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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240709BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/145 C
H03H9/25 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022512023
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2021012228
(87)【国際公開番号】W WO2021200469
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-24
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2020062202
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永友 翔
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】馬場 慎
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0264269(US,A1)
【文献】特開2019-114986(JP,A)
【文献】特開2014-110457(JP,A)
【文献】国際公開第2018/057956(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111664(WO,A1)
【文献】特開2019-62441(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038506(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/137648(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/036100(WO,A1)
【文献】特開2002-314366(JP,A)
【文献】特開2006-319887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられたIDT電極とを備え、
前記IDT電極は、
相互に対向している一対のバスバ電極と、
複数の電極指とを有し、
前記複数の電極指は、一方の端部が前記一対のバスバ電極のどちらか一方に接続され、他方の端部が前記一対のバスバ電極の他方とギャップを挟んで対向し、
前記ギャップを挟んで互いに対向する前記バスバ電極の対向面および前記電極指の対向面の少なくとも一方には、前記圧電基板に接する部分よりも前記圧電基板から離れた部分のほうが前記ギャップの間隔が狭くなるように、前記圧電基板から離れた部分から前記ギャップ側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部と前記圧電基板との間には空洞が存在する、弾性波装置。
【請求項2】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられたIDT電極と、を備え、
前記IDT電極が、
相互に対向している第1バスバ電極、及び、第2バスバ電極と、
前記第1バスバ電極から前記第2バスバ電極に延ばされた第1電極指と、
前記第2バスバ電極から前記第1バスバ電極に延ばされた第2電極指と、を有し、
前記第1バスバ電極、及び、前記第2電極指において、前記圧電基板側の面を底面とし 、前記底面と対向する面を天面とし、前記天面と前記底面とを結ぶ面を側面とした場合、
前記第1バスバ電極における前記第2電極指側の前記側面である第1側面と、前記第2電極指における前記第1バスバ電極側の前記側面である第2側面と、はギャップを介して対向しており、
前記第1側面と前記圧電基板とが接する第1点から、前記第2側面と前記圧電基板とが接する第2点までの前記ギャップを、第1ギャップとした場合、
前記第1側面における前記第1点より前記天面側の第1部分から、前記第2側面における前記第2点より前記天面側の第2部分までの前記ギャップが、前記第1ギャップの長さより短い長さの第2ギャップであり、
前記第1側面と前記第2側面とで挟まれる第1領域のうち、前記圧電基板と、前記第1バスバ電極或いは、前記第2電極指とに挟まれる第2領域に空洞が設けられている、
弾性波装置。
【請求項3】
前記第1バスバ電極の前記天面から、前記第2電極指の前記天面までを結ぶ第1仮想線を仮定したとき、
前記ギャップの長さが、前記圧電基板から前記第1仮想線に向かって段階的に短くなり、
前記第1側面、及び、前記第2側面において、前記第1ギャップを介して対向している面を第1対向部とし、前記第2ギャップを介して対向している面を第2対向部とした場合、
前記第1側面における、前記第2対向部の前記圧電基板に最も近い部分と、前記第2側面における、前記第2対向部の前記圧電基板に最も近い部分との少なくとも一方は、空洞に露出している、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記第1バスバ電極の前記天面から、前記第2電極指の前記天面までを結ぶ第1仮想線を仮定したとき、前記ギャップの長さが、前記圧電基板から前記第1仮想線に向かって連続的に短くなる、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1側面と前記天面とが接する部分と、前記第2側面と前記天面とが接する部分との少なくとも一方は、空洞に露出している、請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第2対向部は、前記第1対向部に対して凸部となっており、
前記圧電基板の前記IDT電極側の主面から、前記凸部の前記圧電基板側の面までの高さを第1高さとしたとき、
前記第1高さの値が、前記第2ギャップの長さの値より大きい、請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記第2対向部は、前記第1対向部に対して凸部となっており、
