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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】時変閾値を用いる音波感知
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
G01S7/526 K
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021505672
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044705
(87)【国際公開番号】W WO2020028687
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】16/052,042
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】レイ ディン
(72)【発明者】
【氏名】スリナス マシュー ラマスワミ
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実公昭62-046338(JP,Y2)
【文献】特開平07-221643(JP,A)
【文献】特開2018-066669(JP,A)
【文献】特開2008-241308(JP,A)
【文献】特開2015-141174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0207797(US,A1)
【文献】特開昭58-048849(JP,A)
【文献】特開2003-194921(JP,A)
【文献】米国特許第08867312(US,B1)
【文献】特開昭63-204181(JP,A)
【文献】特開平03-277987(JP,A)
【文献】特開2016-092648(JP,A)
【文献】特開2001-166039(JP,A)
【文献】特開平08-201514(JP,A)
【文献】特開2008-107122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0303096(US,A1)
【文献】特開平03-210492(JP,A)
【文献】特開2013-081227(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014359(WO,A1)
【文献】実開昭58-116343(JP,U)
【文献】特開2001-068968(JP,A)
【文献】特開2005-061858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01V 1/00-99/00
G08B15/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波感知システムであって、
入力出力を含む可変利得増幅器
前記可変利得増幅器の出力に結合され、調節可能な閾値電圧を前記可変利得増幅器の出力からの出力信号と比較するためのnレベルコンパレータであって、nが1に等しいかそれ以上である、前記nレベルコンパレータ
前記nレベルコンパレータの出力に結合され、前記可変利得増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器
前記ノイズパワー推定器と前記nレベルコンパレータに結合され、前記ノイズパワー信号と前記可変利得増幅器の利得構成を示す信号とに基づいて前記調節可能な閾値電圧を調節するための時変閾値回路
を含む、超音波感知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波感知システムであって、
前記nレベルコンパレータが3レベルコンパレータを含み、前記調節可能な閾値電圧が第1の調節可能な閾値電圧第2の調節可能な閾値電圧を含む、超音波感知システム。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波感知システムであって、
前記3レベルコンパレータが、
前記出力信号を前記第1の調節可能な閾値電圧と比較するための第1のコンパレータと、
前記出力信号を前記第2の調節可能な閾値電圧と比較するための第2のコンパレータと、
を含む、超音波感知システム。
【請求項4】
請求項2に記載の超音波感知システムであって、
前記時変閾値回路が、前記ノイズパワー信号に基づいて前記第1及び第2の調節可能な閾値電圧の両方を調節するように結合される、超音波感知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波感知システムであって、
