(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20240709BHJP
F03D 17/00 20160101ALI20240709BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
F03D17/00
(21)【出願番号】P 2024035066
(22)【出願日】2024-03-07
【審査請求日】2024-03-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日 令和5年12月1日 集会名、開催場所 第45回風力エネルギー利用シンポジウム 科学技術館サイエンスホール(東京都千代田区北の丸公園2-1) ウェブサイトの掲載日 令和5年11月24日 ウェブサイトの代表URL http://www.jwea.or.jp/menu6-5.html
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518425612
【氏名又は名称】ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼桑 晋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真央
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-183981(JP,A)
【文献】特開2020-45833(JP,A)
【文献】特開2021-110271(JP,A)
【文献】国際公開第2019/233979(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
G01W 1/00- 1/18
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段と、
取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する推定手段と、
推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する特定手段と、
特定された前記違いの有無を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記推定手段は、前記風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合から推定される、前記第1風車と前記第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、前記方角を推定することを特徴とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記推定手段は、0度乃至360度の風向の予め定められた角度ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上を、予め定められた風向幅で算術平均した値に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定することを特徴とする、
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記違いに基づいて、前記第1データおよび前記第2データの風向の補正量を算出する算出手段をさらに有し、
前記出力手段は、算出された前記補正量をさらに出力することを特徴とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
算出された前記補正量により、前記第1データおよび前記第2データの風向を補正する補正手段をさらに有することを特徴とする、
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記補正手段は、前記第1データおよび前記第2データの各々の全風向に対して前記補正量を適用することで、当該第1データおよび当該第2データの風向を補正することを特徴とする、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記取得手段は、前記第1風車の近傍に設置された第3風車にて前記期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第3データをさらに取得し、
前記推定手段は、風向が補正された前記第1データと、取得された前記第3データとから算出された風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第3風車の方角をさらに推定し、
前記出力手段は、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第3風車の方角との違いの有無をさらに出力することを特徴とする、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記補正手段は、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第3風車の方角とに違いが有る場合には、風向に応じて前記補正量を適用することで前記第1データおよび前記第2データの風向を補正することを特徴とする、
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
算出された前記補正量のデータを記録して管理する管理手段と、
記録され管理されている前記補正量のデータに基づいて、前記第1風車および前記第2風車の動作を制御するための情報を生成する生成手段と、
をさらに有することを特徴とする、請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項10】
第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段と、
取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する推定手段と、
推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する特定手段と、
特定された前記違いの有無を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得するステップと、
取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定するステップと、
推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定するステップと、
特定された前記違いの有無を出力するステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する機能と、
