(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】超伝導ラッチシステム
(51)【国際特許分類】
H03K 3/38 20060101AFI20240709BHJP
H03K 19/195 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H03K3/38 C
H03K19/195
(21)【出願番号】P 2022559974
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 US2021023742
(87)【国際公開番号】W WO2021216246
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ガラン、エリアス ジェイ
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031861(JP,A)
【文献】特表2014-529216(JP,A)
【文献】米国特許第08179133(US,B1)
【文献】特開2007-115930(JP,A)
【文献】特表2010-517371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0044632(US,A1)
【文献】特開2005-252400(JP,A)
【文献】特開2000-252811(JP,A)
【文献】特開2009-188779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/38
H03K 17/92
H03K 19/195
H03F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導ラッチシステムであって、
共通のノードに結合された出力を有するとともに、第1の入力パルスおよびバイアス電流を受け取るように構成された第1の入力段
であって、バイアス電流を誘導的に供給するように構成された変圧器を含む前記第1の入力段と、
前記共通のノードに結合された出力を有するとともに、第2の入力パルスを受信するように構成された第2の入力段
であって、前記共通のノードに結合されたインダクタを含む前記第2の入力段と、
前記共通のノードに結合された入力を有するストレージループであって、前記ストレージループは、前記第1の入力段からの前記第1の入力パルスの受信に応答して第1の状態から第2の状態に切り替え、
前記第2の入力段からの前記第2の入力パルス
の受信に応答して前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるように構成され
ており、前記第1の状態は、前記ストレージループ
から磁束が
除去されていることに対応しており、前記第2の状態は、前記ストレージループ内に磁束が
保存されていることに対応しており、前記第2の入力段は、前記ストレージループが前記第1の状態にあるときに
前記第1の入力段から前記インダクタを介して前記バイアス電流を受け取って、前記第2の入力段に供給される
後続の第2の入力パルスに応答して前記ストレージループが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることを防止するように構成されて
いる、前記ストレージループと、
前記ストレージループの前記第2の状態において出力パルスを生成するように構成された出力段と、を備えるシステム。
【請求項2】
前記超伝導ラッチシステムは、前記第1の入力段がセット入力段として配置され、前記第2の入力段がリセット入力段として配置されるSRラッチとして配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記出力段にはクロック信号が供給され、前記出力段は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力パルスを提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の入力パルスは、第1のレシプロカル量子論理(以下、RQLとする)入力パルスであり、前記第2の入力パルスは、第2のRQL入力パルスであり、前記クロック信号は、RQLクロック信号である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記出力段は、ジョセフソン伝送線(以下、JTLとする)段として配置され、前記クロック信号は、前記JTL段に誘導的に結合される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記クロック信号は、前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力段の前記JTL段に関連するジョセフソン接合をバイアスするように設定され、前記ジョセフソン接合は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいてトリガするように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の入力パルスは、第1のレシプロカル量子論理(RQL)入力パルスであり、
