IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァミックス エヌ.ヴイの特許一覧

<>
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図1
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図2a
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図2b
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図3
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図4
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図5
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図6
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図7
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図8A
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図8B
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図8C
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図8D
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図8E
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図9
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図10
  • 特許-サクサクした食感のペストリー製品 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】サクサクした食感のペストリー製品
(51)【国際特許分類】
   A21D 8/02 20060101AFI20240709BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20240709BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20240709BHJP
   A21C 9/08 20060101ALI20240709BHJP
   A21C 3/06 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
A21D8/02
A21D13/16
A21D13/80
A21C9/08 Z
A21C3/06 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023518250
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021075856
(87)【国際公開番号】W WO2022058601
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】2009525
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2011046
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516256227
【氏名又は名称】ヴァミックス エヌ.ヴイ
【氏名又は名称原語表記】VAMIX N.V.
【住所又は居所原語表記】Ottergemsesteenweg-Zuid 816, 9000 Gent, BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】オノレ, エリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ミューレン, ロエル
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01285581(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0003054(US,A1)
【文献】特開昭64-074944(JP,A)
【文献】特開平11-289978(JP,A)
【文献】特開昭50-101551(JP,A)
【文献】特表2017-506519(JP,A)
【文献】特開2000-197444(JP,A)
【文献】365日のお菓子・おやつ・パン,1999年02月16日,p.265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C
A21D
A23L
Google
クックパッド
楽天レシピ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)多層積層ドウシートを供給する工程と、
ii)(i)のドウシートからクロワッサンに必要な形状を切り取り、得られた多層積層ドウ片は、それぞれの辺と角度を形成する底辺とお互いに角度を形成する2つの辺を含む三角形の形状を有している工程とを含み、
a)三角形状のドウ片の底辺と辺との間の角度によって形成される角において、角の先端から形状の内側に向かって、形状の前記底辺から角度Aで切り込みを作成すること;又は、
b)前記三角形状のドウシートの辺又は底辺において、三角形の底辺と辺とによって形成される角の近傍に、形状の辺又は底辺から形状の内側に向かって、ドウシートの前記辺又は底辺から角度Bで切り込みを作成すること;
ここにおいて、三角形における底辺又は辺における前記切り込みが、三角形の底辺の長さの7.5%以下の、三角形の底辺及び辺によって形成される角からの距離内にあり、
又は、ii)a)及びii)b)の組合せ
を特徴とする、
裂けた末端を有するクロワッサンを製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記形状が、二等辺三角形状である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記形状が、底辺の長さが80と200mmの間である場合、高さが100と300mmの間である三角形状である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