取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する機能と、
推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する機能と、
特定された前記違いの有無を出力する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電に用いられる風車では、風速や風向といった風況の観測データや、風車のブレードの回転数や出力値といった風車の稼働データなど各種のデータが記録される。風車にて記録された各種のデータは、風車の建て替えや調査研究等に利用され、関連する技術も存在する(例えば、特許文献1)。風車にて記録される各種のデータのうち、風況の観測データは、風車に設置された風速風向計により観測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風車に設置される風速風向計は、暴風時における風車の動作の制御を主目的とするため、風況の観測の精度よりも暴風に負けない強靭性や対候性といった面が重視される。このため、風車にて観測された風況の観測データの利用価値の向上を図るためには、観測データの精度の向上が求められる。
【0005】
本発明の目的は、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと完成させた本発明は、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段と、取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する推定手段と、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する特定手段と、特定された前記違いの有無を出力する出力手段と、を有することを特徴とする情報処理システムである。
ここで、前記推定手段は、前記風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合から推定される、前記第1風車と前記第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、前記方角を推定することを特徴としてもよい。
また、前記推定手段は、0度乃至360度の風向の予め定められた角度ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上を、予め定められた風向幅で算術平均した値に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定することを特徴としてもよい。
また、前記違いに基づいて、前記第1データおよび前記第2データの風向の補正量を算出する算出手段をさらに有し、前記出力手段は、算出された前記補正量をさらに出力することを特徴としてもよい。
また、算出された前記補正量により、前記第1データおよび前記第2データの風向を補正する補正手段をさらに有することを特徴としてもよい。
また、前記補正手段は、前記第1データおよび前記第2データの各々の全風向に対して前記補正量を適用することで、当該第1データおよび当該第2データの風向を補正することを特徴としてもよい。
また、前記取得手段は、前記第1風車の近傍に設置された第3風車にて前記期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第3データをさらに取得し、前記推定手段は、風向が補正された前記第1データと、取得された前記第3データとから算出された風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第3風車の方角をさらに推定し、前記出力手段は、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第3風車の方角との違いの有無をさらに出力することを特徴としてもよい。
また、前記補正手段は、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第3風車の方角とに違いが有る場合には、風向に応じて前記補正量を適用することで前記第1データおよび前記第2データの風向を補正することを特徴としてもよい。
また、算出された前記補正量のデータを記録して管理する管理手段と、記録され管理されている前記補正量のデータに基づいて、前記第1風車および前記第2風車の動作を制御するための情報を生成する生成手段と、をさらに有することを特徴としてもよい。
また、本発明は、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段と、取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する推定手段と、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する特定手段と、特定された前記違いの有無を出力する出力手段と、を有することを特徴とする情報処理装置である。
また、本発明は、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得するステップと、取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定するステップと、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定するステップと、特定された前記違いの有無を出力するステップと、を含むことを特徴とする情報処理方法である。
また、本発明は、コンピュータに、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、当該第1風車の近傍に設置された第2風車にて当該期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する機能と、取得された前記第1データと前記第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、前記第1風車に対する前記第2風車の方角を推定する機能と、推定された前記方角と、予め特定された前記第1風車に対する前記第2風車の方角との違いの有無を特定する機能と、特定された前記違いの有無を出力する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態が適用される情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の情報処理システムを構成する管理サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】管理サーバの制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】管理サーバの処理のうち、第1データおよび第2データの風向が補正されるまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】ユーザ端末に表示されるユーザインターフェースの具体例を示す図である。