前記バイアス電流は、直流(以下、DCとする)バイアス電流であり、
前記DCバイアス電流は、第1のRQLパルスに関連する負のフラクソンを排除す
る、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記DCバイアス電流
は、前記ストレージループおよび前記第2の入力段
に供給
され、前記第2の入力段は、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記
後続の第
2の入力パルスを排除するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の入力段は、
前記第2の入力パルスを受信するように構成されたジョセフソン伝送線(JTL)段と、
前記バイアス電
流によってバイアスされるジョセフソン接合であって、前記第1の入力パルスに応答してトリガされ、前記第2の入力パルスに応答してリセットされる前記ジョセフソン接合と、
を含み、
前記インダクタは、前記ジョセフソン接合と前記ストレージループを相互接続
し、前記インダクタは、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記
後続の第
2の入力パルスを排除するために前
記バイアス電流を伝搬する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ストレージループは、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)として構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
超伝導ラッチシステムを制御する方法であって、
前記超伝導ラッチシステムの第1の入力段に第1の入力パルスを供給して、前記超伝導ラッチシステムの
前記第1の入力段の出力に結合されたストレージループを第1の状態から第2の状態に切り替えるステップと、前記第1の状態は、前記ストレージループ
から磁束が
除去されたことに対応しており、前記第2の状態は、前記ストレージループ内に磁束が
保存されていることに対応しており、
前記超伝導ラッチシステムの第2の入力段に第2の入力パルスを供給して、
前記第2の入力段の出力に結合された前記ストレージループを前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるステップと、
前記超伝導ラッチシステムの出力段にクロック信号を供給して、前記ストレージループの前記第2の状態でクロック信号の各サイクルにおいて前記出力段から出力パルスを生成するステップと、
変圧器において誘導的に生成されたバイアス電流を
前記第1の入力段からインダクタを介して前記第2の入力段に供給して、前記ストレージループが前記第1の状態にあるときに前記第2の入力段で受信された
後続の第
2の入力パルスを排除して、前記ストレージループが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることを防止するステップと、を含み、
前記第1の入力段
の出力および前記第2の入力段
の出力は、前記ストレージループ
の入力と共通のノードに導電的に結合されている、方法。
【請求項12】
前記第1の入力パルスを供給することは、第1のレシプロカル量子論理(以下、RQLとする)入力パルスを供給することを含み、前記第2の入力パルスを供給することは、第2のRQL入力パルスを供給することを含み、前記クロック信号は、RQLクロック信号である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイアス電流は、直流(以下、DCとする)バイアス電流であり、方法は、前記DCバイアス電流を供給して
、第1の
レシプロカル量子論理(RQL
)入力パルスに関連する負のフラクソンを排除するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記DCバイアス電流を提供することは、前記ストレージループおよび前記第2の入力段に前記DCバイアス電流を
前記変圧器を介して誘導的に供給することを含み、前記DCバイアス電流は、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記
後続の第
2の入力パルスを排除するようにさらに設定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記出力段は、ジョセフソン伝送線(以下、JTLとする)段として配置され、前記クロック信号は、前記JTL段に誘導的に結合され、