前記圧電基板における、前記IDT電極が設置されている面と対向する面に、半導体からなる支持基板が積層されており、
前記支持基板の圧電基板側の主面から、前記凸部の前記圧電基板側の面までの高さを第2高さとしたとき、
前記第2高さの値が、前記第2ギャップの長さの値より大きい、請求項3または6に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記圧電基板における、前記IDT電極が設置されている面と対向する面に、半導体からなる支持基板が積層されている、請求項2~7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記半導体が、シリコンを主体とする材料からなる請求項8に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記圧電基板上の前記第1領域に付加膜を設けた、請求項2~9のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記付加膜が誘電体からなる、請求項10に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記付加膜の材料は酸化タンタル、酸化ハフニウム、及び、ジルコニアのうち少なくとも1種を含む、請求項11に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記付加膜は、前記IDT電極と電気的に接続されていない金属層からなる、請求項10に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記第1バスバ電極は、前記第2バスバ電極に向かって延びるダミー電極指を有し、
前記ダミー電極指のうちの任意のダミー電極指は、前記ギャップを介して前記第2電極指と対向している、請求項2~13のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項15】
複数本の前記第1電極指のうち、隣り合う前記第1電極指において、
弾性波伝搬方向の中心間距離を、IDT電極ピッチpとしたとき、
前記圧電基板が2p以下の厚みを有する、請求項2~14のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項16】
前記凸部は、前記ギャップを挟んで互いに対向する前記バスバ電極の対向面および前記電極指の対向面の一方のみに設けられる、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項17】
前記空洞は、前記第2領域のうち、前記圧電基板と前記第1バスバ電極とに挟まれる領域および前記圧電基板と前記第2電極指とに挟まれる領域の一方のみに設けられる、請求項2に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-143657号公報(特許文献1)に記載のような、圧電基板と、圧電基板に配置された少なくとも1つのIDT電極と、を有する弾性表面波素子が知られている。IDT電極は、一対の第1櫛歯状電極と第2櫛歯状電極とから構成される。各櫛歯状電極は、バスバ電極と、該バスバ電極から延びて、他方の櫛歯状電極に対してギャップを有する位置に先端が位置している複数の電極指とを有している。
【0003】
従来、弾性表面波素子において、ギャップに電場が発生すると圧電基板が有する非線形性によって歪電流が発生し、歪電流に基づく歪波によって電気特性が低下することがあった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、バスバ電極と圧電基板との間に該圧電基板よりも誘電率が小さい絶縁膜を配置する技術が記載されている。これによって絶縁膜に電場が集中し、ギャップに発生する電場が弱められ、歪波が抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-143657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の弾性波装置において、ギャップに生じている電界(電場)を十分に低減しようとした場合、絶縁膜の厚みを大きくして、多くの電界を集中させる必要がある。しかしながら、その場合、電気機械結合係数が減少し、弾性波装置の特性が劣化してしまうという課題がある。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、ギャップに発生する電界の低減による歪波の抑制と、特性の劣化の抑制との両立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る弾性波装置は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられたIDT電極とを備え、前記IDT電極は、相互に対向している一対のバスバ電極と、複数の電極指とを有し、前記複数の電極指は、一方の端部が前記一対のバスバ電極のどちらか一方に接続され、他方の端部が前記一対のバスバ電極の他方とギャップを挟んで対向し、前記ギャップを挟んで互いに対向する前記バスバ電極の対向面および前記電極指の対向面の少なくとも一方には、前記圧電基板に接する部分よりも前記圧電基板から離れた部分のほうが前記ギャップの間隔が狭くなるように、前記圧電基板から離れた部分から前記ギャップ側に突出する凸部が設けられ、前記凸部と前記圧電基板との間には空洞が存在する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、特性の劣化を抑制しつつ、圧電基板においてギャップに生じる電界の強さを低減して、歪波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る弾性波装置を示す平面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の略図的断面図である。