前記ノイズパワー推定器が、超音波パルスのバーストの送信に応答して事前定義された時間期間内に前記ノイズパワー信号を生成するように結合される、超音波検知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波感知システムであって、
前記nレベルコンパレータからの出力をテンプレート信号と相関させるための相関器回路を更に含む、超音波感知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波感知システムであって、
前記可変利得増幅器の入力に結合され、超音波信号を送信し、前記可変利得増幅器によって増幅されるべき反射超音波信号を受信するためのトランスデューサを更に含む、超音波感知システム。
【請求項8】
超音波感知システムであって、
入力出力を含む可変利得増幅器
前記可変利得増幅器の出力に結合され、前記可変利得増幅器の出力からのアナログ出力信号に応答してデジタル出力を生成するためのアナログデジタルコンバータ(ADC)であって、nビットコンバータである、前記ADC
前記ADCに結合され、時変閾値に基づいて前記デジタル出力のビットの数を低減するためのビット低減回路
前記ADCに結合され、前記可変利得増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器
前記ノイズパワー推定器と前記ビット低減回路に結合され、前記ノイズパワー信号と前記可変利得増幅器の時変利得構成とに基づいて前記時変閾値を調節するための時変閾値回路
を含む、超音波感知システム。
【請求項9】
請求項に記載の超音波感知システムであって、
前記ノイズパワー推定器が、前記ノイズパワーの標準偏差として前記ノイズパワー信号を生成するように結合される、超音波感知システム。
【請求項10】
請求項に記載の超音波感知システムであって、
前記ノイズパワー推定器が、超音波パルスのバーストの送信に応答して事前定義された時間期間内に前記ノイズパワー信号を生成するように結合される、超音波検知システム。
【請求項11】
請求項に記載の超音波感知システムであって、
前記可変利得増幅器の入力に結合され、超音波信号を送信し、前記可変利得増幅器によって増幅されるべき反射超音波信号を受信するためのトランスデューサを更に含む、超音波感知システム。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波感知システムであって、
前記ビット低減回路に結合され、前記ビット低減回路からの出力をテンプレート信号と相関させるための相関器を更に含み、
前記テンプレート信号が、前記トランスデューサのために生成されたトランスデューサ信号のデジタル化されたバージョンである、超音波感知システム。
【請求項13】
請求項12に記載の超音波感知システムであって、
前記トランスデューサのために前記トランスデューサ信号が生成される時間と前記反射超音波信号が検出される時間との間のクロック信号のパルスを計数するためのタイマーを更に含む、超音波感知システム。
【請求項14】
請求項に記載の超音波感知システムであって、
前記ビット低減回路が乗算器を含む、超音波感知システム。
【請求項15】
超音波感知システムであって、
入力出力を含む可変利得増幅器
前記可変利得増幅器の出力に結合され、調節可能な閾値電圧を前記可変利得増幅器の出力からの出力信号と比較するためのnレベルコンパレータであって、nが1に等しいかそれ以上である、前記nレベルコンパレータ
前記nレベルコンパレータの出力に結合され、前記可変利得増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器
前記ノイズパワー推定器と前記nレベルコンパレータに結合され、前記ノイズパワー信号と前記可変利得増幅器の時変利得構成とに基づいて前記調節可能な閾値電圧を調節するための時変閾値回路
前記nレベルコンパレータの出力をテンプレート信号と相関させ、それに応答して相関器出力信号を生成するための相関器回路
前記相関器回路に結合され、前記相関器出力信号に応答してエンベロープ信号を生成するためのエンベロープ検出器
前記エンベロープ検出器に結合され、前記エンベロープ信号を時変閾値を定義する閾値マップ信号と比較するためのコンパレータ
を含む、超音波感知システム。
【請求項16】
請求項15に記載の超音波感知システムであって、
前記nレベルコンパレータが3レベルコンパレータを含み、前記調節可能な閾値電圧が第1の調節可能な閾値電圧第2の調節可能な閾値電圧を含む、超音波感知システム。
【請求項17】
請求項16に記載の超音波感知システムであって、
前記時変閾値回路が、前記ノイズパワー信号に基づいて前記第1及び第2の調節可能な閾値電圧の両方を調節するように結合される、超音波感知システム。
【請求項18】
