(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】テネリグリプチン含有粒子及びそれを含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240709BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240709BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240709BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240709BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20240709BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240709BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/22
A61K9/20
A61P3/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2024506590
(86)(22)【出願日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2024001234
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023020036
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】西村 卓朗
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070260(JP,A)
【文献】特開2021-161096(JP,A)
【文献】特開2023-056991(JP,A)
【文献】特開2023-156269(JP,A)
【文献】上田廣,非晶質:Co-amorphousの研究動向,難水溶性薬物の経口製剤化技術最前線,2016年,第1版,p.118-126
【文献】中本敬三,製剤中における医薬品化合物の結晶・非晶質状態の評価,薬剤学,2015年,Vol.75, No.3,p.145-153
【文献】竹内洋文 ほか,多孔性微粒子担体を用いた薬物固体分散体粒子の設計,粉体工学会誌,2003年,Vol.40, No.3,p.157-162
【文献】森部久仁一,多孔性シリカを用いた有機・無機ハイブリット機能性薬物放出担体の開発,日本板硝子材料工学助成会 成果報告書,2001年,39,p.189-193
【文献】岡野定舗,新・薬剤学総論,改訂第3版,p.359-363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカと、前記多孔質シリカに担持された非晶質のテネリグリプチンと、
前記多孔質シリカに担持され、且つ乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸及びリンゴ酸からなる群から選択される一つ以上の有機酸と、を含む、テネリグリプチン含有粒子。
【請求項2】
前記多孔質シリカが、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、及び軽質無水ケイ酸からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩である、請求項1に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項3】
前記多孔質シリカが、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択される、請求項2に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項4】
前記多孔質シリカが、含水二酸化ケイ素である、請求項2に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項5】
前記
有機酸が、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択される、請求項
1に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項6】
前記
有機酸が、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択される、請求項
5に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項7】
前記
有機酸が、乳酸である、請求項
5に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項8】
前記
有機酸が、クエン酸である、請求項
5に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項9】
前記多孔質シリカが、含水二酸化ケイ素であり、前記
有機酸が、乳酸である、請求項
5に記載のテネリグリプチン含有粒子。
【請求項10】
請求項1乃至
9の何れか一に記載のテネリグリプチン含有粒子を含む、錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、テネリグリプチン含有粒子に関する。または、本発明の一実施形態は、テネリグリプチン含有粒子を含む製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テネリグリプチン([(2S,4S)-4-[4-(3-Methyl-1-phenyl-1H-pyrazol-5-yl)piperazin-1-yl]pyrrolidin-2-yl] (1,3-thiazolidin-3-yl)methanone)は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)の選択的な阻害薬であり、2型糖尿病の治療薬として臨床で使用されている。
【0003】
2型糖尿病の治療薬として、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物を含む固形製剤が、例えば、特許文献1に記載されている。また、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物を含む口腔内崩壊錠が、例えば、特許文献2に記載されている。これらは、何れも製剤中に有効成分を結晶形態で含む製剤である。
