(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】直接接触式加熱具のための衝止システム
(51)【国際特許分類】
B29C 65/20 20060101AFI20240709BHJP
【FI】
B29C65/20
(21)【出願番号】P 2023553348
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2022055308
(87)【国際公開番号】W WO2022184785
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-09-01
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】コウロッシュ・バーラミアン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ポティエ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119342(JP,A)
【文献】特開2006-346910(JP,A)
【文献】特開2020-128139(JP,A)
【文献】特開2008-273416(JP,A)
【文献】特許第6359844(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B60K 11/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械のための直接接触式加熱具と協働するための衝止システム(1)であって、展開可能装置を備え、前記展開可能装置が、
- 直線カム、ラック、ウォーム、膨張式バルーンのリストの中から選ばれる長手方向軸Xの延伸要素(2)と、
- 前記延伸要素(2)と連係する少なくとも1つのフォロア(3)であって、前記少なくとも1つのフォロア(3)の長手方向軸X沿いの並進運動を、前記少なくとも1つのフォロア(3)の少なくとも1つの点の長手方向軸Xと平行でない方向の直線的またはほぼ直線的な運動に変換するための少なくとも1つのフォロア(3)と
を備え、
前記展開可能装置では、前記少なくとも1つのフォロア(3)は、衝止システム(1)が自動車両の前記タンク(12)壁(11)の前記開口部(10)を自由に通り抜けるように構成された休止位置から、前記延伸要素(2)が通り抜ける前記タンク(12)壁(11)の内面(13)であって、前記開口部(10)に隣接する前記内面(13)によって衝止システム(1)が支えられるように構成された動作位置に移行することができ
、
前記延伸要素(2)が直線カムであるときに、前記少なくとも1つのフォロア(3)と前記直線カム(2)との連係は、前記少なくとも1つのフォロア(3)の第1の外周面(4)と、前記直線カム(2)の長手方向軸Xに対してゼロでない角度Aの傾斜をもつ前記直線カム(2)の連係平面(5)との間の直接的な接触によって得られ、前記少なくとも1つのフォロア(3)の前記第1の外周面(4)が前記直線カム(2)の前記連係平面(5)に従うようにされて、前記少なくとも1つのフォロア(3)が休止位置から動作位置に移行するとき、前記少なくとも1つのフォロア(3)の長手方向軸X沿いの並進運動が、X軸と垂直な回転軸Yの周りの前記少なくとも1つのフォロア(3)の回転運動と組み合わされた形で引き起こされる、衝止システム(1)。
【請求項2】
前記延伸要素(2)が直線カムであり、前記少なくとも1つのフォロア(3)の第2の外周面(6)が、動作位置では、前記直線カム(2)が通り抜ける前記タンク(12)壁(11)の前記内面(13)に支えられるように構成される、請求項
1に記載の衝止システム。
【請求項3】
前記延伸要素(2)が直線カムであり、前記少なくとも1つのフォロア(3)が長手方向軸Xの円筒形支持部(7)のスペースに取り付けられた軸Yの回転軸を備え、前記円筒形支持部(7)は長手方向軸Xに沿って前記直線カム(2)に対して軸方向に移動することができて、前記少なくとも1つのフォロア(3)の長手方向軸X沿いの並進運動を前記少なくとも1つのフォロア(3)の少なくとも1つの点の直線的またはほぼ直線的な運動に変換する、請求項
1または2に記載の衝止システム。
【請求項4】
nを前記開口部の寸法の増加関数として、前記展開可能装置が「n」個のフォロア(3)を備える、請求項1から
3のいずれか一項に記載の衝止システム。
【請求項5】
