(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置用の、形状記憶材料から形成されたサセプタ発熱体
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240709BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20240709BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/20
H05B6/10 331
H05B6/10 371
(21)【出願番号】P 2022520073
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2020077566
(87)【国際公開番号】W WO2021064124
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ビューラー フレデリック ユリス
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134701(JP,A)
【文献】中国実用新案第204072365(CN,U)
【文献】特表2018-530311(JP,A)
【文献】特表2015-535320(JP,A)
【文献】特表2014-529475(JP,A)
【文献】特表2019-515659(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030353(WO,A1)
【文献】特開2011-256408(JP,A)
【文献】中国実用新案第208510081(CN,U)
【文献】特表2018-504922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0206552(US,A1)
【文献】特表2016-539269(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130128(WO,A1)
【文献】特開2000-116371(JP,A)
【文献】国際公開第2013/079794(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108552599(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105852219(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
A24F 40/20
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置に受容された時にエアロゾル形成基体を加熱するために前記エアロゾル発生装置とともに使用するサセプタ発熱体であって、前記装置が、誘導コイルに交流電流が提供される時に交番磁界を発生するように構成された前記誘導コイルを備え、前記サセプタ発熱体が形状記憶材料から形成されている、サセプタ発熱体。
【請求項2】
前記サセプタ発熱体が、動作温度前後の範囲内で波形形状を回復するように構成されている、請求項1に記載のサセプタ発熱体。
【請求項3】
前記範囲が摂氏180度~摂氏400度である、請求項2に記載のサセプタ発熱体。
【請求項4】
前記形状記憶材料が形状記憶合金を含む、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のサセプタ発熱体。
【請求項5】
前記形状記憶合金が、Ti-Ni-Pd、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Zr、およびCu-Al-Niのうちのいずれかである、請求項4に記載のサセプタ発熱体。
【請求項6】
前
記サセプタ発熱体が、一定の波ピッチを有する波状形状を有する、請求項
2に記載のサセプタ発熱体。
【請求項7】
前記サセプタ発熱体が、二つの副表面によって結合された二つの対向する主表面を有する、請求項1~6のいずれかに記載のサセプタ発熱体。
【請求項8】
前記サセプタ発熱体が長さと、前記長さに対して直角を成す断面とを有し、前記断面が幅および奥行きを有し、また前記サセプタ発熱体の前記長さが前記断面の前記幅よりも大きく、かつ前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きよりも大きい、請求項1~7のいずれかに記載のサセプタ発熱体。
【請求項9】
前記サセプタ発熱体がピンまたはロッドの形態である、請求項1~6のいずれかに記載のサセプタ発熱体。
【請求項10】
口側端と前記口側端から上流にある遠位端とを有するロッドの形態に組み立てられた複数の要素を備えるエアロゾル発生物品であって、誘導コイルに交流電流が提供される時に交番磁界を発生するように構成された前記誘導コイルを備えるエアロゾル発生装置とともに使用され、前記複数の要素が前記ロッドの遠位端にて、またはそれに向かって位置するエアロゾル形成基体を含み、その中でサセプタ発熱体が前記ロッド内に配設されていて、かつ前記エアロゾル形成基体と熱的に接触していて、かつ前記サセプタ発熱体が前記エアロゾル形成基体内に位置し、前記サセプタ発熱体が形状記憶材料から形成されている、エアロゾル発生物品。
【請求項11】
エアロゾル発生装置とともに使用するエアロゾル発生物品であって、前記サセプタ発熱体が前記エアロゾル発生装置の動作温度前後の範囲内で波形形状を回復するように構成されている、請求項10に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記範囲が摂氏180度~摂氏400度である、請求項11に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
前記形状記憶材料が形状記憶合金を含む、請求項10~12のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項14】
