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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240709BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240709BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20240709BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20240709BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
H04N7/18 D
B61L25/02 Z
B61B1/02
B61D19/02 Q
G08B25/00 510M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022571395
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2021046696
(87)【国際公開番号】W WO2022138479
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2020212932
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】直井 寛典
(72)【発明者】
【氏名】佐々 敦
(72)【発明者】
【氏名】松川 朋樹
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180311(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180310(WO,A1)
【文献】特開2020-050116(JP,A)
【文献】特開2019-041207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B61L 1/00-99/00
B61B 1/00-15/00
B61D 19/02
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の各車両に取り付けられたカメラと、
前記カメラの映像を表示する表示装置と、
前記車両の近傍で発生した危険を検知する危険検知処理を行う解析装置とを備え、
前記表示装置は、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び/又は出線時は前記カメラの映像の表示をしないが、前記入線時及び/又は前記出線時でも前記危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示し、
前記列車の各車両は、前記カメラとして、列車進行方向を向いた第1のカメラと、列車進行方向とは逆方向を向いた第2のカメラとを有し、
前記解析装置は、前記入線時は前記第1のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行い、前記出線時は前記第2のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行うことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記解析装置は、前記入線時及び/又は前記出線時に、前記プラットホームの区間に位置する車両のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行うことを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項に記載の監視システムにおいて、
前記表示装置は、前記入線時及び/又は前記出線時に前記危険検知処理によって危険が検知された場合に、危険が検知された車両の前記第1のカメラ及び前記第2のカメラの各映像を表示することを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記カメラは、撮影した映像を前記表示装置及び前記解析装置に送信し、
前記解析装置は、前記カメラから受信した映像に基づいて前記危険検知処理を行い、
前記表示装置は、前記解析装置による前記危険検知処理の結果に基づいて、前記カメラから受信した映像の表示を制御することを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記列車の各車両に前記解析装置が搭載され、
