(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
(21)【出願番号】P 2023111828
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2018177111の分割
【原出願日】2018-09-21
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵理
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224948(JP,A)
【文献】特開2018-124280(JP,A)
【文献】特開昭62-093810(JP,A)
【文献】特開平09-195151(JP,A)
【文献】米国特許第06155120(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の圧力センサであって、
センサシートと前記センサシートの上下面に設けられた電極シートと、を有し、前記センサシートの圧縮度合いに基づいて出力が変化し、
前記センサシートは、カーボン粒子とバインダー樹脂とを含むカーボンペーストが塗布された基布を有し、前記基布の厚みが、0.09mm以下であり、
前記基布は、複数本の繊維からなる繊維束を編み込んだシート状のポリエステル繊維からなる布であり、横方向の繊維束と縦方向の繊維束とを編み込まれて、繊維束の間に、複数の微小な空隙が設けられており、繊維束間の空隙の大きさは、1μm~100μmであり、
前記バインダー樹脂は、ゴムを含まず、
前記カーボン粒子は、粒径が、0.25μm~1μmであり、
前記カーボンペーストは、前記基布の繊維束間の空隙内に侵入し、前記カーボン粒子が、前記空隙内に保持されて
いる、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記カーボンペーストを、前記基布に印刷したことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記基布の厚みは、0.07mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重測定が可能な、シート状の圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重の計測には、例えば、ロードセルが用いられている。しかしながら、薄型化が困難であり、高価という課題があった。
【0003】
これに対し、下記の特許文献1には、荷重測定が可能な、布状の圧力センサが開示されている。特許文献1に示す圧力センサは、布に導電ゴムを含有させて構成される。そして、特許文献1の圧力センサによれば、荷重を受け、布が圧縮されることにより変化する出力に基づいて、荷重値を検出することができる。布に導電ゴムを含有させた圧力センサは、薄型化を促進できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、シート状の圧力センサにおいて、所定荷重を繰り返し印加した際に出力差が生じるのを抑制する改善策は取られていなかった。特に、出力差は、低荷重域にて、顕著に現れた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、従来に比べて、特に、繰り返し特性を改善した、シート状の圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シート状の圧力センサであって、センサシートと前記センサシートの上下面に設けられた電極シートと、を有し、前記センサシートの圧縮度合いに基づいて出力が変化し、前記センサシートは、カーボン粒子とバインダー樹脂とを含むカーボンペーストが塗布された基布を有し、前記基布の厚みが、0.09mm以下であり、前記基布は、複数本の繊維からなる繊維束を編み込んだシート状のポリエステル繊維からなる布であり、横方向の繊維束と縦方向の繊維束とを編み込まれて、繊維束の間に、複数の微小な空隙が設けられており、繊維束間の空隙の大きさは、1μm~100μmであり、前記バインダー樹脂は、ゴムを含まず、前記カーボン粒子は、粒径が、0.25μm~1μmであり、前記カーボンペーストは、前記基布の繊維束間の空隙内に侵入し、前記カーボン粒子が、前記空隙内に保持されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明では、前記カーボンペーストを、前記基布に印刷したことが好ましい。
【0009】
本発明では、前記基布の厚みは、0.07mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧力センサによれば、繰り返し特性の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の圧力センサの一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すA-A線に沿って切断し矢印方向から見た圧力センサの部分拡大断面図である。
【
図3】荷重計測方法を説明するための模式図である。
【
図4】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に10Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。
