ素)を実質的に含まない。すなわち、第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、アニオン成分は主としてO(酸素)である。Fの含有量は、酸化物基準のガラス全物質量に対する質量%で表示する場合、外割で、好ましくは1%未満であり、さらには、0.5%以下、0.2%以下、0.1%以下の順により好ましい。
【0040】
ここで「外割」とは、F成分につき、ガラスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体の物質量を100%としたときの、F成分の物質量を、質量%で表したものである。
【0041】
第1実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量、比率、特性について、以下に非制限的な例を示す。
【0042】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiOの含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1.5%の順により好ましい。SiOの含有量は0%であってもよい。
【0043】
SiOは、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。一方、SiOの含有量が多いと、ガラスの耐失透性が低下する傾向がある。そのため、ガラスの熱的安定性および耐失透性等を改善する観点から、SiOの含有量の上限は上記範囲であることが好ましい。
【0044】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Alの含有量の上限は、好ましくは3%であり、さらには2%、1%の順により好ましい。Alの含有量は0%であってもよい。
【0045】
Alは、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Alの含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が低下する。また、ガラス転移温度Tgが上昇し、熱的安定性が低下する等の問題が生じやすい。このような問題を回避する観点から、Alの含有量の上限は上記範囲であることが好ましい。
【0046】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、P、B、SiOおよびAlの合計含有量[P+B+SiO+Al]の下限は、好ましくは28%であり、さらには、30%、32%、33%、34%、35%、35.5%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには43%、42%、41%、40%の順により好ましい。
【0047】
ガラスのネットワーク形成成分として、P、B、SiOおよびAlが知られている。これらガラスのネットワーク形成成分は、耐失透性を改善する。また、熔融ガラスの粘度が過度に低下するのを抑制し、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。したがって、成形性および耐失透性に優れた光学ガラスが得るために、合計含有量[P+B+SiO+Al]は上記範囲とすることが好ましい。
【0048】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、WOの含有量の下限は、好ましくは0%である。また、WOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%の順により好ましい。WOの含有量は0%であってもよい。
【0049】
WOはガラスの着色の原因となりやすく、透過率を悪化させる。また、高比重化の原因となる。したがって、WOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0050】
第1実施形態において、Biの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%の順により好ましい。また、Biの含有量の下限は、好ましくは0%である。Biの含有量は0%であってもよい。
【0051】
Biは、適量を含有させることによりガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。一方、Biの含有量を高めると、ガラスの着色が増大する。また、高比重化の原因となる。したがって、Biの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0052】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量[TiO+Nb+WO+Bi]の下限は、好ましくは40%であり、さらには42%、44%、46%、47%、48%、49%、50%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは65%であり、さらには63%、61%、59%、58%、57%の順により好ましい。
【0053】
TiO、Nb、WOおよびBiは、ガラスの高屈折率化、高分散化に寄与し、また、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。一方、ガラスの着色を増大させる成分でもある。したがって、合計含有量[TiO+Nb+WO+Bi]は上記範囲であることが好ましい。
【0054】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、P、B、SiOおよびAlの合計含有量と、TiO、Nb、WOおよびBiの合計含有量との質量比[(P+B+SiO+Al)/(TiO+Nb+WO+Bi)]の下限は、好ましくは0.50であり、さらには、0.52、0.54、0.56、0.58、0.60、0.62、0.64、0.65の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.85であり、さらには、0.83、0.81、0.79、0.77、0.76の順により好ましい。
【0055】
TiO、Nb、WOおよびBiは、いずれも、高分散化に寄与するガラス成分である。したがって、これら成分とネットワーク形成成分との含有割合は上記範囲であることが好ましい。
【0056】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、NaOの含有量の上限は、好ましくは5.0%であり、さらには4.5%、4.0%の順により好ましい。また、NaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。NaOの含有量は0%であってもよい。
【0057】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、KOの含有量の上限は、好ましくは12%であり、さらには11%、10%、9%、8%の順により好ましい。また、KOの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1.0%、2.0%、2.5%の順により好ましい。
【0058】
NaOおよびKOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、熱的安定性、化学的耐久性、耐候性が低下する。そのため、NaOおよびKOの各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0059】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、CsOの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、CsOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0060】
CsOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性が低下する。そのため、CsOの各含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0061】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには5%、4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、MgOの含有量は0%であってもよい。
【0062】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、CaOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、CaOの含有量は0%であってもよい。
【0063】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、SrOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%の順により好ましい。また、SrOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0064】
MgO、CaO、SrO、BaOは、いずれもガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、これらガラス成分の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。そのため、これらガラス成分の各含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0065】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量[MgO+CaO+SrO+BaO]の上限は、好ましくは10%であり、さらには5%、4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。熱的安定性および耐失透性を維持する観点から、合計含有量[MgO+CaO+SrO+BaO]は上記範囲であることが好ましい。
【0066】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZnOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%の順により好ましい。また、ZnOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0067】
ZnOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZnOの含有量が多すぎるとガラスの高分散性が損なわれる。そのため、ガラスの熱的安定性を改善し、所望の光学特性を維持する観点から、ZnOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0068】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZrOの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、1%の順により好ましい。また、ZrOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0069】
ZrOは、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZrOの含有量が多すぎると、熱的安定性が低下する傾向を示す。そのため、ガラスの熱的安定性および耐失透性を良好に維持する観点から、ZrOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0070】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Taの含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには3%、2%の順により好ましい。また、Taの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0071】
Taは、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。一方、Taは、屈折率を上昇させ、ガラスを低分散化させる。また、Taの含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔け残りが生じやすくなる。そのため、Taの含有量は上記範囲であることが好ましい。さらに、Taは、他のガラス成分と比較し、極めて高価な成分であり、Taの含有量が多くなるとガラスの生産コストが増大する。さらに、Taは他のガラス成分と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させ、結果的に光学素子の重量を増大させる。
【0072】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Scの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Scの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0073】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、HfOの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、HfOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0074】
Sc、HfOは、いずれも屈折率ndを高める働きを有し、また高価な成分である。そのため、Sc、HfOの各含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0075】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Luの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Luの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0076】