前記クロック信号を供給することは、前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力段の前記JTL段に関連するジョセフソン接合をバイアスすることを含み、前記ジョセフソン接合は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいてトリガするように構成される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、古典的超伝導コンピューティングシステムに関し、より詳細には、超伝導ラッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導デジタル技術は、これまでにない高速、低消費電力、および低動作温度の恩恵を受けるコンピューティングおよび/または通信リソースを提供する。超伝導コンピュータシステムは、典型的には、データを通信するために、単一磁束量子(SFQ:single flux quantum)パルスまたはレシプロカル量子論理(RQL:reciprocal quantum logic)パルスなどの非常に低い振幅の電圧パルス(例えば、量子化磁束パルス)を使用する。そのような非常に低い振幅の電圧パルスは、実質的に全ての論理機能および/または所与のコンピュータシステムの異なる論理ゲートおよび/または異なる部分間のデータ通信のために使用される。実質的に全てのコンピューティングシステムは、データを処理し、様々な論理機能を実行するために、論理ゲートおよびラッチを必要とする。
【発明の概要】
【0003】
一例は、超伝導ラッチシステムを含む。システムは、第1の入力パルスを受信するように構成された第1の入力段と、第2の入力パルスを受信するように構成された第2の入力段とを含む。システムは、第1の入力パルスの受信に応答して第1の状態から第2の状態に切り替え、第2の入力パルスに応答して第2の状態から第1の状態に切り替えるように構成されたストレージループをも含む。第1の状態は、ストレージループ内に磁束がないことに対応し、第2の状態は、ストレージループ内に磁束があることに対応する。システムは、さらに、ストレージループの第2の状態において出力パルスを生成するように構成された出力段を含む。
【0004】
別の例は、超伝導ラッチシステムを制御する方法を含む。方法は、超伝導ラッチシステムの第1の入力段に第1の入力パルスを供給して、超伝導ラッチシステムのストレージループを第1の状態から第2の状態に切り替えることを含む。第1の状態は、ストレージループ内に磁束がないことに対応し、第2の状態は、ストレージループ内に磁束があることに対応する。方法は、超伝導ラッチシステムの第2の入力段に第2の入力パルスを供給して、ストレージループを第2の第1の状態から第2の状態に切り替えることをも含む。方法はさらに、超伝導ラッチシステムの出力段にクロック信号を供給して、ストレージループの第2の状態でクロック信号の各サイクルにおいて出力段から出力パルスを生成することを含む。
【0005】
別の例は、超伝導ラッチシステムを含む。システムは、第1のレシプロカル量子論理(RQL)パルスを受信するように構成された第1の入力段と、第2のRQLパルスを受信するように構成された第2の入力段とをも含む。システムは、第1のRQLパルスの受信に応答して第1の状態から第2の状態に切り替え、第2のRQLパルスに応答して第2の状態から第1の状態に切り替えるように構成された超伝導量子干渉デバイス(SQUID)をも含む。第1の状態は、SQUID内の磁束がないことに対応し、第2の状態は、SQUID内に磁束があることに対応する。システムは、SQUIDの第2の状態でRQLクロック信号の各サイクルにおいて出力パルスを生成するように構成された出力段をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】超伝導ラッチシステムの一例を示す図である。
【
図3】超伝導ラッチシステムを制御する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、概して、古典的超伝導コンピューティングシステムに関し、より詳細には、超伝導ラッチシステムに関する。一例として、超伝導ラッチシステムは、セット/リセット(SR)ラッチとして構成することができる。例えば、超伝導ラッチシステムは、第1の入力パルスを受信するように構成された第1の入力段と、第2の入力パルスを受信するように構成された第2の入力段とを含む。一例として、第1の入力段はセット入力段に対応することができ、第2の入力段はリセット入力段に対応することができる。別の例として、第1および第2の入力パルスはそれぞれ、レシプロカル量子論理(RQL)パルスとして供給することができる。本明細書で説明するように、RQLパルスは、正のフラクソン(fluxon)と負のフラクソンの相補ペアとして形成される。従って、第1の入力パルスを第1の入力段に供給して超伝導ラッチシステムを「セット」し、超伝導ラッチシステムの出力段において出力パルスを提供することができる。例えば、超伝導ラッチシステムが「セット」されている間、出力段にクロック信号(例えば、RQLクロック信号)を供給して、クロック信号の各サイクルにおいて出力パルスまたは連続位相出力を提供することができる。従って、第2の入力パルスを第2の入力段に供給して超伝導ラッチシステムを「リセット」し、出力段から出力パルスが提供されるのを停止することができる。
