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特許7518194自動車のステアリングシステムのためのパワーセーブモード
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  • 特許-自動車のステアリングシステムのためのパワーセーブモード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】自動車のステアリングシステムのためのパワーセーブモード
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240709BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022563362
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020061019
(87)【国際公開番号】W WO2021213619
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】パーストル, レヴェンテ
(72)【発明者】
【氏名】ベンヨ, イムレ
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮川 隼人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 芳信
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-278625(JP,A)
【文献】特開平02-227370(JP,A)
【文献】特開2001-026278(JP,A)
【文献】特開2016-074289(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0106145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵可能なロードホイール(4)の回転のためにラック(6)に作用するロードホイールアクチュエータ(5)、及びロードホイールアクチュエータ(5)のための作動信号を計算する制御ユニット(10)を含む自動車のステアリングシステム(1)においてパワーセーブするための方法であって、制御ユニット(10)が、位置コントローラを含み、位置コントローラが、実際のラック(6)の位置及び/又は測定されたラック(6)の位置、並びに要求されるラックの位置に基づいてモータートルク要求を計算する方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
- 自動車が停止され、ステアリング入力が全く与えられてない場合に、制御ユニット(10)の一部である不活動モード検出ユニットによって、ステアリングシステム(1)が不活動モードにあることを検出すること
不活動モードが不活動モード検出ユニットによって検出される場合に、モータートルク要求が経時的にゼロまで徐々に減少するように、実際のロードホイールアクチュエータのモータートルクの関数として計算される位置増加量で、要求されるラック(6)の位置を修正することによって、パワーをセーブするためにモータートルク要求を実質的にゼロに設定すること;及び
- 不活動モード検出ユニットからの信号が、自動車が起動され、不活動モードがもはや存在していないことを知らせる場合に、要求されるラックの位置を実質的にゼロにするという以前の修正を徐々にキャンセルすることによって、要求されるラックの位置を徐々に修正すること。
【請求項2】
モータートルク要求が、トルクリミッターの使用によって実質的にゼロに設定され、トルクリミッターが、不活動モードが検出される場合に、モータートルク要求を徐々に実質的にゼロに制限することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不活動モード検出ユニットからの信号が、自動車が起動され、不活動モードがもはや存在していないことを知らせる場合に、トルクリミッターが、制限値を予め規定された最大値まで徐々に増加させることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の方法を実施するように設計された自動車のステアバイワイヤーシステム(1)。
【請求項5】
