(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】工業プラントにおける電力供給装置および電力供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240709BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240709BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240709BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240709BHJP
F27D 11/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J7/34 J
H02J9/06 120
F27D11/00
(21)【出願番号】P 2022570501
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 IT2021050151
(87)【国際公開番号】W WO2021234751
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】102020000011923
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514165990
【氏名又は名称】ダニエリ オートメーション ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モルテーニ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】モルデグリア、アントネロ
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033911(JP,A)
【文献】特表2014-521291(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207609(WO,A1)
【文献】特開2004-096897(JP,A)
【文献】特表2002-538295(JP,A)
【文献】特表2014-504492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0273240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J1/00-1/16
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J9/00
F27B1/00-3/28
F27D7/00-15/02
B21B27/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を処理するための工業用鉄鋼プラント(20)用の電力供給装置であって、
前記プラント(20)は、材料を処理するための1以上のライン(11,21)と、電力網(15)、特に公共電力網(15)に接続されている少なくとも1つの変圧器(14)および前記変圧器(14)の下流に位置する電力供給システム(16)を備える前記装置の電力供給手段(13)によって交流電流で給電される1以上のユーザデバイス(12,17,18,19)と、を備える電力供給装置であって、
前記電力供給手段(13)は、前記電力網(15)によって供給される電力エネルギーに追加して、またはその代替として、材料を処理するための前記1以上のライン(11,21)および前記1以上のユーザデバイス(12,17,18,19)の両方もしくは一方に電力エネルギーを供給することのできる、少なくとも前記電力供給システム(16)に接続される少なくとも1つの代替
エネルギー源(40)も備えることと、
前記装置は、前記電力網(15)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(40)から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、前記1以上のライン(11,21)および前記1以上のユーザデバイス(12,17,18,19)の両方または一方に必要なエネルギーの量とを監視し、少なくともそれぞれの作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、前記電力網(15)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(40)の一方、他方、または両方を選択して、前記電気エネルギーを前記1以上のライン(11、21)および前記ユーザデバイス(12,17,18,19)の両方または一方に供給するように構成される管理ユニット(41)を備えることと、
前記プラント(20)は製鉄所であり、金属材料を溶解するための少なくとも1つのライン(11)と、少なくとも1つの圧延ライン(21)とを備え、前記溶解ライン(11)には少なくとも1つの炉(12)が設けられ、前記圧延ラインは1以上のユーザデバイス(17,18,19)を備えることと、
前記代替エネルギー源(40)が、少なくとも1つの直流電流接続システム(22)によって、前記電力供給システム(16)の中間接続回路(42)に接続された前記炉(12)に接続されていることと、
