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特許7518310巡回支援装置、巡回支援プログラム、および、巡回支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】巡回支援装置、巡回支援プログラム、および、巡回支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q10/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024043805
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川内 六三四
【審査官】毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128242(JP,A)
【文献】特開2022-32678(JP,A)
【文献】特開2001-92665(JP,A)
【文献】特開2018-112929(JP,A)
【文献】特開2013-25509(JP,A)
【文献】特開2011-192151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する特権班作成部と、
1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する通常班作成部と、
前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する班組合せ決定部と、
を備えることを特徴とする巡回支援装置。
【請求項2】
前記特権班の各タスクの実施可能作業量は、各拠点での当該タスクの必要作業量の最大値以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の巡回支援装置。
【請求項3】
前記班組合せ決定部は、前記特権班に全ての拠点を巡回させ、前記通常班に何れかの拠点を巡回させる条件にて、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の巡回支援装置。
【請求項4】
コンピュータに、
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する手順、
1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する手順、
前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する手順、
を実行させるための巡回支援プログラム。
【請求項5】
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、特権班作成部が、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成するステップと、
通常班作成部が、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成するステップと、
班組合せ決定部が、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定するステップと、
を備えることを特徴とする巡回支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巡回支援装置、巡回支援プログラム、および、巡回支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巡回セールスマン問題をベースとした数理最適化モデル作成案件において、巡回順序の最適化実施の前に巡回を行う対象人員を集めた「班」を複数作成する必要があった。
【0003】
特許文献1には、複数の巡回者による地域内巡回計画を、効率的かつ動的に策定することができる発明が記載されている。そして、特許文献1の要約書には、「複数の巡回者がそれぞれ割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する地域内共助巡回支援装置100は、複数の巡回者及び複数の巡回先に関する情報の入力を受け付ける入力部110、巡回者に対し複数の巡回先を割り当てるマッチング部131、巡回者がマッチング部131により割り当てられた複数の巡回先を巡回するための巡回路を決定する巡回路決定部133、巡回路決定部133が決定した巡回路を出力する出力部150を有する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-112929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、班作成においても人員が所属する組織、人員が持つタスクの作業量等の条件があり、条件を考慮した組み合わせは膨大なため、巡回順序の最適化とは別に「班作成最適化」の実施が必要ということが分かった。人員の所属組織や人員が持つタスクの作業量を考慮した班分け最適化処理を開発するなかで、線形計画の制約式として表現が難しい顧客要件があり、想定した班のデータの作成は困難である。
【0006】
