(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】治具、治具を用いたロボットの組立方法およびロボット
(51)【国際特許分類】
F16H 1/06 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F16H1/06
(21)【出願番号】P 2023514203
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015236
(87)【国際公開番号】W WO2022219692
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】有谷 拓也
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064253(JP,A)
【文献】特開2009-002422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの外部から該ケーシングの内部に挿入されることにより、該ケーシングの内部に配置された入力ギヤに
、前記外部から噛み合わせが目視できない位置において噛み合わせ可能な第1ギヤ部と、
該第1ギヤ部に固定され、該第1ギヤ部が前記入力ギヤに噛み合った状態において前記ケーシングの外部に配置され、前記第1ギヤ部に該第1ギヤ部の軸線である第1軸線回りのトルクを付与可能なトルク付与部と、
該トルク付与部に設けられ、前記第1ギヤ部の前記第1軸線回りの位相を表示する位相表示部とを備える治具。
【請求項2】
モータのシャフトに取り付けられた駆動ギヤに噛み合わせ可能な第2ギヤ部を備え、
該第2ギヤ部が、前記第1ギヤ部と同軸に前記トルク付与部を前記第1軸線方向に挟んで前記第1ギヤ部とは反対側に設けられ、
前記トルク付与部が、前記第2ギヤ部を前記駆動ギヤに噛み合わせた状態で、前記シャフトに、前記モータのブレーキトルクを超えるトルクを付与可能である請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記トルク付与部に設けられ、前記ケーシングとの接触により、前記第1ギヤ部と前記入力ギヤとの前記第1軸線方向および前記第1軸線回りの回転方向の相対移動をガイドするガイド部を備える請求項1または請求項2に記載の治具。
【請求項4】
前記位相表示部が前記トルク付与部に設けられたマークである請求項1から請求項3のいずれかに記載の治具。
【請求項5】
前記トルク付与部が、前記第1軸線から径方向外方に離れた位置に、前記第1軸線回りの接線方向に付与する力の力点を配置可能な形状を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の治具。
【請求項6】
前記トルク付与部が、
前記第1ギヤ部に固定された付与部本体と、
該付与部本体から前記第1軸線を中心とする径方向外方に延びるレバーとを備える請求項5に記載の治具。
【請求項7】
前記位相表示部が前記レバーによって構成されている請求項6に記載の治具。
【請求項8】
前記トルク付与部が、
前記第1ギヤ部に固定された付与部本体と、
該付与部本体に設けられた工具取付部とを備え、
該工具取付部が、工具のハンドルを、前記第1軸線を中心とする径方向外方に延ばした状態で、前記工具を前記付与部本体に前記第1軸線回りに係合させる請求項5に記載の治具。
【請求項9】
前記位相表示部が前記工具取付部によって構成されている請求項8に記載の治具。
【請求項10】
請求項1に記載の治具からなる第1治具と、
第2治具とを備え、
該第2治具が、モータのシャフトに取り付けられた駆動ギヤに噛み合わせ可能な第2ギヤ部と、該第2ギヤ部に固定され、該第2ギヤ部の軸線である第2軸線回りにトルクを付与可能な第2トルク付与部と、前記第2軸線回りの位相を表示する第2位相表示部とを備え、
前記第2トルク付与部が、前記第2ギヤ部を前記駆動ギヤに噛み合わせた状態で、前記シャフトに、前記モータのブレーキトルクを超えるトルクを付与可能である治具セット。
【請求項11】
請求項1に記載の治具の前記第1ギヤ部を、前記ケーシング内に挿入して前記入力ギヤに噛み合わせた状態で、
前記ケーシング外に配置された前記トルク付与部によって前記第1ギヤ部に前記第1軸線回りのトルクを付与することにより、前記入力ギヤを回転させ、
前記位相表示部に表示された前記第1ギヤ部の位相に基づいて前記入力ギヤの位相を、モータのシャフトに固定された駆動ギヤを噛み合わせ可能な位相に調整し、