前記炉(12)の前記電力供給システム(16)が、少なくとも1つの中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変圧器(33)と、前記変圧器(33)に接続されている整流器(34)と、直流電流中間接続回路(42)、すなわちDCリンクによって前記整流器(34)に接続されているコンバータ(35)とを備える複数の電力供給モジュール(32)を備えることと、
前記直流電流接続システム(22)が、前記整流器(34)と前記コンバータ(35)との間の前記中間接続回路(42)において前記電力供給モジュール(32)の各々に接続されていることと、を特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記代替エネルギー源(40)が、少なくとも1つの直流電流接続システム(23)によって、前記圧延ライン(21)の前記1以上のユーザデバイス(17,18,19)に接続されることを特徴とする、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記代替エネルギー源(40)と前記炉(12)との間および前記代替エネルギー源(40)と前記圧延ライン(21)の前記ユーザデバイス(17,18,19)との間にそれぞれ配置される前記直流電流接続システム(22,23)が、少なくとも1つの直流電流共通接続バス(24)に関連付けられることを特徴とする、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記共通バス(24)と前記代替エネルギー源(40)との間に位置付けられる1以上の高周波コンバータ(27)を備えることを特徴とする、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記共通バス(24)と前記直流電流接続システム(22,23)との間に位置付けられる1以上の高周波コンバータ(28)を備えることを特徴とする、請求項
3または
4に記載の装置。
【請求項6】
前記共通バス(24)に電気的に接続されているエネルギー蓄積システム(29)を備えることを特徴とする、請求項
3から
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記蓄積システム(29)が、対応する高周波コンバータ(31)によって前記共通バス(24)に接続される1以上の蓄積デバイス(30)を備えることを特徴とする、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記代替エネルギー源(40)が、直流電流または交流電流によって電気エネルギーを供給することのできる、1以上の再生可能エネルギー源(25)および1以上の非再生可能エネルギー源(26)の両方または一方を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
材料を処理するための1以上のライン(11,21)と、交流電流で給電される1以上のユーザデバイス(12,17,18,19)と、少なくとも1つの請求項1から
8のいずれか一項に記載の電力供給装置と、を備える、材料を処理するための工業用鉄鋼プラント(20)。
【請求項10】
材料を処理するための1以上のライン(11,21)と、電力網(15)に接続されている少なくとも1つの変圧器(14)および前記変圧器(14)の下流に位置する電力供給システム(16)を備える電力供給手段(13)によって交流電流で給電される1以上のユーザデバイス(12,17,18,19)と、を備える材料を処理するための工業用鉄鋼プラント(20)に電気エネルギーを供給する方法であって、
前記方法は、前記電力網とは異なりかつ独立した少なくとも1つの代替エネルギー源(40)によって、前記1以上のライン(11,21)および前記1以上のユーザデバイス(17,18,19)の両方または一方に電気エネルギーを供給することを含む方法であって、
前記電力網(15)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(40)から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、前記1以上のライン(11,21)および前記ユーザデバイス(17,18,19)の両方または一方に必要なエネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、電気エネルギーを前記1以上のライン(11,21)および前記ユーザデバイス(12,17,18,19)の両方または一方に供給するために、前記電力網(15)および前記少なくとも1つの代替エネルギー源(40)の一方、他方または両方を選択すること
と、
前記プラント(20)は製鉄所であり、金属材料を溶解するための少なくとも1つのライン(11)と、少なくとも1つの圧延ライン(21)とを備え、前記溶解ライン(11)には少なくとも1つの炉(12)が設けられ、前記圧延ラインは1以上のユーザデバイス(17,18,19)を備えることと、
前記代替エネルギー源(40)が、少なくとも1つの直流電流接続システム(22)によって、前記電力供給システム(16)の中間接続回路(42)に接続された前記炉(12)に接続されていることと、
