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特許7518214カセット、およびカセットを備える薬剤送達デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】カセット、およびカセットを備える薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20240709BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A61M5/24 502
A61M5/32 500
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022577365
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021064029
(87)【国際公開番号】W WO2021254744
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】20180158.6
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】トールビョルン・ネビー
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167137(WO,A1)
【文献】特表2016-518879(JP,A)
【文献】国際公開第2018/077809(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/32
A61M 5/20
A61M 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニット(14)を有する薬剤送達デバイス(10)のためのカセット(12)であって、
近位方向(18)および遠位方向(20)を画定する長手軸(16)と、
薬剤容器(44)を収容するための本体(22)と、
薬剤送達部材(46)と、
接続部(40)により前記本体(22)に接続され、前記本体(22)の近位端部(42)を包囲する、キャップ(24)と、
を備え、
前記接続部(40)が、前記本体(22)が前記キャップ(24)に対して前記遠位方向に動かされるように、前記カセット(12)が前記ベースユニット(14)に取り付けられるときに前記本体(22)の回転により前記キャップ(24)に対して相対的に前記本体(22)に前記遠位方向(20)に作用する遠位力によって接続解除されるように構成される、カセット(12)。
【請求項2】
前記接続部(40)が、スナップフィットを含む、請求項1に記載のカセット(12)。
【請求項3】
前記接続部(40)が、前記キャップ(24)上に配置されたキャップ突出部(38)を含む、請求項1または2に記載のカセット(12)。
【請求項4】
前記キャップ突出部(38)が、径方向に可撓性である、請求項3に記載のカセット(12)。
【請求項5】
前記キャップ突出部(38)が、前記長手軸(16)に関して横方向内向きに延在する、請求項3または4に記載のカセット(12)。
【請求項6】
前記接続部(40)が、前記本体(22)上に配置された本体接続突出部(36)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のカセット(12)。
【請求項7】
前記本体接続突出部(36)が、前記長手軸(16)に関して横方向外向きに延在する、請求項6に記載のカセット(12)。
【請求項8】
前記本体接続突出部(36)が、フランジである、請求項6または7に記載のカセット(12)。
【請求項9】
前記本体接続突出部(36)が、可撓性である、請求項6から8のいずれか一項に記載のカセット(12)。
【請求項10】
前記カセット(12)が、前記薬剤送達部材(46)を覆うカバー(48)をさらに備え、前記キャップ(24)が前記カバー(48)を包囲する、請求項1から9のいずれか一項に記載のカセット(12)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のカセット(12)を備える薬剤送達デバイス(10)であって、前記カセット(12)がベースユニット(14)に取り付けられたときに前記カセット(12)内の薬剤容器(44)からの薬剤の放出を推進するように構成された前記ベースユニット(14)をさらに備える、薬剤送達デバイス(10)。
【請求項12】
前記本体(22)が、本体係合構造(28)を備え、前記ベースユニット(14)が、ベース係合可能構造(56)を備え、前記本体係合構造(28)が前記ベース係合可能構造(56)に係合するときに前記ベースユニット(14)に対する前記長手軸の周りでの前記本体(22)の回転により前記遠位力が生成されるように、前記本体係合構造(28)と前記ベース係合可能構造(56)との間に接触部が形成される、請求項11に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【請求項13】
前記接触部が、カム接触部、ねじ山接触部、または差込み接触部であり得る、請求項12に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【請求項14】
前記接触部が、カム接触部であり、前記ベース係合可能構造(56)および前記本体係合構造(28)が、カム輪郭、および前記カム輪郭を辿るように配置されたカムフォロワを含む、請求項13に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【請求項15】