形状が三角形の場合、前記三角形の底辺と辺との間の角度が50度から80度の間である、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記角度Aが20度と50度の間であり、かつ/又は前記角度Bが、前記切り込みが行われる辺に対して30度と90度の間である、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記切り込みの長さが20と50mmの間であるか、又は前記切り込みが、三角形の底辺の長さの10~40%の長さを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記切り込みが、三角形の底辺と辺の間に形成される角度の二等分線に従う、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
切り取られたドウ片を三角形の底辺から頂部まで巻くことによってクロワッサン形状を形成する工程をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記多層積層ドウを凍結又は急速凍結する工程をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
化の工程をさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
多層積層ドウ片を焼く工程を付加的に包含する、請求項1から10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記焼く工程が、従来のオーブン又はパルスエアオーブンであるオーブン中で、蒸気とともに又はなしで実行される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記焼く工程が、140から200℃の範囲の温度で実施される、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記焼く工程が、12から30分の範囲の時間で実施される、請求項11から13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記焼く工程の前に、膨化又はグレーズかけもしくは溶き卵塗りの工程が、前記多層積層ドウ片に対して行われる、請求項11から14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
求項1から1のいずれか1項に記載の方法によるプロセスにおいて三角形の形状を有し、かつ三角形の底辺と辺との間のそれぞれの角;かつ/又は前記三角形の2つの辺又は底辺に、三角形の底辺の長さの7.5%以下の、前記角からの距離内につの内向きの切歯を有することを特徴とする、積層ドウ切断器具の使用。
【請求項17】
裂けた末端を有することを特徴とする、請求項1から1のいずれか1項に記載のプロセスによって得られるクロワッサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロワッサン及びロールのような新しいタイプの巻かれたかつ/又は折り畳まれた積層ドウ製品、並びにそのようなペストリー製品を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
クロワッサン及び関連するデニッシュペストリー製品は、膨化及び焼く前に形成されかつ最終製品に巻かれた多層積層ドウ系から製造される。この成形プロセスは、製品の最終的な外観及び形状だけでなく、噛み応え及びサクサク感のようなその口当たりにも影響を及ぼすので、非常に重要である。
【0003】
クロワッサン及び類似の積層ドウ製品は、典型的には、長方形、正方形、菱形、又は三角形の積層ドウ片から調製され、これは巻かれかつ/又は折り畳まれて、多くの場合、1つ又は複数の末端を有するドウ製品となる。例えば、クロワッサンは、三角形のドウ片から形成され、2つの先端(端点)又は末端を有するその典型的な形状が与えられると、三角形の底辺から頂部に向かって巻かれる。これは、ドウ製品の末端を形成する先端の圧縮をもたらす。これらの末端は、ドウ製品の残りの部分に対して比例的に薄くなり、したがって、焼いた後により乾燥し、サクサクした食感が少なくなるが、これは回避されるべきである。
【0004】
いくつかの先行技術文献は、クロワッサンを製造するための三角形のドウ形状の底辺に切り込みを入れることについて報告している。その例は、ES1011959U、EP0663150A1及びEP1285581A2であり、これらは全て、ドウ片を切り取った後にさらに伸張及び縮小することを可能にするために、三角形の底辺の中心に1つ又は複数の切り込みを開示している。しかしながら、切り込みは、クロワッサンを形成する三角形のドウ片の底辺と辺との間に形成される角の中又はその近傍には作られず、前記クロワッサンの裂けた末端をもたらさない。本発明は、末端においてゆるい層形成を増加させ、その口当たりを改善することにおいて消費者の期待を満たすことを意図する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クロワッサン及び類似の積層ドウ食品(発酵させたドウ、発酵させたデニッシュペストリードウ、又は1つ又は複数の末端を有するパフペストリードウ製品に基づく食品)のための新しい方法及び切り取り形状の開発を包含し、これは、先端における層形成がよりゆるくかつ口当たりがよりサクサクした食感である新しい視覚的態様を製品に付与する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、以下の態様を提供する。
態様1
i)多層積層ドウシートを供給する工程と
ii)(i)のドウシートから、食品、好ましくはクロワッサンに必要な形状を切り取る工程とを含み、形成されたドウシート、好ましくは三角形に形成されたドウシートの1つ又は複数の角部又は辺に、1つ又は複数の切り込みが作成されることを特徴とする工程、
例えば、
iia)(i)のドウシートから食品に必要な形状を切り取る工程であり、成形されたドウシートの底辺と辺との間の角部によって形成された末端の1つ又は複数の角部において、角部の先端から形状の内側に向かって、形状の前記底辺から計算した角度Aで切り込みを作成することを特徴とする工程;又は、
iib)(i)のドウシートから食品に必要な形状を切り取る工程であって、成形されたドウシートの1つ又は複数の辺又は底辺において、形状の辺又は底辺から形状の内側に向かって、ドウシートの前記辺又は底辺から計算した角度Bで切り込みを作成することを特徴とする工程;