自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械のための直接接触式加熱アセンブリ(20)であって、直接接触式加熱具(30)と、請求項1から
4のいずれか一項に記載の衝止システム(1)とを備える加熱アセンブリ(20)。
【請求項6】
前記直接接触式加熱具(30)が、溶融物はみ出し制限部(8)を備える、請求項
5に記載の加熱アセンブリ(20)。
【請求項7】
前記溶融物はみ出し制限部(8)が、前記直接接触式加熱具(30)と一体をなす、請求項
6に記載の加熱アセンブリ(20)。
【請求項8】
自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械(40)であって、請求項
5から
7のいずれか一項に記載の加熱アセンブリ(20)と、プラスチック溶接による構成部品(100)の組立て器具(50)とを備える機械(40)。
【請求項9】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の衝止システム(1)を、自動車両のタンク(12)壁(11)の開口部(10)に対して構成部品のプラスチック溶接を行う機械のための直接接触式加熱具(30)と協働させることができる協働の方法であって、
- 前記少なくとも1つのフォロア(3)を休止位置に位置付けるステップと、
- 前記衝止システム(1)とともに前記開口部(10)を通り抜けるステップと、
- 前記直接接触式加熱具(30)を前記開口部に隣接する前記タンク(12)壁(11)の外面(14)と直接接触するようにさせるステップと、
- 前記少なくとも1つのフォロア(3)を動作位置に位置付けるステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記直接接触式加熱具(30)を前記開口部(10)に隣接する前記タンク(12)壁(11)の外面(14)と直接接触するようにさせる前記ステップが、前記少なくとも1つのフォロア(3)を動作位置に位置付ける前記ステップより前に行われる、請求項
9に記載の協働方法。
【請求項11】
直接接触式加熱具による自動車両のタンク壁の直接接触式加熱の方法であって、請求項
9または
10に記載の協働の方法の各ステップと、前記直接接触式加熱具(30)による前記開口部(10)に隣接する前記タンク(12)壁(11)の前記外面(14)の直接接触式加熱のステップとを含む方法。
【請求項12】
自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する方法であって、請求項
11に記載の加熱の方法の各ステップに加え、
- 前記少なくとも1つのフォロア(3)を休止位置に位置付けるステップと、
- 前記衝止システム(1)を前記開口部(10)から抜き取るステップと、
- 前記直接接触式加熱具(30)を前記開口部(10)から取り外すステップと、
- 構成部品(100)を前記開口部(10)に溶接するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接接触式加熱具と協働するための衝止システムに関する。より詳細には、本発明は、自動車両のタンク壁の開口部に部品をプラスチック溶接する機械のための直接接触式加熱具と協働するための衝止システムに関する。
【0002】
本発明は、直接接触式加熱アセンブリにも関する。
【0003】
本発明は、構成部品のプラスチック溶接の機械にも関する。
【0004】
本発明はさらに、衝止システムを直接接触式加熱具と協働させることができる協働の方法にも関する。
【0005】
本発明はまた、直接接触による加熱の方法にも関する。
【0006】
そして、本発明は、構成部品のプラスチック溶接の方法に関する。
【背景技術】
【0007】
たとえばヒーティングミラー(heating mirror)のように、第1のプラスチック製構成部品の一部を、そこに第2の構成部品を溶接するために軟化させ、溶かす直接接触式加熱具を使用することが知られている。直接接触式加熱具によって加熱されることで軟化され、溶かされる第1の構成部品の部分のことを溶接面という。第1の構成部品が、自動車両のタンクなど、たとえば押出しブロー成形によって得られたプラスチック製の中空体であり、第2の構成部品が、そのプラスチック製の中空体の壁に設けられた開口部を通り抜ける構成部品、たとえば電磁弁である場合、直接接触式加熱具は、開口部の縁と接触して、そこに接触圧力を加えるものでなければならない。