【0008】
一例として、超伝導ラッチシステムは、超伝導ラッチシステムの状態をヒステリシス的に保存するように構成されたストレージループを含むことができる。ストレージループは、磁束をある状態で保存し、別の状態では磁束を保存しないように構成された超伝導量子干渉デバイス(SQUID)として構成することができる。例えば、ストレージループは、第1の入力段が第1の入力パルスを受信することに応答して磁束を保存することができる。従って、ストレージループが磁束を保存している間に、出力段は、クロック信号などに基づいて(例えば、クロック信号の各サイクルにおいて)出力パルスを提供することができる。同様に、ストレージループは、第2の入力段が第2の入力パルスを受信することに応答して磁束を保存しないようにリセットすることができる。さらに、第1の入力段は、変圧器などを介して誘導的にDCバイアス電流を受け取ることができる。DCバイアス電流は、インダクタを介して第2の入力段に供給されて、ストレージループが磁束を保存していないときに第2の入力パルスを排除する(reject)ことができる。従って、ストレージループが「リセット」(例えば、ゼロ磁束)状態にある間は、後続のリセット信号が作用することはない。
【0009】
図1は、超伝導ラッチシステム10の一例を示す。超伝導ラッチシステム10は、データラッチ機能を提供するために、様々な古典的コンピューティングシステムのいずれにおいても実装することができる。一例として、超伝導ラッチシステム10は、セット/リセット(SR)ラッチとして構成することができる。
【0010】
図1の例では、超伝導ラッチシステム10は、セット入力(例えば、「S」入力)に対応することができるセット入力段12と、リセット入力(例えば、「R」入力)に対応することができるリセット入力段14とを含む。セット入力段12は、
図1の例において信号SET
INとして示される第1の入力パルスを受信することができ、リセット入力段14は、
図1の例において信号RST
INとして示される第2の入力パルスを受信することができる。従って、超伝導ラッチシステム10は、第1の入力パルスSET
INに応答して「セット」されて、超伝導ラッチシステム10を第1の状態(例えば、「セット」状態)に切り替えて、出力段16から出力パルス(
図1の例において信号PLS
OUTとして示される)を提供することができる。同様に、超伝導ラッチシステム10は、第2の入力パルスRST
INに応答して「リセット」されて、超伝導ラッチシステム10を第2の状態(例えば、「リセット」または「ゼロ」状態)に切り替えて、出力段16から出力パルスPLS
OUTを提供しないようにすることができる。
【0011】
超伝導ラッチシステム10は、超伝導ラッチシステム10の状態をヒステリシス的に保存するように構成されたストレージループ18も含む。一例として、ストレージループ18は、「セット」状態で磁束を保存し、「リセット」状態で磁束を保存しないように構成された超伝導量子干渉デバイス(SQUID:superconducting quantum interference device)として構成することができる。例えば、ストレージループ18は、セット入力段12が第1の入力パルスSETINを受信すること応答して、対応するSQUIDに関連する一対のジョセフソン接合をトリガすることに応答するなどして、磁束を保存することができる。従って、出力段16は、ストレージループ18が磁束を保存している間に、出力パルスPLSOUTを提供することができる。例えば、出力段16は、クロック信号の各サイクルにおいて出力パルスPLSOUTを提供することができる。同様に、ストレージループ18は、リセット入力段14が第2の入力パルスRSTINを受信することに応答して磁束を保存しないようにリセットすることができる。従って、出力段16は、出力パルスPLSOUTの提供を停止することができる(例えば、関連するクロック信号の各サイクルにおいて)。
【0012】
従って、超伝導ラッチシステム10は、SRラッチとして動作することができる。例えば、磁束をストレージループ18に保存することによって超伝導ラッチシステム10を「セット」するために、第1の入力パルスSETINを、論理1としてセット入力段12に供給することができる。従って、超伝導ラッチシステム10は、論理1出力に対応する出力パルスPLSOUTを提供することができる。同様に、ストレージループ18から磁束を除去することによって超伝導ラッチシステム10を「リセット」するために、第2の入力パルスRSTINを、論理1としてリセット入力段14に供給することができる。従って、超伝導ラッチシステム10は、出力パルスPLSOUTの提供を停止することができ、この停止は、論理0出力に対応する。