【
図5】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に10Nの荷重を印加した際の、変化率(2回目の荷重印加時の電圧値/1回目の荷重印加時の電圧値)のグラフである。
【
図6】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に100Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。
【
図7】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に100Nの荷重を印加した際の、変化率(2回目の荷重印加時の電圧値/1回目の荷重印加時の電圧値)のグラフである。
【
図8】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に1000Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。
【
図9】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に1000Nの荷重を印加した際の、変化率(2回目の荷重印加時の電圧値/1回目の荷重印加時の電圧値)のグラフである。
【
図10】0.07mm厚の基布を使用した際の、荷重と電圧との関係を示すグラフである。
【
図11】基布の厚みが異なる各サンプル(圧力センサ)に1000Nの荷重を印加し解放したときの、加圧回数とヒステリシスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
まずは、本発明者が、本発明を開発するに至った技術の推移について説明する。シート状の圧力センサでは、繰り返し同じ荷重を印加したとき、1回目に荷重印加した際の電圧値V1と、2回目に荷重印加した際の電圧値V2との変化率(V2/V1)が大きくなりやすく、特に、その傾向は、低荷重時に顕著に現れた。
【0014】
これは、荷重印加による基布のへたりが原因であると考えられる。
【0015】
そこで、本発明者は、シート状の圧力センサにおいて、安定した繰り返し特性を得ることを目指して本発明を開発するに至った。すなわち、本実施形態は、以下の特徴的部分を備えている。
【0016】
本実施形態における圧力センサは、カーボンペーストが塗布された基布を有し、基布の厚みが、0.09mm以下であることを特徴とする。
【0017】
以下、図面を参照しながら本実施形態の圧力センサの構成を説明する。
図1は、本実施形態の圧力センサの一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示すA-A線に沿って切断し矢印方向から見た圧力センサの部分拡大断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、先端側に、例えば、円形の計測部2を具備する。
図1では、計測部2は、円形に限定されるものでなく、円形以外に、矩形状、多角形状、楕円形状等を例示できる。
【0019】
図2に示すように、計測部2は、センサシート(感圧シート)4と、センサシート4の上下面に設けられた電極シート5とが積層されて構成されている。センサシート4は、基布に、カーボンペーストを塗布したものである。
【0020】
このように、本実施形態の圧力センサ1は、センサシート4と電極シート5とを重ねた構成であり、圧力センサ1をシート状にて形成することができる。よって、圧力センサ1の薄型化を実現できる。
【0021】
本実施形態では、センサシート4の上下面に、同じ電極シート5を配置することが好ましい。このような構成により、圧力センサ1の製造が容易になる。また、一対の電極シート5のどちらを荷重印加面としても、センサシート4に印加される荷重を略同一にでき、出力値のばらつきを抑制することが出来る。ここで、「同じ電極シート」とは、膜厚や材質が同一であることを指す。なお、膜厚の同一範囲には、製造誤差が含まれる。
【0022】
本実施形態では、基布にカーボンペーストを塗布している。カーボンペーストを用いることで、例えば、特許文献1のように、導電ゴムを用いる場合に比べて、繰り返し印加した際の出力変化の再現性(繰り返し特性)を良好なものに出来る。すなわち、導電ゴムでは、導電層が基布表面に偏在し、再現性が低下すると考えられるが、カーボンペーストを用いると、基布表面への偏在を抑制でき、再現性を向上させることが可能になる。また、カーボンペーストのほうが、導電ゴムよりも粘度が低いため、カーボンの分散性が良好になる。
【0023】
本実施形態では、基布の厚みが、0.09mm以下である。このように、基布にカーボンペーストを塗布し、且つ基布の厚みを0.09mm以下に設定することで、1回目に荷重印加した際の電圧値V1と、2回目に荷重印加した際の電圧値V2との変化率(V2/V1)を小さくすることが可能になる。変化率(V2/V1)が小さくなるのは、荷重印加による基布のへたりを抑制することが出来るためと考えられる。
【0024】
特に、100N以下の低荷重時では、基布の厚みを0.09mmとした場合と、0.1mmとした場合とで、変化率(V2/V1)に顕著な差が見られることが後述する実験によりわかっている。すなわち、基布の厚みを、0.09mmとした場合では、変化率(V2/V1)を1.1以下に抑えることができるが、基布の厚みを、0.1mmとした場合は、変化率(V2/V1)が略1.4以上になり、大幅な上昇が見られた。