図3図3は、図1の弾性波装置の作用を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る弾性波装置の変形例を示す略図的断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る弾性波装置の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る弾性波装置の製造方法を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る弾性波装置の略図的断面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る弾性波装置の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示であり、本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
また、実施形態等で参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。加えて、図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0013】
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、弾性波装置は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいが、以下では便宜的に、直交座標系xyzを定義すると共に、z方向の正側(図2の紙面上側)を上方、z方向の負側(図2の紙面下側)を下方として、上方、下方、及び、上、下、等の用語を用いるものとする。
【0014】
ここで、「天面」および「底面」とは、IDT電極11の任意の面を指すものとして参照される。具体的には、IDT電極11の圧電基板10側の面を底面とし、IDT電極11の底面と対向する面を天面として、底面、天面等の用語を用いるものとする。段落0013の上方、下方の定義を用いるならば、天面は底面よりも上方、底面は天面よりも下方にあると換言できる。加えて、「側面」とはIDT電極11の面のうち、天面と底面に挟まれた面を指し、他の表現をするならば、IDT電極11が有する面のうち、天面と、底面とに該当しない面を側面と定める。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る弾性波装置1の平面図である。なお、本発明の実施形態に係る弾性波装置1は、例えば、弾性表面波装置である。図1に示すように、弾性波装置1は、圧電基板10を有する。圧電基板10は、タンタル酸リチウムからなる。なお、圧電基板10は、ニオブ酸リチウムなどのタンタル酸リチウム以外の圧電単結晶や、適宜の圧電セラミックスからなっていてもよい。
【0015】
図1に示すように、圧電基板10は、一方の主面10aを有し、主面10a上には、IDT電極11が設けられている。IDT電極11に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。IDT電極11の弾性波伝搬方向(x方向)の両側には、反射器14a、及び、反射器14bを含む反射器14が配置されている。反射器14a及び、反射器14bは、弾性波伝播方向(x方向)に直交する方向(y方向)に延び、互いに平行な複数の反射電極指を含んでいる。
【0016】
IDT電極11は、互いに対向し合う第1バスバ電極16、及び、第2バスバ電極18を有する。加えて、IDT電極11は、第1バスバ電極16に一端が接続され、第2バスバ電極18に向かって延びる複数の第1電極指17と、第2バスバ電極18に一端が接続され、第1バスバ電極16に向かって延びる複数の第2電極指19を有する。第1バスバ電極16と第1電極指17により第1櫛歯状電極12が構成され、第2バスバ電極18と第2電極指19により第2櫛歯状電極13が構成されている。なお、以下では、第1櫛歯状電極12および第2櫛歯状電極13を単に櫛歯状電極と呼ぶ場合もあり、これらを区別しないことがある。
【0017】
複数の第1電極指17と複数の第2電極指19とは、互いに間挿し合っている。即ち、一対の櫛歯状電極において、複数の第1電極指17と複数の第2電極指19が互いに間挿し合うように配置されている。但し、複数の第1電極指17と複数の第2電極指19との全てが間挿し合う必要はなく、その一部が間挿し合う形態であればよい。
【0018】
そして、第1バスバ電極16と複数の第2電極指19の先端部、或いは、第2バスバ電極18と複数の第1電極指17の先端部とは、弾性波伝播方向(図1中x方向)に直交する方向(図1中y方向)において、ギャップ15を介して対向している。
【0019】
ここで、第1バスバ電極16、及び、第2バスバ電極18は、対向するバスバ電極に向かって延びるダミー電極指を有してもよい。その場合、以下では、ダミー電極指はバスバ電極に含まれるものとして説明している。仮に、ダミー電極指とバスバ電極を異なるものとして取り扱ったとしても、本発明によって奏される効果は同等であるため、ダミー電極指についての個別の説明や換言は省略する。
【0020】
IDT電極11は、複数の金属層が積層された積層金属膜からなる。この金属としては、例えば、Al,W、Mo、Ta、Hf、Cu、Pt、Ti、Au、Ag、Ni、Zn、Cr、或いは、それらを主成分とする合金が挙げられる。なお、IDT電極は、単一の金属層から構成されてもよい。
【0021】
x方向に隣り合う第1電極指17同士の中心間距離を、IDT電極ピッチpとする。ここで、圧電基板10の厚みは、2p以下となることが好ましい。この場合、圧電基板10は支持基板に積層されていてもよい。このように、圧電基板10の厚みが2p以下であるとき、弾性表面波装置のQ値や結合係数を高め得るという効果を奏する。
【0022】
なお、弾性波装置1は、上記の他に、IDT電極11及び反射器14と、圧電基板10との間に介在する接着層、または圧電基板10の主面10aにおいて、IDT電極11及び反射器14を覆う保護層等を有していてもよい。図1ではIDT電極11に信号の入出力を行うための配線、及び、パッドは図示を省略している。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の略図的断面図である。具体的には、図1に示すIDT電極11をA-A線に沿って切断したときの略的断面図である。ここで、図2(a)、(b)、(c)は同じ構造の弾性波装置を指しているが、各図に分けて、後述する第1の実施形態に係る弾性波装置の構造及び、領域を説明する。