そこで、本発明は、複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するため、本発明の巡回支援装置は、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する特権班作成部と、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する通常班作成部と、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する班組合せ決定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の巡回支援プログラムは、コンピュータに、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する手順、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する手順、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する手順、を実行させるためのものである。
【0009】
本発明の巡回支援方法は、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、特権班作成部が、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成するステップと、通常班作成部が、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成するステップと、班組合せ決定部が、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定するステップと、を備えることを特徴とする
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る巡回支援装置の構成図である。
図2】巡回支援装置のハードウェア構成図である。
図3】全ての班が全ての拠点に巡回可能な状態を説明する図である。
図4】班が拠点の何れかに巡回可能な状態を説明する図である。
図5】特権班が有る状態を説明する図である。
図6】或るタスクに着目したときの特権班と通常班の巡回を説明する図である。
図7】人員と、この人員による各タスクの実施可能作業量のデータテーブルを示す図である。
図8】拠点と、この拠点における各タスクの必要作業量のデータテーブルを示す図である。
図9】班と人員と、この班による各タスクの実施可能作業量のデータテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
本発明の発明者は、全ての巡回拠点で必要なタスクの作業量を全ての班が持つ必要はなく、各巡回拠点のなかのどれか1つを巡回できるタスクの作業量を持つ班は、最低1班あればよいことを見出した。
【0013】
線形計画では、膨大な班の組み合わせから「班が持つ実施可能な或るタスクの作業量は2以上」、「班の人数は2人以上」といった制約をつけて組み合わせを絞り込み、絞り込んだ組み合わせ内で一番良い結果を選択する。上記顧客要件は、「A班はB拠点を巡回できるようにする」、「C班はD拠点、E拠点を巡回できるようにする」といった個別のルールを設定する必要があり、単純に~以上、~以下という制約で表現ができず複雑になる。また、最適化処理での自動化ということができなくなる。
【0014】
そこで、各巡回拠点を全て巡回できる特権班を1つ作成し、どの巡回拠点にも巡回に行ける班が1つできる。これにより、複雑なルールを用意することなく、1つの機能により顧客要件を満たすことが可能である。
【0015】
図1は、本実施形態に係る巡回支援装置1の構成図である。
巡回支援装置1は、入力部11と、特権班作成部12と、通常班作成部13と、班組合せ決定部14と、出力部15とを含んで構成されている。
【0016】
入力部11は、各種情報の入力を受け付ける機能部である。入力部11は、例えば各班の人数、人員とその人員が実施可能な各タスクとその作業量、拠点とその拠点にて必要な各タスクの作業量などの情報を受け付けて、特権班作成部12、通常班作成部13、および班組合せ決定部14に出力する。
【0017】
特権班作成部12は、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する。
通常班作成部13は、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を複数作成する。
班組合せ決定部14は、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理を実施する。
出力部15は、班組合せ決定部14が決定した各拠点への各班の巡回の組み合わせを出力する。
【0018】
図2は、巡回支援装置1のハードウェア構成図である。
巡回支援装置1は、CPU21,ROM22、RAM23、入力部24、通信部25、記憶部27などのハードウェアを含んで構成されている。
【0019】
CPU21は、この巡回支援装置1を統括制御する中央処理装置であり、後記する記憶部27に格納されている巡回支援プログラム274を実行することにより、図1に示した各機能部を具現化する。
ROM22は、不揮発性の読み出し可能なメモリであり、例えばBIOSなどを記録している。RAM23は、揮発性の読み書き可能なメモリであり、CPU21によりプログラムの一時的な記憶領域として用いられる。
【0020】
入力部24は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどであり、情報の入力に用いられる。通信部25は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、インターネット経由で他の装置との間で情報を送受信する。