Luは、屈折率ndを高める働きを有する。また、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増加させるガラス成分でもある。そのため、Luの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0077】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、GeOの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、GeOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0078】
GeOは、屈折率ndを高める働きを有し、また、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0079】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Laの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Laの含有量の下限は、好ましくは0%である。Laの含有量は0%であってもよい。
【0080】
Laの含有量が多くなるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。したがって、熱的安定性および耐失透性の低下を抑制する観点から、Laの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0081】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gdの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Gdの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0082】
Gdの含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。また、Gdの含有量が多くなり過ぎるとガラスの比重が増大し、好ましくない。したがって、ガラスの熱的安定性および耐失透性を良好に維持しつつ、比重の増大を抑制する観点から、Gdの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0083】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Yの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Yの含有量の下限は、好ましくは0%である。Yの含有量は0%であってもよい。
【0084】
の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。したがって、熱的安定性および耐失透性の低下を抑制する観点から、Yの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0085】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ybの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Ybの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0086】
Ybは、La、Gd、Yと比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させる。ガラスの比重が増大すると、光学素子の質量が増大する。例えば、質量の大きいレンズをオートフォーカス式の撮像レンズに組み込むと、オートフォーカス時にレンズの駆動に要する電力が増大し、電池の消耗が激しくなる。したがって、Ybの含有量を低減させて、ガラスの比重の増大を抑えることが望ましい。
【0087】
また、Ybの含有量が多すぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。ガラスの熱的安定性の低下を防ぎ、比重の増大を抑制する観点から、Ybの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0088】
第1実施形態に係る光学ガラスは、主として上述のガラス成分、すなわち、必須成分としてP、Nb、TiO、B、LiO、任意成分としてBaO、SiO、Al、WO、Bi、NaO、KO、CsO、MgO、CaO、SrO、ZnO、ZrO、Ta、Sc、HfO、Lu、GeO、La、Gd、Y、およびYbで構成されていることが好ましく、上述のガラス成分の合計含有量は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.5%以上が一層好ましい。
【0089】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、TeOの含有量の上限は、好ましくは2%である。また、TeOの含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0090】
TeOは毒性を有することから、TeOの含有量を低減させることが好ましい。そのため、TeOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0091】
なお、本実施形態に係る光学ガラスは、基本的に上記ガラス成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0092】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0093】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0094】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0095】
Sb(Sb)、Ce(CeO)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb)は、清澄効果の大きな清澄剤である。Ce(CeO)は、Sb(Sb)と比較し、清澄効果が小さい。Ce(CeO)は、多量に添加するとガラスの着色が強まる傾向がある。
【0096】
なお、本明細書では、Sb(Sb)およびCe(CeO)の含有量は、外割の表示とし、酸化物基準で表示する全てのガラス成分の合計含有量に含まない。すなわち、本明細書では、Sb(Sb)およびCe(CeO)を除く全てのガラス成分の合計含有量を100質量%とする。
【0097】
Sbの含有量は、外割り表示とする。すなわち、SbおよびCeO以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSbの含有量は、好ましくは1質量%以下であり、さらには0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.08質量%以下、0.06質量%以下、0.04質量%以下、0.02質量%以下の順に好ましい。Sbの含有量は0質量%であってもよい。
【0098】
