(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/201 20210101AFI20240709BHJP
A42B 1/0188 20210101ALI20240709BHJP
A42B 3/32 20060101ALI20240709BHJP
【FI】
A42B1/201 A
A42B1/201 G
A42B1/0188 Z
A42B3/32
(21)【出願番号】P 2023193378
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2023-11-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500502912
【氏名又は名称】柳川 祥子
(72)【発明者】
【氏名】柳川 祥子
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-087773(JP,A)
【文献】中国実用新案第206403297(CN,U)
【文献】中国実用新案第206227789(CN,U)
【文献】中国実用新案第217407924(CN,U)
【文献】登録実用新案第3017336(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/00-1/248
A42B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5本以上の弧状の
弾性体からなる骨部材、骨部材間に張られた遮光性の幌、および骨部材の内側に設けられたクッション部材を含み、骨部材が各々の両端で支持機構により連結され、かかる支持機構を支点に骨部材を開閉変形させることで折り畳みが可能な帽子であり、開いた状態で各骨部材が頭周の前後方向を通るようにして被った状態で正面から見たときに左右対称であり、かつその左右の下端部が両耳の下端部よりも下に位置する帽子であって、クッション部材が、頭頂部付近を通る骨部材の内側に頭頂部から後方に1~7cm、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側に中央部から前方に5~15cm、後方に7~18cm、の位置に設けられていることを特徴とする帽子。
【請求項2】
5本以上の弧状の骨部材、骨部材間に張られた遮光性の幌、および骨部材の内側に設けられたクッション部材を含み、骨部材が各々の両端で支持機構により連結され、かかる支持機構を支点に骨部材を開閉変形させることで折り畳みが可能な帽子であり、開いた状態で各骨部材が頭周の前後方向を通るようにして被った状態で正面から見たときに左右対称であり、
前頭部から両左右の下端部に伸びる骨部材の形成する角度が180度未満であり、かつその左右の下端部が両耳の下端部よりも下に位置する帽子であって、クッション部材が、頭頂部付近を通る骨部材の内側に頭頂部から後方に1~7cm、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側に中央部から前方に5~15cm、後方に7~18cm、の位置に設けられていることを特徴とする帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽子に関するものであり、より詳しくは、折り畳みが可能な帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の帽子は直接頭部に被るものが一般的であり、頭皮及び頭髪に全体に密着する為、髪型が崩れやすく、また、風通しが悪く、熱がこもり汗によって頭部が蒸れがちであった。
【0003】
かかる問題点を解消できるものとして、頭部の周囲等を一部開放した帽子が各種提案されており、その一例として特許文献1に記載の帽子がある。
この特許文献1に記載の帽子は、頭部の頭頂部に装着される弓状のヘッドバンドと、その外側に規制された間隔で接続した湾曲状の骨部材と、その両端に、これを支点に回動可能に連結された複数の骨部材、および骨部材間に張られた遮光性の覆い部材とを含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の帽子は、通常の帽子と異なって、頭部と帽子との間に適度な隙間があるため、通気性が良く、さらに折り畳み可能であることから、持ち運びに便利である。
しかしながら、かかる帽子は、ヘッドバンド部が頭部の周囲と当接するため、装着状態において頭部周囲が暑くなる、ヘッドバンド部の髪型が崩れる、長時間装着によって頭部に痛みが生じるなどの可能性がある。
また、ヘッドバンドが頭頂部を左右に通ることから、開閉の方向が頭の前後方向となり、前方からの強い風を受けた場合の安定性に欠けるという問題点がある。
さらに、ヘッドバンドの丁寧な取扱いが必要、及び、加工の工程の複雑さ、などの問題点があり、まだまだ改良の余地があるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる問題点を解決する手段として鋭意検討した結果、本発明者は新規な構造・構成を有する帽子を発明した。