【0025】
本実施形態では、基布の厚みは、0.05mmより大きいことが好ましい。基布の厚みが0.05mm以下であると、基布が薄すぎて、わずかな加圧で電極間が導通し、繰り返し印加した際の出力変化の再現性が悪くなる。したがって、本実施形態では、荷重に対し良好な出力変化の再現性を得るべく、基布の厚みは、0.05mmより大きく0.09mm以下であることが好ましい。また、本実施形態では、基布の厚みは、0.07mm以上0.09mm以下であることがより好ましい。
【0026】
例えば、本実施形態では、繊維から成る基布を用いることができる。繊維からなる基布の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、複数本の繊維からなる繊維束を編み込んだシート状の布である。横方向の繊維束と縦方向の繊維束とを編み込むことで、繊維束の間に、複数の微小な空隙が設けられると考えられる。そして、各空隙内に、カーボンペーストを構成する複数のカーボン粒子が入り込むと考えられる。なお、基布に、カーボンペーストを塗布した後、適度な熱処理を施すことで、カーボンペーストの溶媒は除去される。この結果、カーボン粒子が繊維束の間の空隙に残りやすいと考えられる。なお、バインダー樹脂が、カーボン粒子と共に、繊維束間の空隙内に存在していてもよい。
【0027】
限定するものでないが、繊維束間の空隙の大きさは、例えば、1μm~100μm程度である。このように、空隙は微小空間であり、基布に塗布されたカーボンペーストは、導電ゴムよりも粘度が低く、適切に、空隙に入り込むと考えられる。
【0028】
また、特に限定するものでないが、カーボンペーストに含まれるカーボン粒子の粒径は、0.25μm~1μm程度である。カーボン粒子の粒径は、繊維束間の空隙よりも小さいと考えられる。そのため、カーボンペーストを基布に塗布すると、カーボンペーストは、繊維束間の空隙内に侵入し、カーボン粒子が、空隙内に保持されると考えられる。
【0029】
また、カーボン粒子を特に限定するものではないが、アセチレンブラックやケッチェンブラック等に代表されるカーボンブラックや、黒鉛、活性炭、ソフトカーボン、ハードカーボン等を例示できる。このうち、カーボン粒子は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0030】
また、カーボンペーストに含まれるバインダー樹脂を特に限定するものでないが、例えば、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン系共重合体、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を例示することができる。
【0031】
また、繊維束を構成する繊維は、特に限定されるものではないが、ポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ガラス繊維等を例示できる。この中でも、ポリエステル繊維が好ましい。
【0032】
本実施形態では、基布の表面粗さ(Rz)は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。表面粗さ(Rz)が、上記範囲内にあることで、効果的に良好な繰り返し特性を得ることができる。すなわち、基布の表面粗さ(Rz)は、10μm以上とし、表面に適度な凹凸を備えることで、荷重印加の際、点接触から面接触へと変化させることができ、荷重に対する出力変化曲線の傾きを大きくでき、荷重値の検出精度を、より効果的に向上させることが出来ると考えられる。また、表面粗さ(Rz)を100μm以下とすることで、繰り返し荷重を印加した際の、基布のへたりを抑制でき、より良好な繰り返し特性を得ることができると考えられる。
【0033】
本実施形態では、基布の表面粗さ(Rz)は、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態における圧力センサ1では、計測部2に荷重が作用すると、電極シート5に挟まれたセンサシート4が圧縮される。この圧縮度合に基づいて出力が変化し、出力変化に基づいて荷重を計測することができる。
【0035】
上記したように、本実施形態では、1回目の荷重印加の電圧値V1と2回目の荷重印加の電圧値V2との変化率(V2/V1)を小さくすることができるが、特に、100N以下の低荷重時において、変化率(V2/V1)を、1.3以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは1.1以下に抑えることが可能である。なお、変化率の下限値は、0.9以上であることが好ましい。
【0036】
以上のように、本実施形態の圧力センサ1では、薄型で且つ、安定した繰り返し特性を得ることが出来る。特に、本実施形態では、低荷重域(具体的には、100N以下)にて、安定した繰り返し特性を得ることができ、低荷重から高荷重の広い範囲にわたって、安定した荷重測定を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の圧力センサ1では、カーボンペーストを基布に塗布する方法を限定するものでなく、印刷やディップ等を提示できる。このうち、カーボンペーストを基布に印刷することが好ましい。本実施形態では、印刷方法は特に限定されるものでなく、スクリーン印刷、及び、オフセット印刷等の既存の印刷方法を使用することができる。