又は、IIa及びIIbの組み合わせ
とを含む、
裂けた先端(端点)又は裂けた末端を有する、発酵させた及び/又は発酵させていないペストリードウをベースとする食品を製造するための、好ましくは裂けた末端を有するクロワッサンを製造するためのプロセス。
【0007】
「末端」とは、ドウ製品の残りの部分に対して比例的により薄い、最終的に成形されたドウ製品の末端部を意味する。典型的な例は、図1に示されるようなクロワッサンの2つの端点(6)であるが、1つ又は複数のより薄い端部を有する任意の種類のドウ製品は、末端を有するものとして見ることができる。
【0008】
「裂けた末端」とは、ドウ片の末端が開いた構成であり、切れ目によって分離された2つ又は3つ以上の部分を視覚的に見せていることを意味する。本発明の鍵となるのは、生の又は膨化させた、巻かれたか又は折り畳まれた製品及び焼いた最終製品の両方において、末端の前記切り込みが(裂けた末端を通して)目視できる状態でなければならないことである。
これは、三角形のクロワッサンドウ片の底辺に、ドウの基部を伸展するための(strechting)(すなわち、より長いクロワッサンを作るための)切り込みを入れ、及び、切り取り後にドウ片の厚さをさらに薄くし、これにより、生の、膨化した、又は焼いた最終製品のいずれにおいても前記切り込みの存在を目視で確認できなくなる公知の方法及びプロセスとは対照的である。
【0009】
本発明の方法において、ドウ形状又はドウ片を切り取った後、後者は、厚さがさらに低減されないこと、すなわち、その厚さを実質的に伸張又は低減することなく、その最終形状、例えばクロワッサン又はロールに直接巻かれる又は折り畳まれることに留意することが重要である。
それは、態様1 iia及びiibと、切り取り前に厚さを低減し、切り取り後に伸張しない巻き上げとの組合せであり、これは、焼く前及び焼いた後の両方の視覚的形状、並びに焼いた後の2つの端点のクラスト性の向上を可能にする。
【0010】
さらに好ましい実施形態では、ドウ片は三角形のドウ片であり、形成される食品は、三角形の底辺と辺とによって形成される両方の角に、又は三角形の底辺と辺とによって形成される両方の角に近接して底辺に切り込みを入れることによって得られる、裂けた末端を有するクロワッサンである。近接とは、三角形の底辺の長さの7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、又は5%以下である角の距離内にあることを意味する。例えば、前記切り込みは、三角形の底辺及び辺の角から約8 mm以下、約7 mm以下、又は約6 mm以下の両方の角の距離内に入れられる。
【0011】
態様2
前記食品が、クロワッサン、充填クロワッサン、又はチョコレートロール、ペストリーターンオーバー、デニッシュペストリーロール、スパイラル、若しくはツイスト等からなる群から選択される、態様1に記載のプロセス。
【0012】
態様3
前記ドウ製品がクロワッサンであり、前記形状が三角形の形状、好ましくは二等辺三角形である、態様1又は2に記載のプロセス。あるいは、前記形状は、長方形、菱形又は正方形であり得る。
【0013】
態様4
前記形状が、底辺の長さが80と200mmの間であり、高さが100-300mmの間である三角形の形状である、態様1から3のいずれか1つに記載のプロセス。前記形状が長方形、菱形、又は正方形である場合、底辺は、典型的には、長さが50と300mmの間であり、高さが300と50mmの間である。
【0014】
態様5
前記三角形の底辺と辺(脚部)との間の角度が50度から80度の間である、態様1から4のいずれか1つに記載のプロセス。形状が菱形である場合、その角度は、50度から130度の間の任意の角度であり得る。
使用される形状が長方形又は正方形である場合、形成される角度は90度である。
【0015】
態様6
前記角度Aは、三角形が使用される場合には20度と50度の間であり、又は前記角度Aは、長方形の形状が使用される場合には20度と70度の間とすることができる、態様1から5のいずれか1つに記載のプロセス。菱形の場合、切り込みAの角度は、前記先端角をその反対角と接続する対角線に対して0度から30度の間の任意の角度とすることができ、及び/又は前記角度Bは、三角形、長方形、正方形又は菱形が使用される場合、前記切り込みが行われる辺に対して30度と90度の間である。
一実施形態では、前記切り込みは、全てタイプ「IIa」であり、すなわちドウ形状の角又は角部にある。
別の実施形態では、前記切り込みは、全てタイプ「IIb」であり、すなわち、ドウ形状の辺又は底辺において、好ましくは、三角形の底辺の長さの7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、又は5%以下の角度の距離内、例えば、三角形の底辺と辺との間の前記角度から約8mm以下、約7mm以下、又は約6mm以下である。好ましくは、形状が三角形である場合、IIa又はIIbの2つの切り込みが存在し、すなわち、三角形の底辺及び辺によって形成される角度の各々の中、又はそれに近接して1つ存在する。
さらに別の実施形態では、前記切り込みは、ドウ形状の角又は角部におけるタイプ「IIa」の切り込みと、ドウ形状の辺又は底辺におけるタイプ「IIb」の切り込みとの組合せである。
【0016】
態様7
前記切り込みの長さが20から50mmの間である、態様1から6のいずれか1つに記載のプロセス。あるいは、前記切り込みは、三角形若しくは長方形の底辺の長さ、又は切り込みを入れる先端若しくは末端の角度と交差する菱形の対角線の長さの10~40%の長さを有する。
【0017】
態様8
前記切り込みが、三角形の底辺と辺(脚部)の間、又は長方形の基部と高さとの間に形成される角度の二等分線に従う、態様1から7のいずれか1つに記載のプロセス。
菱形形状の場合、前記切り込みは、4つの角度のいずれかにあるとすることができ、前記角度の二等分線、すなわち菱形の対角線の1つに従うことができる。
【0018】
態様9
前記食品がクロワッサンである、態様1から8のいずれか1つに記載のプロセス。
【0019】
態様10
切り取られたドウ片を三角形の底辺から頂部まで巻くことによってクロワッサン形状を形成する工程をさらに含む、態様1から9のいずれか1つに記載のプロセス。長方形又は正方形の形状が使用される場合、前記ドウ片は、典型的には折り畳まれるか又は巻かれる。
【0020】
態様11
(予備)膨化の工程をさらに含む、態様1から10のいずれか1つに記載のプロセス。
【0021】
態様12
前記形成された積層ドウ製品を-18℃と-40℃の間の温度で、好ましくは2分と1時間の間の時間で凍結又は急速凍結(ショック凍結)する工程をさらに含む、態様1から11のいずれか1つに記載のプロセス。