【0008】
押出しブロー成形によって得られるプラスチック製中空体は、射出成形によって得られる同じプラスチック製中空体と比べて壁の薄い物体である。薄手の壁は、たわみに対する感受性が特に強く、壁の表面積が広ければその分容易に変形する。そのため、開口部の縁に接触圧力を加える際の問題は、その縁のたわみ変形である。実際、直接接触式加熱具によって開口部の縁を加熱する際のそのたわみ変形により、直接接触式加熱具の溶接面が離れることになりがちで、それは溶接面の不均一な加熱へとつながる。溶接面の加熱が不均一になると、第1の構成部品に対する第2の構成部品の溶接品質が損なわれる可能性がある。第1の構成部品が自動車両のタンクであり、第2の構成部品が、たとえば電磁弁のように、タンクを通り抜ける構成部品である場合、第1の構成部品に対する第2の構成部品の溶接品質が低ければ、タンクの封止欠陥のリスクが高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、直接接触式加熱具の作用によってたわみ変形を起こしやすい構成部品の溶接面の均一な加熱を保証する衝止システムを提案することで、上記の不都合を改善することを特に目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械のための直接接触式加熱具と協働するための衝止システムであって、展開可能装置を備え、展開可能装置が、
- 直線カム、ラック、ウォーム、膨張式バルーンのリストの中から選ばれる長手方向軸Xの延伸要素と、
- 延伸要素と連係する少なくとも1つのフォロアであって、少なくとも1つのフォロアの長手方向軸X沿いの並進運動を、少なくとも1つのフォロアの少なくとも1つの点の長手方向軸Xと平行でない方向の直線的またはほぼ直線的な運動に変換するための少なくとも1つのフォロアと、
を備え、
展開可能装置では、少なくとも1つのフォロアは、衝止システムが自動車両のタンク壁の開口部を自由に通り抜けるように構成された休止位置から、延伸要素が通り抜けるタンク壁の内面であって、タンク壁の開口部に隣接する内面によって衝止システムが支えられるように構成された動作位置に移行することができる、衝止システムを対象とする。
【0011】
それにより、衝止システムは、直接接触式加熱具によって開口部の縁に接触圧力が加えられたときに、タンク壁がたわみ変形を起こすのを防ぐ。
【0012】
「プラスチック溶接」とは、2つの熱可塑性部品を溶接するために用いられる技法の総称である。
【0013】
「自由に通り抜ける」とは、タンク壁を壁に触れることなく通り抜けることをいう。
【0014】
「直線カム」とは、少なくとも1つのフォロアが連係するカム区間が直線であるものをいう。
【0015】
言うまでもなく、タンク壁は内面と外面を有している。内面はタンクの内部容積の方を向いた面であり、外面はタンクの外側容積の方を向いた面である。そのため、少なくとも1つのフォロアが休止位置から動作位置に移行して、衝止システムがタンク壁の開口部を通り抜けてそこにとどまるとき、展開可能装置は、その全体がタンクの内部容積の中に残り、逆の場合にはその反対になる。
【0016】
「直線的またはほぼ直線的」とは、少なくとも1つのフォロアの少なくとも1つの点の動きが、円弧でなく、基本的に線分を描くことをいう。
【0017】
本発明により、少なくとも1つのフォロアの各点は、少なくとも1つのフォロアが休止位置から動作位置に移行するとき、タンクの内部容積内で線分を描く。そのため、休止位置から動作位置に1つの動きで移行することができ、展開可能装置の1つの動作によってその動きがもたらされる。このようなアレンジがとられることにより、休止位置から動作位置への移行は単純化され、移行に必要な時間は短縮される。
【0018】
本発明によるシステムの追加的特徴によれば、
- タンク壁の内面に対する衝止システムの支承は、平面支承、直線支承および点支承の中から選択される。平面支承は、開口部の縁に直接接触式加熱具によって接触圧力が加えられたとき、タンク壁の変形に対してよりよい支持を提供する。
