(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q30/02
(21)【出願番号】P 2023105278
(22)【出願日】2023-06-27
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110135
【氏名又は名称】石井 裕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100163452
【氏名又は名称】南郷 邦臣
(74)【代理人】
【識別番号】100180312
【氏名又は名称】早川 牧子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 祥人
(72)【発明者】
【氏名】仲宗根 彩
(72)【発明者】
【氏名】ハリム カルビン ジャニトラ
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00
G06Q 30/00
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
を備えることを特徴とする予測装置。
【請求項2】
前記入力データは、前記後行期間における前記訓練用店舗に対する助言の有無を含み、
前記予測部は、
前記後行期間において前記判定店舗に対する助言を有とする入力を与えることにより分類されるクラスと、
前記後行期間において前記判定店舗に対する助言を無とする入力を与えることにより分類されるクラスと、
を予測し、
前記助言を無とする入力により予測されたクラスが前記第1クラスであり、前記助言を有とする入力により予測されたクラスが前記第2クラスであれば、前記判定店舗に対して助言をすることを提案する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記入力データは、前記先行期間における前記訓練用店舗に対する助言の有無をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記入力データは、前記後行期間における前記訓練用店舗に対する助言の強さを段階的に表す複数のレベルのうち、いずれかのレベルを含み、
前記予測部は、前記後行期間において前記判定店舗に対する前記複数のレベルのそれぞれを入力として与えることにより、前記複数のレベルのそれぞれに応じたクラスを予測し、
前記複数のレベルのうち、前記予測されたクラスが前記第2クラスであるレベルであって、最も弱い助言の強さを表すレベルを特定し、
前記判定店舗に対して前記特定されたレベルの強さで助言をすることを提案する
ことを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
【請求項5】
前記入力データは、前記先行期間における前記訓練用店舗に対する助言の強さのレベルをさらに含む
ことを特徴とする請求項4に記載の予測装置。
【請求項6】
前記複数の既存店舗と前記複数の新規店舗と、の各店舗について
当該各店舗に設定される先行期間は、当該各店舗の電子市場における開店時期を始期とし、当該開店時期から第1期間経過後を終期とし、
当該各店舗に設定される後行期間は、当該各店舗に設定された前記先行期間の終期を始期とし、前記後行期間の始期から第2期間経過後を終期とする
ことを特徴とする請求項1に記載の予測装置。
【請求項7】
前記各店舗の前記先行期間における成果は、前記先行期間における最大月間売上であり、前記先行期間における前記最大月間売上と第1閾値との大小比較により、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかが決められ、
前記各店舗の前記後行期間における成果は、前記後行期間における最大月間売上であり、前記後行期間における前記最大月間売上と第2閾値との大小比較により、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかが決められる
ことを特徴とする請求項6に記載の予測装置。
【請求項8】
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記各店舗が参加する前記電子市場の管理サーバへ前記各店舗がサインインした頻度を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の予測装置。
【請求項9】
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記電子市場が提供する教育コンテンツを前記各店舗が視聴した頻度もしくは時間長を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の予測装置。
【請求項10】
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記各店舗が前記電子市場にて出品した商品の数の履歴を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の予測装置。
【請求項11】
コンピュータが、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出し、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習し、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する
予測方法。
【請求項12】
コンピュータを、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、予測装置、予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、店舗とその顧客である利用者とがインターネットを介して取引する電子市場が広く利用されている。電子市場を提供する事業者は、電子市場に参加する店舗が売上等の指標を上げることができるように、店舗に対してコンサルティング等の様々な支援を提供している。例えば、電子市場を提供する事業者は、店舗による売上等の指標に関し様々な分析をし、分析に基づいてコンサルティングを行う。そして、その分析の一つとして、各店舗の成長を予測する技術を利用することもできる。
【0003】