形状記憶合金が、Ti-Ni-Pd、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Zr、およびCu-Al-Nのうちのいずれかである、請求項13に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項15】
前
記サセプタ発熱体が、一定の波ピッチを有する波状形状を有する、請求項
11に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項16】
前記サセプタ発熱体が、二つの副表面によって結合された二つの対向する主表面を有する、請求項10~15のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項17】
前記サセプタ発熱体が長さと、前記長さに対して直角を成す断面とを有し、前記断面が幅および奥行きを有し、また前記サセプタ発熱体の前記長さが前記断面の前記幅よりも大きく、かつ前記断面の前記幅が前記断面の前記奥行きよりも大きい、請求項10~16のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項18】
前記サセプタ発熱体がピンまたはロッドの形態である、請求項10~15のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項19】
前記サセプタ発熱体が前記ロッド内で半径方向中央の位置に位置付けられていて、かつ前記ロッドの長軸方向軸に沿って延びる、請求項10~18のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項20】
前記エアロゾル形成基体が、エアロゾル形成材料のシートの集合体を含むロッドの形態である、またはエアロゾル形成材料の撚糸を含むロッドの形態である、請求項10~19のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項21】
前記エアロゾル形成材料が均質化したたばこのシート、または均質化したたばこの撚糸である、請求項20に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項22】
前記エアロゾル形成基体がエアロゾル形成材料のゲルを含むロッドの形態である、請求項10~19のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【請求項23】
交流電流が誘導コイルに提供される時に交番磁界を発生するように構成された前記誘導コイルと、請求項1~9に記載のサセプタ発熱体とを備えるエアロゾル発生装置。
【請求項24】
前記誘導コイルが前記サセプタ発熱体を包囲する、請求項23に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項25】
第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルを備える、請求項23または請求項24に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項26】
前記第一の誘導コイルと前記第二の誘導コイルが異なる直径を有する、請求項25に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項27】
交流電流が誘導コイルに提供される時に交番磁界を発生するように構成された前記誘導コイルと、請求項10~22のいずれかに記載のエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生装置を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項28】
前記エアロゾル発生装置が、前記エアロゾル発生物品を受容するための加熱チャンバーをさらに備える、請求項27に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項29】
エアロゾル発生装置用またはエアロゾル発生物品用のサセプタ発熱体を製造する方法であって、
前記サセプタ発熱体は、誘導コイルに交流電流が提供される時に交番磁界を発生するように構成された前記誘導コイルを備えるエアロゾル発生装置とともに使用され、
形状記憶材料を提供することと、
前記形状記憶材料を予め定義された形状へと形成することであって、前記形成する工程が摂氏150~摂氏300度の温度で実施される、形成することと、
前記形状記憶材料を冷却することと、
前記形状記憶材料を加工して、サセプタ発熱体を得ることと、を含む、方法。
【請求項30】
前記サセプタ
発熱体の前記形状記憶材料が、ワイヤ、ロッド、箔、または細片の形態で提供されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
冷却後、前記形状記憶材料がボビンへと巻かれる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記形状記憶材料が、前記サセプタ発熱体
の意図された動作温度に対応する温度に
て所望の形状を有するサセプタ発熱体へと形成されている、請求項29、請求項30、または請求項31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記形状記憶材料が、摂氏200~摂氏230度の温度にてサセプタ発熱体へと形成されている、請求項30~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記形状記憶材料が、Ti-Ni-Pd、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Zr、およびCu-Al-Niから選択された形状記憶合金を含む、請求項30~33のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置とともに使用する、形状記憶材料から形成されたサセプタ発熱体に関する。本発明は、エアロゾル発生システムと、エアロゾル発生装置と、サセプタ発熱体を含む物品と、サセプタ発熱体を製造するための方法とにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