前記ベースユニット(14)が、近位表面(34)を備え、前記キャップ(24)が、前記カセット(12)が前記ベースユニット(14)に挿入されたときに前記近位表面(34)と対になるように配置された遠位表面(26)を備える、請求項11から14のいずれか一項に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、薬剤送達デバイスのためのカセットに関する。具体的には、ベースユニットを有する薬剤送達デバイスのためのカセット、およびカセットを備える薬剤送達デバイスが提供される。
【背景技術】
【0002】
薬剤の自己投与のための幅広い薬剤送達デバイスが知られている。いくつかの薬剤送達デバイスは、ベースユニット、およびベースユニットに接続するためのカセットを備える。ベースユニットは、通常、モータおよび/または電池などの駆動機構を備え、したがって、注射などの複数回の薬剤送達のために再利用され得る。カセットは、シリンジ、カートリッジ、または同種の物などの送達すべき薬剤を含む薬剤容器を収容するかまたは受け入れ得る。薬剤送達デバイスの作動に応じて、薬剤は、例えば針またはノズルといった薬剤送達部材を通じて放出される。カセットは、薬剤送達後に廃棄されて、新たなカセットと置き換えられ得る。
【0003】
従来技術のいくつかの解決法では、ユーザは、薬剤送達の前にベースユニットにカセットを挿入し、カセットからキャップを引っ張って取る必要がある。ユーザがベースユニットにカセットを挿入する前にキャップを取り外した場合、ユーザが針によって傷つく危険性がある。これは、針カバーを注射部位に押し付けることによって作動される自動注射器に特に当てはまり、自動注射器では、針カバーが作動のために圧迫されるのと同じ方向、例えば遠位方向において、カセットがベースユニットに挿入される。そのような自動注射器では、キャップは、針カバーが圧迫されるのを防止する。キャップが早まって取り外された場合、すなわちベースユニットにカセットを挿入する前にキャップが取り外された場合、薬剤送達部材の汚染の危険性も増大する。
【0004】
特許文献1は、再利用可能な電動伝達組立体と1回使用の使い捨ての薬物送達組立体とを備える自動注射器デバイスを開示している。薬物送達組立体は、シリンジ体、針、およびデバイスキャップを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019122946号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示において、用語「遠位方向」が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用中に投薬送達部位から離れるように向く方向を意味する。用語「遠位部分/端部」が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用時に投薬送達部位から最も遠くに位置する送達デバイスの部分/端部または送達デバイスの部材の部分/端部を意味する。それに対応して、用語「近位方向」が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用中に投薬送達部位に向かうように向く方向を意味する。用語「近位部分/端部」が使用される場合、これは、薬剤送達デバイスの使用時に投薬送達部位の最も近くに位置する送達デバイスの部分/端部または送達デバイスの部材の部分/端部を意味する。
【0007】
さらに、用語「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、または「軸方向の」は、典型的にはデバイスおよび/または構成要素の最長の伸びの方向においてデバイスまたはその構成要素に沿う、近位端部から遠位端部まで延在する方向を意味する。
【0008】
同様に、用語「横方向」、「横方向の」、および「横方向に」は、長手方向に対しておおむね垂直な方向を意味する。
【0009】
さらに、用語「円周」、「円周の」、「円周方向に」、「回転」、「回転的な」、および「回転的に」は、長手方向に対しておおむね垂直でありかつ少なくとも部分的に長手方向の周りに延在する方向を意味する。
【0010】
1つの態様によれば、ベースユニットを有する薬剤送達デバイスのためのカセットが提供され、カセットは、近位方向および遠位方向を画定する長手軸と、薬剤容器を収容するための本体と、薬剤送達部材と、接続部により本体に接続される、本体の近位端部を包囲するキャップと、を備え、接続部は、カセットがベースユニットに取り付けられるときにキャップに対して相対的に本体に遠位方向に作用する遠位力(distal force)により接続解除されるように構成される。
【0011】
遠位力は、薬剤送達デバイスのベースユニットへのカセットの取付シーケンスから生成され得る。このようにして、キャップは、ベースユニットにカセットを取り付ける前に取り外されることを防止される。その結果、針などの薬剤送達部材によりユーザが負傷する危険性が減少する。
【0012】
遠位力は、本体とベースユニットとの間に形成される接触部によって生成されてよく、例えば、本体は、係合部材を有して配置され、相手側係合部材が、薬剤送達デバイスのベースユニット上に配置される。接触部は、カム接触部、ねじ山接触部、または差込み接触部であってよい。
【0013】