【0004】
一方で、一般的に非晶質はエネルギー的に高い状態にあるため、製剤中に有効成分を非晶質形態で含む非晶質製剤では、有効成分を結晶形態で含む製剤と比較して、有効成分の溶出性の向上や生体内への吸収率の向上が期待される。しかしながら、非晶質形態は物理的にも化学的にも不安定であるため、よりエネルギー的に安定な結晶形態へ転移しやすいこと、また類縁物質が生成しやすいことが知られている。したがって、非晶質製剤では、製剤の品質を担保するための特別な工夫、例えば製剤の製造工程中に非晶質形態を維持するための工夫、流通期間や服用までの保管中に高温や多湿のような極端な条件に曝されることがあっても非晶質形態を維持するための工夫、及び製造時や上記保管中の類縁物質の生成を抑制するための工夫が必要となることがある。
【0005】
非晶質製剤として、例えば、特許文献3には、非晶質形態のテネリグリプチン臭化水素酸塩と非晶質維持ポリマーとを含むテネリグリプチン含有医薬組成物が記載されている。特許文献3では、密栓条件下で保存後に製剤中の有効成分が非晶質形態で維持された製剤、又は開放条件下で保存した際に増加する類縁物質量を低減した製剤が記載されているが、開放条件下での保存後であっても製剤中の有効成分が非晶質形態で維持され、かつ製造時の類縁物質の生成を抑制したテネリグリプチン含有製剤は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5775463号公報
【文献】国際公開第2020/209350号
【文献】特開2020-070260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、湿度の影響を受けやすい開放条件下での保存後に、テネリグリプチンの非晶質形態を維持したテネリグリプチン含有粒子を提供することを課題の1つとする。また本発明者の検討により、テネリグリプチン含有粒子の製造時に類縁物質が生成しやすいことが分かった。そのため、本発明の一実施形態は、製造時の類縁物質の生成を抑制したテネリグリプチン含有粒子を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、そのようなテネリグリプチン含有粒子を含む製剤を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、多孔質シリカと、多孔質シリカに担持された非晶質のテネリグリプチンと、を含む、テネリグリプチン含有粒子が提供される。
【0009】
多孔質シリカが、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、及び軽質無水ケイ酸からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩であってもよい。
【0010】
多孔質シリカが、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択されてもよい。
【0011】
多孔質シリカが、含水二酸化ケイ素であってもよい。
【0012】
テネリグリプチン含有粒子は安定化剤を更に含有してもよい。
【0013】
安定化剤が、pH調整剤から選択されてもよい。
【0014】
pH調整剤が、有機酸であってもよい。
【0015】
pH調整剤が、乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸及びリンゴ酸からなる群から選択される一つ以上の有機酸であってもよい。
【0016】
pH調整剤が、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されてもよい。
【0017】
pH調整剤が、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されてもよい。
【0018】
pH調整剤が、乳酸であってもよい。
【0019】
pH調整剤が、クエン酸であってもよい。
【0020】
多孔質シリカが、含水二酸化ケイ素であり、pH調整剤が、乳酸であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によると、上記の何れかに記載のテネリグリプチン含有粒子を含む、錠剤が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によると、湿度の影響を受けやすい開放条件下での保存後であっても、テネリグリプチンの非晶質形態を維持したテネリグリプチン含有粒子が提供される。または、本発明の一実施形態によると、製造時の類縁物質の生成を抑制したテネリグリプチン含有粒子が提供される。または、本発明の一実施形態によると、そのようなテネリグリプチン含有粒子を含む製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るテネリグリプチン含有粒子及びテネリグリプチン含有粒子を含む製剤について説明する。なお、本発明においてテネリグリプチンという際にはそのフリー体、及び薬理学的に許容可能な塩又は溶媒和物を包含する場合があり、テネリグリプチン臭化水素酸塩という際にはその溶媒和物も包含する場合がある。本発明のテネリグリプチン含有粒子及びテネリグリプチン含有粒子を含む製剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0024】
[テネリグリプチン含有粒子]
本発明の一実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子は、多孔質シリカと、多孔質シリカに担持された非晶質のテネリグリプチン、又は多孔質シリカに担持された非晶質のテネリグリプチン及び安定化剤と、を含む。
【0025】
多孔質シリカは、細孔を有する。細孔は、多孔質シリカの表面からその内部に接続する空間であり、テネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤を担持することができる。多孔質シリカは、その表面及び/又は細孔内にテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤を担持することができる。本明細書において、多孔質シリカがテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤を「担持する」とは、多孔質シリカの表面及び/又は細孔内にテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤が保持されるか、及び/又は、多孔質シリカの表面及び/又は細孔内にテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤が吸着されるか、及び/又は、多孔質シリカの表面及び/又は細孔内にテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤が配置されることを意図する。