たばこなどのエアロゾル形成基体を加熱するが燃焼しないエアロゾル発生システムは周知である。こうしたシステムは、吸入可能なエアロゾルを発生するために十分に高い温度までエアロゾル形成基体を加熱する。
【0003】
こうしたシステムは、消費者物品から吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置から成ることが知られている。エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生装置の加熱チャンバーの中にエアロゾル発生物品を挿入するためにロッド形状を有してもよい。発熱体は、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置の加熱チャンバーの中に挿入された後に、エアロゾル形成基体を加熱するために、加熱チャンバーの中に、またはその周りに配設されている。
【0004】
誘導加熱エアロゾル発生システムにおいて、発熱体は誘導コイルおよびサセプタ発熱体から成る。サセプタ発熱体は、透磁性かつ導電性の材料から作製されている。こうしたサセプタ発熱体が交番磁界に曝露されると、熱がサセプタ発熱体内に発生される。加熱機構は主に、サセプタ発熱体における渦電流およびヒステリシス効果の発生に基づいている。サセプタ内で発生したこの熱の少なくとも一部はサセプタから、サセプタに熱的に近接して配設されたエアロゾル形成基体に伝達されてエアロゾルを発生し、かつ望ましい風味を放出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サセプタはエアロゾル発生基体内またはその周りに位置してもよい。サセプタ発熱体の材料は、発熱に大いに影響を与える。誘導加熱エアロゾル発生システムにおいて、サセプタ発熱体の形状も発熱に影響を与える場合がある。従って、一貫したユーザー体験を可能にするために、発熱体の製品寿命全体を通してサセプタ発熱体の形状の完全性を確実にすることが望ましい場合がある。
【0006】
本発明の目的は、エアロゾル発生装置とともに使用するサセプタ発熱体を提供することである。本発明のさらなる目的は、繰り返し使用してもなおその形状を保持するこうしたサセプタ発熱体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的のうちの少なくとも一つは本発明によって、装置内に受容された時にエアロゾル形成基体を加熱するためのエアロゾル発生装置とともに使用するサセプタ発熱体によって達成される。エアロゾル発生装置は、交流電流がコイルに提供された時に、交番磁界を発生するように構成された誘導コイルを備える。サセプタ発熱体は形状記憶材料から形成されている。
【0008】
形状記憶材料は、より低い温度にて変形することができるが、高温に加熱された時にその元の形状に戻る材料である。本発明で使用される形状記憶材料は、室温で変形することができるが、エアロゾル発生装置の通常動作温度に加熱された時に元の形状に戻る材料であってもよい。
【0009】
エアロゾル発生装置の「動作温度」は摂氏180~400度である。この温度は、エアロゾル発生装置のタイプおよび使用されるエアロゾル形成基体に依存する。
【0010】
エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏100~450度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏150~300度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏180~250度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏200~230度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏200~400度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏250~360度の範囲であってもよい。エアロゾル発生システムの動作温度は、摂氏280~330度の範囲であってもよい。
【0011】
サセプタ発熱体の形状記憶材料は、エアロゾル発生装置の動作温度の周りの温度範囲に加熱された時にサセプタ発熱体が波形形状を回復するように構成されてもよい。
【0012】
サセプタ発熱体に適している形状記憶材料は、摂氏100~600度の変態温度を有してもよい。
【0013】
本発明のサセプタ発熱体に適している形状記憶材料は、形状記憶合金であってもよい。適切な形状記憶合金としては、チタン-ニッケル-パラジウム(Ti-Ni-Pd)、ニッケル-チタン-ハフニウム(Ni-Ti-Hf)、ニッケル-チタン-ジルコニウム(Ni-Ti-Zr)、および銅-アルミニウム-ニッケル(Cu-Al-Ni)などの合金材料が挙げられる。これらの金属合金はすべて、摂氏100~530度の範囲の変態温度を有し、また十分に良好な形状記憶効果を有する。
【0014】
加えて、これらの金属合金は、比較的に低い材料コストを有する。その結果、こうした材料は、十分に大量に、かつ妥当なコストで生産するのに適している。
【0015】
本発明のサセプタ発熱体は、任意の所望の元の形状を有してもよい。サセプタ発熱体は、真っ直ぐな針状の設計を有してもよい。サセプタ発熱体はピンの形態に形作られてもよい。サセプタ発熱体はロッドの形態に形作られてもよい。
【0016】
サセプタ発熱体は平坦な箔状の設計を有してもよい。サセプタ発熱体は、二つの副表面によって結合された二つの対向する主表面を備えてもよい。
【0017】
サセプタ発熱体は長さと、長さに対して直角を成す断面とを有してもよく、断面は幅および奥行きを有し、またサセプタ発熱体の長さは断面の幅よりも大きく、かつ断面の幅は断面の奥行きよりも大きい。
【0018】