【
図8】風向と風速差との関係の具体例を示すグラフある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<情報処理システムの構成>
図1は、本実施の形態が適用される情報処理システム1の全体構成の一例を示す図である。
情報処理システム1は、管理サーバ10と、風況を観測する風況観測装置30-1乃至30-n(nは1以上の整数値)と、ユーザ端末50とがネットワーク90を介して接続されることにより構成されている。ネットワーク90は、例えば、LAN(Local Area Network)、インターネット等である。以下、風況観測装置30-1乃至30-nの各々を個別に説明する必要がない場合には、これらをまとめて「風況観測装置30」と呼ぶ。
【0010】
(管理サーバ10)
情報処理システム1を構成する管理サーバ10は、情報処理システム1全体を管理するサーバとしての情報処理装置である。管理サーバ10は、風力発電を行うn台の風車の各々に設けられた風況観測装置30-1乃至30-nの各々により観測された風況に関する観測データを取得する。なお、本実施の形態では、3台の風車(第1乃至第3風車)が設置されており、各々の風車に風況観測装置30-1乃至30-3の各々が設けられているものとする。以下、風車に設けられた風況観測装置30により観測された風況に関する観測データのことを「風車観測データ」と呼ぶ。風車観測データには、風況観測装置30が設置された風車に向かって吹く風を予め定められた時間ごとに記録された風向ごとの風速が含まれる。「予め定められた時間」とは、例えば10分間である。
【0011】
管理サーバ10は、3台の風車の各々にて予め定められた期間にわたり計測された風車観測データを取得する。「予め定められた期間」とは、例えば1年間である。管理サーバ10は、第1風車にて計測された、風車観測データとしての第1データを取得する。また、管理サーバ10は、第1風車の近傍に設置された第2風車にて計測された、風車観測データとしての第2データを取得する。また、管理サーバ10は、第1風車の近傍に設置された第3風車にて計測された、風車観測データとしての第3データを取得する。
【0012】
管理サーバ10は、取得した第1データおよび第2データから風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上を算出する。なお、本実施の形態では、風向ごとの風速差を算出するものとする。そして、管理サーバ10は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の方角を推定する。具体的には、管理サーバ10は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合から推定される、第1風車と第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、第1風車に対する第2風車の方角を推定する。「ウエイク」とは、第1風車の近傍に設置された第2風車のブレードの回転に起因する流入風の風速の減衰および乱れの効果のことをいう。以下、管理サーバ10が風車観測データに基づいて推定した、第1風車に対する第2風車の方角のことを「推定方角」と呼ぶ。
【0013】
管理サーバ10は、3台の風車(第1乃至第3風車)の各々が設置された位置に関する情報(以下、「風車位置情報」と呼ぶ。)を取得する。風車位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)位置情報などである。風車位置情報は、例えば、ユーザ端末50や不図示の外部のサーバ等から管理サーバ10に提供される。管理サーバ10は、取得した風車位置情報に基づいて、第1風車に対する第2風車の正規の方角を特定する。以下、管理サーバ10が風車位置情報に基づいて特定した、第1風車に対する第2風車の正規の方角、および第1風車に対する第3風車の正規の方角のことを「正規方角」と呼ぶ。
【0014】
管理サーバ10は、推定方角と正規方角との違いの有無を特定して出力する。例えば、管理サーバ10は、風向と風速差との関係を表したグラフにより、推定方角と正規方角との違いの有無を特定して出力する。また、管理サーバ10は、推定方角と正規方角との違いに基づいて、風向の補正量を算出する。管理サーバ10は、算出した風向の補正量を第1データおよび第2データの各々の全風向に適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正して出力する。
【0015】
管理サーバ10は、風向を補正した第1データと、取得した第3データとから風向ごとの風速差を算出する。そして、管理サーバ10は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第3風車の推定方角を推定して出力する。また、管理サーバ10は、風車位置情報に基づいて、第1風車に対する第3風車の正規方角を特定して出力する。
【0016】
管理サーバ10は、第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との違いの有無を特定して出力する。この場合、管理サーバ10は、推定方角と正規方角との間に違いが有る場合には、算出された風向の補正量を第1データおよび第2データの各々の風向に応じて適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正する。すなわち、管理サーバ10は、一律にオフセットがかかったような誤差については、算出した補正量を全風向に適用することで風向のデータを補正する。これに対して、一律にオフセットがかかったような誤差ではない誤差については、算出した補正量を風向に応じて適用することで風向のデータを補正する。
【0017】
管理サーバ10は、算出した風向の補正量のデータをデータベースに格納して管理する。そして、管理サーバ10は、データベースに格納して管理している風向の補正量のデータに基づいて、第1風車および第2風車の動作を制御するための情報(以下、「動作制御情報」と呼ぶ。)を生成して出力する。なお、管理サーバ10の構成や処理の詳細については後述する。
【0018】
(風況観測装置30)
情報処理システム1を構成する風況観測装置30は、風車ごとに設けられた装置であり、風車に吹く風の風況を観測する。風況観測装置30により観測された風車観測データには、予め定められた時間ごとに記録された風向ごとの風速が含まれる。本実施の形態における「風向」とは、0度乃至360度の風向である。
【0019】