本発明の帽子は、5本以上の弧状の骨部材、骨部材間に張られた遮光性の幌、および骨部材の内側に設けられたクッション部材を含み、骨部材が各々の両端で支持機構により連結され、かかる支持機構を支点に骨部材を開閉変形させることで折り畳みが可能な帽子であり、開いた状態で各骨部材が頭周の前後方向を通るようにして被った状態で正面から見たときに左右対称であり、かつその左右の下端部が両耳の下端部よりも下に位置する帽子であって、クッション部材が、頭頂部付近を通る骨部材の内側に頭頂部から後方に1~7cm、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側に中央部から前方に5~15cm、後方に7~18cm、の位置に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の帽子は、折り畳み可能で携帯性に優れ、頭皮・頭髪との間に適度な空間があることによって通気性に優れ、頭髪との接触が骨材に設けられたクッション部材のみであることから髪型が崩れにくく、さらに構成がシンプルになったことで、製造・加工の容易さ、折り畳み・携帯時に壊れにくい、などの優位性を有するものである。
さらに、折り畳みの開閉方向が頭の左右方向であることから、前方は顔のかなりの部分、側方は耳の下、後方は首筋部分を覆う構造にしやすく、そのため、顔の前面や側面、首筋の日焼けを防止したり、眼からの紫外線を軽減し、肌のシミを防ぐという効果を得ることができる。
また、クッション部材の適正配置により、装着時の安定性に優れ、長時間の装着状態でも頭部の痛みはほとんど無いものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施態様を、以下、詳細に説明する。
なお、本発明は以下の説明、および図面に必ずしも限定されるものではない。
本発明の帽子は、5本以上の弧状の骨部材、骨部材間に張られた遮光性の幌、および骨部材の内側に設けられたクッション部材を含むものである。
まず、本発明の帽子における骨部材について説明する。
本発明に用いられる弧状の骨部材の本数は5本以上であれば特に制限はないが、奇数であることが好ましく、さらに5~9本であることが好ましく、さらに5~7本であることがより好ましい。奇数であることの意義は、頭頂部を通り、そこにクッション部材を設けることで装着時の安定性が増すこと、および、正面から見た際に左右対称とするには、頭頂部の1本と、その左右に同数の骨部材を設けることが好ましいことによるものである。また、その本数は5本より少ないと帽子の強度が不足する点、頭部・頭髪と帽子との適度な空間を形成するのが難しくなる点、などから好ましくない。また、多すぎると帽子の強度は増すが、装着時や携帯時の重量が増えすぎる傾向にあるため好ましくない。
【0010】
骨部材の素材としては、頭部の形状に沿った形状を保ち、携帯時等の曲げ伸ばしが自由にできることから弾性体であること、さらに強度と軽量性を併せ持つ素材であることが好ましく、例えばゴムや熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、ポリウレタン等の軟質、あるいは硬質のプラスチック素材、竹などの天然素材を用いることが可能である。
骨部材の形状は特に限定されるものではないが、通常は短冊状であり、幅は0.5~5cm、好ましくは1~3cm、長さは男性用、女性用、子供用など、その使用対象によって適宜調整する必要はあるが、通常は35cm~50cmの範囲のものが用いられる。なお、装着時、装着・脱着操作時、携帯時に手などが触れることで怪我をしないように、骨部材の側面や先端は丸みを設けておくことが好ましい。
【0011】
本発明の帽子における骨部材は、各々の両端が支持機構により連結されていることを特徴とするものである。この支持機構については公知の機構を用いることが可能であり、最も単純な構造としては、各骨部材の連結すべき場所に穴を穿ち、骨部材を重ねた状態でその穴に連結棒を通したもの等をあげることができる。そして、かかる支持機構を採用することによって、これを支点に開閉変形が可能となるのである。
【0012】
次に本発明の帽子において、各骨部材の間に張られた遮光性の幌について説明する。
本発明の帽子に用いられる幌は、その材質、色等について特に限定されるものではないが、日光を遮るという目的から、遮光性に優れるものが好ましく用いられる。
その材料としては職布や不織布などの布が好ましく、その素材としてはターポリン、帆布、バンテン、ポリエステルと綿の混合材料、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等をあげることができる。さらに、この幌に通気性を持たせる場合には網目の粗い布を用いることも可能であり、レース状のものも好ましく用いられる。
その色としては、黒、ダークグレイ、紺などの濃色のものが遮光性の点で好ましく、あるいは反射性のものを用いることも可能である。そしてその場合には、表面を銀色等の反射性の高い色・素材のものを用い、裏面にデザイン性の高い色を用いることも可能である。
また、幌の素材として防水性に優れたものを用いることも可能であり、そうすれば雨天時の雨除けとして良好に用いることが可能である。
かかる幌の厚さについては、一般的な帽子や衣服、傘などに用いられる布等の厚さと同様のもので良い。
【0013】
かかる幌は骨部材の間に張られるもので、両者が離れることが無いように接合されている必要があり、その接合方法としては、接着剤、糸、ワイヤーなどを用い、骨部材と幌が接触する部分の一部、複数部、あるいは両者の接触部の全部を接合すれば良い。
【0014】
次に本発明の帽子において骨部材の内側(頭側)に設けるクッション部材について説明する。