【0026】
本明細書において、多孔質シリカは、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、及び軽質無水ケイ酸からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びアルミニウムケイ酸塩からなる群から選択される一つ以上の多孔質のケイ酸塩である。
【0027】
一実施形態において、多孔質シリカが、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択されてもよい。または、一実施形態において、多孔質シリカが、含水二酸化ケイ素であってもよい。
【0028】
本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子が含む多孔質シリカは、非晶質のテネリグリプチン、又は非晶質のテネリグリプチンと安定化剤を担持するための担体である。担体である多孔質シリカにテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤を担持することによって、多孔質シリカに担持されたテネリグリプチンを非晶質形態に維持することができる。本明細書において、テネリグリプチン含有粒子が含む多孔質シリカが「非晶質のテネリグリプチン」、又は「非晶質のテネリグリプチン」と安定化剤を担持するとは、多孔質シリカに担持された後のテネリグリプチンが非晶質形態であることを意図する。テネリグリプチン含有粒子が含む多孔質シリカは、含水二酸化ケイ素であることが好ましい。また、本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子はコーティングを施してもよい。なお、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子にコーティングを施す場合、多孔質シリカは、球形であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子において、安定化剤は、テネリグリプチンの非晶質形態維持に関与すると共に、製造時の類縁物質の生成を抑制する添加剤である。安定化剤は、テネリグリプチンと共に多孔質シリカに担持されてもよく、多孔質シリカとは別に添加されてもよい。本明細書における「非晶質」とは、粉末X線回折測定法により、特許第4208938号に記載されている、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物結晶由来の回折ピーク(2θ=5.5°±0.2°、13.4°±0.2°、14.4°±0.2°)を含むテネリグリプチン由来の回折ピークを認めない状態を指す。粉末X線回折測定方法は、第十八改正日本薬局方に準じて行うことができる。
【0030】
本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子が含む安定化剤として、pH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、塩酸及び有機酸が例示され、特に有機酸が好ましい。有機酸として特に乳酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸及びリンゴ酸を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態において、pH調整剤が、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されてもよい。または、一実施形態において、pH調整剤が、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されてもよい。または、一実施形態において、pH調整剤が、乳酸であってもよい。または、一実施形態において、pH調整剤が、クエン酸であってもよい。
【0032】
一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質シリカと、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されるpH調整剤と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質シリカと、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されるpH調整剤と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質シリカと、pH調整剤として、乳酸と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、二酸化ケイ素、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群から選択される多孔質シリカと、pH調整剤として、クエン酸と、を含んでもよい。
【0033】
一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素と、乳酸、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されpH調整剤と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素と、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されるpH調整剤と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素と、pH調整剤として、乳酸と、を含んでもよい。または、一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素と、pH調整剤として、クエン酸と、を含んでもよい。
【0034】
一実施形態において、テネリグリプチン含有粒子は、ポリビニルアルコール(部分けん化物)を含んでもよい。
【0035】
