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特許7518197食用ナッツを加工する方法およびこれによって得られる抽出製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】食用ナッツを加工する方法およびこれによって得られる抽出製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 25/00 20160101AFI20240709BHJP
   A23C 11/10 20210101ALI20240709BHJP
   A23L 11/60 20210101ALI20240709BHJP
   A23L 11/65 20210101ALI20240709BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240709BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240709BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240709BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A23L25/00
A23C11/10
A23L2/00 B
A23L2/00 F
A23L2/02 A
A23D9/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022566124
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2021060907
(87)【国際公開番号】W WO2021219589
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】20171571.1
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20208604.7
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522422148
【氏名又は名称】レ-ヌート アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Re-Nut AG
【住所又は居所原語表記】Rosenbergstrasse 8, 9000 St. Gallen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】ラウクス ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ヒューン ティロ
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0203088(US,A1)
【文献】特開昭59-135837(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1526292(CN,A)
【文献】特開昭59-088074(JP,A)
【文献】特表2015-505467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0015492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用ナッツを加工する方法であって、
a)食用ナッツに水を加えて、懸濁液を形成する工程と、
b)前記懸濁液を1つまたは複数の工程で湿式粉砕して、100μm未満の平均粒子サイズにする工程と、
c)前記湿式粉砕後の懸濁液を、少なくとも食用ナッツ固形物を含む固相、および食用ナッツミルクを含む液相に分離する工程と、
を含み、前記湿式粉砕を施す食用ナッツが、殻付き食用ナッツを含み、および/または前記方法が、工程a)もしくはb)における懸濁液に、または工程c)の後の固相もしくは液相のうち少なくとも一方に、食用ナッツの殻物質を添加する工程とをさらに含む、方法。
【請求項2】
湿式粉砕を施す食用ナッツが、ナッツ、核果種子、ナッツ様裸子植物の種子、およびナッツ様被子植物の種子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿式粉砕を施す食用ナッツが殻付きヘーゼルナッツを含、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食用ナッツの殻物質が、工程b)の前に、食用ナッツから殻物質を分離することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
食用ナッツの殻物質が、懸濁液、固相または液相に添加する前に、少なくとも粉砕工程によって加工されている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、歯付きコロイドミルおよび/またはボールミルを使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
食用ナッツが、工程a)が施される前にローストされず、加工工程a)~c)のそれぞれが、0℃~65℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程c)の前に、懸濁液にマセラシオン工程または発酵工程を施す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程a)の前の食用ナッツを、または工程c)の後の食用ナッツ固形物を含む固相を、ローストする工程をさらに含、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程a)~c)が、100分未満の時間枠で連続的に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程c)が、懸濁液を、食用ナッツ固形物を含む固相、食用ナッツミルクを含む水相(重質相)、および食用ナッツオイルを含む脂肪相(軽質相)に分離する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記湿式粉砕を施す食用ナッツが、殻付き食用ナッツを含み、または前記方法が、工程a)もしくはb)における懸濁液に、食用ナッツの殻物質を添加する工程を含み、
工程a)またはb)に施される全固形物の含有量に基づく食用ナッツの殻物質の含有量は、固形物の総重量に対して、0.1重量%~60重量%の範囲にあり、
工程c)が、懸濁液を、食用ナッツ固形物を含む固相、食用ナッツミルクを含む水相(重質相)、および食用ナッツオイルを含む脂肪相(軽質相)に分離する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記湿式粉砕を施す食用ナッツが、殻付き食用ナッツを含み、または前記方法が、工程a)もしくはb)における懸濁液に、食用ナッツの殻物質を添加する工程を含み、工程a)またはb)に施される全固形物の含有量に基づく食用ナッツの殻物質の含有量は、固形物の総重量に対して、0.1重量%~60重量%の範囲にあり、
または前記方法が、工程c)の後の固相に、食用ナッツの殻物質を添加する工程を含み、工程c)の後に固相に添加される食用ナッツの殻物質の含有量は、固形物の総重量に対して0.1重量%~60重量%の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記湿式粉砕を施す食用ナッツが、殻付き食用ナッツを含み、または前記方法が、工程a)もしくはb)における懸濁液に、食用ナッツの殻物質を添加する工程を含み、工程a)またはb)に施される全固形物の含有量に基づく食用ナッツの殻物質の含有量は、固形物の総重量に対して、0.1重量%~60重量%の範囲にあり、
または前記方法が、工程c)の後の液相に、食用ナッツの殻物質を添加する工程を含み、工程c)の後の液相に添加される食用ナッツの殻物質は、液相の総重量に対して0.01重量%~10重量%の量で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
液相を滅菌して食用ナッツミルクを得る工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって調製される、食用ナッツミルク。
【請求項17】
請求項13に記載の方法によって得られる、固相。
【請求項18】