前記炉(12)の前記電力供給システム(16)が、少なくとも1つの中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変圧器(33)と、前記変圧器(33)に接続されている整流器(34)と、直流電流中間接続回路(42)、すなわちDCリンクによって前記整流器(34)に接続されているコンバータ(35)とを備える複数の電力供給モジュール(32)を備えることと、
前記直流電流接続システム(22)が、前記整流器(34)と前記コンバータ(35)との間の前記中間接続回路(42)において前記電力供給モジュール(32)の各々に接続されていることと、を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プラントにおける電力供給装置に関する。特に、プラントは、金属材料を処理するための工業プラントとすることができる。この種の工業プラントの例は、金属材料を溶解するための少なくとも1つのラインと、金属材料を圧延するための少なくとも1つのラインとを備える製鉄所である。
【0002】
本発明は、材料を処理するために、工業プラントに電力を供給する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、材料を処理するためのさまざまなプラント、例えば、さまざまなユーザデバイスと材料を処理するためのさまざまなラインとの作動のためにメガワット(MW)程度または数十メガワット程度のエネルギー消費量を要する、金属、プラスチック、廃棄物、ガラス材料、一般に不活性物質またはその他のものを処理するための工業プラントがある。大量のエネルギーを消費するユーザデバイスのいくつかの例は、ポンプ、ファン、吸引装置、混合器、加熱器、コンプレッサ、昇降機、空調装置、加熱炉、水加熱装置、乾燥ステーションまたはその他のものとすることができる。
【0004】
以下の説明は、特に、材料、この場合は金属材料を処理するための工業プラントの例として、製鉄所に言及するが、本明細書は同様に、材料を処理するための任意の工業プラントに言及することができるであろう。
【0005】
知られているように、製鉄所は、通常、少なくとも1つの溶解炉、例えば電気アーク炉または誘導溶解炉から構成されている、金属材料を溶解するための少なくとも1つのラインと、鋳造ラインと、溶解によって得られた金属材料が圧延されるために送られる少なくとも1つの圧延ラインとからなる。通常、溶解ラインには、精錬炉も設けられ、場合によっては、液体金属を真空内で処理するためのステーションが設けられる。
【0006】
圧延ラインは、金属材料の連続鋳造のプロセスから溶解物を受け取り、これをレードルからモールドに移し、さらに、金属材料を、電動圧延ロールが設けられている圧延スタンドに搬送するか堆積床に向けて搬送する、ローラウェイに移す。
【0007】
圧延ラインは、一般に、ローラウェイの下流かつ圧延スタンドの上流に、連続鋳造ラインからまたは外部床から入ってくる金属材料を、圧延する前に均等に加熱するのに適した、1以上の加熱炉、例えば誘導炉を備える。
【0008】
溶解ラインと圧延ラインのどちらにおいても、大量の電気エネルギー(数十メガワット/時程度)を吸収するさまざまなユーザデバイスがあり、例えば、溶解炉および精錬炉、圧延スタンドのロールを駆動する手段、加熱炉、金属材料を搬送するためのローラウェイ、およびその他のものがある。
【0009】
そのため、これらの処理プラントは、電力網に継続的に接続され、三相交流電流の吸収は生産量に応じるので、炉によって生産される溶解材料が多くなるほど、購入しなければならない電気エネルギー量も多くなり、一定しない電気エネルギー供給が電力網に障害を生じさせうるリスクがあり、不利益の発生を避けるためには、経済的な観点から負担の大きい、適切なインダクタによってこれを補償しなければならない。別の欠点は、電気エネルギーの使用は、特に、ある地理的地域においては高価になる可能性があり、または、重大な社会経済的事象の後に高価になる可能性があり、供給コストも相当増大する可能性があることである。
【0010】
そのため、いくつかの製鉄所は、例えば、電力網によって供給される電気エネルギーのコストが比較的低い期間中、例えば夜間に、生産を集中させることを余儀なくされている。
【0011】
さらに、電力網の停電の可能性がある場合に、プラントと生産とを停止する必要があり、その結果、生産性の損失、ひいては生産バッチの引渡しの遅延が生じる。
特許文献1は、特にデータセンターで使用するために、異なる電力供給源の使用に供する電力供給システムおよび方法を説明している。システムは、第1および第2の整流器を備えており、それぞれが電気網および補助電源に接続され、エネルギー蓄積装置が2台の整流器の出力に接続され、インバータが整流器の出力と負荷、またはデータ管理センターとの間に接続されている。このシステムは、異なる電源間のあらゆる移行デバイスをなくすことに供する。
【0012】
特許文献2の文書は、電力網、代替電源および燃料電池システムを備える電力供給システムを説明しており、これらは各コンバータおよびインバータによって負荷に接続されている。
【0013】
特許文献3の文書は、負荷に接続されているいくつかの電力供給源が設けられているハイブリッドパワーシステムを制御する方法および装置を説明している。
特許文献4の文書は、異なる電力源で給電されるモータ用駆動システムを説明している。
【0014】
そのため、現在の技術水準の欠点の少なくとも1つを克服することのできる、材料を処理するためのプラントにおける電力供給装置を完全なものにするニーズがある。