本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子は、テネリグリプチンを多孔質シリカに担持させることにより、テネリグリプチンの非晶質形態を安定的に維持することができる。後述する実施例に示すように、25℃、相対湿度75%での開放条件下で1ヶ月間保存した場合にも、本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子は、テネリグリプチンの非晶質形態を維持することができる。また、本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子は、安定化剤と共にテネリグリプチンを多孔質シリカに担持させることにより、テネリグリプチンの非晶質形態を維持することに加えて、製造時の類縁物質の生成を抑制することができる。
【0036】
[テネリグリプチン含有粒子の製造方法]
本発明に係るテネリグリプチン含有粒子は、例えば、公知のシリカ吸着法を用いて、多孔質シリカにテネリグリプチン、又はテネリグリプチンと安定化剤を担持させることによって製造することができる。より詳細には、溶媒(精製水)、又は安定化剤を溶媒(精製水)に溶解させた安定化剤含有溶媒に、テネリグリプチン臭化水素酸塩、又はその水和物或いはその他の溶媒和物を溶解し、得られたテネリグリプチン溶液を多孔質シリカと混合し、溶媒を除去することにより、非晶質のテネリグリプチン、又は非晶質のテネリグリプチンと安定化剤が多孔質シリカに担持された粒子を得ることができる。ここで、溶媒等へ溶解する原薬としては、テネリグリプチン臭化水素酸塩の非晶質形態であっても結晶形態であってもよく、その水和物又はその他の溶媒和物であってもよい。何れの形態の原薬であっても上記製造方法を経ることで、非晶質のテネリグリプチンが多孔質シリカに担持された粒子を得ることができる。また、得られたテネリグリプチン含有粒子にコーティングを施し、コーティング粒子としてもよい。
【0037】
[テネリグリプチン含有製剤]
本実施形態におけるテネリグリプチン含有製剤の一実施形態として、例えば錠剤や顆粒剤が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本実施形態に係るテネリグリプチン含有粒子を、医薬的に許容された1つ以上の添加剤と混合して打錠することにより、テネリグリプチン含有錠剤を得ることができる。一実施形態おいて、テネリグリプチン含有錠剤は、1錠当たり、例えば、テネリグリプチン(フリー体)として20mg又は40mgとなるテネリグリプチン臭化水素酸塩を含むが、治療効果が得られる範囲で、テネリグリプチン(フリー体)としての含有量を適宜変更することができる。
【0038】
テネリグリプチン含有製剤に含有される添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤及び滑沢剤が例示されるが、これらに限定されるものではない。賦形剤としては、D-マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース等が例示されるが、これらに限定されるものではない。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等が例示されるが、これらに限定されるものではない。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
一実施形態において、テネリグリプチン含有製剤は抗酸化剤を含むことが好ましい。抗酸化剤の配合量は、製剤の重量に対して、0.01重量%以上10重量%以下、好ましくは0.1重量%以上10重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)又はアスコルビン酸等が例示されるが、これらに限定されるものではない。テネリグリプチン含有製剤に抗酸化剤を含有させることにより、テネリグリプチンの類縁物質の増加を低減することができる。なお、本明細書において、類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた測定により検出される全てのピーク面積の合計に対する、テネリグリプチン由来の類縁物質のピーク面積の比率を算出することにより求めることができる。
【0041】
[テネリグリプチン含有製剤の製造方法]
本発明のテネリグリプチン含有製剤の一実施形態であるテネリグリプチン含有錠剤は、A)テネリグリプチン含有粒子を、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤などの各種添加剤と混合し、そして場合により整粒することで、散剤又は顆粒剤を得る工程、並びに
B)上記混合品を圧縮成形する工程、
を含む工程によって製造することができる。また、上記工程により製造されたテネリグリプチン含有錠剤にコーティングを施し、コーティング錠としてもよい。
【実施例】
【0042】
[比較例1]
原薬の非晶質形態を維持する方法の1つとして知られている固体分散体を製造した。なお、テネリグリプチン、及び各添加剤の使用量は1錠中含量とする。具体的には、溶媒(精製水) 213.32mgに、テネリグリプチン臭化水素酸塩 29.48mgと、ヒプロメロース(HPMC:信越化学工業株式会社、TC-5E) 7.2mgを溶解し、テネリグリプチン溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて、テネリグリプチン溶液を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC:信越化学工業株式会社、LH-11) 3.0mg、及びD-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニット-P) 66.82mgに噴霧する造粒噴霧乾燥法により、比較例1のテネリグリプチン含有造粒物を得た。得られた造粒物を22号篩にて篩過し、整粒した。得られた整粒物を、L-HPC(信越化学工業株式会社、LH-11) 9.0mg、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 0.3mg、アスコルビン酸(協和ファーマケミカル株式会社、アスコルビン酸100M) 2.4mg、タルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 1.2mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、ステアリン酸マグネシウム(植物)) 0.6mgと、ビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、重量120mgの比較例1のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0043】
[比較例2]