かかるクッション部材は、頭頂部付近を通る骨部材の内側に頭頂部から後方に1~7cm、特に好ましくは1~5cmの位置、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側に中央部から前方に5~15cm、特に好ましくは7~12cmの位置、同じく後方に7~18cm、特に好ましくは10~15cmの位置に設けられている。この位置は、使用者の性別、年齢、および頭の形などによって、上述の範囲内でより好ましい位置に設けることが好ましい。
かかるクッション部材の取り付け位置の例を
図3に示す。
なお、さらに上記以外の場所にクッション部材を設けることも可能であり、その総数は5~11個、さらに好ましくは5~9個、特に好ましくは5~7個である。
かかるクッション部材の数が多すぎると、安定性は増すかもしれないが、帽子と頭部・頭髪との空間を減らしたり、携帯時の重量が増したりする傾向にあるため、好ましくない。
【0015】
また、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側、中央部から前方に設けられるクッション部材の位置は、左右で揃っていることが好ましいが、頭の形、髪型等の都合で、安定性に支障が無い範囲で少しずらして設けることも可能である。これは中央部から後方に設けられるクッション部材についても同様である。
本発明で用いられるクッション部材は頭部に優しく、適度な硬さと柔軟性、クッション性、さらに軽量性を備えたものであれば特に限定されるものではないが、例えば、シリコン、スポンジ、パルプ、樹脂粘土、ポリエチレン等をあげることができる。
【0016】
クッション部材の大きさは帽子の安定性と強度、特に頭との適度な距離感が両立されていれば特に限定されるものではないが、例えば高さは4~5cm、横幅は1~2cm、縦の長さは4~6cm、のものが好ましく用いられる。
さらに、クッション部材の形状は特に限定されないが、骨部材と接合される側は骨部材の形状に合わせて、また、頭部と接触する側は頭の形状に合わせてカーブしていることが望ましい。
なお、このクッション部材の大きさ、高さは全てのクッション部材が同じであっても構わないが、その位置によって適宜調整されたものであることが好ましい。
また、かかるクッション部材は、接着剤、糸、ワイヤーなどで骨部材と接合されていれば良く、また、その接合位置、すなわちクッション部材の位置が適宜変更できるものもより好ましい実施態様である。
【0017】
次に本発明の全体的な形状について説明する。
本発明の帽子は、各骨部材をその両端の支持機構を支点に開いた状態、すなわち骨部材間の幌を広げた状態で頭に装着するものであるが、通常、各骨部材が頭周の前後方向を通るように被るものである。その場合、例えば
図1に示された装着時の正面図から明らかなように、正面から見たときに左右対称となるものである。
そして、その際の左右の下端部が両耳の下端部よりも下に位置するようになるものであり、その調整方法としては、各骨部材、特に左右の最外部の骨部材の長さと、幌の大きさ、幌と骨部材の接合位置、等を適宜調整すれば良い。
【0018】
本発明の帽子は、上述の構成・構造を採用することで、
図1、および
図2で示すように、頭頂部のみならず、頭側部、後頭部の広い範囲、さらには前頭部をも日光から遮ることが可能である。
また、本発明の帽子は、
図4に示すように、各骨部材の両端の支持機構を支点として折り畳むことでコンパクトな状態となるため、持ち運びが容易であり、さらに
図5に示すように、骨部材の弾性を利用してさらに骨部材の両端があわさるように曲げれば、さらにコンパクトになる。そして、これらの状態で収納できるポーチを用いれば、より携帯が容易となる。
さらに本発明の帽子は、
図6に示すように、後頭部分の裾にベールを装着すれば、簡易ヒジャブとして旅先において使用することも可能である。
また、本発明の帽子は、クッション部材や骨部材に冷却材の取り付け具を設けたり、ファンを取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の帽子は、折り畳み可能で携帯性に優れ、頭皮・頭髪との間に適度な空間があることによって通気性に優れ、頭髪との接触が骨材に設けられたクッション部材のみであることから髪型が崩れにくく、さらに構成がシンプルになったことで、製造・加工の容易さ、折り畳み・携帯時に壊れにくい、などの優位性を有するものである。
さらに、クッション部材の適正配置により、装着時の安定性に優れ、長時間の装着状態でも頭部の痛みはほとんど無いものである。
【符号の説明】
【0020】
1 骨部材
2 幌
3 支持機構
4 クッション部材
5 ベール
【要約】 (修正有)
【課題】折り畳み可能で携帯性に優れ、頭皮・頭髪との間に適度な空間があることによって通気性に優れ、髪型が崩れにくく、装着時の安定性に優れ、長時間の装着状態でも頭部の痛みはほとんど無い帽子の提供。
【解決手段】5本以上の弧状の骨部材、骨部材間に張られた遮光性の幌、および骨部材の内側に設けられたクッション部材を含み、骨部材が各々の両端で支持機構により連結され、かかる支持機構を支点に骨部材を開閉変形させることで折り畳みが可能な帽子であり、開いた状態で各骨部材が頭周の前後方向を通るようにして被った状態で正面から見たときに左右対称であり、かつその左右の下端部が両耳の下端部よりも下に位置する帽子であって、クッション部材が、頭頂部付近を通る骨部材の内側に頭頂部から後方に1~7cm、左右の斜め上付近を通る骨部材の内側に中央部から前方に5~15cm、後方に7~18cm、の位置に設けられている。
【選択図】
図1