前記解析装置は、自身と同じ車両に搭載されたカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行うことを特徴とする監視システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の監視システムにおいて、
前記車両の左右両側に前記カメラが取り付けられ、
前記解析装置は、前記プラットホームでドアが開扉する側のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行うことを特徴とする監視システム。
【請求項7】
列車の各車両に取り付けられたカメラと、前記カメラの映像を表示する表示装置と、前記車両の近傍で発生した危険を検知する危険検知処理を行う解析装置とを用いた監視方法において、
前記表示装置は、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び/又は出線時は前記カメラの映像の表示をしないが、前記入線時及び/又は前記出線時でも前記危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示し、
前記列車の各車両は、前記カメラとして、列車進行方向を向いた第1のカメラと、列車進行方向とは逆方向を向いた第2のカメラとを有し、
前記解析装置は、前記入線時は前記第1のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行い、前記出線時は前記第2のカメラの映像に基づいて前記危険検知処理を行うことを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の各車両に取り付けられたカメラを用いた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の運行において、利用客が少なく、運行する車両編成が短い路線には、運転士一人によるワンマン運転が採用されている。労働人口の減少に伴う人口動態から鉄道員自体も減少するトレンドの中で、各鉄道事業者はワンマン運転を適用する路線や編成車両数を増やす方針を採っている。しかしながら、編成車両数を増やすと運転士一人による安全確認作業の負担が重くなり、見落としによる事故が発生しやすくなることが懸念される。
【0003】
従来、ワンマン運転を支援するために、各駅のプラットホームに設置したカメラ及びモニタ、あるいはミラーを用いて乗客の乗降状況を確認するシステムが利用されている。また、列車側にカメラ及びモニタを設置する車側カメラシステムもあり、インフラ設備に対する保守が不要なことから近年広まってきている。例えば、特許文献1には、閉扉に異常が検出されたドアの様子を車内モニタで映像確認できるようにした監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-92136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1には、従来例に係る監視システムの構成例を示してある。図1において、列車の各車両10-1~10-4は、それぞれ、列車進行方向を向いたカメラ11(A)と、これとは逆方向を向いたカメラ11(B)とを車体両側に有すると共に、列車内ネットワークを構築するための中継装置12を備えている。また、列車両端の車両10-1,10-4にある運転台には、各車両のカメラ映像を表示する2台の表示装置13(A),13(B)と、車両側又は上位システムから得られる車両情報15に基づいて表示装置13の表示ON/OFFなどを制御する制御装置14とが搭載されている。車両情報15としては、ドア開扉信号や速度検知信号などが挙げられる。ドア開扉信号は、ドアが開扉されたことを示す信号であり、開扉された側(本明細書では、列車の進行方向に対して左側を山側、右側を海側と表現する。)の情報も含まれる。速度検知信号は、列車の速度が所定値(例えば、5kph)以上になったことを示す信号である。
【0006】
列車の走行中は表示装置13によるカメラ映像の表示が停止されており、列車が駅に停車した後、ドア開扉操作が行われてドア開扉信号がONになったタイミングで、開扉された側のカメラ映像の表示が開始される。運転士は、乗客の乗降を表示装置13により確認した後にドア閉扉操作を行い、特に問題なければ列車の走行を開始する。その後、速度検知信号がONになったタイミングで、表示装置13によるカメラ映像の表示が停止される。つまり、カメラ映像は運転の妨げになるので、列車の走行時には基本的に表示装置13に何も表示されないようにする。
【0007】