請求項15に記載の超音波感知システムであって、
前記可変利得増幅器の入力に結合され、超音波信号を送信し、前記可変利得増幅器によって増幅されるべき反射超音波信号を受信するためのトランスデューサを更に含む、超音波感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超音波測距は種々の応用例において用いられている。例えば、オートモーティブ用途において、超音波トランスデューサは自動車のバンパに配置される。トランスデューサは超音波信号を発する。発せられた超音波信号は、近くにオブジェクトが実際に存在する場合、そのオブジェクトで反射し、反射した信号がトランスデューサによって感知される。超音波信号の往復時間を測定して、オブジェクトまでの距離を求めることができる。
【発明の概要】
【0002】
一例において、超音波感知システムが、入力及び出力を含む増幅器と、増幅器の出力に結合され、調節可能な閾値電圧を増幅器の出力からの出力信号と比較するためのnレベルコンパレータとを含む。Nは1に等しいかそれ以上である。また、このシステムは、nレベルコンパレータの出力に結合され、増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器を含む。このシステムは、ノイズパワー推定器及びnレベルコンパレータに結合され、調節可能な閾値電圧をノイズパワー信号に基づいて調節するための時変閾値回路を更に含む。
【0003】
別の例において、超音波感知システムが、入力及び出力を含む増幅器と、増幅器の出力に結合され、増幅器の出力からのアナログ出力信号に応答してデジタル出力を生成するためのアナログデジタルコンバータ(ADC)とを含む。ADCはnビットコンバータである。このシステムは、ADCに結合され、時変閾値に基づいてデジタル出力のビットの数を低減するためのビット低減回路と、ADCに結合され、増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器と、ノイズパワー推定器及びビット低減回路に結合され、ノイズパワー信号に基づいて時変閾値を調節するための時変閾値回路とを更に含む。
【0004】
更に別の例において、超音波感知システムが、入力及び出力を含む増幅器と、増幅器の出力に結合され、調節可能な閾値電圧を増幅器の出力からの出力信号と比較するためのnレベルコンパレータとを含み、nは1に等しいかそれ以上である。また、このシステムは、nレベルコンパレータの出力に結合され、増幅器の入力における入力信号のノイズパワーを示すノイズパワー信号を生成するためのノイズパワー推定器と、ノイズパワー推定器及びnレベルコンパレータに結合され、調節可能な閾値電圧をイズパワー信号に基づいて調節するための時変閾値回路と、nレベルコンパレータの出力をテンプレート信号と相関させ、それに応答して相関器出力信号を生成するための相関器回路とを含む。このシステムは更に、相関器回路に結合され、相関器出力信号に応答してエンベロープ信号を生成するためのエンベロープ検出器と、エンベロープ検出器に結合され、エンベロープ信号を、時変閾値を定義する閾値マップ信号と比較するためのコンパレータとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】記載される例における、オブジェクトまでの距離を測定するための超音波センサを備える自動車を図示する。
【0006】
図2】記載される例における、超音波トランスデューサ及び対応する回路要素のブロック図である。
【0007】
図3】記載される例における、超音波トランスデューサと共に用いられ得る回路要素の一部を示す。
【0008】
図4】例示のnレベルコンパレータを図示する。
【0009】
図5】例示の相関器を図示する。
【0010】
図6】一例におけるエンベロープ検出器を示す。
【0011】
図7】例示のノイズ電源推定器を示す。
【0012】
図8】記載される例における電圧閾値生成器を示す。
【0013】
図9】記載される例における閾値電圧の時間進行を図示する。
【0014】
図10】記載される例におけるプログラマブル利得増幅器の可変利得の時間進行を図示する。
【0015】
図11】超音波トランスデューサと共に用いられ得る回路要素の別の例の部分を示す。
【0016】
図12】様々の実装における例示のビット低減回路を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述のように、反射した超音波信号は、超音波トランスデューサによって検出され、往復時間を測定するために用いられ、それによって、(超音波信号を反射した)オブジェクトまでの距離を判定する。オブジェクトがトランスデューサから遠いほど、反射超音波トランスデューサの振幅は低くなる。近くのオブジェクトの場合、反射超音波信号は遠くのオブジェクトの場合よりも振幅がはるかに大きくなる。検出されている信号の振幅が変化するので、反射超音波信号の正しい検出は困難となる可能性がある。