具体的に、本発明の1つの目的は、エネルギー供給コスト、ひいては生産コスト全体を削減するために、電力網とは少なくとも部分的に独立して作動することのできる、材料を処理するためのプラントにおける電力供給装置を提供することである。
【0015】
1つの目的は、また、最も深刻な場合には数日も続く可能性のある、電力網での停電現象による加工プラントまたは処理プラントの運転停止のリスクを低減させることである。
別の目的は、公共電力網からのエネルギーの使用を削減して、この電力網でもたらされる消費量と、起こりうる障害とを低減させることである。
【0016】
別の目的は、電力網からの電気エネルギーの使用を制限することを可能にする、材料を処理するためのプラントに電力を供給する方法を完全なものにすることである。
材料を処理するためのプラントを全日および夜間の両方または一方にわたって作動させることも目的である。
【0017】
本発明によってもたらされる別の便益および利点は、また、公共電力網によるエネルギーの生産が再生可能エネルギー源によって完全には生成されていない場合、CO2排出量を削減することが可能なことである。
【0018】
出願人は、現在の技術水準の欠点を克服し、これらおよびその他の目的および利点を得るために、本発明を考案し、試験し、具現化した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2016/094939号
【文献】米国特許出願公開第2009/0273240号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/273022号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3046201号明細書
【発明の概要】
【0020】
本発明は、独立請求項に記載され、特徴を述べられている。従属請求項は、本発明の他の特徴または主な独創的なアイデアの変形を説明している。
上記目的に従い、本発明は、材料を処理するための工業プラント用の電力供給装置に関し、プラントは、材料を処理するための1以上のラインと、電力網に接続されている少なくとも1つの変圧器および変圧器の下流に位置する電力供給システムを備える電力供給手段によって交流電流で給電される1以上のユーザデバイスとを備える。
【0021】
本発明の一態様によると、電力供給手段は、電力供給システムの上流に設けられて、電力網、特に公共電力網によって供給される電力エネルギーに追加して、またはその代替として、材料を処理するための1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方もしくは一方に電力エネルギーを供給することのできる少なくとも1つの代替電源も備える。
【0022】
この装置および代替エネルギー源のおかげで、電力網とは独立して、プラントの1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方または一方に少なくとも給電し、場合により電力網からラインおよびユーザデバイスの両方または一方を少なくとも一時的に切断することを可能にし、またはいずれの場合も、時間に応じて電力網からのエネルギーの供給を削減し、場合により、エネルギーの供給を比較的高価ではない時間帯に制限することが可能である。
【0023】
さらに、代替エネルギー源の存在は、電力網の不具合または停電がある場合であっても処理プラントが利用できることを可能にする。
このプラントは、非制限的な例として、製鉄所とすることができ、金属材料を溶解するための少なくとも1つのラインと、少なくとも1つの圧延ラインとを備え、溶解ラインには少なくとも1つの炉が設けられ、圧延ラインは1以上のユーザデバイスを備える。
【0024】
本発明の一態様によると、装置は、電力網および少なくとも1つの代替エネルギー源から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方または一方に必要なエネルギーの量とを監視するように構成される管理ユニットを備える。
【0025】
1つの利点は、例えば、少なくとも1つの代替エネルギー源からのエネルギーの利用可能性が低くなる場合、または公共電力網に停電が生じる場合でも、高電力負荷の運転を維持することができることである。
【0026】
有利なことに、管理ユニットは、プラントのエネルギー需要を補うために、電力網によって供給されるエネルギーの利用可能性、エネルギーコスト、および少なくとも1つの代替エネルギー源から利用可能なエネルギーとの統合の程度、のうちの1以上のパラメータを検出することができる。
【0027】
このように、それぞれの場合において、最も適切な供給エネルギー源、すなわち、電力網によって供給されるエネルギーか、または少なくとも1つの代替エネルギー源によって供給されるエネルギーかを、エネルギーコストにも基づいて選ぶことが可能である。そのため、これにより、エネルギー不足またはその過剰なコストの場合に、生産の低下または処理プラントの運転停止をしなければならないことが防止される。
【0028】
本発明の別の態様によると、代替エネルギー源は、少なくとも1つの直流電流接続システムによって炉に接続することができる。
具体的には、直流電流接続システムは、炉に向かう電流の方向に対して電力供給システムの上流に接続される。