駅プラットホームでのドア開閉時には、開扉した側にある2台のカメラ11(A),11(B)のうち、列車進行方向とは逆方向を向いたカメラ映像11(B)を表示装置13に表示する。運転台には表示装置13(A),13(B)の2台しかないため、それらの表示領域を分割して全車両10-1~10-4のカメラ映像を一括で表示する。図1の列車は4両編成なので表示装置1台あたり2分割すればよく、6両編成であれば3分割すればよい。現在は、ワンマン運転は最大5両編成までしか許容されていないので、最大分割は3分割である。ここで、列車進行方向とは逆方向を向いたカメラ映像のみを表示するのは、表示装置13の解像度やサイズに限界があるためである。ワンマン運行の対象となる編成車両数が増加する場合、表示領域をより多く分割させることが考えられるが、カメラ映像の表示サイズが小さくなってしまうので、見落としの増加が懸念される。
【0008】
従来方式では、ドア開扉信号ONから速度検知信号ONまでの期間のみ、表示装置13にカメラ映像が表示される。しかしながら、上記以外の期間の事故、例えば、ドア開扉前のプラットホーム入線時に乗客が車両に接触する事故や、ドア閉扉時にドアに挟まれた乗客がそのまま引き摺られる事故などが発生する可能性もあるため、列車走行時にも安全確認を実施することが望ましい。ツーマン運転では実際に、プラットホーム入線時や出線時に車掌がプラットホーム上の安全の確認を行っている。しかしながら、ワンマン運転の運転士は、列車の走行時は前方の線路やプラットホームの状態の安全確認、力行、ブレーキ操作といった複数の業務を行う必要があるため、列車走行中に複数のカメラ映像を見て安全確認を行うのは負担が大きい。
【0009】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、列車走行中における運転士の業務負担の増大を抑えつつ、危険が生じた場合に速やかに運転士が把握することが可能な監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る監視システムは以下のように構成される。
すなわち、本発明に係る監視システムは、列車の各車両に取り付けられたカメラと、カメラの映像を表示する表示装置と、車両の近傍で発生した危険を検知する危険検知処理を行う解析装置とを備え、表示装置は、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び/又は出線時はカメラの映像の表示をしないが、入線時及び/又は出線時でも危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示することを特徴とする。
【0011】
ここで、解析装置は、入線時及び/又は出線時に、プラットホームの区間に位置する車両のカメラの映像に基づいて危険検知処理を行うようにしてもよい。
【0012】
また、列車の各車両は、列車進行方向を向いた第1のカメラと、列車進行方向とは逆方向を向いた第2のカメラとを有し、解析装置は、入線時は第1のカメラの映像に基づいて危険検知処理を行い、出線時は第2のカメラの映像に基づいて危険検知処理を行うようにしてもよい。
【0013】
また、表示装置は、入線時及び/又は出線時に危険検知処理によって危険が検知された場合に、危険が検知された車両の第1のカメラ及び第2のカメラの各映像を表示するようにしてもよい。
【0014】
また、カメラは、撮影した映像を表示装置及び解析装置に送信し、解析装置は、カメラから受信した映像に基づいて危険検知処理を行い、表示装置は、解析装置による危険検知処理の結果に基づいて、カメラから受信した映像の表示を制御するようにしてもよい。
【0015】
また、列車の各車両に解析装置が搭載され、解析装置は、自身と同じ車両に搭載されたカメラの映像に基づいて危険検知処理を行うようにしてもよい。
【0016】
また、車両の左右両側にカメラが取り付けられ、解析装置は、プラットホームでドアが開扉する側のカメラの映像に基づいて危険検知処理を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、列車走行中における運転士の業務負担の増大を抑えつつ、危険が生じた場合に速やかに運転士が把握することが可能な監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来例に係る監視システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示す図である。
図3A】危険が検知されたカメラ映像の表示を強調する例を示す図である。
図3B】危険が検知されたカメラ映像の表示を強調する例を示す図である。
図4】プラットホーム入線時の動作について説明する図である。
図5】プラットホーム入線時の動作について説明する図である。
図6】駅停車時の動作について説明する図である。
図7A】複数のカメラ映像を分割表示する例を示す図である。
図7B】複数のカメラ映像を分割表示する例を示す図である。
図8】プラットホーム出線時の動作について説明する図である。
図9】プラットホーム出線時の動作について説明する図である。