CeOの含有量も、外割り表示とする。すなわち、CeO、Sb以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeOの含有量は、好ましくは2質量%以下であり、さらには1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下の順により好ましい。CeOの含有量は0質量%であってもよい。CeOの含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0099】
<ガラスの比重>
第1実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率ガラスでありながら、比重が大きくない。ガラスの比重を低減することができれば、レンズの重量を減少できる。一方、比重が小さすぎると、熱的安定性の低下を招く。
【0100】
したがって、第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、比重は、好ましくは3.40以下であり、さらには3.35以下、3.30以下、3.28以下、3.26以下、3.24以下の順により好ましい。
【0101】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndと比重dとは、下記式(1)を満たすことが好ましく、より好ましくは下記式(2)、さらに好ましくは下記式(3)、特に好ましくは下記式(4)、最も好ましくは下記式(5)を満たす。屈折率ndと比重dとが下記式を満たすことで、屈折率が高く、比較的比重の低減された光学ガラスが得られる。
nd≧0.5×d+0.225 ・・・ (1)
nd≧0.5×d+0.235 ・・・ (2)
nd≧0.5×d+0.245 ・・・ (3)
nd≧0.5×d+0.255 ・・・ (4)
nd≧0.5×d+0.265 ・・・ (5)
【0102】
(光学ガラスの製造)
本発明の実施形態に係る光学ガラスは、上記所定の組成となるようにガラス原料を調合し、調合したガラス原料により公知のガラス製造方法に従って作製すればよい。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を石英坩堝や白金坩堝中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを白金坩堝中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷して光学ガラスを得る。熔融ガラスの成形、徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
【0103】
なお、ガラス中に所望のガラス成分を所望の含有量となるように導入することができれば、バッチ原料を調合するときに使用する化合物は特に限定されないが、このような化合物として、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物等が挙げられる。
【0104】
(光学素子等の製造)
本発明の実施形態に係る光学ガラスを使用して光学素子を作製するには、公知の方法を適用すればよい。例えば、ガラス原料を熔融して熔融ガラスとし、この熔融ガラスを鋳型に流し込んで板状に成形し、本発明に係る光学ガラスからなるガラス素材を作製する。得られたガラス素材を適宜、切断、研削、研磨し、プレス成形に適した大きさ、形状のカットピースを作製する。カットピースを加熱、軟化して、公知の方法でプレス成形(リヒートプレス)し、光学素子の形状に近似する光学素子ブランクを作製する。光学素子ブランクをアニールし、公知の方法で研削、研磨して光学素子を作製する。
【0105】
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
【0106】
本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる光学素子を提供することができる。光学素子の種類としては、平面レンズ、球面レンズ、非球面レンズ等のレンズ、プリズム、回折格子、導光板等を例示することができる。レンズの形状としては、両凸レンズ、平凸レンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ等の諸形状を例示することができる。導光板の用途としては、拡張現実(AR)表示タイプの眼鏡型装置や複合現実(MR)表示タイプの眼鏡型装置などの表示装置などを例示することができる。このような導光板は眼鏡型装置のフレームに取り付けられる板状ガラスであり、上記光学ガラスからなるものである。導光板の表面には必要に応じて導光板の内部を、全反射を繰り得して伝搬する光の進行方向を変えるための回折格子が形成されていてもよい。回折格子が公知の方法で形成することができる。上記導光板を有する眼鏡型装置を装着すると、導光板の内部を伝搬した光が瞳孔に入射することにより、拡張現実(AR)表示や複合現実(MR)表示の機能を発現することなる。このような眼鏡型装置は例えば、特表2017-534352などに開示されている。なお、導光板は公知の方法により作製することができる。光学素子は、上記光学ガラスからなるガラス成形体を加工する工程を含む方法により製造することができる。加工としては、切断、切削、粗研削、精研削、研磨等を例示することができる。こうした加工を行う際、上記ガラスを使用することにより、破損を軽減することができ、高品質の光学素子を安定して供給することができる。
【0107】
以下に、本発明の一態様である導光板およびそれを用いた画像表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0108】
図2は、本発明の一態様である導光板10を用いた、ヘッドマウントディスプレイ1(以下、「HMD1」と略記する。)の構成を示す図であり、図2(a)は、HMD1の正面側斜視図であり、図2(b)は、HMD1の背面側斜視図である。図2(a)および図2(b)に示すように、使用者の頭部に装着される眼鏡型フレーム2の正面部には、眼鏡レンズ3が取り付けられる。眼鏡型フレーム2の取付部2aには、画像を照明するためのバックライト4が取り付けられる。眼鏡型フレーム2のツル部分には、画像を映し出すための信号処理機器5、及び音声を再生するスピーカー6が設けられている。信号処理機器5の回路から引き出された配線を構成するFPC(Flexible Printed Circuits)7が、眼鏡型フレーム2に沿って配線されている。表示素子ユニット(例えば液晶表示素子)20は、FPC7によって使用者の両眼中央位置まで配線され、かつバックライト4の光軸線上に表示素子ユニット20の略中心部が配置するように保持される。表示素子ユニット20は、導光板10の略中央部に位置するように、導光板10に対して相対的に固定される。また、使用者の眼前に位置する箇所にはHOE(Holographic Optical Element)32R、32L(第1光学素子)が、それぞれ接着等により導光板10の第1面10a上に密着固定されている。導光板10を挟んで表示素子ユニット20と対向する位置には、HOE52R、52Lが導光板10の第2面10b上に積層されている。
【0109】