例えば、特許文献1には、多数の店舗の実績データにて機械学習された学習済みモデルを利用して、対象店舗の売上高を予測する店舗支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、膨大な数の店舗が参加する大規模な電子市場においては、電子市場を提供する事業者がすべての店舗に対して、重点的なコンサルティングを行うことは難しいという実情がある。しかし、その一方で、スタートアップと呼ばれるような創業間もない店舗や新規事業に取り組む店舗等においては、現状における売上等の指標が低い場合であっても、今後見込まれる成長のために、電子市場を提供する事業者が当該店舗に対して重点的なコンサルティングをすることが有益な場合がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためのもので、今後見込まれる成長のために、重点的なコンサルティングが有益な店舗を予測する予測装置、予測方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る予測装置は、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の観点に係る予測方法は、
コンピュータが、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出し、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習し、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する。
【0009】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、今後見込まれる成長のために、重点的なコンサルティングが有益な店舗を予測する予測装置、予測方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】予測装置と他の機器との連携を示す説明図である。
【
図2】各店舗についての先行期間と後行期間を示す説明図である。
【
図3】予測装置の機能的な構成を示す説明図である。
【
図4】学習処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】予測処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図6】提案処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
(予測装置と及び端末とプログラムの関係)
本実施例に係る予測装置は、電子市場にある程度の長期間参加した既存店舗の活動および成果に基づいて推定モデルを訓練し、電子市場に最近参加して活動を始め、一定の当初期間の成果が得られた新規店舗の今後の成長の成否を推定するものである。予測装置は、1台もしくは複数台のサーバ装置により構成される。予測装置は、
店舗端末を使用する店舗と、利用者端末を使用する利用者と、間の取引の履歴、
店舗が店舗端末を介して電子市場にアクセスした頻度
等、当該店舗が得た成果や当該店舗がした活動に係るデータを収集し、収集したデータに基づいて推定モデルを生成する。なお、店舗端末や利用者端末としては、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ等の種々の情報処理装置を採用することができる。
【0014】
さて、本実施例の予測装置は、プログラムをコンピュータに実行させることにより実現するのが一般的であるが、専用電子回路により処理を実行させることも可能である。
【0015】
このほか、コンピュータと専用電子回路の中間形態として、プログラムを電子回路の設計スクリプトにコンパイルして、当該設計スクリプトに基づいて電子回路を動的に構成するFPGA(Field Programmable Gate Array)などの技術を適用することにより、本実施例の予測装置を構成することも可能である。
【0016】
本実施例に係る予測装置は、電子市場に参加する店舗が使用する店舗端末、及び、当該店舗から商品やサービスを購入する顧客である利用者が使用する利用者端末と通信をする1台又は複数台のサーバコンピュータが、1つ又は複数のサーバプログラムにより実現される各機能を実行することによって実現される。
【0017】
本実施例に係る端末は、スマートフォン等を実現する端末コンピュータであり、電子市場を提供する事業者から、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の情報記録媒体や配布サーバ等を通して提供された端末プログラムを実行することによって実現することができる。端末プログラムとしては、いわゆる「アプリ(App)」に相当するものを採用することができ、当該事業者にかわって当該アプリを配布するアプリストアから入手することも可能である。
【0018】
このほか、端末プログラムとして、一般的なブラウザを採用することもできるし、ブラウザ上で動作するスクリプトプログラムを端末プログラムとして採用することもできる。
【0019】
これらの場合、端末コンピュータで動作するアプリやブラウザは、電子市場において取引をするためのプラットフォームを店舗又は顧客である利用者に提供するためのインターフェースとなる。
【0020】
一般に、サーバコンピュータや端末コンピュータで実行されるプログラムは、コンパクトティスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な非一時的(non-transitory)情報記録媒体に記録することができる。この情報記録媒体は、サーバコンピュータとは独立して配布・販売することもできる。
【0021】
サーバコンピュータや端末コンピュータでは、フラッシュメモリやハードディスク等の非一時的(non-transitory)情報記録媒体に記録されたプログラムを、一時的(temporary)記憶装置であるRAM(Random Access Memory)に読み出してから、読み出されたプログラムに含まれる指令をCPU(Central Processing Unit)が実行する。ただし、ROMとRAMを一つのメモリ空間にマッピングして実行することが可能なアーキテクチャでは、ROMに格納されたプログラムに含まれる指令を、直接CPUが読み出して実行する。
【0022】
さらに、サーバプログラムや端末プログラムは、当該プログラムが実行されるコンピュータとは独立して、コンピュータ通信網等の一時的(temporary)伝送媒体を介して、事業者が管理する配布サーバ等からサーバコンピュータや端末コンピュータ等へ配布・販売することができる。