図10】プラットホーム入線から出線までの処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示してある。図2において、列車の各車両20-1~20-4は、それぞれ、列車進行方向を向いたカメラ21(A)と、これとは逆方向を向いたカメラ21(B)とを車体両側に有すると共に、列車内ネットワークを構築するための中継装置22を備えている。また、列車両端の車両20-1,20-4にある運転台には、各車両のカメラ映像を表示する2台の表示装置23(A),23(B)と、車両側又は上位システムから得られる車両情報25に基づいて表示装置23の表示ON/OFFなどを制御する制御装置24とが搭載されている。車両情報25としては、従来例と同様に、ドア開扉信号や速度検知信号などが挙げられる。本例は4両編成の列車となっているが、編成車両数は任意である。また、本例では先頭車両20-1の表示装置23のみを稼働させるが、末尾車両20-4の表示装置23も追加で稼働させても構わない。
【0020】
更に、本例の監視システムでは、車両20-1~20-4の各々に、その車両のカメラ映像を解析する解析装置26が搭載されている。解析装置26は、自身の車両がプラットホームの区間に位置する場合に、自身の車両のカメラ映像を解析して危険検知処理を行い、危険を検知した場合には表示装置23に危険検知信号を表示装置23に送信する。危険検知処理では、例えば、ディープラーニング技術を用いて画像内のどの座標に人物や異物などの物体が存在するかを判定し、その物体の位置と車両側面との位置関係に基づいて危険物か否かを判定する。画像内における車両側面は、事前情報として設定しておいてもよいし、ディープラーニングにより認識するようにしてもよい。
【0021】
表示装置23は通常、列車が駅に停車中の場合に各車両20-1~20-4のカメラ映像を分割表示するので、運転士は乗客の安全を映像で確認することができる。一方、列車の走行中(駅のプラットホームに対する列車の入線時や出線時を含む)は、運転の妨げにならないように基本的にカメラ表示が停止されるが、表示装置23が解析装置26から危険検知信号を受信した場合には、カメラ映像を例外的に表示して危険の発生を運転士に報せる。このとき、図3Aに示すように、危険が検知されたカメラ映像の周囲を赤枠31で囲んだり、図3Bに示すように、カメラ映像内の危険が検知された範囲を赤枠32で囲んだりして強調表示することで、危険の発生を運転士に分かり易く報せることが好ましい。
【0022】
ここで、カメラ映像の表示を行う際に、解析装置26で再エンコードした映像を扱うとなると、撮像から映像表示までの遅延が大きくなってしまう。これは、リアルタイム性が要求される危険検知には好ましくない。そこで、各カメラ21は、表示用の映像を表示装置23に直接伝送する。また、カメラ21は、これと同時に自車両の解析装置26に解析用の映像を伝送する。解析装置26は、解析用の映像に基づいて危険検知処理を行い、危険が検知されたカメラ映像の識別情報や映像内の座標情報など、必要最小限の情報を含む危険検知信号を表示装置23に送信する。表示装置23は、解析装置26からの危険検知信号に基づいて、カメラ映像の表示を制御する。これにより、危険の発生を速やかに検知し、その映像をリアルタイムに運転士に確認させることが可能となる。
【0023】
以下、本システムのより詳細な動作について、プラットホーム入線時、駅停車時、プラットホーム出線時の各場面に分けて説明する。
【0024】
[プラットホーム入線時]
列車が駅のプラットホームに入線する際、運転士のブレーキ操作を邪魔しないようにカメラ映像の表示は原則行わない。つまり、プラットホーム入線前の段階では表示装置23によるカメラ映像の表示が停止されている。また、各車両の解析装置26による危険検知処理も停止されている。そして、プラットホームに入線した車両の順に、各車両の解析装置26が、自車両のカメラ映像に基づく危険検知処理を開始する(図4参照)。これは、プラットホーム入線前に危険検知処理を開始してしまうと、プラットホームの外にある物体を誤検知してしまう可能性が想定されるためである。
【0025】
プラットホームへの入線は、例えば、“https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_21/Tech-21-21-26.pdf”に記載の超音波で検知する方法や、車両のキロ程から演算する方法などがある。また、プラットホームを検知するためのホーム検知装置を先頭車両20-1にのみ設けておき、後続する各車両20-2~20-4のプラットホームへの入線は、先頭車両のプラットホーム入線時点からの経過時間や移動距離などにより判定するようにしてもよい。また、GPS(Global Positioning System)などの他の技術を用いて各車両のプラットホームへの入線を検知しても構わず、その手法は問わない。