【0018】
説明される実施例は、超音波トランスデューサなどのトランスデューサから信号を受信する回路に向けられ、相関器入力の量子化のために時変閾値を適用する。閾値レベルは、時間とともに変化し、回路内のノイズの評価に基づくレベルに初期化される。ノイズは、経時的に比較的一定であり得、そのため、超音波信号がトランスデューサによって生成された後、ノイズ振幅及びノイズパワーは概して、経時的に変化しない。回路は、回路内のノイズの電力レベルを示す信号(熱雑音、増幅器ノイズなど)を生成するノイズパワー推定器を含み、コンパレータによって用いられる閾値電圧は、ノイズパワーを示す信号に基づいて、及びトランスデューサによって生成される超音波信号の生成に続く時間に基づいて、変更される。閾値電圧は概して、トランスデューサによる超音波信号の生成に続く経時的に減少し、各超音波信号生成に応答して一層高いレベルに再初期化される。
【0019】
従って、閾値は、トランスデューサによって検出される一層大きな振幅反射信号に対しては一層高く、一層低い振幅反射信号に対しては一層低い。一層大きな振幅反射信号に対して一層高く、一層低い振幅反射信号に対して一層低く設定される閾値電圧により、信号対雑音比は概して、適切な距離判定評価のために十分に高いレベルに維持される。
【0020】
前述したように、超音波測距システムのための1つの応用例は自動車であるが、超音波に基づく距離測定システムの使用のための他の応用例も可能である。図1は自動車100を図示する。この自動車は、前方バンパ及び後方バンパの一方又は両方に一つ又はそれ以上の超音波トランスデューサを含む。図1の例において、4つの超音波トランスデューサ105が示されている。各バンパにおけるトランスデューサの数は、他の例において4以外であってもよい。簡潔にするために、本明細書において、超音波トランスデューサをトランスデューサと呼ぶ。幾つかの例において、超音波トランスデューサがトランスデューサ105として用いられる。しかし、他の例において、トランスデューサ105は、(超音波トランスデューサに加えて、又はその代わりに)他のタイプのトランスデューサを含み得る。各超音波トランスデューサは、特定の周波数で音波を発し、その後、オブジェクト(例えば、オブジェクト120)で跳ね返ってトランスデューサに戻った後の音波の反射を検出する。音は、約344メートル/秒(1129フィート/秒)で空中を移動する。トランスデューサから音が最初に発せられてから、反射音波がトランスデューサで検出されるまでの経過時間は、トランスデューサに結合される回路要素によって測定され得る。総往復距離は、音速と測定時間の積である。トランスデューサとオブジェクトとの間の距離(例えば、図1のD1)は、次式で与えられる。
距離=(音速×時間)/2
トランスデューサ105によって生成された音波(本明細書では「音波信号」とも呼ばれる)に対して、広範囲の周波数を用いることができる。幾つかの例において、音波は人間が典型的に聞き取ることのできる周波数より上の周波数を有する。例えば、音波は20,000Hzを超える周波数を有し得るが、20,000Hz未満の周波数も可能である。一例において、周波数は50KHzであり、発せられる音波は、50KHz信号の複数パルス(例えば、15~20パルス)を含む。
【0021】
幾つかの実装において、トランスデューサ105は同じ周波数(例えば、50KHz)を発するが、トランスデューサ105は順次そうするため、1つのトランスデューサ105は、音波信号を発し、次のトランスデューサ105が音波信号を発することが許可される前に、反射のための事前定義された期間の間待機する。他の実装において、各トランスデューサ105によって異なる信号シグネチャが実装される。例えば、各トランスデューサによる使用のため、固有の方式で(例えば、周波数変調を用いて)50KHzが変調され得る。従って、全てのトランスデューサ105は、それらの音波信号を同時に発することができる。各発せられた音波信号は、特定のトランスデューサ105に対して固有にコード化され、そのため、反射音波信号も同様に固有であり、各トランスデューサに接続された回路要素によって容易に差別化される。
【0022】
