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特許7518185抗微生物溶液および感染の治療または予防におけるその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】抗微生物溶液および感染の治療または予防におけるその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/38 20060101AFI20240709BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 31/731 20060101ALI20240709BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240709BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240709BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61K36/38
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/12
A61K31/20
A61K31/201
A61K31/655
A61K31/731
A61K47/10
A61P31/00
A61P31/12
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022558333
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2021052408
(87)【国際公開番号】W WO2021191800
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】62/993,201
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/993,356
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/993,360
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/003,887
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/004,467
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/040,807
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/091,177
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522377158
【氏名又は名称】ケレシス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シグルヨンソン、グドムンドル フェルトラム
(72)【発明者】
【氏名】ギスラドッティル、ドーラ ヒリン
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0104661(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0231836(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101744798(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106727907(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109381595(CN,A)
【文献】Front. Pharmacol.,2019年,Vol.10, Article 1272,pp.1-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物オトギリソウ属(Hypericum spp.)の抽出物を体積割合で抗微生物溶液の全体積の5%~60%(v/v)と
ニーム油と、
1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤と
を含み、
対象の鼻粘膜、口腔粘膜または口腔咽頭粘膜の1つまたは複数に抗微生物バリアを形成するように構成される抗微生物溶液であって、
薬学的に許容され得る担体がグリセロールを含む、または
1つまたは複数の薬学的に許容され得る添加剤がメントールを含む香り付け増強添加剤を含む、または
抗微生物溶液が、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)、カラギーナンまたはクロルヘキシジンの1つまたは複数をさらに含む、
抗微生物溶液。
【請求項2】
ニーム油が、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、α-リノール酸、またはパルミトレイン酸の1つまたは複数を含む請求項記載の抗微生物溶液。
【請求項3】
ニーム油が、6~16%のリノール酸、25~54%のオレイン酸、16~33%のパルミチン酸、および9~24%のステアリン酸を含む請求項記載の抗微生物溶液。
【請求項4】
植物オトギリソウ属の抽出物が、セイヨウオトギリソウ(hypericum perforatum)由来の抽出物を含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項5】
植物オトギリソウ属の抽出物が、ヒペリシンを主な活性成分として含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項6】
ニーム油および植物オトギリソウ属の抽出物が、抗微生物溶液中に等比(v/v)で存在する請求項記載の抗微生物溶液。
【請求項7】
抗微生物溶液が、ニーム油を体積割合で抗微生物溶液の全体積の最大で10%(v/v)含む請求項記載の抗微生物溶液。
【請求項8】
植物オトギリソウ属の抽出物およびニーム油が、100:1より大きい体積比で提供される請求項記載の抗微生物溶液。
【請求項9】
抗微生物溶液が、ニーム油を体積割合で抗微生物溶液の全体積の最大で5%(v/v)含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項10】
抗微生物溶液が、植物オトギリソウ属の抽出物を体積割合で抗微生物溶液の全体積の最大で10%(v/v)含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項11】
抗微生物溶液が、さらにカラギーナンを含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項12】
抗微生物溶液が、さらにクロルヘキシジンを含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項13】
薬学的に許容され得る担体がグリセロールを含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項14】
1つまたは複数の薬学的に許容され得る添加剤が、メントールを含む香り付け増強添加剤を含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項15】
抗微生物溶液が、1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤抗微生物溶液の全体積の少なくとも10%(v/v)の体積割合で含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項16】
抗微生物溶液が、1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤抗微生物溶液の全体積の少なくとも33%(v/v)の体積割合で含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項17】
抗微生物溶液が、ローション、ハイドロゲル、口スプレー、および/または鼻腔スプレーの形態である請求項1記載の抗微生物溶液。
【請求項18】
抗微生物溶液が、口スプレーおよび/または鼻腔スプレーの形態であり、かつ
抗微生物溶液が、口スプレーおよび/または鼻腔スプレーの作動につき50μL~200μL用量で送達される請求項17記載の抗微生物溶液。
【請求項19】
コロナウイルスによるヒトの上気道の感染を治療または予防するための医薬組成物であって、
植物オトギリソウ属(Hypericum spp.)の抽出物を体積割合で抗微生物溶液の全体積の5%~60%(v/v)と、
ニーム油と、
1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤と
を含み、
対象の鼻粘膜、口腔粘膜または口腔咽頭粘膜の1つまたは複数に抗微生物バリアを形成するように構成される抗微生物溶液であり、
薬学的に許容され得る担体がグリセロールを含む、または
1つまたは複数の薬学的に許容され得る添加剤がメントールを含む香り付け増強添加剤を含む、または
抗微生物溶液が、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)、カラギーナンまたはクロルヘキシジンの1つまたは複数をさらに含む、
抗微生物溶液を含む、医薬組成物
【請求項20】
1つまたは複数のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)を含む請求項1記載の抗微生物溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して抗微生物溶液に関する。より具体的には、本開示は、抗微生物溶液および微生物病原体による感染を治療または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染は多数の異なる微生物により引き起こされ得る。ウイルスはヒトにおいて最も一般的な病原微生物の1つであり、ヒトの疾患状態の原因となるウイルスの数と種類には、非常に多くの多様性がある。ほとんどのウイルス性疾患は自己制限的であり、宿主に長期的な罹患率を引き起こすことはなく、解熱剤と適切な水分摂取以外に特別な治療を必要としない。
【0003】
単純ヘルペスウイルスやHIVなどのウイルスの狭いサブセットに対しては、ウイルス感染に対する特定の治療法が利用可能であるが、ほとんどのウイルス感染症には、対症療法や、インフルエンザに対するオゼルタマビルなどの病欠日数を減らすことを目的とした抗ウイルス薬しかない。
【0004】
ウイルス感染の予防および/または治療のための最も一般的かつ効果的な戦略は、予防接種である。ただし、予防接種は数種類のウイルスに対してしか利用することができない。これは、一部には、多くの病原性ウイルスの絶え間ない進化の性質によるものである。多くのウイルスは抗原ドリフトの形をとっており、免疫療法のために保存されたエピトープを特定して標的とすることが困難になっている。
【0005】