【0026】
図4の例では、先頭の車両20-1がプラットホームに入線しているので、車両20-1の解析装置26が、車両20-1のカメラ映像に基づく危険検知処理を開始する。解析装置26の処理能力が十分でない場合、処理対象のカメラ映像は、列車進行方向を撮影したカメラ21(A)の映像を標準とする。これは、列車進行方向を向いたカメラ21(A)の映像の方が、逆方向を向いたカメラ21(B)の映像よりも危険を素早く検知できるためである。
【0027】
また、処理対象のカメラ映像は、駅でドアを開扉する側のカメラ映像を標準とする。山側又は海側のどちらにプラットホームがあるかは、例えば、事前にデータベース登録しておくことで容易に判断できる。また、別の例として、ホーム検知装置で判定するようにしてもよいし、カメラ映像の解析により判定(例えば、標識、プラットホームの段差、点字ブロックなどの所定オブジェクトを検出できた側にプラットホームがあると判定)してもよい。また、他の手法で山側又は海側のどちらにプラットホームがあるかを判定しても構わず、その手法は問わない。図4の例では、山側ホーム及び海側ホームの両方のドアが開扉するので、車体両側の列車進行方向のカメラ映像に対して危険検知処理が行われる。
【0028】
危険検知処理の結果、車両への乗客接近などの危険が検知された場合には、解析装置26は表示装置23に危険検知信号を送信する。表示装置23は、解析装置26から受信した危険検知信号に基づいて、危険が検知された車両のカメラ映像を表示する(図5参照)。表示対象のカメラ映像は、危険が検知されたカメラ映像と、これに対向する撮影方向のカメラ映像である。すなわち、列車進行方向を向いたカメラ21(A)の映像が表示装置23(A)に表示されると共に、これとは逆方向を向いたカメラ21(B)の映像が表示装置23(B)に表示される。これは、危険が検知されたカメラ映像のみを表示する構成だと、そのカメラが危険発生位置を通過した後は、運転士は状況を何も確認できなくなるためである。
【0029】
ここで、危険と判定された人物や異物などの危険物は、列車の走行に伴って移動(つまり、列車に引き摺られて移動)する移動物と、移動しない固定物とに大別することができる。危険物が固定物の場合は、列車の走行に伴って危険検知する解析装置26(車両)が切り替わっていくので、表示装置23による表示対象のカメラ映像も順に切り替わることになる。一方、危険物が移動物の場合は、同じ解析装置26(車両)で危険検知され続けるので、表示装置23による表示対象のカメラ映像は基本的に切り替わらない。これは、後述するプラットホーム出線時においても同様である。
【0030】
[駅停車時]
列車が駅に停車した後、ドア開扉操作が行われてドア開扉信号がONになったタイミングで、全車両20-1~20-4のカメラ映像の表示が開始される(図6参照)。駅停車時は、ドアが開扉された側で且つ列車進行方向とは逆方向を向いた全車両のカメラ21(B)の映像が表示装置23に分割表示される。列車進行方向とは逆方向のカメラ21(B)の映像を表示するのは、列車進行方向のカメラ21(A)よりも汚れが付きにくく、映像の視認性が良いためである。
【0031】
駅に列車が停車している間は、プラットホーム入線時とは異なり、列車進行方向とは逆方向のカメラ21(B)の映像に対して危険検知処理が行われる。危険検知処理の結果、危険が検知された場合には、解析装置26は表示装置23に危険検知信号を送信する。表示装置23は、解析装置26から受信した危険検知信号に基づいて、危険が検知されたカメラ映像の表示を強調する。このとき、編成車両数が少ない場合は、分割表示を継続しつつ、危険が検知されたカメラ映像を赤枠で囲んで表示してもよい(図7A参照)。また、編成車両数が多い場合は、危険が検知されたカメラ映像を表示装置23(A)に大きく表示し、他方の表示装置23(B)を分割表示に使用してもよい(図7B参照)。
【0032】
なお、山側ホーム及び海側ホームの両方のドアが開扉される場合には、2台の表示装置23では表示領域が不足する可能性があるため、分割表示の手法を工夫することが望ましい。一例として、閉扉操作する側の順に分割表示を切り替える手法を用いてもよい。すなわち、山側ホーム、海側ホームの順にドアを閉扉する場合には、当初は山側ホームのカメラ映像を分割表示し、山側ホームのドアの閉扉後に海側ホームのカメラ映像を分割表示すればよい。別の例として、全車両のカメラ映像を分割表示するのではなく、1両おきのカメラ映像を分割表示する手法を用いてもよい。この手法は、編成車両数が多い列車においても有効である。
【0033】
[プラットホーム出線時]
