(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】コーティング組成物を含有する多層溶解性固体物品及びそれを作製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20240709BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240709BHJP
C08J 9/42 20060101ALI20240709BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20240709BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240709BHJP
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A61K 8/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/18 Z
C08J9/42 CEX
C11D17/04
C11D3/37
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/14
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A61K8/34
A61K8/81
A61Q5/02
A61K8/02
(21)【出願番号】P 2022523579
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2019113065
(87)【国際公開番号】W WO2021077367
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-04-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和 1年10月 1日 大韓民国全土で販売 令和 1年10月 1日 https://www.coupang.com/vp/products/303787233?itemId=955714172&vendorItemId=5353121349&q=%EB%8B%A4%EC%9A%B0%EB%8B%88+%EC%84%B8%EC%A0%9C&itemsCount=36&searchId=35eb02b9098841ebbeab5b389c27ecbb&rank=1&isAddedCart= 及び https://www.coupang.com/vp/products/303787234?itemId=955714212&vendorItemId=5353121441&sourceType=srp_product_ads&q=%EB%8B%A4%EC%9A%B0%EB%8B%88+%EC%84%B8%EC%A0%9C&itemsCount=36&searchId=35eb02b9098841ebbeab5b389c27ecbb&rank=4&isAddedCart= を通じて発表 令和 1年10月 1日 http://www.11st.co.kr/products/2675205084?trTypeCd=PW24&trCtgrNo=585021 及び http://www.11st.co.kr/products/2567911220?trTypeCd=PW24&trCtgrNo=585021 を通じて発表 令和 1年10月 1日 http://item.gmarket.co.kr/Item?goodscode=1677141599 及び http://item.gmarket.co.kr/Item?goodscode=1677156318 を通じて発表 令和 1年10月 1日 https://front.wemakeprice.com/deal/602525172?search_keyword=%EB%8B%A4%EC%9A%B0%EB%8B%88%20%EC%84%B8%EC%A0%9C&_service=5&_no=1 を通じて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】タン、ホンシン
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、カール・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジァン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジァオキ
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ロバート・ウェイン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ツァイイン
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522166(JP,A)
【文献】特表2011-510065(JP,A)
【文献】特開2002-201500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0027328(US,A1)
【文献】特表2014-510190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/24
B32B 3/26
B32B 27/18
C11D 17/04
C11D 3/37
C11D 1/22
C11D 1/29
C11D 1/14
C11D 1/72
C11D 3/43
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C11D 3/12
C11D 3/10
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C11D 3/395
C11D 3/386
C08J 9/42
A61K 8/34
A61K 8/81
A61Q 5/02
A61K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性固体物品を調製するためのプロセスであって、
1)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シート及びコーティング組成物を提供する工程であって、前記2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、
前記可撓性多孔質溶解性シートは、(i)前記水溶性ポリマー及び前記第1の界面活性剤を含む湿潤プレミックスを形成すること、(ii)前記湿潤プレミックスに通気すること、(iii)通気された湿潤プレミックスをシートに形成すること、及び(iv)反重力加熱方向の下で前記シートを乾燥させることによって調製され、前記コーティング組成物が、第2の界面活性剤を含む、工程と、
2)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に前記コーティング組成物を塗布する工程と、
3)前記2つ以上のシートを積層体に配置して、前記コーティング組成物が前記積層体のいずれの外面上にも存在しないように前記溶解性固体物品を形成する工程と、を含み、
前記溶解性固体物品が、洗濯ケア製品及びヘアケア製品からなる群から選択される、プロセス。
【請求項2】
前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して5重量%~50重量%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して30重量%~90重量%の前記第1の界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、約20℃及び1s
-1で測定されるとき、1cps~25,000cpsの粘度を有する液体である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記コーティング組成物が、溶媒を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記溶媒が、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、レオロジー変性剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、香料を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記コーティング組成物中の前記第2の界面活性剤の前記香料に対する重量比が、1:50~50:1である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記コーティング組成物が、
1)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~95重量%の前記第2の界面活性剤、又は
2)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%の前記溶媒、又は
3)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%の前記レオロジー変性剤、又は
4)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%の前記香料
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、シリコーン、軟化剤、漂白剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、光沢剤、色相染料、ポリマー、パーソナルケア活性物質及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して30重量%未満の水を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、前記溶解性固体物品の総重量に対して0.1重量%~90重量%の量で塗布される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記コーティング組成物が、前記積層体内の中間の2つのシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記コーティング組成物が、最も外側の2つのシートを除く前記積層体内の任意の2つの隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記コーティング組成物が、それぞれの前記シートの塗布面の各々の中央領域に塗布され、前記中央領域が、最大寸法Dの少なくとも5%の距離だけそれぞれの前記シートの周辺から離間されている領域として定義される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記コーティング組成物が、それぞれの前記シートの塗布面全体に塗布され、塗布面積が、前記塗布面の総面積の少なくとも90%を占める、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記溶解性固体物品が、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、毛髪シャンプー及び非シャンプー毛髪処理製品からなる群から選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記溶解性固体物品が、洗濯洗剤製品及び布地柔軟製品からなる群から選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、前記2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、
前記可撓性多孔質溶解性シートは、第1の表面及び第2の表面を含み、更に、前記第1の表面に隣接する第1の領域、前記第2の表面に隣接する第2の領域及び第1の領域と第2の領域の間の第3の領域を含み、第1の領域、第2の領域及び第3の領域は全て同じ厚さを有し、前記可撓性多孔質溶解性シートの第1の領域、第2の領域及び第3の領域は、第1の領域における平均孔径に対する第2の領域における平均孔径の比率0.6~1.5により特徴付けられ、
第2の界面活性剤を含むコーティング組成物が、前記溶解性固体物品のいずれの外面上にも前記コーティング組成物が存在しないことを条件として、前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、
前記溶解性固体物品が、洗濯ケア製品及びヘアケア製品からなる群から選択される、溶解性固体物品。
【請求項22】
前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して5重量%~50重量%の前記水溶性ポリマーを含む、請求項21に記載の溶解性固体物品。
【請求項23】
前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して30重量%~90重量%の前記第1の界面活性剤を含む、請求項21又は22に記載の溶解性固体物品。
【請求項24】
前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して0.00001重量%~1重量%の苦味剤を更に含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項25】
前記第2の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項21~24のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項26】
前記コーティング組成物が、レオロジー変性剤を更に含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項27】
前記コーティング組成物が、香料を更に含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項28】
前記第2の界面活性剤の前記香料に対する重量比が、1:50~50:1である、請求項27に記載の溶解性固体物品。
【請求項29】
前記コーティング組成物が、
1)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~95重量%の前記第2の界面活性剤、又は
2)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%の前記レオロジー変性剤、又は
3)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%の前記香料
を含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項30】
前記コーティング組成物が、シリコーン、軟化剤、漂白剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、光沢剤、色相染料、ポリマー、パーソナルケア活性物質及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項31】
前記物品が、前記物品の総重量に対して0.1重量%~90重量%の前記コーティング組成物を含む、請求項21~30のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項32】
前記2つ以上のシートの各々が、
・ 85%~100%の連続気泡含有パーセント、又は
・ 150μm~1000μmの全体平均孔径、又は
・ 5μm~200μmの平均気泡壁厚さ、又は
・ 前記固体シート物品の0.5重量%~25重量%の最終水分含有量、又は
・ 0.6mm~3.5mmの厚さ、又は
・ 50グラム/m
2~500グラム/m
2の坪量、又は
・ 0.05グラム/cm
3~0.5グラム/cm
3の密度、又は
・ 0.03m
2/g~0.25m
2/gの比表面積
によって特徴付けられる、請求項21~31のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項33】
前記溶解性固体物品が、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、毛髪シャンプー及び非シャンプー毛髪処理製品からなる群から選択される、請求項21~32のいずれか一項に記載の溶解性固体物品
【請求項34】
前記溶解性固体物品が、洗濯洗剤製品及び布地柔軟製品からなる群から選択される、請求項33に記載の溶解性固体物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物を含有する多層溶解性固体物品及びそれを作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマー担体又はマトリックス中に界面活性剤及び/又は他の活性成分を含む可撓性溶解性シートは周知である。このようなシートは、水中での溶解時に界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリ内の従来の顆粒又は液体形態と比較して、そのようなシートは、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、そのようなシートは、より可撓性であり、脆性がより低く、消費者にとってより良好な感覚的魅力を有する。
【0003】
所望の製品機能を達成するのに十分な量の界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するために、そのような可撓性及び溶解性シートの多数の層を使用することが望ましく、そのような多数の層を一体型溶解性固体物品に組み立てることが更に望ましく、これはその後、一体型の最終製品として販売され得る。しかしながら、これらの可撓性及び溶解性シートの多数の層を単一の物品に組み立てることを試みる場合、単一層構造体と比較して、水中での溶解速度が著しく遅いことを含む、様々な課題が発生し得る。場合によっては、多層シートはゲル化の問題に遭遇し得る。特に、水溶性ポリマー(例えば、PVA)及び界面活性剤の固体物品中での溶解により、多層シートを水と接触させるとゲル化が起こる。ゲル化の存在は、水が多層シートに浸透するのを防ぎ、溶解速度が低下する可能性がある。このような多層構造体は、特定の厳密な洗浄条件下(例えば、冷水又は極めて硬水又は低水洗浄条件)では完全に溶解せず、また未溶解の残留物が残る場合があり、これは、消費者にとっての大きな「悩みの種」となり得る。
【0004】
溶解性を改善するために、いくつかの研究では、約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(open-celled foam、OCF)構造を有する多孔質シートが開発されている。そのようなOCF構造は、得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、消費者にとっては、ゲル化の減少及び/又は不溶残留物を残す可能性の低下を含む、より一層更に改善された溶解プロファイルを得ることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改善された溶解速度を有する多層構造体に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多層可撓性溶解性多孔質シートの隣接する層の一方又は両方の接触面に塗布されるコーティング組成物を用いて、多層構造体の溶解プロファイルを更に改善する。本発明以前は、多層可撓性溶解性多孔質シートの層間への追加の成分(例えば、コーティング組成物)の塗布は、多孔質シートを通る水の流れに悪影響を及ぼす(例えば、多孔質構造を閉塞する)可能性が高く、そのため、当該シートの全体的な溶解プロファイルに悪影響を及ぼし得ると考えられた。驚くべきことに、本発明の発明者らは、コーティング組成物を含有する多層溶解性固体物品が、著しく改善された溶解プロファイルを提供することを予期せずして発見した。
【0007】
本発明は、一態様では、溶解性固体物品を調製するためのプロセスであって、1)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シート及びコーティング組成物を提供する工程であって、2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、コーティング組成物が、第2の界面活性剤を含む、工程と、2)2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上にコーティング組成物を塗布する工程と、3)2つ以上のシートを積層体に配置して、コーティング組成物が積層体のいずれの外面上にも存在しないように溶解性固体物品を形成する工程と、を含む、プロセスに関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、第2の界面活性剤を含むコーティング組成物が、溶解性固体物品のいずれの外面上にもコーティング組成物が存在しないことを条件として、2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在する、溶解性固体物品に関する。更なる態様では、本発明は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、当該2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント、100μm~2000μmの全体平均孔径及び0.05グラム/cm3~0.17グラム/cm3の密度によって特徴付けられ、第2の界面活性剤を含むコーティング組成物が、溶解性固体物品のいずれの外面上にも当該コーティング組成物が存在しないことを条件として、当該2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在する、溶解性固体物品に関する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、当該2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、第2の界面活性剤を含むコーティング組成物が、溶解性固体物品のいずれの外面上にも当該コーティング組成物が存在しないことを条件として、当該2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在し、当該溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、溶解性固体物品に関する。
【0010】
好ましくは、コーティング組成物は、約20℃及び1s-1で測定されるとき、約1cps~約25,000cps、好ましくは約2cps~約10,000cps、より好ましくは約3cps~約5,000cps、最も好ましくは約1,000cps~約5,000cpsの粘度を有する液体であり得る。コーティング組成物の好ましい粘度は、溶解プロファイルと漏れとの間の更に良好なバランスを提供し得る。
【0011】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、内部に塗布されたコーティング組成物を含有する溶解性固体物品が、コーティング組成物を含まない溶解性固体物品と比較して、有意に改善された溶解プロファイルを示すことである。
【0012】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、コーティング組成物に含有される活性物質の担体として機能し得ることである。より有利には、2つ以上の非相溶性成分が、それぞれ、シート及びコーティング組成物中に存在することが達成され得る。本開示による溶解性固体物品は、コーティング組成物を含まない溶解性固体物品と比較してはるかに高い可撓性を有し得る。
【0013】
本開示による溶解性固体物品の一利点は、コーティング組成物が比較的高い密度を有するため、コーティング組成物が同じ量の界面活性剤を有するよりコンパクトな生成物を可能にし得ることである。
【0014】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための対流式加熱/乾燥構成を示す。
【
図2】バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するためのマイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。
【
図3】連続プロセスにおける可撓性多孔質溶解性固体シート物品を作製するための衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、バッチプロセスにおける可撓性多孔質溶解性シートを作製するための底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。
【
図5】本発明の別の実施形態による、連続プロセスにおける別の可撓性多孔質溶解性シートを作製するための回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。
【
図6A】回転ドラム式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、布地ケア活性物質を含有する可撓性多孔質溶解性シートの上面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopic、SEM)画像を示す。
