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特許7518314売買管理方法、情報処理装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】売買管理方法、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240709BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024076625
(22)【出願日】2024-05-09
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598059572
【氏名又は名称】東京海上ディーアール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 展人
(72)【発明者】
【氏名】目黒 文子
(72)【発明者】
【氏名】中山 依美
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための売買管理方法であって、
第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定ステップと、
前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の時間帯であり前記第1時間帯が属する日と同日の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定ステップと、
を有する売買管理方法。
【請求項2】
前記第2決定ステップにおいて、前記第1時間帯が属する日の前日に、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記需給調整市場で電力を売却すると決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項3】
前記第2決定ステップにおいて、前記第1時間帯が属する日の前日に、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額以下であり、かつ、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記卸電力取引市場で電力を売却すると決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項4】
前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、電力を売却すると決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項5】
前記第2決定ステップにおいて、前記卸電力取引市場で電力を売却する場合の利益額と、前記需給調整市場で電力を売却する場合の利益額と、を比較し、前記利益額がプラスであり、かつ前記利益額が大きい方の市場で電力を売却すると決定する、
請求項4に記載の売買管理方法。
【請求項6】
前記第2時間帯において電力を売却すると決定した場合、前記第2時間帯より後の時間帯であり前記第2時間帯が属する日と同日の第3時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠とすることを決定する第3決定ステップを更に含む、
請求項4に記載の売買管理方法。
【請求項7】
前記第2時間帯において電力を売却すると決定し、かつ前記第2時間帯終了時点での前記蓄電池の電力の残量が、前記第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量以上である場合、前記第3決定ステップにおいて電力を売却すると決定する、
請求項6に記載の売買管理方法。
【請求項8】
前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額以下であると判定した場合に、前記第2時間帯において電力を売らずに待機すると決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項9】
前記第2決定ステップにおいて、前記第2時間帯で電力を売却する場合の前記蓄電池の電力の残量と、前記第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量とを比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において電力を売却するか否かを決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項10】
前記第2決定ステップにおいて、前記最大の発動指令対応量が前記残量より小さいと判定した場合、前記第2時間帯において電力を売却すると決定する、
請求項9に記載の売買管理方法。
【請求項11】
前記第2決定ステップにおいて、前記最大の発動指令対応量が前記残量以上であると判定した場合、前記第2時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠とする、
請求項9に記載の売買管理方法。
【請求項12】
前記第1時間帯と同日の最後の時間帯において、翌日の前記第1時間帯において前記蓄電池の容量に達するまで充電できる最低充電量を下回らない範囲で前記蓄電池に蓄えられた電力を売却することを決定する第4決定ステップを更に有する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項13】
前記コンピュータは、前記電力の売買をする事業者を識別するための事業者識別情報と関連付けて、前記蓄電池の容量、前記第1時間帯が属する日の前日の終了時点での前記蓄電池における電力の残量、及び、前記電力の売買を優先的に行うべき優先電力市場の少なくともいずれかを示す事業者データを記憶し、
前記第1決定ステップにおいて、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する前記蓄電池の容量から、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する前記前日終了時点での前記蓄電池の残量を減算した電力量を前記第1時間帯における前記購入電力量として決定し、
前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する優先電力市場において電力を売却すると決定する、
請求項1に記載の売買管理方法。
【請求項14】
前記第2決定ステップの後に、前記第2時間帯に含まれる複数のサブ時間帯それぞれにおいて売買する電力量を決定するステップを更に有する、
請求項1から13のいずれか1項に記載の売買管理方法。
【請求項15】
電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための情報処理装置であって、
第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定部と、
前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の時間帯であり前記第1時間帯が属する日と同日の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項16】
電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための情報処理装置が有するプロセッサを、
第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定部と、