【0024】
以下、第1バスバ電極16、及び、第2電極指19に関する詳細な説明を行うが、当該説明はこの組み合わせに限定されず、第2バスバ電極18、及び、第1電極指17の組み合わせに適用されてもよい。本発明によって奏される効果は何れの組み合わせであっても同等であるため、本明細書および特許請求の範囲の記載においては、第1バスバ電極16、及び、第2電極指19の組み合わせでの説明を行う。
【0025】
図2(a)に示されるように、圧電基板10上に第1櫛歯状電極12が有する第1バスバ電極16と第2櫛歯状電極13が有する複数の第2電極指19とが、ギャップ15を介して対向している。なお、本明細書におけるギャップ15とは、第1バスバ電極16と第2電極指19との間において、IDT電極11の材料が存在しない隙間を指す。なお、第1バスバ電極16、及び、第2電極指19において、圧電基板10側の面を底面31とし、底面31に対向する面を天面30と定める。加えて、天面30と底面31に挟まれた面を側面とし、他の表現をするならば、IDT電極11が有する面のうち、天面と、底面と、に該当しない面を側面と定める。
【0026】
ここで、第1バスバ電極16における第2電極指19側の側面を第1側面33とし、第2電極指19における第1バスバ電極16側の側面を第2側面34とする。その場合、第1側面33と第2側面34はギャップ15を介して対向している。
【0027】
次に、図2(b)に示されるように、第1側面33と圧電基板10とが接する部分を第1点41とし、第2側面34と圧電基板10とが接する部分を第2点42とする。第1点41から第2点42までの間を第1ギャップ100とした場合、第1ギャップ100より短い長さの第2ギャップ101で、第1部分43と第2部分44とが対向している。また、第1ギャップ100で第3部分45と第4部分46とが対向している。ここで、第3部分45及び第4部分46は「第1対向部47」の一例であり、第1部分43及び第2部分44は「第2対向部48」の一例である。なお、本発明におけるギャップの長さとは、弾性波伝播方向(x方向)に直交する方向(y方向)に沿った長さのことを指す。
【0028】
そして、第1部分43は、第1点41よりも天面30側に、第2部分44は第2点42よりも天面30側に位置している。ここで、第1部分43、第3部分45とは、第1側面33の一部であり、第2部分44、第4部分46とは第2側面34の一部であって、略的断面図において、該当する部分が点であっても線であってもよい。この図2では、第1部分43、第2部分44、第3部分45、及び、第4部分46に該当する部分が線で示されている。
【0029】
また、第1側面33と第2側面34とで挟まれる領域を第1領域301と称する。第1領域301について、より正確には、第1バスバ電極16の天面30から、第2電極指19の天面30までを結ぶ第1仮想線200を仮定したとき、第1仮想線200と、圧電基板10と、第1バスバ電極16と、第2電極指19とに挟まれた領域を第1領域301とする。
【0030】
ここで、第1仮想線200について正確に表現するならば、第1バスバ電極16の天面において、対向する第2電極指19に最も近い部分から、第2電極指19の天面において、対向する第1バスバ電極16に最も近い部分までを結んだと仮定した直線を第1仮想線200と称している。IDT電極11の天面30は主として平坦であるため、本願の第1仮想線200は圧電基板10と概ね並行になる。
【0031】
なお、本発明における空洞とは、絶縁体などを含む固体、及び、液体材料で満たされていない部分を指す。より詳しくは、例えば、主として空気などの気体が配置されている状態等である。
【0032】
続いて、図2(c)に示されるように、上述の第1領域301において、圧電基板10と、第1バスバ電極16或いは、第2電極指19とに挟まれる第2領域302に空洞が設けられている。具体的には、第2領域302は、第2対向部48である第1部分43と圧電基板10とに挟まれた領域、及び、第2対向部48である第2部分44と圧電基板10とに挟まれた領域である。
【0033】
なお、ある領域に「空洞が設けられている」といった場合、その領域の全てに空洞が設けられる必要はない。その領域の一部のみに空洞が設けられる場合も「空洞が設けられる」場合に含まれてもよいことを指摘しておく。
【0034】
次に、第1バスバ電極16における第1点41、及び、第2電極指19において第2点42よりも第1ギャップ100側に飛び出している部分を凸部70と称する。つまり、第2対向部48である第1部分43及び第2部分44は、第1対向部47である第3部分45及び第4部分46に対して凸部となっている。より正確には、第1点41を通る圧電基板10に対しての垂線Bを引く。同様にして、第2点42を通る、圧電基板10に対しての垂線Cを引く。第1バスバ電極16、及び、第2電極指19において、この二つの垂線B、及び、垂線Cによって挟まれた領域に存在する部分を凸部70と称する。
【0035】
つまり、第1バスバ電極16の凸部70と圧電基板10とで挟まれる領域及び、第2電極指19の凸部70と圧電基板10とで挟まれる領域の少なくとも一方に空洞が設けられている。
【0036】
すなわち、ギャップ15を挟んで互いに対向する第1バスバ電極16の第1側面33および第2電極指19の第2側面34には、圧電基板10に接する第1点41および第2点42よりも圧電基板10から離れた部分のほうがギャップ15の間隔が狭くなるように、圧電基板10から離れた部分からギャップ15側に突出する凸部70が設けられる。さらに、凸部70と圧電基板10との間には空洞が存在する。
【0037】
ここで、圧電基板10の主面10aから、凸部70の圧電基板側の面までの高さを第1高さ20とする。通常、圧電基板10の主面10aから、第1バスバ電極16由来の凸部70、及び、第2電極指19由来の凸部70の圧電基板側の面までの第1高さ20は、製造方法の観点から、概ね同等の高さで構成される。しかし、第1高さ20が異なる場合には、長さが短いほうを第1高さ20として採用する。