本発明のカセットは、市販されているいくつかの薬剤送達デバイスに適合するように設計され、かつ/または、カセットの異なる製造業者によって生産され得る。それらの薬剤送達デバイスは、ベースユニットとともに動力ユニットを備えるべきであり、かつ、薬剤容器を保持しているカセットが取り付けられるように構成されるべきであり、したがって、収容された薬剤は、動力ユニットによって送達されるように動かされる。したがって、本体とベースユニットとの間の接触部は、カセットを取り付けるための薬剤送達デバイスのベースユニットの構造に依存する。
【0014】
本体上の係合部材は、本体と一体であるか、または、本体に固定して取り付けるための取外し可能な付属品上に配置され得る。後者の実施形態では、本発明のカセットは、カセットとともに使用される薬剤送達デバイスの大半に適合することができるが、これは、カセットが、市販されている様々な薬剤送達デバイスに関連する様々な係合部材を有する複数の取外し可能な付属品とともに使用され得るためである。
【0015】
接続部は、キャップ上に配置されたコネクタと本体上に配置された相手側コネクタとによって形成される。コネクタと相手側コネクタとが互いに位置合わせされると、それによって接続部が形成される。
【0016】
接続部によりキャップが本体に接続されると、キャップは本体にロックされる。接続部が接続解除されると、キャップは本体からロック解除される。接続部を接続解除することに加えて、遠位力は、本体をキャップに対して遠位方向に移動させることができる。本体とキャップとの間の相対移動は、コネクタと相手側コネクタとの間の位置ずれを引き起こし、その結果、接続部は接続解除される。キャップは、接続部が接続解除されるときのキャップの近位移動により本体から取外し可能であってよい。キャップを取り外すために、ユーザはキャップを掴んで引っ張ることができる。
【0017】
接続部は、恒久的なものではない。代わりに、接続部は、ベースユニットへのカセットの接続の前にユーザがキャップを本体から取り外すのを防止するように、かつ、ベースユニットへのカセットの接続後にユーザがキャップを本体から取り外すのを可能にするように、構成される。
【0018】
カセットは、ベースユニットに対する遠位方向への移動によりベースユニットに挿入されるように構成され得る。キャップは、接続部が接続解除されたときに、近位方向への移動によりカセットから取り外されるように構成され得る。したがって、カセットがベースユニットに挿入される方向は、キャップがカセットから取り外される方向とは反対である。キャップは、接続部が接続されたときおよび接続解除されたときの両方で、本体に対して回転ロックされ得る。
【0019】
薬剤送達部材は、例えば、針またはノズルであり得る。本体、薬剤送達部材、および/またはキャップは、長手軸と実質的に同心であるか、または同心であり得る。キャップおよび/または本体は、プラスチックで作られ得る。
【0020】
接続部は、スナップフィットを含み得る。この場合、コネクタおよび/または相手側コネクタは、1つまたは複数の弾性部分を含み得る。1つまたは複数の弾性部分は、本体および/またはキャップに設けられ得る。
【0021】
コネクタは、キャップ上に配置されたキャップ突出部であってよい。キャップ突出部は、隆起部であってよい。あるいは、またはそれに加えて、キャップ突出部は、径方向に可撓性であってよい。キャップ突出部自体は、弾力性材料、例えばTPEによって作られてよく、または、キャップ突出部は、キャップの弾性部分の縁部上に配置される。後者の例では、キャップは、弾性材料、例えばPE、PPによって作られる遠位部分を有してよく、遠位部分は、突出部に径方向外向きに力が印加されたときに突出部が径方向にまたは円周方向外向きに撓むことができるように、切欠きまたはスロットを有して配置される。
【0022】
キャップ突出部は、長手軸に対して横方向内向きに延在し得る。あるいは、またはそれに加えて、コネクタは、複数のキャップ突出部であってよい。この場合、各キャップ突出部は、共通平面内に配置され得る。この平面は、長手軸に対して実質的に垂直であるかまたは垂直であってよい。
【0023】
相手側コネクタは、本体上に配置された本体接続突出部であってよい。本体接続突出部は、長手軸に対して横方向外向きに延在し得る。
【0024】
本体接続突出部は、フランジであってよい。この場合、キャップは、接続部が接続されるときに、フランジの上にスナップされ得る。接続部を接続解除するために、本体は、フランジが本体接続突出部を通じてスナップするように、遠位方向に移動し得る。本体接続突出部は、可撓性であってよい。
【0025】
カセットは、薬剤送達部材を覆うカバーをさらに備えてよく、その場合、キャップはカバーを包囲する。そのようなカセットは、自動注射器によって構成された薬剤送達デバイスにおいて使用され得る。カバーは、例えばカバーを投薬送達部位に押し付けることにより、薬剤送達を始動させるために使用され得る。そのようなカバーを投薬送達部位に押し付けることにより薬剤送達を始動させる様々な方法が、それ自体知られている。
【0026】
代替的な例によれば、カセットは、カバーを備えない。そのようなカセットでは、薬剤送達部材は、例えばベースユニット内のモータによって駆動されることにより、薬剤送達のために近位に移動され得る。
【0027】
カセットは、シールド係合可能構造を有するシールドをさらに備えることができ、その場合、キャップは、接続部が接続解除されたときにシールド係合可能構造に係合するように構成されたキャップ係合構造を備え、また、シールドは、接続部が接続解除されたときにキャップの近位移動によって取り外されるように構成される。シールドは、薬剤送達部材のための滅菌バリアを提供することができる。薬剤送達部材が針である場合、シールドは、可撓性針シールド(FNS)、および可撓性針シールドを覆う剛性針シールド(RNS)を含んでよい。