風況観測装置30は、自身が観測した風車観測データを管理サーバ10に向けて送信する。風況観測装置30が風車観測データを管理サーバ10に向けて送信するタイミングは特に限定されない。例えば、リアルタイムで風車観測データが送信されてもよいし、予め定められた時間(秒、分、日、週、月、年等)ごとに風車観測データが送信されてもよい。また、管理サーバ10から風車観測データの提供に関する問い合わせに応じて風車観測データが送信されてもよい。
【0020】
(ユーザ端末50)
情報処理システム1を構成するユーザ端末50は、情報処理システム1を利用するユーザが操作するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置である。ユーザ端末50は、ユーザにより入力された情報を管理サーバ10に向けて送信する。ユーザにより入力され、管理サーバ10に向けて送信される情報としては、例えば、各種の情報を管理サーバ10に問い合せるために入力された問い合わせ情報、風車情報などが挙げられる。
【0021】
また、ユーザ端末50は、管理サーバ10から送信されてきた各種の情報を取得してディスプレイ等に表示する。例えば、ユーザ端末50は、上述の問い合わせ情報に基づき管理サーバ10から送信されてきた上述の情報を取得して表示する。
【0022】
なお、上述の情報処理システム1の構成は一例であり、情報処理システム1全体として上述の処理を実現させる機能を備えていればよい。このため、上述の処理を実現させる機能のうち、一部または全部を情報処理システム1内の各装置で分担してもよいし協働してもよい。例えば、管理サーバ10の機能の一部または全部を、風況観測装置30またはユーザ端末50の機能としてもよい。さらに、情報処理システム1を構成する管理サーバ10、風況観測装置30、およびユーザ端末50の各々の機能の一部または全部を、図示せぬ他のサーバ等に移譲してもよい。これにより、情報処理システム1全体としての処理が促進され、また、処理を補完し合うことも可能となる。
【0023】
<管理サーバ10のハードウェア構成>
図2は、
図1の情報処理システム1を構成する管理サーバ10のハードウェア構成の一例を示す図である。
管理サーバ10は、制御部11と、メモリ12と、記憶部13と、通信部14と、操作部15と、表示部16とを有している。これらの各部は、データバス、アドレスバス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス等で接続されている。
【0024】
制御部11は、OS(基本ソフトウェア)やアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアの実行を通じて管理サーバ10の機能の制御を行うプロセッサである。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成される。メモリ12は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、演算に際して作業エリアとして用いられる。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0025】
記憶部13は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。記憶部13は、例えばプログラムや各種設定データなどの記憶に用いられるHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等で構成される。記憶部13には、各種のデータを格納するデータベースが設けられている。例えば、風車観測データが格納された風車観測DB131、風向の補正量のデータが格納された補正量DB132、風車位置情報が格納された風車位置DB133などが記憶部13に格納されている。
【0026】
通信部14は、ネットワーク90を介して風況観測装置30、ユーザ端末50、および外部との間でデータの送受信を行う。操作部15は、例えばキーボード、マウス、機械式のボタン、スイッチで構成され、入力操作を受け付ける。操作部15には、表示部16と一体的にタッチパネルを構成するタッチセンサも含まれる。表示部16は、例えば情報の表示に用いられる液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイで構成され、画像やテキストのデータなどを表示する。
【0027】
<風況観測装置30、ユーザ端末50のハードウェア構成>
風況観測装置30およびユーザ端末50は、いずれも
図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成と同様の構成を備えることができる。すなわち、風況観測装置30およびユーザ端末50は、
図2に示す管理サーバ10の制御部11、メモリ12、記憶部13、通信部14、操作部15、および表示部16の各々と同様の制御部、メモリ、記憶部、通信部、操作部、および表示部の各々を備えることができる。このため、風況観測装置30およびユーザ端末50のハードウェア構成の図示および説明を省略する。
【0028】
<管理サーバ10の制御部11の機能構成>
図3は、管理サーバ10の制御部11の機能構成の一例を示す図である。
管理サーバ10の制御部11では、管理手段としての管理部101と、取得手段としての取得部102と、推定手段としての推定部103と、特定手段としての特定部104と、算出手段としての算出部105と、補正手段としての補正部106と、生成手段としての生成部107と、出力手段としての送信制御部108とが機能する。
【0029】
管理部101は、記憶部13(
図2参照)に設けられた各種のデータベースに各種のデータを格納して管理する。例えば、管理部101は、風車観測データを風車観測DB131に格納して管理する。また、管理部101は、風向の補正量のデータを補正量DB132に格納して管理する。また、管理部101は、風車位置情報を風車位置DB133に格納して管理する。
【0030】
取得部102は、管理サーバ10に向けて送信されてきた各種の情報を取得する。例えば、取得部102は、風況観測装置30-1乃至30-nの各々から送信されてきた風車観測データを取得する。例えば、取得部102は、第1風車に設けられた風況観測装置30-1から送信されてきた風車観測データとしての第1データを取得する。また、例えば、取得部102は、第2風車に設けられた風況観測装置30-2から送信されてきた風車観測データとしての第2データを取得する。また、例えば、取得部102は、第3風車に設けられた風況観測装置30-3から送信されてきた風車観測データとしての第3データを取得する。
【0031】
また、取得部102は、ユーザ端末50または外部のサーバ等から送信されてきた3台の風車(第1乃至第3風車)の各々の風車位置情報を取得する。すなわち、風車位置情報には、第1風車の風車位置情報、第2風車の風車位置情報、第3風車の風車位置情報が含まれる。また、取得部102は、ユーザ端末50から送信されてきた各種の問い合わせ情報を取得する。