【0029】
いくつかの実施形態によると、電力供給システムは、変圧器と炉との間に接続されており、少なくとも1つの中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変圧器と、変圧器に接続されている整流器と、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングすることができるとともにコンバータへの電力供給の向上した信頼性および質を保証することのできる、直流電流中間接続回路、例えば、いわゆる「DCリンク」によって整流器に接続されているコンバータとを備える。
【0030】
いくつかの実施形態によると、代替エネルギー源は、少なくとも1つの直流電流接続システムによって、圧延ラインの1以上のユーザデバイスに接続することができる。
代替エネルギー源と溶解炉との間および代替エネルギー源と圧延ラインのユーザデバイスとの間にそれぞれ配置することのできる直流電流接続システムは、少なくとも1つの直流電流共通接続バスに関連付けることができる。
【0031】
本装置は、共通バスと代替エネルギー源との間に位置付けられる1以上の高周波コンバータを備えることができる。
本装置は、共通バスと直流電流接続システムとの間に位置付けられる1以上の高周波コンバータを備えることができる。
【0032】
さらに、いくつかの実施形態において、本装置は、共通バスに電気的に接続されているエネルギー蓄積システムを備えることができる。
蓄積システムは、対応する高周波コンバータによって共通バスに接続される1以上の蓄積デバイスを備えることができる。
【0033】
本発明の他の態様によると、炉の電力供給システムは、少なくとも1つの中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変圧器と、変圧器に接続されている整流器と、整流器に接続されているコンバータとを備える複数の電力供給モジュールを備えることができ、直流電流接続システムは、整流器とコンバータとの間で電力供給モジュールの各々に接続されている。
【0034】
代替エネルギー源は、直流電流または交流電流の電気エネルギーを供給することのできる、1以上の再生可能エネルギー源および1以上の非再生可能エネルギー源の両方または一方を備えることができる。
【0035】
ここで説明されるいくつかの実施形態は、1以上のユーザデバイスをそれぞれ備える、溶解ラインおよび/または少なくとも1つの圧延ラインのうちの少なくとも一方を含む、材料を処理するための1以上のラインと、本発明による少なくとも1つの電力供給装置とを備える、工業プラント、特に製鉄所にも関する。
【0036】
本発明は、上で定義したような金属材料を処理するためのプラントにおいて電気エネルギーを供給する方法にも関する。方法は、電力網とは異なりかつ独立した少なくとも1つの代替エネルギー源によって、1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方または一方に電気エネルギーを供給することに供する。
【0037】
本方法は、電力網および少なくとも1つの代替エネルギー源から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方または一方に必要なエネルギーの量とを検出および/または監視し、少なくとも各作動状態および全体的なエネルギーコストに応じて、電気エネルギーを1以上のラインおよび1以上のユーザデバイスの両方または一方に供給するために、電力網および少なくとも1つの代替エネルギー源の一方、他方または両方を選択することに供する。
【0038】
本発明のこれらおよびその他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して非制限的な例として挙げる以下のいくつかの実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明に係る、材料を処理するためのプラントにおける電力供給装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
ここで、本発明の考えられる一実施形態を詳細に述べるが、そのうち製鉄所に適用される一実施例を添付の図面に示している。この実施例は、本発明の非制限的な例として提供しており、本発明の制限と理解してはならない。
【0041】
図1は、本発明による、材料を処理するための工業プラント20用の電力供給装置10を模式的に示す。
プラント20は、装置10の電力供給手段13によって交流電流で給電される、材料を処理するための1以上のライン11,21と1以上のユーザデバイス12,17,18,19とを備え、電力供給手段13は、電力網15に接続されている少なくとも1つの変圧器14と、変圧器14の下流に配置されている電力供給システム16とを備える。
【0042】
本装置10において、電力供給手段13は、電力供給システム16の上流に設けられて、電力網15、特に公共電力網15によって供給される電気エネルギーに追加して、またはその代替として、材料を処理するための1以上のライン11,21および1以上のユーザデバイス12,17,18,19の両方または一方に電力エネルギーを供給することのできる、少なくとも1つの代替エネルギー源40も備える。
【0043】
プラント20は、非制限的な例として、金属材料を処理するための工業プラント、例えば製鉄所とすることができるであろう。