【
図6B】
図6Aに示されるシートと同じ布地ケア活性物質を含有するが、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、代替的な可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図7A】ヘアケア活性物質を含有し、底部伝導式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図7B】
図7Aに示されるシートと同じヘアケア活性物質を含有するが、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を採用するプロセスによって作製された、代替的な可撓性多孔質溶解性シートの上面のSEM画像を示す。
【
図8A】本開示による複数の可撓性多孔質シートを有し、コーティング組成物が中間の2つの隣接するシートの接触面上の中央領域に塗布される、溶解性固体物品の実施形態の例示的な図を示す。
【
図8B】本開示による複数の可撓性多孔質シートを有し、コーティング組成物が、その各々が最外部シートではない任意の2つの隣接するシートの接触面全体に塗布される、溶解性固体物品の別の実施形態の例示的な図を示す。
【
図9A】コーティング組成物を含有する固体物品及びコーティング組成物を含まない固体物品に対するゲル化試験の結果を示す。剪断弾性率G’ピーク値及び剪断弾性率G’最終値を示す。
【
図9B】コーティング組成物を含有する固体物品及びコーティング組成物を含まない固体物品に対するゲル化試験の結果を示す。総面積を示す。
【
図10】固体シートのみ(
図10A)及びコーティング組成物を含有する固体物品(
図10B)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.定義
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90°で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0017】
本明細書で使用するとき、「溶解性」という用語は、20℃で、かつ大気圧下で、全く撹拌せずに8時間以内に、十分な量の脱イオン水中に完全に又は実質的に溶解して、不溶残留物の残留が5重量%未満である、物品の能力を指す。
【0018】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、物品が制限されずかつ外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(即ち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、「シート」という用語は、三次元形状、即ち、厚さ、長さ、及び幅を有する非繊維状構造体を指すが、一方で、長さ対厚さのアスペクト比及び幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約5:1であり、長さ対幅の比は、少なくとも約1:1である。好ましくは、この長さ対厚さのアスペクト比及びこの幅対厚さのアスペクト比は、両方とも、少なくとも約10:1、より好ましくは少なくとも約15:1、最も好ましくは少なくとも約20:1であり、またこの長さ対幅のアスペクト比は、好ましくは少なくとも約1.2:1、より好ましくは少なくとも約1.5:1、最も好ましくは少なくとも約1.618:1である。
【0020】
本明細書で使用するとき、隣接するシートの「接触面」という用語は、隣接するシートが積層体に配置されたときに互いに接触し、それぞれが2つの隣接するシートに由来する、2つの面を指す。例えば、接触面は、2つの隣接するシートが垂直に積層体として配置されている場合の上部シートの下面及び下部シートの上面であり得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、「底面」という用語は、通気された湿潤プレミックスのシートが乾燥工程中に配置される支持面に直に接触する、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートの表面を指し、一方、「上面」という用語は、底面とは反対側の当該シートの表面を指す。更に、このような固体シートは、その厚さに沿って、その上面に隣接する上部領域、その底面に隣接する底部領域、及び上部領域と底部領域との間に位置する中間領域を含む3つの領域に分割することができる。上部領域、中間領域、及び底部領域は、厚さが等しく、すなわち、各々が、シートの全厚の約1/3の厚さを有する。
【0022】
本明細書で使用するとき、「最外部シート」という用語は、本発明の多層溶解性固体物品において1つのシートのみに隣接するシートを指す。
【0023】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、気体、典型的には気体(空気など)を含有し、乾燥プロセス中に発泡構造が崩壊せずに、それにより物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験3によって測定される連続気泡含有パーセントによって説明され得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」とは、目に見える固体を残さずに、又は目に見える分離相を形成せずに、水に完全に溶解する又は分散する、サンプル材料の能力であって、20℃で、かつ大気圧下で、十分な撹拌を伴って、少なくとも約25グラム、好ましくは少なくとも約50グラム、より好ましくは少なくとも約100グラム、最も好ましくは少なくとも約200グラムのそのような材料を1リットル(1L)の脱イオン水中に入れた場合における、能力を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、「通気させる」、「通気させること」、又は「通気」という用語は、機械的及び/又は化学的手段によって液体又はペースト状組成物に気体を導入するプロセスを指す。
【0026】
本明細書で使用するとき、「加熱方向」という用語は、熱源が物品に熱エネルギーを印加する方向であって、その結果、そのような物品の一方の側から他方の側へと減少する、そのような物品における温度勾配をもたらす方向を指す。例えば、物品の一方の側に位置する熱源が、物品に熱エネルギーを印加して、一方の側から反対側へと減少する温度勾配を発生させる場合、加熱方向は、その後、一方の側から反対側に延在するとみなされる。このような物品の両側又はこのような物品の異なる部分が、そのような物品にわたって観察可能な温度勾配を伴わずに同時に加熱され、その後、加熱は非方向的な様式で行われ、加熱方向は存在しない。
【0027】
本明細書で使用するとき、「実質的に反対側」又は「実質的にオフセットしている」という用語は、それらの間に90°以上のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、「実質的に整列された」又は「実質的な整列」という用語は、それらの間に90°未満のオフセット角度を有する2つの方向又は2本の線を指す。
【0029】
本明細書で使用するとき、「一次熱源」という用語は、物体によって吸収される総熱エネルギー(例えば、本発明による通気された湿潤プレミックスのシート)の50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは80%超を提供する熱源を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「制御された表面温度」という用語は、比較的安定した、すなわち、+/-20%未満の変動、好ましくは+/-10%未満の変動、より好ましくは+/-5%未満の変動を有する表面温度を指す。
【0031】
「本質的に含まない(essentially free of)」又は「本質的に含まない(essentially free from)」)という用語は、示される物質が極めて少量であり、組成物又は製品に意図的に添加されたものでなく、又は好ましくは、そのような組成物又は製品中に分析によって検出可能な濃度で存在しないことを意味する。示される物質がかかる組成物又は製品に意図的に添加された物質のうちの1つ以上の不純物としてのみ存在するような組成物又は製品が含まれ得る。
【0032】
II.固体シートを作製するためのプロセスの概要
国際公開第2010/077627号は、溶解を改善するように機能する約80%~100%の連続気泡含有パーセントによって特徴付けられる連続気泡発泡体(OCF)構造を有する多孔質シートを形成するためのバッチプロセスを開示している。具体的には、最初に原材料のプレミックスを形成し、これを激しく通気し、次いでバッチ(例えば、対流式オーブン又はマイクロ波オーブン内)で熱乾燥させて、所望のOCF構造を有する多孔質シートを形成する。このようなOCF構造は、結果として得られる多孔質シートの溶解速度を著しく改善するが、そのようなシート内には、より厚い気泡壁を有する、視覚的により高密度で、より多孔性の低い底部領域が依然として存在する。このような高密度の底部領域は、シートを通る水の流れに悪影響を及ぼし、それによってシートの全体的な溶解速度に悪影響を及ぼし得る。複数のこのようなシートを一緒に積層して多層構造を形成すると、複数の高密度底部領域の「バリア」効果が特に増強される。
【0033】
国際公開第2012/138820号は、通気された湿潤プレミックスの連続乾燥を、例えば、衝突オーブン(対流式オーブン又はマイクロ波オーブンの代わりに)を使用することによって達成することを除いては、国際公開第2010/077627号のものと同様のプロセスを開示している。このような連続乾燥プロセスによって形成されるOCFシートは、その異なる領域にわたる、改善された細孔構造内の均一性/一貫性によって特徴付けられる。残念ながら、そのようなOCFシートには、比較的小さい細孔開口を有する上面及び比較的小さい細孔を有する上部領域(すなわち、クラスト状の上部領域)などの律速因子が依然として存在し、これは、内部を通過する水の流れに悪影響を及ぼし、その溶解を減速させる可能性がある。
【0034】
上述のプロセスにおける乾燥工程中に、OCF構造は、水蒸発、気泡崩壊、薄膜気泡表面から気泡間のプラトー境界内への介在液体排出(気泡間の開口部を生成して連続気泡を形成する)、及びプレミックスの固化といった同時的な機構の下で形成される。様々な処理条件が、例えば、湿潤プレミックス中の固体含有量、湿潤プレミックスの粘度、重力、及び乾燥温度などのこれらの機構、並びに制御された排液を達成して所望のOCF構造を形成するようにかかる処理条件を均衡化させる必要性に影響し得る。
【0035】
上述の処理条件に加えて、乾燥工程中に使用される熱エネルギーの方向(すなわち、加熱方向)も、得られるOCF構造に顕著な影響を及ぼし得るということが、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。
【0036】
例えば、乾燥工程中に熱エネルギーが非方向性物質(すなわち、はっきりとした加熱方向がない)に適用される場合、又は乾燥工程の大部分にわたって加熱方向が重力方向と実質的に整列している場合(すなわち、それらの間のオフセット角度が90°未満である場合)、得られる可撓性多孔質溶解性固体シートは、より小さい細孔開口を有しかつその厚さにわたる方向に沿った異なる領域においてより大きな孔径変動を有する上面を有する傾向がある。対照的に、乾燥工程の大部分にわたって、加熱方向が重力方向からオフセットしているとき(すなわち、それらの間に90°以上のオフセット角度で)、得られる固体シートは、より大きい細孔開口を有しかつそのようなシートの厚さにわたる方向に沿った異なる領域において減少した孔径変動を有する上面を有し得る。それに対応して、後者のシートは、そこを流れる水に対して受容性が高く、したがって、前者のシートよりも溶解性が高い。
【0037】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、乾燥工程中の加熱方向と重力方向との間の整列又は誤整列、及びその持続時間は、気泡間の介在液体排出にかなり影響し、これに対応して、固化プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口に影響を及ぼし、非常に異なるOCF構造を有する固体シートをもたらし得ると考えられる。このような違いは、以下の
図1~
図4により明確に示される。
【0038】
図1は、対流式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型10(金属、セラミック、又はTeflon(登録商標)などの任意の好適な材料で作製され得る)を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面12A(すなわち、上部面)と、対向する第2の面12B(すなわち、金型10の支持面と直接接触しているので底部面)と、を有する、シート12を形成する。このような金型10を、乾燥工程中に約45~46分間130℃の対流式オーブン内に配置する。対流式オーブンは、シート12を上方から、すなわち、下向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印で示されるように)に沿って加熱し、これは、シート12内に第1の面12Aから対向する第2の面12Bへと減少する温度勾配を形成する。下向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と整列し、そのような整列位置は、乾燥時間全体にわたって維持される。乾燥中、重力は液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する一方で、下向きの加熱方向は、上部領域を最初に乾燥させ、底部領域を最後に乾燥させる。その結果、多孔質固体シートが、完全に膨張する可能性を有していなかった気泡によって形成された小さな開口部を有する多数の細孔を含む上面を有して形成される。より小さい細孔開口を有するこのような上面は、シートへの水の浸入に最適ではなく、これは、シートの溶解速度を制限し得る。一方、このようなシートの底部領域は、密度が高くかつ多孔性が低く、完全に膨張した気泡によって形成されるが数の非常に少ないより大きな細孔を有しており、そのような底部領域内の細孔間の気泡壁は、重力によってもたらされる下向きの液体排出を起因として厚い。より少ない細孔及び厚い気泡壁を有するこのような高密度の底部領域は、シートの全体的な溶解速度に対して更なる律速因子である。
【0039】
図2は、マイクロ波式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型30を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面32A(上部面)と、対向する第2の面32B(底部面)と、を有するシート32を形成する。次いで、このような金型30を、Industrial Microwave System Inc.(North Carolina)によって提供される低エネルギー密度マイクロ波アプリケータ(図示せず)内に配置し、2.0kWの電力、1フィート/分のベルト速度、及び54.4℃の周囲空気温度で動作させる。金型30を、乾燥工程中、約12分間、このようなマイクロ波アプリケーション下に放置する。このようなマイクロ波アプリケータは、はっきりとした又は一貫した加熱方向を伴わずに、シート32を内部から加熱する。それに対応して、当該シート32には、温度勾配が形成されない。乾燥中、シート32全体を同時に加熱するか、又はほぼ同時に加熱するが、重力(白い矢印によって示されるように)は、依然として底部領域に向かって液体プレミックスを下向きに排出する。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、マイクロ波式の乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、シート32全体の同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。更に、マイクロ波エネルギーは、シート32内の水を加熱し、そのような水を沸騰させ、不規則な大きさの気泡を発生させ、厚い気泡壁を有する意図しない高密度領域を形成し得る。
【0040】
図3は、衝突オーブン式加熱/乾燥構成を示す。乾燥工程中、金型40を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面42A(上部面)と、対向する第2の面42B(底部面)と、を有するシート42を形成する。次いで、このような金型40を、国際公開第2012138820号の実施例1、表2に記載されているものと同様の条件下で、連続衝突オーブン(図示せず)内に配置する。このような連続衝突オーブンは、対向するかつオフセットする加熱方向(2つのクロスハッチングの矢印によって示されるように)で、上部及び底部の両方からシート42を加熱する。それに対応して、乾燥中にシート42内には、はっきりとした温度勾配は形成されず、シート42全体が、その上面及び底面の両方からほぼ同時に加熱される。
図3に記載のマイクロ波式加熱/乾燥構成と同様に、重力(白い矢印によって示されるように)は、
図4のこのような衝突オーブン式加熱/乾燥構成において、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出し続ける。結果として、そのように形成された固化したシートは、対流式加熱/乾燥構成によって形成されたシートと比較して、より均一に分布し、より均一なサイズの細孔を有する。しかしながら、乾燥工程中の重力下での液体排出は、依然として、厚い気泡壁を有する高密度の底部領域をもたらし得る。更に、その両方からのシート42のほぼ同時の加熱は、乾燥工程中に上面の細孔膨張及び細孔開口を依然として制限することができ、結果として得られるシートは、比較的小さい細孔開口を有する上面を依然として有し得る。
【0041】
上述の加熱/乾燥構成(対流式、マイクロ波式又は衝突オーブン式)とは対照的に、本発明は、加熱の方向が、底部領域に向かう重力によって生じる液体の排液を妨害/低減するように(これにより、底部領域における密度を低減し、細孔構造を改善する)、かつ乾燥中に上面付近の気泡が膨張するためにより多くの時間をかけることを可能にするように(これにより、結果として得られるシートの上面にかなり大きな細孔開口を形成する)ように意図的に構成されている、通気された湿潤プレミックスを乾燥させるための加熱/乾燥構成を提供する。これらの両特徴は、シートの全体的な溶解速度を改善するために機能し、したがって望ましい。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、底部伝導式加熱/乾燥構成を示す。具体的には金型50を、通気された湿潤プレミックスで充填し、これは、第1の面52A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面52B(すなわち、上部面)と、を有するシート52を形成する。このような金型50を、乾燥工程中、加熱された表面(図示せず)上、例えば、約125~130℃の制御された表面温度を有する予め加熱されたペルチェプレート上に、約30分間配置する。熱は、金型50の底部における加熱された表面からその金型を通って伝導し、シート52を下方から、すなわち、上向きの加熱方向(クロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って加熱し、これは、シート52内に第1の面52A(底部面)から対向する第2の面52B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。このような上向きの加熱方向は、重力方向(白い矢印によって示されるように)と反対であり、乾燥時間全体にわたってそのように維持される(すなわち、加熱方向は、乾燥時間のほぼ100%の重力方向とは反対である)。乾燥中、重力は依然として、液体プレミックスを底部領域に向かって下向きに排出する。しかしながら、上向きの加熱方向は、シートを下から上に乾燥させ、底部領域での熱により発生した水蒸気が、上向きに上昇して固化マトリックスから逃れるため、底部領域に向かう下向きの液体排出は、固化マトリックス及び上昇水蒸気によって著しく制限され、「妨害」/低減される。それに対応して、得られる乾燥シートの底部領域は密度が低く、比較的薄い気泡壁を有する多数の細孔を含む。更に、上部領域は、このプロセス中に乾燥される最後の領域であるため、上部領域内の気泡は、膨張するのに十分な時間を有して、得られるシートの上面にかなり大きな開いた細孔を形成し、これは、シートへの水の進入を促進するのに特に有効である。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0043】
図5は、本発明の別の実施形態による、可撓性多孔質溶解性シートを作製するための、回転ドラム式加熱/乾燥構成を示す。具体的には、供給トラフ60を、通気された湿潤プレミックス61で充填する。加熱された回転可能なシリンダ70(ドラム乾燥機とも称される)を、供給トラフ60の上方に配置する。加熱されたドラム乾燥機70は、約130℃の制御された表面温度によって特徴付けられる円筒状の加熱された外面を有し、これは、時計回り方向(矢印を有する細い曲線によって示されるように)に沿って回転して、供給トラフ60から通気された湿潤プレミックス61を拾い出す。通気された湿潤プレミックス61は、ドラム乾燥機70の円筒状の加熱された外面上に薄いシート62を形成し、通気された湿潤プレミックスのそのようなシート62は、約10~15分間回転されて乾燥させられる。このように形成されたシート62の一貫した厚さを確保するために、通気された湿潤プレミックス61の粘度並びにドラム乾燥機70の回転速度及び表面温度を単に調節することによって、シート62の厚さを制御することが可能であるが、レベリング刃(図示せず)をスラリー拾い出し位置付近に配置してもよい。乾燥されると、シート62は、ドラム回転の終わりに手動で又はスクレーパ72によって拾い出され得る。
【0044】
図5に示すように、通気された湿潤プレミックス61によって形成されたシート62は、加熱されたドラム乾燥機70の加熱された外面に直接接触する第1の面62A(すなわち、底部面)と、対向する第2の面62B(すなわち、上部面)と、を含む。それに対応して、ドラム乾燥機70からの熱は、外向きの加熱方向に沿ってシート62に伝導し、シート62の第1の面62A(底部面)を最初に加熱し、次いで、対向する第2の面62B(上部面)を加熱する。このような外向きの加熱方向は、シート62内に第1の面62A(底部面)から対向する第2の面62B(上部面)へと減少する温度勾配を形成する。外向きの加熱方向は、非常にはっきりとしたかつ予想可能な経路(
図4の複数の外向きに延びたクロスハッチングの矢印によって示されるように)に沿って、ドラム乾燥機70が回転するにつれて、ゆっくりとかつ常に変化する。外向きの加熱方向及び重力方向(白い矢印によって示されるような)の相対的な位置もまた、同様のはっきりとしたかつ予測可能な様式で減速及び常時変化する。乾燥時間の半分未満の間(すなわち、加熱方向が水平の破線の下にあるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°未満のオフセット角度となって重力方向と実質的に整列される。乾燥時間の大部分の間(すなわち、加熱方向が水平の破線と同一であるか、又はそれを超えるとき)、外向きの加熱方向は、その間が90°以上のオフセット角度となって重力方向と反対又は実質的に反対になる。シート62の初期の「開始」コーティング位置に応じて、加熱方向は、乾燥時間の55%超(コーティングがドラム乾燥機70のちょうど底部で始まる場合)、好ましくは乾燥時間の60%超(コーティングが
図5に示されるようにドラム乾燥機70のより高い位置で開始する場合)にわたって、重力方向と反対又は実質的に反対になることができる。結果的に、乾燥工程の大部分の間、回転ドラム式加熱/乾燥構成でのこのゆっくりとした回転及び加熱方向の変化は、重力によって引き起こされるシート62内の液体排出を制限及び「妨害」/低減するように依然として機能することができ、その結果、そのように形成されたシートにおけるOCF構造の改善をもたらす。加熱されたドラム乾燥機70によって乾燥されることで得られるシートはまた、多数のより均一なサイズの細孔を有する低密度の底部領域と、比較的大きい細孔開口を有する上面と、によって特徴付けられる。更に、得られるシートは、その異なる領域(例えば、上部、中間、底部)全体にわたって、より均一に分布した全孔径を有する。
【0045】
上述したように所望の加熱方向(すなわち、重力方向に対して実質的にオフセットされた関係)を採用することに加えて、本発明による、得られるシートにおける最適なOCF構造を達成するために、湿潤プレミックスの粘度及び/又は固体含有量、通気の量及び速度(通気されたプレミックス中の気泡サイズ及び量に影響を及ぼし、それに対応して、固化したシートの孔径/分布/量/特性に影響を及ぼし得る、空気供給ポンプ速度、混合ヘッド速度、空気流量、通気されたプレミックスの密度など)、乾燥温度及び乾燥時間を慎重に調整することが望ましい場合もあり、更に重要であり得る。
【0046】
本発明による可撓性多孔質溶解性シートを作製するためのプロセス、並びにそのようなシートの物理的及び化学的特性のより詳細な説明を、確保したセクションにて提供する。
【0047】
III.固体シートの作製プロセス