【0032】
推定部103は、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する。具体的には、推定部103は、取得された第1データおよび第2データから風向ごとの風速差を算出し、算出した風向ごとの風速差の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する。さらに具体的には、推定部103は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合から推定される、第1風車と第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、第1風車に対する第2風車の方角を推定する。
【0033】
また、推定部103は、第1風車に対する第3風車の推定方角を推定する。具体的には、推定部103は、後述する補正部106により補正された第1データと、取得部102により取得された第3データとから風向ごとの風速差を算出する。そして、推定部103は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第3風車の推定方角を推定する。さらに具体的には、推定部103は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合から推定される、第1風車と第3風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、第1風車に対する第3風車の推定方角を推定する。
【0034】
推定部103が、第1風車に対する第2風車の推定方角、および第1風車に対する第3風車の推定方角の各々を推定する手法は特に限定されない。例えば、推定部103は、0度乃至360度の風向の予め定められた角度ごとの風速差を、予め定められた風向幅で算術平均した値に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角、および第1風車に対する第3風車の推定方角の各々を推定してもよい。本実施の形態において、推定部103は、0度乃至360度の風向の1度ごとの風速差を、予め定められた風向幅で算術平均した値に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角、および第1風車に対する第3風車の推定方角の各々を推定する。なお、「風向の予め定められた角度」には、小数点以下の値で表された角度も含まれ得る。
【0035】
特定部104は、第1風車の風車位置情報と、第2風車の風車位置情報とに基づいて、第1風車に対する第2風車の正規方角を特定する。また、特定部104は、第1風車の風車位置情報と、第3風車の風車位置情報とに基づいて、第1風車に対する第3風車の正規方角を特定する。
【0036】
特定部104は、第1風車に対する第2風車の推定方角と、第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無を特定する。また、特定部104は、第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との違いの有無を特定する。例えば、特定部104は、風向と風速差との関係に基づいて、推定方角と正規方角との違いの有無を特定する。なお、風向と風速差との関係の具体例については、
図8のグラフを参照して後述する。
【0037】
算出部105は、第1風車に対する第2風車の推定方角と、第1風車に対する第2風車の正規方角との違いに基づいて、第1データおよび第2データの風向の補正量を算出する。また、算出部105は、後述する補正部106により補正された第1データに基づく第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との違いに基づいて、第1データおよび第2データの風向の補正量を算出する。
【0038】
補正部106は、算出部105により算出された風向の補正量を第1データおよび第2データの各々の全風向に適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正する。また、補正部106は、第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との間に違いが有る場合には、算出された風向の補正量を第1データおよび第2データの各々の風向に応じて適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正する。
【0039】
例えば、第1風車に対する第3風車の正規方角を示す値が0度である場合に算出された補正量が「+5」度であり、第2風車に対する第3風車の正規方角を示す値が120度である場合に算出された補正量が「-5」度であったとする。この場合、補正部106は、0度乃至120度の風向については、「+5」度が「-5」度になるように線形補間する補正を行い、120度乃至360度の風向については、「-5」度が「+5」度になるように線形補間する補正を行う。
【0040】
生成部107は、各種の情報を生成する。例えば、生成部107は、データベースに格納して管理している風向の補正量のデータに基づいて、第1風車および第2風車の動作制御情報を生成する。
【0041】
送信制御部108は、通信部14(
図2参照)を介して各種の情報を送信する制御を行う。例えば、送信制御部108は、推定方角、正規方角、風向の補正量などの情報をユーザ端末50に向けて送信する制御を行う。
【0042】
<管理サーバの処理の流れ>
図4は、管理サーバ10の処理のうち、第1データおよび第2データの風向が補正されるまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図4の例では、第1データおよび第2データの風向について一律にオフセットがかかったような誤差が生じているものとする。
管理サーバ10は、風況観測装置30から、風車観測データが送信されてくると(ステップ401でYES)、送信されてきた風車観測データを取得し(ステップ402)、取得した風車観測データをデータベース(例えば、
図2の風車観測DB131)に格納して管理する(ステップ403)。これに対して、風況観測装置30から風車観測データが送信されてきていない場合(ステップ401でNO)、管理サーバ10は、風況観測装置30から風車観測データが送信されてくるまでステップ401を繰り返す。
【0043】
管理サーバ10は、取得した第1データおよび第2データから風向ごとの風速差を算出する(ステップ404)。そして、管理サーバ10は、算出した風向ごとの風速差の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する(ステップ405)。
【0044】
