(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】凸部と凹部とを嵌合する工程を含む組立部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
F16B5/02 A
(21)【出願番号】P 2023525260
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2021021079
(87)【国際公開番号】W WO2022254632
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】古田 諭史
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-98007(JP,A)
【文献】特開平8-121442(JP,A)
【文献】実開平5-12827(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の凸部と第2の部材の凹部とを嵌合させて組立部材を製造する製造方法であって、
前記凸部および前記凹部は、互いに相似の形状を有し、前記凸部を前記凹部に嵌めたときに、前記凸部の側面と前記凹部の側面との間に隙間部が形成される大きさを有し、
前記凸部の側面および前記凹部の側面のうち少なくとも一方に、第1の部材に第2の部材を組み付けた後に外部に放出可能な保護剤を配置する配置工程と、
前記凸部と前記凹部とを嵌合して、第1の部材に対して第2の部材を組付ける嵌合工程と、
締結部材により、第1の部材と第2の部材とを互いに固定する固定工程と、
前記凸部の側面と前記凹部の側面との間に配置される前記保護剤を外部に放出して、前記凸部と前記凹部との間に前記隙間部を形成する放出工程と、を備える、組立部材の製造方法。
【請求項2】
前記保護剤は、前記凸部の側面および前記凹部の側面のうち少なくとも一方に配置されることで被膜が形成され、加熱することにより気化する特性を有し、
前記放出工程は、前記保護剤を加熱することにより外部に放出する工程を含む、請求項1に記載の組立部材の製造方法。
【請求項3】
前記保護剤は、前記凸部の側面および前記凹部の側面のうち少なくとも一方に配置されることで被膜が形成され、加熱することにより液化する特性を有し、
前記放出工程は、前記保護剤を加熱することにより外部に放出する工程を含む、請求項1に記載の組立部材の製造方法。
【請求項4】
第1の部材および第2の部材のうち少なくとも一方は、前記隙間部から外部に連通する連通路を有し、
前記放出工程は、前記連通路を通じて前記保護剤を外部に放出する工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組立部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸部と凹部とを嵌合する工程を含む組立部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置の製造方法では、1つの部材に対して他の部材の位置合わせを実施した後に、1つの部材と他の部材とを互いに固定する場合が有る。また、2つの部材の位置合わせを実施する場合に、1つの部材に凸部を形成し、他の部材に凹部を形成することが知られている。凸部を凹部に挿入することにより、1つの部材に対する他の部材の位置合わせを容易に行うことができる。すなわち、インロー構造を用いることが知られている。例えば、2つの部材が回転軸の周りに回る時に、回転軸に沿って延びる凸部と凹部とを形成する。そして、1つの部材の凸部を他の部材の凹部に嵌合することにより、1つの部材と他の部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【0003】
従来の技術においては、凹部の表面および凸部の表面にダイヤモンドライクカーボン膜のような膜を形成して、凹部に対して凸部を挿入する時の摩擦を軽減することが知られている(例えば、特開2006-247756号公報および特開2017-63070号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-247756号公報