【0022】
態様13
最終的な積層ドウ製品が、-12℃と-18℃の間の温度で、好ましくは20分と24時間の間の時間で実施される凍結工程、続いて-18℃と-40℃の間の温度で、好ましくは2分と1時間の間の時間で実施される急速凍結工程によって凍結されるか、又はその逆である、態様1から12のいずれか1つに記載のプロセス。
【0023】
態様14
好ましくは、従来のオーブン又はパルスエアオーブンであるオーブン中で、蒸気とともに又はなしで前記冷凍製品を焼く工程を付加的に包含する、態様1から13のいずれか1つに記載のプロセス。
【0024】
態様15
前記焼く工程が、140から200℃の範囲の温度で、好ましくは12から30分の範囲の時間で実施される、態様14に記載のプロセス。
【0025】
態様16
前記焼く工程の前に、膨化もしくは予備膨化、又はグレーズかけもしくは溶き卵塗りの工程が、前記ドウ製品に対して行われる、態様14又は15に記載のプロセス。
【0026】
態様17
前記プロセスが(半)工業的かつ連続的プロセスであることを特徴とする、態様1から16のいずれか1つに記載のプロセス。
【0027】
態様18
クロワッサンを製造するための連続的又は半連続的プロセスに使用するのに適した積層ドウ切断器具であって、三角形の形状を有し、三角形の底辺と辺(脚部)との間の角に、及び/又は前記三角形の辺又は底辺に、1つ又は複数の内向きの切歯を有すること、又は長方形の形状を有し、長方形の角若しくは角部及び/又は辺に、1つ又は複数の内向きの切歯を有すること、又は菱形の形状を有し、菱形の角若しくは角部及び/又は辺に、1つ又は複数の内向きの切歯を有することを特徴とする積層ドウ切断器具。
好ましい実施形態では、前記切断器具は、三角形の形状を有し、三角形の底辺と辺とによって形成される両方の角の二等分線に切断手段を有するか、又は三角形の底辺に、三角形の底辺と辺とによって形成される前記角に近接して2つの切断手段を有することを特徴とする。近接とは、三角形の底辺の長さの7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、又は5%以下である角の距離内にあることを意味する。
例えば、前記切り込みは、三角形の底辺及び辺の角から約8mm以下、約7mm以下、又は約6mm以下の両方の角の距離内に入れられる。
【0028】
態様19
連続又は半連続的プロセスで、好ましくは態様1から17のいずれか1つに記載のプロセスでクロワッサンを製造するための、態様18に記載の積層ドウ切断器具の使用。
【0029】
態様20
好ましくは、前記食品が裂けた末端を有することを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法によって得られる、発酵させたドウ、末端を有する発酵させたデニッシュペストリードウ製品、好ましくはクロワッサンをベースとする食品。前記裂けた末端は、製品を焼く前、及び好ましくは焼いた後にも目視できる。
【0030】
態様21
請求項1から17のいずれか1項に記載の方法に従って末端が切り取られていないか又は切り込まれていない方法で調製された食品と比較して、改善されたサクサク感及び/又はフレーク感を有することを特徴とする、態様20に記載の食品。
【0031】
態様22
前記サクサク感、かつ/又はフレーク感が、専門家パネルによって決定されたものである、態様21に記載の食品。
【0032】
態様23
裂けた末端を又は先端を有することを特徴とする、態様20から22のいずれか1つに記載の食品。
【発明の効果】
【0033】
上記の技術は、ドウ製品の最終成形後に末端を形成する先端又は辺に切り込みを入れることによって、末端を有する他のウィーン風ペストリー製品及びデニッシュペストリー製品に容易に適用することができることは、当業者には明らかなはずである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】クロワッサンの一般的なドウ成形の概略図。A)底辺(1)と、前記底辺と角(3)を形成し、互いに角(4)を形成する2つの辺(脚部)(2)とを有する三角形の多層積層ドウ片。B)折り畳んで焼いた後のクロワッサンであって、焼く前に、ドウ片が、底辺から、角(4)によって形成された先端(5)に向かって巻き上げられたクロワッサン。2つの末端(6)は、はっきりと目視でき、ドウ片の角(3)を巻いた結果である。C)説明のための典型的なクロワッサンの配向点。
図2a】A)110mmの底辺の長さ及び120mmの高さを有する、多層化積層ドウ片及びその結果得られるドウ片から形成されたクロワッサンのための切断手段の例示的なスキーム(寸法は例示的であり、限定するものと見なされるべきではない)。切断手段はまた、三角形の底辺(1)と辺(脚部)(2)との間に形成された角(3)に追加の切断線を有する。この例(やはり限定的ではない)では、前記切り込み切断手段は、前記角(3)の二等分線上に位置する。B)多層化積層ドウ片の断面図である。C)(膨化)凍結/(膨化)焼く前の、ドウ片をその底辺(1)から先端(5)に向かって巻いた後のドウの最終形状。
図2b】三角形、長方形、菱形及び正方形の異なる可能なドウ形状及び切り込みの概略図。末端(3)の角度を、異なる形状に対して示す。全ての形状について見られるように、切り込みは、典型的には、角(3)の二等分線に沿って行うことができる。前記角度(A)のある程度の変動は、当然ながら同様に許容され、両頭矢印によって示される。
図3】A)三角形の形状を有し、三角形の底辺と辺(脚部)とによって形成される角の二等分線上に2つの切り込みを有する基本的な切断手段。B)は、A)の複数の切断手段の潜在的な編成の非限定的な例を示しており、その結果、複数(この非限定的な例では3つ)のクロワッサン形状を切り取ることが可能になり、その後、クロワッサン形状を最終形状に巻くことができる。C)は、ドウシートと、ラインを通るドウシートの移動方向と、直線切断手段(この非限定的な例では4つ)と、B)に示されるような複数の切断手段の編成とを示す、切断設備の例示的なセットアップである。D)三角形の基部から頂部まで最終形状に巻く前の、切断後に得られるドウ片。同じことが、当然ながら、別の、すなわち非三角形の形状のドウ片に適用することができる。
図4】本発明に従って調製された、例示的な生のクロワッサン又は予備膨化クロワッサン(すなわち、焼く前)の写真。開いた先端(5)は、本発明によるクロワッサン(パネルA)でははっきりと目視できるが、標準的なクロワッサン(パネルB)では存在しない。