プラントは、金属材料を溶解するための少なくとも1つのライン11と、溶解ライン11によって生産された金属材料を圧延するための少なくとも1つの圧延ライン21とを備えることができる。溶解ライン11には、少なくとも1つのユーザデバイス、特に金属材料を溶解するための炉12が設けられている。金属材料を圧延するためのライン21には、電力供給手段13によって電力供給される1以上のユーザデバイス17,18,19が設けられている。
【0044】
溶解ライン11によって生産される溶解金属材料は、例えば連続鋳造プロセスによって、圧延ライン21に搬送することができる。
代替エネルギー源40は、特に炉12に向かう電流の方向において電力供給システム16の上流に配置されている、電力供給システム16に接続されている少なくとも1つの直流電流接続システム22によって、溶解炉12、例えば電気アーク炉または誘導溶解炉に接続することができる。直流電流接続システム22は、例えば、いわゆるDCリンクまたは同様なものとすることができる。
【0045】
代替エネルギー源40は、少なくとも1つの直流電流接続システム23によって、圧延ライン21の1以上のユーザデバイス17,18,19にも接続することができる。直流電流接続システム23は、例えば、いわゆるDCリンクまたは同様なものとすることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、代替エネルギー源40と溶解炉12との間および代替エネルギー源40と圧延ライン21のユーザデバイス17,18,19との間にそれぞれ配置されているこれらの直流電流接続システム22および23は、少なくとも1つの共通直流電流接続ラインまたはバス24に関連付けられている。
【0047】
代替エネルギー源40は、直流電流または交流電流の電気エネルギーを供給することのできる、1以上の再生可能エネルギー源25および1以上の非再生可能エネルギー源26の両方または一方を備えることができる。
【0048】
再生可能エネルギー源25に関しては、この状況において、気候/環境パラメータ(太陽、風、水文地質学的地形等)、また転換によって取得可能な他の形態のエネルギー(例えば、バイオマス、水素、植物油等)の利用可能性の両方に関連する、さまざまな技術を供することができる。そのため、これらの再生可能エネルギー源25は、例えば水力発電所、風力発電所、太陽光発電所またはその他を備えることができる。
【0049】
代替エネルギー源40は、例えば石油、石炭またはガスなどの化石燃料の燃焼に由来する非再生可能エネルギー源26とすることができる。
採用する解決策に関係なく、設けられる代替エネルギー源40によって生産されるエネルギーを最大限活用するために、今後使用することが決定されているあらゆる種類の再生可能エネルギー源25および/または非再生可能エネルギー源26が接続される共通バス24を作ることが好ましく、共通バス24に接続されているさまざまな直流電流接続システム22および23は、そこから電力を引き出すことができる。
【0050】
そのため、少なくとも1つの共通バス24を設けることは、いくつかの直流電流電力供給システムを実質的に1つのコレクタに接続することを可能にし、そのことが、電力供給電圧に起こりうる急激な変動およびその他から生じる現象を低減させるため、負荷変動を補償するのにも有利となりうる。
【0051】
さまざまな再生可能または非再生可能エネルギー源25,26によって共有される共通バス24に流れる直流電流は、その後、分配されて、最終使用者の現場で(したがって、例えば、炉12、ユーザデバイス17,18,19またはその他で)交流電流に適切に再変換される。
【0052】
共通バス24は、直流電圧の公称値、および整流された交流電力網の変動に関連する、公称値に対する一定の変動範囲で実質的に規定される。
この値は、共通バス24に接続されているすべての負荷、例えば、炉12、ユーザデバイス17,18,19またはその他にとって適切ではないことがあり、したがって、そうした場合には、共通バス24の電圧の値に、異なる既存の直流電流接続システム22,23の直流電圧を適合させる必要がある。
【0053】
ユーザデバイス17は、例えば、圧延ライン21に沿って金属材料を加熱するための誘導炉とすることができる。他方で、ユーザデバイス18および19は、例えば、金属材料を圧延するために圧延スタンドのローラを駆動するための手段とすることができる。ユーザデバイスは、他の要素、例えば、圧延される金属生成物が流れ、圧延ライン21に通常設けられているローラウェイに関連付けられている要素、またはその他のものも備えることができるであろう。
【0054】
電圧の適合を可能にするために、共通バス24と代替エネルギー源40との間に位置付けられる、1以上の高周波コンバータ27、特にDC/DCコンバータが設けられる。
高周波とは、切換デバイスの切換周波数を意味し、コンバータ27は昇圧/降圧タイプとすることができる。すなわち、例えば、太陽光または風力などの再生可能エネルギー源25によって生成される入力側の直流電流電圧は、共通バス24の電圧に基づいて、コンバータ27からの出力側で上昇または下降させられる。
【0055】