ラック(6)が、フロントアクスル(8)又はリアアクスルの一部であることを特徴とする請求項に記載のステアバイワイヤーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文による自動車のステアリングシステムにおいてパワーセーブするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアバイワイヤーシステムでは、ハンドルとステアリングラックと操舵可能なホイールの間に機械的接続がない。ハンドルに作用するフィードバックアクチュエータは、運転者にフィードバックを与える。ステアリングの動きは、電気制御モーターによって達成され、そのモーターは、ステアリングラックに作用するロードホイールアクチュエータの一部である。位置コントローラは、ステアリングラックを希望の位置に動かし、従って希望のロードホイール角度を実現するために与えられる。位置コントローラは、ロードホイールアクチュエータが参照位置信号に従うように作用する。位置コントローラは、車が停止され、運転者がステアリング入力を全く与えない場合であっても活動している。従って、ステアリングシステムのパワー消費、及びモーター及び電子制御ユニット(ECU)に対する熱負荷は、高いままである。結果として、電気構成要素の寿命は、速く到達される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、ステアリングシステムにおいてパワーセーブするための方法を提供することであり、それは、ロードホイールアクチュエータのモーター及びその電子制御ユニットに対する熱負荷を減少するものである。
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。
【0005】
本発明によれば、ロードホイールの回転のためにラックに作用するロードホイールアクチュエータ、及びロードホイールアクチュエータのための作動信号を計算する制御ユニットを含む自動車のステアバイワイヤーステアリングシステム又は電気式パワーアシストステアリングシステムにおいてパワーセーブするための方法であって、制御ユニットが、位置コントローラを含み、位置コントローラが、実際のラックの位置又は測定されたラックの位置、及び要求されるラックの位置に基づいてモータートルク要求を計算し、前記方法が、以下の工程を含むことを特徴とする方法が提供される:
- 自動車が停止され、ステアリング入力が全く与えられてない場合に、制御ユニットの一部である不活動モード検出ユニットによって、ステアリングシステムが不活動モードにあることを検出すること;及び
- 不活動モードが不活動モード検出ユニットによって検出される場合に、パワーをセーブするためにモータートルク要求をゼロに設定すること。
【0006】
不活動モードは、ステアリングシステムのパワー消費の減少に導く。さらに、不活動モードでは、システムは、ウォーミングアップがなく、それは、電気構成要素の寿命を長くする。
【0007】
第一実施形態では、モータートルク要求は、トルクリミッターの使用によって実質的にゼロに設定されることができ、トルクリミッターは、不活動モードが検出される場合にモータートルク要求を徐々に実質的にゼロに制限する。有利には、トルクリミッターは、不活動モード検出ユニットからの信号が、自動車が起動され、不活動モードがもはや存在していないことを知らせる場合に、制限値を予め規定された最大値まで徐々に増加させる。
【0008】
第二実施形態では、モータートルク要求は、要求されるラックの位置を修正することによってゼロに設定されることができる。好ましくは、要求されるラックの位置は、不活動モード検出ユニットからの信号が、自動車が起動され、不活動モードがもはや存在していないことを知らせる場合に、要求されるラックの位置を実質的にゼロにするという以前の修正を増加(ramp)させることによって、要求されるラックの位置を徐々に修正する。
【0009】
さらに、前記方法を実施するように設計された、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムが提供される。かかるステアリングシステムのラックは、フロントアクスル又はリアアクスルの一部であることができる。コントローラユニットは、ロードホイールアクチュエータに隣接して位置されることが好ましい。
【0010】
一般的に、ステアリング入力は、運転者によって、例えばハンドルを回転させるかもしくはステアリング手段に作用することによって、又は自律車両制御のための車両制御ユニットによって与えられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
図1図1は、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。
図2図2は、時間に対するモータートルク制限及び制限されたモータートルクの依存性を示す。
図3図3は、時間に対してプロットした作動モードのダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、ステアリング手段3に接続されたステアリング軸2を有するステアバイワイヤーシステム1の概略図である。ステアリング手段3とロードホイール4の間に機械的接続は全くない。ロードホイールアクチュエータ5は、ラックアンドピニオンギヤ7を介してギヤラック6を作動させ、それは、フロントホイールアクスル8の一部である。フロントホイールアクスル8は、ロードホイール4のために二つのタイロッド9を有し、それらのうち一つだけのロードホイール4が描かれている。
【0013】