前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の時間帯であり前記第1時間帯が属する日と同日の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための売買管理方法、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池に蓄電した電力を供給する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7447207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、蓄電池による電力の供給が注目されている。電力価格は常に変動しているため、蓄電池に蓄えられた電力を一般送配電事業者等に供給する電力事業者が収益性を高めるためには、ある時間帯において、電力を売却するべきか又は電力を売らずに待機するべきかを適切に判断することが重要である。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、蓄電池に蓄えられた電力の売買に関する決定を適切に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る売買管理方法は、コンピュータが実行する、電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための売買管理方法であって、第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定ステップと、前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定ステップと、を有する。
【0007】
前記第2決定ステップにおいて、前記第1時間帯が属する日の前日に、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記需給調整市場で電力を売却すると決定してもよい。
【0008】
前記第2決定ステップにおいて、前記第1時間帯が属する日の前日に、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額以下であり、かつ、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記卸電力取引市場で電力を売却すると決定してもよい。
【0009】
前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、電力を売却すると決定してもよい。
【0010】
前記第2決定ステップにおいて、前記卸電力取引市場で電力を売却する場合の利益額と、前記需給調整市場で電力を売却する場合の利益額と、を比較し、前記利益額がプラスであり、かつ前記利益額が大きい方の市場で電力を売却すると決定してもよい。
【0011】
前記売買管理方法は、前記第2時間帯において電力を売却すると決定した場合、前記第2時間帯より後の第3時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠とすることを決定する第3決定ステップを更に含んでもよい。
【0012】
前記第2時間帯において電力を売却すると決定し、かつ前記第2時間帯終了時点での前記蓄電池の電力の残量が、前記第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量以上である場合、前記第3決定ステップにおいて電力を売却すると決定してもよい。
【0013】
前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額以下であると判定した場合に、前記第2時間帯において電力を売らずに待機すると決定してもよい。
【0014】
前記第2決定ステップにおいて、前記第2時間帯で電力を売却する場合の前記蓄電池の電力の残量と、前記第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量とを比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において電力を売却するか否かを決定してもよい。
【0015】
前記第2決定ステップにおいて、前記最大の発動指令対応量が前記残量より小さいと判定した場合、前記第2時間帯において電力を売却すると決定してもよい。
【0016】
前記第2決定ステップにおいて、前記最大の発動指令対応量が前記残量以上であると判定した場合、前記第2時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠としてもよい。
【0017】
前記売買管理方法は、前記第1時間帯と同日の最後の時間帯において、翌日の前記第1時間帯において前記蓄電池の容量に達するまで充電できる最低充電量を下回らない範囲で前記蓄電池に蓄えられた電力を売却することを決定する第4決定ステップを更に有してもよい。
【0018】
前記コンピュータは、前記電力の売買をする事業者を識別するための事業者識別情報と関連付けて、前記蓄電池の容量、前記第1時間帯が属する日の前日の終了時点での前記蓄電池における電力の残量、及び、前記電力の売買を優先的に行うべき優先電力市場の少なくともいずれかを示す事業者データを記憶してもよく、前記第1決定ステップにおいて、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する前記蓄電池の容量から、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する前記前日終了時点での前記蓄電池の残量を減算した電力量を前記第1時間帯における前記購入電力量として決定してもよく、前記第2決定ステップにおいて、前記購入電力量を前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が前記購入予測額よりも大きいと判定した場合に、前記コンピュータが受信した事業者識別情報に対応する優先電力市場において電力を売却すると決定してもよい。
【0019】
前記売買管理方法は、前記第2決定ステップの後に、前記第2時間帯に含まれる複数のサブ時間帯それぞれにおいて売買する電力量を決定するステップを更に有してもよい。
【0020】
本発明の第2の態様に係る情報処理装置は、電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための情報処理装置であって、第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定部と、前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定部と、を有する。
【0021】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための情報処理装置が有するプロセッサを、第1時間帯において、前記蓄電池の蓄電量が前記需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで前記卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定部と、前記購入電力量に対応する購入予測額と、前記購入電力量を前記第1時間帯よりも後の第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、前記第2時間帯において前記需給調整市場又は前記卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、蓄電池に蓄えられた電力の売買に関する決定を適切に行えるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電力事業者Eと各市場間での電力の取引の概要を示す図である。
図2】情報処理システムSの動作の概要を示す図である。
図3】情報処理装置1の取引計画作成機能に関わる構成の一例を示す図である。
図4】事業者データの一例を示す図である。
図5A】蓄電電力量の推移を示すグラフの前半を示す図である。
図5B】蓄電電力量の推移を示すグラフの後半を示す図である。
図6】取引計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
図7】入札における需給曲線の一例を示すグラフである。
図8】情報処理装置1の入札操作支援機能に関わる構成の一例を示す図である。
図9】蓄電電力量の推移を示すグラフ上で電力の入札を行う場合の表示の一例を示す図である。
図10A】蓄電電力量の推移を示すグラフ上でブロック単位の電力の入札を行う場合の表示の一例を示す図である。
図10B】蓄電電力量の推移を示すグラフ上でコマ単位の電力の入札を行う場合の表示の一例を示す図である。
