(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】ポストプロセッサ開発支援装置、ポストプロセッサ開発支援システム、及びコンピュータが実行可能な方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4097 20060101AFI20240709BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
G05B19/4097 Z
G05B19/4093 A
(21)【出願番号】P 2022541563
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028757
(87)【国際公開番号】W WO2022030485
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020134027
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】入江 航平
(72)【発明者】
【氏名】藤山 次郎
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-059518(JP,A)
【文献】特開平05-046228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4097
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御装置の内部情報を取得する内部情報取得部と、
前記内部情報取得部が取得した内部情報に基づき前記数値制御装置が使用可能な機能を抽出する機能抽出部と、
前記機能抽出部が類似の機能を抽出した場合、前記類似の機能を比較し適切な機能を選択する機能比較部と、
前記機能抽出部が抽出した機能及び前記機能比較部が選択した機能を設定ファイルとしてポストプロセッサに出力するファイル出力部と、
を有するポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項2】
前記機能抽出部が抽出した機能をポストプロセッサが読み取り可能な設定ファイルに変換する出力ファイル作成部を有し、
前記ファイル出力部は、前記出力ファイル作成部が作成した前記設定ファイルを前記ポストプロセッサに出力する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項3】
前記内部情報は、前記数値制御装置に関する情報と前記数値制御装置が制御する工作機械のパラメータ情報を含み、
前記機能抽出部は、前記数値制御装置に関する情報と前記パラメータ情報とを基に、前記数値制御装置が使用可能な基本機能を抽出する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項4】
前記内部情報は、前記数値制御装置に追加されたオプション情報を含み、
前記機能抽出部は、前記オプション情報を基に、前記数値制御装置が使用可能な追加機能を抽出する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項5】
前記内部情報に基づき、前記数値制御装置が制御する工作機械の機械構成を抽出する機械構成抽出部を有し、
前記ファイル出力部は、前記機械構成を前記ポストプロセッサが読み取り可能とした設定ファイルを前記ポストプロセッサに出力する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項6】
前記内部情報に基づき、前記数値制御装置が制御する工作機械の軸情報を抽出する軸情報抽出部を有し、
前記ファイル出力部は、前記軸情報を含む設定ファイルを前記ポストプロセッサに出力する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項7】
前記内部情報に基づき、前記数値制御装置が使用可能な補助機能を抽出する補助機能抽出部を有し、
前記ファイル出力部は、前記補助機能を含む設定ファイルを前記ポストプロセッサに出力する、請求項1記載のポストプロセッサ開発支援装置。
【請求項8】
数値制御装置の内部情報を取得する内部情報取得部と、
前記内部情報取得部が取得した内部情報に基づき前記数値制御装置が使用可能な機能を抽出する機能抽出部と、
前記機能抽出部が類似の機能を抽出した場合、前記類似の機能を比較し適切な機能を選択する機能比較部と、