ヒトの上気道感染症は、主にウイルス感染によって引き起こされる。一般的な病原性ウイルスには、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒトメタ肺炎ウイルス、およびエンテロウイルス、ならびに風邪を引き起こすコロナウイルスのファミリーが含まれる。たとえば、図1は、風邪の複雑なウイルス病因を示している。コロナウイルスファミリーなどの一部のウイルスは、ヒトへの指向性を進化させる副次的なリスクを有し、それにより、中東呼吸器症候群の原因病原体であるMERS-CoV、重症急性呼吸器症候群の原因病原体であるSARS-CoV-1、COVID-19パンデミックの原因病原体であるSARS-CoV-2などの大抵感染性の高いヒト病原体に変化する。
【0006】
毎年、病原性ウイルスの新しい株または進化した株が、世界中で呼吸器疾患を引き起こし、これが、世界的な罹患率および死亡率の主な原因を表している。毎年、推定で成人の5~10%、子供の20~30%がインフルエンザに感染しており、その結果、世界中で300万~500万人が重症化し、約100万人が死亡している。SARS-CoV1およびSARS-CoV2コロナウイルスによって引き起こされるような異常なウイルスの急激な増加は、インフルエンザよりも実質的に高い罹患率と死亡率を引き起こす可能性がある。
【0007】
インフルエンザや新型コロナウイルスに加えて、一般的な風邪としても知られる急性ウイルス性呼吸器感染症は、ヒトにおいて最も頻繁に観察される感染症であり、子供は平均して一年に4~8回上気道感染症にかかり、成人は平均して一年に2~4回感染する。ほとんどの場合、風邪は、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザ、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、およびメタ肺炎ウイルスなどの呼吸器系ウイルスによって引き起こされる。
【0008】
風邪は「自然治癒する病気」とみなされているが、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、せき、のどの痛み、全身倦怠感、および発熱などの症状があり、それらの症状は悩ましくかつ不快であり、2,000万人を超える患者が医師の診察を受け、年間4,000万日学校や仕事を休んでいる。これは、効果的な治療法がないことにより、巨大な世界的な経済的および社会的負担を招いている。
【0009】
追加の問題は、エンベロープウイルス(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、コロナウイルス、レトロウイルスなどのウイルスを含む、膜融合によって宿主細胞に侵入する脂質二重層膜を含むウイルス)と、非エンベロープウイルス(ロタウイルス、ポリオウイルスなどのウイルスを含む、何らかの形態の膜穿孔によって宿主細胞に侵入する脂質二重層膜を欠くウイルス)の両方に対して有効な抗ウイルス組成物を提供するという課題である。
【0010】
残念ながら、現在、コロナウイルス、特にSARS-CoV-1および/またはSARS-CoV-2、インフルエンザによって引き起こされる上気道感染症、およびとりわけ風邪を含む、多くのウイルス感染症の治療または予防のための効果的な解決策はない。このように、認容可能な微生物感染を治療または予防するための抗微生物組成物および方法には多くの欠点がある。
【発明の概要】
【0011】
本開示の実施形態は、抗微生物溶液を用いて当技術分野における上記のまたは他の問題の1つまたは複数を解決する。新しいコロナウイルス、インフルエンザにより引き起こされるもの、ならびに風邪などの上気道感染症の効果的な治療法は、ヒトがさまざまなウイルスに感染しているという事実を考慮しなければなりません。本開示の実施形態は、有利なことに、広範な抗ウイルス能力を示し、耐性形成をもたらさない。
【0012】
特に、1つまたは複数の実施形態は、治療有効量のニーム油および植物オトギリソウ属の抽出物を、(任意には)1つまたは複数の薬学的に許容される得る担体、添加剤、および/または希釈剤と組み合わせて、有する抗微生物溶液を含むことができる。他の実施形態では、抗微生物溶液は、治療有効量の多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ニーム油、およびオトギリソウ属の植物の抽出物を、(任意には)1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤と組み合わせて、含み得る。さらに他の実施形態では、抗微生物溶液は、治療有効量の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、(任意には)1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤と組み合わせて、有する抗微生物溶液を含むことができる。
【0013】
開示された抗微生物溶液は、細菌またはウイルス病原体によって引き起こされる感染症、好ましくはヒトコロナウイルスによって引き起こされる上気道感染症を治療または予防するのに有効であり、微生物病原体によるヒトの上気道の感染症を治療または予防する本明細書に開示される方法に含まれる。
【0014】
この概要は、詳細な説明において以下にさらに説明される簡略化された形態において概念の選択を導入するために提供される。この概要は、特許請求の範囲に記載された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記載された主題の範囲を示すものとして使用されることを意図したものでもない。
【0015】
本開示の追加の特徴および利点は、以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになるか、または本開示の実践によって習得され得る。本開示の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている手段および組み合わせによって実現および取得することができる。本開示のこれらおよび他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に記載する開示の実践によって学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の上記および他の利点および特徴を得ることができる方法を説明するために、上記で簡単に説明した本開示のより具体的な説明を、添付の図面に示されている具体的な実施形態を参照して行う。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本開示は、添付の図面を使用することにより、追加の具体性および詳細で記載および説明され得る。
【0017】
図1】特定のウイルスに起因する風邪の割合を示す円グラフである。
図2】(i)担体のみ;(ii)ニーム油および植物オトギリソウ属の抽出物;および(iii)本開示の1つまたは複数の実施形態による、ニーム油および植物オトギリソウ属の抽出物、任意に担体をプラス、で処理した場合のコロナウイルス粒子の濃度を示す棒グラフである。
図3】(i)担体のみ;(ii)担体と多価不飽和脂肪酸(PUFA)の1つ、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物;(iii)担体と2つの多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物;および(iv)本開示の1つまたは複数の実施形態による抗微生物溶液であって、担体に加えて、治療有効量のPUFA、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物を含む抗微生物溶液で処理した場合のコロナウイルス粒子の濃度を示す棒グラフである。
図4】(i)担体単のみ;(ii)担体と1つの多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物;(iii)担体と2つの多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物;および(iv)本開示の1つまたは複数の実施形態による抗微生物溶液であって、担体に加えて、治療有効量のPUFA、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物を含む抗微生物溶液のヒト患者におけるコロナウイルスの力価の経時的な効果を示すグラフである。
図5】未治療のまま放置されたか、または担体と治療有効量のPUFA、ニーム油、および植物オトギリソウ属の抽出物を含む本開示の1つまたは複数の実施形態による抗微生物溶液で治療された上気道ウイルス感染症に関連する症状の数および/または重症度を示すグラフである。破線は、患者にいつ治療が行われたかを示す(つまり、症状の出現後)。
図6】(i)酸化安定剤および担体のみを有する対照溶液;(ii)多価不飽和脂肪酸(PUFA)のみ;(iii)酸化安定剤とPUFA;および(iv)本開示の1つまたは複数の実施形態によるPUFAに酸化安定剤および担体を加えたもの、で処理したときのコロナウイルス粒子の濃度を示す棒グラフである。
図7】一実施形態による抗微生物溶液のヒト被験者試験の結果を示すグラフである。
図8】一実施形態による抗微生物溶液を使用した進行中のヒト被検者試験を示す図である。
図9図8の進行中のヒト被検者試験の暫定結果を示すグラフである。
図10】一実施形態による抗微生物溶液を使用する計画中の動物対象試験を示す図である。
図11】一実施形態による抗微生物溶液を使用する計画中のヒト対象試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の種々の実施形態のより良い理解は、同様の参照文字が同様の要素を指す添付の図面とともに読まれる以下の説明から得ることができる。
【0019】
本開示の様々な実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、特に例示されたシステム、方法、デバイス、製品、プロセス、および/またはキットのパラメータに限定されず、もちろんそれらは変更可能であることを理解されたい。したがって、本開示の特定の実施形態は、特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などを参照して詳細に説明されるが、説明は例示的であり、特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、本明細書で使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、特許請求される発明の範囲を限定することを必ずしも意図するものではない。
【0020】
さらに、本明細書に記載された任意の所定の構成要素または実施形態について、その構成要素についてリストされた可能な候補または代替案のいずれも、暗にまたは明らかに理解されるか、または特段の断りがない限り、一般に、個別に、または相互に組み合わせて使用され得ることが理解される。さらに、そのような候補または代替のリストは、暗にまたは明らかに理解されるか、または特段の断りがない限り、単なる例示であり、限定的ではないことを理解されたい。
【0021】