前記治具を前記ケーシング外に取り外し、
前記駆動ギヤを前記入力ギヤに噛み合わせつつ、前記モータを前記ケーシングに取り付けるロボットの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治具、治具を用いたロボットの組立方法およびロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータの回転軸の回転を被駆動部材に伝達する複数の歯車からなる歯車機構が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この歯車機構においては、モータの回転軸に設けられるモータピニオンに噛み合う入力歯車と、被駆動部材に連結される出力歯車とに孔が設けられ、それぞれの孔に位置決めピンを挿通させて両歯車を位置決めすることによって、両歯車の位相合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置決めピンによって一対の歯車の位相合わせを行う場合、各歯車の周囲には位置決めピンを配置するためのスペースが必要となるが、必ずしも十分なスペースを確保できるとは限らない。例えば、ロボットにおいては、モータに取り付けた駆動ギヤを、機構部に設けられた減速機等の入力ギヤに噛み合わせながらモータを取り付ける際に、駆動ギヤをモータごと回転させることがある。しかし、モータの設置スペースが狭隘である場合に、モータを回転させることは困難である。
【0005】
また、ブレーキを解除すれば、モータの駆動ギヤのみを回転させることができるが、ブレーキを解除するための解除装置および電源を用意し接続する必要がある。一方、機構部内の入力ギヤは、通常、作業者の手の届きにくいケーシングの奥部に配置されており、モータを回転させずに駆動ギヤを噛み合わせることができる位相に手で調節することが困難な場合が多い。
したがって、ブレーキの解除を伴うことなく、モータを回転させずに駆動ギヤを入力ギヤに容易に噛み合わせてモータの取付作業の作業性を向上することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ケーシングの外部から該ケーシングの内部に挿入されることにより、該ケーシングの内部に配置された入力ギヤに、前記外部から噛み合わせが目視できない位置において噛み合わせ可能な第1ギヤ部と、該第1ギヤ部に固定され、該第1ギヤ部が前記入力ギヤに噛み合った状態において前記ケーシングの外部に配置され、前記第1ギヤ部に該第1ギヤ部の軸線である第1軸線回りのトルクを付与可能なトルク付与部と、該トルク付与部に設けられ、前記第1ギヤ部の前記第1軸線回りの位相を表示する位相表示部とを備える治具である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る治具を示す全体構成図である。
【
図2】
図1の治具を用いるロボットの一部を示す部分的な縦断面図である。
【
図3】
図1の治具が取り付けられた状態のロボットの一部を示す部分的な縦断面図である。
【
図4】
図1の治具が取り付けられた状態のモータを示す側面図である。
【
図5】
図1の治具の第1の変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図1の治具の第2の変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図1の治具の第3の変形例を示す斜視図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係るロボットの一部の分解状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る治具1、治具1を用いたロボット100の組立方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る治具1を用いて組み立てられるロボット100は、
図2に示されるように、開口部11を有し、内部に入力ギヤ30を収容するケーシング10と、ケーシング10の開口部11に取り外し可能に取り付けられるモータ20とを備えている。モータ20のシャフト21には、モータ20がケーシング10に取り付けられた状態で入力ギヤ30に噛み合う駆動ギヤ22が取り付けられている。駆動ギヤ22の基端側には、開口部11の内面に嵌合して、駆動ギヤ22の回転を支持する軸受23が配置されている。
【0009】