HPMCに代えて、ポリビニルアルコール(部分けん化物)(PVA:三菱ケミカル株式会社、EG-05PW) 23.6mgを用いて、テネリグリプチン溶液を調製したこと以外は比較例1と同様の製造方法により、比較例2のテネリグリプチン含有固体分散体を製造し、比較例1と同様の製造方法により、比較例2のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0044】
比較例1及び2のテネリグリプチン含有錠剤を、25℃、相対湿度75%、開放条件下で、2週間保存した。
【0045】
[結晶形の評価]
製造直後(イニシャル)及び2週間保存後の比較例1及び2のテネリグリプチン含有錠剤における結晶形を、粉末X線回折測定法により評価した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Kα線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=2.0~40.0°、スキャンスピード:0.1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。結晶形の評価結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1の結果より、固体分散体とした場合、製剤中のテネリグリプチンは、製造直後は非晶質であるが、開放条件下での保存後は、非晶質の形態を維持することができず、結晶化することが明らかとなった。なお、密栓条件下で保存した場合は、非晶質の形態が維持されることを確認した。
【0048】
以下に示す実施例、及び比較例の製造方法において、テネリグリプチン及び各添加剤の使用量は基本的にテネリグリプチン含有錠剤1錠中の含量とする。テネリグリプチン含有粒子を製造している場合においても、その後錠剤化する場合があるため、1錠中の含量として記載した。
【0049】
[実施例1]
シリカ吸着法を用いて、テネリグリプチン含有粒子を製造した。具体的には、溶媒(精製水) 100mgに、テネリグリプチン臭化水素酸塩 29.48mgを溶解し、テネリグリプチン溶液を調製した。乳鉢を用いて、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素(富士化学工業株式会社、フジシル(登録商標)) 45mgに、得られたテネリグリプチン溶液を添加しながら、混合した。得られた粒子を棚式乾燥機にて、乾燥させて、実施例1のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0050】
[実施例2-1]
粒子の乾燥工程を、流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて行ったこと以外は実施例1の製造方法と同様の製造方法により、実施例2-1のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0051】
[実施例2-2]
溶媒(精製水) 90mgに、ポリビニルアルコール(部分けん化物)(PVA:三菱ケミカル株式会社、EG-05PW) 10mgを溶解し、ポリビニルアルコール溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて、ポリビニルアルコール溶液を実施例2-1のテネリグリプチン含有粒子に噴霧することにより、実施例2-2のテネリグリプチン含有造粒物を得た。
【0052】
[実施例2-3]
実施例2-2のテネリグリプチン含有造粒物を22号篩にて篩過し、整粒した。得られた整粒物を、L-HPC(信越化学工業株式会社、LH-11) 44.52mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、ステアリン酸マグネシウム(植物)) 1.0mgと、ビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、重量130mgの実施例2-3のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0053】
実施例1及び2-1のテネリグリプチン含有粒子、実施例2-2のテネリグリプチン含有造粒物、及び実施例2-3のテネリグリプチン含有錠剤を、25℃、相対湿度75%、開放条件下で、1ヶ月間、又は40℃、相対湿度75%、密栓条件下で、1ヶ月間保存した。
【0054】
製造直後(イニシャル)及び各条件で保存後の実施例1及び2-1のテネリグリプチン含有粒子、実施例2-2のテネリグリプチン含有造粒物、及び実施例2-3のテネリグリプチン含有錠剤について、上述した測定方法により、結晶形を評価した。評価結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
表2の結果より、実施例1及び2-1のテネリグリプチン含有粒子、実施例2-2のテネリグリプチン含有造粒物、並びに実施例2-3のテネリグリプチン含有錠剤は、製造直後のみならず、開放条件下で保存した場合にも、非晶質の形態を維持可能であることが明らかとなった。
【0057】
[実施例3-1]
安定化剤をテネリグリプチンと共に多孔質シリカに担持させた場合においても、テネリグリプチン含有粒子は非晶質の形態を維持可能であるかを検討した。具体的には、溶媒(精製水) 100mgに、L-乳酸(小松屋株式会社、日本薬局方 L-乳酸) 2mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製した。得られた安定化剤含有溶媒に、テネリグリプチン臭化水素酸塩 29.48mgを溶解して、テネリグリプチン溶液を調製した。乳鉢を用いて、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素(富士化学工業株式会社、フジシル(登録商標)) 45mgに、得られたテネリグリプチン溶液を添加しながら、混合した。得られた粒子を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)にて、乾燥させて、実施例3-1のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0058】
[実施例3-2]