【文献】特開2017-63070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの部材に凸部を形成して他の部材に凹部を形成して、部材同士の位置合わせを行う場合に、凸部と凹部との間に隙間が生じると正確な位置合わせを行うことが出来なくなる。正確な位置合わせを行うためには、凹部に対して凸部が精度よく嵌合することが好ましい。すなわち、凹部に対して凸部が密着する大きさにて、凹部および凸部を形成することが好ましい。一方で、凹部と凸部とが嵌合する時に、同軸状に挿入することが難しく、嵌合しにくくなる場合が有る。
【0006】
凹部に対して凸部を嵌合し易くするために、凸部の頂面の角部および凹部の先端の角部に、テーパ形状の面取り部を設けることができる。面取り部を設けることにより、凹部と凸部とが嵌合し易くなる。しかしながら、テーパ形状に沿って凹部に凸部が挿入される時に、凸部が傾いて挿入される場合がある。更に、凹部に対して凸部が傾いた状態で2つの部材が固定される場合がある。この結果、それぞれの部材に対して不要な力が作用した状態で、2つの部材が固定されてしまう。そして、部材の内部に残留する力により、それぞれの部材を含む装置、または、部材に接続される装置に悪影響を及ぼす場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、第1の部材の凸部と第2の部材の凹部とを嵌合させて組立部材を製造する製造方法である。凸部および凹部は、互いに相似の形状を有し、凸部を凹部に嵌めたときに、凸部の側面と凹部の側面との間に隙間部が形成される大きさを有する。製造方法は、凸部の側面および凹部の側面のうち少なくとも一方に、第1の部材に第2の部材を組み付けた後に外部に放出可能な保護剤を配置する配置工程を備える。製造方法は、凸部と凹部とを嵌合して、第1の部材に対して第2の部材を組付ける嵌合工程と、締結部材により、第1の部材と第2の部材とを互いに固定する固定工程とを備える。製造方法は、凸部の側面と凹部の側面との間に配置される保護剤を外部に放出して、凸部と凹部との間に隙間部を形成する放出工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、凸部と凹部との間に隙間部を有する組立部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態における第1の組立部材の断面図である。
【
図2】実施の形態における第1の組立部材の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態における第1の部材および第2の部材を側方に並べた時の平面図である。
【
図4】組立部材の製造方法の嵌合工程を行う時の第1の部材および第2の部材の断面図である。
【
図5】嵌合工程を行う時の第1の部材および第2の部材の拡大断面図である。
【
図6】嵌合工程および固定工程を行う時の第1の部材および第2の部材の断面図である。
【
図7】比較例の組立部材の製造方法の嵌合工程を説明する断面図である。
【
図8】比較例の組立部材の製造方法の嵌合工程を説明する拡大断面図である。
【
図9】隙間部に連通する連通穴を備える第2の組立部材の拡大断面図である。
【
図10】第1の変形例の組立部材における第1の部材の平面図である。
【
図11】第2の変形例の組立部材における第1の部材の平面図である。
【
図12】第3の変形例の組立部材における第1の部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図12を参照して、実施の形態における組立部材の製造方法について説明する。組立部材は、複数の部材を組み立てることにより製造される。本実施の形態における組立部材は、凸部を有する第1の部材と凹部を有する第2の部材とを結合して締結部材にて固定する。この時に、凸部と凹部とを嵌合することにより、第1の部材に対する第2の部材の位置合わせを実施する。すなわち、インロー構造により、2つの部材の位置合わせを実施する。
【0011】
図1に、本実施の形態における第1の組立部材の拡大断面図を示す。
図2に、本実施の形態における第1の組立部材の分解斜視図を示す。
図1および
図2を参照して、第1の組立部材1は、第1の部材11と第2の部材21とを備える。第1の部材11および第2の部材21は、締結部材としてのボルト71にて、互いに固定されている。締結部材としては、ボルトに限られず、第1の部材11と第2の部材21とを固定する任意の部材を採用することができる。