サセプタ発熱体は、屈曲形状または複数の屈曲形状を有してもよい。サセプタ発熱体は、波形形状を有してもよい。サセプタ発熱体は、波状の形状を有してもよい。サセプタ発熱体は、規則的な正弦波形状を有する波状形状を有してもよい。サセプタ発熱体は、一定のピッチを有する波状形状を有してもよい。正弦波形状のピッチは、最大20ミリメートルの範囲であってもよい。正弦波形状のピッチは、1~15ミリメートルの範囲であってもよい。正弦波形状のピッチは、1~10ミリメートルの範囲であってもよい。正弦波形状のピッチは、1~5ミリメートルの範囲であってもよい。
【0019】
エアロゾル発生装置は、一つ以上の誘導コイルを備えてもよい。交番磁界を発生するために誘導コイルを使用してもよい。誘導コイルは、使用時にサセプタ発熱体を包囲してもよい。二つの誘導コイルが提供されていることが好ましい。
【0020】
二つの誘導コイルが使用される場合、第一の誘導コイルと第二の誘導コイルは、異なる直径を有してもよい。第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルは、らせん状かつ同心であってもよく、また異なる直径を有してもよい。こうした実施形態において、二つのコイルのうちの小さい方は、第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルのうちの大きい方の中に少なくとも部分的に位置付けられてもよい。
【0021】
第一の誘導コイルの巻線は、第二の誘導コイルの巻線から電気的に絶縁されてもよい。
【0022】
第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルは、同じタイプの電線から形成されてもよい。第一の誘導コイルは第一のタイプの電線から形成されてもよく、また第二の誘導コイルは、第一のタイプの電線と異なる第二のタイプの電線から形成されてもよい。例えば、電線の組成物または断面は異なってもよい。このように、第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルのインダクタンスは、全体的なコイルの幾何学的形状が同じである場合でさえも異なってもよい。これは、同じまたは類似のコイルの幾何学的形状を第一の誘導コイルおよび第二の誘導コイルのために使用することを可能にしてもよい。これは、エアロゾル発生装置のよりコンパクトな配設を容易にする場合がある。
【0023】
誘導コイルのための適切な材料としては、銅、アルミニウム、銀、および鋼が挙げられる。誘導コイルは、こうした材料の電線から形成されてもよい。誘導コイルは、銅またはアルミニウムの電線から形成されてもよい。
【0024】
二つの誘導コイルが使用される場合、第一のコイルは第一の電線材料を含んでもよく、また第二のコイルは、第一の電線材料と異なる第二の電線材料を含んでもよい。第一の電線材料および第二の電線材料の電気的特性は異なってもよい。例えば、第一のタイプの電線は、第一の抵抗率を有してもよく、また第二のタイプの電線は、第一の抵抗率と異なる第二の抵抗率を有してもよい。
【0025】
エアロゾル発生装置は磁束集中器を備えてもよい。磁束集中器は、高い透磁率を有する材料から作製されてもよい。磁束集中器は、誘導加熱配設を包囲して配設されてもよい。磁束集中器は、磁力線を磁束集中器の内部に集中させ、それによって誘導コイルによるサセプタ発熱体の加熱効果を増大させる場合がある。
【0026】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品の一部であってもよい。
【0027】
本発明はまた、上述の通りのサセプタ発熱体を備えるエアロゾル発生装置にも関する。
【0028】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。エアロゾル形成基体はエアロゾル発生物品の一部であってもよい。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置であってもよい。
【0029】
エアロゾル発生装置は、片手の指の間に保持するのが快適な携帯型または手持ち式の装置であることが好ましい。装置は実質的に円筒状の形状であってもよく、また70~120ミリメートルの長さを有する。エアロゾル発生装置の最大直径は10~20ミリメートルであることが好ましい。一実施形態において、装置は多角形の断面を有し、また一つの面上に形成された突出したボタンを有する。
【0030】
エアロゾル発生装置の使用時に、サセプタ発熱体は、エアロゾル形成基体のすぐ近くに位置してもよい。
【0031】
本発明はまた、上記の説明によるエアロゾル発生装置と、エアロゾル発生装置内に受容されるように構成された一つ以上のエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムにも関する。動作中、エアロゾル形成基体を含有するエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に包含されてもよい。
【0032】
エアロゾル発生システムは、例えば電気的に作動するまたは電気式のエアロゾル発生装置内の搭載型電力供給源を再充電するための充電ユニットなど、追加的な構成要素を含んでもよい。
【0033】
本発明はまた、上述の通りのエアロゾル発生装置とともに使用されるエアロゾル発生物品にも関する。
【0034】
エアロゾル発生物品は、ロッドの形態で組み立てられた複数の要素を備えてもよい。エアロゾル発生物品は口側端と、口側端から上流にある遠位端とを有してもよい。複数の要素は、ロッドの遠位端に位置する、またはロッドの遠位端に向かって位置するエアロゾル形成基体を含んでもよい。複数の要素は、エアロゾル発生物品のいずれかの端に、または一方の端のみに、一つ以上の中空アセテート管およびフィルタープラグをさらに含んでもよい。
【0035】
エアロゾル発生物品は、ロッド内に配設されていて、かつエアロゾル形成基体と熱的に接触して配設されている、上述の通りのサセプタ発熱体を備えてもよい。サセプタ発熱体はエアロゾル形成基体内に位置してもよい。エアロゾル形成基体内にサセプタ発熱体を位置させることは、サセプタ発熱体が、加熱されるエアロゾル形成基体と直接接触していることを確実にする場合がある。