使用されるコンバータ27の図は、バックステージと、ブーストステージと、入力と出力との間のガルバニック絶縁を保証するHF(High Frequency:高周波数)変圧器とを有することができるであろう。同じ共通バス24に接続されている多数のコンバータ27があるため、ガルバニック絶縁は、あるコンバータが故障した場合にその故障がユーザコンポーネントまたはユーザデバイス(例えば、溶解ライン11の炉12)に伝播して該ユーザコンポーネントまたはユーザデバイスをブロックするのを防ぐために必要である可能性がある。
【0056】
共通バス24を、プラント20に存在する負荷に接続されている異なる直流電流接続システム22,23に接続するために、同じ種類の変換を施すことができる。
そのため、本装置10は、1以上の高周波コンバータ28を備えることができ、その場合、共通バス24と直流電流接続システム22,23との間に位置付けられているコンバータ27についてすでに説明した理由で、ガルバニック絶縁が必要である。
【0057】
本装置10は、共通バス24に電気的に接続されているエネルギー蓄積システム29を備えることができる。
蓄積システム29は、対応する高周波コンバータ31によって、共通バス24に接続されている1以上の蓄積デバイス30を備えることができる。
【0058】
蓄積システム29は、例えば、使用される再生可能エネルギー源25、例えば、太陽光発電所または風力発電所に典型的な不連続性の補償において有用となることができる。
蓄積システム29は、静的にすることができ、そのため、バッテリ、燃料電池、スーパーキャパシタまたはその他などの蓄積デバイス30を備える。代わりに、または組み合わせて、蓄積システム29は、動的にすることができ、そのため、FES(Flywheel Energy Accumulation:フライホイールエネルギー蓄積)バッテリ、パーム油などの再生可能燃料によって給電されるターボジェネレータ、小型水力発電用のタービンまたはその他などの蓄積デバイス30を備える。蓄積システム29は、例えば、電気分解、ガス圧縮、水素燃料電池またはその他によって水素を生成するシステムにより、化学的なものにすることができる。
【0059】
例えば、炉12は常時稼働しているものではないため、稼働していない期間中のエネルギーの余剰を、上記説明した蓄積システム29のモードの1つによって蓄積することができる。
【0060】
蓄積システム29が装置10に設けられている場合、コンバータ27,28は双方向タイプとしなければならず、すなわち、エネルギーを負荷に搬送するとともに、これが最低電圧閾値未満になるときに蓄積システム29を充電することもできなければならない。蓄積バッテリが使用される場合、BMS(Battery Monitoring System:バッテリモニタリングシステム)管理システムを蓄積システムに統合することができる。
【0061】
他方で、例えば、太陽光発電所を再生可能エネルギー源25として使用する場合、コンバータ27、すなわち、再生可能エネルギー源25の側に配置されるコンバータは、最適な作動点を常に探しながらエネルギーの生産を最適化しなければならない。
【0062】
別のものではなくある蓄積システムを選ぶことは、用途のタイプ次第であり、低電力だが長期間、ではなく高電力を短期間必要とする、したがってはるかに大きいエネルギーを必要とするという事実に基づく。
【0063】
後者の事例では、通例、スーパーキャパシタが適用されるがそれだけではなく、前者の事例では、通例、フライホイールバッテリ、バッテリまたはその他の高エネルギー密度の蓄積システムが適用されるがそれだけではない。異なる解決策の組み合わせを必要とする用途もあり、その場合、短期間にわたる高電力の送電と、さらに、動作サイクル中はそれよりも明らかに低い平均エネルギー値と、の両方を有することが可能である。
【0064】
バッテリに関して、電力およびエネルギー密度は、採用する技術、例えば、AGM、Liイオン、Na‐Ni、NaCl‐Naまたはその他に応じて大幅に変えることができる。
【0065】
天然洞窟内でのガス圧縮、集中的な太陽電池、またはその他など、追加の蓄積システムを使用することができる。
溶解ライン11に関して、炉12の電力供給システム16は、中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変圧器33と、変圧器33に接続されている整流器34と、電気エネルギーを蓄積およびフィルタリングすることができるとともに、コンバータへの電力供給の向上した信頼性および質を保証することのできる、直流電流中間接続回路42(いわゆるDCリンク)によって整流器34に接続されているコンバータ35と、を備える少なくとも1つの電力供給モジュール32を備えることができる。中間接続回路42は、負荷すなわち炉12と電力網15との間に分離を生み出すことのできる1以上のコンデンサデバイスを備えることができる。
【0066】
いくつかの実施形態によると、電力供給システム16は、複数の電力供給モジュール32を備えることができる。電力供給モジュール32の各々は、少なくとも1つの中電圧/中電圧変圧器または中電圧/低電圧変換器33と、変圧器33に接続されている整流器34と、各中間接続回路42によって整流器34に接続されているコンバータ35とを備える。
【0067】