【0012】
第1の部材11は、円板状の板状部11aと、板状部11aの表面から突出する凸部11bとを含む。第1の部材11には、ボルト71が固定される穴部11cが形成されている。第2の部材21は、円板状の板状部21aを有する。板状部21aには、表面から凹む凹部21bが形成されている。第2の部材21には、ボルト71が挿通する穴部21cが形成されている。
【0013】
凸部11bと凹部21bとは、互いに相似の形状を有する。特に、凸部11bの側面と凹部21bの側面とは互いに相似の形状を有する。ここでの例では、凸部11bおよび凹部21bは、互いに円柱の形状を有する。凹部21bは、凸部11bよりも大きく形成されている。凸部11bおよび凹部21bは、凸部11bの側面と凹部21bの側面との間に隙間部81が形成される大きさを有する。
【0014】
図1および
図2を参照して、本実施の形態の組立部材の製造方法においては、矢印91に示すように第1の部材11に対して第2の部材21を相対的に移動することにより、凸部11bと凹部21bとを嵌合させる。この後に、矢印92に示すように、ボルト71を第2の部材21の穴部21cおよび第1の部材11の穴部11cに挿入する。そして、ボルト71により、第1の部材11に対して第2の部材21を固定する。
【0015】
図3に、第1の部材と第2の部材とを側方に並べたときの平面図を示す。第1の部材11の凸部11bの平面形状の円は、直径D1を有する。すなわち、凸部11bの外径は、D1である。第2の部材21の凹部21bの平面形状の円は、直径D2を有する。すなわち、凹部21bの内径は、D2である。凸部11bと凹部21bとの間に隙間部81が形成されるように、直径D2は直径D1よりも大きい。直径D1と直径D2との差の1/2である半径の差Δr((D2-D1)/2)は、隙間部81の幅に対応する。また、差Δrは、後述する保護剤として配置されるコーティング剤の厚さに対応する。
【0016】
図1から
図3を参照して、組立部材1は、回転軸86の周りに回転する部材である。本実施の形態においては、凸部11bの平面形状の円の中心と、凹部21bの平面形状の円の中心とが回転軸86を通るように固定される。このように、第1の部材11に対して第2の部材21の位置が定まるように、第1の部材11と第2の部材21とが互いに固定される。特に、回転軸86に対して第1の部材11および第2の部材21が位置決めされるように、第1の部材11と第2の部材21とが互いに固定される。
【0017】
組立部材1の製造方法において、作業者は、第1の部材11と第2の部材21とを製造する準備工程を実施する。この時に、凸部11bの表面および凹部21bの表面は、相似の形状を有するように、第1の部材11および第2の部材21を形成する。ここでの例では、凸部11bおよび凹部21bを円柱状に形成する。この時に、凸部11bの高さと凹部21bの深さは、いずれか一方が他方よりも大きくても構わない。または、凸部11bの高さと凹部21bの深さとは、互いに同一であっても構わない。
【0018】
凸部11bおよび凹部21bは、平面形状における半径の差Δrが、通常の隙間嵌めにて凸部と凹部とを嵌合するときの差よりも大きくなるように形成する。通常の隙間嵌めを実施する場合には、凸部の外径と凹部の内径との差の1/2が、例えば0.035mm以下になるように凸部および凹部を形成する。これに対して、本実施の形態の組立部材1では、直径D1と直径D2との差の1/2が、例えば0.05mm以上0.15mm以下になるように凸部11bおよび凹部21bを形成することができる。このような差を設けることにより、凸部11bを凹部21bに嵌めた時に、凸部11bの側面と凹部21bの側面との間に隙間部81を形成することができる。
【0019】
図4に、本実施の形態における保護剤を配置する配置工程を説明する断面図を示す。
図5に、配置工程における第1の部材の凸部の側面と第2の部材の凹部の側面との拡大断面図を示す。
図4および