本発明は、(a)水又は好適な溶媒中に溶解又は分散された原材料(例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤などの活性成分、及び任意選択的に可塑剤)を含有する、約40℃及び1s
-1で測定した約1,000cps~約25,000cpsの粘度によって特徴付けられるプレミックスを形成する工程と、(b)当該プレミックスを(例えば、湿潤スラリーにガスを導入することによって)通気して、通気された湿潤プレミックスを形成する工程と、(c)当該通気された湿潤プレミックスを、対向する第1及び第2の面を有するシートに形成する工程と、(d)当該形成されたシートを、当該形成されたシートの第1の面から第2の面へと減少する温度勾配を形成する加熱方向に沿って、1分~60分の乾燥時間にわたって70℃~200℃の温度で乾燥させる工程であって、加熱方向は、乾燥時間の半分を超えて重力方向から実質的にオフセットされ、すなわち、主に「反重力」加熱方向に沿った加熱下で実施される、工程と、を含む可撓性多孔質溶解性シートを作製するための新しくかつ改善された方法を提供する。このような主に「反重力」加熱方向は、これらに限定されないが、
図4及び
図5にそれぞれ示したような、底部伝導式加熱/乾燥構成及び回転ドラム式加熱/乾燥構成を含む、様々な手段によって達成することができる。
【0048】
工程(A):湿潤プレミックスの調製
本発明の湿潤プレミックスは、概して、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び/又は他の有益剤、任意選択的な可塑剤、及び他の任意選択的な成分を含む、対象の固体を、プレミックスタンク内の十分な量の水又は別の溶媒と混合することによって調製される。湿潤プレミックスは、メカニカルミキサーを使用して形成することができる。本明細書で有用なメカニカルミキサーには、ピッチ翼を有するタービン、又はMAXBLENDミキサー(Sumitomo Heavy Industries)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明において、40℃及び1s-1で測定したときに約1,000cps~約25,000cpsの所定の範囲内にあるように、湿潤プレミックスの粘度を調節することが特に重要である。湿潤プレミックスの粘度は、後続の乾燥工程中に通気されたプレミックスの細孔膨張及び細孔開口に著しい影響を及ぼし、異なる粘度を有する湿潤プレミックスは、非常に異なる発泡構造体の可撓性多孔質溶解性固体シートを形成し得る。一方、湿潤プレミックスが厚すぎる/粘性が高すぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約25,000cps超の粘度を有する)場合、このような湿潤プレミックスの通気はより困難になり得る。より重要なことに、後続の乾燥工程中の薄膜気泡面から三次元発泡体のプラトー境界内への介在液体排出は、悪影響を受け得るか、又は著しく制限され得る。乾燥中の介在液体排出は、後続の乾燥工程中に通気された湿潤プレミックス中の細孔膨張及び細孔開口を可能にするために重要であると考えられる。その結果、そのように形成された可撓性多孔質溶解性固体シートは、著しく小さい細孔及び細孔間のより低い相互結合性(すなわち、開いた細孔よりも「閉じた」細孔の方が多い)を有してもよく、これにより、水がそのようなシートの中へ進入し、そこから退出することを困難にする。一方、湿潤プレミックスが薄すぎる/延びすぎる(例えば、40℃及び1s-1で測定されるときに約1,000cps未満の粘度を有する)場合、通気された湿潤プレミックスは十分に安定でない場合があり、すなわち、気泡は、通気後及び乾燥前に湿潤プレミックス中で迅速に破裂、崩壊、又は合体し得る。結果として、得られる固体シートは、所望のものに比べて、はるかに多孔性が低く、より高密度であり得る。
【0050】
一実施形態では、湿潤プレミックスの粘度は、40℃及び1秒-1で測定されるとき、約3,000cps~約24,000cps、好ましくは約5,000cps~約23,000cps、より好ましくは約10,000cps~約20,000cpsの範囲である。プレミックスの粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、ギャップ幅0.054mm、温度40℃、及び剪断速度1.0レシプロカル秒で360秒間測定する。
【0051】
好ましいが必須ではない実施形態では、対象の固体は、湿潤プレミックスの総重量に対して約15重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約50重量%、より好ましくは約25重量%~約45重量%の濃度で湿潤プレミックス中に存在する。固体含有パーセントは、水及び低沸騰アルコールのような明らかに揮発性のあらゆる物質を除いた、固体成分、半固体成分、及び液体成分の全ての総加工混合物の重量による重量パーセントの合計である。一方、湿潤プレミックス中の固体含有量が高すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、介在液体排出を禁止又はその介在液体排出に悪影響を及ぼすレベルまで増加し、本明細書に記載されるような所望の主に連続気泡の多孔質固体構造の形成を防止するレベルまで増加し得る。他方、湿潤プレミックス中の固体含有量が低すぎる場合、湿潤プレミックスの粘度は、乾燥中に気泡の破裂/崩壊/合体及び細孔構造の収縮率(%)の増加を引き起こすレベルまで低下し得、これにより、多孔性及び密度が著しく小さい固体シートをもたらす。
【0052】
本発明の湿潤プレミックス中の対象の固体のうち、固体の総重量に対して約1重量%~約75重量%の界面活性剤、約0.1重量%~約25重量%の水溶性ポリマー、及び任意選択的に約0.1重量%~約25重量%の可塑剤が存在し得る。他の活性剤又は有益剤をプレミックスに添加することもできる。
【0053】
任意選択的に、湿潤プレミックスを、通気プロセスに先立って及び/又は通気プロセス中に、周囲温度よりも高い温度であるが、その内部で成分の分解を引き起こすいかなる温度よりも低い温度にて、迅速に予め加熱される。一実施形態では、湿潤プレミックスを、約40℃~約100℃、好ましくは約50℃~約95℃、より好ましくは約60℃~約90℃、最も好ましくは約75℃~約85℃の範囲の高温に維持する。一実施形態では、任意選択的な連続加熱を、通気工程の前に利用する。更に、このような高温で湿潤プレミックスを試し、維持するために、通気プロセス中に追加の熱を加えることができる。これは、1つ以上の表面からの伝導性加熱、蒸気の注入、又は他のプロセス手段により達成することができる。混合物への気泡の導入及び所望の固体シートの形成を改善するために、通気工程前に及び/又は通気工程中に、湿潤プレミックスを予め加熱する行為により、固体をより高い含有パーセントで含む湿潤プレミックスの粘度を低下させる手段が提供され得ると考えられる。固体のより高い含有パーセントを実現することは、乾燥の全体的なエネルギー要件を低減し得るために望ましい。したがって、固体パーセントの増加は逆に、水濃度含有量の減少及び粘度の増加をもたらし得る。上述したように、粘度が高すぎる湿潤プレミックスは、本発明の実施には望ましくない。予め加熱することは、そのような粘度を効果的に妨害し、これにより、高い固体含有量のプレミックスを使用した場合であっても、高速溶解性シートの製造を可能にする。
【0054】
工程(B):湿潤プレミックスの通気
湿潤プレミックスの通気は、引き続き乾燥時に内部にOCF構造を形成するために十分な量の気泡を湿潤プレミックスに導入するために実施される。十分に通気された後、湿潤プレミックスは、非通気の湿潤プレミックス(不注意に閉じ込められた気泡をわずかに含んでもよい)又は不十分に通気された湿潤プレミックス(気泡をいくらか含有し得るが、非常に低い体積割合で及びかなり大きい気泡サイズのものを含んでもよい)の密度より著しく低い密度によって特徴付けられる。好ましくは、通気された湿潤プレミックスは、約0.05g/mL~約0.5g/mL、好ましくは約0.08g/mL~約0.4g/mL、より好ましくは約0.1g/mL~約0.35g/mL、更により好ましくは約0.15g/mL~約0.3g/mL、最も好ましくは約0.2g/mL~約0.25g/mLの範囲の密度を有する。
【0055】
通気は、本発明における物理的又は化学的手段のいずれかによって達成することができる。一実施形態では、それは、例えば、ロータステータミキサー、プラネタリミキサー、加圧ミキサー、非加圧ミキサー、バッチミキサー、連続ミキサー、半連続ミキサー、高剪断ミキサー、低剪断ミキサー、水中スバージャ、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない任意の好適な機械的処理手段を使用することによって、機械的撹拌を通して湿潤プレミックスにガスを導入することにより達成することができる。別の実施形態では、それは、化学的手段を通して、例えば、発泡系による二酸化炭素(CO2ガス)の形成を含む1つ以上の成分の化学反応を介してインサイチュでガス形成を提供するために化学的発泡剤を使用して達成することができる。
【0056】
特に好ましい実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、マシュマロの製造において食品業界で従来利用されている連続加圧エアレータ又はミキサーを使用することによって、コスト効果的に達成され得ることがわかっている。連続加圧ミキサーは、湿潤プレミックスを均質化する又は通気するように働き、均一な気泡サイズを有する、高度に均一かつ安定した発泡構造物を生じさせ得る。高剪断ロータ/ステータの撹拌ヘッドの固有の設計は、連続気泡発泡体の層において均一な気泡サイズをもたらすことができる。好適な連続加圧エアレータ又はミキサーとしては、Morton泡たて器(Morton Machine Co.,Motherwell,Scotland)、Oakes連続自動ミキサー(E.T.Oakes Corporation,Hauppauge,New York)、Fedco連続ミキサー(Peerless Group,Sidney,Ohio)、Mondo(Haas-Mondomix B.V.,Netherlands)、Aeros(Aeros Industrial Equipment Co.,Ltd.,Guangdong Province,China)、及びPreswhip(Hosokawa Micron Group,Osaka,Japan)が挙げられる。例えば、Aeros A20連続エアレータは、約300~800(好ましくは約400~600)の混合ヘッド速度設定を伴う約300~800(好ましくは約500~700)の供給ポンプ速度設定で、それぞれ約50~150(好ましくは60~130、より好ましくは80~120)の空気流量で動作させることができる。別の例では、Oakes連続自動ミキサーは、約10~30rpm(好ましくは約15~25rpm、より好ましくは約20rpm)の混合ヘッド速度設定で、約10~30リットル/時間(好ましくは約15~25L/時、より好ましくは約19~20L/時間)の空気流量で動作させることができる。
【0057】
別の特定の実施形態では、湿潤プレミックスの通気は、回転ドラム乾燥機の一部である回転バー、より具体的には、湿潤プレミックスがドラム乾燥機の加熱された外面上にコーティングされて乾燥される前に貯蔵される供給トラフの構成要素を使用することによって達成することができる。回転バーは、典型的には、ドラム乾燥機の加熱された回転ドラム上にコーティングされる前の待機時間中に、湿潤プレミックスを撹拌して、供給トラフ内の相分離又は沈降を防止するために使用される。本発明では、このような回転バーを、約150~約500rpm、好ましくは約200~約400rpm、より好ましくは約250~約350rpmの範囲の回転速度で動作させて、湿潤プレミックスを空気界面で混合し、湿潤プレミックスの所望の通気を達成するのに必要な十分な機械的撹拌を提供することが可能である。
【0058】
上述したように、湿潤プレミックスは、通気プロセス中に高温に維持されて、乾燥中の最適化された通気及び制御された排水のために湿潤プレミックスの粘度を調整することができる。例えば、通気が回転ドラムの回転バーを使用することによって達成されるとき、供給トラフ内の通気された湿潤プレミックスは、典型的には、回転バーによる初期通気中(回転ドラムが静止している間)、約60℃に維持され、次いで、回転ドラムが加熱されて回転を開始するときに約70℃まで加熱される。
【0059】
通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、得られる固体シートのOCF構造内で均一な層を達成するのを助ける。一実施形態では、通気された湿潤プレミックスの気泡サイズは、約5~約100マイクロメートルであり、別の実施形態では、気泡サイズは、約20マイクロメートル~約80マイクロメートルである。気泡サイズの均一性により、得られる固体シートは、一貫した密度を有する。
【0060】
工程(C):シート形成
十分な通気後、通気された湿潤プレミックスは、対向する第1の面及び第2の面を有する1つ以上のシートを形成する。シート形成工程は、例えば、押出成形、鋳造、成型、真空成形、プレス、印刷、コーティングなどによって、任意の好適な様式で実施することができる。より具体的には、通気された湿潤プレミックスは、(i)それを浅いキャビティ若しくはトレー又は特別に設計されたシート型に鋳造することと、(ii)それを乾燥機の連続ベルト又はスクリーン上に押出成形することと、(iii)それを回転ドラム乾燥機の外面上にコーティングすることと、を行うことによってシートに形成することができる。好ましくは、シートが形成される支持面は、金属(例えば、鋼、クロムなど)、TEFLON(登録商標)、ポリカーボネート、NEOPRENE(登録商標)、HDPE、LDPE、ゴム、ガラスなどの、防食で非相互作用及び/又は非粘着性の材料によって形成されるか、又はコーティングされる。
【0061】
好ましくは、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートは、0.5mm~4mm、好ましくは0.6mm~3.5mm、より好ましくは0.7mm~3mm、更により好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは0.9mm~1.5mmの範囲の厚さを有する。通気された湿潤プレミックスのそのような形成されたシートの厚さを制御することは、得られる固体シートが所望のOCF構造を有することを確実にするために重要となり得る。形成されたシートが薄すぎる(例えば、厚さが0.5mm未満)場合、通気された湿潤プレミックス中に閉じ込められた気泡の多くが後続の乾燥工程中に膨張して、得られる固体シートの厚さ全体を通って延在する貫通孔を形成する。このような貫通孔は、多すぎる場合、シートの全体的な構造的完全性及び美的外観の両方を著しく損なう場合がある。形成されたシートが厚すぎる場合には、乾燥のためにより長い時間がかかるだけでなく、その厚さに沿って異なる領域(例えば、上部領域、中間領域、及び底部領域)間のより大きな孔径の変動を有する固体シートをもたらすことになる。なぜならば、乾燥時間が長いほど、気泡の破裂/崩壊/合体、液体排出、細孔膨張、細孔開口、水蒸発などによって、より不均衡な力が生じる場合があるからである。更に、比較的薄いシートの多数の層を、所望の洗浄効果又は他の効果をもたらすために、より大きな厚さの三次元構造に組み立てることができ、一方で、迅速に溶解するために十分な細孔構造を提供すると共に、比較的短い乾燥時間内で効率的な乾燥を確実にすることができる。
【0062】
工程(D):反重力加熱下での乾燥
本発明の重要な特徴は、乾燥時間全体にわたって、又は少なくとも乾燥時間の半分超にわたって、乾燥工程中に反重力加熱方向を使用することである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような反重力加熱方向は、乾燥工程中に形成されたシートの底部領域に向かう過度の介在液体排出を低減又は妨害することができると考えられる。更に、上面が最後に乾燥されるので、形成されたシートの上面付近の気泡を膨張させ、上面に細孔開口を形成するのにより長い時間を可能にする(湿潤マトリックスが乾燥されると、気泡はもはや膨張しないか、又は表面開口を形成することができないため)。その結果、このような反重力加熱による乾燥によって形成される固体シートは、より迅速な溶解、及び他の驚くべきかつ予想外の利益を可能にする、改善されたOCF構造によって特徴付けられる。
【0063】
特定の実施形態では、反重力加熱方向を、
図4に示すものと同じ又は類似の伝導式加熱/乾燥構成によって提供する。例えば、通気された湿潤プレミックスは、2つの対向する面を有するシートを形成するために、金型へと鋳造されることができる。次いで、金型を、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度によって特徴付けられる平面状の加熱された表面を有する、ホットプレート又は加熱された移動ベルト又は任意の他の好適な加熱装置上に置くことができる。平面状の加熱された表面から、通気された湿潤プレミックスのシートの底面へと伝導によって熱エネルギーが伝達されることによって、シートの固化は底部領域から始まり、最後に上部領域に到達するように上向きに徐々に移動する。このプロセス中に加熱方向が主に反重力(すなわち、重力方向から実質的にオフセットしている)であることを確実にするために、加熱された表面は、乾燥中のシートの一次熱源であることが好ましい。任意の他の加熱源が存在する場合、全体的な加熱方向は適宜変化してもよい。より好ましくは、加熱された表面は、乾燥中のシートの唯一の熱源である。
【0064】
別の特定の実施形態では、反重力加熱方向を、
図5に示すものと類似した、ドラム乾燥又はローラ乾燥とも称される回転ドラム式加熱/乾燥構成によって提供する。ドラム乾燥は、比較的低温で、加熱された回転可能なドラム(ローラ又はシリンダとも称される)の外面上の原材料の粘性プレミックスから液体を乾燥させてシート状物品を形成するために使用される接触乾燥方法の1種である。これは、大量の乾燥に特に好適な連続乾燥プロセスである。乾燥は、接触加熱/乾燥を介して比較的低温で実施されるため、通常は高いエネルギー効率を有し、原材料の組成的一体性に悪影響を及ぼさない。
【0065】
ドラム乾燥に使用される加熱された回転可能なシリンダは、例えば蒸気又は電気によって内部で加熱され、所定の回転速度でベースブラケットに取り付けられた電動駆動装置によって回転される。加熱された回転可能なシリンダ又はドラムは、約0.5メートル~約10メートル、好ましくは約1メートル~約5メートル、より好ましくは約1.5メートル~約2メートルの範囲の外径を有することが好ましい。それは、約80℃~約170℃、好ましくは約90℃~約150℃、より好ましくは約100℃~約140℃の制御された表面温度を有してもよい。更に、このような加熱された回転可能なシリンダは、約0.005rpm~約0.25rpm、好ましくは約0.05rpm~約0.2rpm、より好ましくは約0.1rpm~約0.18rpmの速度で回転する。
【0066】
この加熱された回転可能なシリンダは、好ましくは、その外面上が非粘着性コーティングでコーティングされている。非粘着性コーティングは、加熱された回転可能なドラムの外面上に重なってもよく、又は加熱された回転可能なドラムの外面の媒体に固定されてもよい。媒体としては、耐熱不織布、耐熱性炭素繊維、耐熱金属又は非金属メッシュなどが挙げられるが、これらに限定されない。非粘着性コーティングは、シート形成プロセス中の損傷からシート状物品の構造的一体性を効果的に維持することができる。
【0067】
また、上述したような原材料の通気された湿潤プレミックスを加熱された回転可能なドラム上に加えるための供給機構をベースブラケット上に提供し、それによって、加熱された回転可能なドラムの外面上に粘性プレミックスの薄層を形成する。したがって、プレミックスのこのような薄層は、加熱された回転可能なドラムによって接触加熱/乾燥を介して乾燥される。供給機構は、ベースブラケットに設置された供給トラフを含む一方、供給トラフは、その上に、少なくとも1つの(好ましくは2つの)供給ホッパ、供給の動的観察のための撮像装置、並びに供給ホッパの位置及び傾斜角度を調節するための調整装置が設置されている。調整装置を使用して、供給ホッパと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離を調整することによって、形成されたシート状物品の異なる厚さの必要性を満たすことができる。調整装置はまた、速度及び品質の材料要件を満たすように、供給ホッパを異なる傾斜角度に調整するために使用することができる。供給トラフはまた、湿潤プレミックスが加熱された回転可能なドラムの外面上にコーティングされる前に相分離及び沈降を回避するために、湿潤プレミックスをその中で撹拌するための回転バーを含んでもよい。このような回転バーは、上述したように、必要に応じて湿潤プレミックスを通気するために使用することもできる。
【0068】
また、急速な熱損失を防止するために、ベースブラケットに取り付けられた加熱シールドが存在してもよい。加熱シールドはまた、加熱された回転可能なドラムによって必要とされるエネルギーを効果的に節約することができ、それにより、エネルギー消費の低減を実現し、コスト削減を提供することができる。加熱シールドは、モジュール式組立構造体、又は統合型構造体であり、ベースブラケットから自由に取り外すことができる。熱蒸気を吸引するための加熱シールドには、何らかの水凝縮物が、形成されているシート状物品上に落下するのを回避するために、吸引装置が設置されている。
【0069】
加熱された回転可能なドラムによって既に形成されたシート状物品を掻き取るか又は掬い付けるための、ベースブラケットに取り付けられた任意選択的な静的掻き取り機構が存在してもよい。静的掻き取り機構は、更なる処理のために既に形成されたシート状物品を下流に搬送するために、ベースブラケット上又はその片側上に設置することができる。静的掻き取り機構は、加熱された回転可能なドラムに、自動的に又は手動で接近し及びそこから離れるように移動することができる。
【0070】
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートの作製プロセスは、以下のとおりである。まず、ベースブラケット上の非粘着コーティングを有する加熱された回転可能なドラムを、電動駆動装置によって駆動する。次に、調整装置が、供給ホッパと加熱された回転可能なドラムの外面との間の距離が予め設定された値になるように供給機構を調整する。一方、供給ホッパは、可撓性多孔質溶解性固体シートを作製するための、全て又はいくつかの原材料を含有する通気された湿潤プレミックスを、加熱された回転可能なドラムの外面上に加えて、その上に、前のセクションで上述したように所望の厚さを有する通気された湿潤プレミックスの薄層を形成する。任意選択的に、加熱シールドの吸引装置は、加熱された回転可能なドラムによって生成された熱蒸気を吸引する。次に、静的掻き取り機構が、加熱された回転可能なドラムによって比較的低温(例えば、130℃)で乾燥された後に、通気された湿潤プレミックスの薄層によって形成された乾燥/固化したシートを掻き取る/掬い上げる。乾燥/固化したシートはまた、このような静的掻き取り機構を用いずに、手動で又は自動的に剥離され、次いでローラバーによって巻き上げることもできる。
【0071】
本発明における総乾燥時間は、湿潤プレミックス中の配合物量及び固体含有量、乾燥温度、熱エネルギー流量、及び乾燥されるシート材料の厚さに依存する。好ましくは、乾燥時間は、約1分~約60分、好ましくは約2分~約30分、より好ましくは約2~約15分、更により好ましくは約2~約10分、最も好ましくは約2~約5分である。
【0072】
このような乾燥時間中、加熱方向は、乾燥時間の半分超、好ましくは乾燥時間の55%又は60%超(例えば、上述の回転ドラム式加熱/乾燥構成におけるもののように)、より好ましくは乾燥時間の75%超又は更には100%(例えば、上述の底部伝導式加熱/乾燥構成におけるもののように)にわたって重力方向とは実質的に反対となるように配置される。更に、通気された湿潤プレミックスのシートは、第1の加熱方向の下で第1の持続時間にわたって乾燥され、次いで第2の反対側の加熱方向の下で第2の持続時間にわたって乾燥させることができ、第1の加熱方向は、重力方向とは実質的に反対であり、第1の持続時間は、全乾燥時間の51%~99%(例えば、55%、60%、65%、70%~80%、85%、90%、又は95%)のいずれかにある。このような加熱方向の変化は、例えば、長手方向中心軸に沿って回転することができる蛇行形状の細長い加熱ベルトによって、本明細書に図示されていない様々な他の構成によって容易に達成することができる。
【0073】
IV.固体シートの物理的特性
上述の処理工程によって形成された可撓性多孔質可溶性固体シートは、シートへのより容易な水の進入、及び水中におけるシートのより速い溶解を可能にする、改善された孔構造によって特徴付けられる。このような改善された孔構造は、主に、上述のような様々な処理条件を調節することによって達成され、それらは、比較的独立しているか、又はそのようなシートを作製するために使用される化学配合物又は特定の成分によって影響を受けない。
【0074】