記憶部27は、例えばSSD(Solid State Drive)であり、巡回支援プログラム274などを記憶する。
【0021】
図3は、全ての班が全ての拠点に巡回可能な状態を説明する図である。
図3では、班3a~3cが、拠点4a~4cの全てに矢印が引かれており、これら全ての拠点4a~4cに巡回することを示している。最適化問題では、このような状態は不要であり、各班は一部の拠点を巡回すればよい。
【0022】
図4は、班が拠点の何れかに巡回可能な状態を説明する図である。
図4では、班3aは、拠点4aと4bに矢印が引かれている。班3bは、拠点4bと4cに矢印が引かれている。班3cは、拠点4aに矢印が引かれている。最適化問題では、このように、各班が一部の拠点を巡回する状態における解を求める。しかし、このような状態では、制約が複雑になり解を得られにくい欠点がある。
【0023】
図5は、特権班が有る状態を説明する図である。
図5では、特権班31aは、全ての拠点4a~4cに矢印が引かれている。そして、通常班31bは、拠点4aにのみ矢印が引かれている。通常班31cは、拠点4cにのみ矢印が引かれている。このように特権班31aを構成することで、他の通常班31b,31cが巡回する拠点を容易に確定できる。
【0024】
図6は、或るタスクに着目したときの特権班と通常班の巡回を説明する図である。
図6の左側には、各拠点4a~4cと、或るタスクに関する必要作業量とが示されている。図6の右側には、特権班31aと通常班31b、並びにそれらが或るタスクの処理能力を示す実施可能作業量を示している。
【0025】
以下、班作成の最適化における集合・定数、決定変数、目的関数、制約式について定義する。例えばコンピュータ上にて、線形計画問題や混合整数計画問題を定義し、ソルバーを使って解くためのライブラリに下記の各式を入力することで、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化問題を解くことができる。
【0026】
式(1)は、人員rを班gに割り当てる場合は1を返し、そうでない場合は0を返すという決定変数を示している。
【数1】
【0027】
数式による制約式の表現は、Σと∈を用いて行われる。式(1)のように、Σで総和をとった時の値で決定変数がとる値を制御していく。つまり、∈で定義した要素ごとに、Σに設定した要素の総和をとり、比較を行っていく。
【0028】
例えば、制約式「人員一人に対して一つの班のみが割当たること」について、人員が全部で4人、作成する班が2つの場合は、人員1人目において、(x[1,1]+x[1,2])=1となる。
【0029】
つまり、Σで総和をとった結果を1と設定することで、人員1人目は班#1か班#2のどちらかに一方のみ割当たるようになる。そのため、x[1,1]とx[1,2]の両方が1となることはなく、その合計は1+0=1もしくは0+1=1となる。人員2人目、3人目、4人目も同様である。
【0030】
人員2人目において、(x[2,1]+x[2,2])=1となる。人員3人目において、(x[3,1]+x[3,2])=1となる。人員4人目において、(x[3,1]+x[3,2])=1となる。
【0031】
式(2)は、人員の集合Rの定数を示している。h,i,j,k,l,mは、各人員を示している。
【数2】
【0032】
式(3)は、人員と組織IDの対応関係RCの定数を示している。ここでは、人員h,i,j,k,l,mは全て、組織IDが1の組織に属していることを示している。
【数3】
【0033】
式(4)は、作成する班の集合を示している。len関数は、集合の要素数を返す関数であり、ここでは全体の人員数を返している。int関数は、実数から整数へ切り捨てる関数である。ここでは、全体人数を2で除算して1を加えた値を算出している。
range関数は、第1引数が範囲の開始、第2引数が範囲の終了、第3引数が増加ステップを示す関数である。list関数は、範囲内の要素のリストを返す関数である。この式(4)により、作成すべき班の集合を算出できる。
【数4】
【0034】
式(5)は、人員ごとに持つタスクの種類とその実施可能作業量の定数を示している。h,i,j,k,l,mは、各人員を示している。ここでX,Yはタスクであり、それに続く数字は実施可能作業量を示している。
【数5】
【0035】
式(6)は、拠点ごとに必要なタスクの種類とその必要作業量の定数を示している。A,B,C,D,Eは、各拠点を示している。ここでX,Yはタスクであり、それに続く数字は必要作業量を示している。
【数6】
【0036】
式(7)は、巡回する拠点のリストLの定数を示している。A,B,C,D,Eは、各拠点を示している。
【数7】
【0037】
式(8)は、タスクの種類のリストSを定数として示している。X,Yは、各タスクを示している。
【数8】
【0038】
式(9)は、全拠点内でのタスクXの必要作業量の最大値である定数を示している。
【数9】
【0039】
式(10)は、全拠点内でのタスクYの必要作業量の最大値である定数を示している。
【数10】
【0040】
式(11)は、全拠点内でのタスクXの必要作業量の最小値である定数を示している。
【数11】
【0041】
式(12)は、全拠点内でのタスクYの必要作業量の最小値である定数を示している。
【数12】
【0042】
式(13)は、特権班以外の班の集合の定数を示している。
【数13】
【0043】
式(14)は、人員rは1つの班に割当てるという制約条件を示している。
【数14】