図5を参照して、作業者は、第1の部材11の凸部11bの側面および第2の部材21の凹部21bの側面に、保護剤としてのコーティング剤61を予め定められた厚みにて配置する。コーティング剤61は、製造工程において凸部11bの側面および凹部21bの側面を保護する機能を有する。コーティング剤61としては、第1の部材11に第2の部材21を組付けた後に外部に放出可能であり、隙間部81から消失する特性を有するものを採用することができる。ここでは、コーティング剤61は、凸部の側面および凹部の側面のうち少なくとも一方に配置されることで被膜が形成され、加熱することにより気化する特性を有するものを使用する。このコーティング剤としては、例えば、常温フッ素樹脂コーティング剤を採用することができる。このコーティング剤は、低沸点であり常温にてコーティングを行う。また、加熱することにより気化する特性を有する。
【0020】
凹部21bの側面および凸部11bの側面に配置されるコーティング剤61の厚さは、組立部材1における隙間部81を充填するように定められる。ここでの例では、凸部11bの側面に配置されるコーティング剤61の厚さと凹部21bの側面に配置されるコーティング剤61の厚さとの和が、凸部11bの半径と凹部21bの半径との差Δrになるように、コーティング剤61の厚さが定められる。例えば、凹部21bの側面および凸部11bの側面に、厚さがΔr/2になるようにコーティング剤61を配置する。
【0021】
コーティング剤61は、周方向において一定の厚さで配置される。予め定められた厚さにてコーティング剤を配置する方法としては、スプレーコータにて塗布する方法を例示することができる。この方法では、エアスプレーまたは超音波スプレー等を用いて、霧状のコーティング剤を対象物に吹き付けることにより、予め定められた厚さの被膜を形成することができる。
【0022】
本実施の形態においては、第1の部材11の凸部11bの側面と第2の部材21の凹部21bの側面との両方にコーティング剤61を配置しているが、この形態に限られない。凸部の側面および凹部の側面のうち少なくとも一方に、保護剤を配置することができる。すなわち、凸部の側面または凹部の側面の一方に保護剤を配置しても構わない。この時の保護剤の厚さは、隙間部81の幅に相当する厚さ(Δr)になる。
【0023】
図6に、本実施の形態の製造方法における嵌合工程および固定工程を説明する第1の部材および第2の部材の断面図を示す。
図4から
図6を参照して、矢印91に示すように、第1の部材11に対して第2の部材21を相対的に移動する。凸部11bと凹部21bとを嵌合して、第1の部材11に対して第2の部材21を組付ける嵌合工程を実施する。嵌合工程を行った直後には、隙間部81にコーティング剤61が充填されている。
【0024】
嵌合工程において、凸部11bの側面および凹部21bの側面には、コーティング剤61が配置されている。凸部11bと凹部21bとの間にコーティング剤61が介在するために、凹部21bに対して凸部11bが傾いて挿入されることを抑制できる。更に、隙間部81には、一定の厚さのコーティング剤61が充填されるために、第1の部材11に対する第2の部材21の位置合わせを精度よく行うことができる。ここでの例では、凸部11bと凹部21bとが同軸状に配置されるように、第1の部材11および第2の部材21の位置合わせを行うことができる。
【0025】
次に、ボルト71により第1の部材11と第2の部材21とを互いに固定する固定工程を実施する。第2の部材21の穴部21cと第1の部材11の穴部11cとにボルト71を挿入する。ボルト71を締め付けることにより、第1の部材11に対する第2の部材21の位置が固定される。
【0026】
次に、第1の部材11の凸部11bの側面と第2の部材21の凹部21bの側面との間に配置されているコーティング剤61を外部に放出する放出工程を実施する。コーティング剤61を外部に放出することにより、凸部11bと凹部21bとの間に隙間部81を形成する。ここでの例では、コーティング剤61を加熱することにより気化させる。
【0027】
本実施の形態においては、工業用ドライヤーにて、凸部11bと凹部21bとの嵌合部分を加熱する。コーティング剤61は、加熱されることにより気化して外部に放出される。コーティング剤61は、凸部11bの側面と凹部21bの側面との間の空間から消失する。この結果、
図1に示すように、凸部11bと凹部21bとの間に隙間部81が形成される。
【0028】
このように、本実施の形態の組立部材の製造方法では、凸部の側面と凹部の側面との間に隙間部が形成されるような寸法にて第1の部材および第2の部材を形成する。隙間部の幅に対応する厚さにて保護剤を凸部の側面および凹部の側面に配置する。凸部と凹部とを嵌合した後に、第1の部材と第2の部材とを締結部材にて固定する。そして、保護剤を加熱することにより保護剤を外部に放出して、凸部と凹部との間に隙間部を形成することができる。