一般に、このような固体シートは、(i)以下の試験3によって測定される、約80%~100%、好ましくは約85%~100%、より好ましくは約90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び(ii)以下の試験2に記載のMicro-CT法によって測定される、約100μm~約2000μm、好ましくは約150μm~約1000μm、より好ましくは約200μm~約600μmの全体平均孔径によって特徴付けられ得る。全体平均孔径は、本発明のOCF構造の多孔度を定義する。連続気泡含有パーセントは、本発明のOCF構造中の細孔間の相互結合性を定義する。OCF構造の相互結合性はまた、国際公開第2010/077627号及び同第2012/138820号に開示されている星形体積又は構造モデル指数(Structure Model Index、SMI)によっても説明され得る。
【0075】
本発明のこのような固体シートは、対向する上面及び底面を有し、その上面は、以下の試験1に記載のSEM法によって測定される、約100μm超、好ましくは約110μm超、好ましくは約120μm超、より好ましくは約130μm超、最も好ましくは約150μm超の表面平均細孔直径によって特徴付けられてもよい。従来の加熱/乾燥構成(例えば、対流式、マイクロ波式又は衝突オーブン式構成)によって形成された固体シートと比較すると、本発明の改善された加熱/乾燥構成によって形成される固体シートは、その上面での表面平均孔直径が有意に大きい(
図6A~
図6B及び
図7A~
図7Bに示され、これらは後述の実施例1で詳しく説明される)。これは、特異的に準備された本発明の指向性加熱の下では、通気された湿潤プレミックスの形成されたシートの上面が、最後に乾燥/固化し、上面付近の気泡は、最も長い時間をかけて膨張し、上面により大きな細孔開口を形成することができるからである。
【0076】
また更に、本発明の改善された加熱/乾燥(例えば、回転ドラム式加熱/乾燥)構成によって形成される固体シートは、他の加熱/乾燥構成(例えば、衝突オーブン式)によって形成されたシートと比較して、その厚さ方向に沿った異なる領域間のより均一な孔径分布によって特徴付けられる。具体的には、本発明の固体シートは、上面に隣接する上部領域と、底面に隣接する底部領域と、それらの間の中間領域とを含み、上部領域、中間領域、及び底部領域は全て同じ厚さを有する。このような固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域の各々は、平均孔径によって特徴付けられるが、上部領域における平均孔径に対する底部領域における平均孔径の比率(すなわち、底部対上部平均孔径比)は、約0.6~約1.5、好ましくは約0.7~約1.4、好ましくは約0.8~約1.3、より好ましくは約1~約1.2である。比較すると、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下の実施例1に示すように)1.5超、典型的には約1.7~2.2の底部対上部平均孔径比を有し得る。また、本発明の固体シートは、約0.5~約1.5、好ましくは約0.6~約1.3、より好ましくは約0.8~約1.2、最も好ましくは約0.9~約1.1の底部対中間平均孔径比、並びに約1~約1.5、好ましくは約1~約1.4、より好ましくは約1~約1.2の中間対上部平均孔径比によって特徴付けられてもよい。
【0077】
また更に、本発明の固体シートの上部領域、中間領域、及び底部領域における平均孔径間の相対標準偏差(relative standard deviation、RSTD)は、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。対照的に、衝突オーブン式加熱/乾燥構成によって形成された固体シートは、(以下、実施例1に示されるように)20%超、恐らく25%超、又は更には35%超の上部/中間/底部平均孔径間のRSTDを有し得る。
【0078】
好ましくは、本発明の固体シートは、以下の試験2によって測定される、約5μm~約200μm、好ましくは約10μm~約100μm、より好ましくは約10μm~約80μmの平均気泡壁厚さによって更に特徴付けられる。
【0079】
本発明の固体シートは、少量の水を含んでもよい。好ましくは、それは、以下の試験4によって測定される、固体シートの0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含量によって特徴付けられる。結果として得られる固体シートにおける適切な最終水分含量は、シートの所望の可撓性/変形性を確保し、並びに消費者に柔らかな/滑らかな感触を提供することができる。最終水分含量が低すぎる場合、シートは、脆すぎる、又は剛性が高すぎる場合がある。最終水分含量が高すぎる場合、シートはべたつきが多すぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0080】
本発明の固体シートは、約0.6mm~約3.5mm、好ましくは約0.7mm~約3mm、より好ましくは約0.8mm~約2mm、最も好ましくは約1mm~約2mmの範囲の厚さを有し得る。固体シートの厚さは、以下に説明される試験6を使用して測定することができる。乾燥後の固体シートは、全体的な体積膨張を招く細孔膨張に起因して、通気された湿潤プレミックスのシートよりもわずかに厚くてもよい。
【0081】
本発明の固体シートは、以下に説明される試験6によって測定される、約50グラム/m2~約500グラム/m2、好ましくは約150グラム/m2~約450グラム/m2、より好ましくは約250グラム/m2~約400グラム/m2の坪量によって更に特徴付けられてもよい。
【0082】
また更に、本発明の固体シートは、以下の試験7によって測定される、約0.05グラム/cm3~約0.5グラム/cm3、好ましくは約0.06グラム/cm3~約0.4グラム/cm3、より好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.2グラム/cm3、最も好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.15グラム/cm3の範囲の密度を有してもよい。本発明の固体シートの密度は、全体的な体積膨張を招く細孔膨張にも起因して、通気された湿潤プレミックスのシートの密度よりも低い。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明の固体シートは、約0.06グラム/cm3~約0.16グラム/cm3、好ましくは約0.07グラム/cm3~約0.15グラム/cm3、より好ましくは約0.08グラム/cm3~約0.145グラム/cm3の密度を有してもよい。そのような比較的密度の低いシートを含有する固体物品は、更により改善された漏れ性能を達成し得る。
【0084】
更に、本発明の固体シートは、以下に記載される試験8によって測定される、約0.03m2/g~約0.25m2/g、好ましくは約0.04m2/g~約0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積によって特徴付けられてもよい。本発明の固体シートの比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シートがより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0085】
好ましい実施形態では、本開示による固体シート及び/又は本開示による溶解性固体物品は、
・ 85%~100%、好ましくは90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・ 150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・ 5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・ 固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含量、及び/又は
・ 0.6mm~3.5mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~2mmの厚さ、及び/又は
・ 約50グラム/m2~約500グラム/m2、好ましくは約150グラム/m2~約450グラム/m2、より好ましくは約250グラム/m2~約400グラム/m2の坪量、及び/又は
・ 0.05グラム/cm3~0.5グラム/cm3、好ましくは0.06グラム/cm3~0.4グラム/cm3、より好ましくは0.07グラム/cm3~0.2グラム/cm3、最も好ましくは0.08グラム/cm3~0.15グラム/cm3の密度、及び/又は
・ 0.03m2/g~0.25m2/g、好ましくは0.04m2/g~0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積、によって特徴付けられる。
【0086】
v.固体シートの配合物
1.水溶性ポリマー
上述したように、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートは、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含む湿潤プレミックスによって形成され得る。このような水溶性ポリマーは、結果として得られる固体シートにおいて、フィルム形成剤、構造剤、並びに他の活性成分(例えば、界面活性剤、乳化剤、ビルダー、キレート剤、香料、着色剤など)のための担体として機能し得る。
【0087】
好ましくは、湿潤プレミックスは、プレミックスの約3重量%~約20重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約5重量%~約15重量%の水溶性ポリマー、一実施形態では、プレミックスの約7重量%~約10重量%の水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0088】
乾燥後、水溶性ポリマーは、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート中に、固体シートの総重量に対して約5重量%~約50重量%、好ましくは約8重量%~約40重量%、より好ましくは約10重量%~約30重量%、最も好ましくは約12重量%~約25重量%の範囲の量で存在することが好ましい。本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート中に存在する水溶性ポリマーの総量は、そのようなシートの総重量に対して25重量%以下である。
【0089】
本発明の実施に好適な水溶性ポリマーは、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するものを選択されてもよい。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量に、多孔質固体シート内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じたものを加算することによって計算される。本明細書で使用される水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの粘度に影響を与える場合があり、これはひいては、通気工程中の気泡の数及びサイズ、並びに乾燥工程中の細孔膨張/開口結果に影響を与え得る。更に、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、湿潤プレミックスの全体的なフィルム形成特性、及びある界面活性剤との適合性/不適合性に影響を及ぼし得る。
【0090】
本発明の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アクリル酸とメチルアクリレートとのコポリマー、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドン及び酢酸ビニルのコポリマー、ビニルピロリドン及びカプロラクタムのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーと、カチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む合成ポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0091】
本発明の水溶性ポリマーはまた、カラヤガム、トラガントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの、グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物、カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物、果物抽出物(ペクチン)、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0092】
改質された天然ポリマーはまた、本発明において水溶性ポリマーとして使用されてもよい。好適な改質された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の水溶性ポリマーは、デンプンを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「デンプン」という用語は、天然に存在するデンプン又は改質されたデンプンの両方を含む。デンプンの典型的な天然の供給源としては、穀物、塊茎、根、豆果及び果実を挙げることができる。より具体的な天然の供給源としては、トウモロコシ、豆、ポテト、バナナ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、アロールート、カンナ、サトウモロコシ、及びそれらのろう質又は高級アミラーゼ種を挙げることができる。天然デンプンは、剪断されたデンプン又は熱抑制されたデンプンなどの物理的に改質されたデンプン、架橋、アセチル化、及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化、並びにヒドロキシプロピル化、リン酸化、並びに無機エステル化、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性及び双極性、並びにこれらのコハク酸塩及び置換サクシネート誘導体などの化学的に改質されたデンプン、酸化、酵素変換、酸加水分解、熱若しくは酸デキストリン化、熱的及び/又は剪断された生成物によって調製される流動性又は薄い煮沸デンプン、本明細書で有用であり得る熱及び/又は剪断生成物、を含むデンプンに由来する変換生成物、並びに、当該技術分野において既知のアルファ化デンプン、を含んだ改質デンプンを形成するために当該技術分野において既知の任意の改質方法によって改質することができる。
【0094】
本発明の好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。本発明のより好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0095】
本発明の最も好ましい水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約65%~約92%、最も好ましくは約70%~約90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)からの商品名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標)、Lubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給元から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも称される)もの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シートは、このようなシートの総重量に対して約10重量%~約25重量%、より好ましくは約15重量%~約23重量%の、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量、及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0096】
上述したようなポリビニルアルコールに加えて、本明細書に記載されたような必須の構造と物理的/化学的特性を備える固体シートを提供するのに役立つ限り、単一のデンプン又はデンプンの組み合わせを、必要とされる水溶性ポリマーの全体の濃度を低減させるような量の充填材料として使用してもよい。しかしながら、デンプンが多すぎると、シートの溶解度及び構造的一体性を含む場合がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、固体シート物品は、固体シートの20%重量%以下、好ましくは0重量%~10%重量%、より好ましくは0重量%~5%重量%、最も好ましくは0重量%~1%重量%のデンプンを含むことが望ましい。
【0097】
2.第1の界面活性剤
上述の水溶性ポリマーに加えて、本発明の固体シートは、第1の界面活性剤を含む。第1の界面活性剤は、通気プロセス中に乳化剤として機能して、本発明の所望のOCF構造を形成するのに十分な量の安定した気泡を生成し得る。更に、第1の界面活性剤は、所望の洗浄効果を実現するための活性成分として機能し得る。
【0098】
本発明の好ましい実施形態では、固体シートは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される第1の界面活性剤を含む。このような固体シートの所望の用途及び達成すべき所望の消費者利益に応じて、異なる界面活性剤を選択することができる。本発明の1つの利点は、固体シートのOCF構造が、高速溶解を依然として提供しながら、高い界面活性剤含有量を組み込むことを可能にすることである。結果的に、高濃度の洗浄組成物を本発明の固体シートに配合して、消費者に新たなかつ優れた洗浄体験を提供することができる。
【0099】
本明細書で使用するとき、第1の界面活性剤は、慣例的な観念(すなわち、消費者の目を引く泡立ち効果を提供するもの)及び乳化剤(すなわち、いかなる泡立ち性能も提供しないが、主に安定した発泡構造体を作製する際のプロセス助剤として意図されるもの)の両方の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で界面活性剤成分として使用される乳化剤の例としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル及び既知の又は別の方法で空気界面を安定化するのに一般的に使われる他の乳化剤が挙げられる。
【0100】
本発明の固体シート中に存在する第1の界面活性剤の総量は、固体シートの総重量に対して約5重量%~約80重量%、好ましくは約10重量%~約70重量%、より好ましくは約30重量%~約65重量%の広い範囲に及んでもよい。結果的に、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約1重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約2重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約5重量%~約30重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の固体シートは、固体シートの総重量に対して約30重量%~約90重量%、好ましくは約40重量%~約80重量%、より好ましくは約50重量%~約70重量%の第1の界面活性剤を含む。このようなケースでは、湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約10重量%~約40重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約12重量%~約35重量%の界面活性剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約15重量%~約30重量%の界面活性剤を含んでもよい。
【0102】
本明細書で使用されるのに好適なアニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルキル及びアルキルエーテル硫酸塩、硫酸化モノグリセリド、スルホン化オレフィン、アルキルアリールスルホン酸塩、一級又は二級アルカンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アシルタウレート、アシルイセチオネート、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩、スルホン化メチルエステル、スルホン化脂肪酸、アルキルホスフェート、アシルグルタメート、アシルサルコシネート、アルキルスルホ酢酸塩、アシル化ペプチド、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルラクチレート、アニオン性フルオロ界面活性剤、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
本発明の実施に特に好適なアニオン性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(linear alkylbenzene sulphonate、LAS)界面活性剤が挙げられる。LAS界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、市販の直鎖アルキルベンゼンをスルホン化することによって容易に入手することができる。本発明で使用することができる例示的なC10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネートとしては、C10~C20直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、好ましくは、C11~C18若しくはC11~C14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及び/又はアンモニウム塩が挙げられる。より好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩であり、最も好ましいものは、C12及び/又はC14直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、すなわち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はテトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0104】
LASは優れた洗浄効果をもたらし、洗濯洗剤用途での使用に特に好適である。より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、LASは、主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、LASは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。LASが本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0105】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、約0.5~約5、好ましくは約0.8~約4、より好ましくは約1~約3、最も好ましくは約1.5~約2.5の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するトリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfates、STS)が挙げられる。トリデセスは、一実施形態では、1分子当たり平均して少なくとも1つのメチル分岐を含む、炭素13個の分岐鎖アルコキシル化炭化水素である。本発明で使用されるSTSとしては、ST(EOxPOy)Sを挙げることができ、EOxは、0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の繰り返し数xを有する繰り返しエチレンオキシド単位を表し、POyは、0~5、好ましくは0~4、より好ましくは0~2の範囲の繰り返し数yを有する繰り返しプロピレンオキシド単位を表す。例えば、約2の重量平均エトキシル化度を有するST2Sなどの材料は、エトキシレートなし、1モルのエトキシレート、3モルのエトキシレートなどを有する有意な量の分子を含んでもよく、エトキシル化の分布は、広い、狭い、又は切断されたものとなり得、それでもなお約2の総重量平均エトキシル化度をもたらすことができることが理解される。STSは、パーソナルクレンジング用途に特に好適であり、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、STSは主界面活性剤、すなわち、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の総界面活性剤含有量の50重量%超の量で存在し得るものとして使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予想外の発見であった。それに対応して、本発明の特定の実施形態では、STSは、固体シート中の主界面活性剤として使用される。STSが本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約10重量%~約70重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約40重量%~約60重量%の範囲であってもよい。