【0038】
以下、図1図3を用いて、弾性表面波素子の非線形性によって発生する電気的な歪波が起因されるメカニズムと、本発明によって歪波を抑制する原理とを示す。
【0039】
図1において、第1櫛歯状電極12が第2櫛歯状電極13よりも電位が高い状態にあるとする。このとき圧電基板10の第1櫛歯状電極12と第2櫛歯状電極13との間の領域には、電界Eが発生している。すなわち、弾性波伝搬方向(x方向)に沿った電界Exと、ギャップ領域では弾性波伝搬方向に直交する方向(y方向)に沿った電界Eyと、が発生する。そして、このような電界Eが発生すると圧電体からなる圧電基板10が有する非線形性によって歪電流が発生する。
【0040】
具体的には、圧電基板に電界が印加されると、圧電基板10の誘電率の2次の非線形性により、その電界に応じた歪電流が流れる、というものである。このメカニズムに則して、実際の弾性表面波素子では、圧電結晶表面に形成されたIDT電極によって圧電結晶の内部に電界が励起され、電界は圧電基板10の主面10aと平行な方向の成分と垂直な方向(深さ方向)成分を持つ。この電界に対し、非等方性の誘電率の非線形性が対応して、それぞれに起因する歪電流が発生する。
【0041】
ここで、電界Exに起因するx方向に沿った歪電流Ixに着目すると、第1の電極指17間を流れる歪電流Ixは、第1電極指17に流れ込む歪電流Ixinと第1電極指17から流れ出る歪電流Ixoutとが、y方向において逆方向であるため、打ち消しあう。このため、歪電流Ixに基づく歪波が弾性波装置1の外部に出力されることは、基本的にはない。同様に、第2電極指19においても、歪電流Ixは打ち消し合うこととなる。従って、IDT電極11のx方向における歪電流Ixは打ち消しあって、弾性波装置1の外部に歪波として出力されることはない。
【0042】
一方、y方向に沿った電界Eyに着目すると、ギャップ15における電界Eyに起因する歪電流Iyは同方向であるため、これらの歪電流Iyは打ち消し合わない。
【0043】
このように、打ち消し合わずに残った歪電流Iyが、ギャップ15における歪波の発生要因の1つになっていると考えられる。
【0044】
一方、図3を用いて、本発明によって歪波を抑制することができる原理を示す。図3図1に示すIDT電極11をA-A線に沿って切断したときの断面図であり、(a)は、従来の弾性波装置の断面図、(b)は本発明に係る弾性波装置の断面図である。
【0045】
図3(a)のように一般的な弾性波装置は、ギャップの長さが底面から天面に向かって概ね、一様の長さを保っている。そのため、侵入深さ(z方向の長さ)が等しい電界Eyがギャップ15の間において発生する。なお、侵入深さとは、任意の電界Eyにおいて、z軸成分の最小値から最大値までの長さを指す。この電界Eyは、圧電基板10内において、電極指に近い圧電基板10の上面側ほど多くの電界が通り得るため、圧電基板10の上面側ほど大きい。
【0046】
一方、図3(b)に示すように、櫛歯状電極の底面31間のギャップの長さ、すなわち第1ギャップ100の長さ、これより短い長さである第2ギャップ101が、第1ギャップ100より櫛歯状電極の天面30側に存在している形態における電界を考える。一般的に、ギャップ間の電界の侵入深さは、おおよそギャップの長さに等しいため、ギャップ間の長さが短い箇所は、ギャップ間の長さが長い箇所に比べて、電界の侵入深さは浅くなる。そして、この構造をもって、第2ギャップ101に生じる電界5の侵入深さを図3(a)より浅くすることが可能で、第2ギャップ101間に生じる電界5を圧電基板10に到達しにくくすることができる。
【0047】
結果として、第1ギャップ100間で発生する電界による歪波の影響はあるものの、第2ギャップ101間で発生する電界による歪波の影響を受けにくくすることが可能であり、圧電基板に到達し得る電界の総量が低減する分、歪波の影響の低減が達成される。
【0048】
これらの特徴により、図3(a)の弾性波装置と比較して、本発明の実施形態の一形態である図3(b)の弾性波装置では、圧電基板10に発生する電界Eyを低減する効果が発揮される。
【0049】
加えて、仮に、第2ギャップ101を介して対向する第1バスバ電極16の側面と第2電極指19の側面とで発生した電界が圧電基板10に到達し得たとしても、第2領域に配置された比較的誘電率の低い空気が入った空洞を通すことで、電界の強さの低減効果を得ることもできる。上述の通り、ギャップに発生する電界Eyが歪波の発生要因の1つであると考えられるため、この電界Eyの強さを弱めることによっても歪波が抑制されることとなる。
【0050】
ここで、ギャップに発生する電界とは、詳細には、圧電基板におけるギャップの直下の領域に電界が発生するという意味である。
【0051】
さらに、第2ギャップ101で定義される長さと第1高さ20で定められる長さとの関係によって、圧電基板にかかる電界の更なる低減を図ることができる。具体的には、第2ギャップ101の長さの値よりも、第1高さ20の距離の値を大きくすることで圧電基板にかかる電界の更なる低減を図ることができる。前述の通り、ギャップ間の電界の侵入深さは、おおよそギャップの長さに等しいため、第2ギャップ101の長さの値よりも第1高さ20の距離の値を大きくすることで、凸部70に発生する電界は、圧電基板に到達しにくくなるという効果を奏する。
(第1の実施形態の変形例)
以下、実施形態1の変形例について説明する。
【0052】
本変形例に係る弾性波装置について、実施の形態1に係る弾性波装置1と同じ構成については、説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0053】
実施形態1の変形例1を、図4(a)に示す。図示する様に、第2ギャップ101を介して対向している第1バスバ電極16の側面と第2電極指19の側面とが必ずしも平行ではなく、傾斜している形状でもよい。この場合であっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