図11】入札操作支援処理の流れを示すフローチャートである。
図12】情報端末2の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[情報処理システムSの概要]
図1及び図2を用いて、本実施形態に係る情報処理システムSの概要を説明する。近年、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを用いた発電が注目されているが、再生可能エネルギーを用いた発電は、天候等によって発電量が変動するため、安定的な電力供給が難しい。そこで、系統用蓄電池を用いた電力の供給が注目されている。系統用蓄電池は、系統(送配電網)に接続された蓄電池である。系統用蓄電池を用いることで、太陽光発電や風力発電により生成した電力を蓄電しておくことができる。
【0025】
ところで、一般送配電事業者等に電力を供給する電力事業者が電力を売買できる代表的な電力売買市場として、卸電力取引市場及び需給調整市場が存在する。図1は、電力事業者Eと各市場間での電力の取引の概要を示す図である。卸電力取引市場(JPEX)は、卸電力が売買される市場である。電力事業者Eは、図1に示すように、卸電力取引市場において、電力を購入又は売却することができる。需給調整市場は、電力需給の調整のために電力が売買される市場である。電力事業者Eは、図1に示すように、需給調整市場において、電力を売却することができる。
【0026】
なお、需給調整市場においては、電力を実際に売却することにより得られる変動収入に加え、電力を売却することを予約しておくだけで得られる固定収入も発生する。このため、一般的には、卸電力取引市場で電力を売却するよりも需給調整市場で電力を売却する方が電力事業者Eの収益性が高まる。したがって、電力を売却する場合、需給調整市場での電力の売却が優先される。
【0027】
しかしながら、需給調整市場で約定した後に、電力の供給を要求する指示を含む発動指令を需給調整市場から受けたにもかかわらず、電力事業者Eが、発動指令において指示された量の電力を供給できない場合、電力事業者Eにペナルティが課せられる場合がある。したがって、どの時間帯に卸電力取引市場でどれだけの量の電力を調達するか、どの時間帯に需給調整市場に約定するかといった計画を適切に立てることが求められる。
【0028】
そこで、本実施形態に係る情報処理システムSは、電力事業者Eの収益性を高めるための支援をする機能を提供する。具体的には、情報処理システムSは、電力売買市場における電力事業者Eの収益性を高めるための電力の取引計画を作成する機能(取引計画作成機能)及び電力事業者Eが作成された取引計画を参照して電力の入札を行う操作を支援する機能(入札操作支援機能)を提供する。
【0029】
図2は、情報処理システムSの動作の概要を示す図である。情報処理システムSは、情報処理装置1と、情報端末2と、を備える。情報処理装置1は、取引計画作成機能及び入札操作支援機能を提供するサーバ等のコンピュータである。情報端末2は、電力事業者Eが使用する情報端末である。情報処理装置1及び情報端末2は、互いに通信可能である。
【0030】
まず、情報端末2は、電力事業者Eを識別するための事業者IDを情報処理装置1に送信する。情報処理装置1は、事業者IDと蓄電池に蓄電可能な電力の最大容量である蓄電容量と前日終了時点での電力残量等が関連付けられた事業者データを参照して、受信した事業者IDに対応する蓄電容量及び電力残量等に基づいて、電力売買の取引計画を作成し、作成した取引計画を情報端末2に送信する。電力事業者Eは、情報端末2が受信した取引計画を示す画面から、電力の入札を指示する操作を行う。そして、情報端末2が、入札指示を示す情報を情報処理装置1に送信することにより、電力の入札が行われる。以下、取引計画作成機能及び入札操作支援機能の詳細を説明する。
【0031】
<取引計画作成機能>
[処理の概要]
電力売買の取引計画には、時間帯ごとの取引の内容が示される。一例として、1日は3時間ごとの8つの時間帯に分けられ、本明細書において、各時間帯をブロックという。情報処理装置1は、8ブロックそれぞれについて、卸電力取引市場で電力を購入するのか、卸電力取引市場で電力を売却するのか、需給調整市場に約定するのか、又は、電力の売買をせずに待機するのかを決定する。情報処理装置1は、例えば、電力売買取引の前日に、電力売買取引の当日の予想電力単価を用いてこの決定を行う。需給調整市場に約定するとは、需給調整市場で電力を売却することを決定することである。以下、情報処理装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0032】
[情報処理装置1の構成及び動作]
情報処理装置1の構成を説明する。図3は、情報処理装置1の取引計画作成機能に関わる構成の一例を示す図である。情報処理装置1は、装置通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、第1決定部131と、第2決定部132と、第3決定部133と、第4決定部134と、残量特定部136と、表示処理部137と、を有する。
【0033】
装置通信部11は、インターネット等の通信ネットワークを介して情報端末2と通信を行うための通信インターフェースである。装置通信部11は、情報端末2から受信した事業者IDを第1決定部131に入力する。また、装置通信部11は、表示処理部137から入力された電力売買の取引計画を示すデータを情報端末2に送信する。
【0034】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。例えば、記憶部12は、制御部13を、第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133、第4決定部134、残量特定部136及び表示処理部137として機能させる情報処理プログラムを記憶している。記憶部12は、事業者データを記憶する。
【0035】
図4は、事業者データの一例を示す図である。事業者データにおいては、事業者識別情報(事業者ID)と、蓄電容量と、前日蓄電残量と、優先電力市場と、放出可能電力量と、最大の発動指令対応量と、が関連付けられている。事業者IDは、電力の売買をする電力事業者Eを識別するためのIDである。蓄電容量は、蓄電池に蓄電可能な電力の最大容量である。前日蓄電残量は、第1時間帯が属する日の前日(=電力売買取引の前日)の終了時点での蓄電池における電力の残量である。優先電力市場は、電力の売買を優先的に行うべき電力市場である。
【0036】
3時間に相当する1つの時間帯(1ブロック)は、例えば、更に6つのサブ時間帯(コマ)に分けられる。放出可能電力量は、電力事業者Eが1コマあたりに放出可能な電力量の最大値である。最大の発動指令対応量は、電力の発動指令に対して電力事業者Eが1ブロックあたりに放出可能な電力量の最大値である。最大の発動指令対応量は、1コマあたりの放出可能電力量に、1ブロックあたりのコマ数を乗算することで算出することができる。例えば、放出可能電力量が500kWhであり、1ブロックが6コマである場合、最大の発動指令対応量は、500kWh×6=3,000kWhとなる。
【0037】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133、第4決定部134、残量特定部136及び表示処理部137として機能する。
【0038】
第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134は、例えば、電力売買取引の前日に、各時間帯における電力取引市場の種類を決定する。また、残量特定部136は、例えば、電力売買取引の前日に、複数の時間帯それぞれにおける蓄電池の残量を特定する。これにより、図5に示す蓄電電力量の推移を示すグラフが作成される。
【0039】
図5Aは、蓄電電力量の推移を示すグラフの前半(0時~12時)を示す図である。図5Bは、蓄電電力量の推移を示すグラフの後半(12時~24時)を示す図である。縦軸の蓄電電力量(kWh)は、蓄電池の残量を示す。横軸において、ブロックは時間帯に相当し、コマはサブ時間帯に相当する。横軸において、役割は、各ブロックにおける電力取引市場の種類を示し、取引市場は、電力取引が行われる市場を示す。横軸において、入札日は、電力の売買取引を行うための入札が行われるタイミングが示す。このタイミングの詳細は、入札操作支援機能の項目で説明する。