図5】同じドウ組成物から標準的な手順を用いて、すなわち三角形の先端に切り込みを入れずに調製されたクロワッサン(パネルA)と比較した、本発明に従って調製された例示的な焼いたクロワッサンの写真(パネルB)。同等の数字(例えば、1及び1’)は、同じドウ組成を有し、膨化及び焼く前の先端の切り込みの有(1’)無(1)のみが異なるクロワッサンを表す。焼いた後のクロワッサンの先端のよりゆるい構造が、切込みを有するものについては明らかに目視できる。パネルCは、本発明による焼いたクロワッサンのクローズアップ写真を示し、裂けた先端がはっきりと目視できる。
図6】本発明によるクロワッサン(R36T2)及び参照クロワッサン(R36T1)のサクサク感及びフレーク感に関する専門家の試食パネルの結果。パネル試験から、本発明に従って製造されたクロワッサンについて、サクサク感及びフレーク感に関して顕著な改善が達成されることが明らかである(95%の信頼区間)。
図7】本明細書で議論されるタイプ「IIa」及び「IIb」の切り込みの異なる代替例。A)底辺と面との間に形成された三角形の角又は角部におけるタイプIIaによる切り込みであるが、切り込み器具によってドウ片から切り出されたウェッジを示す。前記ウェッジは、本明細書に含まれる全ての実施形態に適用することができる;B)、C)及びD)三角形の各辺におけるタイプIIbによる1つ又は複数の切り込み;E)三角形のドウ形状における角又は角部(タイプIIa)及び辺(タイプIIb)における切り込みの組合せ;F)三角形のドウ形状の底辺(タイプIIb)における切り込み;G)長方形のドウ片における非限定的な例示的切り込み;H)菱形のドウ片における非限定的な例示的切り込み。
図8図7の異なる代替形態の、生のもの、予備膨化したもの、及び焼かれたものの結果を示す。A)辺(タイプIIa)と共に形成された底辺の角又は角部の各々に単一の切り込みを有する三角形のドウ形態;B)三角形の辺(タイプIIb)の各々に単一の切り込みを有する三角形のドウ形態;C)三角形の辺(タイプIIb)の各々に2つの平行な切り込みを有する三角形のドウ形態;D)辺(タイプIIa)と共に形成された底辺の角又は角部の各々における切り込みと三角形の各辺(タイプIIb)における平行な切り込みとの組合せを有する三角形のドウ形態;E)A)と同じであるが、ドウ片から小さなウェッジを切り取ったもの。
図9】クロワッサンを製造するための三角形のドウ片の底辺の中央に切り込みを用いた先行技術に対する本発明の比較パネルAは、先行技術文献EP1285581A2の図3を表し、ドウ片が、切断が行われた後に伸張されることを示す図である。パネルBは、本発明の実施形態によるクロワッサンを製造するプロセスの対応工程を表す。図から分かるように、EP1285581A2のプロセスとは対照的に、ドウ片は、さらに伸張されることも厚さが低減されることもなく、直ちにその最終的なクロワッサン形状に折り畳まれるか又は巻かれる。
図10】本発明に従って製造された膨化させたクロワッサンと、三角形のドウ片の底辺の中央にクロワッサンを製造するための切り込みを有する従来技術を用いたクロワッサンとの比較(T)切り込みを行わなかった対照;(T0)角の二等分線で行った切り込み;(T1)角の二等分線から6mmで行った切り込み;(T2~T4):角の二等分線からそれぞれ10.5mm、15.8mm、及び21mmで行った切り込み。T0及びT1は本発明による実施形態であり、T2~T4(及びT)は従来技術の実施形態である。図から明らかなように、T0及びT1クロワッサンは、裂けた末端(丸で囲まれた先端を参照)を有し、他方、T2~T4(及びT)は、切り込みが角から遠すぎるので、裂けた末端を有していない。
図11】本発明に従って製造された焼いたクロワッサンと、三角形のドウ片の底辺の中央にクロワッサンを製造するための切り込みを有する従来技術を用いたクロワッサンとの比較(T0)角の二等分線で行った切り込み;(T1)角の二等分線から6mmで行った切り込み;(T2~T4):角の二等分線からそれぞれ10.5mm、15.8mm、及び21mmで行った切り込み。T0及びT1は本発明による実施形態であり、T2~T4(及びT)は従来技術の実施形態である。図から明らかなように、T0及びT1クロワッサンは、裂けた末端(丸で囲まれた先端を参照)を有し、他方、T2~T4(及びT)は、切り込みが角から遠すぎるので、裂けた末端を有していない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されるが、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されると理解されるべきである。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためだけに提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明の当業者にとって有するであろう意味と同じ意味を有する。本明細書に提供される定義は、当業者によって理解される範囲よりも狭い範囲を有すると解釈されるべきではない。
別段の指示がない限り、具体的に詳細に記載されていない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者に明らかであるように、それ自体公知の様式で実施することができ、実施されている。例えば、標準的なハンドブック、上記で言及した一般的な背景技術、及びそこに引用されているさらなる参考文献を再び参照されたい。
【0036】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「当該(the)」は、文脈から明らかにそうでないと判断されない限り、単数及び複数の両方の指示対象を含む。「任意の」との用語は、本明細書で用いられる態様、特許請求の範囲、又は実施形態に関して使用される場合、任意の単一のもの(すなわち、任意のもの(anyone))、並びに言及される前記態様、特許請求の範囲、又は実施形態の全ての組合せを指す。
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「で構成される(comprised of)」との用語は、本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない部材、要素又は方法ステップを排除しない。前記用語はまた、「~から本質的になる」及び「~からなる」実施形態を包含する。
【0037】
端点による数値範囲の列挙は、それぞれの範囲内に含まれている全ての数及び分数、並びに列挙された端点を含む。
本明細書で使用される「約」との用語は、測定可能な値、例えば、パラメータ、量、持続時間等に言及する場合、指定された値の及び指定された値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を、このような変動が開示された発明において実施するのに適切である限り、包含することを意味する。「約」との修飾語が言及する値は、それ自体も具体的に、かつ好ましく開示されることが理解されるべきである。