請求項17に記載の固相または請求項16に記載の食用ナッツミルクを含む、食用ナッツをベースとする食用製品。
【請求項19】
請求項12に記載の方法によって得られる食用ナッツオイル抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用ナッツをベースとする抽出物を製造する方法および/または技法に関し、これによって、迅速で、安価な改善された抽出、ならびに使用可能な芳香性構成成分および栄養として有益な成分を高い収量で得ることが可能となる。
【0002】
ある種の実施形態では、本発明は、前記食用ナッツ抽出物を使用することによって得られる製品に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、消化器系の問題(特に、乳糖不耐症)または他の健康に関連する問題に対処するため、ビーガンの栄養を促進するため、または大規模な家畜産業に関連する環境問題を軽減するため、乳製品(例えば、牛乳およびチーズ)の野菜ベースの代用品の調製に関心が高まっている。とりわけ、例えば、豆乳、ライスミルク、オーツミルクおよびナッツベースのミルクなどの植物ベースのミルク類似品に人気が高まっている。
【0004】
WO2013/078510(A1)では、ナッツをベースとするミルク類似組成物の調製方法が開示されており、これには、牛乳の栄養プロファイルに一致させるために、脂肪成分としてナッツまたは種子に乾燥成分を添加することが含まれる。
【0005】
GB2413932(A)は、破砕または粉砕したアーモンドを黒糖および安定剤と混合することによって調製されるアーモンドペーストを希釈することによるアーモンドミルクの作製方法を開示している。
【0006】
AU201720433(B2)は、乳化したナッツミルクを得るため、専用の混合装置において水と一緒に混合することができるナッツバターの調製を提案している。
【0007】
WO2017/163178(A1)は、天然のヘーゼルナッツカーネルおよび水を、ブレード付きグラインダー中で一緒に粉砕する工程を含む、ヘーゼルナッツ飲料の製造方法を開示している。
【0008】
CN101280327(A)は、クルミオイルの調製、ならびにタンパク質およびペプチドの抽出のためのクルミの酵素的超音波処理の方法を記載している。
【0009】
EP2476317(A1)では、アーモンドに加熱処理を施し、乾式粉砕し、水性媒体に分散させることを含む、アーモンドドリンクの調製方法が開示されている。
【0010】
US9,011,949(B2)は、無乳ミルクの酵素凝乳によるチーズ代替品を製造するための方法および組成物を開示しており、この場合、無乳ミルクは、ナッツまたは植物種子を、水を含む溶液中で粗く複混合し、続いてナッツミルクのザラザラした食感を和らげるために、不溶性固形物を除去して廃棄することによって製造される。一方、US2020/0015492(A1)およびUS2016/0338389(A1)は、後で不溶性固形物を分離しない、ナッツおよび/または種子を含むスラリーを複混合し、複混合したスラリーをせん断ミルにおいて細かくミル粉砕することを含む、無乳ミルクの作製方法を開示している。
【0011】
しかし、ナッツをベースとする抽出物(無乳ミルクを含む)を調製する従来の方法は、多くの場合、多数の加工工程、精巧な機器および高額な生産コストなしで、好ましい官能特性、見た目の美味しさ、および高収量の栄養的に好ましい成分を同時に実現することが困難であるという問題を有する。したがって、これらの欠点を一貫して克服する方法を提供することが依然として望ましい。
【0012】
さらに、最近の研究により、多数の食用ナッツの殻物質は、貴重な食物繊維、および遊離ラジカルの吸収または中和に重要な役割を果たすポリフェノールおよびフラボノイドなどの抗酸化物質をとりわけ多量に含有することが示されている。例えば、高い抗酸化活性が、ピーナッツ(B.Adhikariら、Journal of the Saudi Society of Agricultural Sciences 2019年、18巻、437~442頁)、ピーカンナッツ(A.C.Pinheiro do Pradoら、Grasas Y Aceites 2009年、60巻(4号)、330~335頁)およびヘーゼルナッツ(T.Espositoら、International Journal of Molecular Sciences 2017年、18巻、392頁)の殻物質について報告されている。食品を消費するための従来の加工では、ナッツの殻および皮の物質は、望ましくない副産物と見なされて廃棄されることが多く、製造者にとって経済的な問題となるだけではなく、残渣の燃焼を理由とする、環境への深刻な影響をもたらす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、殻入り食用ナッツを効果的に加工して前述の問題を軽減すると同時に、殻付きナッツに存在する生物活性物質を高収量で得ることができる方法を提供することが望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、本明細書で定義されている特許請求の範囲の主題によりこの目的を解決する。本発明の利点は、以下の項目に詳細にさらに説明されており、さらなる利点は、本発明の開示を考慮すれば当業者には明白になろう。
【0015】
一般的に言えば、一態様では、本発明は、食用ナッツを加工する方法であって、a)食用ナッツに水を加えて、懸濁液を形成する工程と、b)前記懸濁液を1つまたは複数の工程で湿式粉砕して、100μm未満の平均粒子サイズにする工程と、c)懸濁液を、少なくとも食用ナッツ固形物を含む固相、および食用ナッツミルクを含む液相に分離する工程とを含む、方法を提供する。有利には、前記方法は、栄養として有益な成分の抽出および収量の最適化を可能にし、迅速かつ安価な加工を可能にすると同時に、様々な新規な利用可能な抽出物および製品への経路を実現する。有利には、本方法は、出発原料として殻付き食用ナッツを加工することをさらに可能にし、その結果、殻および外皮物質の事前の精巧な分離を省略することができ、これによって、この方法がさらに単純になり、殻中に存在する栄養面で有用な成分の収量が改善する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、前述の方法によって調製される食用ナッツミルク、前述の方法によって得られる固相、ならびに前記固相および/または前述の食用ナッツミルクを含む食用ナッツをベースとする食用製品に関する。
【0017】
他の態様では、本発明は、上記の工程c)が、懸濁液を、食用ナッツ固形物を含む固相、食用ナッツミルクを含む水相(重質相)、および食用ナッツオイルを含む脂肪相(軽質相)に分離することを含む、方法、ならびに前記方法によって得られる食用ナッツオイル抽出物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による、ミルク、乾燥抽出物、アロマおよびナッツオイルなどの抽出物を得る、食用ナッツを加工する例示的な方法を例示するフローチャートである。
図2】本発明による食用ナッツミルクから無乳ヨーグルトを調製する例示的な方法を概略的に例示する図である。
図3】本発明の食用ナッツミルクから無乳ヨーグルトを調製する例示的な方法を例示する図である。
図4】例示的な食用ナッツベースのドリンクに関して評価した、外観、味および食感に関する属性を示すグラフである。
図5】コンセンサスプロファイリングによる、例示的な食用ナッツベースのドリンクに関して評価した、オルソネーザル官能分析の結果を示すグラフである。
図6】コンセンサスプロファイリングによって評価した、例示的な食用ナッツベースのドリンクのレトロネーザル官能分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を一層完全に理解するため、その例示的実施形態の以下の記載をこれより参照する。
【0020】
食用ナッツを加工する方法
第1の実施形態では、本発明は、概して、食用ナッツを加工する方法であって、a)食用ナッツに水を加えて、懸濁液を形成する工程と、b)前記懸濁液を1つまたは複数の工程で湿式粉砕して、100μm未満の平均粒子サイズにする工程と、c)懸濁液を、少なくとも食用ナッツ固形物を含む固相、および食用ナッツミルクを含む液相に分離する工程とを含む、方法に関する。
【0021】
上で定義した方法の例示的な実施形態を図1に例示する。
【0022】