【0040】
第1決定部131は、第1時間帯において、蓄電池の蓄電量が需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで卸電力取引市場における購入電力量を決定する。第1決定部131は、例えば、蓄電池の容量に達するために必要な電力量(つまり、満充電するために必要な電力量)を購入電力量として決定してもよい。なお、第1時間帯は、例えば、1日のうちの最初の時間帯であるが、最初の時間帯より後の時間帯であってもよい。
【0041】
第1決定部131は、蓄電池の容量及び前日終了時点での蓄電池の残量に基づいて、購入電力量を決定してもよい。具体的には、第1決定部131は、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する蓄電容量から、事業者データにおいて装置通信部11が受信した事業者IDに対応する前日蓄電残量を減算した電力量を、第1時間帯における購入電力量として決定してもよい。これにより、各電力事業者Eは、各自に適した量の電力を購入することができる。
【0042】
具体的には、第1決定部131は、図5Aの例の第1ブロックにおいて、前日蓄電残量の1,000kWhから蓄電容量の4,000kWhに達するために必要な購入電力量である3,000kWhを、各コマに振り分けることにより、第1ブロックにおける各コマの購入電力量を決定する。
【0043】
第2決定部132は、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額と、購入電力量を第1時間帯よりも後の第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する。第2決定部132は、例えば、購入電力量を購入する時点における予想電力単価に購入電力量を乗算することで、購入予測額を算出する。
【0044】
第2決定部132は、例えば、購入電力量を売却する時点における予想電力単価に購入電力量を乗算することで、卸電力取引市場で電力を売却する場合の収益の期待額を算出する。また、第2決定部132は、例えば、需給調整市場で電力を売却することを予約しておくことで得られる固定収入と、購入電力量を売却する時点における予想電力単価に購入電力量を乗算することで算出される変動収入と、を合算することで、需給調整市場で電力を売却する場合の収益の期待額を算出する。
【0045】
なお、後述の入札操作支援機能の概要で説明するとおり、電力売買取引において、実際に電力が売買される単価である約定単価は、売入札と買入札の需給バランスに基づいて決定される。このため、入札時の電力単価である入札単価は、約定単価と異なることがある。予想電力単価は、例えば、予想約定単価である。予想約定単価は、例えば、過去の同時間帯における約定単価の平均値である。
【0046】
第2決定部132は、例えば、第1時間帯における購入電力量を第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額よりも大きいと判定した場合に、電力を売却すると決定する。これにより、電力事業者Eは、電力を売って収益が見込まれる場合には電力を売却することができるため、収益性を高めることができる。
【0047】
一方で、第2決定部132は、第1時間帯における購入電力量を第2時間帯において需給調整市場又は前記卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額以下であると判定した場合に、第2時間帯において電力を売らずに待機すると決定する。これにより、電力事業者Eは、電力を売っても収益が見込まれない場合には電力を売らずに待機することができるため、収益が見込まれるタイミングで電力を売却することが可能となる。
【0048】
ところで、前述のとおり、需給調整市場で電力を売却する場合の収益の期待額には、固定収入も含まれるため、一般的には、卸電力取引市場で電力を売却するよりも需給調整市場で電力を売却する方が、収益性は高まる。このため、第2決定部132は、以下で説明するように、まず需給調整市場で電力を売却するべきか否かを判定し、次に卸電力取引市場で電力を売却するべきか否かを判定してもよい。
【0049】
第2決定部132は、第1時間帯が属する日の前日に、第1時間帯における購入電力量を第2時間帯において需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額よりも大きいと判定した場合に、需給調整市場で電力を売却すると決定する。具体的には、第2決定部132は、図5Aの例において、第1ブロックにおける購入電力量である3,000kWhを第2ブロックにおいて需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1ブロックにおける購入電力量である3,000kWhに対応する購入予測額よりも大きいと判定し、第2ブロックでは需給調整市場で電力を売却すると決定する。
【0050】
第2決定部132は、第1時間帯が属する日の前日に、第1時間帯における購入電力量を第2時間帯において需給調整市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額以下であり、かつ、購入電力量を第2時間帯において卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が購入予測額よりも大きいと判定した場合に、卸電力取引市場で電力を売却すると決定する。
【0051】
このように、第2決定部132は、需給調整市場で電力を売却するべきか否かを優先的に判定する。そして、第2決定部132は、需給調整市場で電力を売却すると収益が見込まれないために需給調整市場で電力を売却するべきではないと判定した場合に、卸電力取引市場で電力を売却するべきか否かを判定する。これにより、電力事業者Eは、収益性がより高い需給調整市場で優先的に電力を売却することができる。
【0052】
しかしながら、場合によっては、需給調整市場で電力を売却するよりも卸電力取引市場で電力を売却する方が高い収益が見込まれることもある。そこで、第2決定部132は、卸電力取引市場で電力を売却する場合の利益額と、需給調整市場で電力を売却する場合の利益額と、を比較し、利益額がプラスであり、かつ利益額が大きい方の市場で電力を売却すると決定してもよい。これにより、電力事業者Eは、より大きな収益が見込まれる市場で電力を売却することができる。
【0053】
なお、電力事業者Eによっては、需給調整市場と卸電力取引市場のどちらで優先的に電力を売却するかを予め決めている場合がある。この場合、第2決定部132は、第1時間帯における購入電力量を第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額が、第1時間帯における購入電力量に対応する購入予測額よりも大きいと判定した場合に、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する優先電力市場において電力を売却すると決定する。これにより、電力事業者Eは、希望する電力市場で電力を売却することができる。
【0054】
第2決定部132は、卸電力取引市場で電力を売却する場合、次の第3時間帯において蓄電池の容量に達するまで充電できる充電量を下回らない範囲の電力量を、第2時間帯において売却する電力量として決定してもよい。また、需給調整市場で電力を売却する場合、第2決定部132は、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する最大の発動指令対応量に予想発動指令割合(例えば20%)を乗算した電力量を、第2時間帯において売却する電力量として決定してもよい。
【0055】
ところで、電力事業者Eが電力を売却した時間帯の次の時間帯に、最大の発動指令対応量以上の電力の発動指令を受けた場合、電力事業者Eは、当該次の時間帯で当該発動指令に対して対応できなくなる可能性がある。発動指令に対応できない場合、罰金が発生する可能性があり、また、電力事業者Eの信用も低下する。このため、第2決定部132は、以下で説明するように、第2時間帯で電力を売却した場合に、第3時間帯の最大の発動指令対応量に対応可能か否かに基づいて、第2時間帯で電力を売却するか否かを決定してもよい。