【0106】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、アルキルサルフェートが挙げられる。これら物質は、対応する式:ROSO3M(式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである)を有する。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。前述したように、非アルコキシル化C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)は、フィルム形成性能及び安定性において、低分子量ポリビニルアルコール(例えば、50,000ダルトン以下の重量平均分子量を有するもの)との適合性のために、可溶性固体シートにおいて、特にその中の主な界面活性剤として、好ましい界面活性剤と考えられている。しかしながら、より高い重量平均分子量(例えば、約50,000~約400,000ダルトン、好ましくは約60,000~約300,000ダルトン、より好ましくは約70,000~約200,000ダルトン、最も好ましくは約80,000~約150,000ダルトン)を有するポリビニルアルコールがフィルム形成剤及び担体として使用されるとき、他の界面活性剤(例えばLAS及び/又はSTS)が、全体的な組成物のフィルム形成性能及び安定性に悪影響を及ぼすことなく、固体シート中の主な界面活性剤として使用され得ることは、本発明の驚くべきかつ予期せぬ発見であった。したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、固体シートの約20重量%以下、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%、最も好ましくは0重量%~約1重量%のASを有する固体シートを提供することが望ましい。
【0107】
本発明の実施に好適なアニオン性界面活性剤の別のカテゴリとしては、C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(alkylalkoxy sulfates、AAS)が挙げられる。このカテゴリの中でも、対応する式RO(C2H4O)xSO3Mを有する直鎖又は分岐鎖アルキルエトキシサルフェート(alkylethoxy sulfates、AES)が特に好ましく、式中、Rは、約6~約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは1~10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。好ましくは、Rは、約6~約18個、好ましくは約8~約16個、より好ましくは約10~約14個の炭素原子を有する。AES界面活性剤は、典型的には、エチレンオキシドと約6~約20個の炭素原子を有する一価アルコールとの縮合生成物として作製される。有用なアルコールは、脂肪、例えば、ココナッツ油若しくは獣脂から誘導され得るか、又は合成であり得る。本明細書では、ココナッツ油から誘導されるラウリルアルコール及び直鎖アルコールが好ましい。このようなアルコールは、約1~約10、好ましくは約3~約5、特に約3の、モル割合のエチレンオキシドと反応され、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する得られた分子種の混合物は、スルフェート化され、中和される。非常に好ましいAESは、個々の化合物の混合物を含むものであり、混合物は、約10~約16個の炭素原子の平均アルキル鎖長、及び約1~約4モルのエチレンオキシドの平均エトキシル化度を有する。AASが本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約8重量%~約12重量%の範囲であってもよい。
【0108】
他の好適なアニオン性界面活性剤には、一般式[R1-SO3-M]の有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられ、式中、R1は約6~約20個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルからなる群から選択され、Mはカチオンである。アルカリ金属及びアンモニウムスルホン化C10~18n-パラフィンが好ましい。他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約12~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。オレフィンスルホネートが誘導されるα-オレフィンは、約12~約24個の炭素原子、好ましくは約14~約16個の炭素原子を有するモノ-オレフィンである。好ましくは、それらは直鎖オレフィンである。
【0109】
布地及びホームケア組成物に使用するのに好適なアニオン性界面活性剤の別の部類は、β-アルキルオキシアルカンスルホン酸塩である。これらの化合物は、以下の式を有し、
【0110】
【化1】
式中、R
1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R
2は、約1(好ましい)~約3個の炭素原子を有する低アルキル基であり、Mは、上述の水溶性カチオンである。
【0111】
好適なアニオン性界面活性剤の更なる例は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された脂肪酸の反応生成物(例えば、脂肪酸はココナツ油に由来する)、例えば、脂肪酸がココナツ油に由来するメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム又はカリウム塩である。更に他の好適なアニオン性界面活性剤は、スクシネートであり、その例としては、二ナトリウムN-オクタデシルスルホスクシネート、ジアンモニオウムラウリルスルホスクシネート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシナメート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0112】
本発明の固体シートに含まれ得る非イオン性界面活性剤としては、アルキルアルコキシル化アルコール、アルキルアルコキシル化フェノール、アルキル多糖類(特にアルキルグルコシド及びアルキルポリグルコシド)、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体、アミンオキシドなどが挙げられるがこれらに限定されない、任意の従来の非イオン性界面活性剤であってよい。好ましい非イオン性界面活性剤は、式R1(OC2H4)nOH(式中、R1はC8~C18アルキル基又はアルキルフェニル基であり、nは約1~約80である)のものである。特に好ましいのは、Shellから市販されているNEODOL(登録商標)非イオン性界面活性剤などの、約1~約20、好ましくは約5~約15、より好ましくは約7~約10の重量平均エトキシル化度を有するC8~C18アルキルエトキシル化アルコールである。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の他の非限定例としては、アルコキシレート単位がエチレンオキシ単位、プロピレンオキシ単位、又はこれらの混合物であり得るC6~C12アルキルフェノールアルコキシレート;C12~C18アルコール、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーとのC6~C12アルキルフェノール縮合物、例えば、BASF製のPluronic(登録商標);C14~C22中鎖分岐鎖アルコール(branched alcohol、BA);C14~C22中鎖分岐鎖アルキルアルコキシレート、BAEx(式中、xは1~30である);アルキル多糖類、具体的にはアルキルポリグリコシド;ポリヒドロキシ脂肪酸アミド;並びにエーテル末端処理ポリ(オキシアルキル化)アルコール界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、商標名Lutensol(登録商標)としてBASFから販売されているものも挙げられる。
【0113】
好ましい実施形態では、ソルビタンエステル及びソルビタンエステルのアルコキシル化誘導体から選択される非イオン性界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)20)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、トリオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)85)、イソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(Tween(登録商標)80)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)21)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(Tween(登録商標)61)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(Tween(登録商標)81)(これらは全てUniqemaから入手可能)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0114】
本発明の実施に最も好ましい非イオン性界面活性剤としては、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(alkylalkoxylated alcohols、AA)、より好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールが挙げられる。AAタイプの非イオン界面活性剤が本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約8重量%~約12重量%の範囲であってもよい。
【0115】
本発明の固体シートでの使用に好適な両性界面活性剤としては、脂肪族二級及び三級アミンの誘導体として広く記載されるものが挙げられ、脂肪族ラジカルは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つは、約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性水溶性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。この定義に該当する化合物の例は、3-ドデシルアミノプロピオン酸ナトリウム、3-ドデシルアミノプロパンスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルアミンをイセチオン酸ナトリウムと反応させることで調製されるもののようなN-アルキルタウリン、及びN-高級アルキルアスパラギン酸である。
【0116】
パーソナルケア用途(例えば、シャンプー、顔又は身体洗浄剤など)を有する固体シートへの組み込みに特に好適な両性界面活性剤の1つのカテゴリとしては、ラウロアンホアセテート及びココアンホアセテートなどのアルキルアンホアセテートが挙げられる。アルキルアンホアセテートは、モノアセテート及びジアセテートで構成され得る。アルキルアンホアセテートのいくつかのタイプでは、ジアセテートは、不純物又は意図しない反応生成物である。アルキルアンホ酢酸が本発明の固体シートに存在する場合、その量は、固体シートの総重量に対して約2重量%~約40重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%、より好ましくは約10重量%~約20重量%の範囲であってもよい。
【0117】
好適な双極性界面活性剤としては、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記述されるものが挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つが約8~約18個の炭素原子を含有し、1つがアニオン性基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート又はホスホネートを含有。そのような好適な双極性界面活性剤は、次式で表すことができる。
【0118】
【化2】
式中、R
2は、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、Yは、窒素、リン、及び硫黄原子からなる群から選択され、R
3は、約1~約3個の炭素原子を含有するアルキル又はモノヒドロキシアルキル基であり、Xは、Yが硫黄原子であるとき、1であり、Yが窒素又はリン原子であるとき、2であり、R
4は、約1~約4個の炭素原子のアルキレン又はヒドロキシアルキレンであり、Zは、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、及びホスフェート基からなる群から選択されるラジカルである。
【0119】
本明細書での使用に好適な他の双極性界面活性剤としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ココベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、オレイルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルαカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルγ-カルボキシプロピルベタイン、及びラウリルビス-(2-ヒドロキシプロピル)α-カルボキシエチルベタインのような高級アルキルベタインを含むベタインが挙げられる。スルホベタインは、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス-(2-ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタインなどで表すことができ、RCONH(CH2)3ラジカル(式中、Rは、C11~C17アルキルである)がベタインの窒素原子に付着する、アミドベタイン及びアミドスルホベタインも本発明においてやはり有用である。
【0120】
カチオン性界面活性剤はまた、本発明において、特に布地柔軟剤及びヘアコンディショナー製品において利用することができる。カチオン性界面活性剤を主界面活性剤として含有する製品を作製する際に使用される場合、このようなカチオン性界面活性剤は、固体シートの総重量に対して約2%~約30%、好ましくは約3%~約20%、より好ましくは約5%~約15%の範囲の量で存在することが好ましい。
【0121】
カチオン性界面活性剤は、ジアミド活性成分、並びにアミド結合及びエステル結合の混合を有する活性成分を包含するDEQA化合物を含み得る。好ましいDEQA化合物は、典型的には、MDEA(メチルジエタノールアミン)及びTEA(トリエタノールアミン)などのアルカノールアミンを脂肪酸と反応させることによって作製される。このような反応から典型的に得られるいくつかの物質としては、N,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又はN,N-ジ(アシル-オキシエチル)-N,N-メチルヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられ、式中、アシル基は、動物脂、不飽和及び多価不飽和脂肪酸から誘導される。
【0122】
カチオン性界面活性剤としての使用に好適な他の活性成分としては、例えば、分子比約2:1での、脂肪酸とジアルキレントリアミンとの反応生成物が挙げられ、反応生成物は、次式の化合物を含有する。
R1-C(O)-NH-R2-NH-R3-NH-C(O)-R1
式中、R1、R2は、上記に定義したとおりであり、各R3は、C1~6アルキレン基、好ましくはエチレン基である。これらの活性成分の例は、約2:1の分子比でのタロー酸、キャノーラ酸又はオレイン酸とジエチレントリアミンとの反応生成物であり、反応生成物混合物は、それぞれ、次式のN,N”-ジタローオイルジエチレントリアミン、N,N”-ジキャノーラ-オイルジエチレントリアミン、又はN,N”-ジオレオイルジエチレントリアミンを含有する。
R1-C(O)-NH-CH2CH2-NH-CH2CH2-NH-C(O)-R1
式中、R2及びR3は二価エチレン基であり、R1は上記に定義したとおりであり、R1が植物若しくは動物供給源から誘導される市販のオレイン酸のオレオイル基である場合、この構造の許容可能な例としては、Henkel Corporationから入手可能なEMERSOL(登録商標)223LL又はEMERSOL(登録商標)7021が挙げられる。
【0123】
カチオン性界面活性剤として使用される別の活性成分は、次式を有する。
[R1-C(O)-NR-R2-N(R)2-R3-NR-C(O)-R1]+X-
式中、R、R1、R2、R3及びX-は、上記のように定義される。この活性成分の例は、次式を有するジ脂肪アミドアミン系柔軟剤である。
[R1-C(O)-NH-CH2CH2-N(CH3)(CH2CH2OH)-CH2CH2-NH-C(O)-R1]+CH3SO4
-
式中、R1-C(O)は、オレオイル基、ソフトタロー基、又は硬化タロー基であり、DegussaからそれぞれVARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)222、及びVARISOFT(登録商標)110の商品名で市販されている。
【0124】
カチオン性界面活性剤として使用するための活性成分として好適な第2のタイプのDEQA(「DEQA(2)」)化合物は、次の一般式を有する。
[R3N+CH2CH(YR1)(CH2YR1)]X-
(式中、各Y、R、R1、及びX-は、上記と同じ意味を有する)。好ましいDEQA(2)の例は、式1,2-ジ(アシルオキシ)-3-トリメチルアンモニオプロパンクロリドを有する「プロピル」エステル四級アンモニウム布地柔軟剤活性物質である。
【0125】
本発明のパーソナルケア組成物での使用に好適な高分子界面活性剤としては、限定するものではないが、エチレンオキシドと脂肪族アルキル残基(fatty alkyl residues)とのブロックコポリマー、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、疎水変性ポリアクリレート、疎水変性セルロース、シリコーンポリエーテル、シリコーンコポリオールエステル、ジ四級ポリジメチルシロキサン、及び共修飾されたアミノ/ポリエーテルシリコーンが挙げられる。
【0126】
好ましい実施形態では、第1の界面活性剤は、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0127】
3.可塑剤
本発明の好ましい実施形態では、本発明の可撓性多孔質溶解性固体シートは、好ましくは、固体シートの総重量に対して約0.1重量%~約25重量%、好ましくは約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~約15重量%、最も好ましくは2重量%~12重量%の範囲の量で可塑剤を更に含み得る。それに対応して、このような固体シートを形成するために使用される湿潤プレミックスは、湿潤プレミックスの約0.02重量%~約20重量%の可塑剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.1重量%~約10重量%の可塑剤、一実施形態では湿潤プレミックスの約0.5重量%~約5重量%の可塑剤を含み得る。
【0128】
本発明で使用されるのに好適な可塑剤としては、例えば、ポリオール、コポリオール、ポリカルボン酸、ポリエステル、ジメチコンコポリオールなどが挙げられる。
【0129】
有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール(特に200~600)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセロール誘導体(プロポキシル化グリセロールなど)、グリシドール、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、ペンタエリスリトール、尿素、糖アルコール(ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、マルチトール、及び他のモノ-及び多価アルコールなど)、モノ-、ジ-及びオリゴ-糖(フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、高フルクトースコーンシロップ固形物、及びデキストリンなど)、アスコルビン酸、ソルビン酸塩、エチレンビスホルムアミド、アミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
ポリカルボン酸の例としては、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
好適なポリエステルの例としては、グリセロールトリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
好適なジメチコンコポリオールの例としては、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、及びPPG-12ジメチコンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
他の好適な可塑剤としては、アルキル及びアリルフタレート;ナフタレート;乳酸塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、及びカリウム塩);ソルベス-30;尿素;乳酸;ピロリドンカルボン酸ナトリウム(pyrrolidone carboxylic acid、PCA);ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸;可溶性コラーゲン;変性タンパク質;L-グルタミン酸モノナトリウム;α&βヒドロキシル酸、例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸及びサリチル酸;ポリメタクリル酸グリセリル;ポリマー可塑剤、例えば、ポリクオタニウム;タンパク質、並びに、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びリシンなどのアミノ酸;水素デンプン加水分解産物;その他低分子量エステル(例えば、C2~C10アルコールと酸とのエステル);及び、食品及びプラスチック業界の当業者に既知である任意の他の水溶性可塑剤;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
可塑剤の特に好ましい例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい可塑剤はグリセリンである。
【0135】
4.追加成分
上述の成分、例えば、水溶性ポリマー、界面活性剤、及び可塑剤に加えて、本発明の固体シートは、その意図される用途に応じて、1つ以上の追加成分を含んでもよい。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、苦味剤並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。好ましい実施形態では、本発明の固体シートは、苦味剤を含んでもよい。
【0136】
好適な布地ケア活性物質としては、有機溶媒(直鎖又は分岐鎖の低級C1~C8アルコール、ジオール、グリセロール、又はグリコール;C1~C4アルカノールアミンなどのより低級のアミン溶媒、及びこれらの混合物;より具体的には、1,2-プロパンジオール、エタノール、グリセロール、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミン)、担体、ヒドロトロープ、ビルダー、キレート剤、分散剤、酵素及び酵素安定剤、触媒材料、漂白剤(光漂白剤を含む)及び漂白活性化剤、香料(カプセル化香料又は香料マイクロカプセルを含む)、着色剤(色相染料を含む、顔料及び染料など)、増白剤、移染防止剤、粘土汚れ除去/再付着防止剤、構造化剤、レオロジー変性剤、抑泡剤、加工助剤、布地柔軟剤、抗菌剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