本明細書において使用される「食用ナッツ」という用語は、任意の属のナッツ、マメ科植物または種子の任意の種、およびそれらの任意の混合物を含めた、任意の木堅果、種子またはマメ科植物を含むが、ナッツ、核果種子、ナッツのような裸子植物の種子およびナッツのような被子植物の種子が好ましい。単一の品種もしくは種、またはナッツの考えられる任意の混合物、またはナッツとマメ科植物の混合物、または木堅果と種子とマメ科植物との組合せ物を使用してもよい。ナッツの例として、アーモンド、ピーカン、クルミ、カシュー、ピスタチオ、ピーナッツ、コラナッツ、パームナッツ、ヘーゼルナッツ、ハシバミの実、ブラジルナッツ、マカダミアナッツ、栗、およびそれらの混合物を挙げることができる一方、好適な種子には、例えば、オート麦、ゴマの種子、松の実、ヒマワリの種、かぼちゃの種、マメおよび/またはコメを挙げることができる。例えば、マメ科植物(以下に限定されないが、例えば、ダイズ、ビーナッツ、シロインゲンマメ、インゲンマメ、ライマメ、サヤインゲン、ピントマメ、ヒヨコマメ(chickpea)(ヒヨコマメ(garbanzo bean))、レンズ豆、エンドウマメ、ササゲを含む)、特に、ピーナッツなどの通常の用語で食用ナッツの定義に該当するものを使用することも本開示の範囲内にある。特に好ましい実施形態では、用語「食用ナッツ」は、ヘーゼルナッツ、アーモンド、クルミ、カシュー、ピスタチオ、ピーカン、マカダミアナッツ、ピーナッツ、およびそれらの組合せを含む。食用ナッツは、工程a)を施す前に、殺菌、漂白、打撃、洗浄およびそれらの組合せによって事前に加工されてもよい。一部の国では、非乳飲料に関して「ミルク」という用語を使用することが禁止されていることがある。この点で、「食用ナッツミルク」という用語は、本明細書において使用される場合、食用ナッツに基づく飲料またはドリンクと等価であることが理解される。工程b)の前またはその間に、さらなる添加剤を水性懸濁液に配合してもよい。これらに限定されないが、例示的な添加物には、例えば、コーヒー豆(生品、焙煎品、発酵品または非発酵品)、コーヒーチェリー果肉、カカオマメ、カカオ果肉、カカオ果実成分、生物活性成分、塩、砂糖または他の甘味料(メープルシロップ、はちみつ、ショ糖、果糖(fructose)、ブドウ糖シロップ、転化糖、果糖(fruit sugar)、コーンシロップ、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、シクラメート、アセスルファム-K、タウマチン、カルコン、シクラメート、ステビオシド、ステビア、ソルビトール、キシリトールおよびラクチトールなどを含む)、香料、エッセンシャルオイル、ビタミン、ミネラル、果汁および/またはフルーツ片、ハーブおよび/またはスパイス(非限定的に、シナモン、ショウガ、コリアンダー、クミン、ターメリック、チリ、コショウ、カルダモン、クローブ、ナツメグなどを含む)、防腐剤、着色剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、およびそれらの組合せを挙げることができる。
【0023】
一般に、ナッツの様々な成熟段階、収穫時期、したがって食用ナッツの水分含量は、それらを本発明の方法に供する前に考慮されるべきである。
【0024】
任意の乾燥プロセスの間に、タンパク質、多糖、ポリフェノールおよびビタミンなどの様々な分子の本来の生物活性状態が破壊される傾向がある。したがって、これらの物質を新鮮な状態で(すなわち、変性前に)抽出するために、工程a)において懸濁液を調製する前に食用ナッツを予備乾燥しないことが好ましい。「予備乾燥」という用語は、本明細書において使用する場合、水分含量の低下をもたらす積極的な処理(例えば、室温を超える加熱)を主に意味する。しかし、さらに好ましい実施形態では、「予備乾燥」はまた、周囲温度以下における保管および/または保存などの積極的でない工程も包含してもよく、その間に、植物はその新鮮な元のアロマを失う。したがって、食用ナッツの収穫と加工の間の時間は、できるだけ短く維持するのが理想的なはずである。
【0025】
好ましい実施形態では、食用ナッツ(殻、外皮物質、総苞および/または葉を含むまたは含まないカーネル)は、熟した食用ナッツと比較した場合に有利な程に高い含有物の抗酸化物質を利用するために、未熟な状態で工程a)が施されてもよい。この文脈では、「未熟な状態」は、熟す前の状態を意味し、これは、個々のタイプの食用ナッツに応じて、当分野において公知の方法によって(例えば、外観、稠度および/または水分含量に基づく)当業者により決定することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、工程b)において湿式粉砕が施される食用ナッツは、得られる抽出物中の抗酸化物質の収量を最適化するために、殻付き食用ナッツを含むか、またはそれからなることができる。驚くべきことに、食用ナッツを殻物質と共に加工すると(工程a)において殻付きナッツを使用することによる、殻物質の分離、独立した加工およびその後の加工済み殻物質の再導入による、または異なるバッチ、品種もしくは食用ナッツ種に由来する食用ナッツ殻物質の導入による)、殻むきナッツを加工することによって得られるエマルションと比較すると、安定性と濁りが改善された食用ナッツミルクとなることがやはり見出されている。さらに、充填または瓶詰めの際に、このように製造された食用ナッツミルクは、空気にさらされると(すなわち、開封後)、好ましい風味が現れる傾向があることが見出されている。一部の実施形態では、食用ナッツはまた、例えば追加の生物学的に活性な成分を抽出するために、外皮物質、総苞および/または葉と一緒に加工されてもよい。これらの場合、本発明の方法は、例えば、殺有害生物剤、肥料または他の望ましくない異物の残留物を除去するために、工程a)の前に、殻付き食用ナッツを洗浄する工程をさらに含むことが好ましい。洗浄工程は、当分野において公知の方法に従って、バッチ法または連続法で実施してもよい。殻入り食用ナッツの加工により、殻と分離に必要な専用の機器および加工工程を必要としなくなる。しかし、加工効率およびエネルギー消費の観点で、従来の方法よりも大きな利点をもたらすだけではなく、食用ナッツの皮や殻に見られる有益な生物活性成分(例えば、抗酸化物質など)が理想的に利用される。
【0027】
代替的な好ましい実施形態では、殻物質は、工程b)の前、好ましくは工程a)の前に供された食用ナッツから分離されてもよく、殻物質は、個別に独立して加工され、続いて工程c)の前の懸濁液と、または工程c)の後の液相もしくは固相のうち少なくとも一方と再度、一緒にされてもよい。この実施形態は、工程b)における湿式粉砕操作中のミル粉砕機器の磨耗を低減しながらも、殻物質およびその抽出した成分(すなわち、生物活性剤)の効果的な使用(例えば、濁り安定剤として、またはリグニンおよびセルロースの含有量が通常、高いために充填材料として)が依然として可能である。殻物質の独立した加工は、以下に限定されないが、粉砕(湿式または乾式粉砕)、圧縮、抽出(例えば、溶媒抽出、超臨界流体抽出、加圧液体抽出、超音波抽出、酵素支援抽出、マイクロ波支援抽出、ならびに例えばマイクロ波および超音波支援抽出)およびそれらの組合せを含むことができる。好ましくは、殻物質は、再導入される前に、1つまたは複数の工程で少なくとも粉砕される。工程c)の前の懸濁液と、または工程c)の後の液相もしくは固相のうちの少なくとも1つと再度一緒にする加工済み殻物質は、粉砕済み殻物質、その抽出物またはそれらの組合せのいずれかを含むことが理解される。図1に例示される通り、加工済み殻物質は、相分離の前に懸濁液に再導入されてもよい。代替的にまたは組み合わせて、加工済み殻物質は、相分離後の任意の工程における液相、水相、油相および/または固相のいずれかに導入されてもよく、これにはナッツミルク、ナッツアロマ、ナッツオイルおよび/または固形ナッツ抽出物(図1には明示的に示されていない)が含まれる。
【0028】