【0056】
すなわち、第2決定部132は、第2時間帯で電力を売却する場合の蓄電池の電力の残量と、第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量とを比較した結果に基づいて、第2時間帯において電力を売却するか否かを決定してもよい。第2決定部132は、例えば、第2時間帯開始時点での蓄電池における電力量から、第2時間帯において電力を売却すると決定した場合に売却する予定の電力量を減算して算出される第2時間帯終了時点での蓄電池における電力量と、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する最大の発動指令対応量と、を比較した結果に基づいて、第2時間帯において電力を売却するか否かを決定してもよい。
【0057】
第2決定部132は、第3時間帯における最大の発動指令対応量が、第2時間帯で電力を売却する場合の蓄電池の電力の残量より小さいと判定した場合、第2時間帯において電力を売却すると決定する。一方で、第2決定部132は、第3時間帯における最大の発動指令対応量が、第2時間帯で電力を売却する場合の蓄電池の電力の残量以上であると判定した場合、第2時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠とする。
【0058】
第2決定部132は、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する蓄電容量に達するまでに必要な電力量を、第2時間帯において購入して調達する電力量として決定してもよい。
【0059】
このように、第2決定部132が、第3時間帯の最大の発動指令対応量に対応可能な残量を第2時間帯終了時に残せる場合に第2時間帯に電力を売却すると決定することで、電力事業者Eが、第3時間帯の発動指令に対応できないという事態が発生するのを防げる。その結果、罰金の発生及び電力事業者Eの信用低下を防ぐことができる。
【0060】
第2時間帯で電力を売却した場合、第2時間帯より後の第3時間帯は、原則的には電力を追加調達する追加調達枠となる。すなわち、第3決定部133は、第2時間帯において電力を売却すると決定した場合、第2時間帯より後の第3時間帯を、電力を追加調達する追加調達枠とすることを決定する。具体的には、第3決定部133は、図5Aの例において、第2ブロックにおいて電力を売却すると決定した場合、第2ブロックの次の第3ブロックを、電力を追加調達する追加調達枠とすることを決定する。このように、第3決定部133が、第2時間帯より後の第3時間帯を電力の追加調達枠とすることを決定することで、電力事業者Eは、第2時間帯で電力を売って電力の残量が少なくなっても、第3時間帯で電力を追加調達することにより、次の発動指令に備えることができる。
【0061】
ただし、例外的に、第2時間帯の終了時点での電力の残量にまだ余裕がある場合、第3決定部133は、第3時間帯においても電力を売却すると決定してもよい。すなわち、第2決定部132が第2時間帯において電力を売却すると決定し、かつ第2時間帯終了時点での蓄電池の電力の残量が、第2時間帯より後の第3時間帯における最大の発動指令対応量以上である場合、第3決定部133は、第3時間帯において電力を売却すると決定する。これにより、電力事業者Eは、第2時間帯において電力を売っても電力の残量にまだ余裕がある場合、次の第3時間帯においても続けて電力を売却することができるため、収益性を高めることができる。
【0062】
なお、第3決定部133は、例えば、第2決定部132が第2時間帯において需給調整市場で電力を売却すると決定した場合に前段落で説明した例外の処理を実行し、第2決定部132が第2時間帯において卸電力取引市場で電力を売却すると決定した場合は、原則通りに、第3時間帯を電力の追加調達枠としてもよい。
【0063】
第3決定部133は、第2決定部132と同様の方法で、第3時間帯において売却する又は購入する電力量を決定することができる。
【0064】
第4決定部134は、第1時間帯と同日の最後の時間帯において、翌日の第1時間帯において蓄電池の容量に達するまで充電できる最低充電量を下回らない範囲で蓄電池に蓄えられた電力を売却することを決定する。第4決定部134は、例えば、第1時間帯と同日の最後の時間帯または最後の時間帯より1つ前の時間帯において、事業者データ(図4参照)において装置通信部11が受信した事業者IDに対応する蓄電容量から、1つの時間帯において充電可能な電力量の上限値を減算して算出される最低充電量を下回らない範囲で、蓄電池に蓄えられた電力を売却することを決定する。
【0065】
具体的には、第4決定部134は、図5Bの例において、蓄電容量の4,000kWhから1つのブロックにおいて充電可能な電力量の上限値である3,000kWhを減算して算出される最低充電量である1,000kWhを下回らない範囲で、第7ブロックにおいて電力を売却することを決定する。このように、第4決定部134が、最低充電量を下回らない範囲で蓄電池に蓄えられた電力を売却することを決定することで、電力事業者Eは、翌日の第1時間帯において確実に満充電することができるため、翌日の第2時間帯において発動指令に対応できなくなるという事態が発生するのを防ぐことができる。
【0066】
なお、電力事業者Eが、電力量が0の状態から翌日の第1時間帯において満充電できる場合又は翌日の第1時間帯において蓄電池の容量に達するまで充電することを希望しない場合には、第4決定部134は、第1時間帯と同日の最後の時間帯において、蓄電池に蓄えられた電力をすべて売却することを決定してもよい。これにより、電力事業者Eは、最後の時間帯が属する当日の収益性をより高めることができる。
【0067】
第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134は、各時間帯における電力取引市場の種類を決定した後に、各時間帯に含まれる複数のサブ時間帯それぞれにおいて売買する電力量を決定してもよい。第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134は、例えば、各時間帯において売買すると決定した電力量を、各時間帯に含まれる複数のサブ時間帯の数で除算した値を各サブ時間帯において売買する電力量として決定してもよい。
【0068】
第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134は、例えば、各時間帯において売買すると決定した電力量を2で除算した値を、各時間帯の前半の最初のサブ時間帯及び各時間帯の後半の最初のサブ時間帯のそれぞれにおいて売買する電力量として決定してもよい。一例として、第2決定部132が需給調整市場で第2時間帯において600kWhの電力を売却すると決定した場合、第2決定部132は、当該第2時間帯における1つ目のサブ時間帯において300kWhの電力を売り、当該第2時間帯における4つ目のサブ時間帯において残り300kWhの電力を売却すると決定してもよい。
【0069】
残量特定部136は、決定された複数の時間帯それぞれにおいて売買する電力量に基づいて、複数の時間帯それぞれにおける蓄電池の残量を特定する。また、残量特定部136は、決定された複数のサブ時間帯それぞれにおいて売買する電力量に基づいて、複数のサブ時間帯それぞれにおける蓄電池の残量を特定してもよい。残量特定部136は、例えば、直前のサブ時間帯の終了時点での蓄電池の残量に対して、現在のサブ時間帯において売買すると決定された電力量を加算又は減算することにより、現在のサブ時間帯における蓄電池の残量を特定してもよい。
【0070】
表示処理部137は、第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134が決定した各時間帯における電力取引市場の種類と、残量特定部136が特定した各時間帯における蓄電池の残量を示す残量画像と、を含む蓄電電力量の推移を示すグラフ(非図示)を情報端末2の表示部に表示させる。電力事業者Eは、電力売買取引の前日に蓄電電力量の推移を示すグラフを参照することで、翌日の各時間帯における電力取引市場の種類及び蓄電池の残量を把握することができる。
【0071】