好適なヘアケア活性物質としては、縮れ減少のためのクラスIIの水分調整物質(サリチル酸及び誘導体、有機アルコール、及びエステル)、カチオン性界面活性剤(特に、25℃の水への溶解度が、好ましくは0.5g/水100g未満、より好ましくは0.3g/水100g未満である非水溶性タイプ)、高融点脂肪族化合物(例えば、25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更により好ましくは50℃以上の融点を有する脂肪族アルコール、脂肪酸、及びこれらの混合物)、シリコーン化合物、コンディショニング剤(Hormelから入手可能な商標名Peptein 2000を有する加水分解コラーゲン、Eisaiから入手可能な商標名Emix-dのビタミンE、Rocheから入手可能なパンテノール、Rocheから入手可能なパンテニルエチルエーテル、加水分解ケラチン、タンパク質、植物抽出物、及び栄養素)、防腐剤(ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素など)、pH変性剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、リン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、塩(酢酸カリウム及び塩化ナトリウムなど)、着色剤、香料又は芳香剤、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなど)、紫外線及び赤外線スクリーニング及び吸収剤(サリチル酸オクチルなど)、毛髪脱色剤、毛髪パーマ剤、毛髪固定剤、抗ふけ剤、抗菌剤、育毛剤又は補充剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
好適な美容及び/又はスキンケア活性物質としては、化粧品での使用が認可され、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition,The Cosmetic,Toiletries,and Fragrance Association,Inc.1988,1992などの参考文献に記載されている物質が挙げられる。好適な美容及び/又はスキンケア活性物質の更なる非限定的な例としては、防腐剤、香料又は芳香剤、着色剤又は染料、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、医薬活性物質、ビタミン又は栄養素、日焼け止め剤、脱臭剤、感覚剤、植物抽出物、栄養素、収れん剤、化粧品粒子、吸収性粒子、繊維、抗炎症剤、美白剤、皮膚色調剤(皮膚色調全体を改善するように機能し、ビタミンB3化合物、糖アミン、ヘキサミジン化合物、サリチル酸、ヘキシルレゾルシノール及びレチノイドなどの1,3-ジヒドロキシ-4-アルキルベンゼンを含み得る)、皮膚日焼け剤、剥離剤、保湿剤、酵素、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、抗しわ活性物質、抗にきび剤、酸、塩基、ミネラル、懸濁剤、pH調整剤、顔料粒子、抗菌剤、防虫剤、シェービングローション剤、共溶媒又は他の追加の溶媒などが挙げられる。
【0139】
好適な苦味剤は、デナトニウム塩又はその誘導体を含む。一態様では、苦味剤は、塩化デナトニウム、クエン酸デナトニウム、デナトニウムサッカリド、炭酸デナトニウム、酢酸デナトニウム、デナトニウムベンゾエート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるデナトニウム塩である。一態様では、固体シートは第1のデナトニウム塩を含み、コーティング組成物は、第1のデナトニウム塩とは異なる第2のデナトニウム塩を含む。
【0140】
特に好ましい苦味剤は、フェニルメチル-[2-[(2,6-ジメチルフェニル)アミノ]-2-オキソエチル]-ジエチルアンモニウムベンゾエート(CAS番号3734-33-6)としても知られている、デナトニウムベンゾエートである。デナトニウムベンゾエートは、BITREX(登録商標)として市販されており、Macfarlan Smith,Edinburgh,Scotland,UKから入手可能である。
【0141】
いくつかの態様では、苦味剤は天然の苦味物質である。いくつかの態様では、苦味剤は約1000~約200000の苦味値を有する。いくつかの態様では、苦味剤は約1000~約200000の苦味値を有する天然の苦味物質であり、この天然の苦味物質は、グリコシド、イソプレノイド、アルカノイド、アミノ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、好適な苦味剤としては、クエルセチン(3,3’,4’,5,7-ペンタヒドロキシフラボン);ナリンギン(4’,5,7-トリヒドロキシフラバノン-7-ラムノグルコシド);アウクビン;アマロゲンチン;ジヒドロフォリアメンチン;ゲンチオピクロシド;ゲンチオピクリン;スウェルチアマリン;スウエロシド;ゲンチオフラボシド;センタウロシド;メチアフォリン;ハルパゴシド;センタピクリン;サイリシン;コンジュランジン;アブシンチン;アルタブシン;クニシン;ラクチュシン;ラクチュコピクリン;サロニテノリド;a-ツジョン;β-ツジョン;デソキシリモネン;リモニン;イチャンギン(Ichangin);イソオバクン酸;オバクノン;オバクン酸;ノミリン;イチャンギン(Ichangin);ノミリン酸;マルビン;プラマルビン;カルノソール;カルノシン酸;クァシン;塩酸キニーネ;硫酸キニーネ;二塩酸キニーネ;コロンバイン;カフェイン;トレオニン;メチオニン;フェニルアラニン;トリプトファン;アルギニン;ヒスチジン;バリン;アスパラギン酸;スクロースオクタアセタート、及びこれらの混合物も挙げられる。他の好適な苦味剤としては、二硫酸キニーネ及びホップ抽出物(例えば、humulone)が挙げられる。
【0142】
固体シートは、固体シートの約0.00001重量%~約1重量%、又は約0.0001重量%~約0.5重量%、又は約0.001重量%~約0.25重量%、又は約0.01重量%~約0.1重量%の苦味剤を含んでもよい。いくつかの態様では、固体シートは、苦味を提供するのに十分な量の苦味剤を含む。
【0143】
本発明の固体シートは、組成物での使用が既知であるか、あるいは有用であるような他の任意選択的な成分を更に含んでもよく、かかる任意選択的な材料は、本明細書に記載の選択された不可欠な材料と互換性があるか、あるいは過度に製品性能を損なわないという条件で含まれる。
【0144】
本発明の固体シートによって形成され得る製品タイプの実施形態の非限定的な例としては、洗濯洗剤製品、布地柔軟製品、手洗浄製品、毛髪シャンプー又は他の毛髪処理製品、ボディクレンジング製品、シェービング調製製品、食器洗浄製品、医薬又は他のスキンケア活性物質を含有するパーソナルケア基材、保湿製品、日焼け止め製品、美容製品又はスキンケア製品、脱臭製品、口腔ケア製品、女性用洗浄製品、ベビーケア製品、芳香剤含有製品などが挙げられる。
【0145】
VI.コーティング組成物の配合物
本開示によるコーティング組成物(本明細書において「ジュース」とも称される)は、第2の界面活性剤を含み得る。コーティング組成物は、20℃及び1s-1で測定されるとき、約1cps~約25,000cps、好ましくは約2cps~約10,000cps、より好ましくは約3cps~約5,000cps、最も好ましくは約1,000cps~約5,000cpsの粘度を有し得る。粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる1.0レシプロカル秒の剪断速度で測定する。
【0146】
1.第2の界面活性剤
第2の界面活性剤は、所望の洗浄効果を実現するための活性成分として機能し得る。いくつかの実施形態では、第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤と同じであり得る。他の実施形態では、第2の界面活性剤は、第1の界面活性剤とは異なり得る。第2の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。固体物品の所望の用途及び達成すべき所望の消費者利益に応じて、異なる界面活性剤を選択することができる。本発明の好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0147】
「第1の界面活性剤」のセクションで列挙される任意のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び/若しくは高分子界面活性剤又はこれらの任意の組み合わせを、第2の界面活性剤として使用することができる。
【0148】
好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、C6~C20直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0149】
より好ましい実施形態では、第2の界面活性剤は、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC6~C20直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、好ましくは7~9の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC12~C14直鎖エトキシル化アルコールを含み得る。
【0150】
特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~95重量%、好ましくは1重量%~85重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の第2の界面活性剤を含み得る。
【0151】
2.溶媒
コーティング組成物は、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る溶媒を更に含み得る。溶媒は、有機溶媒であり得る。
【0152】
特に、溶媒は、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。より具体的には、溶媒は、ジプロピレングリコールであり得る。コーティング組成物中の溶媒の存在は、更により改善された溶解プロファイルをもたらし得る。
【0153】
特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%、好ましくは1重量%~70重量%、より好ましくは2重量%~30重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の溶媒を含み得る。
【0154】
好ましくは、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満、更により好ましくは10%未満、更により好ましくは5%未満、更により好ましくは3%未満、更により好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満、例えば、0.01%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%又はそれらの間の任意の範囲の水を含み得る。適切な量の水の存在は、追加の利益をもたらし得、例えば、シート間の付着を容易にし、及び/又はレオロジーを変更し、及び/又は更には溶解を更に改善し得る。
【0155】
3.レオロジー変性剤
コーティング組成物は、好ましくは、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの微粉化無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;並びにガムからなる群から選択されるレオロジー変性剤を更に含み得る。レオロジー変性剤の存在は、レオロジー、例えば粘度を変更することを容易にし得る。
【0156】
特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~95重量%、好ましくは0.5重量%~85重量%、より好ましくは1重量%~50重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲のレオロジー変性剤を含み得る。
【0157】
更なる実施形態では、レオロジー変性剤は、セルロース及び誘導体であってもよく、その非限定的な例としては、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースサルフェート、セルロース粉末、及び疎水変性セルロースが挙げられる。
【0158】
一実施形態では、レオロジー変性剤は、グアー又はグアー誘導体であってもよく、その非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルグアー、及びヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。
【0159】
一実施形態では、レオロジー変性剤は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマーであり得る。
【0160】
一実施形態では、レオロジー変性剤は、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体であってもよい。
【0161】
更なる実施形態では、レオロジー変性剤は、ポリビニルアルコール及び誘導体であり得る。
【0162】
更なる実施形態では、レオロジー変性剤は、ポリエチレンイミン及び誘導体であり得る。
【0163】
別の実施形態では、レオロジー変性剤は、二酸化ケイ素であり得、その非限定的な例としては、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、及びシリコーン表面処理シリカが挙げられる。
【0164】
一実施形態では、レオロジー変性剤は、水膨潤性粘土であってもよく、その非限定的な例としては、ラポナイト、ベントライト、モンモリロナイト、スメクタイト、及びヘクトナイトが挙げられる。
【0165】
一実施形態において、レオロジー変性剤はガムであってもよく、その非限定的な例としては、キサンタンガム、グアーガム、ヒドロキシプロリルグアーガム、アラビアガム、トラガント、ガラクタン、カロブガム、カラヤガム、及びローカストビーンガムが挙げられる。
【0166】
4.香料
コーティング組成物は、香料(例えば、遊離香料、カプセル化香料)を更に含み得る。好ましくは、香料は、遊離香料、香料マイクロカプセル、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。特に、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の香料を含み得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物中の当該第2の界面活性剤の当該香料に対する重量比は、約1:50~約50:1、好ましくは約1:20~約20:1、より好ましくは約1:1~約10:1、最も好ましくは約2:1~約8:1、例えば、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1又はそれらの間の任意の範囲であり得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%の本開示による固体物品中の香料がコーティング組成物中に存在する。それは、香料の性能の改善、例えば、寿命、香料安定性、堆積又は放出利益をもたらし得る。
【0169】
5.追加成分
上記の成分に加えて、本発明のコーティング組成物は、その意図された用途に応じて、1つ以上の追加の成分を含み得る。このような1つ以上の追加成分は、布地ケア活性物質、食器洗浄活性物質、硬質表面洗浄活性物質、美容及び/又はスキンケア活性物質、パーソナルクレンジング活性物質、ヘアケア活性物質、口腔ケア活性物質、女性ケア活性物質、ベビーケア活性物質、苦味剤並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0170】
特に、コーティング組成物は、シリコーン、軟化剤、漂白剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、光沢剤、色相染料、ポリマー、パーソナルケア活性物質(例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、及びコンディショニング剤)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含み得る。
【0171】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に対して0.0001重量%~99重量%、好ましくは1重量%~95重量%、より好ましくは10重量%~80重量%、例えば、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%又はそれらの間の任意の範囲の追加の成分を含み得る。
【0172】
VII.複数の固体シート及びコーティング組成物のコーティング組成物を含有する多層溶解性固体物品への変換
本発明の可撓性溶解性多孔質固体シートが形成されると、上述したように、そのようなシートの2つ以上をコーティング組成物を塗布することによって更に組み合わせ及び/又は処理して、球状、立方体、長方形、楕円形、円筒形、ロッド、シート、花形、扇型、星形、ディスク形状などが挙げられるが、これらに限定されない任意の望ましい三次元形状の溶解性固体物品を形成することができる。シートは、例として化学的手段、機械的手段、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない当該技術分野において既知の任意の手段によって、組み合わされ得る及び/又は処理され得る。このような組み合わせ工程及び/又は処理工程は、本明細書において集合的に「変換」プロセスと称され、すなわち、これは、本発明の2つ以上の可撓性溶解性多孔質シートを、コーティング組成物を含有する溶解性固体物品に変換するように機能する。
【0173】
本発明の驚くべきかつ予期せぬ発見は、コーティング組成物を含有する三次元多層固体物品が、同じ全体量の界面活性剤を有するがコーティング組成物を含まない多層固体物品よりも著しく改善された溶解プロファイルを有することである。
【0174】
更に、本発明の多層溶解性固体物品は、最大寸法D及び最小寸法z(最大寸法に対して垂直である)によって特徴付けられ得、D/z比(以下、「アスペクト比」とも称される)は、1~約10、好ましくは約1.4~約9、好ましくは約1.5~約8、より好ましくは約2~約7の範囲である。アスペクト比が1である場合、溶解性固体物品は球状の形状を有することに留意されたい。アスペクト比が約1.4である場合、溶解性固体物品は立方体形状を有する。本発明の多層溶解性固体物品は、約3mm超であるが約20cm未満、好ましくは約4mm~約10cm、より好ましくは約5mm~約30mmの最小寸法zを有してもよい。
【0175】
上述の多層溶解性固体物品は、このような可撓性溶解性多孔質シートを2つ以上含んでもよい。例えば、それは、約4~約50、好ましくは約5~約40、更に好ましくは約6~約30の可撓性溶解性多孔質シートを含んでもよい。本発明に従って作製された可撓性溶解性多孔質シート内の改善されたOCF構造は、多くのシート(例えば、15~40)を一緒に積み重ねることを可能にする一方で、積層体に十分な全体的溶解速度を依然として提供する。
【0176】
本発明の特に好ましい実施形態では、多層溶解性固体物品は、上述の可撓性溶解性多孔質シートの15~40層を含み、約2~約7の範囲のアスペクト比を有する。
【0177】
特に、コーティング組成物は、任意の適切な手段、例えば、噴霧、散布、散粉、コーティング、拡散、浸漬、注入、又は更には蒸着によって、多層溶解性固体物品の個々のシートの間に塗布することができる。より具体的には、コーティング組成物は、積層体内の隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布することができる。好ましい実施形態では、個々のシートの周辺付近のカットシール又はエッジシールに対するコーティング組成物の干渉を回避するために、コーティング組成物を、それぞれのシートの塗布面の各々の中央領域に塗布してもよく、これは、好ましくは、そのような隣接するシートの周辺から最大寸法Dの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%の距離だけ離間されている領域として定義される。代替的な好ましい実施形態では、当該コーティング組成物は、それぞれのシートの塗布面全体に塗布され、好ましくは、塗布面積が、塗布面の総面積の少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは98%、最も好ましくは99%を占める。
【0178】
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、固体物品中の任意の隣接するシートのうちの一方又は両方の接触面に塗布され得る。別の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、積層体内の中間の2つのシートのうちの一方又は両方の接触面に塗布され得る。更に別の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、2つの最外部シートを除く積層体内の任意の2つの隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布され得る。
【0179】
本明細書で使用するとき、「中間の2つのシート」という用語は、一緒に積み重ねられたシートの配列の中間に位置する2つの隣接するシートを意味する。特に、シートの総数が奇数(例えば、7)である場合、中間の2つのシートは、中央に位置するシート及びその2つの隣接するシートのうちのいずれか(例えば、3番目及び4番目のシート又は4番目及び5番目のシート)を含み、シートの総数が偶数(例えば、6)である場合、中間の2つのシートは、中央に位置する2つのシート(例えば、3番目及び4番目のシート)を含む。
【0180】
多層溶解性固体物品は、物品の総重量に対して0.1重量%~90重量%、好ましくは1重量%~80重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、最も好ましくは10重量%~60重量%、例えば、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%又はそれらの間の任意の範囲のコーティング組成物を含み得る。
【0181】
多層溶解性固体物品は、物品の総重量に対して10重量%~99.9重量%、好ましくは20重量%~99重量%、より好ましくは30重量%~95重量%、最も好ましくは40重量%~90重量%、例えば、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、99重量%又はそれらの間の任意の範囲の固体シートを含み得る。
【0182】
本発明の多層溶解性固体物品は、そのような物品の外面(例えば、1つ以上の側面)から見える、異なる色の個々のシートを含んでもよい。異なる色のこのような可視シートは、消費者にとって審美的に心地良いものである。更に、個々のシートの異なる色は、個々のシートに含まれる異なる有益剤を示す視覚的手がかりを提供することができる。例えば、多層溶解性固体物品は、第1の色を有しかつ第1の有益剤を含有する第1のシートと、第2の色を有しかつ第2の有益剤を含有する第2のシートとを含んでもよく、第1の色は、第1の有益剤を示す視覚的手がかりを提供し、第2の色は、第2の有益剤を示す視覚的手がかりを提供する。
【0183】
試験法
試験1:シート物品の表面平均孔径を決定する走査型電子顕微鏡(SEM)方法
Hitachi TM3000 Tabletop Microscope(S/N:123104-04)を使用して、サンプルのSEM顕微鏡写真を取得する。本発明の固体シート物品のサンプルは、面積約1cm×1cmであり、より大きなシートから切断される。画像を倍率50Xで収集し、ユニットを15kVで動作させる。最低5つの顕微鏡画像を、各サンプルにわたってランダムに選択された位置から収集し、平均孔径が推定される約43.0mm2の総分析面積を得る。
【0184】
次いで、SEM顕微鏡写真を、まず、Matlab内の画像解析ツールボックスを使用して処理する。必要に応じて、画像をグレースケールに変換する。所与の画像について、Matlabの「imhist」関数を使用して、単一画素ごとの強度値のヒストグラムを生成する。典型的には、このようなヒストグラムから、細孔内のより明るいシート表面の画素及びより暗い領域の画素に対応する2つの別個の分布が明らかとなる。これら2つの分布のピーク値間の強度値に対応する閾値を選択する。次いで、この閾値よりも低い強度値を有する全ての画素を、0の強度値に設定し、それよりも強度値が高い画素を1に設定し、これによって、2値の白黒画像を生成する。次いで、その2値画像を、ImageJ(https://imagej.nih.gov、バージョン1.52a)を使用して分析し、細孔面積比及び孔径分布の両方を調べる。各画像のスケールバーを使用して、画素/mmスケーリング係数を提供する。分析のために、自動閾値化機能及び分析粒子機能を使用して、各細孔を分離する。分析関数からの出力は、画像全体と細孔面積とに対する面積比及び検出された細孔ごとの細孔周長を含む。
【0185】
平均孔径は、DA50として定義され、すなわち、総細孔面積の50%は、DA50平均直径以下の水力直径を有する細孔から構成される。
【0186】
水力直径=‘4*細孔面積(m2)/細孔周長(m)’
【0187】
これは、全て円形ではない細孔を考慮するために計算された等価直径である。
【0188】
試験2:連続気泡発泡体(OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚さを決定するためのMicro-Computed Tomographic(μCT)方法