【0028】
キャップは、接続部が接続解除されるときにキャップ係合構造がシールド係合可能構造に係合する前に近位に移動するように構成され得る。これは、カセットがベースユニットに取り付けられかつ接続部が接続解除されるときに、ベースユニットとキャップとの間に間隙が現れることを可能にする。この間隙は、キャップを引っ張って取ることができるという目安をユーザに提供する。キャップは、接続部が接続解除されるときにキャップ係合構造がシールド係合可能構造と接触し、間隙が現れるように、例えばばねにより近位方向に付勢され得る。
【0029】
カセットは、独立した針、および薬剤を収容しているカートリッジをさらに備えることができる。独立した薬剤送達部材、例えば針は、ハブによって固定して保持される。ハブは、相互作用構造を備え、相互作用構造は、キャップの内部に配置された相手側相互作用構造と相互作用するように構成される。例えば、キャップは、相手側相互作用構造としてその内側表面上に配置されたはめ歯歯車を有してよく、ハブは、ハブの外側表面上に配置された一連のラックを有してよく、一連のラックは、キャップの近位移動がハブおよび針の遠位移動を引き起こすように、相互作用構造としてはめ歯歯車と整合し、したがって、独立した薬剤送達部材は、キャップの取外しによりカートリッジに取り付けられる。
【0030】
キャップは、カセットの大部分を覆ってよい。接続部によりキャップが本体に接続されると、キャップは、長手軸に沿ったカセットの長さの少なくとも50%に沿って設けられ得る。あるいは、またはそれに加えて、キャップは、本体の大部分を覆ってよい。
【0031】
さらなる態様によれば、本開示によるカセットを含む薬剤送達デバイスが提供される。薬剤送達デバイスは、例えば、自動注射器であり得る。この場合、カセットは、薬剤送達を始動させるためのカバーを含み得る。
【0032】
薬剤送達デバイスは、カセットがベースユニットに取り付けられたときにカセット内の薬剤容器からの薬剤の放出を推進するように構成されたベースユニットをさらに備えることができる。カセットは、使い捨てのものであってよく、ベースユニットは、複数回使用のためのものであってよい。
【0033】
本体は、以下では本体係合構造と名付けられる係合部材を含むことができ、ベースユニットは、以下ではベース係合可能構造と名付けられる相手側係合部材を含むことができる。本体係合構造およびベース係合可能構造は、本体係合構造がベース係合可能構造に係合するときにベースユニットに対する長手軸の周りでの本体の回転により遠位力を生成するように構成され得る。
【0034】
したがって、薬剤送達デバイスは、本体係合構造、ベース係合可能構造、および接続部を含む、キャップロック解除機構を備えることができる。キャップロック解除機構は、長手軸の周りでのカセットの回転を遠位方向におけるキャップに対する本体の移動に伝達するように構成され得る。
【0035】
接続部の接続解除を引き起こす遠位力の生成に加えて、ベースユニットに対する本体の回転は、カセットをベースユニットに取り付けさせることができる。したがって、キャップは、ベースユニットへのカセットの取付シーケンスによってロック解除され得る。
【0036】
本体係合構造がベース係合可能構造に係合するときにベースユニットに対する長手軸の周りでの本体の回転により遠位力が生成されるように、本体係合構造とベース係合可能構造との間に接触部が形成される。接触部は、カム接触部、ねじ山接触部、または差込み接触部であってよい。
【0037】
本体係合構造は、カセットの遠位領域に設けられ得る。本体係合構造は、キャップが接続部により本体に接続されたときに露出され得る。つまり、キャップは本体係合構造を覆わない場合がある。
【0038】
本体係合構造は、本体と一体であるか、または、本体の遠位領域に固定して取り付けるための取外し可能な付属品上に配置され得る。後者の実施形態では、本発明のカセットは、カセットとともに使用される薬剤送達デバイスの大半に適合することができるが、これは、カセットが、市販されている様々な薬剤送達デバイスに関連する様々な係合部材を有する複数の取外し可能な付属品とともに使用され得るためである。取外し可能な付属品は、本体の遠位部分上に固定され得る環形状またはC形状の構成要素であってよく、この場合、本体は、一体的な本体係合構造を有さなくてよい。
【0039】
接触部がカム接触部である場合、ベース係合可能構造および本体係合構造は、カム輪郭、およびカム輪郭を辿るように構成されたカムフォロワを備える。ベース係合可能構造が、カム輪郭を備えてよく、本体係合構造が、カム輪郭を辿るように構成されたカムフォロワを備えてよい。あるいは、本体係合構造が、カム輪郭を備えてよく、ベース係合可能構造が、カム輪郭を辿るように構成されたカムフォロワを備えてよい。いずれの場合でも、カムフォロワがカム輪郭に係合し、カセットが長手軸の周りで回転されると、本体は遠位方向に付勢されて、接続部を接続解除させる。したがって、薬剤送達デバイスは、カム輪郭およびカムフォロワを含むカム接触部を備え得る。
【0040】
あるいは、またはそれに加えて、本体係合構造は、1つまたは複数の本体突出部を備え得る。各本体突出部は、長手軸に関して径方向外向きに突出し得る。1つの変形によれば、本体係合構造は、例えば長手軸に関して反対側に配置された、2つの本体突出部を備える。突出部は、ユーザがカセットを動力ユニットに接続するときに、差込みロックとしての役割を果たすことができる。
【0041】