前記機能抽出部が抽出した機能及び前記機能比較部が選択した機能を設定ファイルとしてポストプロセッサに出力するファイル出力部と、
を有するポストプロセッサ開発支援システム。
【請求項9】
数値制御装置の内部情報を取得し、
前記取得した内部情報に基づき前記数値制御装置が使用可能な機能を抽出し、
前記抽出した機能が類似する場合、当該類似する機能を比較し適切な機能を選択し、
前記抽出した機能及び前記選択した機能を設定ファイルとしてポストプロセッサに出力する、コンピュータ
により実行
される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストプロセッサ開発支援装置、ポストプロセッサ開発支援システム、及びコンピュータが実行可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数値制御装置の加工プログラムの作成にCAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)が利用されている。
CADは、コンピュータを利用し、設計を行うためのシステムであり、加工品の概観や内部構造、部品や部材の配置などを作成編集し、工具の経路や切削による加工品の形状変化を立体的に表示する。
【0003】
CAMは、主に、メインプロセッサとポストプロセッサから構成されており、メインプロセッサはCADで作成したモデル座標系上の工具経路(Cutter Location;CL)データを計算し、ポストプロセッサはCLデータを加工プログラムに変換する。具体的に説明すると、ポストプロセッサは、モデル座標系で計算されたCLデータを機械座標系に変換し、送り速度や主軸回転数、各種マクロ等を付加して適切な加工プログラムを作成する。このとき、ポストプロセッサは、数値制御装置の仕様や工作機械の構造に合わせた加工プログラムを作成するため、数値制御装置の仕様や工作機械の構造などに関する情報を予め設定しておく必要がある。
【0004】
ポストプロセッサ開発支援システムの一従来例に、「軸構成」、「回転軸」などの数値制御装置ごとのOPTファイルを作成し、「分類A」(スタートパターン、加工原点設定パターン、工具交換パターン、…)と「分類B」(MODE設定等の固定出力パターン、リファレンス点復帰パターン、工具交換及び次工具待機、…)に対応してFILマクロを作成し、OPTファイルとFILファイルとの内容から加工プログラムを選択するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このポストプロセッサ開発支援システムでは、ユーザが軸構成のタイプを選択し、ポストプロセッサ開発支援システムが軸構成のタイプに基づいて一つのOPTファイルを選択したとき、ポストプロセッサ作成部は、そのOPTファイルで特定される基本設定をポストプロセッサに自動的に定義する。
そして、各分類項目ごとに、ユーザが選択肢を選び、ポストプロセッサ開発支援システムがその選択肢に基づいてFILマクロを選択したとき、ポストプロセッサ作成部は、そのFILマクロで特定される詳細設定をポストプロセッサに自動的に定義することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のポストプロセッサ開発支援システムでは、ユーザは軸構成のタイプを選択し、FILマクロの分類項目を選択することにより、工作機械の構造を設定している。
【0008】
しかしながら、数値制御装置は、制御対象となる工作機械、使用する工具、加工対象の素材などにより設定が大きく異なる。CAMのメインコンピュータは工具経路を算出するが、この工具経路上に工作機械を実際に動作させる加工プログラムを作成するためには、制御対象となる工作機械、使用する工具、加工対象の素材などの正確な情報をポストプロセッサに設定しなければならない。
【0009】
また、ポストプロセッサの開発者は、数値制御装置の仕様や工作機械の構造に基づき使用可能な機能を設定している。Gコードを具体例に説明すると、現行の機械構成や数値制御装置で使用できるGコードを手動で設定している。使用可能なGコードを設定するには、ポストプロセッサの開発者が、数値制御装置のパラメータや数値制御装置のオプションを目視で確認し、疑問が解消されない場合には、数値制御装置のユーザに質問票を送付する。質問票には、制御対象となる機械で使用できるGコード、機械の構成、軸の情報などが記載されている。ポストプロセッサの開発者は、数値制御装置のエンジニアからの回答を参照しながら使用可能なGコードを設定する。
【0010】