運転者がステアリング手段3を操作するとき、ステアリング軸2が回転され、それは、軸センサー(図には示されず)によって検出される。車両がスイッチオンされるとき、ロードホイールアクチュエータ5に隣接して位置される制御ユニット10は、軸センサーによって検出される信号からロードホイールアクチュエータ5のための作動信号を計算する。作動信号でギヤラック6を作動させることによって、フロントホイールアクスル8は、側方に動かされ、ロードホイール4が回転される。同時に、ロードホイール4からホイール軸8に導入された力は、図に示されていない別のセンサーによって認識され、フィードバック信号が計算され、それは、フィードバックアクチュエータ11によってステアリング軸2に付与され、従って運転者は、ステアリング手段3においてフィードバックを認識することができる。
【0014】
制御ユニット10は、位置コントローラを含み、それは、実際のラック6の位置及び/又は測定されたラックの位置、並びに要求されるラックの位置に基づいてモータートルク要求を計算する。ロードホイールアクチュエータ5は、かくして参照位置信号に従う。
【0015】
自動車の不活動状態では、ラック6の位置トラッキングは、要求されない。車両は、以下の条件がともに満たされる場合に不活動であると考えられる:
- 車が停止している(車両速度がゼロであり、かつ駆動ロードホイールの速度がゼロである);及び
- 運転者によってステアリング入力が与えられていない。
【0016】
これらの条件下では、位置コントローラは、スイッチオフされ、従ってパワーセーブモードに入ることができる。パワーセーブモードは、実質的にゼロのトルク要求によって実現される。ロードホイールアクチュエータのモータートルクを実質的にゼロにするという要求は、トルクリミッターを使用して、要求されるモータートルクに作用することによって達成されることができる。「実質的に」は、ハードウェア関連の不正確さがあり、要求がゼロに設定されたとしても残るモータートルク要求がありうることを意味する。
【0017】
図2及び3は、二つのダイヤグラムを示す。図2のダイヤグラムは、時間に対してプロットされた、リミッターによって与えられたモータートルク制限(点線)及び得られた制限されたモータートルク(実線)を示す。図3のダイヤグラムは、時間に対してプロットされた作動モードを示し、「OFF」は、正常作動モードを表わし、「ON」は、パワーセーブモードを表わす。
【0018】
トルクリミッターは、位置コントローラ、及び不活動モード検出ユニットからの信号によって計算された、要求されるモータートルクを読みとる。もし不活動モード検出ユニットからの信号が、車両が不活動モードにあることを知らせるなら、トルクリミッターは、制限値をゼロまで徐々に減少させる。要求されるモータートルクは、制限に従い、ゼロトルクに制限される。もし不活動モード検出ユニットからの信号が、車両が起動されていること、及び不活動モードがもはや存在しないことを知らせるなら、トルクリミッターは、制限値を予め規定された最大値まで徐々に増加させる。要求されるモータートルクは、制限値が要求されるモータートルクをもはや実施しなくなるまで制限に再び従う。
【0019】
ロードホイールアクチュエータのモータートルクをゼロにするという要求はさらに、要求されるモータートルクを修正することによって達成されることができる。
【0020】
もし不活動モードが検出されるなら、不活動モード検出ユニットからの信号は、修正コントローラによるラックの要求される位置の修正を起こす。修正コントローラは、実際のロードホイールアクチュエータのモータートルクの関数で位置増加量を出力する。積分された位置増加量は、元の位置要求とともに修正した位置要求をもたらし、それは、位置コントローラからの出力が維持されることを全く要求せず、従ってモーターからトルクが全く要求されない。位置コントローラは、修正された要求位置、実際のラックの位置、及びさらなる情報を受けとり、これらの情報に基づいてトルク要求を計算し、それは、経時的にゼロまで徐々に減少する。
【0021】
もし車両が起動され、不活動モードのための条件がもはや合致しないことを不活動モード検出ユニットからの信号が知らせるなら、要求される位置は、もはや修正されず、トルク要求は、実際の要求される位置に基づく。
【0022】
両実施形態は、トルク要求がゼロに設定され、それがステアリングシステムのウォームアップを妨げ、ステアリングシステムのパワー消費の減少に導く点で共通する。
【0023】
本発明はまた、自動車のリアアクスルに位置されるロードホイールアクチュエータを有するリアホイールステアリングシステムに対して適用される。かかるロードホイールアクチュエータはまた、ステアリングラックを希望の位置に動かし、従ってリアホイールを操舵するために実施される。
【0024】
本発明はまた、自動車のための外部駆動インターフェースを有する電動アシストステアリング(EPAS)システムに対して適用される。かかるステアリングアクチュエータはまた、ステアリングラックを希望の位置に動かし、従ってロードホイールを操舵するために実施される。
図1
図2
図3