加えて、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、量、成分、距離、または他の測定値を表す数字は、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対の指摘がなされていない限り、明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは近似値であり、本明細書に提示される主題により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本明細書に提示される主題の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、いずれの数値にも、それぞれのテスト測定で検出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれている。
【0022】
本開示は、様々な修正および代替構成の影響を受けやすいが、特定の例示的な実施形態は、以下に説明する図面にある。しかしながら、本開示を開示された特定の実施形態に限定する意図はなく、逆に、その意図は、本開示の精神および範囲内に入るすべての修正、代替構成、組み合わせ、および等価物を包含することを理解されたい。
【0023】
本明細書で使用される任意の見出しおよび小見出しは、組織的な目的のためのものとしており、明細書または特許請求の範囲の範囲を限定するために使用されることを意図したものではない。
【0024】
用語が、本願において説明される意味を有することが明示的に定義されている場合を除き、そのような用語の意味を、明示的または間接的のいずれにおいても、その素直なまたは通常の意味を超えて限定する意図はないことが理解されるであろう。
【0025】
特定の機能を実行するための「手段(means for)」、または特定の機能を実行するための「工程(step for)」を明示的に述べていないクレームの要素は、35U.S.C.§112で指定されている「手段」または「工程」節として解釈されるべきではない。
【0026】
PUFAのウイルス増殖抑制性および抗菌性
オメガ3脂肪酸の、アラキドン酸(AA)、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)などのPUFAは、わずかな静菌およびウイルス抑制特性を有することが知られている。例えば、EPAは、一部のグラム陽性菌(例:枯草菌(Bacillus subtilis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))およびグラム陰性菌(例:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、マイコバクテリアの種、種々の真菌、シアノバクテリア、微細藻類(Microalgae)、原生動物、および一部のウイルスに対して抗微生物活性を有することが知られている。
【0027】
特に、EPAは、3つのグラム陽性菌(枯草菌、リステリア菌、および黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性緑膿菌などの重要な食品媒介病原体の増殖の阻害に有効であることが知られている。EPAは、世界中の医療機関における患者死亡の主な原因である黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性株に対して有効であることが示されている。さらに、EPAは、消化性潰瘍の病原体であるヘリコバクター・ピロリに対する効力を示し、特定の濃度で提供されると、この病原体の増殖を無効とした。EPAはまた、ストレプトコッカス・ミュータンスのような経口ヒト病原体に対する強力な抗菌活性を示している。
【0028】
AA、DHA、およびEPAを含むいくつかのPUFAは、慢性C型肝炎の成長を阻害することが示されており、PUFAのインキュベーションは、ミクソウイルス、パラミクソウイルス、アルボウイルス、およびヘルペスウイルスを含むいくつかのエンベロープウイルスの感染力の低下を立証した。しかし、微生物の多様性を考慮すると、広域スペクトルの抗ウイルス/抗菌化合物としてのPUFAの有効性を実証するにはある程度しか成功していない。
【0029】
魚類の皮由来の市販の総称治癒スキャフォールド(それ自体が天然のオメガ3脂肪酸の一部を保持している)にオメガ3PUFAの濃度を増加させると、それを入れていない製品よりも80%長く細菌バリアとしてはたらくことが示されている。
【0030】
それにもかかわらず、PUFAは抗微生物化合物としてある程度の成功を収めているが、特に口腔粘膜内で、それら自身で広域スペクトルの抗微生物バリアとして機能することは示されておらず、期待もされていない。さらに、PUFAの多くは酸化しやすく、不快な味や臭いを引き起こす。これは、安定化されない限り、経口または鼻用組成物へのそれらの含有を管理することを困難にする。また、関連製品の保存可能期間と入手可能性が低下する可能性もある。
【0031】
さらに、PUFAは限られた数のウイルスに対してある程度の抗ウイルス活性があることが示されているが、PUFAがコロナウイルスに対して有効であること、または症候性の上気道感染症に対してかなりの効果があることを示唆するような証拠はない。
【0032】
ニーム油のウイルス増殖抑制性および抗菌性
ニーム油は、アザディラクタ・インディカ(Azadirachta indica)の種子を低温圧搾して得られる油である。ニーム油には限られた抗菌および抗ウイルス活性があることが文献に十分に記載されている。例えば、ニーム油は、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、大腸菌(Escherichia coli)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して効果的な抗菌剤であることが示されている。その抗ウイルス活性については、ニーム油は、単純ヘルペスウイルス1型およびデングウイルスのエンベロープタンパク質に対して有効であることが示されている。
【0033】
しかし、ニーム油が、特に口腔粘膜内で、それ自身で抗微生物バリアとして機能することは示されておらず、また期待もされておらず、他の抗微生物化合物との組み合わせがその有効性を高めたり、そのような適用を可能にしたりするといった指摘もない。さらに、ニーム油がそれ自体でコロナウイルスに対して有効であるという指摘はなく、また他の抗菌化合物との組み合わせがその有効性を高めたり、そのような適用を可能にしたりするという指摘もない。
【0034】
オトギリソウ油のウイルス増殖抑制性および抗菌性
オトギリソウ油は、一般的なセントジョーンズワート(オトギリソウ属)の抽出物であり、アントラキノン誘導体のエモジンから合成することもできる化合物ヒペリシンを含む。オトギリソウ(Hypericum Perforatum)の主成分として、ヒペリシンは伝統的に民間療法の歴史を通じて使用されてきた。ヒペリシンは集中的な生化学研究の対象にもなり、医薬品および医療用途における多機能剤であることが証明されている。最近の研究では、ヒペリシンの抗うつ、抗腫瘍、抗腫瘍、およびいくつかの限定的な抗ウイルス活性が報告されている。例えば、オトギリソウ由来のヒペリシンは、気管支炎ウイルスのmRNA発現およびウイルス力価を大幅に低下させることが示されており、オトギリソウ由来のヒペリシンは、慢性C型肝炎感染患者に抗ウイルス効果を奏することが示されている。セイヨウオトギリソウからの抽出物は、エプスタイン-バーウイルスおよびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスを阻害することが示されている。
【0035】
しかし、ニーム油のように、オトギリソウ属の抽出物は、特に口腔粘膜内で、それ自身で抗微生物バリアとして機能することは示されておらず、また期待もされておらず、ニーム油などの他の抗微生物化合物との組み合わせがそれらの有効性を高めたり、そのような適用を可能にしたりするという指摘もない。
【0036】
カラギーナンのウイルス増殖抑制性
カラギーナンは直鎖状硫酸化多糖類のファミリーであり、(紅藻綱(Rhodophyceae class)の)紅海藻の細胞壁の主要成分であり、紅藻から抽出され、カラギーナンは一般に、米食品医薬品規制、具体的には21C.F.R.182.7255により安全と認められているため、ゲル化、増粘のための添加物、および安定化組成物として食品、化粧品、および製薬産業などの産業で広く使用されている。例えば、カラギーナンは、アイスクリーム、ゲル、歯磨き粉およびその他などの製品の乳化剤および結合剤として使用される。カラギーナンは、繰り返しガラクトース単位と、グリコシド結合によって結合された3,6アンヒドロガラクトースを含む高分子量多糖類である。カラギーナンは、コンドルス(Chondrus)、ギガルティナ(Gigartina)、ヒプネア(Hypnea)、およびユーチュマ(Eucheuma)などの特定の紅海藻種の藻類の乾燥重量の30%から75%を構成する。カラギーナンは、硫酸化パターン(それぞれ1つ、2つ、および3つの硫酸基を含むカッパ、イオタ、およびラムダの種類)を含む構造特性に基づいて分類される。
【0037】
カラギーナンは、鼻粘膜の表面に粘膜付着層を形成し、多数の異なるウイルス粒子と相互作用することがわかっている。これにより、ウイルス粒子の表面に遮蔽層が形成され、粘膜と宿主細胞の感染との間の相互作用が防止されると考えられている。これは、さまざまな動物ウイルスに対する抗ウイルス活性を提供し、殺精子剤の成分として性感染症の予防にも使用されている。インビトロおよびインビボ試験では、カラギーナンがパピローマウイルス、ライノウイルス、インフルエンザA、RSウイルス、およびヒトエンテロウイルス71などのウイルスの強力な阻害剤であることが示されている。
【0038】
しかし、カラギーナンと、ニーム油、PUFA、またはオトギリソウ属の抽出物などの他の抗微生物化合物との組み合わせが、それらの有効性を高めるか、そのような適用を可能にするといった指摘はない。
【0039】
クロルヘキシジンのウイルス増殖抑制性および抗菌性
1,6-ビス(4’-クロロ-フェニルビグアニド)ヘキサンは、一般にクロルヘキシジンとして知られる二価のカチオン性ビグアニドである。クロルヘキシジン(グルコン酸クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、および酢酸クロルヘキシジンの形態で)は、皮膚の消毒、手術器具の消毒、創傷の洗浄、歯垢の予防、およびその他の用途に一般的に使用される広域スペクトルの消毒剤および防腐剤である。それは、その副作用にもかかわらず、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方、嫌気性菌、真菌、および一部のウイルスに対する活性により、消毒剤、化粧品、および医薬品に広く使用されている。
【0040】
クロルヘキシジンは、生理的pHで解離し、正に帯電したクロルヘキシジンカチオンを放出することによって作用すると考えられ、これは、負に帯電した細菌細胞壁に結合して細菌の浸透圧平衡に影響を与え、静菌効果または細胞死につながる。すなわち、クロルヘキシジン分子のビグアナイド基は、細胞壁のアニオン部位に結合し、隣接する酸性リン脂質ヘッドグループ間にブリッジが形成され(クロルヘキシジンの、6炭素長という相対的に小さなサイズのため)、通常は細胞膜を安定化する二価のカチオン(Mg2+およびCa2+)が置換され、細胞からカリウムイオンとプロトンが漏出する。しかし、クロルヘキシジンは、血清などの有機物質の存在下では効果が低いことが知られている。クロルヘキシジンは、非エンベロープウイルスに対して効果がないことも知られている。
【0041】