Gコードを手動で設定する場合、全てのGコードを確実に設定することは困難である。Gコードの設定に漏れがあると、数値制御装置の加工性能を充分に発揮できない。また、最新のGコードは開発者が習熟していない場合もあり、Gコードが設定されないと、最新の機能が利用できない。
【0011】
工作機械の機械構成や工作機械で使用できる機能を正確に漏れなく設定できるようになれば、開発者の負担を軽減し、数値制御装置の機能を充分に発揮することができる。
【0012】
ポストプロセッサ開発の分野では、設定を支援する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様であるポストプロセッサ開発支援装置は、数値制御装置の内部情報を取得する内部情報取得部と、内部情報取得部が取得した内部情報に基づき数値制御装置が使用可能な機能を抽出する機能抽出部と、機能抽出部が抽出した機能を設定ファイルとしてポストプロセッサに出力するファイル出力部と、を有する。
本開示の一態様であるポストプロセッサ開発支援システムは、数値制御装置の内部情報を取得する内部情報取得部と、内部情報取得部が取得した内部情報に基づき数値制御装置が使用可能な機能を抽出する機能抽出部と、機能抽出部が抽出した機能を設定ファイルとしてポストプロセッサに出力するファイル出力部と、を有する。
本開示の一態様であるコンピュータにより実行される方法は、数値制御装置の内部情報を取得し、取得した内部情報に基づき数値制御装置が使用可能な機能を抽出し、抽出した機能を設定ファイルとして前記ポストプロセッサに出力する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ポストプロセッサの設定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のポストプロセッサ開発支援システムの概念図。
【
図2】ポストプロセッサ開発支援装置のハードウェア構成図。
【
図3】ポストプロセッサ開発支援装置のブロック図。
【
図5】ポストプロセッサ開発支援システムの動作を説明するフローチャート。
【
図7】第3の開示のポストプロセッサ開発支援装置のブロック図。
【
図9A】ポストプロセッサ開発支援装置の実装例を示す図。
【
図9B】ポストプロセッサ開発支援装置の実装例を示す図。
【
図9C】ポストプロセッサ開発支援装置の実装例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の開示]
以下、第1の開示のポストプロセッサ開発支援システム100について説明する。
図1は、ポストプロセッサ開発支援システム100の一例を示す。ポストプロセッサ開発支援システム100は、CAM21を備えたPC(Personal Computer)2と、工作機械4を制御する数値制御装置3と、ポストプロセッサの開発を支援するポストプロセッサ開発支援装置1とを有する。
【0017】
図2は、ポストプロセッサ開発支援装置1のハードウェア構成図である。ポストプロセッサ開発支援装置1は、
図2に示すように、ポストプロセッサ開発支援装置1を全体的に制御するCPU111、プログラムやデータを記録するROM112、一時的にデータを展開するためのRAM113を備え、CPU111はバス120を介してROM112に記録されたシステムプログラムを読み出し、システムプログラムに従ってポストプロセッサ開発支援装置1の全体を制御する。
【0018】
不揮発性メモリ114は、例えば、図示しないバッテリでバックアップされるなどして、ポストプロセッサ開発支援装置の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ114には、インタフェース115、119を介して外部機器121から読み込まれたプログラムや入力部30を介して入力されたユーザ操作、ポストプロセッサ開発支援装置1の各部や数値制御装置3等から取得された内部情報などが記憶される。
【0019】
インタフェース115は、ポストプロセッサ開発支援装置1とアダプタ等の外部機器121と接続するためのインタフェース115である。外部機器121側からはプログラムや各種パラメータ等が読み込まれる。また、ポストプロセッサ開発支援装置1内で編集したプログラムや各種パラメータ等は、外部機器121を介して外部記憶手段(図示せず)に記憶させることができる。
【0020】
ポストプロセッサ開発支援装置1は、インタフェース118を介して表示部40に接続されている。ポストプロセッサ開発支援装置1は、数値制御装置3の機能抽出を行う。機能抽出のプログラムは、不揮発性メモリ114に格納しても、外部記録手段に記憶しても、ネットワークを介して取得してもよい。ポストプロセッサ開発支援装置1のCPU111がプログラムを実行することにより本開示の処理が実現する。