【0044】
式(15)は、班gには2人の人員rを割り当てるという制約条件を示している。
【数15】
【0045】
式(16)は、特権班が持つタスクXの実施可能作業量が、タスクXの必要作業量の最大値以上という制約条件を示している。
【数16】
【0046】
式(17)は、特権班が持つタスクYの実施可能作業量が、タスクYの必要作業量の最大値以上という制約条件を示している。
【数17】
【0047】
式(16)と式(17)の制約条件の設定の背景には下記の顧客要件がある。
第1の顧客要件は、班が拠点におけるタスクXXXの必要作業量を満たすことである。第2の顧客要件は、全ての班が全ての拠点におけるタスクXXXの必要作業量を満たす必要はなく、拠点におけるタスクXXXの必要作業量を満たす班が最低1班あればよいことである。
【0048】
つまり、全ての班が全ての拠点を巡回する必要はない。各拠点を巡回できる班が最低1つあればよい。これをΣと∈を用いて、制約条件を立式する場合、単純に要素ごとの総和をとるだけでは顧客要件を表現できない。
【0049】
上記の制約式だと(g∈G,l∈L)として拠点Aに対して班#1、班#2がそれぞれ持つ実施可能作業量と必要作業量を比較し、班#1が持つ実施作業可能量が拠点Aの必要作業量を超え、班#2が持つ実施作業可能量が拠点Aの必要作業量を超える式となっている。そのため、顧客要件を表現できない。
【0050】
拠点Aを回る班#1では、班#1の人員が持つタスクXXXの実施可能作業量と、タスクYYYの実施可能作業量の和が2であり、拠点AにおけるタスクXXXの必要作業量とタスクYYYの必要作業量の和以上となる。
拠点Aを回る班#2では、班#2の人員が持つタスクXXXの実施可能作業量とタスクYYYの実施可能作業量の和が1であり、拠点Aで必要なタスクXXXの必要作業量とタスクYYYの必要作業量の和未満となる。
【0051】
班#1と班#2のどちらかが拠点Aで必要な必要作業量を満たせばよいところ、上記のように同じ拠点Aに対して班#1は制約を満たしても班#2は制約を満たせないということが起こってしまう。これは、全ての班に対して同じ条件を適用してしまうためである。
【0052】
Σや∈を用いて総和を求める制約式の性質上、制約式は全ての要素を満たすように表現するため、「全ての班が~持つ必要はない」、「最低1班あればよい」というような制約の表現には工夫が必要である。
【0053】
つまり、式(16)と式(17)で示したように、班を固定させ、かつ、この班のタスクXXXの実施可能作業量が、全拠点内での必要作業量の最大値以上となるように立式する。
上記の制約式を設けることで、班#1のタスクXXXの実施可能作業量は、全ての拠点におけるタスクXXXの必要作業量の最大値以上となる「特権班」を作成する。特権班は、各拠点におけるタスクXXXの必要作業量を全て満たすので、当然全拠点を巡回可能であり、また全拠点を巡回可能な班が1つ必ず作成できる。
【0054】
この特権班の作成により、「全ての班が全ての拠点を巡回する必要はない。各拠点を巡回できる班が最低1つあればよい。」という制約条件を満たすことができる。つまり、各拠点を巡回できる班が最低1つ在ることを担保できる。
特権班の班#1を作成し、残りの班は下記の式(18)と式(19)を用意すれば、班作成の制約を満たすことが可能である。
【0055】
式(18)は、通常班が持つタスクXの実施可能作業量が、タスクXの必要作業量の最小値以上となるという制約条件を示している。
【数18】
【0056】
式(19)は、通常班が持つタスクYの実施可能作業量が、タスクYの必要作業量の最小値以上となるという制約条件を示している。つまり、通常班のタスクの実施可能作業量の制約は、全拠点のタスクの必要作業量の最小値以上となればよく、緩い制約である。
【数19】
【0057】
式(20)は、班内の人員は常に同じ組織に所属する人員に限定する制約条件を示している。例えば、班#1は会社αの鈴木さんと佐藤さん。班#2は会社βの高橋さんと吉田さんなどである。
【数20】
【0058】
式(21)は、作成する班の数を最大化するという目的関数を示している。
【数21】
【0059】
これらの定数と制約条件と目的関数を、例えば、PythonのPuLPライブラリのモデラ―を使って数理モデルとして定義し、ソルバーを呼び出すことで、目的関数を出力することができる。
【0060】
以下、図7から図9を使って、式(16)と式(19)の制約条件を用いて最適化した具体例を示す。
図7は、人員と、この人員による各タスクの実施可能作業量のデータテーブル51を示す図である。
このデータテーブル51は、人員欄と、この人員によるタスクXXXの実施可能作業量の欄と、この人員によるタスクYYYの実施可能作業量の欄を含んで構成されている。データテーブル51は、各人員が持つ或るタスクの実施可能作業量を示しており、よって各班の実施可能な作業量が定義できる。
【0061】
図8は、拠点と、この拠点における各タスクの必要作業量のデータテーブル52を示す図である。
このデータテーブル52は、拠点欄と、タスクXXXの必要作業量の欄と、タスクYYYの必要作業量の欄を含んで構成されている。データテーブル52により、各拠点でどの種類の作業がどのくらい必要かを定義できる。
【0062】
図9は、班と人員と、この班による各タスクの実施可能作業量のデータテーブル53を示す図である。このデータテーブル53は、例えば班組合せ決定部14が出力した結果である。班組合せ決定部14は、一番良い組み合わせを選ぶように最適化を行う。
【0063】