図2は、複数のトランスデューサ105を図示する。各トランスデューサ105は、そのようなトランスデューサを動作させるそれぞれの対応する回路200に結合される。回路200はドライバ202を含む。ドライバ202は電気信号225を生成し、電気信号225は、トランスデューサ105によって音波信号230に変換される。ドライバ202は制御信号203をタイマー204にアサートする。制御信号203のこのようなアサートに応答して、タイマー204は、周期的クロック信号(CLK)のパルスをカウントすることなどによって時間の測定を開始する。また、各トランスデューサ105は、音波信号240(例えば、オブジェクト120によって反射される音波信号)を受け取り、受け取った音波信号240を電気信号244に変換することができる。超音波検出回路210が、電気信号244(これは反射音波信号240を示す)を受信して処理する。超音波検出回路210は、電気信号244を処理して、反射音波信号がいつトランスデューサ105によって受信されたかを判定する。反射音波信号がトランスデューサ105によって受信されたと判定することに応答して、超音波検出回路210は、タイマー204への制御信号211を生成する。制御信号211のこのような生成に応答して、タイマー204は時間の測定を停止する(例えば、周期的クロック信号のパルスのカウントを停止する)。従って、タイマー204のカウント値(COUNT)は、(a)音波信号230がトランスデューサ105によって発せられたときと、反射音波信号240がトランスデューサによって受信されたときとの間に経過した時間、及び(b)同様にオブジェクトへの距離を示す。
【0023】
上述したように、反射音波信号240の大きさ(従って、等価の電気信号244の大きさ)は、オブジェクト120に対する距離D1の関数である。オブジェクト120までの距離が増大すると、音波信号240(電気信号244)の大きさは概して減少する。記載される例において、超音波検出回路210は、反射音波信号の出現を検出するために可変閾値を実装する。閾値は、音波信号230をトランスデューサ105から送信した直後に比較的高く設定される。音波信号230の送信に続いて、次第に一層低い閾値が、増大する時間にわたって超音波検出回路210に実装される。次の音波信号230がトランスデューサ105によって生成された後、この処理は繰り返され、閾値は再び高く設定され、経時的に低下される。
【0024】
図3は、超音波検出回路210の一例の実装を示す。図3における超音波検出回路210は、プログラマブル利得増幅器300、nレベルコンパレータ302、相関器304、エンベロープ検出器306、コンパレータ308、閾値マップ310、時変閾値回路312、ノイズパワー推定器314、及び時変利得制御316を含む。プログラマブル利得増幅器300は、入力信号244を増幅し、増幅された信号301をnレベルコンパレータ302に提供する。
【0025】
nレベルコンパレータ202は、増幅された信号301をn-1電圧閾値と比較する。例えば、3レベルコンパレータ(すなわち、n=3)の場合、コンパレータ302は、増幅された信号301を2つの異なる電圧閾値と比較する。図4は、増幅された信号301が、閾値電圧VREF1及び電圧閾値VREF2と比較される、例示の3レベルコンパレータを示す。閾値電圧VREF1及びVREF2は、時変閾値回路312(後述)によって提供される。図4の例における3レベルコンパレータは、2つのコンパレータ402及び412を含む。各コンパレータは、正の入力(+)及び負の入力(-)を有する。増幅された信号301は、両方のコンパレータの正入力に供給される。VREF1はコンパレータ402の負入力に供給され、VREF2はコンパレータ412の負入力に供給される。
【0026】
コンパレータ402は、増幅された信号301がVREF1より大きいか小さいかを示す出力403を生成する。図4の例において、コンパレータ402からの出力403は、増幅された信号301がVREF1より大きい場合は論理高、増幅された信号301がVREF1より小さい場合は論理低となる。同様に、コンパレータ412は、増幅された信号301がVREF2よりも大きいか小さいかを示す出力413を生成する。コンパレータ412からの出力413は、増幅された信号301がVREF2より大きい場合は論理高となり、増幅された信号301がVREF2より小さい場合は論理低となる。
【0027】
各出力403、413は、対応するDフリップフロップ出力信号Q1及びQ0として、それぞれのDフリップフロップ420によってラッチされる。Dフリップフロップ420、425は、クロック信号(必ずしも図2に示されているものと同じクロックである必要はない)によって繰り返しクロックされ、それにより、Q1、Q0出力信号対のシーケンスを生成する。各Q1、Q0出力信号対は、VREF1及びVREF2へのアクティブクロックエッジの瞬間における増幅された信号の相対サイズを符号化する。VREF1がVREF2より大きい(又はVREF1が正の電圧であり、VREF2がVREF1と同じ絶対値の負の電圧である)場合、Q1、Q0は、増幅された信号301が、VREF1より大きいか、VREF1とVREF2との間であるか、又はVREF2より小さいかを示す。増幅された信号301がVREF1より大きい場合、Q1及びQ0は両方とも論理高になる(Q1、Q0=「11」)。増幅された信号301がVREF1とVREF2との間である場合、Q1は論理低になり、Q0は論理高になる(Q1、Q0=「10」)。増幅された信号301がVREF2より小さい場合、Q1及びQ0の両方が論理低になる(Q1、Q0=「00」)。