【0021】
図3は、ポストプロセッサ開発支援装置1のブロック図である。
ポストプロセッサ開発支援装置1は、数値制御装置3の内部情報を取得する内部情報取得部11と、取得した内部情報に基づき数値制御装置3の機能を抽出する機能抽出部12と、抽出した機能を比較する機能比較部13と、数値制御装置3の機能をまとめた設定ファイルを作成する出力ファイル作成部14と、作成した設定
ファイルをPCに出力するファイル出力部15とを有する。
【0022】
内部情報取得部11は、数値制御装置3の内部に記憶されている情報(以下、内部情報という)を取得する。内部情報には、数値制御装置3自体に関する情報と、制御対象の工作機械4に合わせて設定された情報が存在する。
【0023】
内部情報には、数値制御装置3のシステム情報、工作機械4のパラメータ情報、数値制御装置3のオプション情報、数値制御装置3のラダープログラムなどがある。
数値制御装置3のシステム情報は、数値制御装置3自体に関する情報である。システム情報は、数値制御装置3自体の仕様やスペックに関する情報などがある。例えば、数値制御装置3のバージョン情報、数値制御装置3のCPUやメモリなどの基本的なハードウェア構成などがシステム情報に含まれる。
工作機械4のパラメータ情報とは、工作機械4の機械構成や軸構成、工具の送り速度や主軸回転数などであり、数値制御装置3のメモリ領域に記憶されている。工作機械4のパラメータ情報は、制御対象となる工作機械4に合わせてエンジニアが設定する。そのため、工作機械4のパラメータ情報は、数値制御装置3に接続される工作機械4によって異なる。
【0024】
オプション情報は、数値制御装置3に追加されたオプションに関する情報である。数値制御装置3は、基本機能とオプションで追加する機能がある。オプションの機能は、数値制御装置3のユーザが選択して基本機能に追加したものである。どのオプションが追加されたかは、数値制御装置3ごとに異なる。
【0025】
ラダープログラムは、数値制御装置3内のProgrammable Logic Controller(PLC)を制御するためのプログラムである。ポストプロセッサ23が作成する加工プログラムには、Mコードと呼ばれる命令が記述される。Mコードは、加工プログラムで使用する数値制御装置3の補助機能である。Mコードは、数値制御装置3からPLCへ出力され、工作機械4のジグ、電磁弁のON-OFF、リミットスイッチの状態確認、主軸の回転、クーラントの排出など、工作機械を取り巻く機械の現象や動作を制御する。
Mコードに対応するラダープログラムは、数値制御装置3のエンジニアが作成するため、あるMコード番号に対し、機械がどのような動作をするかは、数値制御装置3によって異なる。Mコードには、M03(主軸を正回転させる)のように定型的に用いられているものもあるが、エンジニアがラダーでプログラミングしたMコードは、数値制御装置3ごとに異なる。
【0026】
機能抽出部12は、取得した内部情報に基づき数値制御装置3が使用可能な機能を抽出する。
機能抽出部12は、工作機械4のパラメータ情報や数値制御装置3のバージョンから、どのような数値制御装置3がどのような工作機械4を制御しているかという環境情報を抽出する。
機能抽出部12は、数値制御装置3と工作機械4の環境情報から基本的な機能を抽出し、さらに、オプションで追加された機能を抽出する。
機能抽出部12は、オプション情報からオプションで追加された機能を抽出するにあたって、抽出した2つまたはそれ以上のオプションに排他機能がある場合、それらのオプションの機能のうちの1つのみを有効にし、残りのオプションの機能を無効にする。どのオプションを有効にするかは機能抽出部12が決定せず、ユーザに選択させるようにしてもよい。機能抽出部12は、オプション情報を基に使用可能な機能の一覧を作成する。機能は、関数やテーブルを用いて抽出することができる。
【0027】
機能比較部13は、機能抽出部12が類似の機能を抽出した場合、それら類似の機能のなかで適切な機能を選択する。適切な機能とは、設定した条件によって異なる。例えば、性能向上効果を機能の選択条件とすると、複数の類似の機能のなかでもっとも性能向上効果が高いものが選択される。また、加工時間の短い機能や消費電力の少ない機能が求められる場合もある。設定条件は、ユーザが選択できるようにしてもよいし、予め固定してもよい。
【0028】