このデータテーブル53は、班ID欄と、人員構成欄と、タスクXXXの実施可能作業量の欄と、タスクYYYの実施可能作業量の欄を含んで構成されている。ここで、班IDが1のものは特権班であり、タスクXXXの実施可能作業量は2であり、タスクYYYの実施可能作業量は3である。この特権班は、AからEまでの全ての拠点に巡回可能であり、顧客要件の「最低1班」を満たす。
ここで班#2、班#3は、通常班として作成されている。班#2によるタスクXXXの実施可能作業量は2であり、タスクYYYの実施可能作業量は0である。班#3によるタスクXXXの実施可能作業量は2であり、タスクYYYの実施可能作業量は1である。
つまり、班#2、班#3は、巡回可能な拠点もあればそうでない拠点もある。これを班組合せ決定部14が最適化した結果、班#2は拠点Bのみを巡回可能であり、班#3は拠点C,Dに巡回可能である。
【0064】
以下に、本発明の構成と効果について説明する。
【0065】
[1]
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する特権班作成部(12)と、
1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する通常班作成部(13)と、
前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する班組合せ決定部(14)と、
を備えることを特徴とする巡回支援装置(1)。
【0066】
これにより、複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化することが可能となる。
【0067】
[2]
前記特権班の各タスクの実施可能作業量は、各拠点での当該タスクの必要作業量の最大値以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の巡回支援装置(1)。
【0068】
これにより、特権班を容易に作成可能となる。
【0069】
[3]
前記班組合せ決定部(14)は、前記特権班に全ての拠点を巡回させ、前記通常班に何れかの拠点を巡回させる条件にて、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の巡回支援装置(1)。
【0070】
これにより、特権班を容易に作成可能となる。
【0071】
[4]
コンピュータに、
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する手順、
1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する手順、
前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定する手順、
を実行させるための巡回支援プログラム。
【0072】
これにより、複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化することが可能となる。
【0073】
[5]
線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、特権班作成部(12)が、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成するステップと、
通常班作成部(13)が、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成するステップと、
班組合せ決定部(14)が、前記特権班と前記通常班による巡回の組み合わせを決定するステップと、
を備えることを特徴とする巡回支援方法。
【0074】
これにより、複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化することが可能となる。
【0075】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0076】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0077】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の変形例として、例えば、次の(a)~(c)のようなものがある。
【0078】
(a)最適化のライブラリは、PythonのPuLPに限定されない。
(b)各拠点で必要とされるタスクは、任意のものでよく、限定されない。
(c)各班の人員数は2名に限定されず、任意の人数であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 巡回支援装置
11 入力部
12 特権班作成部
13 通常班作成部
14 班組合せ決定部
15 出力部
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 入力部
25 通信部
27 記憶部
274 巡回支援プログラム
【要約】
【課題】複数の班が複数の拠点に巡回するにあたり、班の作成を最適化する。
【解決手段】巡回支援装置1は、線形計画による拠点を巡回するリソース配置の班分け最適化処理のため、すべての拠点に必要な条件を満たす特権班をひとつ作成する特権班作成部12と、1つ以上の拠点に必要な条件を満たす通常班を作成する通常班作成部13と、特権班と通常班による巡回の組み合わせを決定する班組合せ決定部14と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9