図3は、本発明の一態様であるHMD1の構成を模式的に示す側面図である。なお、図3においては、図面を明瞭化するため、画像表示装置の主要部のみを示しており、眼鏡型フレーム2等は図示省略している。図3に示すように、HMD1は、画像表示素子24と導光板10の中心を結ぶ中心線Xを挟み左右対称の構造を有している。また、画像表示素子24から導光板10に入射された各波長の光は、後述するように二分割されて使用者の右眼、左眼のそれぞれに導光される。各眼に導光される各波長の光の光路も中心線Xを挟み略左右対称である。
【0110】
図3に示すように、バックライト4は、レーザ光源21、拡散光学系22、およびマイクロレンズアレイ23を有する。表示素子ユニット20は、画像表示素子24を有する画像生成ユニットであり、例えばフィールドシーケンシャル(Field Sequential)方式で駆動する。レーザ光源21は、R(波長436nm)、G(波長546nm)、B(波長633nm)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射され、光量ムラのない均一な高指向性の平行光束に変換されて、画像表示素子24の表示パネル面に垂直に入射される。
【0111】
画像表示素子24は、例えばフィールドシーケンシャル方式で駆動する透過型液晶(LCDT-LCOS)パネルである。画像表示素子24は、各波長の光に、信号処理機器5の画像エンジン(不図示)が生成する画像信号に応じた変調をかける。画像表示素子24の有効領域の画素で変調された各波長の光は、所定の光束断面(該有効領域と略同じ形状)をもって導光板10に入射される。なお、画像表示素子24は、例えばDMD(Digital Mirror Device)や反射型液晶(LCOS)パネル、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、有機EL(Electro-Luminescence)、無機EL等の他の形態の表示素子に置換することも可能である。
【0112】
なお、表示素子ユニット20は、フィールドシーケンシャル方式の表示素子に限らず、同時式の表示素子(射出面前面に所定の配列のRGBカラーフィルタを有する表示素子)の画像生成ユニットとしてもよい。この場合、光源には、例えば白色光源が使用される。
【0113】
図3に示すように、画像表示素子24により変調された各波長の光は、第1面10aから導光板10内部に順次入射される。導光板10の第2面10b上には、HOE52Rと52L(第2光学素子)が積層されている。HOE52Rおよび52Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記録されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE52Rおよび52Lは、R、G、Bの各波長の光を回折しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
【0114】
なお、HOE32Rおよび32Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE52Rおよび52Lと同一の層構造を有する。HOE32Rおよび32Lと52Rおよび52Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
【0115】
HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180(deg)反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第2面10b上に接着等により密着固定されている。HOE52R、52Lには、画像表示素子24により変調された各波長の光が導光板10を介して順次入射される。
【0116】
HOE52R、52Lはそれぞれ、順次入射される各波長の光を右眼、左眼に導くため所定の角度を付与して回折する。HOE52R、52Lにより回折された各波長の光はそれぞれ、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE32R、32Lに入射される。ここで、HOE52R、52Lは、各波長の光に同一の回折角を付与する。そのため、導光板10に対する入射位置が略同一の(あるいは別の表現によれば、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)全ての波長の光は、導光板10内部の略同一の光路を伝搬して、HOE32R、32L上の略同位置に入射する。別の観点によれば、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE32R、32L上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
【0117】
このように本発明の一態様においては、HOE52R、52Lは、それぞれ、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折する。あるいは、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなす全ての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
【0118】
HOE32R、32L上に入射された各波長の光は、HOE32R、32Lにより回折されて導光板10の第2面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように略平行光として射出された各波長の光はそれぞれ、画像表示素子24により生成された画像の虚像Iとして使用者の右眼網膜、左眼網膜に結像する。また、使用者が拡大画像の虚像Iを観察できるように、HOE32R、32Lにコンデンサ作用を付与してもよい。すなわち、HOE32R、32Lの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって射出され使用者の網膜に結像するようにしてもよい。あるいは、使用者に拡大画像の虚像Iを観察させるために、HOE52R、52Lは、HOE32R、32L上での画素位置関係が画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係に対して拡大された相似形状をなすようにRGBの各波長の光を回折するようにしてもよい。
【0119】
導光板10内を進む光の空気換算光路長が、屈折率が高いほど短くなるため、屈折率が高い本実施形態に係る光学ガラスを使用することにより、画像表示素子24の幅に対する見かけの視野角を大きくすることができる。さらに、屈折率が高いものの比重が低く抑えられているため、軽量でありながら上記効果が得られる導光板を提供することができる。
【0120】
なお、本発明の一態様である導光板は、シースルーである透過型のヘッドマウントディスプレイや非透過型のヘッドマウントディスプレイなどに使用することができる。
【0121】
これらヘッドマウントディスプレイは、導光板が本実施形態の高屈折率低比重の光学ガラスからなるので、広視野角による没入感が優れており、情報端末と組み合わせて使用したり、AR(Augmented Reality:拡張現実)等の提供用として使用したり、映画鑑賞やゲームやVR(Virtual Reality:仮想現実)等の提供用として使用する画像表示装置として好適である。