出力ファイル作成部14は、機能抽出部12が抽出した機能のリスト、又は、機能比較部13が選択した機能のリストを、ポストプロセッサ23が読み込める形式のファイルに変換する。このファイルをポストプロセッサ23の設定ファイルと呼ぶ。設定ファイル形式は、ポストプロセッサ23が読み取れる形式であれば特に限定しない。
XML(Extensive Markup Language)、CSV(Comma Separated Value)、TXT(テキスト)、JSON(JavaScript Object Notation)などの汎用フォーマットであれば、ほとんどの情報処理装置で読み込むことができる。後述するようにポストプロセッサ開発支援装置1が、CAM21を備えたPC2に実装されている場合には、ネットワークを介さずに内部的に処理するため、設定ファイルの形式は汎用フォーマットである必要はない。
【0029】
ファイル出力部15は、出力ファイル作成部14が作成した設定ファイルをPC2に出力する。設定ファイルの出力には、有線/無線のネットワークを使用してもよいし、USBメモリなどの不揮発性メモリを使用してもよい。
なお、後述するようにポストプロセッサ開発支援装置1が、CAM21を備えたPC2に実装されている場合には、ネットワークを介することなく内部的にデータを出力する。
【0030】
図4は、CAM21を内蔵したPC2のブロック図である。
PC2は、CAD及びCAM21、又は少なくともCAM21のみを備える。CADは、コンピュータを利用し、設計を行うシステムである。CADは、加工品の概観や内部構造、部品や部材の配置などを作成編集し、工具の経路や切削による加工品の形状変化を立体的に表示する。
【0031】
CAM21は、CADで作成したモデル座標系上の工具経路データ(CLデータ)を計算するメインプロセッサ22と、CLデータを加工プログラムに変換するポストプロセッサ23とを備える。
【0032】
ポストプロセッサ23は、ポストプロセッサ開発支援装置1から設定ファイルを取得する設定情報取得部24と、設定ファイルの内容を記憶する設定情報記憶部25とを備える。設定ファイルには、使用可能な機能のリストが含まれる。ポストプロセッサ23は、これらの設定ファイルを基に、CLデータから加工プログラムを作成する。
【0033】
図5のフローチャートを参照してポストプロセッサ開発支援システム100の動作を説明する。
数値制御装置3は、ポストプロセッサ開発支援装置1に内部情報を出力する(ステップS1)。ポストプロセッサ開発支援装置1は、内部情報を取得すると(ステップS2)、数値制御装置3や工作機械4の環境を把握して使用可能な基本機能を抽出するとともに、オプション情報を参照して使用可能なオプション機能を抽出する(ステップS3)。ステップS3で類似の機能が複数抽出された場合、ポストプロセッサ開発支援装置1は、類似の機能を比較し、類似の機能のうち適切な機能を選択する(ステップS4)。ステップS4において適切な機能を選択すると、ポストプロセッサ開発支援装置1は、使用可能な機能のリストを作成する(ステップS5)。ポストプロセッサ開発支援装置1は、作成したリストを汎用フォーマットなどに変換し、PC2が読み取り可能な設定ファイルを作成する(ステップS6)。ポストプロセッサ開発支援装置1は、ポストプロセッサ23を備えたPC2に設定ファイルを出力する(ステップS7)。
PC2は、設定ファイルを取得すると(ステップS8)、設定ファイルに記載された機能を用いて加工プログラムを作成する(ステップS9)。
【0034】
以上説明したように、第1の開示のポストプロセッサ開発支援システム100は、数値制御装置3の内部情報を取得し、取得した内部情報に基づいて、数値制御装置3が使用可能な機能を抽出し、ポストプロセッサ23に出力することにより、数値制御装置3が使用可能な機能を漏れなく設定することができる。
数値制御装置3が使用できる機能は数値制御装置3の機種ごとに異なる。また、数値制御装置3にどのオプションが追加されており、その追加されたオプションにはどんな機能が含まれ、どの機能とどの機能とが排他関係にあるかという背景を考慮しながら、数値制御装置3が使用可能な機能を特定することは非常に煩雑である。
本開示のポストプロセッサ開発支援システム100では、数値制御装置3が使用可能な機能を自動的に抽出することにより、ポストプロセッサの開発者の負担を軽減するとともに、ヒューマンエラーを削減し、数値制御装置3のバージョンやオプションによって追加された新しい機能を漏れなく設定することができる。
【0035】
[第2の開示]
第2の開示として、機能比較部13の具体例な処理について説明する。機能比較部13は、類似機能の一覧テーブルを備える。類似機能の一覧テーブルは、