【0036】
サセプタ発熱体とエアロゾル形成基体の間の直接接触は、エアロゾル形成基体を加熱して、吸入可能なエアロゾルを形成するための効率的な手段を提供する場合がある。こうした構成において、サセプタ発熱体からの熱は、加熱が開始された時にエアロゾル形成基体の少なくとも一部分に、ほぼ瞬時に伝えられる場合がある。これはエアロゾルの急速な発生を容易にする場合がある。さらに、エアロゾルを発生させるために必要とされる全体的な加熱エネルギーは、エアロゾル形成基体がサセプタ発熱体と直接接触しない、かつエアロゾル形成基体の初期加熱が主に対流または放射によって生じる、ヒーター要素を備えるエアロゾル発生システムにおける場合においてよりも低くてもよい。エアロゾル発生装置のサセプタ発熱体がエアロゾル形成基体と直接接触している場合、内部発熱体と直接接触しているエアロゾル形成基体の部分の初期加熱は、主に伝導によってもたらされる。エアロゾル形成基体内にサセプタ発熱体を位置させることによって、発生された熱エネルギーが効率的に使用され、またエアロゾル形成基体に直接伝達されることを確実にする場合がある。
【0037】
サセプタ発熱体はロッド内の半径方向で中央の位置に位置付けられてもよく、またロッドの長軸方向軸に沿って延びてもよい。サセプタ発熱体を中央位置に位置付けることによって、対称的な半径方向の熱分布が達成される場合がある。特に、こうした設計は、エアロゾル発生物品の外周にて予想外のホットスポットを作り出すことを回避するのを支援する場合がある。
【0038】
エアロゾル発生物品内のエアロゾル形成基体は、ロッドの形態で提供されてもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成材料のシートの集合体を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成材料の撚糸を含んでもよい。
【0039】
エアロゾル形成材料は均質化したたばこのシートであってもよい。エアロゾル形成材料は均質化したたばこの撚糸から形成されてもよい。
【0040】
エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。
【0041】
エアロゾル形成基体はニコチンを含んでもよい。エアロゾル形成基体は、たばこを含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料は均質化したたばこシートであってもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ含有エアロゾル形成材料を含んでもよい。例えば、エアロゾル形成材料はニコチン塩およびエアロゾル形成体を含むシートであってもよい。
【0042】
エアロゾル形成基体が固体エアロゾル形成基体である場合、固体エアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎、膨化たばこ、および均質化したたばこのうちの一つ以上を含有する、例えば粉末、顆粒、ペレット、断片、撚糸、細片、またはシートのうちの一つ以上を含んでもよい。
【0043】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、たばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含有してもよく、それらは固体エアロゾル形成基体の加熱に伴い放出される。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこ揮発性風味化合物または非たばこ揮発性風味化合物を含む一つ以上のカプセルを含有してもよく、このようなカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶融してもよい。
【0044】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもよく、またはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、撚糸、細片、またはシートの形態を取ってもよい。固体エアロゾル形成基体は、例えばシート、発泡体、ゲル、またはスラリーの形態で担体の表面上に堆積されてもよい。固体エアロゾル形成基体は担体の表面全体上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に不均一な風味送達を提供するために、あるパターンで堆積されてもよい。
【0045】
本明細書で使用される「均質化したたばこ材料」という用語は、粒子状たばこを凝集することによって形成される材料を意味する。本明細書で使用される「シート」という用語は、その厚さよりも実質的に大きい幅および長さを有する層状要素を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「集合した」という用語は、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して実質的に横断方向で巻き込まれ、折り畳まれ、またはその他の方法で圧縮もしくは収縮されたシートを説明するために使用される。
【0047】
エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料のテクスチャ加工されたシートの集合体を含んでもよい。
【0048】
本明細書で使用される「テクスチャ加工されたシート」という用語は、捲縮、エンボス加工、デボス加工、穿孔、またはその他の方法で変形されたシートを意味する。エアロゾル形成基体は、複数の離隔したへこみ、突出部、穿孔、またはこれらの組み合わせを備える、均質化したたばこ材料のテクスチャ加工されたシートの集合体を含んでもよい。
【0049】
エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料の捲縮したシートの集合体を含んでもよい。
【0050】