しかし、クロルヘキシジンと、ニーム油、PUFA、オトギリソウ属の抽出物、またはカラギーナンなどの他の抗微生物化合物との組み合わせが、クロルヘキシジンの有効性を高めるか、そのような適用を可能にするといった指摘はない。
【0042】
抗微生物組成物の概要
ウイルスは一般に、感染者が咳やくしゃみをしたときに生成される呼吸器飛沫を介して伝染する。その後、これらの飛沫を、感染していない人が吸い込む可能性がある。呼吸器ウイルスからの伝染を防止または最小限に抑えるための1つの戦略は、侵入点(口腔粘膜など)にバリアを提供することである。
【0043】
効果的であるためには、口腔粘膜に適用されるバリアフィルムは、口腔粘膜の水性環境に直ちに分散するのを防ぐために、非水溶性である必要がある。口スプレーは、グリセロールがマイナーな抗微生物および抗ウイルス特性を有し、FDA承認の創傷および火傷治療で広く使用されているため、グリセロール系であることが多い。バリアは、好ましくは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、ならびにエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスに対する効果的なシールドであるべきである。
【0044】
本開示の実施形態は、治療上有効な濃度のニーム油およびオトギリソウ属の抽出物を含み、ローション、ハイドロゲル、口スプレー、または鼻スプレーとして投与され、特に口腔粘膜に適用された場合に、相乗的に有益な抗微生物バリアを作製する。
【0045】
本開示の他の実施形態は、特に口腔粘膜に適用される場合に、相乗的に有益な抗微生物バリアを作製するために、ローション、ハイドロゲル、口スプレー、または鼻スプレーとして投与される治療上有効な濃度のPUFA、ニーム油、およびオトギリソウ属からの抽出物を含む。本開示のさらに他の実施形態は、特に口腔粘膜に適用される場合に、有益な抗菌バリアを作製するために、ローション、ヒドロゲル、口スプレー、または鼻スプレーとして投与される治療有効濃度のPUFAを含む。
【0046】
本開示の他の実施形態は、1つまたは複数のPUFA、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物の治療有効濃度を、カラギーナンおよびクロルヘキシジンの1つまたは複数と組み合わせて含む。
【0047】
本開示の他の実施形態は、特に口腔粘膜に適用される場合に、有益な抗微生物バリアを作製するために、ローション、ハイドロゲル、口スプレー、または鼻スプレーとして投与される治療有効濃度のPUFAおよびカラギーナンを含む。本開示のさらに他の実施形態は、本明細書の下記により詳細に記載されるように、治療有効濃度のPUFAおよび1つまたは複数の酵素を含み、組成物は、特に口腔粘膜に適用された場合に、有益な抗微生物バリアを作製するために、ローション、ハイドロゲル、口スプレー、または鼻スプレーとして投与される。
【0048】
場合により、本開示の抗微生物溶液は、ウイルス性病原体の力価を低下させることができ、抗微生物組成物によって提供される相乗効果は、化合物が個別に影響を及ぼさない微生物病原体に対するバリア機能を可能にすることにまで拡張することができる。
【0049】
例えば、開示された抗微生物組成物の構成要素は、個々にコロナウイルスに対するバリア機能を提供しないかもしれないが、組み合わせは予想外かつ有益に提供する。実施形態において、ALA、EPA、およびDHAなどの個々のPUFAは、個々にコロナウイルスに対するバリア機能を提供しない可能性があるが、PUFA、好ましくはオメガ3脂肪酸の組み合わせは、予想外にかつ有益に提供する。
【0050】
PUFA、ニーム油、オトギリソウ油、およびカラギーナンはFDAによって食品添加物と見なされており、したがって、それ自体が薬理学的効果を有する、または有毒であるとは見なされていないため、これは特に予想外である。なお、それらの組み合わせは、特に口腔粘膜内での微生物バリアとしての適用を可能にする変革的な効果を提供する。さらに、いくつかの実施形態では、開示された組み合わせの変革的な効果により、上気道感染症、特にウイルスによって引き起こされる上気道感染症からの症状の軽減が可能になる。これには、例えば、鼻水、くしゃみ、咳、喉の痛み、および/または疲労などの症状の軽減が含まれる。
【0051】
場合により、様々な実施形態によるニーム油、オトギリソウ抽出物、PUFA、カラギーナン、および/またはクロルヘキシジンの開示された相乗的組み合わせは、感染中の炎症を軽減する。これにより、有益に、気道内の腫れを軽減して、呼吸の負担を軽減し、および/またはうっ血感を軽減できる効果がある。
【0052】
実施形態では、抗微生物組成物は、脂肪酸に比べて遊離脂肪酸を生成および維持するように構成されている。脂肪酸(PUFA由来の脂肪酸および/またはオトギリソウ抽出物中の天然脂肪酸など)が酸化して遊離脂肪酸になる組成物を提供すると、組成物の抗ウイルス効果が向上することが見出された。これは、脂肪酸よりもはるかに小さい遊離脂肪酸が、ウイルス表面のスパイクタンパク質の間に収まり、ウイルス膜と相互作用して、その過程で膜を破壊または溶解し、ウイルスを不活性化することにより生じると考えられる。脂肪酸ははるかに大きいため、スパイクタンパク質によって妨げられ、このウイルス抑制/殺ウイルス特性を提供できない。
【0053】
感染症/疾患の経過中の症状緩和に加えて、本開示の実施形態は、個人が症候性感染症を呈する総日数を減少させることができる(例えば、図5に示されるように)。
【0054】
本明細書に提供される実施例内でより詳細に記載されるように、本開示の実施形態は、付加的に、または代替的に、感染個体内のウイルス負荷または粒子の検出を減少させることができる。
【0055】
スプレー形態で提供される場合、開示された抗微生物(好ましくは抗ウイルス)組成物、または少なくともその活性成分は、当技術分野で知られている不活性噴射剤を使用して投与することができる。これにより、有利には、使用者および/または周囲の人が安全に吸入できる無毒の噴射剤によって、開示された組成物の経口適用が可能になる。
【0056】
あるいは、開示された抗微生物(好ましくは抗ウイルス)組成物は、噴射剤を使用せずに噴霧スプレーとして送達することができる。そのような実施形態では、組成物の粘度は、グリセロールおよび/または水を添加して調整する必要があり、開示された利益および健康によい作用を有するように、改変された組成物内の活性成分の臨床的に有効な量を送達することができる所望の粘度を得る。
【0057】
ヒトの上気道の感染を治療または予防する方法は、本明細書に開示される抗微生物化合物を口腔粘膜に投与することを含み得る。これは、例えば、のどスプレーまたは鼻スプレーを使用して行うことができる。当技術分野で知られ、使用されている噴霧デバイスは、そのような使用のために採用することができる。このようなデバイスは、通常、作動ごとに30~200μLを放出し、抗微生物組成物は、有効性とおいしさのために処方することができる。
【0058】
非限定的な例として、開示されたスプレー製剤は、罹患個体の鼻および口に噴霧することにより、鼻および口咽頭粘膜の一方、または好ましくは両方に投与することができる。実施形態では、抗微生物溶液は、口スプレーおよび/または鼻スプレーの作動ごとに50μL~200μLの用量で送達される。作動当たり50μL~200μLの用量が記載されているが、作動当たりの任意の適切な容量が、特定の組成物、その構成要素、および使用者の必要性に基づく適切なものとして送達され得ることが理解される。抗微生物溶液は、作動ごとに50μL~200μLなどの所定の量を送達するように構成されたスプレーボトルなどの適切な容器/ディスペンサーで提供されてもよく、実施形態では、容器/ディスペンサーは、鼻腔および口腔への適用のために独立して構成されていてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ニーム油またはオトギリソウ抽出物などの1つまたは複数の構成要素の酸化を防止するために抗微生物組成物に抗酸化剤を添加することができ、それによって経時的に組成物の保存可能期間および性能を向上させることができる。
【0060】
一実施形態では、開示された抗微生物組成物は、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2(またはその変異株)などのコロナウイルスによって引き起こされる感染を予防および/または治療するために使用することができる。開示された抗微生物組成物の投与(例えば、罹患個体の鼻および口への噴霧による鼻および口腔咽頭粘膜への投与による)は、個体が原因コロナウイルスによる感染を経験する期間の短縮と関連している。場合によっては、そのような投与は疾患の重症度の軽減にも関連し、気道内のウイルス量を有益に減らし、他の人への伝染のリスクまたは可能性を減らすことができる。
【0061】
このため、本開示の実施形態は、疾患の原因物質の拡散および伝染性を低減することができる。さらに、投与により症候性感染症が遅くなるか減少する場合、救急医療サービスおよび/または医療機器(人工呼吸器など)の使用を含む医療システムへの負担が軽減される可能性がある。これは、医療システムに過度の負担をかけたり、リソースの利用可能性を低下させたりすることがないため、コミュニティ全体の罹患率と死亡率を有益に減少させることができる。
【0062】
様々なオメガ3脂肪酸は、開示された組成物に含むことができる。いくつかの実施形態では、オメガ3脂肪酸は、ALA、EPA、およびDHAの組み合わせなどのオメガ3脂肪酸の組み合わせを含む。これらは、冷水魚の皮、好ましくは大西洋ダラの皮に見られる平均的な濃度で、オメガ3脂肪酸のカクテルに含めることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、PUFAの相対濃度は、所望の利益が達成されるまで調整される。
【0064】
追加の実施形態
口腔に適用されるタンパク質分解酵素は、風邪の重症度と期間を減らすことができる。無作為化試験では、タンパク質分解酵素を含む経口スプレーが風邪の重症度と期間を軽減するのに有効であることが見出された。この試験には、自然に発生する一般的な風邪の267人の参加者が関与し、スプレーを1日6回使用するか、または治療を受けないかに無作為に割り当てられた。このスプレーは、PreCold(登録商標)、ColdZyme(登録商標)、CortaGripなどのいくつかのブランド名で販売されており、アイスランドの会社Zymetechのタラ由来トリプシンが含まれている。
【0065】
研究者らは、最初の7日間のジャクソン コールド スケールの全体的な症状スコアが、治療群の方が低かったことを見出した(曲線下面積:39.6対46.2)。のどの痛み、鼻詰まり、および頭痛の個々の症状に有意な効果があった。治療群では、すべてのドメインに対する生活の質のスコアが改善され、疾患の期間が短縮された。
【0066】
スプレーは、グリセロールおよび大西洋ダラから得られた酵素トリプシンを含むバリア溶液である。以前のインビトロ試験では、インフルエンザやライノウイルスなど、風邪の原因となるウイルスの99%を不活性化できることが示された。しかしながら、問題として、そのような化合物のコストおよびおいしさは、これらの製品の既知の論点である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗微生物組成物は、抗微生物バリアとしてのその有効性を維持または増加させるために、タンパク質分解酵素、好ましくは海洋由来プロテアーゼまたはコラゲナーゼなどの1つまたは複数の酵素をさらに含むことができる。抗微生物組成物はすでに抗微生物バリアとして機能するため(例えば、口腔粘膜で)、そのような追加のプロテアーゼは、以前に使用されたよりも低い濃度で、潜在的にプロテアーゼがそれ自体では抗微生物剤として有効ではない濃度で添加することができる。これは、商業製品においてそのような化合物を使用するコスト負担を有利に減らすことができ、おいしさも高めることができる。メントールなどの味覚増強添加剤の任意の添加も、組成物のおいしさを高めることができる。