【0023】
なお、予測装置が複数のコンピュータにより構成される場合には、各コンピュータで動作するプログラムは、互いに異なる機能を有しつつ協働する、互いに異なる複数のサーバプログラムということになる。そこで当該複数のプログラムを合わせたものは、予測装置を実現するためのシステムプログラムと考えることができる。
【0024】
(全体構成)
図1は、予測装置と他の機器との連携を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0025】
予測装置100は、1台以上の店舗端末200a, 200b, 200c, ...と、1台以上の利用者端末300a, 300b, ...と、管理サーバ400と、インターネット等のコンピュータ通信網500を介して接続されている。以下、店舗端末200a, 200b, 200c, ...を総称して店舗端末200、利用者端末300a, 300b, ...を総称して利用者端末300とも表す。
【0026】
予測装置100は、電子市場を提供する事業者が運用するもので、電子市場にて店舗が開店した時期から一定の長さの期間(以下「先行期間」という。)の間に店舗が行った活動と、先行期間の間に店舗が達成した成果に基づいて、その後の一定の長さの期間(以下「後行期間」という。)における当該店舗の成果を予測する。
【0027】
図2は、各店舗についての先行期間と後行期間を示す説明図である。本図に示すように、先行期間LPは、電子市場に店舗が参加を始めた開店時期を始期とし、その開店時期から第1期間経過後を終期として設定される期間である。
【0028】
後行期間TPは、当該先行期間LPの終期を始期とし、当該先行期間LPの終期から第2期間経過後を終期として設定される期間である。
【0029】
第1期間と第2期間の長さは全店舗に共通の任意の定数である。例えば6箇月や1年, 2年, 3年などの期間長を採用することができる。第1期間と第2期間とは、同じ長さとしても良いし、異なる長さとしても良い。
【0030】
予測装置100は、後行期間における店舗の成長を、当該店舗の先行期間における活動に基づいて予測する。したがって、予測の対象となる店舗は、先行期間を経過したが、後行期間は満了していない店舗であり、典型的には、先行期間満了直後の店舗である。以下、このように予測の対象となる店舗を「新規店舗」という。
【0031】
この予測をするため、予測装置100は、推論モデルを用いる。推論モデルは、電子市場に参加する店舗のうち、先行期間と後行期間の両方を満了した店舗(以下「既存店舗」という。)の先行期間における活動及び成果、ならびに、当該既存店舗の後行期間における成果に基づいて、訓練される。そして、予測装置110は、新規店舗の先行期間における活動および成果に基づいて、学習済み推論モデルにより、新規店舗の成長、すなわち、新規店舗の後行期間における成果を予測する。
【0032】
さらに、予測装置100は、電子市場を提供する事業者に、予測結果に基づいた提案、例えば、重点的なコンサルティングが有益な新規店舗の提案や、コンサルティングに係る助言の強さ(助言の頻度や時間長等)はどの程度が有益か、の提案をする。
【0033】
店舗端末200は、電子市場に参加する店舗が使用する端末である。また、利用者端末300は、電子市場にて店舗から商品やサービスを購入する顧客、すなわち、一般の利用者が使用する端末である。
【0034】
管理サーバ400は、電子市場を提供する事業者が管理するもので、店舗と一般の利用者とが取引する電子市場を提供する。また、管理サーバ400は、電子市場に参加する店舗に向けて、売上等の指標を向上させること等を目的とした教育コンテンツを提供する。
【0035】
(予測装置の機能構成)
図3は、予測装置の機能的な構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。予測装置100は、抽出部110と、店舗DB 111と、学習部120と、予測部130と、を備える。
【0036】
抽出部110は、店舗DB 111にアクセスして、推論モデルIMを訓練するための訓練用店舗を抽出する。ここで、店舗DB 111には、各店舗端末200に係る参加時期、取引、売上、電子市場に関連する各種サーバ等にサインインした頻度、電子市場が提供する教育コンテンツを視聴した頻度又は時間長、店舗が出品した商品の数の履歴等、店舗に係る各種のデータが登録されている。また、過去にコンサルティングや予測をするために算定したデータを店舗DB 111に記録しておき、再利用をすることも可能である。
上記のように、訓練用店舗としては、上記の既存店舗、すなわち、先行期間と後行期間の両方を経た店舗のうち、一定の条件を満たすものを採用する。
【0037】
学習部120は、抽出部110が抽出した複数の訓練用店舗に係るデータを店舗DB 111から取得して複数の訓練データTDを生成する。そして、当該複数の訓練データTDにより推論モデルIMを学習し、学習済み推論モデルLIMを得る。各訓練データTDは、後述するように、訓練用店舗の先行期間における活動および成果、ならびに、後行期間における成果を表すものである。
【0038】
予測部130は、学習部120が学習した学習済み推論モデルLIMにより、新規店舗の成長を予測する。予測部130は、現時点でちょうど先行期間を満了した新規店舗をすべて予測の対象としても良いし、新規店舗の中から事業者が選択した店舗を予測の対象としても良い。店舗DB 111から新規店舗に係る新規店舗の入力データNDを抽出し、学習済み推論モデルLIMに入力し、新規店舗が分類される成果を予測して、当該新規店舗に係る予測結果を表すクラス予測PCを出力する。また、予測部130は、予測結果に基づく提案を行うこととしても良い。
新規店舗データNDは、後述するように、新規店舗の先行期間における活動および成果を表すものであり、クラス予測PCは、新規店舗の後行期間における成果の予測を表すものである。
【0039】
(学習処理)
図4は、学習処理の制御の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。
【0040】
予測装置100は、学習処理において、予測の前提となる推論モデルの学習を行う。学習処理は、例えば、予測装置100が学習処理をスタートするための指示を受け付けるとスタートする。また、第1期間と第2期間が月単位で設定されている場合には、毎月、毎四半期、毎年等の定期的なバッチ処理で学習を実行することとしても良い。