また、表示処理部137は、例えば、各時間帯における電力取引市場の種類と、残量特定部136が特定した各サブ時間帯における蓄電池の残量を示す残量画像と、を含む蓄電電力量の推移を示すグラフを情報端末2の表示部に表示させてもよい。電力事業者Eは、電力売買取引の前日に蓄電電力量の推移を示すグラフを参照することで、翌日の各時間帯における電力取引市場の種類及び翌日の各サブ時間帯における蓄電池の残量を把握することができる。
【0072】
[情報処理装置1における処理の流れ]
情報処理装置1が実行する取引計画作成処理の流れを説明する。図6は、取引計画作成処理の流れを示すフローチャートである。ただし、本フローチャートは、取引計画作成処理のうち、電力の売買に関する決定処理を示したものである。
【0073】
第1決定部131は、第1ブロックを、電力を調達する調達枠とし(S1)、卸電力取引市場における購入電力量を決定する。
【0074】
第2決定部132は、直前の調達枠における購入電力量を現在ブロックで売却することで得られる収益期待額が、直前の調達枠における購入電力量に対応する購入予測額(直前調達コスト)より大きいか否かを判定する(S2)。
【0075】
第2決定部132が、現在ブロックの収益期待額が直前調達コスト以下であると判定した場合(S2:NO)、第2決定部132は、現在ブロックを、電力を売らずに待機する待機枠とする(S3)。そして、第2決定部132は、次のブロックに関して、再びステップS2の処理を実行する。
【0076】
一方で、第2決定部132が、現在ブロックの収益期待額が直前調達コストより大きいと判定した場合(S2:YES)、第2決定部132は、現在ブロックで電力を売却すると決定する(S4)。
【0077】
続いて、第3決定部133は、直前ブロック終了時の蓄電池における電力残量が、現在ブロックの最大発動指令対応量以上であるか否かを判定する(S5)。
【0078】
第3決定部133が、直前ブロック終了時の電力残量が現在ブロックの最大発動指令対応量より小さいと判定した場合(S5:NO)、第3決定部133は、現在ブロックを追加調達枠とする(S6)。なお、第3決定部133は、第2決定部132がステップS4において卸電力取引市場で電力を売却すると決定している場合、ステップS5での判定結果に関わらず、現在ブロックを追加調達枠としてもよい。そして、第3決定部133は、次のブロックに関して、再びステップS2の処理を実行する。
【0079】
一方で、第3決定部133が、直前ブロック終了時の電力残量が現在ブロックの最大発動指令対応量以上であると判定した場合(S5:YES)、第3決定部133は、現在ブロックで電力を売却すると決定する(S7)。
【0080】
続いて、第4決定部134は、現在ブロックが、一日のうちの最終枠であるか否かを判定する(S8)。第4決定部134が、現在ブロックが最終枠ではないと判定した場合(S8:NO)、S5の処理へと戻る。
【0081】
一方で、第4決定部134が、現在ブロックが最終枠であると判定した場合(S8:YES)、第4決定部134は、直前の調達枠における購入電力量を最終ブロックで売却することで得られる収益期待額が、直前の調達枠における購入電力量に対応する購入予測額(直前調達コスト)より大きいか否かを判定する(S9)。
【0082】
第4決定部134が、最終ブロックの収益期待額が直前調達コスト以下であると判定した場合(S9:NO)、第4決定部134は、最終ブロックを待機枠とする(S10)。
【0083】
一方で、第4決定部134が、最終ブロックの収益期待額が直前調達コストより大きいと判定した場合(S9:YES)、第4決定部134は、最終ブロックで電力を売却すると決定する(S11)。
【0084】
[情報処理装置1による効果]
以上説明したように、情報処理装置1は、電力売買取引の前日に、翌日の各時間帯における電力取引市場の種類を決定できる。その結果、電力事業者Eは、翌日にどのような電力取引を行うかを決定するのに要する時間および労力を省くことができる。また、情報処理装置1が行う決定は、前述のように、収益が見込まれる場合には電力を売却する、一方で収益が見込まれない場合には電力を売らずに待機するというものである。このため、電力事業者Eは、電力取引によってより大きな収益を得ることができる。
【0085】
また、情報処理装置1は、各時間帯における電力取引市場の種類と、残量特定部136が特定した各時間帯における残量を示す残量画像と、を含む蓄電電力量の推移を示すグラフを情報端末2の表示部に表示させてもよい。電力事業者Eは、電力売買取引の前日に蓄電電力量の推移を示すグラフを参照することで、翌日の各時間帯における電力取引市場の種類及び蓄電池の残量を把握することができる。
【0086】
<入札操作支援機能>
[処理の概要]
電力事業者Eは、入札により電力を売買することができる。入札を行う際には、まず、すべての入札が、売入札と買入札とに分けられる。図7は、入札における需給曲線の一例を示すグラフであり、横軸が入札量(MW:メガワット)を示し、縦軸が入札価格(円/kWh)を示す。売入札を示すグラフは、入札価格の低い方から入札価格の高い方へと入札量が増えていく右肩上がりのグラフとなる。逆に、買入札を示すグラフは、入札価格の高い方から入札価格の低い方へと入札量が減っていく右肩下がりのグラフとなる。そして、売入札を示すグラフと買入札を示すグラフの交点Pが、約定単価及び約定量となる。
【0087】
ところで、このような電力の入札を行う場合、電力事業者Eは、従来、翌日の各時間帯における電力取引市場の種類を確認した上で、入札処理を行うための専用の入札画面から、その時間帯での電力の入札種類(売入札又は買入札)、入札量及び入札単価を入力する必要があった。このため、入札作業に多大な労力と時間を要していた。
【0088】
そこで、情報処理装置1は、取引計画作成機能において作成された取引計画を示すグラフを見ながら、電力事業者Eが電力の入札を行えるようにする。情報処理装置1は、例えば、蓄電池の残量を示す残量画像を時系列で情報端末2の表示部に表示させるとともに、いずれかの時間帯の残量画像に関連付けて、売買取引の内容(入札種類、入札量及び入札単価)と、その内容で売買取引を行うための入札の操作を受け付ける操作画像と、を情報端末2の表示部に表示させる。
【0089】
これにより、電力事業者Eは、電力売買の取引計画を示すグラフが表示された画面において電力の入札を行えるため、例えば入札処理を行うための専用の入札画面を別途開く必要がなくなる。この結果、電力事業者Eは、電力の入札処理を効率的に行えるようになる。以下、情報処理装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0090】
[情報処理装置1の構成及び動作]
情報処理装置1の構成を説明する。図8は、情報処理装置1の入札操作支援機能に関わる構成の一例を示す図である。情報処理装置1は、装置通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取引内容決定部135と、操作受付部138と、利益額算出部139と、を更に有する点で、図3に示した情報処理装置1の入札操作支援機能に関わる構成とは異なる。取引内容決定部135は、図3に示した第1決定部131、第2決定部132、第3決定部133及び第4決定部134を含む。
【0091】
装置通信部11は、図3を参照して説明したように、インターネット等の通信ネットワークを介して情報端末2と通信を行うための通信インターフェースである。装置通信部11は、情報端末2から受信した入札指示を示す情報を操作受付部138に入力する。また、装置通信部11は、表示処理部137から入力された更新後の電力売買の取引計画を示すデータを情報端末2に送信する。
【0092】
記憶部12は、制御部13を、取引内容決定部135、操作受付部138及び利益額算出部139として更に機能させる情報処理プログラムを記憶している。
【0093】
制御部13は、記憶部12に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、取引内容決定部135、操作受付部138及び利益額算出部139として更に機能する。
【0094】
取引内容決定部135は、複数の時間帯それぞれに関連付けて、蓄電池に蓄える電力の売買取引の内容を決定する。取引内容決定部135は、例えば、取引計画作成機能の項目で説明した方法で、複数の時間帯それぞれに関連付けて、電力取引市場の種類、電力の売買のいずれを行うかを示す入札種類、売買電力量を示す入札量、及び、予想電力単価を示す入札単価を、電力の売買取引の内容として決定する。