本開示において引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0038】
典型的には、プレドウ組成物は、単一工程で全ての成分を一緒に混合及び混練することによって調製される。本発明の目的のために、本明細書で使用される「ドウプレミックス」又は「プレドウ」組成物との用語は、小麦粉及び水、並びに任意選択的に、糖、グルテン、改良剤、塩、酵母、サワードウ、卵、及び乳、粉乳、バターミルク、又はホエイのような乳成分であるがこれらに限定されない他の成分を含む混合物を包含する。
次いで、プレドウをシート状にし、プレドウの下層及び上層内に脂肪層を封入する。この層状ペーストを繰り返しシート状にし、折り畳むことにより、プレドウと脂肪の交互のシートを有する薄層状系が製造される。これは、ペストリー製品を得るための標準的なプロセスである。工業用ベーカリーでは、ペストリードウを製造するための脂肪(すなわち、バター、マーガリン又はそれらのブレンドを含むことができる積層脂肪)は、ブロック(10~25kgブロック)の形状で受け取られる。これらのブロックから、いわゆる脂肪ポンプを使用することによって、脂肪の規則的かつ連続的な層が作成される。次いで、この脂肪層は、プロセスにおける異なるシート化工程及び積層工程に続く。積層脂肪は油中水型エマルションである。
好ましい実施形態において、ドウ製品は、発酵ドウ製品であり、すなわち、プレドウ製品はまた、好適な量の酵母を含む。このようなドウ製品は、焼く前に、発酵工程又は予備膨化工程も必要とする。
【0039】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「積層用脂肪」との用語は、ドウを積層するのに適した任意のタイプの乳製品ベースのバター若しくはマーガリン(動物性脂肪若しくは植物油ベース)又はそれらのブレンドを包含する。好適な積層用脂肪は、ドウ層の間で圧延され、伸張され、シート状にされる必要があるため、強靭で可塑性の質感を有する必要がある。この工程は、脂肪及びドウの重ね合わされた層を含む積層構造を形成することによって、押出機を有する自動システムを用いて行ってもよい。
最終的なドウに組み込まれるバター又はマーガリン又はそれらのブレンドの量は、ドウの総重量の15重量%~40重量%、例えば20重量%~30重量%に相当し得る。脂肪の層が製品を展開させ、二酸化炭素が層間に圧力をかける。
【0040】
「改良剤」との用語は、ドウの展開及び製品の貯蔵寿命を補助する活性化合物を包含する。非限定的な例は、酵素、乳化剤又はアスコルビン酸である。
【0041】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「縮小」との用語は、典型的にはキャリブレーター又はシーター(sheeter)によって行われる、積層ドウシートの厚さの低減を包含する。折り畳んだ後、積層ドウは、容易に4~7cmの厚さを有することができ、例えば、ペストリー製品に使用可能であるためには、その厚さは、成形前に約5mm、又はさらにそれ未満に低減される必要がある。これは、縮小した開口部を有する一連のキャリブレーターを使用して行うことができ、したがって、穏やかな方法で、すなわち、グルテンネットワーク及び/又は脂肪層を破壊又は破裂させることなく、積層ドウの一連の縮小をもたらす。
【0042】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「工業的」又は「半工業的」との用語は、手動介入を必要としないか又はほとんど必要としない任意の連続的プロセス、すなわち、多層積層ドウ製品又はシートを完全に又はほぼ完全に自律的に製造するシステムを包含する。これは、ドウの製造段階を完了するために(職人の)パン製造業者の相互作用(手動介入/適応)を必要とする職人のプロセスとは対照的である。
【0043】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「押出機」との用語は、ドウ、脂肪又はバターのいずれかの薄層又はシートの製造を可能にする任意の押出手段を包含する。それは、典型的には、ドウ、脂肪又はバターがポンプからコンベヤーベルト上又は別の層上に押し出される細い開口部又は「口」を含む。例えば、3つの押出機の組合せを使用して、本発明による脂肪-ドウ-脂肪シートのサンドイッチを作製することができる。いくつかの実施形態では、前記押出機は、ドウプレミックスのための供給手段と、1つ又は複数の垂直及び/又は水平スクリューと、押出手段とを含む。
【0044】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「脂肪ポンプ」又は「バターポンプ」との用語は、押出機によって薄いシート状にするのに十分に可塑性にするように、脂肪又はバターを十分にすり潰すことができる任意のタイプのポンプを包含する。
【0045】
本発明の目的のために、本明細書で使用される「粉化装置」との用語又は「ダスター」という粉は、連続的な工業的又は半工業的製造の間にその粘着性を低減するために、積層ドウシートの上及び/又は下に粉付け又は粉の薄層をもたらすことができる任意の手段を包含する。
【0046】
本発明の目的のために、積層ドウを製造するための製造ラインに関連して本明細書で使用される「コンベヤーベルト」との用語は、製造ライン上で積層ドウのシートを移送することができる任意の搬送システムを包含する。それは、典型的には、ライン上の他の手段及び装置、例えば、押出機、キャリブレーター、ラミネーター又はフォルダー等を接続し、前記後続の要素へのシートの移送を可能にする複数の別個の要素を含むことができる。
【0047】
本発明の目的のために、積層ドウを製造するための製造ラインに関連して本明細書で使用される「キャリブレーター」との用語は、ドウの厚さを低減する単一のローラーを使用する任意の縮小手段又はシート化手段を包含する。これは、マルチローラー縮小手段と混同されるべきではない。
【0048】
本発明の目的のために、積層製造ラインに関連して本明細書で使用される「折り畳み手段」との用語は、積層ドウシートを1回又は複数回折り畳んで積み重ねることができる装置を指す。非対称積層又は対称積層をもたらす、「ラミネーター」と呼ばれることもある様々なタイプの折り畳み手段が存在する。積層は様々な方法で行うことができる。例えば、前後に移動するガイディングシステムの間でドウシートを垂直に走らせることによって行われるラッピングによる。切り取り及び積み重ねでは、ギロチンがドウシートを規則的な長方形のシートに切り取り、これらのシートは次いで互いの上に積み重ねられる。あるいは、積層は、水平積層によって行うことができ、それによって、ドウシートを有するコンベヤーベルトは、次の搬送ベルトの上で前後に移動し、それによって層を積み重ねる。