溶媒(精製水) 95mgに、ポリビニルアルコール(部分けん化物)(PVA:三菱ケミカル株式会社、EG-05PW) 5mgを溶解し、ポリビニルアルコール溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて、ポリビニルアルコール溶液を実施例3-1のテネリグリプチン含有粒子に噴霧することにより、テネリグリプチン含有造粒物を得た。テネリグリプチン含有造粒物を22号篩にて篩過し、整粒した。得られた整粒物を、L-HPC(信越化学工業株式会社、LH-11) 6mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトールF) 31.02mg、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 0.5mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、ステアリン酸マグネシウム(植物)) 1.0mgと、ビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、重量120mgの実施例3-2のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0059】
[実施例4-1]
乳酸を塩酸(富士フィルム和光純薬株式会社、試薬特級 塩酸) 0.52mgに変更したこと以外は実施例3-1の製造方法と同様の製造方法により、実施例4-1のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0060】
[実施例4-2]
溶媒(精製水) 95mgに、ポリビニルアルコール(部分けん化物)(PVA:三菱ケミカル株式会社、EG-05PW) 5mgを溶解し、ポリビニルアルコール溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて、ポリビニルアルコール溶液を実施例4-1のテネリグリプチン含有粒子に噴霧することにより、テネリグリプチン含有造粒物を得た。テネリグリプチン含有造粒物を22号篩にて篩過し、整粒した。得られた整粒物を、L-HPC(信越化学工業株式会社、LH-11) 6mg、D-マンニトール(フロイント産業株式会社、グラニュトールF) 32.50mg、軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社、アドソリダー(登録商標)101) 0.5mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、ステアリン酸マグネシウム(植物)) 1.0mgと、ビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、重量120mgの実施例4-2のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0061】
[実施例5]
乳酸をアスコルビン酸(協和ファーマケミカル株式会社、アスコルビン酸100M) 2mgに変更したこと以外は実施例3-1の製造方法と同様の製造方法により、実施例5のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0062】
[比較例3]
乳酸をピロ亜硫酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社、ピロ亜硫酸ナトリウム) 2mgに変更したこと以外は実施例3-1の製造方法と同様の製造方法により、比較例3のテネリグリプチン含有粒子の製造を試みた。しかし、テネリグリプチン溶液を調製した際に、テネリグリプチンが析出して、溶液を調製することができなかった。
【0063】
[比較例4-1]
乳酸を亜硫酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社、亜硫酸ナトリウム) 2mgに変更した。亜硫酸ナトリウムを用いた場合、安定化剤含有溶媒にテネリグリプチンを添加してテネリグリプチン溶液の調製を試みた際に、テネリグリプチンが析出して、溶液を調製することができなかったため、亜硫酸ナトリウムを粉末として添加した。具体的には、溶媒(精製水) 100mgに、テネリグリプチン臭化水素酸塩 29.48mgを溶解し、テネリグリプチン溶液を調製した。乳鉢を用いて、多孔質シリカとして、含水二酸化ケイ素(富士化学工業株式会社、フジシル(登録商標)) 45mgと、亜硫酸ナトリウム 2mgの混合物に、得られたテネリグリプチン溶液を添加しながら、混合した。得られた粒子を流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)にて、乾燥させて、比較例4-1のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0064】
[比較例4-2]
溶媒(精製水) 90mgに、ポリビニルアルコール(部分けん化物)(PVA:三菱ケミカル株式会社、EG-05PW) 10mgを溶解し、ポリビニルアルコール溶液を調製した。流動層造粒乾燥機(株式会社パウレック、MP-01型)を用いて、ポリビニルアルコール溶液を比較例4-1のテネリグリプチン含有粒子に噴霧することにより、テネリグリプチン含有造粒物を得た。テネリグリプチン含有造粒物を22号篩にて篩過し、整粒した。得られた整粒物を、L-HPC(信越化学工業株式会社、LH-11) 42.52mg、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、ステアリン酸マグネシウム(植物)) 1.0mgと、ビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、重量130mgの比較例4-2のテネリグリプチン含有錠剤を得た。
【0065】
実施例3~5及び比較例4のテネリグリプチン含有粒子、或いはテネリグリプチン含有錠剤を、25℃、相対湿度75%、開放条件下で、1ヶ月間、又は40℃、相対湿度75%、密栓条件下で、1ヶ月間保存した。製造直後(イニシャル)及び保存後の実施例3~5及び比較例4のテネリグリプチン含有粒子、或いはテネリグリプチン含有錠剤について、上述した測定方法により、結晶形を評価した。評価結果を表3に示す。なお、実施例2のテネリグリプチン含有粒子、或いはテネリグリプチン含有錠剤の評価結果を表3に再掲する。
【0066】
【0067】
表3の結果より、乳酸、塩酸又はアスコルビン酸を添加した実施例3~5のテネリグリプチン含有粒子及びテネリグリプチン含有錠剤においては、製造直後のみならず、開放条件下で保存した場合にも、非晶質の形態が維持されることが確認された。一方、亜硫酸ナトリウムを添加した比較例4のテネリグリプチン含有粒子及びテネリグリプチン含有錠剤においては、非晶質の形態を維持できないことが明らかとなった。
【0068】
次に、非晶質の形態を維持可能な安定化剤をスクリーニングし、安定化剤と、製造直後(イニシャル)のテネリグリプチン含有粒子の類縁物質量との関係について検討した。
【0069】
[実施例6]
実施例2-1の製造方法と同様の製造方法により、実施例6のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0070】