【0029】
図7に、比較例における第1の部材に第2の部材を組付ける方法を説明する断面図を示す。
図8に、比較例における第1の部材および第2の部材の拡大断面図を示す。
図7および
図8を参照して、比較例においても、第1の部材41に対して第2の部材51を矢印91に示すように相対的に移動して嵌合する。第1の部材41は、板状部41aと、凸部41bと、ボルトが固定される穴部41cとを有する。また、第2の部材51は、板状部51aと、凹部51bと、ボルトが挿通する穴部51cとを有する。
【0030】
第1の部材41は、凸部41bの頂面に面取り部41dが形成されている。また、第2の部材51の凹部51bが形成されている部分に面取り部51dが形成されている。このように、角の部分が尖らないように、面取り部41d,51dが形成されている。比較例の組立部材においては、例えば、隙間嵌めにて嵌合を行う。
【0031】
比較例の組立部材においては、角となる部分に面取り部を形成することにより、面取り部に沿って部材が移動して、凹部51bを凸部41bに嵌合し易くなる。しかしながら、凹部51bの内部に凸部41bを挿入している期間中に、第1の部材41に対して第2の部材51が傾いてしまう場合がある。そして、第1の部材41に対して第2の部材51が傾いた状態にて、互いに固定されてしまう場合がある。
【0032】
また、凹部51bの側面と凸部41bの側面とが接触するために、凹部51bと凸部41bとの間に過剰な力が加わる場合がある。そして、凹部と凸部との間に過剰な力が加わった状態にて固定される場合がある。この場合には、第1の部材または第2の部材の内部に応力が残留して、第1の部材または第2の部材を含む装置に悪影響を及ぼす場合がある。
【0033】
図4から
図6を参照して、これに対して、本実施の形態の組立部材1の製造方法においては、凹部21bの側面と凸部11bの側面との間にコーティング剤61が配置された状態で嵌合される。このために、凹部21bの側面と凸部11bの側面とが直接的に接触することを回避できる。凹部21bと凸部11bとの間に過剰な力が加わったり傷が付いたりすることを回避できる。
【0034】
また、隙間部81の幅に対応した厚さにて保護剤を配置するために、第1の部材11に対する第2の部材21の位置合わせを精度よく行うことができる。特に、本実施の形態においては、回転軸86に対して第1の部材11および第2の部材21の位置合わせを精度良く行うことができる。また、第1の部材11に対して第2の部材21が傾いた状態にて固定されることを抑制することができる。第1の部材11に対して傾いて第2の部材21が固定されて、それぞれの部材に対して力が作用する状態で固定されることを回避できる。更に、組立部材1では、凹部21bの側面と凸部11bの側面との間に隙間部81が形成されるために、凹部21bと凸部11bとの間に力が作用することを確実に回避できる。すなわち、第1の部材11および第2の部品の少なくも一方の内部に応力が残留することを回避することができる。
【0035】
本実施の形態における保護剤は、凸部の側面および凹部の側面のうち少なくとも一方に配置されることで被膜が形成され、加熱することにより気化する特性を有するが、この形態に限られない。保護剤は、凸部の側面および凹部の側面のうち少なくとも一方に配置されることで被膜が形成され、加熱することにより液化する特性を有していても構わない。このようなコーティング剤としては、例えば、低融点の熱可塑性樹脂を用いたパウダーコーティング剤を採用することができる。予め定められた厚さにてコーティング剤を配置する方法としては、パウダーコーティング法を採用することができる。この方法では、粉体のコーティング剤を対象物に付着させて高温に加熱することにより予め定められた厚さの被膜を形成することができる。
【0036】
図9に、本実施の形態における第2の組立部材の拡大断面図を示す。第2の組立部材2では、第2の部材21は、隙間部81と外部とを連通する連通路としての連通穴26を有する。放出工程において加熱することにより、矢印92に示すように気化または液化したコーティング剤61を、連通穴26を通じて外部に排出することができる。このように、隙間部81に充填されたコーティング剤61を、連通穴26を通じて速やかに外部に放出することができる。または、吸引装置を用いて連通穴26を通じてコーティング剤61を吸引することにより、コーティング剤61を外部に放出しても構わない。