前述の好ましい実施形態に加えて、またはその代わりに、異なるバッチ、品種および/または異なる食用ナッツ種に由来する殻物質を導入して、栄養面で有益な成分を利用し、生じたエマルションの安定性および濁りを改善することができることが理解されよう。したがって、別の好ましい実施形態では、本方法は、工程c)の前の任意の時点で懸濁液に、または工程c)の後の液相もしくは固相のうち少なくとも一方に、食用ナッツ殻物質(これは、異なるバッチ、品種および/または異なる食用ナッツの種に由来してもよい)を添加することを含む。食用ナッツ殻物質は、懸濁液、液相または固相に添加する前に、前述の独立した加工工程に従い、事前に加工されるのが好適となり得る。好ましい実施形態では、独立して、事前に加工された食用ナッツ殻物質は、工程c)の前の任意の時点で懸濁液に、または工程c)の後の液相もしくは固相のうち少なくとも一方に添加する前に、一工程または複数の工程で、100μm未満、好ましくは90μm未満、さらにより好ましくは80μm以下、例えば0.5~50μmまたは1~20μmの平均粒子サイズまで湿式粉砕または乾式粉砕される。一般に、工程a)またはb)に施される全固形分の含有量に基づく食用ナッツ殻物質の含有量、または工程c)の後の液相もしくは固相のうち少なくとも一方に添加される(場合により事前加工された)食用ナッツ殻物質の量は、特に限定されない。好ましい実施形態では、工程a)またはb)に施される、または工程c)の後に固相に添加される全固形分の含有量に基づく食用ナッツ殻物質の含有量は、固形物の総重量に対して、少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%、とりわけ好ましくは少なくとも1重量%の量になる。上限は特に限定されず、ナッツの種に応じて好適に選択することができるが、通常、60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下、とりわけ好ましくは45重量%以下になる。工程c)の後に液相に添加する場合、食用ナッツ殻物質は、液相の総重量に対して、0.01重量%~10重量%の量で添加されることが好ましい。
【0029】
工程a)では、水を加え、懸濁液を形成する。特に限定されないが、形成された懸濁液中の水対食用ナッツの重量比は、好ましくは1:1~15:1、より好ましくは2:1~12:1、とりわけ好ましくは2.5:1~10:1の間であり、これは、さらなる工程における加工性に有利に影響を及ぼすことがある(例えば、容易なポンプ注入、粉砕および/または一層容易な相分離)。無乳ミルクの調製の場合、水の量は、出発原料の脂肪含有量および得られるミルクにおける所望の脂肪含有量に応じてさらに微調整されてもよい。
【0030】
工程a)において、水(例えば、水道水)を使用することが好ましいことがあるが、加工方法の後の段階における食用ナッツの一次香料および二次香料と有利に相互作用することができる追加の香料を導入するために、別の水含有液体も水源として使用されてもよい。例えば、このような液体は、果汁、果汁濃縮物またはミルクなどの60~約95重量%の水分含量を有する液体を含んでもよい。このような水含有液体が使用される場合、形成された懸濁液中の水分含量は、上で定義した比率に収まることが一般に好ましい。一般に、添加する水または水含有液は、40℃以下、より好ましくは30℃以下、特に好ましくは25℃以下の温度を有することが好ましい。しかし、特定の目的のために、所望により、一層高い温度が使用されてもよい。例えば、酵素の不活性化を行うために、最大で95℃、通常、最大で90℃の温度を有する水または水含有液体が、望ましくは使用されてもよい。
【0031】
親油性物質の抽出収率の改善が目標である、および/または香料の導入が望ましい場合、水の他にさらなる抽出剤を添加してもよい。このような抽出剤は、1種または複数の有機溶媒を含むことができ、これは、好ましくはC1~C8アルコール、C2~C8ケトン、C3~C7エステル、C2~C8エーテル、C4~C10ラクテート、ハロゲン化C1~C6炭化水素およびC1~C8アルカンからなる群から、より好ましくはC1~C8アルコール、C1~C8アルカン、C2~C8エーテルから、さらに好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテルおよびヘキサンからなる群から、とりわけ好ましくはエタノール、ヘキサンおよびメチルt-ブチルエーテルから選択されてもよい。特に好ましい実施形態では、有機溶媒はエタノールである。それらに限定されないが、追加の抽出剤のさらなる例には、動物油(例えば、魚油)、液体乳製品、植物油(例えば、オリーブ、ダイズ、ナタネ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ピーナッツ、綿実、ココナッツ、ヤシ、アボカドおよびコメヌカの油)およびそれらの組合せを含むことができ、これらには、さらなる香料(例えば、ココア、バニラ、クルクマ、チリ、カルダモン、コショウなど)が注入されてもよい。水または水含有液体と混合する場合、前記追加の抽出剤は、水または水含有液体の体積に対して、90体積%未満、好ましくは70体積%未満で含まれることが好ましい。抽出剤の温度は、特に限定されず、当業者によって好適に調節されてもよい。
【0032】
実施形態では、好ましくは工程(1)の間またはその後に、例えば1つまたは複数の酸(例えば、酢酸、クエン酸など)または緩衝剤を添加することによって、水または水含有液体のpH値を変更することが好ましいことがある。通常、前記pH調節は、その後の抽出プロファイルを微調整するために、緩衝溶液、塩基または酸の添加を含んでもよい。
【0033】
さらに、炭水化物が、水または水含有液体に添加されてもよく、これによって、後の工程における油相の効率的な分離を促進することができる。それに限定されないが、好適な炭水化物の例は、US2018/0079991(A1)に記載されている。工程a)において、すなわち工程b)の前に、水性懸濁液を形成することは、固形物質が粉砕前に軟化され、水の冷却効果がミル粉砕機器への機械的負荷をさらに最小化するという利点を有する。さらに、湿式粉砕の前に乾燥工程を必要とせず、エネルギー消費が比較的少ないという観点で、とりわけ有利になり得る。工程b)における湿式粉砕に使用される方法および装置は、食用ナッツの熱に敏感な成分を保存するために、大きな摩擦熱の発生または高い機械力が回避される限り、特に限定されない。この目的のため、工程b)は、好ましくは、(b1)500μm以下の平均粒子サイズになるまでの1つまたは複数の粗粉砕工程と、(b2)それに続く、100μm未満、好ましくは90μm未満、さらにより好ましくは80μm以下、例えば0.5~50μmまたは1~20μmの平均粒子サイズになるまでの微粉砕工程とを含む。粒子を上記のサイズ範囲に縮小すると、湿潤の最適化に対する粒子物質の露出表面積が大幅に増加し、抽出結果を改善する(脂肪または脂質、芳香物質および/またはポリフェノールの抽出の改善など)ことができる。粒子サイズの低下は、例えば、ディスクミル(例えば、有孔ディスクミル)、コロイドミル(例えば、歯付きコロイドミル)、ボールミルまたはコランダムストーンミルを使用することによって行うことができる。特に好ましい実施形態では、1つまたは複数の粗粉砕工程(b1)は、有孔ディスクミルを用いて実施され、微粉砕工程(b2)は、歯付きコロイドミルおよび/またはボールミルを使用して行われる。一般に、平均粒子サイズは、体積モーメント平均値(D[4,3])として測定することができ、通常、集合体中の粒子サイズの体積分率に応じて寄与するすべての粒子サイズによって定義され、したがって、平均粒子サイズの間隔は、対応する体積部分に重み付けされ、これらすべての重み付けした値を算術平均する。粒子サイズおよびそれらの分布は、当分野において公知の方法(例えば、ふるい分け、ろ過またはレーザー測光法を含む)によって好適に決定することができる。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、好ましくは、工程c)の前または直後に、さらに好ましくは工程b)の湿式粉砕中またはその後に、懸濁液にマセラシオン工程および/または発酵工程を施す工程を含む。有利には、このような過程は、例えば、フィチン酸などの食用ナッツの望ましくない成分の過剰な含有量を低下させるために行うことができる。マセラシオンによって、表面積の拡大により、水性抽出剤は固形物質をさらに湿潤させることが可能となる。好ましい実施形態では、マセラシオンは酵素により行われてもよい。
【0035】
さらに、マセラシオンは、栄養として有益な成分(とりわけ、アロマ化合物)の収量の改善に重要な役割を果たすことが見出される。この目的のために、食用ナッツ物質(殻、外皮物質、総苞および/または葉を含むまたは含まないカーネル)は、工程b)の前の非粉砕状態または工程b)の後の粉砕状態のいずれかで、水性媒体中に静置して、マセラシオンを行ってもよい。所望の場合、酸、塩基または緩衝剤を添加することによって、水性マセラシオン媒体を所望のpHまでpH調節することができる。マセラシオンプロセスの期間は、特に限定されないが、1~20時間の期間が好ましく、2~12時間の期間がとりわけ好ましい。マセラシオンした食用ナッツを加工すると、一般に、芳香収量が改善される。さらに好ましい実施形態では、水性媒体中のマセラシオンは、工程a)およびc)による後続の抽出と一緒にされて、この場合、上記の説明に準拠して、1種または複数の有機溶媒を水性抽出媒体に添加する。この点で、食用ナッツ物質をマセラシオンし、マセラシオンした食用ナッツ物質をマセラシオン媒体から分離し、これに抽出を施すと(すなわち、工程a)からc))、同じ基質物質を使用し、マセラシオン媒体を除去したにもかかわらず、有機溶媒による直接抽出と比較すると、収量改善が顕著に一層高くなることが驚くべきことに見出された。