【0028】
再び図3を参照すると、nレベルコンパレータ(図4の例ではQ1及びQ0)からの出力303が、相関器304に供給される。相関器304は、nレベルコンパレータの出力を、一つ又はそれ以上のテンプレート305に相関させる。各テンプレート305は、入力信号225のデジタル化されたバージョンであり、これは、ドライバ202によって生成され、送信された音波信号230への変換のためにトランスデューサ105に提供される。
【0029】
図5は例示の相関器304を示す。この例では、相関器304は、コンパレータ出力303が流れる一連の遅延バッファ500、及び、テンプレート305が流れる一連の対応する遅延バッファ520を含む。各遅延バッファ500、520は、他の遅延バッファと同量の時間遅延を実装し得る。対応する遅延バッファ500、520の出力は、乗算器510によって示されるように共に乗算され、乗算器510の出力は、加算器525によって共に加算されて、相関器出力307を生成する。所与の時間の瞬間における相関器出力307は、その特定の時間の瞬間における送信された音波信号230に基づいて、受信された音波信号240が予期された音波信号とどの程度厳密に一致するかを示すマルチビットデジタル信号である。
【0030】
再び図3を参照すると、相関器出力307は、エンベロープ検出器306に提供される。エンベロープ検出器306は、相関器出力307のエンベロープ(例えば、ピーク)を概ね追跡する出力エンベロープ信号309を生成する。図6は、エンベロープ検出器306の例示の実装を示す。このエンベロープ検出器の例は、ヒルベルトフィルタ602及び絶対値回路604を含む。実入力信号xrの場合、ヒルベルトフィルタは、複素解析信号xr+j×xiを生成し、ここで、
であり、xiは90度の位相シフトを有する信号xrである。複素解析信号の絶対値|xr+xi|は、
と定義され、これは信号xrのエンベロープである。
【0031】
再び図3を参照すると、コンパレータ308は、(エンベロープ検出器306からの)出力エンベロープ信号309を閾値マップ310と比較して、上述した制御信号211を生成する。閾値マップは、信号エンベロープが閾値を上回るとき、有効オブジェクトを示す時変閾値を定義する。閾値は、通常、所与の距離での予期されるノイズエコー又は偽エコーを上回るように設定される。例えば、閾値マップは、接地又は小さなオブジェクトから生じる誤りを回避するように定義され得る。
【0032】
記載される例において、nレベルコンパレータ302が用いるための閾値電圧313(例えば、図4の例示の3レベルコンパレータにおけるVREF1及びVREF2)は、初期的に、発出音波信号230の初期的な送信に応答して比較的高いレベルに設定され、次いで、経時的な受信音波響信号振幅の減少を考慮するために、経時的に低下される。閾値電圧313は、(a)回路のノイズパワーと(b)時間とに基づいて判定される。基本ノイズパワーが一層高い場合、閾値電圧313は、基本ノイズパワーが一層低い場合よりも高く設定される。従って、ノイズパワー推定器314は回路内のノイズパワーの大きさを推定する。図7は、ノイズパワー推定器314の例示の実装を示す。図7の例において、ノイズパワー推定器は、平均フィルタ705に結合される二乗回路700を含む。上述したように出力ビットが11、01、00であるnレベルコンパレータ302のための3レベルコンパレータの例では、(a)11は+1に対応し、(b)00は-1に対応し、(c)01は0に対応する。そのため、+1を二乗すると1になり、01を二乗すると0になり、00を二乗すると1になる。従って、二乗回路700の出力は、コンパレータの出力303が11又は00である場合には論理高(「1」)、又は、コンパレータの出力303が01である場合には論理低(「0」)でなければならない。二乗回路700は、論理ゲートの集合として実装され得る。他の実装において、二乗回路700は乗算器として実装される。次いで、二乗回路700の出力702は、無限インパルス応答(IIR)フィルタ又は有限インパルス応答(FIR)フィルタなどの平均フィルタ705によってフィルタリングされる。平均フィルタ705の出力は、ノイズパワーを特定する信号315である。平均フィルタ705は、平均フィルタ805のノイズパワー出力の平方根を決定する平方根回路902に結合される。ノイズパワーの平方根は、ノイズパワーの標準偏差である。
【0033】