均質化したたばこ材料のテクスチャ加工されたシートの使用は有利なことに、均質化したたばこ材料シートを集合してエアロゾル形成基体を形成するのを容易にする場合がある。
【0051】
本明細書で使用される「捲縮したシート」という用語は、複数の実質的に平行な隆起または波形を有するシートを意味する。エアロゾル発生物品が組み立てられた時、実質的に平行な隆起または波形は、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に沿って、またはこれと平行に延びることが好ましい。これは有利なことに、均質化したたばこ材料の捲縮したシートを集合してエアロゾル形成基体を形成するのを容易にする。
【0052】
しかし当然のことながら、エアロゾル発生物品に含めるための均質化したたばこ材料の捲縮したシートは別の方法として、または追加的に、エアロゾル発生物品が組み立てられた時に、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して鋭角または鈍角で配置されている複数の実質的に平行な隆起または波形を有してもよい。
【0053】
エアロゾル形成基体は、紙またはその他のラッパーによって囲まれたエアロゾル形成材料を含むプラグの形態であってもよい。エアロゾル形成基体がプラグの形態である場合、任意のラッパーを含むプラグ全体がエアロゾル形成基体であると考えられる。
【0054】
好ましい一実施形態において、エアロゾル形成基体は、ラッパーによって囲まれた均質化したたばこ材料シートの集合体、またはその他のエアロゾル形成材料を含むプラグを備える。
【0055】
本明細書で使用される「エアロゾル形成体」という用語は、使用時にエアロゾルの形成を容易にし、かつエアロゾル発生物品の使用温度にて熱分解に対して実質的に抵抗性である、任意の適切な周知の化合物または化合物の混合物を説明するために使用される。
【0056】
適切なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、多価アルコール(プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、および30モノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
好ましいエアロゾル形成体は、多価アルコールまたはその混合物(プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、最も好ましくはグリセリンなど)である。
【0058】
エアロゾル形成基体は単一のエアロゾル形成体を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は、二つ以上のエアロゾル形成体の組み合わせを含んでもよい。
【0059】
エアロゾル形成基体は、乾燥重量基準で5%よりも高いエアロゾル形成体含有量を有してもよい。
【0060】
エアロゾル形成基体は、乾燥重量基準でおよそ5%~およそ30%のエアロゾル形成体含有量を有してもよい。
【0061】
エアロゾル形成基体は、乾燥重量基準でおよそ20パーセントのエアロゾル形成体含有量を有してもよい。エアロゾル発生物品で使用する均質化したたばこのシートの集合体を含むエアロゾル形成基体は、当業界で周知の方法によって作製されてもよい。
【0062】
エアロゾル形成基体は、少なくとも5mmの外径を有してもよい。エアロゾル形成基体は、およそ5mm~およそ12mm、例えばおよそ5mm~およそ10mm、またはおよそ6mm~およそ8mmの外径を有してもよい。好ましい一実施形態において、エアロゾル形成基体は7.2mm±10%の外径を有する。
【0063】
エアロゾル形成基体は、およそ5mm~およそ15mm、例えば約8mm~約12mmの長さを有してもよい。一実施形態において、エアロゾル形成基体は、およそ10mmの長さを有してもよい。好ましい一実施形態において、エアロゾル形成基体は、およそ12mmの長さを有してもよい。細長いサセプタは、エアロゾル形成基体とほぼ同じ長さであることが好ましい。
【0064】
エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成材料のゲルを含むロッドの形態で提供されてもよい。ゲルは、たばこ由来のゲルであってもよい。
【0065】
ゲル組成物は、アルカロイド化合物、グリセロール、水素結合架橋ゲル化剤、イオン架橋ゲル化剤、増粘剤を含んでもよい。
【0066】
ゲル組成物は、アルカロイド化合物、グリセロール、水素結合架橋ゲル化剤、イオン架橋ゲル化剤、増粘剤を含んでもよい。
【0067】
「アルカロイド化合物」という用語は、一つ以上の塩基性窒素原子を含有する天然の有機化合物のクラスのうちのいずれか一つを指す。一般的に、アルカロイドは、アミンタイプ構造にある少なくとも一つの窒素原子を含有する。アルカロイド化合物の分子内のこの窒素原子または別の窒素原子は、酸塩基反応における塩基として活性であることができる。大半のアルカロイド化合物は、例えば複素環などの環状系の一部として、その窒素原子のうちの一つ以上を有する。自然界において、アルカロイド化合物は主に植物に見られ、ある特定の科の顕花植物において特に一般的である。しかしながら、一部のアルカロイド化合物は動物種および真菌に見られる。本開示において、「アルカロイド化合物」という用語は、天然由来のアルカロイド化合物と、合成的に製造されたアルカロイド化合物との両方を指す。
【0068】
ゲル組成物は好ましくは、ニコチン、アナタビン、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されたアルカロイド化合物を含む場合がある。
【0069】
ゲル組成物は、約10:1~約2:1の範囲、また約5:1~約3:1の範囲である、エアロゾル形成体またはグリセロールと水の比を含んでもよい。
【0070】
ゲル組成物は、水素結合架橋ゲル化剤およびイオン架橋ゲル化剤であるゲル化剤を含んでもよい。ゲル化剤は、エアロゾル形成体が分散されていてもよい固体媒体を形成してもよい。ゲル組成物は、約0.4重量パーセント~約10重量パーセントの範囲のゲル化剤を含んでもよい。