この積層工程は、漸進的な積層であってもよく、ドウは、1つ又は複数のキャリブレーターを通過し、搬送ベルトとキャリブレーターとの間に作られる空間は、次のキャリブレーターに向かって減少する。好ましくは、積層工程の終わりに、ドウの厚さは15と2mmの間、好ましくは10と2mmの間である。
【0049】
本発明のプロセスは、ドウを巻き、成形し、かつ/又は切り分ける工程を含んでもよい。例えば、クロワッサンの調製のために、三角形の形状に切り分ける工程が行われ、次いで前記クロワッサンがそれ自体の上に巻き上げられて所望の形状とし、例えばガレット用のシートも切り抜くことができる。
例えばチョコレートロール又はフルーツ若しくはプディングを充填したロール又はペストリーの調製のためにドウを切り分けることも当然想定することができる。
【0050】
一般に、本発明は、巻いた後、成形した後又は折り畳んだ後に最終的なドウ製品の末端を形成するドウ製品の先端に、又は前記ドウ製品の辺又は底辺に切り込みを入れることを可能にする切断器具及び積層ドウ製品の製造においてそのような切断器具を使用する方法を包含する。クロワッサンの例では、切断手段は、三角形の底辺と辺(脚部)とによって形成される角に、又は前記角の近傍の前記三角形の底辺に、追加の切り込み形成手段を有する。そのような切り込み形成手段は、好ましくは、ドウ片の残りのグルテン構造及び層を損傷しないように、きれいな切り口を提供するように十分に鋭い必要がある。クロワッサンの連続的又は半連続的製造ラインで使用するための標準的な切断手段は、商業的に入手可能である。一実施形態では、前記切り込み器具は、鋭い切り込みを入れるだけではなく、ドウの小片(ウェッジ)を効果的に切り落とすことができる(図7A参照)。このようにして作成された小さなウェッジの幅は、0~10mm、例えば1~7mm、1~5mm、1~4mm、1~3mm、又は1~2mmのいずれかとすることができる。
前記切り込みが、例えば三角形のドウ片の底辺に行われる場合、前記切り込みは、好ましくは、三角形の底辺の長さの7.5%以下、7%以下、6.5%以下、6%以下、5.5%以下、又は5%以下の角の距離、例えば、三角形の底辺と辺との間の前記角から約8mm以下、約7mm以下、又は約6mm以下の距離内で行われる。好ましくは、形状が三角形である場合、IIa又はIIbの2つの切り込みが存在し、すなわち、三角形の底辺及び辺によって形成される角の各々の中、又はそれに近接して1つ存在する。
切り込みと例えば三角形のドウ片の底辺との間の角は、典型的には、三角形の底辺と辺とによって形成される角の二等分線に実質的に従うか、又はそれに実質的に平行である。好ましくは、前記切り込みを通る想定線は、前記二等分線に対して10度以下、好ましくは5度以下の角度に設定される。あるいは、切り込みと例えば三角形のドウ片の底辺との間の角度は、20と50度の間に設定される。
【0051】
クロワッサンを連続的に製造するための切断手段の例を図3に示す。パネルA)は、三角形の形状を有し、三角形の底辺と辺(脚部)とによって形成される角の二等分線上に2つの切り込みを有する基本的な切断要素を示す。パネルB)は、複数のそのような切断手段の潜在的な編成を示しており、その結果、(この非限定的な例では)3つのクロワッサン形状を切り取ることが可能になり、その後、クロワッサン形状を最終形状に巻くことができる。そのような配置は一例にすぎず、使用される製造ラインに応じて適合させることができることは明らかである。図3のパネルC)には、ドウシートと、ラインを通るドウシートの移動方向と、線形切断手段(この非限定的な例では4つ)と、パネルB)に示されるような複数の切断手段の編成とを含む、完全な例示的なセットアップが示されている。次いで、パネルD)は、切り取った後で、それらの最終形状に巻く前の、結果として生じたドウ片を示す。同じことが、当然ながら、別の、すなわち非三角形の形状のドウ片に適用することができる。前記切断手段の配向は、もちろん、製造ラインに応じて適合させることができる。
【0052】
ドウの形状はいかなるものであってもよいが、好ましくは三角形、菱形、長方形又は正方形から選択される。前記形状は、わずかに異なる形状も含み、ドウはかなり展性のある物質であるので、完全な幾何学的形状である必要はない。形状の先端は、尖った先端を避けるために、例えば、丸くするか、又は切り取ることができる。形状の違いは、例えば、わずかに丸みを帯びた若しくは拡張された角部若しくは角を有する三角形、菱形、正方形、又は長方形とすることができる。
【0053】
留意すべき重要なことは、ドウ片を切り取った後、ドウ片は、拡張されたり(伸張されたり)、厚さが低減されたりするのではなく、単に巻かれるか、又は折り畳まれて、そのまま最終形状にされることである。これは、クロワッサンを製造するために三角形の底辺に切り込みを入れて、ドウ片をさらに縮小して伸張できるようにすることを示唆してきた先行技術文献とは明らかに対照的である。従来技術のクロワッサンでは、切り込みは、裂けた末端をもたらさず、むしろ、折り畳まれたか又は巻かれたクロワッサンの底部に存在し、最終製品(生、膨化又は焼いたもののいずれか)では目に見えない。前記差異は、両方のプロセスを比較する図9にも実証されている。
【0054】
本発明のプロセスは、前記成形製品を15℃から35℃、好ましくは25℃から30℃の範囲の温度で膨化させ、60%から90%、好ましくは65%から80%の範囲の適切な相対湿度で膨化させ、30分から3時間、好ましくは1.5時間から2.5時間の範囲の適切な時間膨化させることができる(予備)膨化工程を含んでもよい。
生のドウ製品を凍結及び/又は急速凍結する任意選択の工程の間、温度は、好ましくは-12と-40℃の間であり、30分から1時間の範囲の時間である。前記ドウ製品は、その切り取られた若しくは形成された形態で、又はシートとして凍結することができる。前記工程は、例えば、凍結又は急速凍結塔中で実施される。この工程は、ドウ製品を数時間から数ヶ月の時間保存することを可能にし、またドウ製品の形状を維持することも可能にする。
有利には、連続的製造における凍結及び/又は急速凍結工程は、
--12℃と-30℃の間の温度で、好ましくは20分と24時間の間の時間で実施される凍結工程、又は
--18℃と-40℃の間の温度で、好ましくは2分と1時間の間の時間で実施される急速凍結(ショック凍結)工程、急速凍結では、製品のコアは、-18℃の温度に達する、又は