【0041】
学習処理がスタートすると、まず、抽出部110は、訓練データセットをクリアする(ステップS200)。訓練データセットは、推論モデルIMの訓練に用いる訓練データの集合であり、以下の処理によって、収集される。
【0042】
ついで、抽出部110は、店舗DB 111にアクセスして、先行期間と後行期間を既に経た既存店舗を抽出する(ステップS201)。
【0043】
ここで、店舗DB 111には、店舗を識別するための店舗IDに対応付けられて、以下の情報が登録されている。
(a) 当該店舗が電子市場に参加した日時を表す開店時期。
(b) 当該店舗が当該電子市場にて販売する商品やサービスのそれぞれの諸元を登録あるいは更新した日時等の登録・更新履歴。
(c) 当該店舗が当該電子市場にて商品やサービスを販売するために公開した販売ページを各利用者が閲覧した日時や当該販売ページにおける滞在時間等の閲覧履歴。
(d) 当該店舗が当該電子市場にて各利用者とした取引に係る商品やサービスの種別、日時、価格、個数、受注日時、出荷・提供日時等の取引履歴。
(e) 当該店舗が当該電子市場にて各利用者とした各種の連絡のやりとりの日時や内容等の連絡履歴。
(f) 当該店舗が当該電子市場にて各利用者から受けたレビューに係る評価値等の評価履歴。
(g) 当該店舗が電子市場における販売促進を図るために実行した施策の履歴を表す販売促進履歴。当該販売促進履歴には、たとえば、
販売促進を図るための管理ツールに当該店舗がサインインした日時の履歴、
管理ツールを介して購入した広告枠についての種々の情報(広告の種別、広告商品名、広告枠名、広告枠を購入した日時・購入価格・購入数量、広告枠の掲載期間、広告枠のステータス等)の履歴
のような情報が含まれる。なお、販売促進のための管理ツールは、管理サーバ400により運営されても良いし、管理サーバ400と協働しつつ販売促進を担当する他のサーバにより運営されても良い。
(h) 電子市場が提供する教育コンテンツを当該店舗が視聴した日時や時間長、視聴された教育コンテンツに係る効果確認テストの成績等の受講履歴。
【0044】
なお、実施態様によっては、店舗DB 111に、これらのデータの一部のみを登録することとしても良いし、すべてを登録することとしても良い。
【0045】
また、これらのデータから算出・特定される新たなデータについては、必要になる度に再算出することとしても良いし、店舗DB 111にその値を登録して、再算定をせずに再利用できるようにしても良い。
【0046】
既存店舗を抽出するには、店舗DB 111において、現在時点と開店時期(a)との差が、第1期間と第2期間との和以上の店舗を検索すれば良い。
【0047】
次に、抽出部110は、抽出された既存店舗のそれぞれについて、以下の処理を繰り返す(ステップS202)。
【0048】
まず、抽出部110は、当該店舗の先行期間および後行期間における成果に基づいて、当該店舗の先行期間および後行期間におけるクラスを特定する(ステップS203)。本実施形態では、各店舗は、先行期間と後行期間のそれぞれの成果に基づいて、第1クラスと第2クラスのいずれかに分類される。
【0049】
ここで、第1クラスならびに第2クラスとは、先行期間LP又は後行期間TPにおける成果に応じて各店舗が分類されるクラスのことである。たとえば、各店舗の先行期間LPにおける成果として、先行期間LPにおける最大月間売上を採用することができる。
【0050】
先行期間LPにおける最大月間売上と第1閾値との大小比較により、第1クラスと第2クラスとのいずれに分類されるかを決めることができる。また、各店舗の後行期間TPにおける成果は、後行期間TPにおける最大月間売上を採用し、後行期間TPにおける最大月間売上と第2閾値との大小比較により、第1クラスと第2クラスとのいずれに分類されるかを決めることができる。第1閾値と第2閾値とは同一の値であってもよいし、第2閾値として第1閾値より大きい値を設定しても良い。
この態様では、
先行期間LPにおいて、最大月間売上が第1閾値よりも小さい店舗は、第1クラスに分類され、第1閾値以上の店舗は、第2クラスに分類され、
後行期間TPにおいて、最大月間売上が第2閾値よりも小さい店舗は、第1クラスに分類され、第2閾値以上の店舗は、第2クラスに分類される。
【0051】
各店舗の先行期間や後行期間における最大月間売上は、店舗DB 111に登録された開店日時(a)、取引履歴(c)に係るデータを集計することで、算定することができる。
【0052】
このほか、店舗を最大月間売上に応じてカテゴリ分けしてコンサルティングに利用する運用を既に採用している場合等には、そのカテゴリを再利用して、店舗が属するクラスを定めても良い。
【0053】
たとえば、最大月間売上に応じて、A乃至Fの6種の店舗のカテゴリを定めているとする。
【0054】
この場合、先行期間LPおよび後行期間TPのそれぞれについて、各店舗のカテゴリがA乃至Cであれば、当該店舗を第1クラスに、D乃至Fであれば、当該店舗を第2クラスに、それぞれ分類する等の手法を採用することができる。
【0055】
なお、店舗をカテゴリに分類する際のカテゴリ数や、分類の条件等を任意に変更することも可能である。このほか、先行期間LPにおいては、カテゴリA乃至Cに属する店舗を第1クラスに分類し、後行期間TPにおいてはカテゴリE乃至Fに属する店舗を第2クラスに分類する、というように、途中のカテゴリ(本例ではD)はスキップするような第1クラス、第2クラスの分類を採用しても良い。
【0056】
また、各店舗を成果に応じて分類する手法は、上記に限られない。たとえば、
閲覧履歴(c)に基づいて算定される販売ページの閲覧数や平均滞在時間、
取引履歴(d)等に基づいて算定される最大月間売上や平均週間売上、
閲覧履歴(c)および取引履歴(d)に基づいて算定される販売ページ閲覧後の商品やサービスの購入率やキャンセル率、
連絡履歴(e)や評価履歴(f)に基づいて算定される利用者から平均好感度、
これらの組み合わせ
など、店舗DB 111にデータに基づいて成果を算定し、クラス分類をしても良い。
【0057】
上記のように、ある店舗のある期間について算定あるいは特定されたデータは、店舗DB 111に登録することにより、再利用をすることもできる。たとえば、ある店舗の先行期間および後行期間のクラスを店舗DB 111にて検索し、既に登録されている場合には、得られたクラスを利用すれば良いし、見つからなかった場合には、クラスを算定してそのデータを利用するとともに、店舗DB 111に登録すれば良い。