したがって、キャップロック解除機構は、カムフォロワ、カム輪郭、および接続部を含み得る。カムフォロワおよびカム輪郭の代案として、キャップロック解除機構は、リンケージを含んでよい。キャップロック解除機構は、リンケージにより長手軸の周りでのカセットの回転をキャップに対する本体の遠位方向への移動に伝達するように構成され得る。そのようなリンケージは、カセットまたはベースユニットのどちらに設けられてもよい。リンケージの一部分、またはカセットがベースユニットに挿入されたときにリンケージに作用する本体内の一部分が、本体係合構造を構成し得る。リンケージの一部分、またはカセットがベースユニットに挿入されたときにリンケージに作用するベースユニット内の一部分が、ベース係合可能構造を構成し得る。
【0042】
カムフォロワおよびカム輪郭のさらなる代案として、キャップロック解除機構は、ベースユニット内に電気式グリッパ(electrical gripper)を備え得る。この場合、ベースユニットは、電気回路またはプリント回路板(PCB)を備え得る。回路は、スイッチまたは情報読取り機とともに配置され得る。電気式グリッパは、遠位力が生成されるように本体を把握しかつ引っ張るように構成され得る。この場合、グリッパによる引張りは、カセットがベースユニットに対して回転されるかまたはベースユニットに挿入されてスイッチをオンにすると始動され得るか、または、情報読取り機がカセットの本体上の特定の情報を検出すると始動され得る。カセットの本体上のそのような情報は、RFIDタグ、QRコード(登録商標)、またはバーコードに含まれ得る。この実施形態では、遠位力は、ベースユニットに対するカセットの回転を伴わずに生成され得る。
【0043】
ベースユニットは、近位表面を備えてよく、キャップは、カセットがベースユニットに挿入されたときに近位表面と対になるように配置された遠位表面を備えてよい。この場合、キャップロック解除機構は、近位表面および遠位表面をさらに備え得る。近位表面および遠位表面のそれぞれは、長手軸に対して実質的に垂直であるか、または垂直であってよい。
【0044】
本開示のさらなる詳細、利点、および態様は、以下の説明を図面と併せて読むことにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】カセットおよびベースユニットを備える薬剤送達デバイスを概略的に表す側面斜視図である。
図2】カセットを概略的に表す近位斜視図(perspective proximal view)である。
図3】カセットの本体を概略的に表す近位斜視図である。
図4】本体を概略的に表す近位図である。
図5】カセットのキャップを概略的に表す近位斜視図である。
図6】キャップを概略的に表す近位図である。
図7】カセットを概略的に表す側面図である。
図8】カセットを概略的に表す側面断面図である。
図9】カセットを概略的に表すさらなる側面断面図である。
図10】ベースユニットを概略的に表す遠位斜視図(perspective distal view)である。
図11】ベースユニットを概略的に表す部分的な側面断面図である。
図12】ベースユニットへのカセットの取付け前の薬剤送達デバイスを概略的に表す側面図である。
図13】ベースユニットへのカセットの挿入後の薬剤送達デバイスを概略的に表す側面図である。
図14】ベースユニットに対するカセットの回転後の薬剤送達デバイスを概略的に表す側面図である。
図15】ベースユニットおよび本体に対するキャップの近位移動後の薬剤送達デバイスを概略的に表す側面図である。
図16】キャップの取外し後の薬剤送達デバイスを概略的に表す側面図である。
図17図14によるカセットを概略的に表す部分的な側面断面図である。
図18図15によるカセットを概略的に表す部分的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、ベースユニットを有する薬剤送達デバイスのためのカセット、および、カセットを備える薬剤送達デバイスが説明される。同じまたは類似の参照番号は、同じまたは類似の構造的特徴を示すために使用される。
【0047】
図1は、薬剤送達デバイス10の側面斜視図を概略的に表す。薬剤送達デバイス10は、カセット12およびベースユニット14を備える。カセット12は、使い捨てであり、ベースユニット14は、複数回使用のためのものである。
【0048】
カセット12は、長手軸16を含む。長手軸16は、近位方向18、および近位方向18とは反対の遠位方向20を画定する。カセット12は、ベースユニット14に対する遠位方向20への移動によりベースユニット14に挿入され、次いでベースユニット14に取り付けられるように、構成される。
【0049】
カセット12は、本体22およびキャップ24を備える。図1では、キャップ24は、本体22に接続されている。キャップ24は、本体22の近位側に設けられている。本体22およびキャップ24のそれぞれは、長手軸16と実質的に同心である。図1に示されるように、キャップ24は、長手軸16に沿ってカセット12の大部分を覆い、この例ではおおよそ75%を覆う。
【0050】
キャップ24は、遠位表面26を備える。遠位表面26は、長手軸16に対して垂直な平面内に位置する。
【0051】
この例の本体22は、2つのカムフォロワ28を備える。カムフォロワ28は、長手軸16に関して本体22上で反対側に配置されている。各カムフォロワ28は、突出部であり、かつ、本体22から(長手軸16に関して)径方向外向きに突出する。各カムフォロワ28は、本開示による本体係合構造の1つの例である。カムフォロワ28は、本体22の遠位領域に設けられる。図1に示されるように、カムフォロワ28は、キャップ24によって覆われない。
【0052】