多孔度は、OCFによって占有される全空間に対する空隙空間の比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、全ボクセルに対する空隙ボクセルの比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、全空間に対する固体空間の比率であり、SVFは、全ボクセルに対する占有されたボクセルの比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0189】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な計測器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である。エネルギーレベル:133μAで45kVp;投影:3000;視野:15mm;積分時間:750ms;平均:5回;及びボクセルサイズ:1画素あたり3μm。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0190】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、サンプルの走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、エッジ/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0191】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合しかつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0192】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher ScientificのAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworksのMATLAB(登録商標)(R2017a)を使用して行った。
【0193】
試験3:シート物品の連続気泡含有パーセント
連続気泡含有パーセントを、ガス比重瓶法を通して測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0194】
ASTM標準試験方法D2856は、気体比重瓶(air comparison pycnometer)のより古いモデルを使用して開放気泡の割合を決定するための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に開放気泡パーセントを決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡比率を決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用して、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の等式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定される幾何学的体積を、Accupycによって測定される連続気泡体積と単純に比較する。
【0195】
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積*100
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0196】
試験4:シート物品の最終水分含量
本発明の固体シート物品の最終水分含量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0197】
試験5:シート物品の厚さ
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の厚さを、Mitutoyo Corporation Digital Disk Stand Micrometer Model Number IDS-1012E(Mitutoyo Corporation,965 Corporate Blvd,Aurora,IL,USA 60504)などのマイクロメータ又は隙間ゲージを使用して得る。そのマイクロメータは、直径1インチ、重さ約32グラムのプラテンを有し、約0.09psi(6.32gm/cm2)の印加圧力において厚さを測定する。
【0198】
可撓性多孔質固体シート物品の厚さは、プラテンを上げて、シート物品の一部分をプラテンの真下のスタンド上に置き、注意深くプラテンを下げてシート物品に接触させ、プラテンを離し、シート物品の厚さをミリメートル単位で数値表示装置上で測定することにより、測定する。平らでないより堅い基材の場合を除いて、厚さを可能な限り小さい表面圧力において測定するのを確実にするために、シート物品をプラテンの全てのエッジまで十分に延ばすべきである。
【0199】
試験6:シート物品の坪量
本発明の可撓性多孔質溶解性固体シート物品の坪量を、その面積当たりのシート物品の重量(グラム/m2)として計算する。その面積は、シート物品の外側エッジに直角の平坦表面上の投影面積として計算される。本発明の固体シート物品は、10cm×10cmの正方形サンプルに切断されているため、その面積は既知である。次いで、このような正方形サンプルの各々を秤量し、次に、得られた重量を100cm2の既知の面積で割って、対応する坪量を決定する。
【0200】
不規則な形状の物品に対しては、それが平らな物体である場合、その面積は、したがってそのような物体の外周内で取り囲まれている面積に基づいて計算される。したがって、球状物体に関しては、面積は、平均直径に基づいて3.14×(直径/2)2として計算される。したがって、円筒状物体に対しては、面積は、平均直径及び平均長さに基づいて直径×長さとして計算される。不規則な形状の三次元物体に対しては、その面積は、この側部に直角に方向付けられた平坦表面上に投影される最大外側寸法を備える側部に基づいて計算される。このことは、物体の外側寸法を1枚のグラフ用紙に鉛筆で注意深くトレーシングし、次に正方形を近似的に計数し、その正方形の既知の面積を乗算することによるか、又はスケールを含むトレーシングした領域(コントラストのために陰影がつけられている)の写真を撮り、画像分析技術を用いることにより、その面積を算定することによって達成することができる。
【0201】
試験7:シート物品の密度
本発明の可撓性多孔質固体シート物品の密度は、次の等式によって決定される。計算密度=多孔質固体物の坪量/(多孔質固体物の厚さ×1,000)。可撓性多孔質固体物の坪量及び厚みは、本明細書に記載の方法に従って決定される。
【0202】
試験8:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模の固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下の工程によって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初の工程は、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定する。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが特定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0203】
試験9:シート物品の溶解速度
本発明の溶解性シート又は固体物品の溶解速度は、以下のように測定される。
1. 室温(25℃)の脱イオン水400mLを1Lビーカーに加え、次いで、ビーカーを磁気撹拌板上に置く。
2. 長さ23mm及び厚さ10mmを有する磁気撹拌棒を水に入れ、300rpmで回転するように設定する。
3. Mettler Toledo S230導電率メータを1413μS/cmに較正し、プローブを水のビーカー内に配置する。
4. 各実験において、サンプルの数は、最低0.2gのサンプルが水に溶解するように選択される。
5. 導電率メータ上のデータ記録機能を開始し、サンプルをビーカー内に落下させる。5秒間、ガラスビーカーの直径と同様の直径を有する平坦な鋼板を使用して、水の表面の下にサンプルを浸漬し、それらが表面に浮遊しないようにする。
6. 導電率を、定常状態値に達するまで、少なくとも10分間記録する。
7. 95%溶解に達するのに必要な時間を計算するために、まず、導電率データから10秒の移動平均を計算する。次いで、この移動平均が最終的な定常状態の導電率値の95%を超える時間を推定し、95%の溶解を達成するのに必要な時間として得る。
【0204】
試験10:シート物品のゲル化試験
溶解性固体シート又は物品の溶解中の泡のゲル化は、以下のようにレオメータ振動試験によって測定される。
【0205】
40mm平板ステンレス鋼スピンドル(PU40 SR4067 SS)及び平坦なステンレス鋼ベースプレート(PLS61 S2837 SS)を備えるMalvern Kinexus Lab+レオメータを使用する。標準振動試験「測定_0033単一周波数歪み制御」を、1Hzの振動周波数、1%の歪み、10分の合計測定時間というパラメータを用いてKinexusソフトウェアにロードする。次いで、ソフトウェアから温度設定値工程を削除し、ギャップ設定値が1mmの「ギャップ設定」工程を追加することによって試験プログラムを修正する。データ記録周波数は、1秒当たり1データポイントに設定する。これらの修正は、始動されると、プログラムが直ちに設定値ギャップに進み、設定値ギャップに達するとすぐに測定を開始し、泡及び水が接触するように行う。実験を開始する前に、ベースプレート温度を20℃の一定値の設定値に設定した。
【0206】
スピンドルがレオメータに挿入された状態で、スピンドルをベースプレートギャップ測定値に対してゼロになるように較正プログラムを実行した後、直径40mmの固定シートディスクの積層体は、次いで、シート積層体の底面を平坦なスピンドル表面と接触させて穏やかに平坦化することによってレオメータスピンドルにする。シートは、スピンドル表面への接着を維持するのに十分な接着性を有するため、接着剤は添加しない。
【0207】
シートディスクの塊がスピンドルに接着したら、0.62gの脱イオン水を、調整可能な空気排気ピペットを使用して、ベースプレートの中心に分注する。全ての試験について、常に、同じ質量0.62gの水を添加した。次いで、修正振動試験プログラムを開始した。
【0208】
各サンプルタイプについて最低3回の実験反復を行う。次いで、実験時間及び実験剪断弾性率(弾性成分)データを、Microsoft excelにエクスポートし、以下のパラメータを計算する:ピーク剪断弾性率は、実験で測定された剪断弾性率の最大観察値である。最終剪断弾性率は、10分の実験時間にわたって測定された最後の60データポイントの平均値である(全ての実験において、この平均値の相対標準偏差は1.0%未満であった。そうでなかった場合、その平均値は、最終剪断弾性率の正確な推定値とみなすべきではない)。総面積は、剪断弾性率対時間曲線下の面積であり、周知の台形規則を使用して計算される。これら3つのパラメータのうちのいずれかの高い値は、サンプルの比較的遅い溶解を示す。
【0209】
試験11:コーティング組成物の漏れに対する視覚的スコアリング試験
溶解性シート上に塗布されたコーティング組成物の漏れの視覚的スコアは、以下のように測定する。
【0210】
サンプルが得られたら(すなわち、カットシール後)、カットシールされた多層サンプルの上面及び底面上の色素漏れの程度を評価するために、視覚的スコアリング試験を行った。各サンプルを最初に個々のポリエチレンジップロック(登録商標)バッグに3日間保管した。サンプルに対するいかなる圧縮力も回避するために、全てのサンプルを別々に維持した。
【0211】
3日後、測定するためにサンプルをポリエチレンバッグから取り出した。0.5cm~2.5cmの範囲の半径を有する中空円形金属ディスクを使用して、次のように0~5のスコアを割り当てることによって、各サンプルの底面及び上面の漏れを定量化した。
スコア値=0-明らかな漏れの兆候はない
スコア値=1-漏れ領域は、内部半径0.5cmの円ディスクによって囲まれ得る
スコア値=2-漏れ領域は、内部半径1.0cmの円ディスクによって囲まれ得る
スコア値=3-漏れ領域は、内部半径1.5cmの円ディスクによって囲まれ得る
スコア値=4-漏れ領域は、内部半径2.0cmの円ディスクによって囲まれ得る
スコア値=5-漏れ領域は、内部半径2.5cmの円ディスクによって囲まれ得る
【0212】
染色が複数の別個の場所で発生した場合、上記の方法を各個々の染色場所に適用する。各個々の場所のスコアを合計し、最終的な全体スコアとして使用する。
【0213】
試験12:粘度
液体ジュースの粘度値を、コーン及びプレート形状を有するMalvern Kinexus Lab+レオメータ(CP1/50 SR3468 SS)を使用して、0.054mmのギャップ幅、20℃の温度及び360秒にわたる1.0レシプロカル秒の剪断速度で測定する。
【実施例】
【0214】
実施例1:異なる加熱/乾燥構成によって作製された固体シート内の異なるOCF構造
以下の表1及び表2に記載の以下の界面活性剤/ポリマー組成物を有する湿潤プレミックスを、それぞれ洗濯ケアシート用及びヘアケアシート用に調製する。
【0215】
【0216】
表1に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約14309.8cpsである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.25g/cm3である。
【0217】
【0218】
表2に記載の湿潤プレミックス組成物の粘度は、約19254.6cpsである。通気後、このような通気された湿潤プレミックスの平均密度は、約0.225g/cm3である。
【0219】
可撓性多孔質溶解性固体シートA及びBは、以下の表3に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Aeros)及び回転ドラム乾燥機を使用して、表1及び2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製する。
【0220】
【0221】
可撓性多孔質溶解性固体シートCもまた、以下の表4に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及びホットプレート(底部伝導式加熱を提供する)上に配置された金型を使用して、表2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製する。
【0222】
【0223】
更に、可撓性多孔質溶解性固体シートI及びIIは、以下の表5に記載の以下の設定及び条件を用いて、連続エアレータ(Oakes)及び衝突オーブン上に配置された金型を使用して、表1及び2に記載の上記の湿潤プレミックスから調製される。
【0224】
【0225】
以下の表6~9は、上記の湿潤プレミックス及び乾燥プロセスから作製された、固体シートA~C及び固体シートI~IIについて測定された様々な物理的パラメータ及び孔構造を要約する。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
上記のデータは、本発明の固体シートが主に連続気泡性であり、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートが100μm超の上面平均孔径を有し、衝突オーブンプロセスによって作製された固体シートはそうではないことを示す。具体的には、
図6Aは、シートAの上面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、
図6Bは、固体シートIの上面のSEM画像を示す。
図7Aは、固体シートCの上面のSEM画像を示し、
図7Bは、固体シートIIの上面のSEM画像を示す。
【0231】
更に、上記のデータは、回転ドラム乾燥プロセスによって作製された固体シートが、衝突オーブン乾燥プロセスによって作製された固体シートよりも平均孔径の局所的なばらつきが著しく小さく、特に、底部平均孔径の上部平均孔径に対する比が著しく小さいことを示す。
【0232】
実施例2:ジュースを含まない固体物品と比較した、ジュースを含む固体物品の改善された溶解プロファイル
1)ジュースを含む固体物品及びジュースを含まない固体物品の調製
コーティング組成物を含有する溶解性固体物品(以下、ジュースを含む固体物品と称される)及びコーティング組成物を含まない溶解性固体物品(以下、ジュースを含まない固体物品と称される)は、以下のように調製する。
【0233】
まず、(最小面積1.0×1.0mを有する)大きな固体シートを、セクションIII「固体シートの作製プロセス」の方法に従って調製する。
【0234】
具体的には、固体シートの成分及び追加の水を含有する湿潤プレミックスを最初に調製して、約35重量%の総固形分を得る(すなわち、スラリー中の総含水量は約65重量%である)。スラリー調製方法は、以下のとおりである。
1. まず、水及びグリセリンを一緒にガラスビーカーに加え、オーバーヘッド撹拌機を用いて200rpmで撹拌する。
2. 撹拌を継続しながら、ポリビニルアルコールを、次いで、水及びグリセリンの入ったビーカーにゆっくりと添加し、溶液の発泡又はポリビニルアルコールの凝集が起こらないようにする。
3. 次いでビーカーを水浴に入れ、撹拌を続けながら80℃まで加熱する。ビーカーは、水の蒸発を軽減するためにクリングリフィルム又は錫箔で被覆し、混合を少なくとも1.0時間継続させる。
4. 残りの成分を秤量し、別個のガラスビーカー内で一緒に添加する。スラリー中の65%の総含水量を達成するために必要とされる水の残部もまた、このビーカーに添加される。
5. このビーカーを80℃の水浴に入れ、その内容物をオーバーヘッド撹拌機を使用して500rpmで少なくとも30分間撹拌する。
6. 両方のビーカーで、予め定義された混合時間に到達したら、両方の内容物を一緒に単一のガラスビーカーに加え、続いて500rpmで継続的に撹拌し、温度を少なくとも更に30分間80℃に維持する。
【0235】
このように形成された湿潤プレミックスは、約19254.6cpsの粘度を有する。次いで、以下のように通気される。
1. ジャケット付きホッパ(モデルJCABT10)及びA20混合ヘッドから構成されるAeros A20連続エアレータを、水浴及びポンプを使用して80℃まで予熱する。
2. 次に、前に調製したスラリーをホッパに添加する。次いで、エアレータ装置をオンにし、混合ヘッド速度、供給ポンプ速度、及び空気流量をそれぞれ600、500及び100に設定した。
3. 通気されたスラリーは、エアレータ出口から回収され、その密度は、既知の体積の密度カップを充填し、通気されたスラリーの質量を計量することによって測定される。上記エアレータ設定では、約0.225g/cm3の通気されたスラリー密度が達成される。
【0236】
厚さが約0.8~1.5mmの可撓性及び多孔質固体シートは、以下のように回転ドラム乾燥機プロセスを使用して生成される。
1. 回転ドラム乾燥機(約1.5mのドラム直径を有する)を約130℃まで予熱する。
2. Aeros A20の出口から回収された通気されたスラリーを、ドラム乾燥機の供給トラフに入れる。
3. 入れたらドラム乾燥機の回転を開始し、加熱されたドラム上のスラリー滞留時間が約15分となるように回転速度が設定される。
4. 乾燥したら、そのように形成された可撓性及び多孔質シートは、ドラム表面から剥離され、プラスチック袋に入れられる。
【0237】
次いで、固体シートを、50±2%周囲相対湿度及び23±1℃の温度で24時間保管する(すなわち、馴化工程)。シート1全体の平均厚さは1.2107mmであり、標準偏差は0.0464である。上記の最初の馴化工程に続いて、4cmの中空穴パンチを使用して、最初に大きい固体シートから直径4cmのディスクを切断する。次いで、コーティング組成物が必要とされる場合、コーティング組成物を、以下に記載のコーティング方法Aに従って添加する。
【0238】
コーティング方法Aでは、ピペットを用いて、コーティング組成物の液滴を固体シートの表面上の単一の場所に分注する。この場所は、常に総発泡体の塊の最中心点である。
図8Aは、コーティング方法Aを使用することによって得られる例示的な固体物品を示す。例えば、単一の固体シートが実験に必要な場合、液滴は、その固体シートの底面上の最中心点上に分注する。複数の固体シートが実験で必要である場合、シートの半数をまずヘッド・トゥ・トウ構成に積層し、次いで、コーティング組成物を上部シートの最中心点上に分注し、残りのシートをその上に積層する。単一のシート又は複数の積層シートについて、シートは常に、コーティング組成物がシートの底部面に分配されるように配向する。固体シートを質量天秤上に置き、質量をゼロに風袋引きした状態で、必要な質量のコーティング組成物に達するまで液滴を連続的に添加する。
【0239】
次いで、コーティング組成物の添加後、同じ湿度及び温度条件(50±2%及び23±1℃)でサンプルを更に24時間保管する。
【0240】
シート及びコーティング組成物はそれぞれ、以下の表に示す配合を有する。
【0241】
【0242】
【0243】
3つのタイプのサンプル、物品1~3(1タイプ当たり3つの複製物)を、以下の表に示されるとおりに調製する。
【0244】
【0245】
特に、物品1は、いかなるコーティング組成物も塗布せずに、3つのシート1の層を積層することによって形成される。物品2は、シート1の一層にジュース1を添加し、次いでシート1の別の層を上部に添加して2層積層体を形成することによって形成され、物品3は、シート1の一層にジュース2を添加し、次いでシート1の別の層を上部に添加して2層積層体を形成することによって形成される。コーティング組成物は、コーティング方法Aによって添加する。最後に、全てのサンプルについて、添加されたコーティング組成物の量を、サンプル中の界面活性剤の総質量(シート及びジュースの両方からの)が約0.42グラムに等しくなるように計算する。
【0246】
2)発泡体ゲル化の測定
水溶性ポリマー(例えば、PVA)及び界面活性剤の固体物品中での溶解により、本開示による固体物品を水と接触させるとゲル化が生じる。ゲル化の存在は、OCF構造を介して固体物品中に水が浸透するのを防ぎ、溶解速度を低下させる可能性がある。更に、硬質ゲルが形成されると、固体物品が更に溶解するのが非常に遅くなり、固体物品が洗濯に使用される場合、衣服に残留物を生じる可能性が高い。したがって、ゲル化度が低下すると、溶解プロファイルが改善する。
【0247】
ジュースを含まない固体物品(物品1)及びジュースを含む固体物品(物品2及び3)のゲル化は、試験10に従って決定する。結果を以下に示す。
【0248】
【0249】
化試験の結果も
図9に示す。本開示の出願前には、本開示による固体物品上へのコーティング組成物の充填は、OCF構造を閉塞することにより溶解を損なう可能性があったと考えられていたため、ジュースを含む固体物品(例えば、物品2及び3)が、ジュースを含まない固体物品(例えば、物品1)と比較して、改善された溶解プロファイルを示したことは完全に驚くべきことである。
【0250】
更に、溶媒が添加されたコーティング組成物を含有するサンプル(物品3)の剪断弾性率ピーク値についても、ジュース中に溶媒を含まないサンプル(物品2)と比較して、有意な低減が観察され、このことは、コーティング組成物中に溶媒を含めることが、更により改善された溶解プロファイル(例えば、更に少ないゲル化)をもたらし得ることを示す。
【0251】
実施例3:漏れを生じない固体物品のジュース充填容量
1)異なる量のコーティング組成物を含有する2系統の多層シートの調製
異なるコーティング方法によって塗布された異なる量のコーティング組成物を含有する2系統の多層シートを、系統1は、実施例2に記載されるようにシート1及びジュース1から調製し、系統2は、以下の表に示されるように、シート1及びジュース3(レオロジー変性剤として二酸化ケイ素を含有する)から調製して調製する。これらのサンプルにわたる添加されたジュースの質量は、約2~12gの範囲である。これらの多層サンプルの平均推定シート密度は、0.169g/cm3である。
【0252】
【0253】
そのような多層シートの調製は、最初の馴化工程後、紙ギロチンを使用して大きな固体シートをまず10×10cmシートに切断し、続いて、実施例2に記載のコーティング方法A又は以下のコーティング方法Bに従ってコーティング組成物を添加することを除いて、実施例2のそれと同じである。
【0254】
コーティング方法Bでは、プラスチックローラ(10cmのローラ幅及び2cmの直径を有する)を用いて、コーティング組成物を10×10cmの固体シートにわたって広げる。ローラはまず、10×10cmより大きい平坦な表面を有し、かつ液体のプールを含有する壁付き容器にわたってロールする。次いで、ローラを穏やかに振とうすることによって過剰な液体を除去する。次いで、ローラとシートとの最初の接触点及び圧延方向を、不均一なコーティングを防止するのを助けるように毎回ランダム化して、10×10cmシート全体にわたってローラを最低10回ロールする。コーティング組成物は常に、シートの底部面にわたってロールする。10×10cm固体シートを質量天秤上に置き、質量をゼロに風袋引きした状態で、必要な質量のコーティング組成物がシート表面上に広げられるまでこの手順をシートの底部面に対して繰り返す。しかしながら、
図8Bに示されるように、漏れに対する緩衝剤として作用するように、積層体の上部シート及び底部シートにはジュースを塗布しない。
【0255】