管理サーバ10は、風況観測装置30から、風車位置情報が送信されてくると(ステップ406でYES)、送信されてきた風車位置情報を取得し(ステップ407)、取得した風車位置情報をデータベース(例えば、
図2の風車位置DB133)に格納して管理する(ステップ408)。これに対して、風況観測装置30から風車位置情報が送信されてきていない場合(ステップ406でNO)、管理サーバ10は、風況観測装置30から風車位置情報が送信されてくるまでステップ406を繰り返す。
【0045】
管理サーバ10は、ステップ407で取得した風車位置情報に基づいて、第1風車に対する第2風車の正規方角を特定する(ステップ409)。
【0046】
管理サーバ10は、推定方角と正規方角との違いの有無を特定する(ステップ410)。管理サーバ10は、推定方角と正規方角との間に違いがある場合には(ステップ411でYES)、推定方角と正規方角との違いに基づいて、風向の補正量を算出し(ステップ412)、算出した補正量を全風向に適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正する(ステップ413)。これに対して、推定方角と正規方角との間に違いがない場合に(ステップ411でNO)、管理サーバ10は、処理を終了させる(END)。
【0047】
<具体例>
図5は、風況観測装置30の具体例を示す図である。
上述のように、風況観測装置30は風車ごとに設けられた装置であり、風車に吹く風の風況を観測する。風況観測装置30としては、例えば、風速に応じて変化する音速の変化量に基づいて風向および風速を計測する超音波風速風向計や、風向に応じて矢羽根の向きを変える矢羽根式風向計が採用される。
【0048】
図5には、風車501のナセル521の外壁面に設けられた風況観測装置30-1としての超音波風速風向計が例示されている。
図5に示す風況観測装置30-1は、風車501に吹く風の風速に応じて変化する音速の変化量に基づいて風向および風速を計測可能とする。風況観測装置30-1により観測された風車観測データには、予め定められた時間ごとに記録された、0度乃至360度の風向ごとの風速が含まれる。風況観測装置30-1は、自身が観測した風車観測データを管理サーバ10(
図1参照)に向けて送信する。
【0049】
風車501に設置された風況観測装置30-1は、暴風時における風車501の動作の制御を主目的とするため、風況の観測の精度よりも暴風に負けない強靭性や対候性といった面が重視される。このため、風況観測装置30-1により観測された風車観測データの利用価値の向上を図るためには、観測データの精度の向上が求められる。このため、風車501を第1風車とした場合における風況観測装置30-1の風車観測データ(第1データ)は、ウエイクを考慮した上述の処理によって必要に応じて補正されることで精度の向上が図られる。
【0050】
図6は、ウエイクの具体例を示す図である。
図6には、上述の
図5に示す第1風車としての風車501が示されている。また、風車501の近傍には、第2風車としての風車502が示されている。風車502のナセル522の外壁面には、風況観測装置30-2としての超音波風速風向計が設けられている。風況観測装置30-2により観測された風車観測データは、管理サーバ10(
図1参照)に向けて送信される。
【0051】
図6の例において、風車502に流入した流入風は、風車502のブレード512の回転によってウエイクが発生し、そのウエイクを含む流入風が風車501に流入する。さらに、風車501に流入した流入風は、風車501のブレード511の回転によってウエイクが発生する。このため、風況観測装置30-1の風車観測データ(第1データ)、および風況観測装置30-2の風車観測データ(第2データ)には、ウエイクの影響が含まれている。このため、風車501を第1風車とした場合における風況観測装置30-1の風車観測データ(第1データ)、および風車502を第2風車とした場合における風況観測装置30-2の風車観測データ(第2データ)は、ウエイクを考慮した上述の処理によって必要に応じて補正される。
【0052】
図7は、ユーザ端末50に表示されるユーザインターフェースの具体例を示す図である。
図7に示すユーザインターフェースには、上述の
図6に示す第1風車としての風車501と、第2風車としての風車502とが設置された領域を上空から撮像した撮像画像(以下、「領域画像」と呼ぶ。)が表示されている。また、領域画像に重畳するように、「定規」と表記されたダイアログボックス200が表示されている。ダイアログボックス200は、風車501に対する風車502の方角と、または風車502に対する風車501の方角とのいずれか一方を領域画像に表示させるためのツールを使用可能にするダイアログボックスである。
【0053】
ユーザは、領域画像に対するドラッグ操作等により、風車501と風車502とを結ぶ直線L1を描画する。すると、風車501および502の各々の風車位置情報に基づき特定された、風車501に対する風車502の正規方角、または風車502に対する風車501の正規方角、風車501と風車502との距離などの情報がダイアログボックス200に表示される。
図7のダイアログボックス200には、風車501に対する風車502の正規方角が「201.11」度であることが示されている。
【0054】
風車502に向かって吹き込む流入風のうち、風向が「201.11」度である流入風は、
図7に示すように、風車501と風車502との間に生じたウエイクによって風速が減衰して乱れる。このため、風車501に設けられた風況観測装置30-1の風車観測データ(第1データ)は、誤差が生じていなければ、風向が「201.11」度のときに風速が最も減衰する。
【0055】
図8は、風向と風速差との関係の具体例を示すグラフある。なお、
図8に示すグラフは、上述の
図6および
図7に示す風車501と風車502との風速差を示している。
上述のように、管理サーバ10(
図1参照)は、風向と風速差との関係に基づいて、推定方角と正規方角との違いの有無を特定する。
図8に示すグラフは、予め定められた期間における、0度乃至360度の風向(Wind Direction(deg))を横軸とし、風速差(Wind Speed Difference(m/s))を縦軸とするグラフである。
図8のグラフにプロットされている値は、風車501と風車502との風速差を、0度乃至360度の風向の1度ごとに予め定められた風向幅(例えば、2度の角度)で算術平均した値である。
【0056】
図8に示すグラフにおいて風速差が最も大きい風向は「197」度(deg)であり、この値が風車501に対する風車502の推定方角となる。これに対して、上述の
図7に示す正規方角に基づいたデータによれば、風向が「201.11」度のときに風速が最も減衰しているため、「-4.11」度の誤差が生じていることになる。そこで、管理サーバ10は、第1風車に対する第2風車の推定方角(197度)と、第1風車に対する第2風車の正規方角(201.11度)との違い(-4.11度)に基づいて、第1データおよび第2データの風向の補正量(+4.11度)を算出する。