【0013】
図2は、超伝導ラッチ回路50の一例を示す。超伝導ラッチ回路50は、データラッチ機能を提供するために、様々な古典的コンピューティングシステムのいずれにおいても実装することができる。一例として、超伝導ラッチ回路50は、SRラッチとして構成することができる。例えば、超伝導ラッチ回路50は、
図1の例における超伝導ラッチシステム10に対応することができる。
【0014】
図2の例では、超伝導ラッチ回路50は、セット入力(例えば、「S」入力)に対応することができるセット入力段52と、リセット入力(例えば、「R」入力)に対応することができるリセット入力段54とを含む。セット入力段52は、インダクタL
1および変圧器56を含む。変圧器56は、一次巻線L
2と、インダクタL
1と直列に配置された二次巻線L
3とを含む。一次巻線L
2は、DC電流源I
PRIと低電圧レール(例えば、接地)とを相互接続するなどして、一次巻線L
2が二次巻線L
3にDCバイアス電流I
BIASを誘導することができるように、DC電流源I
PRIに結合される。リセット入力段54は、ジョセフソン接合J
1にそれぞれ結合されたインダクタL
4およびインダクタL
5を含む。インダクタL
4およびL
5ならびにジョセフソン接合J
1は集合的にジョセフソン伝送線(JTL:Josephson transmission line)段58を形成する。また、リセット入力段54は、互いに直列に配置され、かつJTL段58と直列に配置されたジョセフソン接合J
2およびインダクタL
6を含む。一例として、ジョセフソン接合J
2は、非シャントの(unshunted)ジョセフソン接合とすることができる。
【0015】
また、超伝導ラッチ回路50は、セット入力段52およびリセット入力段54の各々に結合されたストレージループ60を含む。
図2の例では、ストレージループ60は、ジョセフソン接合J
3、インダクタL
7、およびジョセフソン接合J
4を含むSQUIDとして構成されている。さらに、超伝導ラッチ回路50は、ストレージループ60に結合された出力段62を含む。出力段62は、インダクタL
8、インダクタL
9、インダクタL
10、およびインダクタL
9およびL
10を相互接続するジョセフソン接合J
5を含む。従って、インダクタL
9およびL
10ならびにジョセフソン接合J
5は、超伝導ラッチ回路50の出力においてJTL段64を形成する。出力段62は、一次巻線L
11と、インダクタL
8およびL
9に結合された二次巻線L
12とを含む変圧器66をも含む。一次巻線L
11は、一次巻線L
11が二次巻線L
12にクロック電流I
CLKを誘導できるように、クロック信号CLKを伝導する。
【0016】
セット入力段52は、第1の入力パルスSET
INを受信することができ、リセット入力段54は、第2の入力パルスRST
INを受信することができる。従って、
図1の例で説明した超伝導ラッチシステム10と同様に、超伝導ラッチ回路50は、第1の入力パルスSET
INに応答して「セット」されて、超伝導ラッチ回路50を第1の状態(例えば、「セット」状態)に切り替えて、出力段62を介して出力パルスPLS
OUTを提供することができる。例えば、DCバイアス電流I
BIASは、ジョセフソン接合J
2、J
3、およびJ
4をバイアスするように構成されている。従って、第1の入力パルスSET
INに応答して、ジョセフソン接合J
2、J
3、およびJ
4はそれぞれトリガする。ジョセフソン接合J
3およびJ
4のトリガにより、単一磁束量子(SFQ)に対応する磁束Φ
0をストレージループ60に保存することができる。磁束Φ
0がストレージループ60に保存されている間、ストレージループ60が保存された磁束Φ
0を維持しているため、後続の第1の入力パルスSET
INがストレージループ60の状態を変化させることはない。その結果、クロック電流I
CLKが出力段62のJTL段64に供給されることに応答して、ジョセフソン接合J
5は、クロック電流I
CLKと磁束Φ
0との組み合わせに基づいて出力パルスPLS
OUTを提供するようにトリガすることができる。例えば、ジョセフソン接合J
5は、磁束Φ
0がストレージループ60に保存されている間、誘導されたクロック電流I
CLKおよび磁束Φ
0に基づいてクロック信号CLKの各サイクルにおいてトリガすることができる。
【0017】
別の例として、磁束Φ0がストレージループ60に保存されている間、第2の入力パルスRSTINに応答して、第2の入力パルスRSTINはジョセフソン接合J1をトリガする。ジョセフソン接合J1のトリガにより、ジョセフソン接合J2のトリガが解除され(例えば、リセットされ)、これにより、ジョセフソン接合J3およびJ4のトリガが解除される。その結果、磁束Φ0がストレージループ60から除去されて、ストレージループ60がリセットされ(例えば、ゼロ状態にセットされ)、従って超伝導ラッチ回路50がリセットされる。ストレージループ60に保存された磁束Φ0がない場合、DCバイアス電流IBIASによってジョセフソン接合J2の閾値電流が増加して、ジョセフソン接合J2が第2の入力パルスRSTINに応答してトリガすることが防止されるため、後続の第2の入力パルスRSTINがストレージループ60の状態を変化させることはない。従って、DCバイアス電流IBIASは、ストレージループ60に磁束Φ0がない場合、後続の第2の入力パルスRSTINを排除する。その結果、クロック電流ICLKが出力段62のJTL段64に供給されることに応答して、ジョセフソン接合J5は、磁束Φ0がないため、トリガせず、従って出力パルスPLSOUTを提供しない。