ベースユニット14は、カセット12がベースユニット14に取り付けられたときにカセット12内の薬剤容器からの薬剤の放出を推進するように構成される。ベースユニット14は、開口部30を備える。開口部30は、ベースユニット14の近位端部に設けられる。開口部30は、カセット12がベースユニット14に挿入されるときに本体22の遠位端部を受け入れるように構成される。カセット12がベースユニット14に挿入されるときに、ベースユニット14およびその開口部30は、長手軸16と実質的に同心である。
【0053】
この例のベースユニット14は、2つのスロット32をさらに備える。スロット32は、長手軸16に関してベースユニット14上で反対側に配置されている。各スロット32は、開口部30内の溝であり、かつ、おおむね長手軸16に面する。各スロット32は、長手軸16と平行に延在する。スロット32は、ベースユニット14の近位領域に設けられる。
【0054】
ベースユニット14は、近位表面34をさらに備える。近位表面34は、長手軸16に対して垂直な平面内に位置する。カセット12の遠位表面26は、カセット12がベースユニット14に挿入されたときにベースユニット14の近位表面34と対になるように配置される。
【0055】
図2は、カセット12の近位斜視図を概略的に表す。図2に示されるように、本体22は、フランジ36を備える。フランジ36は、長手軸16に対して垂直な平面内に位置する。フランジ36は、本体22から(長手軸16に関して)径方向外向きに延在する。フランジ36は、本開示による本体接続突出部の1つの例である。
【0056】
この例のキャップ24は、4つのキャップ突出部38を備える。各キャップ突出部38は、長手軸16に対して垂直な共通平面内に配置されている。しかし、キャップ24は、1つ、2つ、3つ、または4つよりも多くのキャップ突出部38を備えてよい。ここでは、各キャップ突出部38は、長手軸16に関して径方向内向きに延在する隆起部として例示されている。
【0057】
図2では、キャップ突出部38は、フランジ36の上にスナップされている。これは、キャップ24が本体22から取り外されるのを防止する。キャップ突出部38およびフランジ36は、キャップ24を本体22に接続する接続部40を形成する。この例の接続部40は、スナップフィット接続部である。キャップ突出部38は、キャップ24の2つの半体上に対称的に配置され、好ましい実施形態では、キャップ24の遠位部分上に、また(図5から見ることができる)キャップ24の2つの半体の間に、切欠きまたはスロットが設けられ、この例では、キャップ24は、少なくとも部分的に、弾性材料、例えば熱可塑性材料によって作られるので、切欠きまたはスロットは、突出部に径方向外向きに力が印加されたときにキャップ24の遠位部分が長手軸16に対して径方向外側に撓められることを可能にする。したがって、キャップ突出部38は、ある程度「弾性」(または、径方向に可撓性)になるが、ユーザが本体22を一方の手で掴み、キャップ24をもう一方の手で掴み、そして本体22とキャップ24とを互いに離れる方向に引っ張ることによりキャップ24を本体22から分離させるのを防止するのに十分に強固である。
【0058】
あるいは、切欠きまたはスロットは、図5に示されるように一対であり得るか、または、キャップの遠位部分上に配置された1つだけの切欠きまたはスロットであり得ることが、留意されるべきである。その場合、突出部は、突出部に径方向外向きに力が印加されたときに、円周方向に撓むことができる。
【0059】
図3は、本体22の近位斜視図を概略的に表し、図4は、本体22の近位図を概略的に表す。この例の本体22は、プラスチックで作られている。本体22は、1つの単体に射出成形され得る。
【0060】
図5は、キャップ24の近位斜視図を概略的に表し、図6は、キャップ24の近位図を概略的に表す。この例のキャップ24は、プラスチックで作られている。キャップ24は、1つの単体に射出成形され得る。
【0061】
図7は、カセット12の側面図を概略的に表し、図8は、カセット12の側面断面図を概略的に表し、図9は、カセット12のさらなる側面断面図を概略的に表す。図8および図9に示されるように、キャップ24は、本体22の近位端部42を包囲する。さらに、この例のキャップ24は、本体22の大部分、長手軸16に沿った本体22の長さのおおよそ65%を覆う。
【0062】
図8および図9をまとめて参照すると、カセット12は、薬剤を収容している薬剤容器44をさらに保持する。薬剤容器44は、カセット12に分離可能に取り付けられ得る。あるいは、薬剤容器44は、カセット12内に恒久的に取り付けられ得る。いずれの場合でも、薬剤容器44は、本体22内に収容される。
【0063】
この例のカセット12は、針46をさらに備える。針46は、本開示による薬剤送達部材の1つの例である。針46は、長手軸16と同心である。
【0064】
この例のカセット12は、カバー48をさらに備える。カバー48は、針46を覆う。キャップ24は、カバー48を包囲する。
【0065】
この例のカセット12は、ばね50をさらに備える。ばね50は、カバー48を近位方向18に付勢する。
【0066】
この例のカセット12は、シールド52をさらに備える。シールド52は、針46を覆い、滅菌バリアを提供する。この例のシールド52は、可撓性針シールド、および可撓性針シールドの外側の剛性針シールドを含む。
【0067】
図9に示されるように、キャップ24は、ストッパ54をさらに備える。ここでは、ストッパ54は、(長手軸16に関して)径方向内向きに突出するカラーとして例示されている。接続部40が接続されると、フランジ36は、キャップ突出部38とストッパ54との間に設けられる。したがって、ストッパ54は、キャップ24が本体22に対して遠位方向20に移動するのを防止する。