【0057】
以上まとめると、本実施の形態にかかる情報処理システム1(
図1参照)は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、情報処理システム1は、第1風車にて予め定められた期間(例えば、1年間)にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、第1風車の近傍に設置された第2風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段としての管理サーバ10の取得部102(
図3参照)と、取得された第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する推定手段としての管理サーバ10の推定部103(
図3参照)と、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無を特定する特定手段としての管理サーバ10の特定部104(
図3参照)と、特定された違いの有無を出力する出力手段としての管理サーバ10の送信制御部108(
図3参照)とを有することを特徴とする情報処理システムである。
【0058】
これにより、取得された第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角が推定される。そして、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無が特定されて出力される。その結果、推定方角と正規方角との違いに基づく第1データおよび第2データの補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0059】
ここで、推定部103は、風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合から推定される、第1風車と第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定することを特徴としてもよい。
これにより、第1風車と第2風車との間に生じたウエイクの大きさに基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角が推定される。その結果、推定方角と正規方角との違いに基づく第1データおよび第2データの補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0060】
また、推定部103は、0度乃至360度の風向の予め定められた角度ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上を、予め定められた風向幅(例えば、2度の角度)で算術平均した値に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定することを特徴としてもよい。
これにより、0度乃至360度の風向の予め定められた角度ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上を、予め定められた風向幅で算術平均した値に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角が推定される。その結果、推定方角と正規方角との違いに基づく第1データおよび第2データの補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0061】
また、推定方角と正規方角との違いに基づいて、第1データおよび第2データの風向の補正量を算出する算出手段としての管理サーバ10の算出部105(
図3参照)をさらに有し、送信制御部108は、算出された補正量をさらにユーザ端末50に向けて送信する制御を行うことを特徴としてもよい。
これにより、推定方角と正規方角との違いに基づいて、第1データおよび第2データの風向の補正量が算出される。その結果、補正量による第1データおよび第2データの補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0062】
また、算出された補正量により、第1データおよび第2データの風向を補正する補正手段としての管理サーバ10の補正部106(
図3参照)をさらに有することを特徴としてもよい。
これにより、算出された補正量により、第1データおよび第2データの風向の補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0063】
また、補正部106は、第1データおよび第2データの各々の全風向に対して、算出された補正量を適用することで、第1データおよび第2データの風向を補正することを特徴としてもよい。
これにより、第1データおよび第2データの各々の全風向に対して補正量が適用されて第1データおよび第2データの風向が補正される。その結果、一律にオフセットがかかったような誤差が補正されるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0064】
また、取得部102は、第1風車の近傍に設置された第3風車にて予め特定された期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第3データをさらに取得し、推定部103は、風向が補正された第1データと、取得された第3データとから算出された風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第3風車の方角をさらに推定し、送信制御部108は、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第3風車の正規方角との違いの有無をさらにユーザ端末50に向けて送信する制御を行うことを特徴としてもよい。
これにより、第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との間に違いが有る場合には、算出された風向の補正量が第1データおよび第2データの各々の風向に応じて適用される。その結果、一律にオフセットがかかったような誤差ではない誤差の補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0065】
また、補正部106は、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第3風車の正規方角とに違いが有る場合には、風向に応じて補正量を適用することで第1データおよび第2データの風向を補正することを特徴としてもよい。