【0018】
一例として、超伝導ラッチ回路50は、レシプロカル量子論理(RQL)コンピューティングシステムに実装することができる。例えば、第1および第2の入力パルスSETINおよびRSTINの各々は、正のフラクソンに続いて負のフラクソンを含むようなRQLパルスとして供給することができる。さらに、クロック信号CLKは、同相成分および直交位相成分のうちの少なくとも1つを含むようなRQLクロック信号として実施することができる。第1の入力パルスSETINに関して、第1の入力パルスSETINの正のフラクソンは、前述したように、ジョセフソン接合J2、J3、およびJ4をトリガすることができる。しかしながら、DCバイアス電流IBIASは、負のフラクソンを排除することができる。同様に、DCバイアス電流IBIASは、ジョセフソン接合J2のトリガ解除に続く第2の入力パルスRSTINに関連する負のフラクソンを排除することができる。従って、RQL環境においても、超伝導ラッチ回路50は、説明したように動作することができる。
【0019】
このように、超伝導ラッチ回路50は、組み合わせ型古典的コンピューティングシステムに対してSRラッチ機能を提供することができる。超伝導環境における従来のラッチは、典型的には、データの処理および操作のための異なる組の論理を有するDフリップフロップの変形によって実施されてきた。さらに、SRラッチの典型的なバリエーションは、タイミングエラーを提供することができるフィードバックを実施することができる。しかしながら、超伝導ラッチ回路50は、フィードバックを有していないため、特にRQLクロックのタイミング制御に基づくRQL環境において、タイミング制御を効果的に実施することができる。さらに、他のタイプのSRラッチでは、典型的には、大型の変圧器およびそれをサポートするJTLシステムおよび回路を必要とし、これらは、かなりのスペースを占有し、追加の製造コストがかかり得る。しかしながら、超伝導ラッチ回路50は、設計における変圧器およびJTL回路の数を大幅に低減して、製造コストおよび全体的な回路の占有領域の両方を削減する。
【0020】
上記した前述の構造的および機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、
図3を参照することにより、よりよく理解されるであろう。説明を簡単にするために、
図3の方法は順次実行されるものとして示され説明されているが、本発明に従って、いくつかの態様は、本明細書に示し説明したものとは異なる順序で、および/または他の態様と同時に生じ得るので、本発明が例示された順序によって限定されないことを理解および認識されたい。さらに、本発明の一態様による方法を実施するために、図示された全ての特徴が必要とされるわけではない。
【0021】
図3は、超伝導ラッチシステム(例えば、超伝導ラッチシステム10)を制御する方法100の一例を示す。102において、第1の入力パルス(例えば、第1の入力パルスSET
IN)が、超伝導ラッチシステムの第1の入力段(例えば、セット入力段12)に供給されて、超伝導ラッチシステムのストレージループ(例えば、ストレージループ18)を第1の状態から第2の状態に切り替える。104において、第2の入力パルス(例えば、第2の入力パルスRST
IN)が超伝導ラッチシステムの第2の入力段(例えば、リセット入力段14)に供給されて、ストレージループを第2の第1の状態から第2の状態に切り替える。106において、クロック信号(例えば、クロック信号CLK)が超伝導ラッチシステムの出力段(例えば、出力段16)に供給されて、ストレージループの第2の状態でクロック信号の各サイクルにおいて出力段から出力パルス(例えば、出力パルスPLS
OUT)を生成する。
【0022】
上記の説明は、本開示の例である。もちろん、本開示を説明する目的のために構成要素または方法の考えられるあらゆる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は本開示の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれる全てのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することを意図している。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
超伝導ラッチシステムであって、