【0068】
実施形態では、プロテアーゼおよび/またはコラゲナーゼなどの1つまたは複数の酵素は、抗微生物組成物の有効性を非エンベロープウイルスおよびエンベロープウイルスに拡張する。プロテアーゼまたはコラゲナーゼが記載されているが、任意の適切な酵素または酵素の組み合わせを任意の適切な量で添加してもよいことが理解されるであろう。実施形態では、酵素または酵素の組み合わせには、パパイン、フィカイン、ブロメライン、ペプシン、レニン、カテプシン、トリプシン、または任意の他の適切な酵素のうちの1つまたは複数が挙げられる。1つまたは複数の酵素の添加は、広域スペクトルの有効性のために動物系の構成要素を有利に提供する。
【0069】
実施形態では、実施形態による抗微生物組成物は、アスコルビン酸(別名ビタミンC)を含んでもよく、アスコルビン酸は、抗微生物組成物のpHを有利に低下させる。実施形態に含まれる安定化剤は、低いpHでより良好に作用することが見出された。実施形態において、組成物のpHは、鼻のpHと一致するように約6に維持される。遊離脂肪酸を特定のpHレベル(上記のような)に維持するために、実施形態は、クエン酸三ナトリウムおよび/またはクエン酸を含んでもよい。
【0070】
コロナウイルスに対しかつ予防するための抗微生物組成物の適用が記載されているが、組成物は任意の適切な微生物疾患に使用することができ、決して鼻および口へのスプレーに限定されないことが理解されるであろう。本開示の抗微生物組成物は、有利には、RSVなどのエンベロープウイルス、眼感染症、ヘルペスなどの口腔感染症、および非エンベロープウイルス全般に対して有効であるように構成されており、そしてそれらに対して使用される。
【0071】
結論
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0072】
デバイス、システム、および方法を含む本開示の様々な側面は、本質的に例示である1つまたは複数の実施形態または実装を参照して説明することができる。本明細書で使用される「例示的(exemplary)」という用語は、「例(example)、実例(instance)、または説明(illustration)として役立つ」ことを意味し、必ずしも本明細書で開示される他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。さらに、本開示または本発明の「実装(implementation)」への言及は、その1つまたは複数の実施形態への特定の言及を含み、その逆もまた同様であり、本発明の範囲を限定することなく説明的な例を提供することを意図しており、これは、以下の説明によってよりむしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0073】
本開示は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。記載された実施形態は、すべての点で、制限しようとするものではなく、例示としてのみ考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってよりむしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。特定の実施形態および詳細が、本開示の実施形態を例示する目的で本明細書および添付の開示に含まれているが、本明細書に開示される方法、製品、デバイス、および装置の様々な変更は、本開示または本発明の範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、様々な側面および実施形態が本明細書で開示されてきたが、他の側面や実施形態も検討される。特許請求の範囲の均等の意味および範囲内にあるすべての変更は、その範囲内に含まれるものとする。
【実施例
【0074】
本明細書に記載されるように以下の実施例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0075】
実施例1~5
図2のグラフに示すように、本開示の抗微生物溶液は、ニーム油とオトギリソウ属の抽出物、好ましくはヒペリシンのそれぞれを含む場合に、相乗効果を発揮することができる。相乗効果は、ある場合には、抗微生物活性を増強し、好ましくは殺ウイルス活性を増強させることができるが、追加的に、または代替的に、抗微生物溶液の個々の構成要素によっては実質的に影響されない1つまたは複数の微生物への抗微生物活性の拡大を含むことができる。
【0076】
例えば、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は、ニーム油またはオトギリソウ属の抽出物により個別に処置された場合、おそらく実質的に影響されない(例えば、無効化されるか、あるいはそうでなければ非感染性とされるか、または症候性感染症の時間または死亡率を減少させるといったことはない)。しかしながら、ニーム油およびオトギリソウ属の抽出物、好ましくはヒペリシンの組み合わせを含む本開示の抗微生物溶液で処置した場合、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は影響を受けることができる。
【0077】
これらのデータは、本開示の抗微生物溶液による予期せぬ相乗効果を証明している。相乗効果は、ウイルス力価の数または濃度の減少により、および/または図2のグラフに実証されているように、コロナウイルスへの有効性の拡大により観察される(例えば、「ニーム+オトギリソウ」および「ニーム+オトギリソウ+担体」の結果)。
【0078】
図2に示した結果に関連する抗微生物溶液が作られ、以下の表1に提供される溶液の1つまたは複数を含むことができる(各抗微生物溶液は実施例1~5にそれぞれ対応)。表1に開示される全てのパーセンテージは、抗微生物溶液の最終容量に対する比例容量である。
【表1】
【0079】
実施例1~5の抗微生物組成は、図2に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「ニーム+オトギリソウ」の結果)。
【0080】
表1、および以下の他の表にあるように、用語「担体」は、1つまたは複数の薬学的に許容され得る担体、添加剤、および/または希釈剤、好ましくは少なくともグリセロール、およびいくつかの実施態様では、メントールなどの香り付け増強添加剤(flavor-enhancing additive)、を含むことが意図される。用語「安定化剤」は、抗酸化剤、好ましくは溶液内でPUFAの酸化を防止するために好適なオイル系抗酸化剤を含むことが意図される。
【0081】
実施例6~10
以下の表2は、担体ならびにニーム油およびオトギリソウ属の抽出物の混合物の様々な濃度を有する抗微生物組成物を含む。実施例6~10の各々において、ニーム油およびオトギリソウ属の抽出物の相対的な濃度は互いに正比例したままである。各処方は、それぞれ実施例6~10として示され、図2に示された結果と範囲が整合し得る(例えば、「ニーム+オトギリソウ+担体」の結果)。
【表2】
【0082】
実施例11~20
以下の表3は、担体、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物の各々の様々な濃度を有し、ニーム油およびオトギリソウ属抽出物が異なる相対濃度で提供されている抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例11~20として示す。図2に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「ニーム+オトギリソウ+担体」の結果)。
【表3】
【0083】
実施例21~25
図3のグラフに示すように、本開示の抗微生物溶液は、PUFA、好ましくはオメガ3脂肪酸、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物、好ましくはヒペリシンの各々を含む場合に相乗効果を奏する。相乗効果は、ある場合には、抗微生物活性を増強し、好ましくは殺ウイルス活性を増強させることができるが、追加的に、または代替的に、抗微生物溶液の個々の構成要素によっては実質的に影響されない1つまたは複数の微生物への抗微生物活性の拡大を含むことができる。
【0084】
例えば、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は、PUFA、ニーム油、またはオトギリソウ属の抽出物により個別に処置された場合、おそらく実質的に影響されない(例えば、無効化されるか、あるいはそうでなければ非感染性とされるか、または症候性感染症の時間または死亡率を減少させるといったことはない)。しかしながら、PUFA、好ましくはオメガ3脂肪酸、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物、好ましくはヒペリシンの組み合わせを含む本開示の抗微生物溶液で処置した場合、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は影響を受けることができる。
【0085】
これらのデータは、本開示の抗微生物溶液による予期せぬ相乗効果を証明している。相乗効果は、ウイルス力価の数または濃度の減少により、および/または図4および5のグラフに実証されているように観察される(例えば、「担体+3」の結果)。
【0086】
図3および4に示した結果に関連する抗微生物溶液が作られ、以下の表4に提供される1つまたは複数の溶液を含むことができる(各抗微生物溶液は実施例21~25にそれぞれ対応)。表4に開示される全てのパーセンテージは、抗微生物溶液の最終容量に対する比例容量である。
【表4】
【0087】
実施例21~25の抗微生物組成は、図2および3に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「担体+3」の結果)。
【0088】
実施例26~30
以下の表5は、担体、ならびにPUFA、ニーム油およびオトギリソウ属の抽出物の混合物の様々な濃度を有する抗微生物組成物を含む。実施例26~30の各々において、PUFA、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物の相対的な濃度は互いに正比例したままである。各処方は、それぞれ実施例26~30として示され、図2および3に示された結果と範囲が整合し得る(例えば、「担体+3」の結果)。
【表5】
【0089】
実施例31~35
以下の表6は、担体、ニーム油、およびオトギリソウ属の抽出物の各々の様々な濃度を有し、組成物からPUFAが明らかに欠けている抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例31~35として示される。
【表6】
【0090】
実施例36~40
以下の表7は、担体、PUFA、およびオトギリソウ属の抽出物の各々の様々な濃度を有し、組成物からニーム油が明らかに欠けている抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例36~40として示される。