【0122】
以上、ヘッドマウントディスプレイを例にとり説明したが、その他の画像表示装置に上記導光板を取り付けてもよい。
【0123】
第2実施形態
第2実施形態に係る光学ガラスは、
NbおよびTiOを含み、
屈折率ndと比重dとが下記(1)を満たす、リン酸塩光学ガラスである。
nd≧0.5×d+0.225 ・・・ (1)
【0124】
第2実施形態に係る光学ガラスは、ガラス成分としてNbおよびTiOを含む。NbおよびTiOを含むことで、高屈折率性の光学ガラスが得られる。
【0125】
第2実施形態に係る光学ガラスは、屈折率ndと比重dとは下記式(1)を満たす。また、好ましくは下記式(2)、より好ましくは(3)、さらに好ましくは(4)、特に好ましくは下記式(5)を満たす。屈折率ndと比重dとが下記式を満たすことで、屈折率が高く、比較的比重の低減された光学ガラスが得られる。
nd≧0.5×d+0.225 ・・・ (1)
nd≧0.5×d+0.235 ・・・ (2)
nd≧0.5×d+0.245 ・・・ (3)
nd≧0.5×d+0.255 ・・・ (4)
nd≧0.5×d+0.265 ・・・ (5)
【0126】
第2実施形態に係る光学ガラスは、リン酸塩光学ガラスである。リン酸塩光学ガラスとは、ガラスのネットワーク形成成分として主にリン酸塩を含む光学ガラスをいう。したがって、第2実施形態に係る光学ガラスは、ネットワーク形成成分としてリン酸塩を含み、その含有量はPの含有量として表される。ガラスのネットワーク形成成分として、P、Al、B、SiO等が知られている。ここで、ガラスのネットワーク形成成分として主にリン酸塩を含むとは、質量%表示におけるPの含有量が、Al、B、SiOのいずれの含有量よりも多いガラスを意味する。
【0127】
第2実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量、比率、特性について、以下に非制限的な例を示す。
【0128】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndの下限は、好ましくは1.80であり、1.810、1.820、1.830、または1.840としてもよい。また、屈折率ndの上限は、好ましくは2.00であり、1.950、1.920、1.910、1.900、または1.8901としてもよい。
【0129】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、アッベ数νdの下限は、好ましくは17であり、18または18.5としてもよい。また、アッベ数νdの上限は、好ましくは22であり、21、または20.5としてもよい。
【0130】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、Pの含有量の下限は、好ましくは25%であり、さらには27%、28%、29%、30%、31%の順により好ましい。また、Pの含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには39%、38%、37%、36%、35%の順により好ましい。
【0131】
は、ネットワーク形成成分であり、ガラス中に高分散成分を多く含有するために必須の成分である。Pの含有量を上記範囲とすることで、熱的安定性を向上できる。
【0132】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nbの含有量の下限は、好ましくは15%であり、さらには20%、22%、24%、25%、26%、27%、28%の順により好ましい。また、Nbの含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには39%、38%、37%、36%、35%の順により好ましい。
【0133】
Nbは、高屈折率化、高分散化に寄与する成分である。また、Nbの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性および化学的耐久性を改善できる。一方、Nbの含有量が多くなりすぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、また、ガラスの着色が強まる傾向がある。また、ガラスの比重が大きくなるおそれがある。
【0134】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiOの含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには12%、14%、15%、16%、17%、18%の順により好ましい。また、TiOの含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには34%、32%、31%、30%、29%、28%の順により好ましい。
【0135】
TiOは、高屈折率化、高分散化に大きく寄与する。また、高屈折率化成分の中では低比重化に寄与する。TiOの含有量を上記範囲とすることで、高屈折率化と低比重化を両立できる。一方、TiOの含有量が多すぎると、熔融ガラスを成形、徐冷して光学ガラスを得る過程で、ガラス内における結晶生成が促進されて、ガラスの透明性が低下(白濁)する傾向がある。また着色が増大する。
【0136】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bの含有量の下限は、好ましくは3%であり、さらには3.00%、3.50%、4.00%、4.50%の順により好ましい。また、Bの含有量の上限は、好ましくは12%であり、さらには10.0%、9.0%、8.0%、7.5%の順により好ましい。
【0137】
は、ガラスのネットワーク形成成分である。また、ガラスのネットワーク形成成分の中では高屈折率化に寄与する。Bの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性を改善できる。一方、Bの含有量が多すぎると、高分散化を妨げ、また、耐失透性が低下する傾向がある。
【0138】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには5%、3%、1%の順により好ましい。また、BaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。BaOの含有量は0%でもよい
【0139】
BaOの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善できる。一方、BaOの含有量が多すぎると、高分散性が損なわれ、また、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。また、ガラスの比重が大きくなるおそれがある。
【0140】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、LiOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8.00%、6.00%、5.00%、4.00%の順により好ましい。また、LiOの含有量は、好ましくは0%より多く、その下限は、0.02%、0.30%、0.40%、0.50%、0.60%の順により好ましい。