第1の入力パルスおよびバイアス電流を受け取るように構成された第1の入力段と、
第2の入力パルスを受信するように構成された第2の入力段と、
前記第1の入力パルスの受信に応答して第1の状態から第2の状態に切り替え、前記第2の入力パルスに応答して前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるように構成されたストレージループであって、前記第1の状態は、前記ストレージループ内に磁束がないことに対応しており、前記第2の状態は、前記ストレージループ内に磁束があることに対応しており、前記第2の入力段は、前記ストレージループが前記第1の状態にあるときに前記バイアス電流を受け取って、前記第2の入力段に供給される第3の入力パルスに応答して前記ストレージループが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることを防止するように構成されている、前記ストレージループと、
前記ストレージループの前記第2の状態において出力パルスを生成するように構成された出力段と、を備えるシステム。
[付記2]
前記超伝導ラッチシステムは、前記第1の入力段がセット入力段として配置され、前記第2の入力段がリセット入力段として配置されるSRラッチとして配置される、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記出力段にはクロック信号が供給され、前記出力段は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力パルスを提供するように構成される、付記1に記載のシステム。
[付記4]
前記第1の入力パルスは、第1のレシプロカル量子論理(以下、RQLとする)入力パルスであり、前記第2の入力パルスは、第2のRQL入力パルスであり、前記クロック信号は、RQLクロック信号である、付記3に記載のシステム。
[付記5]
前記出力段は、ジョセフソン伝送線(以下、JTLとする)段として配置され、前記クロック信号は、前記JTL段に誘導的に結合される、付記3に記載のシステム。
[付記6]
前記クロック信号は、前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力段の前記JTL段に関連するジョセフソン接合をバイアスするように設定され、前記ジョセフソン接合は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいてトリガするように構成される、付記5に記載のシステム。
[付記7]
前記第1の入力パルスは、第1のレシプロカル量子論理(RQL)入力パルスであり、入力電流は、直流(以下、DCとする)バイアス電流であり、前記第1の入力段には、第1のRQLパルスに関連する負のフラクソンを排除するために前記DCバイアス電流が供給される、付記1に記載のシステム。
[付記8]
前記第1の入力段は、前記DCバイアス電流を前記ストレージループおよび前記第2の入力段に誘導的に供給するように構成された変圧器を含み、前記第2の入力段は、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記第3の入力パルスを排除するように構成されている、付記7に記載のシステム。
[付記9]
前記第2の入力段は、
前記第2の入力パルスを受信するように構成されたジョセフソン伝送線(JTL)段と、
前記バイアス電流に対応する直流(以下、DCとする)バイアス電流によってバイアスされるジョセフソン接合であって、前記第1の入力パルスに応答してトリガされ、前記第2の入力パルスに応答してリセットされる前記ジョセフソン接合と、
前記ジョセフソン接合と前記ストレージループを相互接続するインダクタと、を含み、前記インダクタは、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記第3の入力パルスを排除するために前記DCバイアス電流を伝搬する、付記1に記載のシステム。
[付記10]
前記ストレージループは、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)として構成される、付記1に記載のシステム。
[付記11]
超伝導ラッチシステムを制御する方法であって、
前記超伝導ラッチシステムの第1の入力段に第1の入力パルスを供給して、前記超伝導ラッチシステムのストレージループを第1の状態から第2の状態に切り替えるステップと、前記第1の状態は、前記ストレージループ内に磁束がないことに対応しており、前記第2の状態は、前記ストレージループ内に磁束があることに対応しており、
前記超伝導ラッチシステムの第2の入力段に第2の入力パルスを供給して、前記ストレージループを前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるステップと、
前記超伝導ラッチシステムの出力段にクロック信号を供給して、前記ストレージループの前記第2の状態でクロック信号の各サイクルにおいて前記出力段から出力パルスを生成するステップと、