- 延伸要素は直線カムであり、少なくとも1つのフォロアと直線カムとの連係は、少なくとも1つのフォロアの第1の外周面と、直線カムの長手方向軸Xに対してゼロでない角度Aの傾斜をもつ直線カムの連係平面との間の直接的な接触によって得られ、少なくとも1つのフォロアの第1の外周面は直線カムの連係平面に従うようにされて、少なくとも1つのフォロアが休止位置から動作位置に移行するとき、少なくとも1つのフォロアの長手方向軸X沿いの並進運動が、X軸と垂直な回転軸Yの周りの少なくとも1つのフォロアの回転運動と組み合わされた形で引き起こされる。そのため、少なくとも1つのフォロアの少なくとも1つの点の長手方向軸Xに対して平行でない方向の直線的またはほぼ直線的な運動は、互いに依存し合う2つの運動が組み合わされた結果である。2つの運動とは、すなわち、少なくとも1つのフォロアの並進運動と少なくとも1つのフォロアの回転運動である。2つの運動は、一方が他方なしには起こり得ないという意味で相互依存の関係にある。
【0019】
「直接接触」とは、摩擦を伴う接触をいう。
- 第1の外周面はR付けされた表面である。そのため、摩擦は減らされる。
- 角度Aは10°から15°の間であり、好ましくは、角度Aは約10°である。角度Aは、長手方向軸X上の直線と、連係平面と一致する平面上へのその正射影とによって形成される角度である。
- 延伸要素は直線カムであり、少なくとも1つのフォロアの第2の外周面は、動作位置では、直線カムが通り抜けるタンク壁の内面に支えられるように構成される。そのため、タンク壁の変形に対して少なくとも1つのフォロアがその妨げとなる。
- 少なくとも1つのフォロアの第2の外周面の、タンク壁の内面に対する支承は、平面支承、線支承および点支承の中から選択される。平面支承は、直接接触式加熱具によって開口部の縁に接触圧力が加えられたときに、タンク壁の変形に対してより優れた支持を提供する。
- 延伸要素は直線カムであり、少なくとも1つのフォロアは長手方向軸Xの円筒形支持部のスペースに取り付けられた軸Yの回転軸を備え、円筒形支持部は長手方向軸Xに沿って直線カムに対して軸方向に移動することができて、少なくとも1つのフォロアの長手方向軸X沿いの並進運動を少なくとも1つのフォロアの少なくとも1つの点の直線的またはほぼ直線的な運動に変換する。このアレンジにより、少なくとも1つのフォロアは、直線カムに従うようにされる。
【0020】
有利には、フォロアは非変形性のフォロアであり、その場合、少なくとも1つのフォロアの長手方向軸X沿いの並進運動は、少なくとも1つのフォロアの各点の直線的またはほぼ直線的な運動に変換される。少なくとも1つのフォロアの軸Y上の点は、長手方向軸Xと平行な方向に移動する一方、軸Y上にない点は、長手方向軸Xと平行でない方向に直線的に移動する。
- 展開可能装置は「n」個のフォロアを備える。ここで、nは、開口部の寸法の増加関数である。そのため、開口部の寸法が大きければ大きいほど、直接接触式加熱具によって開口部の縁に接触圧力が加えられたときに変形に抗してタンク壁を支えるためにより多くのフォロアが用意される。有利には、開口部の縁に隣接した壁の内面に「n」個のフォロアが等間隔で配置される。
【0021】
好ましくは、「n」は3以上である。その場合、タンク壁の内面に対する衝止システムの支承は、静定支承である。
【0022】
好ましくは、「n」は4以上である。その場合、タンク壁の内面に対する衝止システムの支承は、不静定支承である。
【0023】
本発明はまた、自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械のための直接接触式加熱アセンブリであって、直接接触式加熱具と、前述した衝止システムとを備える加熱アセンブリも対象とする。加熱アセンブリは、それにより、タンク壁が溶接面の加熱時にたわみ変形を生じるのを防ぐ。
【0024】
本発明による直接接触式加熱アセンブリの追加的な特徴によれば、
- 直接接触式加熱具は、溶融物はみ出し制限部を備える。それにより、溶接面の加熱時、溶けたプラスチック材料がはみ出して開口部の中に入り込まないようにされる。
- 溶融物はみ出し制限部は、締付けフランジなどによって直接接触式加熱具と一体をなす。それにより、溶融物はみ出し制限部は、直接接触式加熱具とともに1つのアセンブリを形成する。
【0025】
本発明はまた、自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する機械であって、前述した加熱アセンブリと、プラスチック溶接による構成部品の組立て器具と、を備える機械も対象とする。プラスチック溶接の機械は、それにより、タンクに対する構成部品の溶接品質を改善する。
【0026】