この実施例におけるコーティング方法Aによって調製された全ての多層サンプルは、10×10cmの固体シートの18個の積層された層で構成され、この実施例におけるコーティング方法Bによって調製された全ての多層サンプルは、13個の積層された層で構成される。この実施例では、コーティング組成物が、0.1重量%の染料(Liquitint Violet 129)を含み、香料の含有量は、それに応じて0.1重量%低減される。更に、コーティング組成物が添加されたら、Chhong1トンCH217油圧プレス(S/N HP170726TJ01)を使用することによって、多層積層体を約20°~約50°の範囲の切断角度でカットシールする。カットシールに使用される切断刃は、3182mm2の内部面積を有する不規則な閉鎖形状である。切断後の各シートの質量は、0.57gと測定され、標準偏差は0.019gであった。カットシールサンプルの場合、添加されたコーティング組成物の最終質量は、式:コーティング組成物質量=カットシールサンプルの総質量-18×0.57によって推定した。この等式は、過剰な漏れが発生し、添加されたコーティング組成物の質量の一部がカットシール装置上に漏れた、高コーティング組成物充填量を有する一部のサンプルを明らかにするために使用した。
【0256】
2)漏れスコアの測定
次いで、漏れスコアを、試験11に従って決定する。結果を以下の表に示す。
【0257】
【0258】
【0259】
これは、コーティング組成物のかなりの質量が、有意な漏れなしに塗布され得ることを示す。特に、系統1に関して、結果は、添加されたジュースが4.0g未満である場合、有意な漏れがない(すなわち、スコアが1未満である)ことを示す。また、系統2に関して、結果は、コーティング方法Aの場合、4.0g未満の添加された液体ジュースでは漏れが観察されず(すなわち、スコアが0であり)、コーティング方法Bの場合、6.0g未満の添加された液体ジュースでは漏れが観察されないことを明確に示す。更に、結果は、添加されたジュース質量の全範囲にわたってコーティング方法Bの漏れスコアが一貫して低いことを示す。
【0260】
更に、結果は、好ましいコーティング組成物(例えば、ジュース3)が、更により改善された漏れ防止性能をもたらすことを示す。
【0261】
実施例4:ジュース漏れに対する発泡体構造の効果
1)コーティング組成物を含有する高密度及び低密度多層シートの調製
同じ組成を有する(以下の表16に示されるとおり)が、密度の異なるシートを、同じ湿潤プレミックスから、連続エアレータ上の通気された湿潤プレミックスの目標密度を低密度シート及び高密度シートについて、それぞれ、0.3g/cm3及び0.4g/cm3に変更することによって調製した。高密度シートは、0.177g/cm3の平均推定泡密度を有し、低密度シートは、0.135g/cm3の平均密度を有する。
【0262】
【0263】
コーティング組成物を含有する多層シートは、実施例3で述べたように、添加されたジュース3を用いて上述したような高密度シート又は低密度シートから調製する。具体的には、本明細書において物品4と称される、各々、実施例3で述べたようにコーティング方法Bに従ってジュース3が添加された13層の高密度シートを含む多層シートの3つのサンプルを調製する。同様に、本明細書において物品5と称される、各々、実施例3で述べたようにコーティング方法Bに従ってジュースが添加された18層の高密度シートを含む多層シートの3つのサンプルを調製する。物品4及び物品5の両方の総厚は、各シートの平均厚さを変更することによって20mmに維持する。
【0264】
2)漏れスコアの測定
次いで、物品4及び物品5の平均漏れスコアを、試験11に従って決定する。結果を以下の表に示す。
【0265】
【0266】
結果は、低密度シートで作製された物品5は、有意な漏れ(スコア=0.67)を示さないが、高密度シートで作製された物品4は、ジュースの漏れを生じることを示し(スコア=4.67)、このことは、シートの密度が漏れの防止に重要であり、特に、低密度シートが漏れの発生前により多くのジュースを保持し得ることを示す。
【0267】
実施例5:ジュースによるOCF構造の有意な閉塞なし
1)コーティング組成物を含有する単層シートの調製
単層物品6は、シート1から調製するが、ただし、実施例2で述べたように、いかなる添加されたジュースも用いない。別の単層物品7は、実施例2及び3で述べたように、シート1及びジュース3から調製する。特に、ジュース3は、液体ジュースをシート1の底部面に回転塗布する代わりに、上側に回転塗布することを除いて、コーティング方法Bに従ってシート1に添加する。上部面は底部面よりも更に多孔性であるため、ジュースが有意な細孔閉塞をもたらすかどうかを示すためには上部面がより好適であろう。平均2.8グラムの液体ジュースを添加し、標準偏差は0.3グラムである。
【0268】
2)SEM試験
物品6及び7の上面を視覚化するために、SEM試験を試験1に従って実施する。
図10Aは、物品6の上面を示す。
図10Bは、物品7の上面を示す。高ジュース充填量(約2.8g)を適用した後でも、物品7のOCF構造が有意には損なわれない(すなわち、ジュースによって閉塞されない)ことが明らかである。
【0269】
実施例6:ジュースを含む例示的な固体物品
以下は、ジュースを含む固体物品の例である。シートa~e(表18参照)を実施例2のシート1と同様に調製する。次いで、コーティング方法A又はBに従ってジュースa~f(表19参照)をシートa~eに塗布し、次いで、それぞれのシートを積層して各々10~20個の層を有する多層構造体を形成する。そのような物品は、それぞれ、洗濯及びパーソナルクレンジングケア又はヘアケア(PCC/ヘア)に使用され得る。
【0270】
【0271】
【0272】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0273】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0274】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
本明細書は以下の発明を開示する。
(1)溶解性固体物品を調製するためのプロセスであって、
1)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シート及びコーティング組成物を提供する工程であって、前記2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、前記コーティング組成物が、第2の界面活性剤を含む、工程と、
2)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つのシートの少なくとも1つの表面上に前記コーティング組成物を塗布する工程と、
3)前記2つ以上のシートを積層体に配置して、前記コーティング組成物が前記積層体のいずれの外面上にも存在しないように前記溶解性固体物品を形成する工程と、を含む、プロセス。
(2)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%、最も好ましくは11重量%~25重量%の前記水溶性ポリマーを含み、
好ましくは、前記水溶性ポリマーが、50,000~400,000ダルトン、好ましくは60,000~300,000ダルトン、より好ましくは70,000~200,000ダルトン、最も好ましくは80,000~150,000ダルトンの重量平均分子量を有し、
より好ましくは、前記水溶性ポリマーが、40%~100%、好ましくは50%~95%、より好ましくは65%~92%、最も好ましくは70%~90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである、(1)に記載のプロセス。
(3)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して30重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~70重量%の前記第1の界面活性剤を含み、
好ましくは、前記第1の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、前記第1の界面活性剤が、C
6
~C
20
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、C
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(1)又は(2)に記載のプロセス。
(4)前記コーティング組成物が、約20℃及び1s
-1
で測定されるとき、1cps~25,000cps、好ましくは2cps~10,000cps、より好ましくは3cps~5,000cpsの粘度を有する液体である、(1)~(3)のいずれかに記載のプロセス。
(5)前記第2の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性イオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
好ましくは、前記第2の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含み、
より好ましくは、前記第2の界面活性剤が、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)を含む、(1)~(4)のいずれかに記載のプロセス。
(6)前記コーティング組成物が、溶媒を更に含み、前記溶媒が、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(1)~(5)のいずれかに記載のプロセス。
(7)前記コーティング組成物が、レオロジー変性剤を更に含み、好ましくは、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの微粉化無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるレオロジー変性剤を更に含み、
好ましくは、前記レオロジー変性剤が、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、二酸化ケイ素、水膨潤性粘土、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(1)~(6)のいずれかに記載のプロセス。
(8)前記コーティング組成物が、香料をさらに含み、好ましくは、遊離香料、香料マイクロカプセル、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される香料を更に含む、(1)~(7)のいずれかに記載のプロセス。
(9)前記コーティング組成物中の前記第2の界面活性剤の前記香料に対する重量比が、1:50~50:1、好ましくは1:20~20:1、より好ましくは1:1~10:1、最も好ましくは2:1~8:1である、(8)に記載のプロセス。
(10)前記コーティング組成物が、
1)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~95重量%、好ましくは1重量%~85重量%、より好ましくは10重量%~80重量%の前記第2の界面活性剤、及び/又は
2)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%、好ましくは0.5重量%~70重量%、より好ましくは1重量%~50重量%の前記溶媒、及び/又は
3)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%、好ましくは0.5重量%~70重量%、より好ましくは1重量%~50重量%の前記レオロジー変性剤、及び/又は
4)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは10重量%~80重量%の前記香料
を含む、(1)~(9)のいずれかに記載のプロセス。
(11)前記コーティング組成物が、シリコーン、軟化剤、漂白剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、光沢剤、色相染料、ポリマー、パーソナルケア活性物質及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含む、(1)~(10)のいずれかに記載のプロセス。
(12)前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の水を更に含む、(1)~(11)のいずれかに記載のプロセス。
(13)前記コーティング組成物が、前記溶解性固体物品の総重量に対して0.1重量%~90重量%、好ましくは1重量%~80重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、最も好ましくは10重量%~60重量%の量で塗布される、(1)~(12)のいずれか一項に記載のプロセス。
(14)前記コーティング組成物が、前記積層体内の中間の2つのシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布される、(1)~(13)のいずれかに記載のプロセス。
(15)前記コーティング組成物が、最も外側の2つのシートを除く前記積層体内の任意の2つの隣接するシートの接触面のうちの一方又は両方に塗布される、(1)~(14)のいずれかに記載のプロセス。
(16)前記コーティング組成物が、それぞれの前記シートの塗布面の各々の中央領域に塗布され、前記中央領域が、好ましくは、最大寸法Dの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%の距離だけそれぞれの前記シートの周辺から離間されている領域として定義される、(1)~(15)のいずれか一項に記載のプロセス。
(17)前記コーティング組成物が、それぞれの前記シートの塗布面全体に塗布され、好ましくは、塗布面積が、前記塗布面の総面積の少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは98%、最も好ましくは99%を占める、(1)~(16)のいずれかに記載のプロセス。
(18)2つ以上の可撓性多孔質溶解性シートを含む溶解性固体物品であって、前記2つ以上のシートの各々が、水溶性ポリマー及び第1の界面活性剤を含み、80%~100%の連続気泡含有パーセント及び100μm~2000μmの全体平均孔径によって特徴付けられ、
第2の界面活性剤を含むコーティング組成物が、前記溶解性固体物品のいずれの外面上にも前記コーティング組成物が存在しないことを条件として、前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つの少なくとも1つの表面上に存在する、溶解性固体物品。
(19)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して5重量%~50重量%、好ましくは8重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%、最も好ましくは11重量%~25重量%の前記水溶性ポリマーを含み、
好ましくは、前記水溶性ポリマーが、50,000~400,000ダルトン、好ましくは60,000~300,000ダルトン、より好ましくは70,000~200,000ダルトン、最も好ましくは80,000~150,000ダルトンの重量平均分子量を有し、
好ましくは、前記水溶性ポリマーが、40%~100%、好ましくは50%~95%、より好ましくは65%~92%、最も好ましくは70%~90%の範囲の加水分解度によって特徴付けられるポリビニルアルコールである、(18)に記載の溶解性固体物品。
(20)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して30重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~70重量%の前記第1の界面活性剤を含み、
好ましくは、前記第1の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、前記第1の界面活性剤が、C
6
~C
20
直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、0.5~10の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシサルフェート(AAS)、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)、C
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルサルフェート(AS)及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(18)又は(19)に記載の溶解性固体物品。
(21)前記2つ以上のシートのうちの少なくとも1つが、前記シートの総重量に対して0.00001重量%~1重量%の苦味剤を更に含み、
好ましくは、前記苦味剤が、デナトニウム塩又はその誘導体;ケルセチン(3,3',4',5,7-ペンタヒドロキシフラボン);ナリンギン(4',5,7-トリヒドロキシフラバノン-7-ラムノグルコシド);アウクビン;アマロゲンチン;ジヒドロフォリアメンチン;ゲンチオピクロシド;ゲンチオピクリン;スウェルチアマリン;スウエロシド;ゲンチオフラボシド;センタウロシド;メチアフォリン;ハルパゴシド;センタピクリン;サイリシン;コンジュランジン;アブシンチン;アルタブシン;クニシン;ラクチュシン;ラクチュコピクリン;サロニテノリド;a-ツジョン;β-ツジョン;デソキシリモネン;リモニン;イチャンギン(Ichangin);イソオバクン酸;オバクノン;オバクン酸;ノミリン;イチャンギン;ノミリン酸;マルビン;プラマルビン;カルノソール;カルノシン酸;クァシン;塩酸キニーネ;硫酸キニーネ;二塩酸キニーネ;コロンバイン;カフェイン;トレオニン;メチオニン;フェニルアラニン;トリプトファン;アルギニン;ヒスチジン;バリン;アスパラギン酸;オクタアセチルスクロース;二硫酸キニーネ;ホップ抽出物、及びこれらの混合物からなる群から選択され、
より好ましくは、前記苦味剤が、デナトニウムベンゾエート又はその誘導体であり、
最も好ましくは、前記苦味剤が、デナトニウムベンゾエートである、(18)~(20)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(22)前記コーティング組成物が、約20℃及び1s
-1
で測定されるとき、1cps~25,000cps、好ましくは2cps~10,000cps、より好ましくは3cps~5,000cpsの粘度を有する液体である、(18)~(21)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(23)前記第2の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
好ましくは、前記第2の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含み、
より好ましくは、前記第2の界面活性剤が、5~15の範囲の重量平均アルコキシル化度を有するC
6
~C
20
直鎖又は分岐鎖アルキルアルコキシル化アルコール(AA)を含む、(18)~(22)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(24)前記コーティング組成物が、溶媒を更に含み、前記溶媒が、好ましくは、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、エタノール、水及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(18)~(23)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(25)前記コーティング組成物が、レオロジー変性剤を更に含み、好ましくは、セルロース及び誘導体;グアー及びグアー誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びPOE-PPOコポリマー;ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン及び誘導体;ポリビニルアルコール及び誘導体;ポリエチレンイミン及び誘導体;炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムなどの微粉化無機粒子;二酸化ケイ素;水膨潤性粘土;ガム;並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるレオロジー変性剤を更に含み、
好ましくは、前記レオロジー変性剤が、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、二酸化ケイ素、水膨潤性粘土、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、(18)~(24)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(26)前記コーティング組成物が、香料を更に含み、好ましくは、遊離香料、香料マイクロカプセル、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される香料を更に含む、(18)~(25)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(27)前記第2の界面活性剤の前記香料に対する重量比が、1:50~50:1、好ましくは1:20~20:1、より好ましくは1:1~10:1、最も好ましくは2:1~8:1である、(26)に記載の溶解性固体物品。
(28)前記コーティング組成物が、
1)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~95重量%、好ましくは1重量%~85重量%、より好ましくは10重量%~80重量%の前記第2の界面活性剤、及び/又は
2)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%、好ましくは0.5重量%~70重量%、より好ましくは1重量%~50重量%の前記溶媒、及び/又は
3)前記コーティング組成物の総重量に対して0.1重量%~99重量%、好ましくは0.5重量%~70重量%、より好ましくは1重量%~50重量%の前記レオロジー変性剤、及び/又は
4)前記コーティング組成物の総重量に対して1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~90重量%、より好ましくは10重量%~80重量%の前記香料
を含む、(18)~(27)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(29)前記コーティング組成物が、シリコーン、軟化剤、漂白剤、酵素、抗菌剤、酸化防止剤、光沢剤、色相染料、ポリマー、パーソナルケア活性物質及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される追加の成分を更に含む、(18)~(28)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(30)前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に対して30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の水を更に含む、(18)~(29)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(31)前記物品が、前記物品の総重量に対して0.1重量%~90重量%、好ましくは1重量%~80重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、最も好ましくは10重量%~60重量%の前記コーティング組成物を含む、(18)~(30)のいずれかに記載の溶解性固体物品。
(32)前記2つ以上のシートの各々が、
・ 85%~100%、好ましくは90%~100%の連続気泡含有パーセント、及び/又は
・ 150μm~1000μm、好ましくは200μm~600μmの全体平均孔径、及び/又は
・ 5μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは10μm~80μmの平均気泡壁厚さ、及び/又は
・ 前記固体シート物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含有量、及び/又は
・ 0.6mm~3.5mm、好ましくは0.7mm~3mm、より好ましくは0.8mm~2mm、最も好ましくは1mm~2mmの厚さ、及び/又は
・ 50グラム/m
2
~500グラム/m
2
、好ましくは150グラム/m
2
~450グラム/m
2
、より好ましくは250グラム/m
2
~400グラム/m
2
の坪量、及び/又は
・ 0.05グラム/cm
3
~0.5グラム/cm
3
、好ましくは0.06グラム/cm
3
~0.4グラム/cm
3
、より好ましくは0.07グラム/cm
3
~0.2グラム/cm
3
、最も好ましくは0.08グラム/cm
3
~0.15グラム/cm
3
の密度、及び/又は
・ 0.03m
2
/g~0.25m
2
/g、好ましくは0.04m
2
/g~0.22m
2
/g、より好ましくは0.05m
2
/g~0.2m
2
/g、最も好ましくは0.1m
2
/g~0.18m
2
/gの比表面積
によって特徴付けられる、(18)~(31)のいずれかに記載の溶解性固体物品。