【0037】
図9に示す例においては、第2の部材21に連通穴26が形成されているが、この形態に限られない。隙間部から外部に連通する連通路は、第1の部材および第2の部材のうち少なくとも一方に形成することができる。また、連通路としては、上記の連通穴に限られず、隙間部から外部に連通する構成を有していれば構わない。例えば、上記の連通穴の代わりに、細長い管が第2の部材に挿入されていても構わない。
【0038】
前述の組立部材においては、凸部および凹部の平面形状が円になるように形成されているが、この形態に限られない。凸部および凹部の平面形状は、様々な形状を採用することができる。
【0039】
図10に、本実施の形態の組立部材の第1の変形例における第1の部材の平面図を示す。第1の変形例における第1の部材12は、板状部12aおよび凸部12bを有する。凸部の平面形状としては、多角形を採用することができる。例えば、凸部の平面形状としては、正多角形を採用することができる。ここでは、凸部12bの平面形状は、正五角形である。また、
図10には、第2の部材の凹部22bの平面形状が破線にて示されている。凹部22bの形状は凸部12bの形状に相似である。
【0040】
凸部の平面形状および凹部の平面形状が多角形にて形成されている場合にも、凸部と凹部との間に予め定められた幅の隙間部を形成することができる。凹部22bは、凸部12bよりも大きく形成されている。組立部材の製造方法においては、矢印93に示す凸部12bの辺心距離と、矢印94に示す凹部22bの辺心距離と差が保護剤の厚さに対応するように、保護剤を配置することができる。
【0041】
図11に、本実施の形態の組立部材の第2の変形例における第1の部材の平面図を示す。第2の変形例における第1の部材13は、板状部13aと凸部13bとを有する。凸部13bは、平面形状が星形に形成されている。また、第2の部材の凹部23bが破線にて示されている。第2の部材の凹部23bは、第1の部材13の凸部13bと相似の形状を有する。予め定められた幅の隙間部を形成するように、凸部13bと凹部23bとが形成されている。組立部材の製造方法において、凸部13bと凹部23bと間の空間を充填する厚さの保護剤を配置することができる。第1の変形例および第2の変形例においては、凸部および凹部の平面形状の重心位置が回転軸86を通るように位置合わせを行うことができる。
【0042】
図12に、本実施の形態の組立部材の第3の変形例における第1の部材の平面図を示す。第3の変形例における第1の部材14は、板状部14aと凸部14bとを有する。凸部14bの平面形状は、規則性を有しない形状である。また、第2の部材の凹部24bが破線にて示されている。第2の部材の凹部24bは、第1の部材14の凸部14bと相似の形状を有する。予め定められた幅の隙間部を形成するように、凸部14bと凹部24bとが形成されている。製造方法においては、凸部14bと凹部24bと間の空間を充填する厚さの保護剤を配置することができる。
【0043】
図11および
図12に示すように、平面形状が円形および多角形以外の凸部および凹部を形成しても構わない。凸部の形状と凹部の形状とが相似の形状を有する組立部材に、本実施の形態の製造方法を適用することができる。
【0044】
上記の実施の形態における凸部および凹部は、軸方向に対して垂直な平面で切断したときの断面形状が一定になるように形成されている。例えば、第1の部材11の凸部11bは、円柱状に形成されているが、この形態に限られない。凸部および凹部は、互いに相似な形状を有していれば構わない。例えば、軸方向に平行な面で切断した時の凸部および凹部の断面形状がテーパ形状に形成されていても構わない。例えば、凸部および凹部は、円錐台状または円錐状に形成されていても構わない。
【0045】
上述の製造方法においては、機能および作用が変更されない範囲において、適宜工程の順序を変更することができる。
【0046】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0047】
1,2 組立部材
11~14 第1の部材
11b~14b 凸部
21 第2の部材
21b~24b 凹部
26 連通穴
61 コーティング剤
71 ボルト
81 隙間部