【0036】
発酵は、場合により、酵素処理と組み合わせて、当分野で公知の固有および非固有の細菌の種ならびに酵母の種を含めた微生物種培養を使用することによって行うことができるが、発酵の終点は、pHの化学測定によってモニタリングすることができ、これによって、自然の自発的な発酵と比較して、発酵プロセスを有利に制御することが可能となる。さらにまたは代替的に、発酵プロセスは、温度、圧力、ガス発生(例えば、CO2)および/または密度をモニタリングすることによって制御することができる。
【0037】
用語「発酵」は、本明細書において使用する場合、自発的または制御された(非自発的)発酵プロセスを包含することができることが理解されよう。例えば、微生物(すなわち、酵母および細菌)発酵をシミュレートするために、温置用媒体での温置工程を実施してもよい。温置用媒体中のエタノールの濃度は、温置用媒体の濃度が内因性微生物による自発的発酵を防止するのに十分に高い限り、特に限定されないが、1~20体積%、好ましくは1~12体積%とすることができる。発芽阻害効率および加工コストの観点からとりわけ好ましい実施形態では、温置用媒体中のエタノールの濃度は、少なくとも2体積%、かつ7体積%未満である。温置用媒体は、例えば、親水性オリゴペプチドおよび疎水性遊離アミノ酸などのアロマ前駆体の形成を促進するために、酵素触媒反応の制御に関する当分野で公知の酵素をさらに含んでもよい。適用される場合、温置は、単一工程、または様々な温置条件および/もしくは温置用媒体が使用される複数の温置工程で実施してもよい。当業者に公知の通り、pHまたは温度などの温置条件は、1回の単回温置工程の範囲内で様々であってもよい。温置工程は、温置前または温置している間に、当分野で一般に公知の1つまたは複数の機械的および/または物理的処理工程をさらに包含することができる。これらに限定されないが、このような機械的処理は、撹拌、混合およびかき混ぜ、ならびにそれらの組合せ含むことができるが、前記物理的処理は、例えば、赤外線処理および/または真空処理を含んでもよい。
【0038】
工程c)において、微粉砕された懸濁液に、食用ナッツ固形物を含む固相および食用ナッツミルクを含む液相への少なくとも分離を含む1つもしくは複数の分離および/または加工工程が施される。工程b)に準拠して懸濁液が細かく湿式粉砕されると、その後の固相分離は、食用ナッツミルクの芳香豊かさに悪影響を及ぼさないことが驚くべきことに見出された。さらに、固形物粒子の沈降が回避されるので、食用ナッツミルクの外観および食感を大幅に改善することができる。したがって、液相からの固形物の分離を使用しない当分野において公知の方法と比較すると、本発明の方法は、食用ナッツミルクの豊かなアロマを損なうことなく、いくつかの製品および抽出物に有利に使用することができる固相をもたらす(その例は、後述する)。実際、得られる食用ナッツミルクは、外観と官能特性の改善を示す。
【0039】
好ましくは、デカンタまたはノズルセパレータなどの遠心力を使用する装置を利用して、機械的粒子分離を達成することができるが、デカンタが特に好ましい。
【0040】
一部の用途に関すると、工程c)は、三相分離を含むことが好ましいことがあり、この場合、懸濁液は、食用ナッツ固形物を含む固相、食用ナッツミルクを含む水相(重質相)、および食用ナッツオイルを含む脂肪相(軽質相)に分離される。例えば、ナッツオイルの穏やかな抽出(炭水化物の添加または圧搾工程を必要としない)が望ましい場合、および/または風味の豊かさを損なうことなく食用ナッツミルク中の脂肪含有量を最小限にすることが望ましい場合(例えば、希釈による場合)、上記のようなプロセスが望ましい。三相分離は、後続工程によって、例えば、工程c)において得られた液相を脱油して、食用ナッツミルクを生成することによって実現することができるが、三相分離を単一工程で、例えば、三相デカンタによって行うことが好ましい。
【0041】
三相分離は、油相を介して望ましくない親油性成分を除去する可能性をさらにもたらす。このような望ましくない成分の例には、以下に限定されないが、親油性アレルゲンまたは毒性物質が含まれる。例えば、カシューナッツの殻には、カシュー殻オイル(カシューナッツ殻液(cashew nutshell liquid:CNSL)としても知られている)が含まれており、これは強いアレルギー特性を示し、ヒト皮膚に接触すると目への刺激、皮膚発疹および灼熱感を引き起こすので、食品の調理には望ましいものではない。油相によるカシュー殻オイルの分離は、食用のカシュー果抽出物への経路をもたらす一方、殻オイル自体は、さらに加工されて、例えば、薬品、抗酸化物質、殺菌剤および生体材料の調製における原材料を得ることができる。
【0042】
液相と固相の分離の改善を達成するために、複数の相分離および再度一緒にする工程を使用してもよい。このようにして得られた精製相は、第1の分離段階後に得られたそれぞれの相に再供給されてもよい。
【0043】
例えば、三相分離において得られた水相および油相は、抽出物の回収率および収量をさらに改善するために、例えば第2の三相分離工程を実施することによって、さらに精製されてもよい。固相をろ過または遠心分離して、残留水を分離することができ、この残留水を最初のデカント工程からの水相と、または前記相の後の加工段階において再度、一緒にしてもよい。同様に、水相は、微粒子を除去するために、例えば、真空回転フィルターを使用するろ過によるさらなる精製工程が施されてもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、工程a)~c)は、100分未満、好ましくは60分未満、より好ましくは20分未満の時間枠で連続的に実施され、これは従来の技法よりも顕著な改善を示す。
【0045】
加工方法のいくつかの段階において、加熱処理を組み込んでもよいが、熱に敏感な物質の含有量を高く維持するため、加工工程a)~c)をそれぞれ、0℃から65℃の範囲の温度で実施することが好ましい。しかし、例えば、栄養として有益な生物活性物質(熱感受性ポリフェノール、フラボノイドまたはビタミンなど)の含有量がとりわけ高いナッツオイルを調製する場合、工程a)の前に食用ナッツをローストしないこと、および工程c)の間の懸濁液温度は40℃を超えず、好ましくは35℃未満、より好ましくは30℃未満、とりわけ好ましくは25℃以下(20℃以下など)とするのが好ましい。
【0046】
好ましい実施形態では、後の工程において、抽出効率をさらに高めるため、本方法はまた、工程b)の間またはその後に、懸濁液に60℃以下の温度(例えば、40~60℃の温度)で加熱処理を施す工程を含んでもよい。
【0047】
ロースト風味を導入するために、加熱工程もまた実施されてもよい。例えば、食用ナッツは、工程a)において水と混合する前にローストしてもよく、これは、殻入り食用ナッツでも有利に行うことができる。それらに限定されないが、典型的なロースト温度は、一般に、65℃を超え200℃以下、好ましくは70℃から160℃の間、例えば80~150℃の範囲になろう。
【0048】
液相に影響を及ぼすことなく、工程c)の後に得られる食用ナッツ固形物を含む固相にロースト風味を導入することが望ましい場合、工程c)の後の固相は、好ましくは、乾燥手順の間に単独でローストされてもよい。好ましい実施形態では、メイラード反応の前駆体としてのタンパク質構成物質の溶解度を高めるために、塩(例えば、塩化ナトリウム)を添加してもよい。
【0049】
例えば、工程c)における相分離後に得られる(湿潤)固相は、場合により、加熱可能なロール粉砕機によって処理して粒子サイズを小さくし、予備乾燥を開始してもよい。(ローストされた)食用ナッツ粉末および食用ナッツのアロマを得るために、固相に乾燥工程および任意選択のその後のロースト工程を施してもよい。同様に、乾燥/ローストプロセスの間の風味の発生を改善するために、乾燥前に糖、糖溶液および/または果汁などを、場合により分離後の固形物に添加してもよい。得られた食用ナッツのアロマを収集し、独立して、(アロマ抽出物として)使用するか、またはより強力な味とするために食用ナッツミルクを含む液相/水相を含む他の抽出物に直接、再導入されてもよいことが理解されよう。