【表7】
【0091】
実施例41~45
以下の表8は、担体、PUFA、およびニーム油の各々の様々な濃度を有し、組成物からオトギリソウ属の抽出物が明らかに欠けている抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例21~25として示される。
【表8】
【0092】
場合によっては、実施例31~45に関連する組成物は、微生物の病原性に影響し得るが、これらの組成物がコロナウイルスまたは他の上気道病原菌に実施例21~30と関連する組成物と同程度に影響するということは予期されない。代わりに、実施例31~45に関連する組成物は、あるとすれば、コロナウイルス(または他の上気道病原菌)力価および/または病原性に組み合わせの影響、しかし実施例21~30に開示された組成物で見られるような相乗効果ではない、を有することが予期される。
【0093】
実施例31~45は、表6~8に対応し、図3に示されたと範囲が整合し得る(例えば、「担体+2」の結果)。
【0094】
実施例26
本開示の抗微生物組成物は、匂いおよびおいしさについて試験された。10個の試料を以下の処方に従って調製した。
14mL グリセロール
1.5mL ニーム油+オトギリソウ抽出物処方
1.5mL オメガ3PUFA原液処方
3mL H2
<1mLの濃縮香味料(対照には香味料は添加しない)
【0095】
各処方は、添加したフレーバーによりラベルした。5人のボランティアが混合物の味見をし、匂いを嗅ぎ、各混合物を0~10の尺度で評価した(0は最低の味/匂いであり、10は最高の味/および匂いである)。味および匂いそれぞれの間、参加者は、以下の味および匂いの試験に先入観を抱かせないように、先の心地よい/不快な味および/または匂いを中和するために、試料間でコーヒーの匂いを嗅ぎ、オレンジを味わった。
【0096】
以下の表9は、各列の左から右に最初に匂いのスコアを示し、次に味のスコアを数値で結果を示す。
【表9】
【0097】
上の表9に示すように、上位の好ましい香味料は、7.2の平均スコアのカラメル、5.8の平均スコアのレモン、それぞれ5.4の平均スコアを有するアーモンドまたはバニラである。
【0098】
実施例27
噴霧可能な組成物は、次の式を用いて作り、混合後少なくとも30分間は安定であり分離しないことが分かった。
16mL グリセロール(85%v/v)
1.5~2mL ニーム油+オトギリソウ抽出物処方(5%~10%v/v)
0.5~1mL オメガ3PUFA原液(5%v/v)
3.0~3.5mL 粘度調整のための水
<1mL 香味料(例えば、実施例26に挙げられたもの、ユーカリ、またはメントール)
【0099】
上記例示処方にあるニーム油+オトギリソウ抽出物は、高含有量の飽和および多価不飽和脂肪酸をそれ自体で含む。例えば、ニーム油+オトギリソウ抽出物の原液処方は、以下の表10に挙げる濃度の脂肪酸を含むことができる。
【表10】
【0100】
実施例28
ある臨床試験において、上気道感染症の初期症状(例えば、鼻水およびのどの痛み)を示す70人以上の患者が、オメガ3PUFA、ニーム油およびオトギリソウ抽出物を含む本明細書に開示されたスプレー組成物で処置された。主治医が、COVID-19(または他の原因ウイルス)の粘膜に対する作用と戦うために各患者の鼻咽頭腔および口腔咽頭腔にスプレーを投与した。投与後、70人の患者は、症状の減少または完全解消を示した。
【0101】
この試験において、患者が経験した症状軽減の例を図5に示す。図5では、症状が現れた後(感染の2日後で破線の縦線により示されている)、患者は、オメガ3PUFA、ニーム油、およびオトギリソウ抽出物を含む本明細書に開示されたスプレー組成物の繰り返し用量が投与された。示されているように、症状の数および/または重症度は、未処置個体と比較して程度および時間において有意に減少した。
【0102】
実施例29~33
図6のグラフに示されるように、本開示の抗微生物溶液は、PUFA、好ましくはオメガ3脂肪酸をスプレー組成物に含む場合、微生物バリア効果を奏することができる。この効果は、場合により、抗微生物活性を増強し、好ましくは殺ウイルス活性を増強させることができるが、追加的に、または代替的に、抗微生物溶液の個々の構成要素によっては実質的に影響されない1つまたは複数の微生物への抗微生物活性の拡大を含むことができる。
【0103】
例えば、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は、単一のPUFAにより処置された場合、おそらく実質的に影響されない(例えば、無効化されるか、あるいはそうでなければ非感染性とされるか、または症候性感染症の時間または死亡率を減少させるといったことはない)。しかしながら、PUFAの組み合わせ、好ましくはオメガ3脂肪酸の組み合わせを含む本開示の抗微生物溶液で処置した場合、コロナウイルス、またはそれにより引き起こされる疾患は影響を受けることができる。
【0104】
これらのデータは、本開示の抗微生物溶液による予期せぬ相乗効果を証明している。効果は、ウイルス力価の数または濃度の減少により、および/または図6のグラフに実証されているように、コロナウイルスへの有効性の拡大により観察される。
【0105】
図6に示した結果に関連する対照溶液が作られ、以下の表11に提供される溶液の1つまたは複数を含むことができる(各抗微生物溶液は、実施例29~33にそれぞれ対応)。表11に開示される全てのパーセンテージは、抗微生物溶液の最終容量に対する比例容量である。
【表11】
【0106】
実施例29~33の対照溶液は、図6に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「安定化剤+担体のみ」の結果)。
【0107】
実施例34~38
以下の表12は、種々のPUFAの様々な濃度を有する抗微生物組成物を含む。実施例34において、PUFAの相対的な濃度は互いに正比例したままである。相対比は、等比(例えば、各原液は示されたPUFAの100μg/mLを有する)であってもよく、または環境の設定において観察されているような相対比(例えば、大西洋ダラの皮における各々の相対存在量)であってもよい。実施例35~39において、PUFAの相対濃度は異なっている。各処方は、それぞれ実施例34~38として示され、図6に示された結果と範囲が整合し得る(例えば、「PUFAのみ」の結果)。
【表12】
【0108】
実施例39~43
以下の表13は、酸化安定化剤に加えて実施例6~10のそれぞれのPUFAの様々な濃度を有する抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例11~15として示される。表3に対応する実施例11~15は、図2に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「PUFA+安定化剤」の結果)。
【表13】
【0109】
実施例44~53
以下の表14は、酸化安定化剤および担体に加えて実施例34~38のそれぞれのPUFAの様々な濃度を有する抗微生物組成物を含む。各処方は、それぞれ実施例44~53として示され、図6に示されたデータと範囲が整合し得る(例えば、「PUFA+安定化剤+担体」の結果)。
【表14】
【0110】
口腔および鼻腔における本開示の実施形態による抗微生物スプレーの滞留を調査した。UV光を使用して、絶食のあいだ少なくとも2時間、口腔咽頭粘膜および鼻腔に抗微生物溶液の実施形態が見えることを確認した。この知見は、2つの異なるアプリケーターボトルを用いて鼻と喉に抗微生物溶液を自己投与することによって特定された。喉の奥に2回、各鼻孔に1回ずつ、合計4回スプレーした。
【0111】
抗微生物溶液の存在は、2時間に渡って合計4回、一人の被験者で暗室においてUV光のもとでスプレーを可視化することにより最初のテストで観察した。そのあいだ、抗微生物溶液のバリア機能を破壊する可能性のある飲食、運動、シャワー、歯磨き、およびその他の活動は回避された。可視化は、鼻および喉のスプレーの蛍光を検出した。これらの可視化に使用されたUV光源は、ベルギー、ガヴェレのVelleman社から入手可能な、UV波長が395~400nmの9LED EFL41UV懐中電灯であった。
【0112】
目に見える噴霧パターンと液滴が喉と鼻孔の両方で検出された。明るさは15~30分ごとにチェックされ、時間の経過とともに減少したが、抗病原体溶液の適用後1時間以上は見えたままであった。適用後約90~120分で、液滴が薄くなり、鼻腔から流れ落ちるスプレーのラインが見えるようになった。滴と線は、適用後140分まで見えたままであった。結果を以下の表15に示す。
【表15】
【0113】
表15の4つの試験の結果は、本開示による抗微生物溶液の実施形態が、口腔咽頭粘膜および鼻腔を、視覚的に検出可能な程度に、塗布後一定期間コーティングし、留まる能力を示している。
【0114】
2番目のテストは、ベースラインの抗微生物スプレーを投与し、UV光の下で抗微生物溶液の存在を可視化することによって、7人の被験者に対して実行された。放出される光の強度は、口腔咽頭粘膜に存在する抗微生物溶液の量に直接的に正比例する。人間の被験者は、2時間は飲食を控え、30分ごとに抗微生物スプレーの強度をチェックするように指示された。目に見える抗微生物スプレーの量は、0=目に見えない、0.5=非常にかすかで、被覆率が低い、1=かすかだが見える、被覆率が低い、1.5=明るい、見える、限られた被覆、2=ある程度の被覆率で見える、2.5=明るくかつよく見えるスプレー液滴、減少した被覆率、3=良好な被覆率で明るくかつよく見えるスプレーパターン、のスケールで各被験者によって等級付けされた。2番目のテストの結果を以下の表16に示す。
【表16】
【0115】
上記のテストでは、被験者Aは30分の予約時間を逃し、被験者Cは60分で2.5から90分で3に増加したと報告し(おそらくスプレーの鼻のリザーバーからの放出による)、被験者Eは120分で少量の飲料を飲んだが、目に見える影響は無視できるほどであったため、データ点は排除しなかった。被験者Bは120分で「0」の評価を与えたが、それでも口腔と鼻腔の抗微生物溶液の風味を検出できた。これは15分後に鼻からスプレーの流れとして再び現れ、その量は「1」と等級付けされた。
【0116】
表16のデータは図7に可視化されており、等級、すなわち保持の程度、および視認性、すなわちほぼすべての被験者の口腔咽頭粘膜からの放出光の強度は高く、中央値は適用直後は3(「明るく良く見えるスプレーパターンで良好な被覆率」)であったが、時間の経過とともに減少した。すべての被験者について、保持と可視性の程度は時間とともに着実に低下し、ほとんどの被験者(7人中5人)は適用120分後も検出可能であり続け、全体の中央値は120分で1(「弱いが目に見える、低い被覆率」)であった。喉粘膜についいてグレード「0」を報告した被験者の多くでさえ、依然として抗微生物溶液の味がした(tasting)と報告しており、鼻腔内に少なくとも残留量のスプレーが存在することを示唆している。
【0117】
表16および図7のデータは、持続期間にわたって口腔咽頭粘膜に保持される実施形態による抗微生物溶液の能力を示す。さらに、データは、口と鼻への個別の適用など、口スプレーと鼻スプレーの組み合わせの適合性を示唆しており、口スプレーは喉の奥で即時のシールド機能を提供し、鼻スプレーは鼻腔から落ちる液滴により、より長期間の保護を提供する。実施形態では、本開示による抗微生物溶液を適用する方法は、一日の始まりまたはシフトの開始時などに口スプレーを適用すること、およびその後、その日またはシフトをとおして1回以上の機会に鼻スプレーを適用することを含む。