これにより、第1風車に対する第3風車の推定方角と、第1風車に対する第3風車の正規方角との間に違いが有る場合には、算出された風向の補正量が第1データおよび第2データの各々の風向に応じて適用される。その結果、一律にオフセットがかかったような誤差ではない誤差の補正が可能となるので、風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値が向上する。
【0066】
また、算出された補正量のデータを記録して管理する管理手段としての管理サーバ10の管理部101と、記録され管理されている補正量のデータに基づいて、第1風車および第2風車の動作を制御するための情報を生成する生成手段としての管理サーバ10の生成部107とをさらに有することを特徴としてもよい。
これにより、記録され管理されている補正量のデータに基づいて、第1風車および第2風車の動作を制御するための情報が生成される。その結果、例えば、過去1か月の補正量のデータに基づいて、次の1か月の風車の動作の制御が可能となる。
【0067】
また、本実施の形態にかかる情報処理装置としての管理サーバ10(
図1参照)は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、管理サーバ10は、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、第1風車の近傍に設置された第2風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する取得手段としての管理サーバ10の取得部102と、取得された第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する推定手段としての管理サーバ10の推定部103と、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無を特定する特定手段としての管理サーバ10の特定部104と、特定された違いの有無を出力する出力手段としての管理サーバ10の送信制御部108とを有することを特徴とする情報処理装置である。
【0068】
また、本実施の形態にかかる情報処理方法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、第1風車の近傍に設置された第2風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得するステップと、取得された第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定するステップと、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無を特定するステップと、特定された違いの有無を出力するステップとを含むことを特徴とする情報処理方法である。
【0069】
また、本実施の形態にかかるプログラムは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、コンピュータとしての管理サーバ10に、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、第1風車の近傍に設置された第2風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得する機能と、取得された第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定する機能と、推定された推定方角と、予め特定された第1風車に対する第2風車の正規方角との違いの有無を特定する機能と、特定された違いの有無を出力する機能とを実現させるためのプログラムである。
【0070】
<他の実施の形態>
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は上述した本実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述した本実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、
図1に示す情報処理システム1の構成、
図2に示す管理サーバ10のハードウェア構成、および
図3に示す管理サーバ10の制御部11の機能構成は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。上述した処理を全体として実行できる機能が
図1の情報処理システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのようなハードウェア構成および機能構成を用いるかは上述の例に限定されない。
【0071】
また、
図4に示す管理サーバ10の処理のステップの順序も例示に過ぎず、特に限定されない。図示されたステップの順序に沿って時系列的に行われる処理だけではなく、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別的に行われてもよい。また、
図5乃至
図8に示す具体例も一例に過ぎず、特に限定されない。例えば、
図7のダイアログボックス200に表示された情報は一例に過ぎず、
図7に示す情報以外のあらゆる情報を表示させることができる。
【0072】
また、上述の実施の形態では、n台の風車の具体例として3台の風車(第1乃至第3風車)が設置されることを前提として説明しているが、風車の台数は3台に限定されず、4台以上であってもよいし、2台であってもよい。例えば、1つの領域に設置されている風車の台数が10台である場合には、10台の風車のうちユーザにより指定された1台の風車を第1風車とし、その第1風車の近傍に設置されている風車を第2風車あるいは第3風車として本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…情報処理システム、10…管理サーバ、11…制御部、12…メモリ、13…記憶部、14…通信部、15…操作部、16…表示部、30…風況観測装置、50…ユーザ端末、101…管理部、102…取得部、103…推定部、104…特定部、105…算出部、106…補正部、107…生成部、108…送信制御部、90…ネットワーク
【要約】
【課題】風力発電に用いられる風車にて観測された風況の観測データの利用価値を向上させる。
【解決手段】管理サーバ10の制御部11では、取得部102が、第1風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第1データと、第1風車の近傍に設置された第2風車にて予め定められた期間にわたり計測された、風向ごとの風速を含む第2データとを取得し、推定部103が、第1データと第2データとから算出される風向ごとの風速差、出力差、および発電量差のうちいずれか1以上の変化の度合に基づいて、第1風車に対する第2風車の推定方角を推定し、特定部104が、推定方角と正規方角との違いの有無を特定し、送信制御部108が、特定された違いの有無をユーザ端末に向けて送信する制御を行う。
【選択図】
図3