【0058】
なお、これらのデータは、電子市場を提供する事業者から店舗へ提示されるレポートでも利用することが可能である。
【0059】
ついで、抽出部110は、先行期間に係るクラスが第1クラスか否かを判定する(ステップS204)。第1クラスであれば(ステップS204;Yes)、当該店舗は訓練用店舗として採用され、抽出部110は、当該店舗の先行期間における活動に係るデータを特定する(ステップS205)。店舗の活動に係るデータとしては、たとえば、クラス分類に際して利用した成果に係る各種の数値パラメータとして、
開店日時(a)から算定される現在日時までの経過期間長、
登録・更新履歴(b)に基づいて算定される登録・更新の頻度、登録されている商品・サービスの数、
取引履歴(d)に基づいて算定される受注から出荷・提供までに要した平均時間長や最大時間長、
取引履歴(d)に基づいて算定される当該期間の総売上や取引された商品・サービスの総数、
取引履歴(d)に基づいて算定される当該期間の商品・サービスのキャンセル数、
連絡履歴(e)に基づいて算定される利用者からの連絡に対する応答に要した平均時間長や最大時間長、
販売促進履歴(g)に基づいて算定されるサインインの頻度、利用総時間、1回のサインインに係る平均滞在時間、購入した広告枠の購入頻度・購入日時・購入価格・購入数量・広告掲載期間、
受講履歴(h)に基づいて算定される視聴頻度、1回の視聴の平均時間長、視聴後の平均成績や総合成績
などを利用することができる。
また、数値パラメータではなく、活動の度合(たとえば当該店舗が行った販売促進活動の度合をカテゴリ分けしたもの)や種別(たとえば購入した広告枠の種別)を表すパラメータを採用しても良い。
このほか、実施態様によっては、これらのすべてを採用しても良いし、一部を採用しても良いし、これら以外のデータを利用しても良い。これらの活動に係るデータは、ひとまとめにして、活動ベクトルとして表現することができる。
【0060】
そして、抽出部111は、当該店舗に係る訓練データを生成する(ステップS206)。生成される訓練データにおいては、
当該店舗の先行期間における活動を表す活動ベクトルを入力データとし、
当該店舗の後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
ことができる。
【0061】
なお、入力データには、上記の活動ベクトルのほか、当該店舗の業種や詳細な種別、規模、資本金、社員数、所在地の地方や都道府県、当該店舗が登録した商品やサービスの種別、当該店舗が電子市場における店舗ランキングにて獲得した順位や当該順位等に基づくランク等、店舗に係る種々の属性や情報を含めることとしても良い。
【0062】
そして、抽出部111は、生成された訓練データを、訓練データセットに追加する(ステップS207)。
【0063】
訓練データを訓練データセットに追加した後は、上記の処理を他の既存店舗についても繰り返す(ステップS208)。
【0064】
一方、先行期間に係るクラスが第1クラスでない場合(ステップS204;No)、当該既存店舗は訓練用店舗に該当しないので、予測装置100は、制御をステップS208に進める。
【0065】
抽出された既存店舗のすべてについての繰り返し(ステップS202-S208)が終了したら、訓練データセットにより、推論モデルIMを訓練する(ステップS209)。訓練データセットにおいて、入力データから正解データへの予測の誤りを最小化するように訓練をすることで、推論モデルIMのパラメータが学習・調整されることになる。
【0066】
推論モデルIMには、たとえば、機械学習アルゴリズムとしてGradient Boosting Decision Tree (GBDT)を利用するLightGBM(商標)を利用することができるが、種々のニューラルネットワークの技術を応用したり、各種の機械学習モデル、深層学習モデルを採用することもできる。
【0067】
このようにして、推論モデルIMが訓練されると、学習処理は終了する。
【0068】
(予測処理)
図5は、予測処理の制御の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。
【0069】
予測装置100は、予測処理において、学習部120が学習した学習済み推論モデルにより、新規店舗の成長を予測し、重点的なコンサルティングを行うことが有益な店舗を提案する。
【0070】
予測処理は、例えば、予測装置100が予測処理をスタートするための指示を受け付けるとスタートする。また、毎月、毎四半期、毎年等の定期的なバッチ処理にて、予測処理を実行しても良い。
【0071】
予測処理がスタートすると、予測部130は、まず、提案店舗セットをクリアする(ステップS300)。提案店舗セットは、重点的なコンサルティングが有益であると考えられる旨を電子市場の事業者に対して提案する店舗の集合であり、以下の処理によって、選出される。
【0072】
ついで、予測部103は、店舗DB 111にアクセスして、複数の店舗から、先行期間は経たが後行期間は満了していない新規店舗を抽出する(ステップS301)。たとえば、先行期間の長さである第1期間の長さとして3年を採用し、バッチ処理にて毎月を採用する場合には、開店時期からの経過が3年以上3年1月未満の店舗を店舗DB 111にて検索すれば、毎月新たに先行期間を満了した店舗を新規店舗として抽出することができる。
【0073】
このように、新規店舗の検索に利用する開店時期からの経過の下限は、第1期間の長さとする。また、上限は、第1期間の長さに対して、バッチ処理が実行される間隔を加算したものとすれば良い。
【0074】
なお、この上限や、もしくは、第1期間の長さに対して加算する長さについては、予測装置100に対して明示的に指示することとしても良い。
【0075】
そして、予測部130は、抽出された新規店舗のそれぞれについて、以下の処理を繰り返す(ステップS302)。
【0076】
まず、予測部130は、学習処理と同様に、当該店舗の先行期間における成果に基づいて、当該店舗の先行期間におけるクラスを特定する(ステップS303)。
【0077】
ついで、予測部130は、先行期間に係るクラスが第1クラスか否かを判定する(ステップS304)。第1クラスであれば(ステップS304;Yes)、当該新規店舗は判定店舗として採用され、予測部130は、学習処理と同様に、当該店舗の先行期間における活動に係るデータを特定する(ステップS305)。ここで特定されるデータには、当該店舗の属性に係る情報を含めても良い。