さらに、本発明は、前述した衝止システムを、自動車両のタンク壁の開口部に対して構成部品のプラスチック溶接を行う機械のための直接接触式加熱具と協働させることができる協働方法であって、
- 少なくとも1つのフォロアを休止位置に位置付けるステップと、
- 衝止システムとともに開口部を通り抜けるステップと、
- 直接接触式加熱具を開口部に隣接するタンク壁の外面と直接接触するようにさせるステップと、
- 少なくとも1つのフォロアを動作位置に位置付けるステップと、
を含む方法も対象とする。
【0027】
開口部に隣接するタンク壁の外面は、溶接面である。すると、この協働方法は、直接接触式加熱具の接触圧力がタンク壁を変形させるのを防ぐ。
【0028】
本発明による協働方法の追加的特徴によれば、
- 直接接触式加熱具を開口部に隣接するタンク壁の外面と直接接触するようにさせるステップは、少なくとも1つのフォロアを動作位置に位置付けるステップより前に行われる。すると、溶接面の加熱はより早く行われ、タンクの製造時間を短縮することができる。
- 直接接触式加熱具を開口部に隣接するタンク壁の外面と直接接触するようにさせるステップは、少なくとも1つのフォロアを動作位置に位置付けるステップより後に行われる。すると、加熱開始の当初から壁の変形を防ぐことができる。
- 直接接触式加熱具を開口部に隣接するタンク壁の外面と直接接触するようにさせるステップは、少なくとも1つのフォロアを動作位置に位置付けるステップと同時に行われる。すると、溶接面の加熱は、加熱開始時点の壁の変形を防ぎつつ、より早くに行われる。
【0029】
本発明は、また、直接接触式加熱具による自動車両のタンク壁の直接接触式加熱方法であって、前述した協働方法の各ステップと、直接接触式加熱具による開口部に隣接するタンク壁の外面の直接接触式加熱のステップとを含む方法もその対象とする。直接接触式加熱方法は、それにより、直接接触式加熱具による溶接面の加熱時にタンク壁がたわみ変形を起こすのを防ぐ。
【0030】
最後に、本発明は、自動車両のタンク壁の開口部に構成部品をプラスチック溶接する溶接方法であって、前述した加熱方法の各ステップに加え、
- 少なくとも1つのフォロアを休止位置に位置付けるステップと、
- 衝止システムを開口部から抜き取るステップと、
- 直接接触式加熱具を開口部から取り外すステップと、
- 構成部品を開口部に溶接するステップと、
を含む方法を対象とする。
【0031】
プラスチック溶接方法は、それにより、タンクへの構成部品の溶接品質を改善することができる。
【0032】
本発明については、添付の図面を参照しながら例としてのみ示す以下の説明を読むことでよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明によるプラスチック溶接の機械の部分斜視図である。
【
図6】本発明による衝止システムの変形実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、自動車両(図示せず)のタンク12壁11の開口部10に構成部品100をプラスチック溶接する機械40の一部を示している。プラスチック溶接の機械40は、加熱アセンブリ20とプラスチック溶接による構成部品100の組立て器具50とを備える。加熱アセンブリ20は、直接接触式加熱具30と本発明による衝止システム1とを備える。衝止システム1は初期位置にあり、全体がタンク12の外側容積内に収まっている。
【0035】
図2から
図4は、最終位置にある衝止システム1を示しており、その位置では、衝止システム1は、全体がタンク12の内部容積内にあって、直接接触式加熱具30と協働する。
【0036】
図5は、初期位置と最終位置との間の中間位置にある衝止システム1を示している。中間位置では、衝止システム1は開口部10を通る。
【0037】
図2から
図5に示すように、衝止システム1は、ここでは長手方向軸Xの直線カム2からなる延伸要素2と、少なくとも1つのフォロア3であって、少なくとも1つのフォロア3の長手方向軸X沿いの並進運動を、少なくとも1つのフォロア3の少なくとも1つの点の長手方向軸Xと平行でない方向の直線的またはほぼ直線的な運動に変換するために、直線カム2と連係する少なくとも1つのフォロア3とを有する展開可能装置を備える。展開可能装置は、ここではカム機構を、すなわちカムの移動がそのカムと連係する1つまたは複数のフォロアによるそれと異なる可逆的な移動を引き起こす機構を、形成する。少なくとも1つのフォロア3は、衝止システム1が自動車両のタンク12壁11の開口部10を自由に通り抜けるように構成された休止位置から、衝止システム1が、開口部10に隣接する内面13であって、直線カム2が通り抜けるタンク12壁11の内面13によって支えられるように構成された動作位置へと移行することができる。