運転士は、乗客の乗降を表示装置23により確認した後にドア閉扉操作を行い、特に問題なければ列車の走行を開始する。その後、速度検知信号がONになったタイミングで、表示装置23によるカメラ映像の表示が停止される。その一方で、各車両の解析装置26による危険検知処理は、その車両がプラットホームから出線するまで継続される。この場合、駅停車中の危険検知処理と同様に、列車進行方向とは逆方向のカメラ21(B)の映像に対して危険検知処理が行われる(図8参照)。なお、車両がプラットホームから出線したかは、例えば、ホーム検知装置により判定することができるが、他の手法により判定しても構わない。その後、列車の走行開始に伴ってプラットホームから出線した車両の順に、その車両の解析装置26による危険検知処理が停止される(図9参照)。
【0034】
危険検知処理の結果、危険が検知された場合には、解析装置26は表示装置23に危険検知信号を送信する。表示装置23は、解析装置26から受信した危険検知信号に基づいて、危険が検知された車両のカメラ映像を表示する。表示対象のカメラ映像は、危険が検知されたカメラ映像と、これに対向する撮影方向のカメラ映像である。すなわち、列車進行方向とは逆方向を向いたカメラ21(B)の映像が表示装置23(A)に表示されると共に、列車進行方向を向いたカメラ21(A)の映像が表示装置23(B)に表示される。
【0035】
次に、プラットホーム入線から出線までの一連の処理について、図10の処理シーケンスを参照して説明する。
列車が駅に近づいてプラットホームへの入線を開始すると、制御装置24は、プラットホームへ入線した車両の解析装置26に対して入線検知信号を順次送信する(ステップS11)。解析装置26は、入線検知信号を受信すると、ドアが開扉する側で且つ列車進行方向の順方向を向いた自車両のカメラ21(A)の映像に基づく危険検知処理を開始する(ステップS13)。その結果、危険が検知された場合には、解析装置26から表示装置23に対して危険検知信号が送信され、表示装置23により危険検知映像の表示が行われる(ステップS14)。このとき、表示装置23には、危険が検知されたカメラ21(A)の映像だけでなく、これを反対方向から撮影したカメラ21(B)の映像も表示される。
【0036】
その後、列車が駅に停車してドアが開扉されると、制御装置24は、表示装置23及び各車両の解析装置26に対してドア開扉信号を送信する(ステップS21)。表示装置23は、ドア開扉信号を受信すると、ドアが開扉した側で且つ列車進行方向とは逆方向を向いた各車両のカメラ21(B)の映像の分割表示を開始する(ステップS22)。また、解析装置26は、ドア開扉信号を受信すると、ドアが開扉する側で且つ列車進行方向とは逆方向を向いた自車両のカメラ21(B)の映像に基づく危険検知処理に切り替える(ステップS23)。その結果、危険が検知された場合には、解析装置26から表示装置23に対して危険検知信号が送信され、表示装置23により危険検知映像の表示が行われる(ステップS24)。このとき、表示装置23には、危険が検知されたカメラ映像が他のカメラ映像よりも強調して表示される。
【0037】
その後、ドアが閉扉されて列車が走行を開始し、列車の速度が所定値(例えば、5kph)以上になったことが検知されると、制御装置24は、表示装置23及び各車両の解析装置26に対して速度検知信号を送信する(ステップS31)。表示装置23は、速度検知信号を受信すると、各車両のカメラ映像の分割表示を停止する(ステップS32)。一方、解析装置26は、速度検知信号を受信しても、ドアが開扉する側で且つ列車進行方向とは逆方向を向いた自車両のカメラ21(B)の映像に基づく危険検知処理を継続する(ステップS33)。その結果、危険が検知された場合には、解析装置26から表示装置23に対して危険検知信号が送信され、表示装置23により危険検知映像の表示が行われる(ステップS34)。このとき、表示装置23には、危険が検知されたカメラ21(B)の映像だけでなく、これを反対方向から撮影したカメラ21(A)の映像も表示される。
【0038】
その後、列車がプラットホームからの出線を開始すると、制御装置24は、プラットホームから出線した車両の解析装置26に対して出線検知信号を順次送信する(ステップS41)。解析装置26は、出線検知信号を受信した段階で、危険検知処理を停止する(ステップS42)。
以上が、プラットホーム入線から出線までの一連の処理である。
【0039】
以上のように、本例の監視システムは、列車の各車両に取り付けられたカメラ21と、カメラ映像を表示する表示装置23と、車両の近傍で発生した危険を検知する危険検知処理を行う解析装置26とを備え、表示装置23が、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び出線時はカメラ映像の表示をしないが、入線時及び出線時でも危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示するように構成されている。従って、列車走行中における運転士の業務負担の増大を抑えつつ、危険が生じた場合に速やかに運転士が把握することが可能となる。