【0078】
そして、予測部130は、学習処理と同様に、当該判定店舗に係る入力データを生成する(ステップS306)。すなわち、当該入力データには、先行期間における当該判定店舗の活動ベクトルや、当該判定店舗の種々の属性情報を含めることができる。
【0079】
ついで、予測部130は、生成された入力データを学習済み推論モデルLIMに入力して、判定店舗の後行期間における成果が分類されるべきクラスを推定させて出力させる(ステップS307)。一般に、推論モデルLIMの出力からは、後行期間における成果が第1クラスに分類される第1確率と、後行期間における成果が第2クラスに分類される第2確率と、を得ることができる。
【0080】
そして、予測部130は、第2確率が所定閾値以上であるか否かにより、後行期間における成果が第2クラスに分類されるか否かを判定し(ステップS308)、第2クラスに分類されれば(ステップS308;Yes)、当該判定店舗である新規店舗を提案店舗セットに追加する(ステップS309)。所定閾値としては、たとえば50%を採用することができるが、予測装置100を使用する事業者が適宜指定することも可能である。
【0081】
判定店舗を提案店舗セットに追加した後は、上記の処理を他の新規店舗について繰り返す(ステップS310)。
【0082】
一方、後行期間における成果が第2クラスに分類されなければ(ステップS308;No)、予測装置100は、制御をステップS310に進める。
【0083】
このほか、先行期間における成果が第1クラスでなければ(ステップS304;No)、当該新規店舗は先行期間においてある程度の成長をしたこととなるので、本実施形態に係る予測の対象とはせず、予測装置100は、制御をステップS310に進める。
【0084】
抽出された新規店舗のすべてについての繰り返し(ステップS302-S310)が終わったら、予測装置130は、重点的なコンサルティングを行うことが有益な新規店舗の集合として、提案店舗セットを出力して(ステップS311)、本処理を終了する。
【0085】
本実施形態によれば、先行期間における成果が第1クラスに分類される新規店舗のうち、後行期間における成果が第2クラスに成長すると見込まれる店舗を予測して、重点的なコンサルティングを行うことが有益な店舗として提案することができる。
【0086】
(後行期間における助言)
上記実施例では、推論モデルIMに対する入力データとして、店舗の活動ベクトルや店舗の属性情報を利用していた。以下では、学習においては、訓練データにおける入力データにコンサルティングにおける助言に関する情報を含め、予測においては、入力データに、助言についての仮定を含める態様について説明する。なお、上記実施例と同様の機能および処理については、理解を容易にするため、適宜説明を省略する。
【0087】
本実施例では、訓練用店舗における入力データに
当該訓練用店舗に対して後行期間においてコンサルティングによる助言をしたか否か、あるいは、
当該訓練用店舗に対して後行期間においてコンサルティングによりした助言の強さのレベル
を含めることにより、判定店舗に対して重点的なコンサルティングに係る助言をすべきか否か、あるいは、その助言の強さのレベルはどの程度にすべきか、を提案することができる。以下、詳細に説明する。
【0088】
まず、後行期間における助言の有無を入力データに含める態様について説明する。この態様の学習処理では、後行期間における助言の有無をたとえば「1」および「0」により表現して、これを含む訓練データを生成して、推論モデルLIMを訓練する。
【0089】
一方、予測処理において、まだ後行期間を満了していない判定店舗は、後行期間における助言の有無は確定していない。
【0090】
そこで、予測部130は、上記実施例の入力データに対して、
後行期間TPにおいて判定店舗に対する助言を有と仮定するデータをさらに追加した助言有入力データと、
後行期間TPにおいて判定店舗に対する助言を無と仮定するデータをさらに追加した助言無入力データと、
を生成する。
【0091】
そして、助言有入力データと、助言無入力データと、のそれぞれを、学習済推論モデルLIMに与えて、後行期間満了時におけるクラスをそれぞれ予測する。以下、助言有入力データにより予測されたクラスを「助言有クラス」と呼び、助言無入力データにより予測されたクラスを「助言無クラス」と呼ぶ。
【0092】
そして、予測部130は、判定店舗の助言無クラスが第1クラスであり、助言有クラスが第2クラスであれば、これを提案店舗セットに追加することとする。
【0093】
この態様では、提案店舗セットに含まれる新規店舗は、後行期間において電子市場を提供する事業者がコンサルティングに係る助言をしなければ、その成果は第1クラスのままであるが、助言をすれば、その成果が第2クラスへ向上すると予想される店舗となる。
【0094】
したがって、電子市場を提供する事業者は、多数の新規店舗の中から重点的に助言をすべき新規店舗を知ることができる。
【0095】
なお、この態様では、先行期間における助言の有無についても、入力データに含めることにより、その影響を考慮した予測をすることも可能である。
【0096】
次に、後行期間における助言の強さのレベルを入力データに含める態様について説明する。この態様の学習処理では、後行期間における助言の強さのレベルを、たとえば、1, 2, ..., Nという数値により表現し、これを含む訓練データを生成して、推論モデルLIMを訓練する。
【0097】
助言の強さは、後行期間TPにおいて電子市場を提供する事業者からその既存店舗に対して運営に関する助言の程度を表す項目である。助言の強さは、単純に助言を行った回数や、その回数を段階的に分類して表現した数値であってもよいし、助言のために利用した手段の数であってもよい。
【0098】
助言の強さが助言のために利用した手段の数である場合、たとえば、電話のみで助言を行った場合には「1」、電話とメールで助言を行った場合には「2」、電話とメールと対面とで助言を行った場合には「3」というように設定されてもよい。
【0099】
この態様の予測処理では、上記実施例の入力データに対して、
後行期間TPにおいて判定店舗に対する助言の強さのレベルを1と仮定するデータをさらに追加した入力データ1と、
後行期間TPにおいて判定店舗に対する助言の強さのレベルを2と仮定するデータをさらに追加した入力データ2と、
...、
後行期間TPにおいて判定店舗に対する助言の強さのレベルをNと仮定するデータをさらに追加した入力データNと、
を生成する。
【0100】