【0095】
残量特定部136は、決定した内容の売買取引が行われることによって変化する、蓄電池の時間帯別の残量を特定する。残量特定部136は、例えば、直前の時間帯の終了時点での蓄電池の残量に対して、取引内容決定部135で決定した現在の時間帯における入札量を加算又は減算することにより、現在の時間帯における蓄電池の残量を特定する。
【0096】
表示処理部137は、残量特定部136が特定した残量を示す残量画像を時系列で情報端末2の表示部に表示させる。表示処理部137は、例えば、各時間帯における電力取引市場の種類を示す情報と、各時間帯に含まれる複数のサブ時間帯それぞれにおける残量画像と、を時系列で表示させる。表示処理部137は、残量画像を、残量画像を示す棒グラフとして表示してもよい。
【0097】
表示処理部137は、いずれかの時間帯の残量画像に関連付けて、蓄電池に蓄える電力の売買取引の内容と、当該内容で売買取引を行うための入札の操作を受け付ける操作画像と、を情報端末2の表示部に表示させる。
【0098】
図9は、蓄電電力量の推移を示すグラフ上で電力の入札を行える画面の一例を示す図である。表示処理部137は、各ブロッにおける電力取引市場の種類を示す役割と、各コマにおける蓄電池の残量を示す棒グラフと、を表示させる。また、表示処理部137は、電力事業者Eの担当者が選択中の棒グラフの上方に、売買取引の時間帯と、取引内容決定部135で決定した売買取引の内容である入札種類、入札量及び入札単価と、入札の操作を受け付ける操作画像Iと、を表示させる。また、表示処理部137は、例えば、現在時刻(図9では、3:00)に対応する棒グラフに印を付して表示させ、現在時刻までの棒グラフと現在時刻より後の棒グラフとを異なる態様で表示させてもよい。
【0099】
電力事業者Eの担当者は、操作画像Iを選択することで、表示されている売買取引の内容で電力の入札を行うことができる。このように、電力売買の取引計画を示すグラフが表示された画面で電力の入札を行えるようにすることで、担当者は、入札処理を行うための専用の入札画面を別途開く必要がなくなる。この結果、電力事業者Eは、電力の入札処理を効率的に行えるようになる。
【0100】
ところで、図1を参照して説明したとおり、電力事業者Eは、需給調整市場においては電力を売却することができ、一方で、卸電力取引市場においては電力を購入又は売却することができる。このため、表示処理部137は、例えば、需給調整市場での取引が設定された時間帯においては、売入札の操作を受け付ける操作画像Iを表示させ、卸電力取引市場での取引が設定された時間帯においては、売入札又は買入札の操作を受け付ける操作画像Iを表示させる。
【0101】
表示処理部137は、例えば、需給調整市場での取引が設定された時間帯における蓄電池の残量を示す棒グラフが選択された場合には入札種類として「売」を表示させ、卸電力取引市場での取引が設定された時間帯における蓄電池の残量を示す棒グラフが選択された場合には入札種類として「売」又は「買」を表示させてもよい。これにより、電力事業者Eが、売入札を行うべき需給調整市場での取引が設定された時間帯において、誤って買入札を行ってしまうのを防止することができる。
【0102】
需給調整市場においては、時間帯(ブロック)単位で取引を行うことが定められている。このため、表示処理部137は、例えば、需給調整市場での取引が設定された時間帯においては、時間帯単位で入札するための操作画像Iを表示させる。表示処理部137は、例えば、需給調整市場での取引が行われる需給調整市場約定枠における蓄電池の残量を示す棒グラフが選択された場合には、時間帯単位で入札するための操作画像Iを表示させる。
【0103】
一方で、卸電力取引市場においては、サブ時間帯(コマ)単位での取引を行ってもよい。このため、表示処理部137は、例えば、卸電力取引市場での取引が設定された時間帯においては、時間帯に含まれる複数のサブ時間帯単位で入札するための操作画像Iを表示させる。表示処理部137は、例えば、卸電力取引市場での取引が行われる調達枠、追加調達枠又は売電枠における蓄電池の残量を示す棒グラフが選択された場合には、サブ時間帯単位で入札するための操作画像Iを表示させる。
【0104】
サブ時間帯単位で入札する場合、電力事業者Eの担当者は、一つの時間帯に含まれる複数のサブ時間帯それぞれについての入札を一つ一つ行うのを煩わしいと感じる可能性がある。このため、表示処理部137は、例えば、所定の時間帯における第1位置が選択されると、選択された第1位置に対応する時間帯に含まれる複数のサブ時間帯で入札するための操作画像Iを表示させる。
【0105】
図10Aは、蓄電電力量の推移を示すグラフ上でブロック単位の電力の入札を行える画面の一例を示す図である。図10Aに示すように、例えば第1ブロックの領域において、第1コマから第6コマまでの棒グラフの領域以外の領域である第1位置がカーソルで選択されると、表示処理部137は、売買取引の内容と、「まとめて入札」の文字列を含む操作画像Iと、表示させる。電力事業者Eの担当者は、操作画像Iを選択することで、第1ブロックにおける第1コマから第6コマまでをまとめて入札することができる。
【0106】
一方で、電力事業者Eの担当者は、サブ時間帯それぞれの売買取引の内容を一つずつ確認しながら入札したい場合もある。このため、表示処理部137は、例えば、第1位置よりも残量画像に近い第2位置が選択されると、選択された第2位置に対応する残量画像に対応するサブ時間帯で入札するための操作画像Iを表示させる。
【0107】
図10Bは、蓄電電力量の推移を示すグラフ上でコマ単位の電力の入札を行える画面の一例を示す図である。図10Bに示すように、例えば第1ブロックの領域において、第1コマから第6コマまでの棒グラフの領域である第2位置がカーソルで選択されると、表示処理部137は、売買取引の内容と、「入札」の文字列を含む操作画像Iと、表示させる。電力事業者Eの担当者は、操作画像Iを選択することで、第1ブロックにおける選択されたコマを入札することができる。
【0108】
ところで、電力事業者Eが電力の入札を行うタイミングは、枠の種類によって異なる。調達枠及び需給調整市場約定枠は、電力の売買取引の前日の入札が必要となる枠である。このため、担当者は、例えば、電力の売買取引の前日に、翌日の各ブロックにおける電力取引市場の種類を確認した上で、需給調整市場約定枠の場合には特定のブロックを、調達枠の場合には特定のコマを選択する。そして、担当者が選択したブロック又はコマのすぐ上に、売買取引の内容と操作画像Iとが表示されるので、担当者は表示された売買取引の内容を確認した上で、操作画像Iを選択することにより、入札を行うことができる。
【0109】
追加調達枠は、電力の売買取引の当日における需給調整市場約定枠に該当する時間帯での入札が必要となる枠である。例えば、図9の例の場合、電力事業者Eの担当者は、電力の売買取引の当日に、第2ブロックの需給調整市場約定枠における3:00において、次の第3ブロックの追加調達枠における第15コマの売買取引の内容を確認した上で、操作画像Iを選択することにより、第15コマの入札を行うことができる。
【0110】
このように、電力の売買取引の前日には、卸電力取引市場及び需給調整市場の両方において入札することができるのに対して、電力の売買取引の当日には、卸電力取引市場においてのみ入札することができる。このため、電力の売買取引の当日に入札が行われる場合、表示処理部137は、例えば、卸電力取引市場での取引が設定された時間帯において操作画像Iを表示させ、需給調整市場での取引が設定された時間帯において操作画像Iを表示させなくてもよい。これにより、当日取引の場合に、既に入札が済んでいる需給調整市場での取引が設定された時間帯において操作画像Iが表示されずに済むので、電力売買の取引計画を示す画面において無駄な表示がなくなり、画面がより操作しやすいものとなる。
【0111】
操作受付部138は、電力事業者Eによる各種操作を受け付ける。操作受付部138は、例えば、電力事業者Eの担当者の操作を、情報端末2の操作部から受け付ける。この操作は、例えば、事業者IDを入力する操作、電力売買の取引内容を入力する操作、及び、蓄電電力量の推移を示すグラフにおいて操作画像Iを選択することによる入札の操作である。
【0112】