前記第1の入力段から前記第2の入力段にバイアス電流を供給して、前記ストレージループが前記第1の状態にあるときに前記第2の入力段で受信された第3の入力パルスを排除して、前記ストレージループが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることを防止するステップと、を含む方法。
[付記12]
前記第1の入力パルスを供給することは、第1のレシプロカル量子論理(以下、RQLとする)入力パルスを供給することを含み、前記第2の入力パルスを供給することは、第2のRQL入力パルスを供給することを含み、前記クロック信号は、RQLクロック信号である、付記11に記載の方法。
[付記13]
前記バイアス電流は、直流(以下、DCとする)バイアス電流であり、方法は、前記DCバイアス電流を供給して、前記第1のRQLパルスに関連する負のフラクソンを排除するステップをさらに含む、付記11に記載の方法。
[付記14]
前記DCバイアス電流を提供することは、前記ストレージループおよび前記第2の入力段に前記DCバイアス電流を変圧器を介して誘導的に供給することを含み、前記DCバイアス電流は、前記ストレージループの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記第3の入力パルスを排除するようにさらに設定される、付記13に記載の方法。
[付記15]
前記出力段は、ジョセフソン伝送線(以下、JTLとする)段として配置され、前記クロック信号は、前記JTL段に誘導的に結合される、付記11に記載の方法。
[付記16]
前記クロック信号を供給することは、前記クロック信号の各サイクルにおいて前記出力段の前記JTL段に関連するジョセフソン接合をバイアスすることを含み、前記ジョセフソン接合は、前記ストレージループの前記第2の状態で前記クロック信号の各サイクルにおいてトリガするように構成される、付記15に記載の方法。
[付記17]
超伝導ラッチシステムであって、
第1のレシプロカル量子論理(以下、RQLとする)パルスおよびバイアス電流を受け取るように構成された第1の入力段と、
第2のRQLパルスを受信するように構成された第2の入力段と、
前記第1のRQLパルスの受信に応答して第1の状態から第2の状態に切り替え、前記第2のRQLパルスに応答して前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えるように構成された超伝導量子干渉デバイス(以下、SQUIDとする)であって、前記第1の状態は、前記SQUID内に磁束がないことに対応しており、前記第2の状態は、前記SQUID内に磁束があることに対応しており、前記第2の入力段は、前記SQUIDが前記第1の状態にあるときに前記バイアス電流を受け取って、前記第2の入力段に供給される第3の入力パルスに応答して前記SQUIDが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることを防止するように構成されている、前記SQUIDと、
前記SQUIDの前記第2の状態においてRQLクロック信号に基づいて出力パルスを生成し、前記SQUIDの前記第1の状態において出力パルスを生成しないように構成された出力段と、を備えるシステム。
[付記18]
前記出力段は、ジョセフソン伝送線(以下、JTLとする)段として配置され、前記RQLクロック信号は、前記出力段の前記JTL段に関連するジョセフソン接合を前記RQLクロック信号の各サイクルにおいてバイアスするように前記JTL段に誘導的に結合され、前記ジョセフソン接合は、前記SQUIDの前記第2の状態において前記RQLクロック信号の各サイクルにおいてトリガするように構成される、付記17に記載のシステム。
[付記19]
前記第1の入力段は、前記バイアス電流に対応する直流(以下、DCとする)バイアス電流を前記SQUIDおよび前記第2の入力段に誘導的に供給するように構成された変圧器を含み、前記DCバイアス電流は、前記第1のRQLパルスに関連する負のフラクソンを排除して、前記SQUIDの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された第3のRQLパルスを排除するように設定される、付記17に記載のシステム。
[付記20]
前記第2の入力段は、
前記第2のRQLパルスを受信するように構成されたジョセフソン伝送線(JTL)段と、
前記バイアス電流に対応する直流(以下、DCとする)バイアス電流によってバイアスされるジョセフソン接合であって、前記第1のRQLパルスに応答してトリガされ、前記第2のRQLパルスに応答してリセットされる前記ジョセフソン接合と、
前記ジョセフソン接合と前記SQUIDとを相互接続するインダクタと、を含み、前記インダクタは、前記SQUIDの前記第1の状態において前記第2の入力段で受信された前記第3のRQLパルスを排除するために前記DCバイアス電流を伝搬する、付記17に記載のシステム。