【0040】
なお、表示装置23は、上記の処理を、駅のプラットホームに対する列車の入線時又は出線時の一方のみに適用してもよい。すなわち、表示装置23は、入線時はカメラ映像の表示をしないが、入線時でも危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示してもよい。または、表示装置23は、出線時はカメラ映像の表示をしないが、出線時でも危険検知処理によって危険が検知された場合には、危険が検知された車両のカメラの映像を表示してもよい。
【0041】
また、解析装置26が、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び/又は出線時に、プラットホームの区間に位置する車両のカメラ映像に基づいて危険検知処理を行うように構成されている。従って、列車の停車中だけでなく、列車がプラットホームの区間を移動中に発生した事故についても検知することができる。
【0042】
また、列車の各車両は、列車進行方向を向いたカメラ21(A)と、列車進行方向とは逆方向を向いたカメラ21(B)とを有し、解析装置26が、プラットホームへの入線時はカメラ21(A)の映像に基づいて危険検知処理を行い、プラットホームからの出線時はカメラ21(B)の映像に基づいて危険検知処理を行うように構成されている。従って、列車とプラットホームの位置関係に応じて、適切な撮影方向のカメラ映像を用いて危険検知処理を行うことができる。
【0043】
また、表示装置23が、駅のプラットホームに対する列車の入線時及び/又は出線時に危険検知処理によって危険が検知された場合に、危険が検知された車両のカメラ21(A)及びカメラ21(B)の各映像を表示するように構成されている。従って、検知された危険の様子をより確認し易くなる。
【0044】
また、カメラ21が、撮影した映像を表示装置23及び解析装置26に送信し、解析装置26が、カメラ21から受信した映像に基づいて危険検知処理を行い、表示装置23が、解析装置26による危険検知処理の結果に基づいて、カメラ21から受信した映像の表示を制御するように構成されている。従って、表示装置23には、解析装置26で再エンコードされた映像ではなく、カメラ21から直接伝送された映像が表示されるので、危険検知時にリアルタイム性の高い映像表示を行うことができる。
【0045】
また、列車の各車両に解析装置26が搭載され、解析装置26が、自身と同じ車両に搭載されたカメラ21の映像に基づいて危険検知処理を行うように構成されている。従って、解析装置26の1台あたりの処理負担を軽減できるので、危険検知のリアルタイム性をより高めることができる。
【0046】
また、車両の左右両側にカメラが取り付けられ、解析装置26が、プラットホームでドアが開扉する側のカメラ21の映像に基づいて危険検知処理を行うように構成されている。従って、事故が発生しにくい側のカメラ映像を処理せずに済むので、解析装置26の処理負担を軽減することができる。
【0047】
なお、上記の例では、車両の近傍で発生した危険の検知を検知する危険検知処理を、その車両のカメラ映像に基づいて行っているが、各車両に人物検知センサや熱検知センサなどを取り付けておき、これらセンサの検出結果に基づいて危険検知処理を行うようにしてもよい。また、これらを併用してもよいことは言うまでもない。
【0048】
また、上記の例では、表示装置23が表示内容の制御機能を有しているが、表示装置23とは別体の装置で表示内容の制御を行うようにしてもよい。
また、上記の例では、1台の車両20に対して1台の解析装置26を設けているが、1台のカメラ11に対して1台の解析装置26を設けてもよいし、複数台の車両20に対して1台の解析装置26を設けてもよい。
【0049】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0050】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、列車の各車両に取り付けられたカメラを用いた監視システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10-1~10-4,20-1~20-4:車両、 11(A),11(B),21(A),21(B):カメラ、 12,22:中継装置、 13(A),13(B),23(A),23(B):表示装置、 14,24:制御装置、 15,25:車両情報、 26:解析装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10