【0038】
本実施形態のセンサシート4の作製方法として印刷法を用いる場合、まず印刷機に印刷版をセットする。続いて、基布を、印刷機に固定する。次に、カーボンペーストを基布に印刷する。そして、印刷したカーボンペーストに適度な熱処理を施し、カーボンペースト中の溶剤を除去し、カーボンペーストを硬化させる。
【0039】
本実施形態のシート状の圧力センサは、荷重センサとして、例えば、圧力計、圧力計測装置、及び血圧計等に使用することができる。
【0040】
例えば、本実施形態の圧力センサ(荷重センサ)1を、血圧計として用いた場合、測定者の腕等のセンシング対象物に含まれる動脈を通る血液の圧力に起因する血管の変位に応じた荷重を受ける。そして、圧力センサ1は、受けた荷重に応じて厚さに変化が生じ、この厚さの変化に応じて特性が変化する。ここで、変化する特性は、例えば、抵抗であってもよいし、静電容量等であってもよい。圧力センサ1がその特性変化として抵抗変化を生じさせる部材である場合、センサシート4及び、電極シート5は、電気的に接続されて電流が流される。また、例えば、圧力センサ1がその特性変化として容量変化を生じさせる部材である場合、センサシート4及び、電極シート5は、電気的に接続されずに、電極シート5間に電圧が印加される。本実施形態の圧力センサ1によれば、出力変化に応じて血圧を計測することが可能である。本実施形態では、超薄型で且つ、低荷重域でも繰り返し特性に優れており、体表面から動脈波を高感度で検出することができる。
【0041】
本実施形態の圧力センサ1は、超薄型ロードセンサとして適用することができ、上記した血圧以外にも、例えば、風圧用ロードセンサや、車両のタイヤ用ロードセンサ等して様々な荷重を計測することができる。
【0042】
また、本実施形態の圧力センサ1は、湾曲させて使用することもできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[圧力(荷重)の測定方法]
図3は、荷重計測システムを示す概念図である。
図3に示すように、スタンド20上に、圧力(荷重)センサ21を設置した。そして、荷重機22を圧力センサ21の表面に押し当て、荷重をかけた際の電圧出力をデータロガー23で計測した。圧力センサ21には以下のサンプルを用いた。
【0045】
[サンプル1]
ポリエステル繊維からなる、厚み0.07mmの基布に、カーボンペーストを印刷したセンサシートを作製し、センサシートの上下を電極シートで挟んだ。
[サンプル2]
ポリエステル繊維からなる、厚み0.09mmの基布に、カーボンペーストを印刷したセンサシートを作製し、センサシートの上下を電極シートで挟んだ。
[サンプル3]
ポリエステル繊維からなる、厚み0.1mmの基布に、カーボンペーストを印刷したセンサシートを作製し、センサシートの上下を電極シートで挟んだ。
【0046】
[厚み測定]
基布の厚みは、厚み測定器(株式会社尾崎製作所製「ピーコック」)を用いて測定、算出した。
【0047】
図4は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に、10Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。なお、実験では、10Nの荷重を、5秒間隔で印加した。また、以下に示す荷重を繰り返し印加する実験においても、同じ時間間隔で荷重を印加した。
【0048】
図4に示すように、どのサンプルにおいても、2回目以降の荷重印加にて取得される電圧差に比べて、1回目と2回目との各荷重印加にて取得される電圧差がやや大きくなった。
【0049】
図5は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に10Nの荷重を印加した際の、1回目の荷重印加の電圧値V1と2回目の荷重印加の電圧値V2との変化率(V2/V1)のグラフである。
【0050】
図5に示すように、基布の厚みが、0.07mmの場合と、基布の厚みが0.09mmの場合では、変化率(V2/V1)が1.1以下になることがわかった。一方、基布の厚みが、0.1mmの場合、変化率(V2/V1)が1.4程度に大きくなることがわかった。
【0051】
図6は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に、100Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。
【0052】
図6に示すように、基布の厚みを0.09mmとしたサンプル2では、2回目以降の荷重印加にて取得される電圧差に比べて、1回目と2回目との荷重印加にて取得される電圧差がやや大きくなった。また、基布の厚みを0.1mmとしたサンプル3では、1回目と2回目との荷重印加にて取得される電圧差が非常に大きくなった。一方、基布の厚みを0.07mmとしたサンプル1では、加圧回数に対し、多少の電圧差が見られるものの大きな変化は見られなかった。
【0053】