場合によっては、受信信号にエコーが予期されないとき、ノイズパワーは各バーストの前に測定される。あるいは、エコーが別の状況で予期されない時間における各バーストの後にノイズパワーが測定され得る。ノイズパワーは、他の近接する超音波源からの受信信号内の予期しないエコーによって引き起こされ得る誤った値を除外するために、経時的に追跡され得る。
【0034】
図8は、時変閾値回路312の例示の部分を示す。この例において、時変閾値回路312は抵抗器ディバイダネットワークを含み、抵抗器ディバイダネットワークは、抵抗器R1、R2、R3、R4、…、Rnと、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、…、SWnと、制御回路802と、タイマー810とを含む。抵抗器R1~Rnは、VDDと接地の間で直列に接続され、抵抗器の対を相互接続するノードから、VDDと接地の間で、変化する電圧を提供する。スイッチSW1~SWnが、各抵抗器間ノードに接続され、閉じているとき、そのノード電圧をnレベルコンパレータ302に供給する。各電圧閾値を生成するために、別個の抵抗器ディバイダネットワークを含んでもよい。ノイズパワー推定器314からの信号315に応答して、制御回路302は、スイッチSW1~SWnの1つを閉じるために制御信号804を生成し、それによって適切な電圧閾値を生成する。タイマー810は、ドライバ202から制御信号203を受信する。制御信号203は、音波信号230のバースト(burst)がトランスデューサ105を介して送信される時間を示す。タイマー810は、クロック信号(CLK)のパルスをカウントし、カウント値(COUNT)を制御回路802に出力する。幾つかの例において、タイマー810は、制御信号203のアサートに応答して0で始まるカウント値を出力するカウントアップカウンタである。タイマー810から0の初期カウント値を受け取ることに応答して、制御回路802は、制御信号804をアサートして、スイッチSW1~SWnのうちの1つを閉じさせる(残りのスイッチは開いたままである)。制御回路802によって初期的に閉じられるスイッチは、その回路について測定されたノイズレベルよりも高いが、増幅された信号301の大きさ(これは、異なる距離D1、従って異なる時間で、先験的に決定され得る)よりも小さい抵抗器ディバイダ電圧に対応する。例えば、短距離では、VREF1をノイズ標準偏差(ノイズパワーの平方根)の2倍に設定し得る。従って、ノイズの大部分はコンパレータ出力で0に変換され、エコー信号の大部分は1又は-1に変換される。幾つかの例において、制御信号804のアサートに続いて時間が進行するにつれて、制御回路802は、制御信号804をアサートして異なるスイッチを開閉させ、それによって、nレベルコンパレータ302への閾値電圧として提供されるべき抵抗器ディバイダからの異なる(及び一層低い)電圧を選択する。例えば、一層長い距離では、VREF1をノイズ標準偏差(ノイズパワーの平方根)の0.25倍(1/4)に設定し得る。このレベルでは、エコー信号振幅がノイズに埋め込まれていても、各信号はノイズに加えてコンパレータ出力に変換され得る。信号は、短距離の場合よりも低いSN比ではあるが、相関器を介して回復され得る。
【0035】
図9は、制御信号203がアサートされる時間T0で始まる、経時的な閾値電圧の下方進行の例を図示する。初期的に、閾値電圧は、時間T1に達するまで(例えば、タイマー810からのカウント値が、事前定義された値に達するまで)、レベルTH0に設定される。
【0036】
幾つかの実装において、閾値電圧313は、上述したように、回路及び時間におけるノイズパワーの推定に基づいて、nレベルコンパレータ302が用いるために生成される。しかしながら、幾つかの実装において、プログラマブル利得増幅器300の利得は、時変利得制御316によって動的に変更される。上述したように、受信された反射音波信号240は、距離D1が増大するにつれて(従って、初期的な音波信号230の送信に続いて時間が増大するにつれて)、振幅が漸進的に一層小さくなる。制御信号203のアサートに応答して、時変利得制御316は、プログラマブル利得増幅器300に制御信号をアサートして、その利得を一層低いレベルに初期的に設定する。これは、発出音波信号230の送信後間もなく反射音波信号240が受信される場合、(プログラマブル利得増幅器300によって受信される)反射音波信号240の大きさが比較的大きくなるからである。しかしながら、発出音波信号230の送信に続いて時間が進むにつれて、(a)入来反射音波信号240は漸進的に一層低い振幅を有することになり、(b)従って、時変利得制御316(これは、図8に例示されているようなタイマーを実装し得る)は、プログラマブル利得増幅器300に制御信号をアサートして、その利得を増大させる。