【0050】
乾燥/ローストを実施する方法は、特に限定されず、例えば、ドラム乾燥器で行うことができる。しかし、好ましい実施形態では、乾燥/ロースト工程は、その軸が水平に配置されており、端部プレートによってその反対側の端部が閉じられた円筒状の管状本体を備えており、かつ同軸の加熱ジャケットまたは冷却ジャケットを有する混合装置で行われ、これらのジャケットにより、例えば、熱伝導性油または別の流体が、本体の内壁を所定の温度に保つよう流すように意図されている。管状本体は、固相用の入口および出口の開口部を有する。出口開口部は、導管によって、アロマ相を乾燥製品から分離するための装置と連通している。この装置は、管状本体内で回転するように支持されたブレード付きローターをさらに備えており、そのブレードは、らせんとして配置されており、加工中の固相を遠心分離し、同時にそれを出口開口部に向かって輸送するような向きにされている。この混合装置を使用することにより、乾燥/ロースト工程、ならびにロースト後の風味および他の香りの分離を、食用ナッツ粉末の調製まで連続的に実施することが有利なことに可能になる。任意のロースト工程における温度は、特に限定されず、例えば、選択された食用ナッツおよび最終製品における所望の風味および/または抗酸化活性に応じて、当業者によって好適に選択されてもよい。通常、ロースト工程に続いて、冷却工程が続き、これは、例えば、空冷によってまたは冷却液体(例えば、水)の添加によって実施することができる。マセラシオン工程または発酵工程の前にローストが行われる場合、冷却工程は、pH、酵素および/または微生物含有量を、それぞれマセラシオンまたは発酵に最適化した条件に調整するように適合されている冷却液体を使用して好ましくは実施することができ、これにより、必要なプロセス工程の数が有利に少なくなる。
【0051】
上記の方法は、天然に存在する栄養として有益な成分を理想的に利用する、食用ナッツ抽出物の簡単、迅速かつ安価な調製を可能にする。
【0052】
食用ナッツ抽出物および関連する製品の加工
上記の方法によって得られる食用ナッツ抽出物は、食品として(例えば、食品添加物、栄養補助食品または飲料として)直接、使用することができる。さらに、食用ナッツオイル抽出物はまた、化粧品(例えば、ローションにおいて)、ヘルスケア製品(ナチュラルヘルスケア製品を含む)、および後者の組合せ(局所調製物など)に使用されてもよい。
【0053】
具体的には、本発明の第2の実施形態は、場合により、均質化し、続いて液相(二相分離の場合)または水相(三相分離の場合)を低温殺菌または滅菌することによって製造される食用ナッツミルクであって、第1の実施形態による方法によって得られる食用ナッツミルクに関する。
【0054】
食用ナッツミルクの調製の場合、液相または水相(三相分離の場合)を、場合により、均質化し、続いて低温殺菌または滅菌して、即時使用可能な食用ナッツミルクであって、好都合な外観を有しており、天然風味、ビタミンおよび抗酸化物質の含有量が高い食用ナッツミルクを得ることができる。
【0055】
均質化の間、脂肪液滴の寸法が低下し、これは、脂肪凝集の速度を低下させることによって、クリーミー感および製品安定性を向上させる。均質化は、当分野において公知の方法によって行うことができ、通常、加熱殺菌された塊を高圧下で、通常、120~2100barの間でオリフィスに通すことを含む。1400~2100barの間の圧力による超高圧(UHP)均質化により、より低圧で均質化された製品に比べると、多数の非常に小さな脂肪液滴(直径0.5μm未満)を有するエマルションを得ることが可能となり、官能特性および安全特性を達成するために脂肪含有量を低くする必要があるので好ましい。
【0056】
例えば、低温殺菌または滅菌工程は、微生物の腐敗/繁殖を予防するため、当分野において公知の方法に準拠して、例えば、熱、放射線照射、化学滅菌およびマイクロろ過、限外ろ過もしくはナノろ過の適用によって行うことができる。低温殺菌工程は、例えば、HTST(高温短時間)熱交換器を使用して、バッチ操作または連続操作で行うことができる。滅菌は、高温にさらされることを避けるために、パスカリゼーション(すなわち、高圧処理(HPP)または高静水圧(HHP)処理)も含んでもよい。
【0057】
本発明の第3の実施形態は、固相、または上記の第2の実施形態による食用ナッツミルクもしくは第1の実施形態による方法によって得られた食用ナッツミルクを含む食用ナッツをベースとする製品に関する。
【0058】
例えば、(場合により乾燥した)固相は、多数の食品(以下に限定されないが、キャンディー、プロテインバー、製菓用途、ベーカリー用途、インスタントパウダー、シリアルで使用するため、スプレッドとして、またはアイスクリームを含む)にさらに加工するための食用ナッツ抽出物として使用することができるか、または様々な食感を有する形状(例えば、食用ナッツ形状の再構成品を含む)に圧縮されてもよい。さらに、固相は、ベーカリー用途(甘いまたは塩味のペストリーおよび製パン)用の(グルテン不含)小麦粉に加工することができる。さらなる加工工程には、以下に限定されないが、低温殺菌、滅菌、押出成形、インスタント化などが含まれ得る。
【0059】
種子(例えば、コメまたはマメ)またはマメ科植物(例えば、ダイズなど)を出発原料として使用すると、当分野で公知の方法および調理法に従って加工および/または風味付きすることができる、(場合により、乾燥した)固相を肉代用製品(豆腐または類似の製品を含む)の基礎原料として使用する可能性が提供される。
【0060】
食用ナッツをベースとするアイスクリームの調製などの特定の用途の場合、湿潤固相を乾燥せずに加工されてもよい。例えば、湿潤固相を、天然または人工甘味料を含む混合物に直接添加し、低温殺菌、均質化および凍結を施し、食用ナッツをベースとする冷凍デザートを得ることができる。この混合物に、1種または複数の乳製品(乳脂肪、無脂乳固形分(MSNF)および/またはヨーグルトを含む)、植物系乳製品(本発明に準拠して液相から得られる食用ナッツミルクを含む)、卵製品(例えば、卵黄)の乳化剤および安定剤もまた、場合により、好適な量で添加されて、様々なナッツ風味のハードフローズンアイスクリーム製品、低脂肪アイスクリーム製品、ライトアイスクリーム製品、ソフトフローズンアイスクリーム製品、シャーベット、ソルベ、フローズンヨーグルトを調製することができる。
【0061】
第3の実施形態の例には、本発明の第2の実施形態による食用ナッツミルクをさらに加工することによって製造される、非乳インスタント粉乳、無乳ヨーグルトまたは無乳チーズなどの様々な非乳製品も含まれる。
【0062】
インスタント無乳ミルク粉末は、当分野において公知の方法によって食用ナッツミルクをインスタンス化することによって得ることができ、この例には、以下に限定されないが、例えば、蒸気凝集、流動床凝集、凍結乾燥凝集、熱凝集または噴霧乾燥などの凝集技法が含まれる。
【0063】
無乳ヨーグルトの例示的な調製方法が図2に例示されており、以下:水中に甘味料(例えば、糖)および安定剤を混合する工程;この混合物に上記の食用ナッツミルクを添加する工程:この食用ナッツミルクを含む混合物を高い温度で低温殺菌する工程;接種温度(例えば、42~44℃の範囲)で、低温殺菌した混合物に好適な細菌培養物を添加する工程;温度条件(例えば、42~45℃の範囲)を調節することにより発酵プロセスを制御し、この混合物のpHをモニタリングし、目標pH(例えば、4.2~4.7の範囲)に到達すると、この混合物を冷却し、発酵を停止する工程を含むことができる。このようにして得られたヨーグルトは、次に、場合によりさらに冷却し(例えば、3~7℃の温度まで)、風味付きして充填することができる。果物、増粘剤、着色料、天然および/または人工香料、ハーブ、スパイス、防腐剤、リン酸三カルシウム、生きた活性培養物およびタンパク質(例えば、植物ベース)などの添加物を、本方法の様々な段階で混合物に、または好ましくはヨーグルトに添加されてもよい。
【0064】