【0118】
これらのデータは、開示された抗微生物溶液が、口腔咽頭粘膜の上または内部に保持され、遭遇したウイルス粒子または微生物に相乗的な抗微生物効果と抗ウイルス効果を提供することにより、症候性の上気道感染症の治療に有益であるという強力な証拠を提供する。これは、微生物とウイルス粒子が宿主の組織に感染するのを防ぎ、代わりに粘膜で中和されるため、感染を有利に防ぐ。
【0119】
開示された抗微生物溶液の観察された利点には、症状の減少または緩和が含まれ、上気道内の炎症が減少したと考えられる。さらに、これらのデータは、開示された抗微生物スプレーの投与後のウイルス力価の低下を示している。
【0120】
実施例54
以下の表17は、酸化安定化剤、担体、および他の構成成分に加えて、特定の濃度のオトギリソウ油をニーム油と組み合わせて有する抗微生物組成物を含む。
【表17】
【0121】
上記の実施例54では、抗微生物組成物は、植物オトギリソウ属の抽出物の組み合わせを含み、実施例54では、他の用途の中でも鼻および/または経口スプレーとして、西洋オトギリソウ油などのオトギリソウ油、ニーム油、オメガ3PUFA、ならびにオトギリソウ油、ニーム油、およびPUFAの組み合わせの使用を容易にするための構成要素を含む。例えば、抗微生物組成物は、抗微生物組成物のpHを適切なレベルに調整するためにアスコルビン酸(別名ビタミンC)を含む。アスコルビン酸は、非限定的な例では、0.05~0.20%w/vの範囲で提供され得る。抗微生物組成物は、さらにカラギーナン(例えば、5~20%w/v)および/またはクロルヘキシジン(例えば、0.05%~0.2%w/v、すなわち0.05mg/L~0.2mg/L)を含んでもよい。カラギーナンおよび/またはクロルヘキシジンを含む実施形態では、全体
【0122】
2019年5月21日に付与され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,293,011号明細書に記載されているように、ニーム油は、治癒、忌避、防腐、および抗炎症特性を有し、オトギリソウの油状抽出物は、治癒、寛解、および防腐または抗生物質の特性を有する。ニーム油は、皮膚病に対する最高の治癒および消毒剤の1つと見なすことができる。ニーム油は関節痛や筋肉痛の抗炎症剤としても使用でき、オトギリソウは、切り傷、擦り傷、打ち身、軽度のやけど、坐骨神経痛、損傷した神経、炎症、潰瘍、有毒な爬虫類の咬傷、腎臓と肺の病気、アレルギー反応、不安およびうつ病などの多くの病気を治療する。
【0123】
ニーム油は、ニームの木(Azadirachta indica(A.Juss))からの成熟した種子から、冷間/熱を利用した圧搾(cold/heat assisted pressing)または溶媒抽出のいずれかによって得られる。得られた油は、マイコトキシン(アフラトキシン)が含まれていないかどうかをモニターしてもよい。
【0124】
セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum))の油抽出物は、透明なガラス受容器に含まれる植物性油中で、セントジョーンズワートの花冠の日光下で少なくとも3~6週間の浸軟(maceration)プロセスによって得ることができる。花冠は、最も成熟した瞬間に採取し得る。浸軟プロセスが完了すると、油抽出物は典型的なルビーレッド色になる。続いて、油抽出物をろ過し、自然光や紫外線への暴露による酸化分解プロセスを避けるために、暗色ガラス受容器にストックされる。オトギリソウ油抽出物の調製のこの特定の手順は、その有効性を保証する。
【0125】
以下の実験結果で示されるように、抗微生物組成物は、実施形態では、治癒効果、忌避効果、抗炎症効果、緩解効果、および防腐効果など、複数の有益な特性を組み合わせて示す。相乗効果により、各構成要素の特性が単一の植物成分と比較して強化される。すなわち、実施形態の抗微生物組成物は、消毒剤、抗炎症剤、抗微生物剤、寛解剤、鎮痛剤、および/または他の特性を示すことができ、局所的な抗生物質を使用することなく、細菌に対するものを含む広域スペクトル保護を提供することができる。
【0126】
実施形態では、オトギリソウ油は、ナフトジアントロン-ヒペリシン-および任意にはフロログルシノール-ヒペルホリン-を含む。特に、ヒペリシンは、上記で説明した他の利点の中でも、さまざまなグラム陽性菌に対する抗菌効果、およびウイルス、特にエンベロープウイルスに対するウイルス増殖抑制または殺ウイルス効果を提供し得る。ヒペリシンは、ウイルスが細胞膜と融合する能力を有利に阻害すると考えられている。
【0127】
カラギーナンは、使用者の粘膜および/または細胞とウイルスの相互作用を防止する植物系の構成要素を有利に提供し、オトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFAの抗ウイルス効果および抗菌効果を増幅し、相乗的に増加させる。クロルヘキシジンは、抗微生物組成物に抗菌効果を有利に提供し、相乗的に組成物の抗微生物効果を広げる。さらに、クロルヘキシジンは、非エンベロープまたは非カプセル化ウイルスに対する保護を有利に拡張する。有利なことに、カラギーナンおよびクロルヘキシジンは、オトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFAと相乗的に協力して、使用者への刺激を最小限に抑えかつ緩和しながら、広域スペクトルの保護を提供する。
【0128】
抗微生物組成物は、水、海水、植物性油、パラフィン、それらの組み合わせなどの1つまたは複数の希釈剤を含んでもよい。
【0129】
驚くべきことに、アスコルビン酸、デンマーク、ジュエルミンデのパルスガード社から入手可能なPalsgaard(登録商標)リン酸アンモニウム(AMP)4455などの乳化剤と、抗微生物組成物のオトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFAとの組み合わせが、特に脂肪酸とオトギリソウ油とニーム油のデリケートな性質を考慮して、油性および水性成分の適切な乳化を維持しながら、鼻および/または口への適用に共に適したpHを有利に維持できることが見出された。AMP4455について説明したが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(別名「ポリソルベート80」)または他の乳化剤など他の乳化剤も使用可能であることも当然である。実施形態では、例えばアスコルビン酸の量は、ポリソルベート80を使用する場合、抗微生物組成物の所望のpHを維持するために調整される。例えば、ポリソルベート80が乳化剤として提供される場合、アスコルビン酸の量は、ポリソルベート80のより低いpHを考慮して、AMP4455を使用する実施形態と比較して、相応に減少され得る。
【0130】
実施例54の抗微生物組成物のアスコルビン酸含有量は、抗微生物組成物のpHが所望のレベルに維持されるように有利に提供される。実施形態では、組成物のpHは、例えば、敏感な鼻腔への刺激を低減または緩和するために、約6である。実施形態では、組成物のpHは約5である。pH5は、使用者の鼻腔および/または口腔への刺激を最小限に抑えながら、抗微生物効果を提供する遊離脂肪酸(オトギリソウ油および/またはオメガ3PUFAからの溶液に由来する)の量を有利に調和させることが見出された。他の実施形態では、組成物のpHは約4.5である。
【0131】
上記のpHレベルが記載されているが、任意の適切なpHを利用することができ、任意のpH調整成分を適切な量で含めることができることが理解されるであろう。例えば、クエン酸三ナトリウムを利用して、組成物のpHを所望のレベルに調整することができる。実施形態では、口腔に対する鼻腔の感受性を考慮して、鼻スプレーは口スプレーよりも高いpHを有する、別個の鼻スプレーおよび口スプレーを提供することができる。例えば、口スプレーは、約4.5のpH(例えば、4.0の低い値まで、例えば、6.0の高い値まで)を有することができ、鼻スプレーは、約5のpH(例えば4.6の低い値まで、例えば6.0の高い値まで)を有し得る。他の実施形態では、同じスプレーおよび組成物が鼻腔および口腔の両方に適用される。
【0132】
実施例54の抗微生物組成物は、抗酸化剤を有利に含む。実施例54の抗酸化剤は、α-トコフェロール(別名ビタミンE)であるが、他の実施形態および実施例では、任意の適切な抗酸化剤も同様に検討され得ることが理解されるであろう。例えば、β-トコフェロール、Γ-トコフェロール、δ-トコフェロールなどの他のビタミンEトコペロール、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、Γ-トコトリエノール、およびδ-トコトリエノールなどのビタミンEトコトリエノール、または他の適切な抗酸化剤を適切なものとして提供することができる。抗酸化剤は、貯蔵中にオトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFAを有利に安定化し、抗微生物組成物の保存可能期間を延ばす。
【0133】
オトギリソウおよびニーム油の風味をマスキングするために、1つまたは複数の成分を添加することができる。実施例54では、ユーカリ油およびステビア・レバウディアナ(Stevia rebaudiana)の抽出物または成分が提供される。実施形態では、ステビア・レバウディアナ抽出物はレバウジオシドA(Reb-A)である。他の実施形態では、ステビア・レバウディアナ抽出物はステビオシドである。驚くべきことに、香味関連成分は、活性成分、すなわちオトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFA(驚くほど臭いを隠すのが難しい)の抗微生物特性を損なうことなく、特に鼻および/または口適用のために、抗微生物組成物を使用者に有利においしくすることが見出された。ユーカリ油およびステビア・レバウディアナの抽出物または成分について説明したが、抗微生物組成物の風味および/または匂いを高めるために任意の適切な成分を使用できることが理解されるであろう。例えば、エリスリトール、キシリトール、人工甘味料、または任意の他の適切な化合物などの他の甘味料を使用することができる。
【0134】