【0068】
図10は、ベースユニット14の遠位斜視図を概略的に表し、図11は、ベースユニット14の部分的な側面断面図を概略的に表す。図10および図11をまとめて参照すると、この例のベースユニット14は、2つのカム輪郭56(一方のみが図10および図11で見ることができる)を備える。カム輪郭56は、ベースユニット14の近位領域に設けられる。カム輪郭56は、ベースユニット14の開口部30内に長手軸16に関して反対側に配置されている。各カム輪郭56は、本開示によるベース係合可能構造の1つの例である。各カム輪郭56は、長手軸16に関して螺旋状に延在する。この例では、各カム輪郭56は、おおよそ90°の長手軸16周りでの角度範囲を有する。
【0069】
カセット12が遠位方向20においてベースユニット14に挿入されるときに、カムフォロワ28は、ベースユニット14のそれぞれのスロット32内を移動する。次いで、カセット12をベースユニット14に取り付けるためにカセット12が長手軸16の周りでベースユニット14に対して回転されると、カムフォロワ28は、それぞれのカム輪郭56に係合し、したがって、間に接触部が形成される。カムフォロワ28とカム輪郭56との間の接触部により、この長手軸16の周りでのベースユニット14に対するカセット12の回転は、本体22上に遠位力を生成させる。遠位力は、遠位方向20において本体22に作用する。
【0070】
さらに、カセット12がベースユニット14に挿入されると、カセット12の遠位表面26は、ベースユニット14の近位表面34と対になる。カムフォロワ28がそれぞれのカム輪郭56に係合しながらカセット12がベースユニット14に挿入されて回転されるときに、遠位力は、本体22に作用して、本体22を遠位方向20に付勢する。しかし、遠位表面26と近位表面34との間の係合により、キャップ24は、遠位方向20に移動するのを妨げられる。したがって、本体22に作用する遠位力は、キャップ24に対して作用し、かつ、本体22をキャップ24に対して遠位方向20に移動させ、その結果、フランジ36は、キャップ突出部38を通じてスナップし、したがって、突出部38に印加される径方向外向きの力を提供し、そのような径方向外向きの力が、突出部38を径方向外向きに撓ませる。それにより、接続部40は接続解除される。したがって、接続部40は、キャップ24に対して相対的に本体22に遠位方向20に作用する遠位力によって接続解除されるように構成される。
【0071】
本体22およびキャップ24は、長手軸16の周りでのそれらの相対的な回転が防止されるように、回転ロックされる。カムフォロワ28、カム輪郭56、接続部40、遠位表面26、および近位表面34は、長手軸16の周りでのカセット12の回転を遠位方向20におけるキャップ24に対する本体22の移動に伝達するように構成されるキャップロック解除機構の1つの例である。
【0072】
図12は、ベースユニット14へのカセット12の取付けの前の薬剤送達デバイス10の側面図を概略的に表す。図12による薬剤送達デバイス10の状態では、キャップ24は、接続部40により本体22にロックされているので、カセット12から容易には取り外され得ない。
【0073】
図13は、ベースユニット14へのカセット12の挿入後の薬剤送達デバイス10の側面図を概略的に表す。挿入中、カムフォロワ28は、ベースユニット14におけるそれぞれのスロット32内を移動する。カセット12は、キャップ24の遠位表面26がベースユニット14の近位表面34と接触するまで、ベースユニット14に挿入される。図13による薬剤送達デバイス10の状態においても、キャップ24は、カセット12から容易には取り外され得ない。
【0074】
図14は、長手軸16の周りでのベースユニット14に対するカセット12の回転後の薬剤送達デバイス10の側面図を概略的に表す。図14では、カセット12は、ベースユニット14に取り付けられている。カセット12がベースユニット14に対して回転されると、接続部40は接続解除され、キャップ24は、本体22からロック解除される。この例では、カセット12は、遠位方向20に見たときに反時計方向に90°回転されている。
【0075】
カセット12が回転されると、各カムフォロワ28は、関連するカム輪郭56に係合してそれを辿る。カムフォロワ28とカム輪郭56との間の相互作用は、遠位方向20に作用する遠位力を生じさせ、この遠位力は、本体22に作用する。遠位表面26と近位表面34との間の接触により、キャップ24は遠位方向20に移動するのを防止されるので、本体22に作用する遠位力は、キャップ24に対して作用する。それにより、遠位表面26は、カウンタステイとしての役割を果たす。
【0076】
カセット12の回転によりキャップ24に対して相対的に本体22に作用する遠位力により、フランジ36は、キャップ突出部38を通じてスナップする。それにより、接続部40は解放される。カセット12のさらなる回転が、フランジ36が近位表面34と接触するまで、遠位方向20における本体22のさらなる移動を引き起こす。フランジ36が近位表面34に接触すると、カセット12は、さらに回転され得ず、本体22は、遠位方向20にさらに移動され得ない。それにより、カセット12は、ベースユニット14に取り付けられる。カセット12の回転により、接続部40が接続解除され、カセット12がベースユニット14に取り付けられるという、2つの機能が行われる。したがって、接続部40を解放するための遠位力は、ベースユニット14へのカセット12の取付シーケンスによって生成される。このようにして、キャップ24の早まった取外しが防止され得る。つまり、薬剤送達デバイス10は、ベースユニット14へのカセット12の取付けに先立つキャップ24の取外しを防止する。