図6に示すように、「スムージング関係の類似機能」、「リジッドタップ関係の類似機能」など、類似する機能ごとに分類されている。「スムージング関係の類似機能」には、「スムージング機能A」、「スムージング機能B」、「スムージング機能C」が含まれる。それぞれの機能には「性能向上効果」が付されている。「スムージング機能A」は「性能向上効果」が「高」であり、「スムージング機能B」は「性能向上効果」が「中」であり、「スムージング機能C」は「性能向上効果」が「低」である。また、加工プログラム上で機能の実行を指示するGコードも記載されている。例えば、「スムージング機能A」のGコードは「G200 Q3」であり、「スムージング機能B」のGコードは「G200 Q2」であり、「スムージング機能C」のGコードは「G200 Q1」である。
【0036】
さらに、
図6には、機能抽出部12が抽出した使用可能な機能が一覧表示されている。機能比較部13は、使用可能な機能の一覧と類似機能の一覧テーブルとを比較する。使用可能な機能の中に類似機能が含まれる場合、機能比較部13は、類似機能の一覧テーブルの「性能向上効果」を参照し、類似機能のうちで最も「性能向上効果」が高い機能を選択する。
図6の例では、「スムージング関係の類似機能」である「スムージング機能A」と「スムージング機能B」が使用可能な機能の一覧に含まれる。類似機能の一覧テーブルを参照すると、「スムージング機能A」は「性能向上効果」が「高」であり、「スムージング機能B」は「性能向上効果」が「中」である。機能比較部13は、「性能向上効果」が「高」の「スムージング機能A」を適切な機能として選択する。
【0037】
[第3の開示]
第3の開示のポストプロセッサ開発支援装置1は、機械構成、軸情報、Mコード等の情報をCAM21に出力する機能を備える。
図7は、第3の開示のポストプロセッサ開発支援装置1のブロック図である。
図7に示すポストプロセッサ開発支援装置1は、工作機械4のパラメータ情報から機械構成を抽出する機械構成抽出部16、工作機械4のパラメータ情報から軸情報を抽出する軸情報抽出部17、ラダープログラムからMコードに関する情報を抽出するMコード情報抽出部18を備える。なお、
図7の内部情報取得部11、機能抽出部12、機能比較部13、ファイル出力部15は、第1の開示と同じであるため説明を省略する。
【0038】
機械構成抽出部16は、数値制御装置3の内部情報である工作機械4のパラメータ情報などから機械構成を抽出する。機械構成は、工作機械4のパラメータから抽出できる。
図8A~
図8Cは、機械構成の一例である。
図8A~
図8Cに示す工作機械は、いずれもX、Y、Z軸及びB、C軸で構成された5軸の工作機械4であるが、それぞれの異なる機械構成を有している。
図8Aは、工具回転形の工作機械4Aである。工具回転形の工作機械4Aでは、工具7はXYZ軸で移動しC軸及びB軸の回転軸で回転する。
図8Bは、テーブル回転形の工作機械4Bである。テーブル回転形の工作機械4Bでは、工具7はXYZ軸で移動し加工物を載置するテーブル8がC軸及びB軸の回転軸で回転する。
図8Cは混合形の工作機械4Cである。混合形の工作機械4Cでは、工具7はXYZ軸で移動すると共にB軸の回転軸で回転し、加工物を載置するテーブル8がC軸の回転軸で回転する。5軸の工作機械4には、上記3種類だけでなく、X、Y、Z軸及びA、C軸、またはX、Y、Z軸及びA、B軸など、他の回転軸による機械構成も存在する。
ポストプロセッサ23は、制御対象となる工作機械4の機械構成を把握していない。加工プログラムを作成するためには、制御対象となる工作機械4の機械構成をポストプロセッサ23に設定する必要がある。機械構成抽出部16は、パラメータから機械構成を自動的に抽出する。
【0039】
軸情報抽出部17は、数値制御装置3の内部情報であるパラメータ情報などから軸情報を抽出する。
加工プログラムの作成に必要な軸情報には、軸名称、最小指令単位、稼働範囲、最大切削送り速度、ロールオーバ、絶対指令の回転方向などがある。
軸名称とは、加工プログラムで移動させる軸を指定するための名称である。最小指令単位とは、軸の移動先の座標を示す際、小数点以下何桁までの精度で指令できるかの単位を示す。稼働範囲とは、移動指令として指定できる工具の移動範囲である。最大切削送り速度は、切削速度の最大速度であり、加工プログラムでは、その速度以下で速度を設定する。ロールオーバは、回転軸において、軸が一回転した際に角度の座標値が0に戻るか、そのままの角度の座標値が増加するかの設定である。絶対指令の回転方向とは、絶対座標指令で回転軸の角度を指令した際に、回転軸の回転方向が+/-の符号に従って、時計回りと反時計回りのいずれで移動するのか、移動量が少ない(近い)方向を計算して回転するかの設定である。工作機械と工具が干渉するおそれがある場合、回転方向を指定できる設定であるかの確認が必要となる。