図3は、非乳チーズを製造するための例示的な方法を概略的に示している。この方法は、一般に、1つまたは複数の細菌培養物および凝固剤を食用ナッツミルクと混合し、この混合物を穏やかにかき混ぜることから始める(好ましくは、15~20℃の温度で)。次に、開始した発酵プロセスを、温度条件を調節することによって制御し(例えば、42~45℃の範囲に)、混合物のpHをモニタリングし、目標pH(例えば、4.2~4.7の範囲)に到達すると、この混合物を冷却(例えば、約20~25℃まで)して停止する。このようにして生成した凝固物は、低温殺菌および冷却(例えば、約20~25℃まで)することができ、必要な場合、場合により、1つまたは複数の培養物を用いて再増殖させてもよい。得られた凝乳には、所望の粘度、密度および滑らかさを実現するため、加圧、ドリップ法(例えば、凝乳を水切りバッグに入れることによる)、混合、切り刻みなどを含む、当分野で公知の機械的加工工程が施され得る。このプロセスの間に、水、および例えば、乳酸、塩、コショウ、安定剤などの添加物を添加することができる。続いて、当分野において公知の方法に準拠して、チーズを所望の熟成度まで熟成させることができる。無乳ヨーグルトの調製と同様に、好適な細菌培養が、当業者によって適切に選択され得る。
【0065】
本発明の第4の実施形態は、第1の実施形態に関連して記載されている工程c)における任意選択の三相分離中に油相から得られる食用ナッツオイル抽出物に関する。油相は、場合により、さらに精製および濃縮されて、栄養として有益な親油性成分の含有量が多い食用ナッツオイルを得ることができる。代替的に、ナッツオイル抽出物は、例えば、化粧品、ヘルスケア製品、薬品、抗酸化物質および殺菌剤などの非食物用途向けに使用されてもよい。
【0066】
本発明の方法は、第1から第4の実施形態の説明に関して上に特定された好ましい特徴のいずれかを使用することができること、および好ましい特徴は、少なくとも特徴の一部が相互に排他的である組合せを除外し、いずれの組合せで組み合わされてもよいことが理解されよう。
【実施例
【0067】
ヘーゼルナッツを、脱塩した無菌ろ過水と1:3の重量比(すなわち、25kgのヘーゼルナッツおよび75kgの水)で混合し、有孔ディスクミル(FrymaKoruma ML150)において水性懸濁液を粗粉砕し、歯付きコロイドミル(FrymaKorumaMZ 130;ミル粉砕間隔0.1mm)で粗スラリーを微粉砕することによる本発明の方法に準拠して、3つのタイプのヘーゼルナッツミルクを調製した。微粉砕時に、懸濁液にデカンタ遠心分離機(GEA Westfalia)を用いて相分離を施した。相分離から得られた水相を、管状熱交換器を用いて120℃で55秒間の滅菌を施した。各場合において、混合工程a)から滅菌ヘーゼルナッツミルクの調製までの総抽出時間は、約10分以下とした。相分離工程で得られた固相は、約8時間、30mbarの減圧下、65℃で乾燥した。実施例1では、洗浄した全ヘーゼルナッツ(すなわち、殻入り)を出発材料として使用し、43kgのヘーゼルナッツミルクが得られた。実施例2は、洗浄した非漂白ヘーゼルナッツカーネルを使用することによって実施した一方、実施例3では漂白したヘーゼルナッツカーネルを出発材料として使用した。実施例2と3のどちらでも、この方法により、74kgのヘーゼルナッツミルクが得られた。
【0068】
実施例1および3において得られたヘーゼルナッツミルクの味を評価し、芳香豊かで心地よい味が、各試料に寄与した。
【0069】
出発物質および得られたナッツミルクおよび乾燥固形抽出物は、乾燥物質の含有量、脂肪含有量およびpHに関して分析した。分析結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
上記の分析は、二相分離後、脂肪含有量の大部分が固相に残留する一方、抽出効率は、すべての実施例において類似していることを示している。実施例1において得られたミルクの脂肪含有量は、全ヘーゼルナッツの場合で、従来の牛乳と同様の脂肪含有量に到達するためには、1:3のナッツ対水の比が好適であることを示している。
【0072】
上記を考慮すると、本発明は、食用ナッツ抽出物を調製するための簡単で、特に迅速かつ費用効果の高い方法を提供することが示される。
【0073】
さらなる一連の実験では、新規なヘーゼルナッツミルク製品の栄養面および官能面の洞察を得て、さらなる製品最適化に関する基礎を得るため、本発明の方法によって製造された植物ベースのミルク製品の化学組成を検討した。
【0074】
ヘーゼルナッツを脱塩した無菌ろ過水と約1:5の重量比(すなわち、約25kgの原材料および124lの水)で混合し、水性懸濁液を有孔ディスクミルで粗粉砕し、粗粒スラリーを歯付きコロイドミルで微粉砕し、微粉砕した懸濁液にデカンタ遠心分離機を用いて相分離を施すことによる本発明の方法に準拠して、試験試料を調製した。試験時には、相分離から得られたヘーゼルナッツドリンクに、管状熱交換器を使用して100℃で15秒間の滅菌、および包装を施した。各場合において、混合工程a)から滅菌ヘーゼルナッツミルクの調製までの総抽出時間は、約10分以下とした。原材料として、殻入りヘーゼルナッツ(実施例4および5)、皮あり非ローストヘーゼルナッツ(実施例6および7)、および皮なしローストヘーゼルナッツ(実施例8および9)を使用した。実施例4、6および8、ならびに実施例5、7および9では、それぞれ、産地は同じであるが収穫年度が異なるヘーゼルナッツ原料を使用した。
【0075】
最終製品(ヘーゼルナッツミルク)およびサイドストリーム(デカンタ後の固形物)およびプロトタイプの製造に使用される様々な原材料について、タンパク質、脂肪、炭水化物、デンプン、不溶性食物繊維などの主要構成成分について調査した。さらに、ビタミンおよびアロマ活性化合物などの選択された微量構成成分、およびポリフェノール含有量、および抗酸化能を分析した。
【0076】
主要構成成分の分析に関しては、以下の方法を適用した:
【0077】
脂肪含有量は、Matissekら、Lebensmittelanalytik、第5版、2014年、Springer Spektrum Verlag, Berlin-Heidelbergに記載されている通り、ソックスレー法による直接抽出後に決定した。
【0078】
総タンパク質含有量は、ISO5983-2に準拠して決定した。
【0079】
サッカライドであるブドウ糖(glu)、果糖(fru)およびサッカロース(suc)の含有量は、Enzytec(商標)液状ショ糖/D-ブドウ糖/D-果糖を使用する酵素アッセイによって決定した。
【0080】
デンプン含有量は、天然デンプンおよび部分加水分解デンプンを決定するためのUV法を使用する酵素アッセイによって決定した。
【0081】
不溶性食物繊維の決定は、Robertsonら、J.Anim.Sci Suppl.1977年、45巻(1号)、254頁の方法に準拠して行った。
【0082】
ヘーゼルナッツミルクの試料中の選択したアロマ活性化合物の決定:Pastorelliら、Food Additives&Contaminants 2006年、23巻(11号)、1236~1241頁によって記載されているSPME法に基づいて、様々なヘーゼルナッツ原材料(殻あり/殻なし、皮あり/皮なし、非ロースト/ロースト)から製造したヘーゼルナッツミルク試料中の選択されたヘーゼルナッツアロマ化合物である2-エチル-2-メチルブチレート、ヘキサナール、フィルベルトン、ノナナール、酢酸、2-エチルヘキサノール、リナロール、アセトフェノンおよびベンゾチアゾール。試料調製のために、ナッツを-20℃で凍結し、次に、簡単な分析実験室用ミル粉砕機によってナッツ粉末1部に粉砕した。水4部を加え、Polytronホモジナイザーで1分間、分散させた。5gのミルクを20mlのHS-バイアルに秤量した。選択した分析対象の較正を行うため、内部標準(酢酸アミルおよびペラルゴン酸メチル)をエタノール保存溶液から水に加え、最終濃度をそれぞれ10mg/lにした。試料をボルテックスし、以下の条件下、SPME-GC-MSによって分析した:
繊維:相:85μm Carboxen/PDMS(Supelco #57295-U);温置:40℃で10分;抽出:10分。
GC-MS:
システム:TSQ8000 Evo質量分析計を備えたThermo Trace GC、TriPlus RSHオートサンプラー(Thermo Scientific)およびXcaliburシステムソフトウェア;
カラム:分析カラムDB-FFAP30m×0.25mm、0.25μm薄層(Agilent#122-3232)限定:TSP0.5m×0.15mm、DPTMDS-不活性化(BGB#TSP-150375-D-10)
キャリアガス:ヘリウム6.0(PanGas)
GCパラメータ:インジェクタ:SPMEライナーを備えるPTV(BGB#LS2200-5);インジェクタ温度:280℃、スピリット流量:10ml/分;スプリットレス:0.5分間.;カラム流量:2ml/分の一定;オーブンプログラム:40℃、155℃において7K/分、次に、250℃で50K/分、9分間の一定。