【0141】
LiOの含有量を上記範囲とすることで、ガラスの熱的安定性を改善できる。また、LiOはアルカリ成分の中では高屈折率化に寄与する。一方、LiOの含有量が多すぎると、熱的安定性、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。
【0142】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、LiO、NaO、KO、およびCsOの合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]は、好ましくは0%より多く、その下限は0.5%、2.0%、3.0%、3.5%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには14.5%、14.0%、13.7%の順により好ましい。
【0143】
合計含有量[LiO+NaO+KO+CsO]を上記範囲とすることで、熱的安定性を改善できる。一方、該合計含有量が大きすぎると、化学的耐久性、耐候性が低下するおそれがある。また、屈折率が低下するおそれがある。
【0144】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiOの含有量とNb、TiO、WO、Bi、およびTaの合計含有量との質量比[TiO/(Nb+TiO+WO+Bi+Ta)]の下限は、好ましくは0.33であり、さらには0.34、0.35、0.36、0.37の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.58、0.55、0.52、0.51、0.50、0.49の順により好ましい。
【0145】
Nb、TiO、WO、Bi、およびTaは、いずれも、高屈折率化、高分散化に寄与するガラス成分であるが、比重が大きくなる原因ともなる。TiOは、Nb、WO、BiおよびTaと比較して高屈折率化寄与する一方、ガラスの比重を大きくしにくい。したがって、本発明の実施形態において、Nb、TiO、WO、Bi、およびTaにおけるTiOの含有割合を上記範囲とすることにより、高屈折率で、比重の小さい光学ガラスが得られる。
【0146】
第2実施形態に係る光学ガラスは、好ましくは、F(フッ素)を実質的に含まない。すなわち、第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、アニオン成分は主としてO(酸素)である。Fの含有量は、酸化物基準のガラス全物質量に対する質量%で表示する場合、外割で、好ましくは1%未満であり、さらには、0.5%以下、0.2%以下、0.1%以下の順により好ましい。
【0147】
ここで「外割」とは、F成分につき、ガラスを構成するカチオン成分全てが電荷の釣り合うだけの酸素と結合した酸化物でできていると仮定し、それら酸化物でできたガラス全体の物質量を100%としたときの、F成分の物質量を、質量%で表したものである。
【0148】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、上記以外のガラス成分の含有量および比率については、第1実施形態と同様とすることができる。また、第2実施形態におけるガラス特性、光学ガラスの製造および光学素子等の製造についても、第1実施形態と同様とすることができる。
【実施例
【0149】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0150】
(実施例1)
表1に示すガラス組成を有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。
【0151】
[光学ガラスの作製]
ガラスの構成成分に対応する化合物原料、すなわち、リン酸塩、炭酸塩、酸化物等の原料を秤量し、十分混合して調合原料とした。該調合原料を白金製坩堝に投入し、大気雰囲気下で1000~1350℃に加熱して熔融し、攪拌により均質化、清澄して熔融ガラスを得た。該熔融ガラスを成形型に鋳込んで成形し、徐冷して、ブロック形状のガラスサンプルを得た。
【0152】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定し、表1に示す各組成のとおりであることを確認した。なお、全てのガラスサンプルにおいて、F(フッ素)は含まれていないことを確認した。
【0153】
[光学特性の測定]
得られたガラスサンプルについて、以下に示す方法にて、比重、屈折率nd、アッベ数νdを測定した。結果を表2に示す。
【0154】
〔1〕比重
比重は、アルキメデス法により測定した。
【0155】
〔2〕屈折率ndおよびアッベ数νd
JIS規格 JIS B 7071-1の屈折率測定法により、屈折率nd、ng、nF、nCを測定し、下式に基づきアッベ数νdを算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
(実施例2)
実施例1において作製した光学ガラス(No.1~24)と、特許文献1の実施例に開示された光学ガラスとを比較した。屈折率ndを縦軸とし、比重を横軸としたグラフに、実施例1の光学ガラス、および特許文献1の実施例に開示された光学ガラスをプロットした。結果を図1に示す。
【0159】
図1に示すとおり、実施例1の光学ガラスは、特許文献1の実施例に開示された光学ガラスと、nd=0.5×d+0.225の直線を境界として明確に区別できる。また、実施例1の光学ガラスは、特許文献1の実施例に開示された光学ガラスと比較して、同じ屈折率ndにおいて比重が小さいことがわかった。
【0160】
(実施例3)
実施例1において作製した各光学ガラスを用いて、公知の方法により、レンズブランクを作製し、レンズブランクを研磨等の公知方法により加工して各種レンズを作製した。
作製した光学レンズは、平面レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ等の各種レンズである。
各種レンズは、他種の光学ガラスからなるレンズと組合せることにより、二次の色収差を良好に補正することができた。
【0161】
また、ガラスが低比重であるため、各レンズとも同等の光学特性、大きさを有するレンズよりも重量が小さく、ゴーグル型または眼鏡型のAR表示装置用あるいはMR表示装置用として好適である。同様にして、実施例1で作製した各種光学ガラスを用いてプリズムを作製した。
【0162】
(実施例4)
実施例1において作製した各光学ガラスを、長さ50mm×幅20mm×厚さ1.0mmの矩形薄板状に加工して、導光板を得た。この導光板を、図2に示すヘッドマウントディスプレイ1に組み込んだ。
【0163】
このようにして得られたヘッドマウントディスプレイについて、アイポイントの位置で画像を評価したところ、広い視野角で、高輝度かつ高コントラストな画像を観察することができた。
【0164】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0165】
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製することができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。
図1
図2
図3