ところで、実際の売買電力量が、計画した売買電力量と異なることがある。この場合、作成された蓄電電力量の推移を示すグラフを作成し直す必要がある。以下、グラフを作成し直す2つの例について説明する。
【0113】
一つ目は、需給調整市場約定枠において、表示処理部137が表示させた発動指令対応量と異なる発動指令対応量の発動指令を電力事業者Eが受けた場合である。この場合、操作受付部138は、実際の発動指令対応量を入力する操作を電力事業者Eの担当者から受け付ける。残量特定部136は、入力された実際の発動指令対応量に基づいて蓄電池の残量を特定する。表示処理部137は、残量特定部136が特定した新たな残量を示す残量画像を時系列で表示させる。
【0114】
二つ目は、表示処理部137が表示させた入札量が電力事業者Eの担当者によって変更された場合である。この場合、操作受付部138は、変更された入札量で入札の操作を受け付ける。残量特定部136は、表示処理部137が表示させた売買取引の内容が変更された入札の操作を操作受付部138が受け付けた場合、変更後の売買取引の内容に基づいて蓄電池の残量を特定する。表示処理部137は、残量特定部136が特定した新たな残量を示す残量画像を時系列で表示させる。
【0115】
このように、計画した発動指令対応量又は入札量が変更された場合に、残量特定部136が変更された発動指令対応量又は入札量に基づいて蓄電池の残量を特定し、表示処理部137が特定された新たな残量を示す残量画像を表示させることで、電力事業者Eの担当者は、実際に売買された電力量がリアルタイムで反映された蓄電電力量の推移を示すグラフを見ることができる。その結果、電力事業者Eの担当者は、正しい蓄電電力量を常に把握することができるため、電力売買の精度が向上する。
【0116】
利益額算出部139は、売入札により発生する利益額から買入札に要する購入費用を減算することにより、売買取引により発生する一日あたりの利益額を算出する。利益額算出部139は、例えば、売入札の入札量に入札単価を乗算して算出した利益額から、買入札の入札量に入札単価を乗算して算出した購入費用を減算することにより、売買取引により発生する一日あたりの利益額を算出する。
【0117】
表示処理部137は、算出した一日あたりの利益額を表示させる。表示処理部137は、例えば、蓄電電力量の推移を示すグラフにおける上部の領域に、算出した一日あたりの利益額を表示させる。これにより、電力事業者Eの担当者は、一日あたりの利益額を把握し、翌日の電力の売買取引の内容の決定に役立てることができる。
【0118】
[情報処理装置1における処理の流れ]
情報処理装置1が実行する入札操作支援処理の流れを説明する。図11は、入札操作支援処理の流れを示すフローチャートである。ただし、本フローチャートは、入札操作支援処理のうち、表示処理部137が行う表示処理を示したものである。
【0119】
表示処理部137は、入札タイミングが、電力の売買取引の当日であるか否かを判定する(S21)。入札タイミングが、電力の売買取引の当日である場合(S21:YES)、表示処理部137は、入札が卸電力取引市場で行われると判定する(S22)。ステップS22の後、ステップS27へと進む。
【0120】
一方で、入札タイミングが、電力の売買取引の当日ではない場合(S21:NO)、すなわち前日等である場合、表示処理部137は、蓄電電力量の推移を示すグラフ上で卸電力取引市場に該当する時間帯が選択されているか否かを判定する(S23)。卸電力取引市場に該当する時間帯が選択されている場合(S23:YES)、表示処理部137は、入札が卸電力取引市場で行われると判定する(S24)。ステップS24の後、ステップS27へと進む。
【0121】
一方で、卸電力取引市場に該当する時間帯が選択されていない場合(S23:NO)、すなわち需給調整市場に該当する時間帯が選択されている場合、表示処理部137は、入札が需給調整市場で行われると判定する(S25)。入札が需給調整市場で行われる場合、表示処理部137は、ブロック単位で、入札種類として「売入札」を表示させる(S26)。
【0122】
ステップS22又はステップS24において、表示処理部137が、入札が卸電力取引市場で行われると判定した場合、表示処理部137は、蓄電電力量の推移を示すグラフ上で選択された時間帯において電力を売却するか否かを判定する(S27)。電力を売却する場合(S27:YES)、表示処理部137は、コマ単位で、入札種類として「売入札」を表示させる(S28)。電力を売却しない場合(S27:NO)、すなわち電力を購入する場合、表示処理部137は、コマ単位で、入札種類として「買入札」を表示させる(S29)。
【0123】
[情報処理装置1による効果]
以上説明したように、情報処理装置1は、蓄電池の残量を示す残量画像を時系列で情報端末2の表示部に表示させるとともに、いずれかの時間帯の残量画像に関連付けて、売買取引の内容(入札種類、入札量及び入札単価)と、その内容で売買取引を行うための入札の操作を受け付ける操作画像と、を情報端末2の表示部に表示させる。その結果、電力事業者Eは、時間の経過に伴って変化する蓄電池の残量を考慮して、適切に電力の入札を行える。
【0124】
[情報端末2の構成]
次に、情報端末2の構成を説明する。図12は、情報端末2の構成の一例を示す図である。情報端末2は、端末通信部21と、表示部22と、操作部23と、記憶部24と、制御部25と、を備える。
【0125】
端末通信部21は、インターネット等の通信ネットワークを介して情報処理装置1と通信を行うための通信インターフェースである。端末通信部21は、操作部23からの操作により入力された事業者IDを情報処理装置1に送信する。また、端末通信部21は、情報処理装置1から受信した電力売買の取引計画を示すデータを表示部22に入力する。また、端末通信部21は、操作部23からの操作により入力された入札指示を示す情報を情報処理装置1に送信する。
【0126】
表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等により構成される。表示部22は、情報処理装置1における表示処理部137の制御に応じて各種情報を表示する。表示部22は、例えば、電力売買の取引計画を表示する。
【0127】
操作部23は、情報端末2のユーザから、事業者IDを入力する操作及び入札指示の操作を受け付けるための操作デバイスであり、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス又はマイクである。
【0128】
記憶部24は、ROM及びRAM等を含む記憶媒体である。記憶部24は、制御部25が実行するプログラムを記憶している。
【0129】
制御部25は、例えばCPUである。制御部25は、記憶部24に記憶されたプログラムを実行する。
【0130】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0131】
1 情報処理装置
11 装置通信部
12 記憶部
13 制御部
131 第1決定部
132 第2決定部
133 第3決定部
134 第4決定部
135 取引内容決定部
136 残量特定部
137 表示処理部
138 操作受付部
139 利益額算出部
2 情報端末
21 端末通信部
22 表示部
23 操作部
24 記憶部
25 制御部
E 電力事業者
I 操作画像
S 情報処理システム
【要約】
【課題】蓄電池に蓄えられた電力の売買に関する決定を適切に行えるようにする。
【解決手段】情報処理装置1は、電力需給の調整のために電力が売買される需給調整市場と、卸電力が売買される卸電力取引市場と、を含む電力売買市場において、蓄電池に蓄える電力の売買を管理するための情報処理装置であって、第1時間帯において、蓄電池の蓄電量が需給調整市場に約定するために必要な所定値に達するまで卸電力取引市場における購入電力量を決定する第1決定部131と、購入電力量に対応する購入予測額と、購入電力量を第1時間帯よりも後の第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で売却することで得られる収益の期待額と、を比較した結果に基づいて、第2時間帯において需給調整市場又は卸電力取引市場で電力を売却するか否かを決定する第2決定部132と、を有する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12