--12℃と-30℃の間の温度で、好ましくは20分と24時間の間の時間で実施される凍結工程、続いて、-18℃と-40℃の間の温度で、好ましくは2、3、4、若しくは5分と1時間の間の時間で実施される急速凍結工程、又は逆に、-18℃と-40℃の間の温度で、好ましくは2、3、4、若しくは5分と1時間の間の時間で実施される急速凍結工程、続いて、-12℃と-30℃の間の温度で、好ましくは20分と24時間の間の時間で実施される凍結工程
を含んでもよい。
【0055】
本発明のプロセスはまた、好ましくは卵及び/又は他の成分を含む卵を用いて実施されるグレーズかけ工程を含んでもよい。このグレーズかけは、凍結及び/又は急速凍結工程の前又は後に実施してもよい。
追加の工程において、好ましくは後の段階において、生の、(予備)膨化させた、又は凍結若しくは急速凍結させた食品をオーブンで焼くことができる。使用されるオーブンは、蒸気の有無にかかわらず、従来のオーブン又はパルスエアオーブンであってよい。一実施形態によれば、焼く工程は、140から200℃の範囲の温度で、好ましくは10から30分の範囲の時間で実施される。焼いた後、このように調製された焼かれた食品は、消費の準備が完了している。
【0056】
本発明の別の目的は、本発明のプロセスに従って製造された、発酵させたか又は発酵させていないペストリードウをベースとする生の、又は凍結若しくは急速凍結させたデニッシュ又はウィーン風ペストリーに関する。最終製品の具体的な例としては、クロワッサン、チョコレートロール又はチョコレート、プディング、クリーム、フルーツ若しくはジャムを充填したクロワッサン又はペストリー製品、ペストリーターンオーバー、デニッシュペストリーロール、スパイラル若しくはツイスト等が挙げられる。
【0057】
本発明の別の目的は、本発明のプロセスに従って製造された、ペストリードウをベースとする焼かれた食品に関する。最終製品の具体的な例としては、クロワッサン、チョコレートロール又はチョコレート、プディング、クリーム、フルーツ若しくはジャムを充填したクロワッサン又はペストリー製品、ペストリーターンオーバー、デニッシュペストリーロール、スパイラル若しくはツイスト等が挙げられる。
本発明を、ここで、実施例の節において非限定的な様式でより詳細にさらに例示する。
【実施例
【0058】
実施例1.サクサクした食感のクロワッサンを製造するための本発明によるプロセス
プレドウの調製
図4及び図5に示すクロワッサンドウのレシピは以下の通りである。
【0059】
【表1】

ドウを混練により製造した。
【0060】
積層プロセス
次いで、プレドウをシート状にし、プレドウの下層及び上層内に脂肪層を封入する(最終製品に対して24%の脂肪)。この層状ペーストを繰り返しシート状にし、折り畳むことにより、プレドウと脂肪の交互のシートを有する薄層状系が製造される。
【0061】
切り取り、成形及び/又は凍結
積層されたドウシートを、工業的に(連続的プロセス)三角形片に切り取り、三角形の基部から巻いて、クロワッサン形状のドウ製品を形成した。対照ドウ製品の場合には、三角形のドウ片はその末端で切り取らなかったが、本発明による製品の場合には切り取った。
これらの製品は、この時点で、必要に応じて貯蔵又は凍結することができるか、又は直接焼くことができる。
ドウ製品を、焼く前に、発酵又は予備膨化工程にも供する。
この実験では、クロワッサンを凍結し、28℃、RH75%で約2時間膨化させた後、焼いた。焼くことは、約180℃の範囲の温度で13分間行った。
【0062】
結果
図4において、三角形のドウ片の底辺と辺(脚部)とによって形成された角に追加の切り込みを行う効果は、末端(6)において明らかであり、開いた層状の端部を示している。焼いた後(図5参照)、これは、以下のパネル実験においても示されるように、口当たりが改善されかつサクサク感が増加した、明らかでよりゆるい末端をもたらす。
図8には、別の実施形態の例が示されており、クロワッサンの先端を形成する角部ではなく、ドウ形状の辺及び/又は底辺に切り込みが入っている(図7の切り込みのスキームを参照)。
図8は、以下のように形成された、生のクロワッサン、予備膨化させたクロワッサン、及び焼いたクロワッサンを示す。
A)辺と形成された底辺の角部の各々に単一の切り込みを有する三角形のドウ形態(タイプIIa);
B)三角形の辺の各々に単一の切り込みを有する三角形のドウ形態(タイプIIb);
C)三角形の辺の各々に2つの平行な切り込みを有する三角形のドウ形態(タイプIIb);
D)辺と形成された底辺の各角部における切り込み(タイプIIa)と、三角形の辺の各々における平行な切り込み(タイプIIb)との組合せを有する三角形のドウ形態;及び
E)A)と同じであるが、ドウ片から小さなウェッジを切り抜いた形態。
また、これらの実施形態は、クロワッサンの開いた層状部分を示し、これは、焼いた後に、口当たりが改善しかつサクサク感が増加した、局所的な、ゆるんだクラスト領域をもたらす。
9人の専門家からなる訓練されたパネルに、実施例1に従って調製された対照クロワッサン及び試験クロワッサンのサクサク感の記述的評価(好みなし)を行うように依頼した。結果を図6にまとめた。パネル試験から、本発明に従って製造されたクロワッサン(R36T2)について、サクサク感及び/又はフレーク感に関して、標準的なクロワッサン(R36T1)に対して顕著な改善が達成されることが明らかである(95%の信頼区間)。
【0063】
実施例2. 本発明に従って製造されたクロワッサンと、三角形のドウ片の底辺の中央にクロワッサンを製造するための切り込みを有する従来技術を用いたクロワッサンとの比較
三角形の底辺における切り込みの位置が、形成される最終製品に影響を及ぼすという証拠を提供するために、上記の実施例1に従ってクロワッサンを調製したが、切り込みは三角形の底辺に沿って異なる位置で行った。
【0064】
【表2】

膨化製品及び焼いた製品の両方についての結果は、2つの二等分線に近いことが重要であることを示す(膨化クロワッサン対焼けたクロワッサンについての図10及び11を参照)。
-T0及びT1について:開口(裂けた)末端
-T及びT2~T4について:開口末端なし。末端の視覚的態様はより四角になる。
【0065】
このことから、改善されたサクサク感及び/又はフレーク感を得るためにクロワッサンの開いた又は裂けた先端を有することの効果は、三角形のドウ片の底辺の中央に切り込みを入れる先行技術文献に開示された方法及び器具によっては達成できないことが明らかである。実際、本発明による切り取りを実施するためには、新しい切断器具を開発しなければならなかった。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11