開口部11は、入力ギヤ30の軸線方向にケーシング10を内外に貫通している。
駆動ギヤ22および入力ギヤ30は、入力ギヤ30に対して駆動ギヤ22を入力ギヤ30の軸線に平行に移動させることにより相互に噛み合い可能な歯車、例えば、平歯車、はすば歯車等である。
軸受23は、駆動ギヤ22と入力ギヤ30との噛み合いが開始するよりも前にケーシング10の開口部11に嵌合開始するように、駆動ギヤ22の先端に対して基端側に離れた位置に配置されている。図中の符号12は、軸受23に予圧を与えるためのスペーサである。
【0010】
治具1は、
図1に示すように、所定の軸線(第1軸線)Lを中心軸とする円柱状の胴部(トルク付与部)2と、胴部2の軸線L方向の一端に設けられた外歯車部(第1ギヤ部)3と、胴部2の軸線L方向の他端に設けられた内歯車部(第2ギヤ部)4とを備えている。
外歯車部3および内歯車部4は、軸線Lに同軸に配置されている。外歯車部3は、胴部2の一端面から軸線L方向に突出する軸の外面に設けられ、内歯車部4は、胴部2の他端面から軸線L方向に窪む孔の内面に形成されている。
【0011】
外歯車部3は、入力ギヤ30に噛み合い可能な複数の外歯を有している。具体的には、駆動ギヤ22と同等の形状を有している。
外歯車部3および胴部2の軸線L方向の長さは、外歯車部3が入力ギヤ30に噛み合わされた状態において、胴部2の少なくとも他端側がケーシング10の外部に露出する寸法に設定されている。
【0012】
内歯車部4は、モータ20のシャフト21に固定された駆動ギヤ22に噛み合い可能な複数の内歯を有している。内歯車部4は、例えば、駆動ギヤ22の横断面に対して相補的な横断面形状を有しており、駆動ギヤ22をぴったりと嵌合させることができる。
【0013】
外歯車部3に対する内歯車部4の軸線L回りの位相は、外歯車部3と同位相に配置した駆動ギヤ22を、軸線L方向に移動させるだけで、内歯車部4に噛み合わせることができる位相関係に設定されている。
【0014】
胴部2の外径寸法は、内歯車部4をモータ20のシャフト21に固定された駆動ギヤ22に噛み合わせた状態で、作業者が、胴部2の外周面を掴んで軸線L回りにモータ20のブレーキトルクを超えるトルクを付与することができる程度の大きさに設定されている。すなわち、胴部2は、軸線Lから径方向外方に離れた胴部2の外周面の位置に、軸線L回りの接線方向に付与する力の力点を配置可能な形状を有している。
【0015】
また、胴部2の外周面には、マーク(位相表示部)5が設けられている。
マーク5は、例えば、
図1に示されるように、胴部2の外周面に形成された三角形状の刻印であって、外歯車部3を入力ギヤ30に噛み合わせた状態において、ケーシング10の外部に露出する胴部2の他端近傍に形成されている。マーク5は、周方向の中央の頂点が、例えば、外歯車部3の1つの外歯の歯厚方向の中心に一致し、かつ、内歯車部4の1つの歯溝の幅方向の中心に一致する位相を表示している。したがって、ケーシング10内において外歯車部3を入力ギヤ30に噛み合わせた状態であっても、ケーシング10の外部に露出しているマーク5を確認することにより、入力ギヤ30に噛み合う外歯車部3の軸線L回りの位相を知ることができる。同様に、駆動ギヤ22に内歯車部4を噛み合わせることにより、駆動ギヤ22が見えない状態であっても、マーク5を確認することにより、駆動ギヤ22の軸線L回りの位相を知ることができる。
【0016】
胴部2の一端の外周面には、軸受(ガイド部)2aが取り付けられている。軸受2aは、軸受23と同等の外径寸法を有し、外歯車部3の先端に対して、駆動ギヤ22の先端と軸受23との位置関係と同等の位置関係に配置されている。
【0017】
このように構成された本実施形態に係る治具1を用いたロボット100の組立方法について以下に説明する。
本実施形態に係る組立方法は、ケーシング10にモータ20を組み付ける前の状態において、まず、
図3に示されるように、治具1の外歯車部3をケーシング10の外部から、開口部11を経由してケーシング10の内部に挿入する。
【0018】
外歯車部3がケーシング10内部の入力ギヤ30に噛み合いを開始する前に、胴部2の一端に設けられた軸受2aと開口部11の内面との嵌合が開始される。軸受2aの外輪に対して内輪を回転させることにより、外歯車部3の軸線L回りの回転がガイドされる。また、軸受2aの外輪の開口部11への嵌合を進行させることにより、外歯車部3の軸線Lに沿う方向への移動がガイドされる。胴部2にかけたトルクによって、外歯車部3を軸線L回りに回転させて、入力ギヤ30に噛み合う位相を探しながら、外歯車部3を軸線Lに沿う方向に移動させることにより、外歯車部3をスムーズに入力ギヤ30に噛み合わせることができる。