例えば、寒天油、アジョワン油、アンジェリカ根油、アニス油、アサフェティダ油、ペルーバルサム油、アーボビテ(Arborvitae)油、バジル油、ベルガモット油、ブラックペッパー油、ブラックスプルース油、ブルータンジー油、ブチュ油、バーチ油、樟脳油、カンナビス花油、カラモジン油、キャラウェイ種子油、カルダモン油、キャロット種子油、カシア油、シダーウッド油、セロリ種子油、シラントロ油、シナモン樹皮油、シスタス・ラダニファー油、シトロネラ油、クラリセージ油、ココナッツ油、クローブ油、コーヒー油、コパイバ油、コリアンダー油、コスマリー油、コスタス油、クランベリー種子油、クバベ油、クミン種子油、ヒノキ油、シプリオール油、カレー葉油、ダバナ油、ディル油、ダグラスファー油、エレカンパン油、エレミ油、フランキンセンス油、ジャスミン油、ラベンダー油、マグノリア油、ネロリ油、オレガノ油、ペパーミント油、ローズ油、ティーツリー油、フェンネル油、フェヌグリーク油、モミ油、ガランガル油、ガルバナム油、ガーリック油、ゼラニウム油、ジンジャー油、ゴールデンロッド油、グレープフルーツ油、グリーンマンダリン油、ヘリクリサム油、ヘナ油、ヒッコリーナッツ油、ホースラディッシュ油、ヒソップ油、ジュニパーベリー油、ラウルスノビリス油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、リツァクベバ油、リナロール油、マジョラム油、メリッサ油、ハッカ油、モリンガ油、ミルラ油、マウンテンセイボリー油、ヨモギ油、マスタード油、マートル油、ネロリ油、ナツメグ油、オレンジ油、オリス油、パロサント油、パセリ油、パチョリ油、シソ油、ペニーロイヤル油、プチグレン油、パイン油、ピンクペッパー油、ラベンサラ油、レッドシダー油、ローマンカモミール油、ローズヒップ油、ローズマリー油、ローズウッド油、セージ油、サンダルウッド油、サッサフラス油、セイボリー油、五味子油、シベリアンファー油、スペアミント油、スパイクナード油、トウヒ油、スターアニス油、タンジェリン油、タラゴン油、タイム油、ツガ油、ターメリック油、バレリアン油、ワリオナ油、ベチバー油、西洋レッドシダー油、ワイルドオレンジ油、ウィンターグリーン油、ヤロー/ポン油、イランイラン油またはその他などの1つまたは複数の油が、抗酸化剤、防腐剤、および/または芳香剤として使用され得る。
【0135】
スプレーの形態の別個の抗菌組成物が鼻腔および口腔にそれぞれ適用するために提供される実施形態では、鼻スプレーは香味増強剤としてユーカリ油を含むことができ、口スプレーはペパーミント油を香味増強剤として含むことができる。異なる構成要素または構成要素の組み合わせが、刺激の危険性、フレーバーおよび匂いに対する利点、および/またはそれぞれの腔において所望のように保持されるスプレーの能力を考慮して適切であるように、別個の鼻スプレーおよび経口スプレーに対して提供され得ることが理解されるであろう。
【0136】
抗微生物組成物は、ソルビン酸カリウムなどの1つまたは複数の防腐剤を含んでもよい。ソルビン酸カリウムが記載されているが、塩化ベンザルコニウム、プロパンジオール、抗微生物ペプチドなどを含む他の防腐剤またはそれらの組み合わせを使用できることが理解されるであろう。有効成分、すなわちオトギリソウおよびニーム油、ならびにオメガ3PUFAも相乗的に防腐剤による保護を提供する。
【0137】
驚くべきことに、活性成分の組み合わせ、すなわちオトギリソウおよびニーム油ならびにオメガ3PUFAは温度に敏感であり、オトギリソウおよびニーム油を少なくとも60%のv/v比率で提供すると、温度変動にかかわらず抗微生物組成物の有効性が維持される。驚くべきことに、ニーム油がオトギリソウ油よりもはるかに少ない割合、-例えば10:1以上のオトギリソウ:ニームv/v比、実施形態では100:1以上、実施形態では500:1、実施形態では1000:1、実施形態では1200:1-で提供され、抗微生物組成物の広域スペクトル有効性ならびに温度安定性が維持される、オメガ3PUFAを含むオトギリソウおよびニーム油の抗微生物組成物を提供することがさらに見出された。
【0138】
ここで図8に目を向けると、進行中のヒト対象試験の図が示されている。ヒトを披験者とする試験は、適格性を判断するための被験者の募集が含まれる。これには、例えば、潜在的な被験者が現在COVIDに感染しているかどうか、またはCOVID-19の最近の感染を示唆する抗体を有するかどうかを判断するためのCOVID-19テストが含まれ得る。ベースラインスクリーニング工程の後、資格のある被験者が登録され、インフォームドコンセントが取得され、例えば披験者がすでに感染しているか、または以前にCOVID-19に感染した経験がある場合に適格でない被験者が除外される。進行中の試験には、対照デバイス(71人の被験者)と試験デバイス(71人の被験者)に無作為に割り付けられた142人の被験者が含まれる。
【0139】
対照デバイス群と試験デバイス群の両方の被験者は、毎日の投与と症状の追跡調査を14日間受け、3日目と5日目にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)テストによるウイルス量のためのウイルス綿棒採取が行われる。この試験にはさらに、より長く合併症を患う患者のための1、3、および6か月の長期追跡調査が含まれる。
【0140】
図9は、進行中のヒトを対象とした試験の4人の被験者からの予備データを示す。グラフ100は、一実施形態による抗微生物溶液を投与された第1被験者102および第2被験者104と、対照溶液を投与された第3被験者106および第4被験者108とを示し、y軸はサイクル閾値(Ct)値を、x軸はサンプル時間、具体的には、1は0日目に対応し、2は3日目に対応し、そして3は5日目に対応する、を示す。より高いCt値は、ウイルス負荷の減少を示す。このように、第1および第2披験者102、104は、第3および第4披験者106、108と比較して、ウイルス量の減少を経験する。
【0141】
図10は、計画中の動物対象試験の図を示す。このように、動物対象試験は、対象の3つの異なる群を含む:実施形態による抗微生物溶液への暴露を含む第1の群、陰性対照を含む第2の群、およびスウェーデン、ルンドのEnzymatica社から入手可能なColdZyme(登録商標)マウススプレーへの暴露を含む第3の群。動物対象は、フェレット、マウス、サル、シリアンハムスター、またはその他であってもよい。抗微生物溶液とColdZyme(登録商標)の群については、溶液は口に1回スプレーし、各鼻孔に1回スプレーして投与される。その後、3つの群すべてにSARS-CoV-2を接種する。
【0142】
接種の30分後、抗微生物溶液とColdZyme(登録商標)の群は、口にもう1回のスプレー、各鼻孔に1回のスプレーを受ける。接種からさらに60分後、抗微生物溶液とColdZyme(登録商標)の群は、口にもう1回のスプレー、各鼻孔に1回のスプレーを受ける。その後(接種後90分)、3つの群すべてが、ウイルス量の測定のために鼻洗浄を受ける。24時間後、ウイルス測定のためのもう1度鼻洗浄が行われる。SARS-CoV-2への曝露が記載されているが、試験は、コロナウイルス、RSV、インフルエンザなどのエンベロープウイルス、ライノウイルスなどの非エンベロープウイルス、または他の微生物も同様に含まれる可能性がある。この試験または開示された実施形態の抗微生物組成物に関する他の試験において、抗微生物組成物は、特定のウイルスなどの1つまたは複数の微生物に対する予防として評価され得る。
【0143】
図11は、計画中のヒト対象試験の図を示す。計画されたヒト対象試験では、82人の健常ボランティアを募集してスクリーニングし、42人の健常ボランティアの集団に絞り込む。選ばれたボランティアは、試験群(実施形態による抗微生物溶液を投与される)および対照群に分けられ、各群は21人の参加者を有する。試験の1日目に、試験群は抗微生物溶液を投与され、両群にSARS-CoV-2を接種する。3~10日目のそれぞれで、PCR検査を使用してウイルス量を決定するために被験者を綿棒で拭く。
【0144】
開示された抗微生物スプレーの活性成分は一般に摂取しても安全であり、提供された濃度でFDAおよび他の国際的な食品安全機関によって承認されているので、開示された製剤は、予防的使用および/または症状に対する使用のために処方箋なしで有益に提供され得る。このため、開示された治療用組成物は、容易かつ広く配布することができる。これは、コミュニティ内の伝染性上気道ウイルス病原体の拡散を有益に減らすことができ、COVID-19などの流行および/またはパンデミックの発生と戦うのに有用である。
【0145】
開示された実施形態による抗微生物溶液を提供することにより、新規コロナウイルスなどの微生物およびウイルス感染の予防および対処に既存の治療法が十分に適応されていないという問題が有利に対処される。本開示の溶液の実施形態は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルス、ならびに他の微生物に対して広域スペクトル有効性を有する抗微生物溶液を提供する。
【0146】
本明細書に示される本発明の特徴の様々な変更および/または修正、および本明細書に示される原理の追加の適用は、当業者であり、この開示を所有する者に想起されるであろうが、特許請求の範囲に定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく説明された実施形態になされ得、この開示の範囲内であるとみなされる。したがって、様々な側面および実施形態が本明細書に開示されているが、他の側面および実施形態も企図される。本明細書に記載されたものと同様または同等の多くの方法および構成要素が、本開示の実施形態を実施するために使用することができるが、特定の構成要素および方法のみが本明細書に記載される。
【0147】
また、本開示の特定の実施形態によるシステム、デバイス、製品、キット、方法、および/またはプロセスは、本明細書に開示および/または記載される他の実施形態に記載される特性、特徴(例えば、構成要素、部材、要素、部品、および/または部分)を含み(include)、組み込み、またはそうでなければ含む(comprise)。それにより、特定の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と互換性があり、組み合わされ、含まれ、および/または組み込まれ得る。したがって、本開示の特定の実施形態に関する特定の特徴の開示は、特定の実施形態への前記特徴の適用または包含を限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示の範囲から必ずしも逸脱することなく、他の実施形態も前記特徴、部材、要素、部品、および/または部分を含むことができることが理解されるであろう。
【0148】
さらに、特徴がそれと組み合わせて別の特徴を必要とするように記載されていない限り、本明細書の任意の特徴は、本明細書に開示される同じまたは異なる実施形態の任意の他の特徴と組み合わせることができる。さらに、例示的なシステム、方法、装置などの種々の周知の側面は、例示的な実施形態の側面を不明瞭にすることを避けるために、本明細書では特に詳細には説明しない。しかしながら、そのような側面も本明細書で企図される。
【0149】
必ずしもすべての目的または利点が本開示の実施形態の下で達成されるとは限らないことを理解されたい。当業者は、外骨格およびそれを製造する方法が、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点群を達成または最適化する方法で具現化または実行され得ることを認識するであろう。
【0150】
当業者は、開示された様々な特徴の互換性を認識するであろう。本明細書に記載のバリエーションに加えて、各特徴の他の既知の同等物を当業者が混合および適合させて、本開示の原理に基づく抗微生物溶液を提供することができる。当業者は、本明細書に記載された特徴が他のタイプの溶液に適合され得ることを理解するであろう。
【0151】
本開示は、抗微生物溶液の特定の例示的な実施形態および例を説明するが、本開示が、具体的に開示された抗微生物溶液の実施形態を超えて、本開示の他の代替実施形態および/または使用、ならびにそれらの自明な修正および均等物に拡張されることは、当業者により理解されるであろう。本開示は、上述の開示された実施形態によって限定されるべきではなく、本明細書に記載の特徴を採用し得る他の用途に拡張され得ることが意図される。
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