[実施例7]
実施例5の製造方法と同様の製造方法により、実施例7のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0071】
[実施例8]
アスコルビン酸の代わりに、クエン酸(富士フィルム和光純薬株式会社、クエン酸一水和物) 0.5mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例8のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0072】
[実施例9]
アスコルビン酸の代わりに、酒石酸(山善製薬株式会社、DL-酒石酸) 0.5mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例9のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0073】
[実施例10]
アスコルビン酸の代わりに、フマル酸(富士フィルム和光純薬株式会社、フマル酸) 0.33mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例10のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0074】
[実施例11]
アスコルビン酸の代わりに、リンゴ酸(扶桑化学工業株式会社、DL―リンゴ酸) 0.5mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例11のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0075】
[実施例12]
アスコルビン酸の代わりに、L-乳酸(小松屋株式会社、日本薬局法 L-乳酸) 0.5mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例12のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0076】
[実施例13]
アスコルビン酸の代わりに、L-乳酸(小松屋株式会社、日本薬局法 L-乳酸) 1mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例13のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0077】
[実施例14]
実施例3-1の製造方法と同様の製造方法により、実施例14のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0078】
[実施例15]
アスコルビン酸の代わりに、L-乳酸(小松屋株式会社、日本薬局法 L-乳酸) 3mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例15のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0079】
[実施例16]
アスコルビン酸の代わりに、L-乳酸(小松屋株式会社、日本薬局法 L-乳酸) 4mgを溶解して、安定化剤含有溶媒を調製したこと以外は、実施例7の製造方法と同様の製造方法により、実施例16のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0080】
[実施例17]
実施例4-1の製造方法と同様の製造方法により、実施例17のテネリグリプチン含有粒子を製造した。
【0081】
実施例6~17のテネリグリプチン含有粒子を、25℃、相対湿度75%、開放条件下で、1ヶ月間保存した。上述した測定方法により、結晶形を評価し、保存後の実施例6~17のテネリグリプチン含有粒子が非晶質の形態を維持していることを確認した。
【0082】
[類縁物質量の評価]
製造直後(イニシャル)の実施例6~17のテネリグリプチン含有粒子の類縁物質量を評価した。高速液体クロマトグラフィーを用いて、個々最大類縁物質量及び総類縁物質量を算出した。高速液体クロマトグラフィーを用いた測定により検出された全てのピーク面積の合計に対して、テネリグリプチン由来の類縁物質それぞれのピーク面積の比率を算出した。個々最大類縁物質量は、算出した類縁物質の比率の中で最大量となる類縁物質の比率を示した。また、総類縁物質量は、高速液体クロマトグラフィーを用いた測定により検出された全てのピーク面積の合計に対して、テネリグリプチン由来の類縁物質のピーク面積の合計の比率を示した。評価結果を表4に示す。
【0083】
【0084】
表4の結果より、安定化剤として有機酸を含む実施例7~16のテネリグリプチン含有粒子においては、開放条件下で保存後も非晶質形態を維持しつつ、安定化剤を含まない実施例6、又は安定化剤として塩酸を含む実施例17のテネリグリプチン含有粒子に比べて、製造直後(イニシャル)の類縁物質量が顕著に低減されることが明らかとなった。
【0085】
さらに、安定化剤として有機酸を含む場合、テネリグリプチン含有錠剤においても、非晶質の形態を維持しつつ、製造直後(イニシャル)の類縁物質量を低減することが可能であるかを検討した。
【0086】
実施例2-3、実施例3-2及び実施例4-2のテネリグリプチン含有錠剤について、上述の評価方法により、製造直後(イニシャル)の類縁物質量を評価した。評価結果を表5に示す。なお、実施例2-3、実施例3-2及び実施例4-2の結晶形の評価結果を表5に再掲する。
【0087】
【0088】
表5の結果より、安定化剤として有機酸である乳酸を含む実施例3-2のテネリグリプチン含有錠剤においては、開放条件下で保存後も非晶質形態を維持しつつ、安定化剤を含まない実施例2-3、又は安定化剤として塩酸を含む実施例4-2のテネリグリプチン含有錠剤に比べて、製造直後(イニシャル)の類縁物質量が顕著に低減されることが明らかとなった。
【要約】
本発明の一実施形態は、湿度の影響を受けやすい開放条件下での保存後に、テネリグリプチンの非晶質形態を維持したテネリグリプチン含有粒子を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、製造時の類縁物質の生成を抑制したテネリグリプチン含有粒子を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一実施形態は、そのようなテネリグリプチン含有粒子を含む製剤を提供することを課題の1つとする。本発明の一実施形態によると、多孔質シリカと、多孔質シリカに担持された非晶質のテネリグリプチンと、を含む、テネリグリプチン含有粒子が提供される。