【0037】
図10は、比較的低い利得設定(時間T0でのGAIN0)から一層高い利得設定(時間T2でのGAIN2)への、プログラマブル利得増幅器300の経時的な利得の増大の例を図示する。
【0038】
プログラマブル利得増幅器300の利得の変化は、推定ノイズパワーの大きさも変化させる。幾つかの実装において、時変利得制御316は、プログラマブル利得増幅器300の利得設定を示すため、時変閾値回路312に信号317を生成する。時変閾値回路312は、信号317を用いてnレベルコンパレータのために閾値電圧313を動的に設定する。一例において、時変閾値回路312は、時変利得制御316から信号317を介して示された利得設定と、ノイズパワー推定器314からの信号315とに基づいて、閾値電圧313を生成するためのルックアップテーブルを実装する。時変閾値は、固定増幅器利得に対して決定される。増幅器利得は時間とともに変化するため、閾値はそれに応じて調節される。例えば、V1が所与の時間瞬間t1及び利得A1でのオリジナルの閾値電圧設定である場合、この時間瞬間t1における利得がA2に変化する場合、閾値電圧はV1×A2/A1に変更される。
【0039】
図11は、図3と同様であるが、nレベルコンパレータ302の代わりに、アナログデジタルコンバータ(ADC)891及びビット低減回路892を有する超音波検出回路890の実装を示す。ADC892は、例えば、3ビット、4ビットなどの、任意のサイズを有するADCコンバータとし得る。ビット低減回路892は、相関器304によるテンプレート305との相関のために、ADC892からのビットの出力数を低減する。図11におけるノイズパワー推定器893は、図12に示されるように実装され得る。
【0040】
プログラマブル利得増幅器300の利得及びADC参照信号は、予期されるノイズレベルに基づいて、この例では事前定義された値に設定される。ADC出力ビットがそれらの最下位1又は2ビットのみにおいて1及び0のトグルを示す場合、プログラマブル利得増幅器700の利得は、ADC894からの最下位ビットの数(少なくとも最下位4ビットなど)がトグルしている点まで増大される。
【0041】
図12は、乗算器910及び丸め関数912を含むためのビット低減回路892の例示の実装を示す。ビット低減回路892は、上述したように時変閾値回路312によって生成される時変閾値を介して、ADC894からの出力ビットの数を、例えば8から12ビットへ下方に、一層少ない数のビットまで減少させる。例えば、ADC出力が7つの異なるレベルを許容する3ビット出力であり、相関器304が3つの異なるレベルが可能である場合、ビット演算回路892は、図13に示すように7レベルのADC出力を3つの異なるレベルに変換する。
【0042】
上述したように、プログラマブル利得増幅器300の利得及びADCのための参照信号は、予期されるノイズレベルに基づいて事前定義された値に設定される。例えば、比較的少数のコンパレータレベル(例えば、3レベルコンパレータ)を用いて、コンパレータ出力における1のパーセンテージ(R1と表記)が判定される。VREF2をVREF1として逆極性電圧に設定することもでき、基準電圧を個別に調節することもできる。次に、R1が20%~40%の範囲内になるようにVREF1が調節される。VREF1が安定した後、R1が記録される。同様に、コンパレータ出力におけるゼロのパーセンテージ(R2として示される)が判定され、VREF1が安定しているときR2が記録される。平均値及び標準偏差値(ノイズパワーの平方根)は、ノイズパワー推定器(例えば、マイクロコントローラ又はディスクリート回路として実装される)によって計算され、「Q」関数を介してVREF1/VREF2及びR1/R2に関連付けられる。なぜなら、ノイズは概してガウス分布に従うからである。
Qinv(z)関数は、Q(z)関数の逆であり、ルックアップテーブルとして実装され得る。ノイズパワーの平均(μ)と標準偏差(σ)を計算するための式は下記のとおりである。
【0043】
本明細書では、「結合する」という語は、間接的又は直接的な有線又はワイヤレス接続のいずれかを意味する。従って、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接的接続を介するもの、又は他のデバイス及び接続を介する間接的接続を介するものであり得る。「~に基づく」という記載は、「少なくとも部分的に~に基づく」ことを意味する。従って、XがYに基づく場合、XはY及び任意の数の他の要因の関数であり得る。
【0044】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
図1
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