MSパラメータ:ソース温度:220℃;放出電流:50μA;検出:MS SIM(滞留時間>30ms);定量:外部4-面積カウント数による2つの内部標準によるレベル校正。
【0083】
原材料および最終製品中のビタミンB3(ナイアシン)およびビタミンE(α-トコフェロール)をHPLCにより測定した。
【0084】
抗酸化能および総ポリフェノール含有量をすべての試料で決定した。総ポリフェノール含有量は、Pedanら、Molecules 2018年、23巻(1931頁)に記載されている和パラメータとしてフォリンチオカルトー試薬を使用する分光学的アッセイによって決定した。原材料および製品の抗酸化能は、Brand-Williamsら、Use of free radical method to evaluate antioxidant activity、Lebensmittel-Wissenschaft und Technologie、1995年によって記載されているDPPHアッセイによって和パラメータとして決定した。
【0085】
表2は、ヘーゼルナッツミルクの製造に使用した原材料、および製品の主要構成成分分析の結果を示しており、ヘーゼルナッツミルクおよび得られた副生成物をまとめて、分析した製品の総重量の%で表す。測定はすべて、平均値からの偏差<+/-5%で少なくとも2連(n≧2)で行った。
【0086】
全体として、分析されたヘーゼルナッツミルク試料は、主要構成成分に関して類似した組成を示した。殻入りヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルク試料についてのみ、皮あり非ローストナッツおよび皮なしローストナッツから製造されたヘーゼルナッツミルク試料と比較して、タンパク質およびサッカライドの含有量がわずかに低いことが観察された。
【0087】
【表2】
【0088】
アロマ分析の場合、選択したアロマ活性化合物を、様々なヘーゼルナッツミルク試料で固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GC-MS)によって分析した。結果を表3にまとめる。
【0089】
【表3】
【0090】
アロマ活性化合物に関しては、ローストしたヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクにおいて、化合物ノナナール、リナロール、2-エチルヘキサノールおよびアセトフェノンの含有量がより高いことが観察され、ロースト後のヘーゼルナッツの場合に知られている通り、試料のアロマ強度がより高いことが示された。
【0091】
ヘーゼルナッツの重要なビタミン、すなわちナイアシン(ビタミンB3)とα-トコフェロール(ビタミンE)は、使用した原材料および最終製品でのHPLCによって測定した。結果を表4にまとめる(平均値n>2、標準偏差≦±10%として)。
【0092】
【表4】
【0093】
殻入りヘーゼルナッツからヘーゼルナッツミルク製品への最も高い移行率は、ナイアシン、続いてα-トコフェロールの場合に観測することができた。両方のビタミンの濃度は、他の原材料に比べてより低かったが、これらの化合物を比較的高い割合で最終製品に移行することができた(殻入りナッツから製造されたヘーゼルナッツミルク)。とりわけ、ナイアシンの場合、殻付きナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクにおいて最高濃度となることがモニタリングされる。
【0094】
抗酸化能および総ポリフェノール含有量の測定結果が表5に列挙されている(平均値n=3、標準偏差≦±10%として)。
【0095】
【表5】
【0096】
総ポリフェノール含有量(TPC)の大きな違いは、異なる収穫年に対して観察された。ロースト手順によってTPC値が大幅に低下したことを観察することができた。抗酸化能(抗酸化値)に関しては、原材料について決定された値は、TPCと同じ傾向を示した。デカンタ分離前に水中で粉砕されたヘーゼルナッツ(粉砕後の懸濁液)と比較して、デカンタ分離後の最終製品では、TPCのわずかな向上が観察された。殻ありヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクは、とりわけ有利な抗酸化値を示した。さらに、デカンタ後の固形物、とりわけローストされていない物質の場合、比較的高い抗酸化値が観察された。
【0097】
要約すると、実施例4~9の評価は、主要構成成分であるタンパク質、脂肪、サッカライドおよび多糖(デンプンおよび不溶性食物繊維)の同様の含有量が、異なる原材料(殻入りヘーゼルナッツ、皮あり非ローストヘーゼルナッツ、皮なしローストヘーゼルナッツ)から製造して得られたすべての製品において測定されることを示している。これとは対照的に、ローストしていない原材料(殻あり、皮あり非ロースト)では、より高い量のビタミン(ビタミンB3、ビタミンE)、ならびにTPCおよび抗酸化物質含有量に関してもより高い値が観測された。これにより、殻入りヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクの場合、一層高い抗酸化値が検出される。アロマ活性な匂い物質に関すると、ローストナッツに基づいて製造されたヘーゼルナッツミルクにおいて、測定されたアロマ活性化合物の一層高い含有量が、測定される。さらに、殻入りヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクは、有益な栄養特性(抗酸化能、ビタミン含有量)を示し、植物をベースとするミルク代替品の製造に殻が全部使用されるという事実により、一層の持続可能であると見なすことができることが示される。ビタミンおよび総ポリフェノールの含有量に関すると、皮あり非ローストヘーゼルナッツから製造されたヘーゼルナッツミルクも同様に有益な栄養特徴を示す。
【0098】
別の一連の実験では、様々な原材料およびプロセスが最終製品に及ぼす影響を分析するために、10種類の食用ナッツドリンクの試料を製造し、コンセンサスプロファイリングに基づく官能分析に供する。実施例10~15では、原材料としてヘーゼルナッツをもっぱら使用した。実施例16および17では、抽出前にそれぞれヘーゼルナッツにバニラおよびコーヒーを加えた一方、実施例18および19では、ローストしていないが殻むきピーナッツおよびアーモンドを唯一の原材料として使用した。試料は、本発明の方法に従って加工し、違いは、以下の表6に示されている。
【0099】
【表6】
【0100】
得られたナッツベースのドリンクは、5人の訓練を受けた専門家のパネルによってコンセンサスプロファイリングによって評価され、「検出できない」(0)から「非常に強い」(5)までの6点の尺度でいくつかの属性を個々に評価した。官能評価には、外観、一般的な味および食感、オルソネーザル匂およびレトロネーザル匂が含まれ、その結果をそれぞれ図4、5および6に示しており、実施例12については、3回の試料評価(すなわち、2回の繰り返し)の平均値、ならびに実施例13および15については、2回の試料評価(すなわち、それぞれ1回の繰り返し)の平均値が示されている。
【0101】
図4は、外観(茶色)、味(苦味)、および食感(粘度、片)に関連する属性の結果を示す。属性の「茶色」は、実施例11の「検出不能」から実施例17の強烈な色まで広がりがある。とりわけ、「ローストした殻入り」試料は、殻むきナッツを加工した試料よりも色が濃い茶色である。ローストされた殻付きヘーゼルナッツカーネルで製造されたヘーゼルナッツドリンクは、他の試料と比較してわずかに強い苦味を示す傾向があった。純粋なヘーゼルナッツドリンクの中で、実施例12は、中程度の渋みを示した一方、他の試料は、この属性のやや弱い発現を示した。食感に関しては、粘度は希釈度に反比例することが示された。
【0102】
図5および6に示されているオルソネーザルおよびレトロネーザル評価の結果は、加工方法の多様さと選択した原材料によって、所望の属性の微調整が可能であることを実証するものである。
【0103】
一般に、この試験は純粋な原材料(非ロースト、殻ありまたは殻なしのローストナッツ)を使用して行い、コーヒー豆およびバニラ莢などの天然添加物を除き、添加物(砂糖、甘味料または香料など)は、加工している間、混合物に添加しなかったことを強調するものである。この背景に対して、試料のプロファイルは、有利なことに調和と見なすことができる。
【0104】
上記の開示を考慮すると、他の多数の特徴、修正および改善が当業者に明白となろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6