【0040】
Mコード情報抽出部18は、ラダープログラムから数値制御装置3のエンジニアが作成したMコードを抽出する。
Mコードは、数値制御装置3からPLCへ信号を出力する命令である。Mコードは、M03のように定型的に用いられているものもあるが、数値制御装置のエンジニアが作成するものもある。数値制御装置のエンジニアが作成したMコードがどのような動作をするかは各数値制御装置によって異なる。
Mコードと機械の動作の関係は、ラダープログラムのMコード番号とそのコメント、またはMコードにより変化する信号の名称から判定できる。Mコード情報抽出部18が抽出したMコードは加工プログラムで使用することができる。
【0041】
出力ファイル作成部14は、機械構成抽出部16が抽出した機械構成、軸情報抽出部17が抽出した軸情報、Mコード情報抽出部18が抽出したMコードに関する情報と、数値制御装置3が使用可能な機能のリストとを含む設定ファイルを作成する。設定ファイルは、CAM側のPCが読み込める形式のファイルである。ファイルのフォーマットは、例えば、XML、CSV、TXT、JSONなどの汎用フォーマットである。
【0042】
ファイル出力部15は、出力ファイル作成部14が作成した設定ファイルをPC2に出力する。設定ファイルの出力には、有線/無線のネットワークを使用してもよいし、USBメモリなどの不揮発性メモリを使用してもよい。
なお、後述するようにポストプロセッサ開発支援装置1が、CAM側のPC2に実装されている場合には、ファイル出力部15は内部的にデータを出力する。
【0043】
以上説明したように、第3の開示のポストプロセッサ開発支援装置1は、工作機械4の機械構成や軸情報、Mコードの情報を、CAM21を備えたPC2に出力する。工作機械4の機械構成や軸情報、Mコードの情報は、加工プログラムの作成に必要な情報であるため、正確に設定しなくてはならない。これらの情報は膨大であり、どの情報をどこから取得するかを調べることは、開発者の大きな負担となる。
第3の開示のポストプロセッサ開発支援装置1は、ポストプロセッサ23の開発に必要な工作機械4の機械構成、軸構成、Mコードを自動で抽出し、CAM21が読み取り可能な形式で出力することにより、開発者の負担を軽減し、ヒューマンエラーを削減し、開発の効率を向上させる。
【0044】
[ポストプロセッサ開発支援装置の実装]
ポストプロセッサ開発支援装置1は、PC5などの一般的な情報処理装置に実装してもよいし、数値制御装置3に実装してもよいし、CAM21を搭載したPC2に実装してもよい。
図9A~
図9Cのポストプロセッサ開発支援装置1は、CPU111が所定のプログラムを実行することにより実装される。
図9Aは、ポストプロセッサ開発支援装置1をPC5などの一般的な情報処理装置に実装している。
図9Bは、ポストプロセッサ開発支援装置1を数値制御装置3又はIPC6(産業用PC)に実装している。ポストプロセッサ開発支援装置1を数値制御装置3やIPC6に実装することにより後述する内部情報を外部に出力することなく、ポストプロセッサ23の開発に必要なファイルを出力することができる。ファイルの受け渡しにはUSBメモリのような不揮発性メモリを使ってもよいし、インターネットの設定を行ってもよい。これにより、内部情報を通信する設定が不要になり、PCへのファイルの出力が容易になる。
図9Cは、CAM21を備えたPC2にポストプロセッサ開発支援装置1を実装している。CAM21を備えたPC2にポストプロセッサ開発支援装置1を実装すると、数値制御装置3の情報を直接取り込んで、自動的にポストプロセッサ23の設定を完了させることが可能になる。このため、数値制御装置3がポストプロセッサ23の開発支援機能を持っていなくとも、PC2側でポストプロセッサ23の設定を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
100 ポストプロセッサ開発支援システム
1 ポストプロセッサ開発支援装置
2 CAMを備えたPC
3 数値制御装置
4 工作機械
5 ポストプロセッサ開発支援部
11 内部情報取得部
12 機能抽出部
13 機能比較部
14 出力ファイル作成部
15 ファイル出力部
16 機械構成抽出部
17 軸情報抽出部
21 CAM
22 メインプロセッサ
23 ポストプロセッサ