【0038】
理想的には、少なくとも1つのフォロア3と直線カム2との連係は、少なくとも1つのフォロア3の第1の外周面4と、直線カム2の長手方向軸Xの方向に対してゼロでない角度Aの傾斜をもつ直線カム2の連係平面5との間の直接的な接触によって得られ、少なくとも1つのフォロア3の第1の外周面4は直線カム2の連係平面5に従うようにされて、少なくとも1つのフォロア3が休止位置から動作位置に移行するとき、少なくとも1つのフォロア3の長手方向軸X沿いの並進運動が、X軸と垂直な回転軸Yの周りの少なくとも1つのフォロア3の回転運動と組み合わされた形で引き起こされる。
【0039】
少なくとも1つのフォロア3の第2の外周面6は、動作位置では、直線カム2が通り抜けるタンク12壁11の内面13に支えられるように構成される。
【0040】
有利には、少なくとも1つのフォロア3は長手方向軸Xの円筒形支持部7のスペース内に取り付けられた軸Yの回転軸を備え(
図5参照)、円筒形支持部7は長手方向軸Xに沿って直線カム2に対して軸方向に移動することができて、少なくとも1つのフォロア3の長手方向軸X沿いの並進運動を少なくとも1つのフォロア3の少なくとも1つの点の直線的またはほぼ直線的な運動に変換する。
【0041】
好ましくは、展開可能装置は「n」個のフォロア3を備える。ここで、nは、開口部の寸法の増加関数である。図示した例では「n」は6である。
【0042】
有利には、6個のフォロア3は、開口部10の縁に隣接した壁11の内面13に等間隔で配置される。
【0043】
図1から
図5は、衝止システム1を直接接触式加熱具30と協働させることができる協働方法も示している。協働方法は、
- 少なくとも1つのフォロア3を休止位置(
図1参照)に位置付けるステップと、
- 衝止システム1とともに開口部10を通り抜ける(
図5参照)ステップと、
- 直接接触式加熱具30を開口部10に隣接するタンク12壁11の外面14と直接接触するようにさせる(
図2参照)ステップと、
- 少なくとも1つのフォロア3を動作位置(
図4参照)に位置付けるステップと、
を含む。
図3は、少なくとも1つのフォロア3が休止位置から動作位置に移行するときの中間位置を示している。
【0044】
好ましくは、直接接触式加熱具30を開口部10に隣接するタンク12壁11の外面14と直接接触するようにさせるステップは、少なくとも1つのフォロア3を動作位置に位置付けるステップより前に行われる。
【0045】
図1から
図5は、また、直接接触式加熱方法であって、前述した協働方法の各ステップと、直接接触式加熱具30による開口部10に隣接するタンク12壁11の外面14の直接接触式加熱のステップとを含む方法も示している。
【0046】
そして、
図1から
図5は、プラスチック溶接方法であって、前述した加熱方法の各ステップに加え、
- 少なくとも1つのフォロア3を休止位置に位置付けるステップと、
- 衝止システム1を開口部10から抜き取るステップと、
- 直接接触式加熱具30を開口部10から取り外すステップと、
- 構成部品100を開口部10に溶接するステップと、
を含む方法を示している。
【0047】
図6は、直接接触式加熱具30が、溶融物はみ出し制限部8を備える変形実施形態を示している。
【0048】
理想的には、溶融物はみ出し制限部8は、締付けフランジ9などによって直接接触式加熱具30と一体をなす。
【0049】
本発明の変形実施形態では、展開可能装置の直線カムは、ラック、ウォーム、膨張式バルーンのリストのいずれか1つの要素によって置き換えられる。その場合も、衝止システムの機能は、前述の内容と同様である。
【符号の説明】
【0050】
1 衝止システム
2 延伸要素/直線カム
3 フォロア
4 フォロアの第1の外周面
5 直線カムの連係平面
6 フォロアの第2の外周面
7 円筒形支持部
8 溶融物はみ出し制限部
9 締付けフランジ
10 自動車両のタンク壁の開口部
11 自動車両のタンク壁
12 自動車両のタンク
13 直線カムが通り抜けるタンク壁の内面
14 直線カムが通り抜けるタンク壁の外面
20 直接接触式加熱アセンブリ
30 直接接触式加熱具
40 プラスチック溶接の機械
50 構成部品の組立て器具
100 溶接する構成部品