【0071】
ゲル組成物は、約0.2重量パーセント~約5重量パーセントの範囲の増粘剤を含んでもよい。
【0072】
ゲル組成物は、固体媒体を形成するゲル化剤、固体媒体中に分散したグリセロール、およびグリセロール中に分散したアルカロイド化合物を含んでもよい。組成物は安定なゲル相を形成してもよい。
【0073】
ゲル組成物は、約1.5重量パーセント~約2.5重量パーセントのニコチンと、約70重量パーセント~約75重量パーセントのグリセロールと、約18重量パーセント~約22重量パーセントの水と、それぞれ約0.5重量パーセント~約2重量パーセントの寒天、キサンタンガム、低アシルジェランの各々と、カルシウムイオンとを含んでもよい。キサンタンガム、寒天、および低アシルジェランの各々は、重量基準で実質的に等しい量でゲル組成物中に存在してもよい。
【0074】
有利なことにゲルは室温で固体である。この文脈において「固体」とは、ゲルが安定したサイズおよび形状を有し、かつ流動しないことを意味する。この文脈において室温は摂氏25度を意味する。ゲルは、定常状態において流動性を呈さない実質的に希釈された架橋系として定義されてもよい。重量基準でゲルはほとんど液体であってもよく、それにもかかわらずそれらは液体内の三次元架橋ネットワークに起因して固体のように挙動する。流体内の架橋が、ゲルにその構造(硬度)を与える。このようにして、ゲルは、液体粒子が固体媒体中に分散された固体内の液体の分子の分散であってもよい。
【0075】
ゲル組成物は、所望の粘度を与えるために、1,000,000~約1パスカル毎秒、好ましくは100,000~10パスカル毎秒、好ましくは10,000~1,000パスカル毎秒、または1,000~100パスカル毎秒、または500~200パスカル毎秒の粘度を有してもよい。ゲル組成物の粘度は、Anton Paar MCR 302レオメータを使用して、摂氏25度にて毎秒1のせん断速度で、P-PTD200+H-PTD200測定セルを有するパラレルプレートPP25を使用して、試料の粘度を取ることによって測定することができる。
【0076】
ゲル組成物の質量は、様々な環境的貯蔵条件に曝露された時、約20パーセントを超えて変化しない場合があり、または約15パーセントを超えて変化しない場合があり、または約10パーセントを超えて変化しない場合がある。組成物は、様々な環境的条件に曝露された時、約10パーセントを超えて変化しない、または約5パーセントを超えて変化しない、または約1パーセントを超えて変化しない、曝露された表面積を有する外部形状を有する場合がある。
【0077】
有利なことに、ゲル組成物は、貯蔵の際に、または製造から消費者への輸送の際に、予測可能な組成物形態を提供する。アルカロイド化合物を含むゲル組成物は、その形状を実質的に維持する。
【0078】
サセプタ発熱体がエアロゾル発生物品内に備えられている時、エアロゾル発生装置は追加的なサセプタ発熱体を備えなくてもよい。こうした実施形態において、装置は、交流電流がコイルに提供された時に、交番磁界を発生するように構成された誘導コイルを備える。使用時に、エアロゾル発生物品がエアロゾル発生装置の中に挿入されている時、装置の誘導コイルによって発生された磁界は、エアロゾル発生物品内に備えられたサセプタ発熱体内に熱を発生するために使用される。
【0079】
本発明は、エアロゾル発生装置とともに使用する、またはエアロゾル発生物品とともに使用するサセプタ発熱体を製造する方法にさらに関する。方法は、形状記憶材料を提供する工程と、形状記憶材料を摂氏150~300度の温度にて予め定義された形状へと形成する工程と、形状記憶材料を冷却する工程と、形状記憶材料を加工してサセプタ発熱体を得る工程とを含む。
【0080】
方法において、形状記憶材料は、その変態温度に、またはその変態温度を上回って加熱される。次いで形状記憶材料は、その所望の形状、すなわち加熱された時に材料が記憶することになる形状へと形成される。成形後、材料は水中で急冷することによって、または空気で冷却することによって、室温まで急速に冷却されてもよい。
【0081】
冷却速度は、形状記憶材料の特性に依存してもよい。冷却速度は、1分あたり摂氏1~300度の範囲であってもよい。冷却速度は、1分あたり摂氏10~200度の範囲であってもよい。冷却速度は、1分あたり摂氏20~100度の範囲であってもよい。
【0082】
次いで形状記憶材料は、ボビンへと巻かれ、その後の使用のために保管されてもよい。ボビン作製およびロッド作製中に、形状記憶材料の形態は変化する場合がある。例えば材料は、ボビンへと巻かれる間に延伸されてもよい。こうした形状の変化は通常、従来の材料から作製された発熱体またはサセプタ発熱体において不可逆的である。しかしながら、形状記憶材料から作製されたサセプタ発熱体は、サセプタ発熱体がその動作温度まで加熱された時に、その元の形状を回復することになる。このようにして、サセプタ発熱体は、誘導要素によって発生された変化する磁界の最適な利用のための正しいインピーダンスおよび幾何学的形状を有することになる。
【0083】
サセプタ発熱体の形状記憶材料には、任意の所望の予め定義された形状が提供されてもよい。形状記憶材料は、ワイヤまたはロッドの形態で提供されてもよい。形状記憶材料は、細片または箔の形態で提供されてもよい。形状記憶材料の形態は、加熱されるエアロゾル形成基体の形状に適合されてもよい。
【0084】
形状記憶材料がその所望の形状へと形成される温度は、発熱体の意図された動作温度に対応してもよい。このようにして、エアロゾル発生装置の使用に伴いサセプタ発熱体がその意図される形状を回復することを確実にする。
【0085】
形状記憶材料がその所望の形状へと形成される温度は、摂氏150~300度の範囲であってもよい。形状記憶材料がその所望の形状へと形成される温度は、摂氏200~230度の範囲であってもよい。
【0086】