そして、予測部130は、入力データ1, 入力データ2, ..., 入力データNのそれぞれを、学習済推論モデルLIMに与えて、後行期間満了時におけるクラスをそれぞれ出力させる。
【0101】
入力データi (i = 1, 2, ..., N)に対して出力されるクラスは、後行期間内においてレベルiの助言をしたと仮定して、後行期間満了時に当該店舗が分類されるクラスを予測したものである。
【0102】
そして、予測部130は、レベルiについて予測されたクラスが第1クラスであり、レベル(i+1)について予測されたクラスが第2クラスであるような最小の整数iを、1, 2, ..., Nのから小さい順に探す。これは、後行期間における助言の強さがレベルiであれば、その成果は第1クラスのままであるが、後行期間における助言の強さがレベル(i+1)であれば、その成果が第2クラスへと向上すると予想される境目を探していることになる。すなわち、レベル(i+1)は、その成果が第2クラスへ向上すると予想されるレベルのうち、最も弱いレベルである。
【0103】
予測部130は、そのような整数iを見つけて、レベル(i+1)とともに、当該判定店舗を提案店舗セットに追加して、出力する。
【0104】
なお、この態様でも、先行期間における助言の強さのレベルを入力データに含めることにより、その影響を考慮した予測をすることが可能である。
【0105】
なお、これらの助言に係る態様では、後行期間において第2クラスに属するか否かを判定するための確率の所定閾値として、50%よりも低い値を採用することもできる。また、上記の予測処理にて、後行期間において第1クラスになる確率と第2クラスになる確率とが拮抗(たとえば、第1クラスになる確率と第2クラスになる確率と、の差が所定定数(たとえば、10%や20%。)以下である場合。)しているような店舗について、助言の有無や強さのレベルを提案させることとしても良い。
【0106】
図6は、提案処理の制御の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。なお、本態様における学習処理では、訓練データに含まれる入力データに、後行期間(や先行期間)における助言の有無や助言の強さのレベルを含めることとして、上記の学習処理と同様に訓練を行えば良い。
【0107】
上記のように、助言の強さのレベルは、1, 2, ..., NのN段階である。したがって、助言の有無を提案する態様は、助言無をレベル1、助言有をレベル2に対応付け、N=2に設定した態様と考えることができる。
【0108】
本処理では、まず、予測装置100は、提案の対象となる店舗の指定を受け付ける(ステップS400)。たとえば、事業者が明示的に所望の店舗を指定しても良いし、予測処理にて求められた確率に基づいて、店舗が指定されるように処理することとしても良い。
【0109】
そして、予測装置100は、上記予測処理と同様に、指定された店舗の活動に係るデータを特定する(ステップS401)。ここで特定されるデータには、上記予測処理と同様に、店舗の属性を含めても良い。
【0110】
ついで、予測装置100は、助言の強さのレベルi = 1, 2, ..., Nについて、以下の処理を繰り返す(ステップS402)。
【0111】
すなわち、予測装置100は、特定された活動に係るデータと、レベルiと、に基づいて、入力データを生成する(ステップS403)。
【0112】
そして、予測装置100は、生成された入力データを学習済み推論モデルLIMに入力して、指定された店舗の後行期間における成果が分類されるべきクラスを推定させて出力させる(ステップS404)。
【0113】
ついで、予測装置100は、後行期間について予測されたクラスが第2クラスであるか否かを調べる(ステップS405)。第2クラスであれば(ステップS405;Yes)、予測装置100は、繰り返しから抜けて、当該店舗に対して後行期間に与えるべき助言の強さのレベルとして、レベルiを提案し(ステップS406)、本処理を終了する。
【0114】
一方、第2クラスでなければ(ステップS405:No)、iを1増やして繰り返しを続ける(ステップS407)。
【0115】
繰り返しが終了したら、予測装置100は、最大の強さの助言を与えたとしても、後行期間における成果が第2クラスに至る可能性が低い旨のメッセージを出力して(ステップS408)、本処理を終了する。
【0116】
このように、本態様では、電子市場を提供する事業者は、出力された提案店舗セットに含まれる店舗ならびにその店舗に対して行うべき助言の強さのレベルを見ることで、多数の新規店舗の中から重点的に助言をすべき店舗を知ることができるとともに、有益で効果的な助言の強さを知ることができる。
【0117】
(変形例)
上述した実施形態では、予測装置100と管理サーバ400とが別体として構成されているが、これらは一体として構成されていてもよい。
【0118】
また、店舗DB 111には、電子市場における店舗に関連する情報をすべて登録することを前提としていたが、電子市場サーバにて店舗に関連する情報を整理、分析、収集、積算した上で、電子市場サーバが学習および予測に用いるデータを店舗DB 111に直接もしくは予測装置100や管理サーバ400を介して登録することとしても良い。
【0119】
(本実施例により実現される発明)
以上説明したように、本実施形態は、以下に掲げる発明を実現する。
【0120】
(付記1)
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
を備えることを特徴とする予測装置。
【0121】
(付記2)
前記入力データは、前記後行期間における前記訓練用店舗に対する助言の有無を含み、
前記予測部は、
前記後行期間において前記判定店舗に対する助言を有とする入力を与えることにより分類されるクラスと、
前記後行期間において前記判定店舗に対する助言を無とする入力を与えることにより分類されるクラスと、
を予測し、
前記助言を無とする入力により予測されたクラスが前記第1クラスであり、前記助言を有とする入力により予測されたクラスが前記第2クラスであれば、前記判定店舗に対して助言をすることを提案する
ことを特徴とする付記1に記載の予測装置。
【0122】
(付記3)
前記入力データは、前記先行期間における前記訓練用店舗に対する助言の有無をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の予測装置。
【0123】
(付記4)