【0019】
そして、外歯車部3を入力ギヤ30に噛み合わせた状態で、作業者は胴部2に表示されているマーク5の位置を確認する。マーク5が所望の位置に配置されていない場合には、作業者は、胴部2に軸線L回りのトルクを付与することによって、胴部2および外歯車部3を軸線L回りに回転させ、マーク5を所望の位置に配置する。これにより、外歯車部3を所望の位相に配置することができ、かつ、所望の位相に配置された外歯車部3に噛み合う位相に入力ギヤ30を配置することができる。所望の位相は、例えば、マーク5の中央の頂点が鉛直上方に位置する位相である。ここで、マーク5の位置合わせは必ずしも厳密に行う必要はない。
そして、この状態から入力ギヤ30を回転させないように、治具1をケーシング10から取り外すことにより、入力ギヤ30の位相の調整作業が完了する。
【0020】
次いで、
図4に示されるように、ケーシング10への取付姿勢に配置したモータ20の駆動ギヤ22に、治具1の内歯車部4を噛み合わせる。そして、内歯車部4を駆動ギヤ22に噛み合わせた状態で、作業者は胴部2に表示されているマーク5の位置を確認する。マーク5が所望の位置に配置されていない場合には、作業者は、胴部2を手で掴み、胴部2に対して軸線L回りにモータ20のブレーキトルク以上のトルクを付与する。これにより、モータ20にブレーキをかけた状態のまま、駆動ギヤ22を軸線L回りに回転させることができ、マーク5を所望の位置、例えば、マーク5の中央の頂点を鉛直上方に配置することができる。これにより、駆動ギヤ22の位相が、取付姿勢を維持したままモータ20をシャフト21の軸方向に移動させるだけで、ケーシング10内の入力ギヤ30に噛み合う位相に調整される。
そして、この状態から駆動ギヤ22を回転させないように、治具1を駆動ギヤ22から取り外すことにより、駆動ギヤ22の位相の調整作業を完了する。
【0021】
次いで、駆動ギヤ22の位相調整後のモータ20を吊り上げて、取付姿勢に維持したまま、開口部11を経由して駆動ギヤ22をケーシング10内に挿入する。駆動ギヤ22および入力ギヤ30が、相互に噛み合う位相に調整されているので、モータ20をシャフト21の軸回りに大きく回転させなくても、駆動ギヤ22を入力ギヤ30に容易に噛み合わせ、モータ20をケーシング10に固定することができる。
【0022】
このように、本実施形態に係る治具1および組立方法によれば、作業者の手が届きにくく、直接目視することが困難な位置に配置されている入力ギヤ30の位相を容易に調整することができるという利点がある。
また、ブレーキがかかった状態のままでモータ20のシャフト21を回転させることにより、電源およびブレーキ解除装置を用意することなく、駆動ギヤ22の位相を調整することができる。また、モータ20を回転させずに駆動ギヤ22を入力ギヤ30に噛み合わせることができ、モータ20の設置スペースが狭隘であっても、モータ20をケーシング10に容易に組み付けることができるという利点がある。
【0023】
また、外歯車部3と内歯車部4の両方を備えているので、駆動ギヤ22および入力ギヤ30の位相の調整を1つの治具1で行うことができる。したがって、別々の治具を用意する必要がないという利点がある。
また、外歯車部3と内歯車部4とが同軸に配置されているので、単一のマーク5によって、外歯車部3および内歯車部4の両方の位相を表示することができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、胴部2を、軸線Lを中心軸とする円柱状とし、胴部2を掴んでトルクを付与することとした。これに代えて、円柱状以外の柱状の胴部2を採用してもよい。また、
図5に示されるように、胴部2が、軸線Lを中心軸とする円柱状の本体部(付与部本体)2bと、本体部2bの外周面から径方向外方に向かって延びる長尺のレバー2cとを備えてもよい。
【0025】
これにより、作業者は、レバー2cの先端に軸線L回りの接線方向の力を加えることにより、軸線L回りのより大きなトルクを付与することができる。したがって、駆動ギヤ22あるいは入力ギヤ30の位相の調整をより容易に行うことができる。
【0026】
また、レバー2cは外歯車部3および内歯車部4に対して、軸線L回りに所定の位相関係を有しているので、レバー2cを位相表示部として利用してもよい。すなわち、マーク5に代えて、レバー2cの軸線L回りの位相によって、駆動ギヤ22あるいは入力ギヤ30の位相を確認することにしてもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、