この変形例1においては、圧電基板10からIDT電極11の天面30(第1仮想線200)に向かってギャップの長さが連続的に短くなっておらず、段階的に短くなる形状である。なお、ギャップの長さが、段階的に短くなるとは、第1バスバ電極16及び、第2電極指19のギャップ部に突出する部分が階段のような形状を有し、滑らかに長さが変化しない状態を指す。
【0055】
なお、第1ギャップ100よりも短いギャップが複数存在した場合、最も長さの短い長さのギャップを第2ギャップ101と定める。加えて、第1側面及び、第2側面において、第2ギャップ101を介して対向している第1部分43と第2部分44が第2対向部48に相当する。
【0056】
続いて、実施形態1の変形例2を示した図4(b)の様に、第1バスバ電極16と、第2電極指19とを含むIDT電極11の天面30の全てが圧電基板10と平行である必要はなく、一部が傾斜している形態であってもよい。他の見方をするならば、IDT電極11において、圧電基板10の主面10aからIDT電極11の天面30までの距離が一定である形状に限定されない。ここでも、ギャップが段階的に短くなる形状であり、第2対向部48は、第1側面及び、第2側面が二分されているうちの天面側の側面である第1部分43と第2部分44に等しい。この場合であっても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、変形例2においては、第1側面33における第2対向部48の圧電基板10に最も近い部分45と、第2側面34における第2対向部48の圧電基板10に最も近い部分46との双方が、空洞に露出している。ギャップ間に発生する電界の強度はギャップ間の長さに反比例して強くなるため、第2対向部48由来の電界の強度は、ギャップ間に発生する電界強度の中で高くなる。その上、圧電基板10に近い部分間に発生する電界は、圧電基板10から遠い部分間に発生する電界よりも圧電基板10に到達し易い。そこで、上述の第2対向部48における圧電基板10に最も近い部分を比較的に誘電率の低い空気を有した空洞に露出することで、電界の強さの低減効果をより高めているという効果を奏する。但し、第1側面33及び、第2側面34の第2対向部48における圧電基板10に最も近い部分の双方が空洞に必ずしも露出している必要はなく、少なくとも一方が露出していれば良い。
【0058】
なお、上述の第1側面33及び、第2側面34の第2対向部48における圧電基板10に最も近い部分の双方が露出する空洞について、該空洞が第2領域302に配置された空洞と一致する変形例2のような場合であってもよいし、該空洞が第2領域302に配置された空洞とは異なる場合であってもよい。
【0059】
実施形態1の変形例3を、図4(c)に示す。図示する様に、ギャップの長さが、圧電基板10から天面30(第1仮想線200)に向かって、段階的でなく連続的に短くなる形状でもよい。より具体的には、ギャップを介して対向している第1バスバ電極16の側面と第2電極指19の側面とが傾斜している形状でもあってもよい。なお、変形例3においては、第1点41を除いた第1側面33が第1部分43に、第2点42を除いた第2側面34が第2部分44となる。このような構造であっても第1の実施形態と同様に、ギャップ間の電界の侵入深さが浅くなることで、ギャップ間の電界が圧電基板に到達し辛くなるという効果を奏する。
【0060】
ここで、変形例3において、第1側面33と第1バスバ電極16の天面30とが接する部分と、第2側面34と第2電極指19の天面30とが接する部分との双方が、空洞に露出している。上述したように、圧電基板10に到達し易く、かつ電界強度の強い電界を誘電率の低い空気に通すことで、電界の強さの低減効果をより高めているという効果を奏する。但し、第1側面33と第1バスバ電極16の天面30とが接する部分と、第2側面34と第2電極指19の天面30とが接する部分の双方が空洞に露出している必要はなく、少なくとも一方が露出していれば良く、また、該空洞は第2領域302に配置された空洞と必ずしも一致する必要もない。
【0061】
実施形態1の変形例4として、ギャップの長さが、圧電基板10から天面30に向かう全ての箇所で連続的に短くなる形状ではなく、図4(d)に示すように圧電基板11から天面30に向かう一部の箇所が連続的に短くなる形状でもよい。具体的に、ここでは圧電基板11から天面30に向かう途中の点まで一定のギャップの長さを保ちつつ、その点から天面30に向ってギャップ間の距離が第1ギャップ100よりも連続的に短くなるように円弧状の形状を有している。ただし、ここではギャップの長さが連続的に短くなる形状の一例を示しており、必ずしも図示するような円弧状の形状に限定されるものではない。
【0062】
ここで、変形例4における第1部分43は第1側面33のうち曲線で図示されている部分であり、第2部分44においても、第2側面34のうち曲線で図示されている部分であって、第1ギャップ100よりも短い長さのギャップで対向している。
【0063】
この図4(d)のように、圧電基板11から天面30に向かう箇所の一部で連続的に短くなる形状であっても、ギャップ間の電界が圧電基板11に到達し辛くなるという実施形態1の効果を同様に奏することができる。
【0064】
上記までに記載の実施例では、圧電基板10上に配置された第1バスバ電極16、及び、第2電極指19において、その双方が特徴的な形状を有していたが、これに限定されるものではない。
【0065】
例えば、実施形態1の変形例5を図4(e)に示す。図4(e)に示される弾性波装置のように対向する櫛歯電極のうち、一方の第1バスバ電極16だけが凸部70を有し、他方の第2電極指19が凸部70を有さない形状であってもよい。この場合であっても、第1ギャップ100より短い第2ギャップ101を天面30側に有するため、ギャップ間の電界が圧電基板11に到達し辛くなるという効果を得ることができる。ここで、第1バスバ電極16のみに凸部70を設けた形態を図示したが、第2電極指19のみが凸部70を有している場合であってもよい。
【0066】
変形例5は、圧電基板10からIDT電極11の天面30に向かってギャップの長さが段階的に短くなる形状である。ここで、変形例5における第2対向部48について説明する。まず、第1バスバ電極16の第1側面33においては、2分された側面のうち天面側の側面である第1部分43が第2対向部48となる。他方、第2電極指19の第2側面34においては、第1バスバ電極16の第2対向部48と第2ギャップ101を介して対向する第2部分44が第2対向部48となる。