【0077】
図15は、ベースユニット14および本体22に対するキャップ24の近位移動後の薬剤送達デバイス10の側面図を概略的に表す。この近位移動は、キャップ24と本体22との間の接続部40が接続解除されているので可能である。接続部40の接続解除後、キャップ24は、長手軸16に沿ってわずかに移動することができる。これは、キャップ24とベースユニット14との間に間隙58が現れることを可能にする。間隙58は、例えば、1mmから10mmであってよい。この間隙58の出現は、キャップ24を自由に取り外せることをユーザに示す。目下、キャップ24は、キャップ24を近位方向18に引っ張ることにより、完全に取り外され得る。
【0078】
図16は、キャップ24の取外し後の薬剤送達デバイス10の側面図を概略的に表す。目下、カバー48は、露出している。キャップ24の取外しはまた、以下で説明されるようにシールド52を取り外させる。
【0079】
したがって、カセット12は、遠位方向20への移動によりベースユニット14に挿入され、キャップ24は、遠位方向20とは反対の近位方向18への移動によりカセット12から取り外される。したがって、ユーザが針46によって負傷する危険性は、減少する。上述のように、この危険性は、ベースユニットへのカセットの挿入に先立ってキャップが取り外され得る薬剤送達デバイスの場合に存在し得る。
【0080】
カバー48を投薬送達部位に押し付けることにより、カバー48は、ばね50の圧縮力に逆らって薬剤送達デバイス10に対して遠位方向20に移動する。それと同時に、針46が、投薬送達部位に突き刺さる。カバー48の遠位移動は、それ自体知られている態様で薬剤送達を始動させる。例えば、カバー48の遠位移動は、針46から投薬送達部位内への薬剤放出を推進するばね力を解放するために、カセット12内の回転子を回転的に駆動する駆動機構を作動させることができる。
【0081】
注射後、キャップ24は、カセット12をベースユニット14から分離するためのツールとして使用されるために、ユーザにより本体22に被せられ得る。キャップ24がカセット12に再度取り付けられた場合、キャップ24はまた、使用後の針刺し事故に関してよりいっそうの安全性を追加する。
【0082】
図17は、図14による状態におけるカセット12の部分的な側面断面図を概略的に表す。図17に示されるように、キャップ24は、キャップ係合構造60を備え、シールド52は、シールド係合可能構造62を備える。この例のキャップ係合構造60は、(長手軸16に関して)径方向内向きに突出するカラーである。この例のシールド係合可能構造62は、(長手軸16に関して)径方向外向きに突出するカラーである。図17に示されるように、キャップ係合構造60は、シールド係合可能構造62から遠位方向20に離れている。接続部40が接続解除されると、キャップ24は、キャップ係合構造60がシールド係合可能構造62に接触するまで、近位方向18に自由に移動することができる。
【0083】
図18は、図15による状態におけるカセット12の部分的な側面断面図を概略的に表す。図18では、キャップ係合構造60は、シールド係合可能構造62に接触している。ユーザが図18における状態からカセット12をベースユニット14から接続解除しようとしても、シールド52における滅菌バリアは損傷を受けない。
【0084】
この例では、キャップ係合構造60とシールド係合可能構造62との間の係合のみが、キャップ24がカセット12から取り外されるのを防止する。シールド52は、シールド52と針46との間の摩擦力により近位方向18への移動を防止される。この例では、近位方向18へのキャップ24の移動を防止する追加的な力は存在しない。
【0085】
カセット12は、キャップ24を近位方向18に付勢するように構成されたばね(図示せず)をさらに備えることができる。このようにして、間隙58は、接続部40が接続解除されたときに自動的に現れる。
【0086】
近位方向18へのキャップ24のさらなる移動により、キャップ24およびシールド52はカセット12から取り外される。より詳細には、近位方向18へのキャップ24のさらなる移動により、キャップ係合構造60はシールド係合可能構造62を押し、それにより、シールド52は近位方向18に付勢される。したがって、キャップ24がカセット12から取り外されるときに、シールド52も取り外される。
【0087】
本開示は例示的な実施形態を参照して説明されたが、本発明は上記で説明されたことに限定されないことが、理解されるであろう。例えば、部品の寸法は必要に応じて変更され得ることが、理解されるであろう。したがって、本発明は本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の範囲によってのみ限定され得ることが、意図されている。
【符号の説明】
【0088】
10 薬剤送達デバイス
12 カセット
14 ベースユニット
16 長手軸
18 近位方向
20 遠位方向
22 本体
24 キャップ
26 遠位表面
28 カムフォロワ
30 開口部
32 スロット
34 近位表面
36 フランジ
38 キャップ突出部
40 接続部
42 近位端部
44 薬剤容器
46 針
48 カバー
50 ばね
52 シールド
54 ストッパ
56 カム輪郭
58 間隙
60 キャップ係合構造
62 シールド係合可能構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18