前記入力データは、前記後行期間における前記訓練用店舗に対する助言の強さを段階的に表す複数のレベルのうち、いずれかのレベルを含み、
前記予測部は、前記後行期間において前記判定店舗に対する前記複数のレベルのそれぞれを入力として与えることにより、前記複数のレベルのそれぞれに応じたクラスを予測し、
前記複数のレベルのうち、前記予測されたクラスが前記第2クラスであるレベルであって、最も弱い助言の強さを表すレベルを特定し、
前記判定店舗に対して前記特定されたレベルの強さで助言をすることを提案する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の予測装置。
【0124】
(付記5)
前記入力データは、前記先行期間における前記訓練用店舗に対する助言の強さのレベルをさらに含む
ことを特徴とする付記4に記載の予測装置。
【0125】
(付記6)
前記複数の既存店舗と前記複数の新規店舗と、の各店舗について
当該各店舗に設定される先行期間は、当該各店舗の電子市場における開店時期を始期とし、当該開店時期から第1期間経過後を終期とし、
当該各店舗に設定される後行期間は、当該各店舗に設定された前記先行期間の終期を始期とし、前記後行期間の始期から第2期間経過後を終期とする
ことを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の予測装置。
【0126】
(付記7)
前記各店舗の前記先行期間における成果は、前記先行期間における最大月間売上であり、前記先行期間における前記最大月間売上と第1閾値との大小比較により、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかが決められ、
前記各店舗の前記後行期間における成果は、前記後行期間における最大月間売上であり、前記後行期間における前記最大月間売上と第2閾値との大小比較により、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかが決められる
ことを特徴とする付記6に記載の予測装置。
【0127】
(付記8)
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記各店舗が参加する前記電子市場の管理サーバへ前記各店舗がサインインした頻度を含む
ことを特徴とする付記6又は7に記載の予測装置。
【0128】
(付記9)
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記電子市場が提供する教育コンテンツを前記各店舗が視聴した頻度もしくは時間長を含む
ことを特徴とする付記6から8のいずれか一項に記載の予測装置。
【0129】
(付記10)
前記各店舗の前記先行期間における活動は、前記先行期間において前記各店舗が前記電子市場にて出品した商品の数の履歴を含む
ことを特徴とする付記6から9のいずれか一項に記載の予測装置。
【0130】
(付記11)
コンピュータが、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出し、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習し、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する
予測方法。
【0131】
(付記12)
コンピュータを、
複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち前記第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する抽出部、
推論モデルを、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間における活動を入力データとし、
前記抽出された訓練用店舗の当該先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする
訓練データにより、学習する学習部、
複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が前記第1クラスに分類される判定店舗の当該先行期間における活動を、前記学習された推論モデルに入力として与えることにより、前記判定店舗の後行期間における成果が、前記第1クラスと前記第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する予測部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【0132】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この開示の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、今後見込まれる成長のために、重点的なコンサルティングが有益な店舗を予測する予測装置、予測方法、及びプログラムに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0134】
100 予測装置
110 抽出部
111 店舗DB
120 学習部
130 予測部
200, 200a, 200b, 200c 店舗端末
300, 300a, 300b 利用者端末
400 管理サーバ
500 コンピュータ通信網
IM 推論モデル
LIM 学習済み推論モデル
LP 先行期間
ND 新規店舗データ
PC クラス予測
TD 訓練データ
TP 後行期間
【要約】
【課題】今後の見込まれる成長のために、重点的なコンサルティングが有益な店舗を予測する。
【解決手段】予測装置100において、抽出部110は、複数の既存店舗から、先行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのうち第1クラスに分類される既存店舗を、訓練用店舗として抽出する。学習部120は、推論モデルを訓練データにより学習する。訓練データは、抽出された訓練用店舗の先行期間における活動を入力データとし、抽出された訓練用店舗の先行期間に後続する後行期間における成果を分類したクラスを正解データとする。予測部130は、複数の新規店舗のうち、先行期間における成果が第1クラスに分類される判定店舗の先行期間における活動を、学習された推論モデルに入力として与えることにより、判定店舗の後行期間における成果が、第1クラスと第2クラスとのいずれに分類されるかを予測する。
【選択図】
図3