【0067】
換言するならば、本発明においては、ギャップを介して対向する電極、例えば第1バスバ電極16と第2電極指19とは、第1ギャップ100の中点を通る垂線に対して線対称である必要はなく、線対称でない形状であっても、第1ギャップ100より短い第2ギャップ101を第1バスバ電極16または第2電極指19の天面30側に有する形状であれば、所望の効果を得ることができる。
【0068】
(製造方法)
次に図5、及び、図6を用いて、弾性波装置の製造方法の一例について説明する。図5(a)~図5(d)、及び、図6(e)~図6(g)は、弾性表面波素子の製造プロセス順に並べた断面図であり、図1のA-A線における断面に相当する。製造工程は、図5(a)から図5(d)、及び、図6(e)~図6(g)まで順に進んでいく。なお、各種の層は、プロセスの進行に伴って形状等が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いることがあるものとする。
【0069】
図5(a)に示すように、圧電基板10を用意する。
次に、図5(b)のように、圧電基板10の主面10a上に、フォトリソグラフィー技術やエッチング技術を用いて、IDT電極11、反射器14などを含む電極パターンの一部となる第1の電極膜91を形成する。
【0070】
なお、IDT電極11や反射器14の形成方法は、フォトリソグラフィープロセスに限らず、順に、成膜、レジストパターニング、エッチング、レジスト剥離というエッチングプロセスを用いてもよい。この際、IDT電極11の腐食の抑制のため、薄いパッシベーション膜(SiO2,SiN等)を設けてもよい。
【0071】
続いて、図5(c)に示すように、図5(b)までで生成した第1の電極膜91のギャップ15に、犠牲層92を設ける。なお、犠牲層92の素材は例えば、PIやZnOを用いる。ただし、この材料に限定されるものではない。
【0072】
そして、図5(d)に示すように、犠牲層92よりも弾性波伝播方向に直交する方向(y方向)の長さが短くなるように、レジストパターン93を形成する。
【0073】
その後、図6(e)のように、蒸着やスパッタリングなどの手法を用いてレジストパターン93上、及び、第1の電極膜91に、電極材料(Al)よりなる第2の電極膜94を形成する。
【0074】
次に、図6(f)に示すように、レジストパターン93を溶剤で溶かし、その上に付着した不要な電極膜を除去する。
【0075】
同様にして、犠牲層92をも除去することで、第1の電極膜91に電極材料(Al)を含んだ第2の電極膜94が積層された図6(g)のような形態となる。
(第2の実施形態)
図7は第2の実施形態に係る弾性波装置1の略図的断面図である。
【0076】
以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0077】
図7(a)、(b)、(c)は同じ第2の実施形態を指しており、各図に分けて第2の実施形態に係る弾性波装置の構造を説明することで、発明を明らかにする。
【0078】
まず、図7(a)では、圧電基板10上に第1櫛歯状電極12が有する第1バスバ電極16と第2櫛歯状電極13が有する複数の第2電極指19とが、少なくとも一部においてギャップ15を介して対向している。そして、第1バスバ電極16、及び、第2電極指19において、圧電基板10側の面を底面31とし、底面31に対向する面を天面30と定める。また、天面と前記底面とを結ぶ面を側面とした場合、第1バスバ電極16における第2電極指19側の側面を第1側面33と、第2電極指19における第1バスバ電極16側の側面を第2側面34とする。そのとき、第1側面33と第2側面34はギャップを介して対向している。
【0079】
第1点41と第2点42とのギャップである第1ギャップ100の長さより短い長さの第2ギャップ101を介して、第1バスバ電極16と第2電極指19とが対向している部分(第2対向部48)が、第1ギャップ100より天面30側に設けられている。
【0080】
図7(b)では、第1ギャップ100の長さより短い長さのギャップを介して、第1バスバ電極16と第2電極指19とが対向している部分が、第1ギャップ100より天面30側に、複数設けられている。故に、第1ギャップ100よりも短い長さのギャップ15が複数存在する。その場合、第1バスバ電極16と第2電極指19とが対向しているギャップの長さが最も短い長さのギャップを第2ギャップ101と定義する。また、本形態の様にギャップの長さが、圧電基板10から第1仮想線200に向かって段階的に短くなる形態においては、第2ギャップ101を介して対向している第1バスバ電極16の側面に含まれる第1部分43と第2電極指19の側面に含まれる第2部分44とを第2対向部48とする。図7(b)を参照するならば、第1側面33及び、第2側面34において、3分された側面のうち圧電基板10の厚さ方向における中央の側面が第2対向部48(43,44)に相当する。また、第1側面33と第2側面34とで挟まれる領域の第1領域301がある。
【0081】
次に、図7(c)では、上述した第1領域301において、圧電基板10と、第1バスバ電極16或いは、第2電極指19とに挟まれる第2領域302に空洞が設けられている。
【0082】
実施形態2においても、第1バスバ電極16と第2電極指19との底面31に最も近い部分が対向している第1ギャップ100よりも、ギャップの長さが短い第2ギャップ101を第1ギャップ100よりも天面30側に備えている。このため、上述のようにギャップ間に生じる電界の侵入深さを浅くすることで、圧電基板に到達し得る電界を低減できる。また、第1バスバ電極16の側面と第2電極指19の側面とで発生した電界が圧電基板10に到達し得たとしても、第2領域302に配置された比較的誘電率の低い空気が入った空洞を通すことで、電界の強さの低減効果を得ることもできるという実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0083】
図7に示されるように、圧電基板10には、IDT電極11が設置されている主面10aと対向する主面に中間層50と、支持基板に該当する半導体層60とを積層している。なお、半導体層は例えばシリコンからなる。