図7は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に100Nの荷重を印加した際の、1回目の荷重印加の電圧値V1と2回目の荷重印加の電圧値V2との変化率(V2/V1)のグラフである。
【0054】
図7に示すように、基布の厚みが、0.07mmの場合と、基布の厚みが0.09mmの場合では、変化率(V2/V1)が1.1以下になることがわかった。特に、基布の厚みを、0.07mmとした場合、変化率(V2/V1)を、ほぼ1にできることがわかった。一方、基布の厚みが、0.1mmの場合、変化率(V2/V1)が1.5程度に大きくなることがわかった。
【0055】
図8は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に、1000Nの荷重を印加した際の、加圧回数と電圧値(出力値)との関係を示すグラフである。
【0056】
図8に示すように、基布の厚みを0.07mmとしたサンプル1、及び、基布の厚みを0.09mmとしたサンプル2では、加圧回数に対する電圧差は非常に小さいことがわかった。一方、基布の厚みを0.1mmとしたサンプル3では、加圧回数に対し、多少の電圧差が見られた。
【0057】
図9は、基布の厚みが異なる各サンプル1~3に1000Nの荷重を印加した際の、1回目の荷重印加の電圧値V1と2回目の荷重印加の電圧値V2との変化率(V2/V1)のグラフである。
【0058】
図9に示すように、基布の厚みが、0.07mmの場合と、基布の厚みが0.09mmの場合では、変化率(V2/V1)がほぼ1であり、すなわち、1回目の荷重印加の電圧値V1と2回目の荷重印加の電圧値V2との電圧差がほぼ0であることがわかった。また、基布の厚みが0.1mmのサンプル3の場合、変化率(V2/V1)は、サンプル1及びサンプル2よりもやや大きくなるもの、変化率(V2/V1)が、1.05程度となることがわかった。
【0059】
図10は、基布として0.07mm厚の基布を使用したサンプル1の、荷重と電圧との関係を示すグラフである。
【0060】
図10に示すように、1000Nまでの荷重に対して曲線的な電圧が得られることがわかった。また、繰り返し印加した際も、再現性よく、同曲線の電圧カーブを描くことがわかった。したがって、0~1000Nレンジでは、多項式近似式を用いて使用することができる。
【0061】
次に、基布の表面粗さ(Rz)を測定した。表面粗さ(Rz)は、以下の測定方法で求めた。
【0062】
[表面粗さ(Rz)の測定]
実験では、サンプル1(0.07mm厚の基布)、サンプル3(0.1mm厚の基布)の各基布の表面粗さ(Rz)を、KEYENCE製の形状解析レーザ顕微鏡(VK-X100/150シリーズ)にて測定した。
【0063】
実験では、3か所の異なる位置で表面粗さ(Rz)を測定し、その平均値を求めた。以下、表1に、サンプル1及び、サンプル3の表面粗さ(Rz)の実験結果を示す。
【0064】
【0065】
なお、表1に示す各数値の単位は、「μm」である。
【0066】
表1に示すように、比較例としてのサンプル3では、表面粗さ(Rz)が100μmよりも大きくなることがわかった。一方、実施例としてのサンプル1では、表面粗さ(Rz)が、10μm以上100μm以下の範囲内であることがわかった。
【0067】
次に、サンプル1及びサンプル3を用いて、ヒステリシスの実験を行った。
【0068】
[ヒステリシスの測定]
実験では、各サンプルに、1000Nの荷重になるまで徐々に荷重を大きくしながら印加時の電圧ループを測定した。次に、荷重が1000Nに到達したら、徐々に荷重を小さくしながら解放時の電圧ループを測定した。
【0069】
ヒステリシス(%)は、{[(印加時の電圧ループ-解放時の電圧ループの最大電圧差)/定格出力]×100}で求めることができる。定格出力は、荷重が1000Nに到達したときの電圧値である。その実験結果が
図11に示されている。
【0070】
加圧回数(解放回数ともいえる)が大きくなると、サンプル1(実施例)及びサンプル3(比較例)ともに、ヒステリシスが低下することがわかった。これは、加圧回数を増やすことで、基布のへたりが徐々に抑制されるためである。ただし、サンプル1(実施例)では、加圧回数に対するヒステリシスの変化は小さい。
【0071】
サンプル1(実施例)とサンプル3(比較例)とを対比すると、いずれの加圧回数でも、サンプル1(実施例)のほうがサンプル3(比較例)よりもヒステリシスが小さくなることがわかった。
【0072】
また、加圧回数が1回のときの、サンプル1(実施例)と、サンプル3(比較例)とを対比すると、サンプル1(実施例)のヒステリシスが約13%程度であるのに対し、サンプル3(比較例)のヒステリシスは、約20%程度と非常に大きくなることがわかった。
【0073】
このように、サンプル1(実施例)は、サンプル3(比較例)に比べて、ヒステリシスが小さく、応答性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の圧力センサによれば、繰り返し特性に優れ、特に、低荷重域において、安定した出力を得ることができる。本発明の圧力センサを、圧力計、圧力計測装置、血圧計等に使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1、21 :圧力センサ
2 :計測部
4 :センサシート
5 :電極シート
20 :スタンド
22 :荷重機
23 :データロガー