考えられる1つの解決策によると、整流器34は、例えば、ダイオード、SCR(Silicon Controlled Rectifier:シリコン制御整流器)、GTO(Gate Turn‐Off thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、IGCT(Integrated Gate‐Commutated Thyristor:集積化ゲート転流型サイリスタ)、MCT(Metal-Oxide Semiconductor Controlled Thyristor:金属酸化膜半導体制御サイリスタ)、BJT(Bipolar Junction Transistor:バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal‐Oxide Semiconductor Field‐Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)およびIGBT(Insulated‐Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、SiC(Silicon Carbide Semiconductor:炭化ケイ素半導体)、GaN(Gallium Nitride Semiconductor:窒化ガリウム半導体)を含む群から選択されるデバイスを備える。
【0068】
考えられる1つの解決策によると、コンバータ35は、例えば、SCR(シリコン制御整流器)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、IGCT(集積化ゲート転流型サイリスタ)、MCT(金属酸化膜半導体制御サイリスタ)、BJT(バイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)およびIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、SiC(炭化ケイ素半導体)、GaN(窒化ガリウム半導体)を含む群から選択されるデバイスを備える。
【0069】
直流電流接続システム22は、整流器34とコンバータ35との間で電力供給モジュール32のそれぞれに、特に各中間接続回路42に接続されている。
溶解炉12の上流には、高電流回路36も設けられており、これは、考えられる電気的断線のための断路器37の後に配置することができる。
【0070】
述べたように、溶解炉12は、複数の電極38を備える電気アーク炉とすることができ、その各々には対応する電力供給モジュール32によって電力供給することができる。溶解する金属材料Mは、対応する容器39またはシェルの内部に収容することができる。電極38は、金属材料Mに電気アークを発生させて、該金属材料Mを溶解するように構成される。
【0071】
本装置10は、電力網15および少なくとも1つの代替エネルギー源40から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量、および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、1以上のライン11,21および1以上のユーザデバイス17,18,19の両方または一方、例えば、溶解ライン11および圧延ライン21の両方または一方に必要なエネルギー量とを監視し、少なくとも各作動状態と全体的なエネルギーコストとに応じて、溶解ライン11および圧延ライン21の両方または一方に電気エネルギーを供給するために、電力網15および少なくとも1つの代替エネルギー源40の一方、他方または両方を選択するように構成される管理ユニット41も備えることができる。
【0072】
蓄積システム29は、管理ユニット41にも接続することができる。特に、さまざまな蓄積デバイス30を管理ユニット41に接続することができる。
ここで説明されるいくつかの実施形態は、1以上のユーザデバイス12,17,18,19をそれぞれ備える、溶解ライン11および/または少なくとも1つの圧延ライン21のうちの少なくとも一方を含む、材料を処理するための1以上のラインと、本発明による少なくとも1つの電力供給装置10とを備える、工業プラント20、特に製鉄所にも関する。
【0073】
実質的に、電気エネルギーを供給する本方法は、電力網15とは異なりかつ独立している少なくとも1つの代替エネルギー源40によって、1以上のライン11,21および1以上のユーザデバイス17,18,19の両方または一方に電気エネルギーを供給することに供する。
【0074】
本方法は、電力網15および少なくとも1つの代替エネルギー源40から利用可能な電気エネルギーの作動状態、質、量および/またはコスト、のうちの1以上のパラメータと、1以上のライン11,21およびユーザデバイス17,18,19の両方または一方に必要なエネルギー量とを検出および/または監視し、少なくとも、各作動状態と全体的なエネルギーコストとに応じて、1以上のライン11,21およびユーザデバイス17,18,19の両方または一方に電気エネルギーを供給するために、電力網15および少なくとも1つの代替エネルギー源40の一方、他方または両方を選択することに供することもできる。
【0075】
請求項によって定義される本発明の分野および範囲を逸脱することなく、ここまでに説明してきた、材料を処理するためのプラント用の電力供給装置に、または電気エネルギーを供給する方法に、部品またはステップの変更および追加または変更もしくは追加を行えることは明らかである。
【0076】
以下の請求項において、括弧内の参照符号は、読みやすさの向上がその唯一の目的であり、特定の請求項で請求される保護の分野に対する制限的な要因と考えてはならない。