エアロゾル発生装置で通常使用される温度範囲内にある変態温度を有する複数の形状記憶材料がある。本発明のサセプタ発熱体を製造するための適切な形状記憶材料としては、チタン-ニッケル-パラジウム(Ti-Ni-Pd)、ニッケル-チタン-ハフニウム(Ni-Ti-Hf)、ニッケル-チタン-ジルコニウム(Ni-Ti-Zr)、および銅-アルミニウム-ニッケル(Cu-Al-Ni)などの合金材料が挙げられる。これらの金属合金はすべて、摂氏100~530度の範囲の変態温度を有する。それ故に、これらの材料は、十分に良好な形状記憶効果を有し、また同時に比較的に低い材料コストを有する。
【0087】
一実施形態に関して説明される特徴は、本発明の他の実施形態にも等しく適用されてもよい。
【0088】
例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】
図1は、誘導発熱体を有するエアロゾル発生装置を示す。
【
図2】
図2は、本発明の波形サセプタ発熱体を示す。
【
図3】
図3は、波形サセプタ発熱体を含むエアロゾル発生物品を示す。
【
図4】
図4は、本発明のサセプタ発熱体を形成するプロセス工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1Aおよび
図1Bは、従来の誘導発熱体10を有するエアロゾル発生装置16を示す。誘導発熱体10は、誘導コイル14内に配設されている細長いサセプタ発熱体12を備える。サセプタ発熱体12は、テーパー付き先端を有する円筒状要素である。サセプタ発熱体12および誘導コイル14は、誘導発熱体10の長軸方向長さに沿って一定の直径を有する。
【0091】
図1Aに図示の通り、エアロゾル発生装置16はハウジング18をさらに備える。誘導コイル14はハウジング18内に配設されている。ハウジング18はまた、消耗品を挿入することができる近位端にてチャンバー20を備える。チャンバー20において、従来の発熱体10のサセプタ発熱体12は、サセプタ発熱体12が消耗品を貫通することができるように配設されている。エアロゾル発生装置16のハウジング18において、電池22が配設されているだけでなく、電池22から従来の誘導発熱体10への電力の供給を制御するためのコントローラ24も配設されている。
【0092】
図2は、本発明による様々なサセプタ発熱体12を示す。
図2の上の図は、形状記憶合金のロッドから形成されたサセプタ発熱体12を示す。ロッドはチタン-ニッケル-パラジウム合金から作製されていて、ロッドには波形が提供されている。サセプタ発熱体12は、通常の正弦波パターンを有する波状形状を有する。サセプタ発熱体12の正弦波形状のピッチpは、約5ミリメートルである。
図2の下の図において、さらなるサセプタ発熱体12が図示されている。このサセプタ発熱体12は、同じ材料から形成されているが、4ミリメートルの幅を有する箔から形成されている。エアロゾル発生装置のタイプに応じて、これらのサセプタ発熱体12のいずれかを使用してもよい。
【0093】
図3は、サセプタ発熱体12を備えるエアロゾル発生物品30を示す。エアロゾル発生物品30は、ロッドの形態で組み立てられた複数の要素を備える。エアロゾル発生物品30は、遠位端32と、遠位端32から下流にある口側端34とを有する。
【0094】
遠位端32から口側端34に、エアロゾル発生物品30はフロントプラグ36、エアロゾル形成部分38、第一の中空アセテート管42、第二の中空アセテート管44、およびマウスピースフィルター46を備える。
【0095】
エアロゾル形成部分38は、エアロゾル形成基体40と熱的に接触して配設されているサセプタ発熱体12を備える。エアロゾル形成基体40は、均質化したたばこ材料のシートの集合体を備えるプラグの形態で提供されている。たばこ材料は紙ラッパーによって囲まれている。エアロゾル発生物品の同じ設計は、上述の通りのゲルの形態で提供されたエアロゾル形成基体とともに使用されてもよい。
【0096】
サセプタ発熱体12は、エアロゾル形成部分38のエアロゾル形成基体40内で中央に位置していて、これによってサセプタ発熱体12からの任意の熱は、包囲するエアロゾル形成基体40にほぼ瞬時に伝わる。
【0097】
エアロゾル発生物品30は、交流電流がコイルに提供される時に交番磁界を発生するように構成された誘導コイルを備えるエアロゾル発生装置(図示せず)の中に挿入されている。装置の誘導コイルによって発生された磁界は、エアロゾル発生物品30内に備えられたサセプタ発熱体12内で熱を発生するために使用される。
【0098】
装置の使用時に、サセプタ発熱体12内で発生された熱は、エアロゾル形成基体40内の揮発性構成成分を気化するために使用される。エアロゾル発生物品30を通る気流は、エアロゾル形成部分38から下流へマウスピースフィルター46に向かって、吸入可能なエアロゾルが形成される凝縮チャンバー40の中に、発生されたベイパーを運ぶ。ベイパーは、第一の細い中空アセテート管42によって画定された内部体積において少なくとも部分的に凝縮して、エアロゾルを形成する。細い中空のアセテート管42の下流端にて、通気孔(図示せず)が提供されてもよい。中空アセテート管42、44の寸法および設計は、所望の温度範囲および液滴サイズを達成するためのエアロゾルの形成を支援する。
【0099】
図4において、本発明によるサセプタ発熱体を形成するための製造プロセスのプロセス工程が示されている。
【0100】
第一の工程において、形状記憶合金のロッド形状または箔形状の原材料が提供されている。次いで、この形状記憶合金は、形状記憶合金の変態温度以上の温度に加熱される。形状記憶合金がこの高温で保持されている間に、形状記憶合金は所望の形状へと形成され、この形状は、エアロゾル発生装置内での使用に伴いサセプタ発熱体が回復する形状である。形状記憶合金を所望の形状へと形成した後、形状記憶合金は冷却されることが可能である。形状記憶合金はその後、保管および後での使用のために、ボビンへと巻かれる。個別のサセプタ発熱体を形成するために、形状記憶材料は、ボビンから巻き出され、サセプタ発熱体が使用されるエアロゾル発生システムによって要求される通りの所望の長さを有する個別のサセプタ発熱体へと加工される。次いでサセプタ発熱体は、エアロゾル発生装置の加熱チャンバー内に含まれてもよく、またはエアロゾル発生システムのエアロゾル発生物品内に組み込まれてもよい。