【0084】
加えて、圧電基板10と半導体層60との間に、中間層50を設ける形態であってもよい。中間層50を設けることにより、電気機械結合係数を上げることができ、特性の劣化を抑制できるという効果を得ることもできる。
【0085】
上述の第1の実施形態と同様にして定義される凸部70において、中間層50と半導体層60等からなる支持基板との界面から、凸部70の圧電基板10側の面までの高さを第2高さ21とする。ただし、中間層50と半導体層60との界面から、第1バスバ電極16由来の凸部、及び、第2電極指19由来の凸部までの第2高さ21が異なる場合には長さが短いほうを第2高さ21とすることが好ましい。その場合、第2ギャップ101の長さの値よりも第2高さ21の値が大きいとき、半導体層由来の歪波の低減効果がさらに大きくなるという効果を奏する。この効果は、ギャップ間の電界の侵入深さは、おおよそギャップの長さに等しいという性質を利用し、半導体層へ到達しうる電界を低減していることに由来するものである。
【0086】
ここで、実施形態2に係る弾性波装置の製造方法の一例について説明する。基本的な製造プロセスは上述の実施形態1に係る弾性波装置の製法に準ずる。まず、製造工程は図5(a)~図5(d)及び、図6(e)~図6(f)まで順に進んでいく。
【0087】
続いて、図6(f)が完了すると再度、図5(d)と同じ要領で、第2の電極膜94にまたがるように、レジストパターン93を第2の電極膜94及び、犠牲層92上に形成し、その後、第3の電極膜を形成する。
【0088】
次に、図6(f)、図6(g)での工程と同様にレジストパターン93、犠牲層92を順に除去することで、第1電極膜91及び、第2の電極膜94に第3の電極膜が積層された図7のような形態となる。
【0089】
(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態に係る弾性波装置1の略図的断面図である。
【0090】
例えば、図8に示される弾性波装置のように、第1の実施形態と同様の構成に加えて、第1仮想線200と、圧電基板10と、第1バスバ電極16と、第2電極指19とで挟まれた領域300の中に、付加膜80を有する。例えば、付加膜80は、圧電基板10の主面10a上に配置される形態である。
【0091】
付加膜80は、一対の櫛歯状電極と電気的に接続されていない金属層からなる。この場合、ギャップ間に発生する電界の一部が、金属層を介して通るため、付加膜を付与する前の形態と比較して、圧電基板10に到達し得る電界を低減して、歪波を抑制できる。
【0092】
また、付加膜80は、例えば、酸化タンタル、酸化ハフニウム、ジルコニアのうち少なくとも1種を含む、圧電基板10よりも誘電率が低い誘電体である場合でもよい。その場合、ギャップ間に生じる電界は付加膜に集中しやすくなり、付加膜を搭載していない形態に比べて、ギャップ間に発生する電界が圧電基板10に到達し辛くなる。結果として、ギャップ間に生じる電界を低減して、歪波を抑制できる。加えて、付加膜が金属層の場合と比べて、ギャップ間の寄生容量が少なくなるため、付加膜が弾性波装置に及ぼす寄生的効果が少ない。
【0093】
さらに、特許文献1では、IDT電極11と圧電基板10との間に付加膜80が配置されている形態が開示されているが、第3の実施形態においては、IDT電極11と圧電基板10との間に付加膜80が配置されていない。言い換えるなら、本形態では、圧電基板10に直にIDT電極11が設置されている。通常、IDT電極11と圧電基板10との間の領域は、電気特性に影響を及ぼす。その支配的な領域に特許文献1では、付加膜を設置している一方、本形態においては付加膜を設置していないため、特許文献1と比較して、電気機械結合係数を上げることができ、電気特性の劣化を抑制できるという効果を奏する。
【0094】
ここで、実施形態3に係る弾性波装置の製造方法の一例について説明する。基本的な製造プロセスは上述の実施形態1に係る弾性波装置の製法に準ずる。まず、製造工程は図5(a)、図5(b)と進んでいく。
【0095】
次に、図5(b)までで生成した第1の電極膜91のギャップ15に、付加膜80を設ける。なお、付加膜80の素材は例えば、酸化タンタル、酸化ハフニウム、ジルコニアを用いる。
【0096】
続いて、図5(c)に示すように、第1の電極膜91のギャップ15間に、犠牲層92が付加膜80を覆うように設け、図5(d)、図6(e)~図6(g)まで順に進んでいくことで、領域300の中に、付加膜80を有する図8のような形態となる。
【0097】
(その他の変形例など)
本発明に係る弾性波装置は、例えば、一枚の圧電基板上に、複数の弾性波装置が配置された構成であってもよい。
【0098】
また、上記実施の形態及び変形例では、弾性表面波装置を有する弾性波装置を例示したが、上記実施の形態及び変形例における弾性波とは、当該複合基板の表面、もしくは、複数の材料の界面に伝搬する弾性波を含み、IDT電極によって励振される様々な種類の弾性波を指す。弾性波には、例えば、ラブ波、リーキー波、レイリー波、疑似SAW、板波も含まれる。
【0099】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 弾性波装置、2 電極指、3 バスバ電極、5 電界、10 圧電基板、10a 圧電基板の主面、11 IDT電極、12 第1櫛歯状電極、13 第2櫛歯状電極、14a,14b 反射器、15 ギャップ、16 第1バスバ電極、17 第1電極指、18 第2バスバ電極、19 第2電極指、20 第1高さ、21 第2高さ、30 天面、31 底面、33 第1側面、34 第2側面、41 第1点、42 第2点、43 第1部分、44 第2部分、45 第3部分、46 第4部分、47 第1対向部、48 第2対向部、50 中間層、60 半導体層、70 凸部、80 付加膜、91 第1の電極膜、92 犠牲層、93 レジストパターン、94 第2の電極膜、100 第1ギャップ、101 第2ギャップ、200 第1仮想線、301 第1領域、302 第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8