図6に示されるように、胴部2が軸線L方向に延びる円柱状の本体部(付与部本体)2dと、本体部2dの外周面に設けられ、本体部2dを軸線L回りに回転させるための工具を係合させる工具取付部2eとを備えてもよい。
工具取付部2eは、例えば、スパナ等の工具を噛み合わせることができるように、本体部2dの外周面に、中心軸を挟んだ両側に形成された2つの平行な平面部である。
【0028】
この場合にも、工具取付部2eに噛み合わせた工具に力を加えることにより、より大きなトルクを付与することができる。また、工具取付部2eの位置によって、外歯車部3および内歯車部4の位相を確認してもよい。
また、治具1の使用時のみに、工具を取り付けるので、治具1を小型化することができるという利点もある。
【0029】
また、本実施形態においては、位相表示部として三角形状の刻印を例示したが、形状は任意でよく、また、刻印に代えて、ケガキ線やシール、ペイントなど任意の方法を採用してもよい。
また、本実施形態においては、胴部2の一端に軸受2aを設けたが、軸受2aを設けずに、胴部2の一端を直接、開口部11に嵌合させてもよい。
【0030】
また、外歯車部3および内歯車部4の両方を備える治具1を例示した。これに代えて、
図7に示されるように、外歯車部3を備える第1治具1Aと、内歯車部4を備える第2治具1Bとから構成される治具セット1′を採用してもよい。
【0031】
図7に示される例では、第1治具1Aは、所定の軸線Lを中心軸とする円柱状の第1胴部2Aと、第1胴部2Aの軸線L方向の一端に固定された外歯車部3とを備えている。第1胴部2Aは、第1胴部2Aの外周面から径方向外方に延び、第1胴部2Aに対して、軸線L回りの接線方向の力の付与を可能とする第1レバー(トルク付与部、位相表示部)5Aを備えている。
【0032】
また、第2治具1Bは、所定の軸線(第2軸線)Mを中心軸とする円柱状の第2胴部2Bと、第2胴部2Bの軸線M方向の一端に形成された内歯車部4とを備えている。第2胴部2Bは、第2胴部2Bの外周面から径方向外方に延び、第2胴部2Bに対して、軸線M回りの接線方向の力の付与を可能とする第2レバー(第2トルク付与部、第2位相表示部)5Bを備えている。
第1レバー5A,第2レバー5Bは、それぞれ外歯車部3,内歯車部4に対して所定の位相関係を有していればよい。
【0033】
また、本開示の一実施形態に係るロボット200について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボット200は、
図8に示されるように、開口部211を有し、内部に入力ギヤ230を収容するケーシング210と、ケーシング210の開口部211に取り外し可能に取り付けられるモータ220を備えている。モータ220のシャフト221には、モータ220がケーシング210に取り付けられた状態で入力ギヤ230に噛み合う駆動ギヤ222が取り付けられている。
また、駆動ギヤ222の基端側の外周面には、駆動ギヤ222に対して所定の位相関係を有するマーク(位相表示部)205が設けられている。
【0034】
これにより、作業者は、モータ220をケーシング210に取り付ける前に、マーク205の位相を確認することにより、治具1を使用することなく、駆動ギヤ222を所望の位相に調整することができる。したがって、入力ギヤ230の位相だけを、治具1を用いて調整することにより、駆動ギヤ222および入力ギヤ230を相互に噛み合い可能な位相に配置することができる。これにより、モータ220を容易にケーシング210に組み付けることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 治具
1′ 治具セット
1A 第1治具
1B 第2治具
2 胴部(トルク付与部)
2a 軸受(ガイド部)
2b 本体部(付与部本体)
2c レバー
2d 本体部(付与部本体)
2e 工具取付部
3 外歯車部(第1ギヤ部)
4 内歯車部(第2ギヤ部)
5 マーク(位相表示部)
5B 第2レバー(第2トルク付与部、第2位相表示部)
10 ケーシング
20 モータ
21 シャフト
22 駆動ギヤ
30 入力ギヤ
100 ロボット
200 ロボット
205 マーク(位相表示部)
210 ケーシング
220 モータ
221 シャフト
222 駆動ギヤ
230 入力ギヤ
L 軸線(第1軸線)
M 軸線(第2軸線)