(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/36 20180101AFI20240710BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240710BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240710BHJP
F24F 110/65 20180101ALN20240710BHJP
【FI】
F24F11/36
F25B1/00 383
F25B1/00 381D
F25B49/02 520Z
F24F110:65
(21)【出願番号】P 2019205173
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】酒井 岳人
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌由
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009768(JP,A)
【文献】特開平10-281569(JP,A)
【文献】特開2017-036890(JP,A)
【文献】特開2016-211762(JP,A)
【文献】特開2019-113258(JP,A)
【文献】特開2018-096593(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(80)の同一の室内空間(S1)を空気調和する、第1~第N(Nは、2以上の整数)空気調和装置(10A,10B,10C)と、
前記第1~第N空気調和装置を管理する管理部(90)と、
を備え、
前記第1~第N空気調和装置それぞれは、
圧縮機(21)、放熱器(22)、膨張弁(23)および蒸発器(24)を有し、大気圧において空気よりも密度が大きい可燃性の冷媒が循環する冷媒回路(20)と、
前記建物の内部に配置され、前記冷媒回路を収容する、1つの筐体(40)と、
前記冷媒回路(20)から冷媒が漏洩したことを検知する冷媒漏洩検知センサ(94)と、
前記放熱器又は前記蒸発器を通って空気調和された空気を、前記筐体の中から前記室内空間に向けて吹き出させる送風機(31)と、
を有し、
前記管理部(90)は、前記第1~第N空気調和装置それぞれが有する前記冷媒漏洩検知センサ(94)のみによって冷媒の漏洩を検知し、
前記管理部(90)は、
前記第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1台の空気調和装置において、前記第1~第N空気調和装置それぞれが有する前記冷媒漏洩検知センサ(94)により冷媒漏洩が検知されたときに、
冷媒漏洩が検知された前記空気調和装置を運転停止状態あるいは運転禁止状態にし、
且つ、
それ以外の残りの前記空気調和装置を運転継続状態あるいは運転許容状態に
し、
前記管理部は、冷媒漏洩が検知された前記空気調和装置を運転停止状態にするときに、前記圧縮機を停止させ、前記送風機を動かし続ける、
空気調和システム(100)。
【請求項2】
前記管理部は、
前記第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、さらに、
冷媒漏洩が検知された前記空気調和装置以外の残りの前記空気調和装置のうち、運転停止状態にある前記空気調和装置の前記送風機を、動かす、
請求項
1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
冷媒漏洩が検知されたときの処理を行わない選択を行う選択部(96)、
をさらに備え、
前記選択部により、冷媒漏洩が検知されたときの処理を行わない選択が行われた場合、前記管理部は、前記空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたか否かに関わらず、前記第1~第N空気調和装置全てを、運転継続状態あるいは運転許容状態にする、
請求項1
又は2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、前記冷媒漏洩に関する報知を行う報知部(96,97)、
をさらに備えた、請求項1から
3のいずれかに記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記管理部は、
前記第1~第N空気調和装置のうちM(Mは、2以上N以下の整数)台以上の空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、
前記第1~第N空気調和装置全てを、運転停止状態あるいは運転禁止状態にする、
請求項1から
4のいずれかに記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和システム、特に、建物の同一の室内空間を空気調和する第1~第N空気調和装置を備える空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2017-9267号公報)に、冷媒遮断弁を備える空気調和システム、が開示されている。特許文献1の
図8~
図10に示される空気調和システムは、複数の室内ユニットが1つの室外ユニットに接続される所謂マルチタイプの空気調和システムである。冷媒遮断弁は、冷媒の漏洩が検知された際に閉止される部品であって、各室内ユニットに対応して設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の、燃焼性を持つ冷媒を使用する所謂マルチタイプの空気調和システムでは、いずれかの室内ユニットで冷媒漏洩が生じた際に、各室内ユニットに対応する冷媒遮断弁を全て閉止し、圧縮機も停止させている。これは、遮断状態の冷媒遮断弁であっても幾らかの冷媒は通過させてしまうため、冷媒漏洩が生じていない他の室内ユニットについても運転継続させることは好ましくないためである。他の室内ユニットが運転継続していると、室外ユニットから他の室内ユニットに高圧の冷媒が流れ、その冷媒の一部が、冷媒漏洩が生じている室内ユニットに流れ込む恐れがある。
【0004】
しかし、いずれかの室内ユニットで冷媒漏洩が生じた際に、全ての冷媒遮断弁を閉止して他の室内ユニットの冷房運転や暖房運転まで停止させると、空調対象空間の快適性が損なわれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の空気調和システムは、第1~第N(Nは、2以上の整数)空気調和装置と、管理部とを備える。第1~第N空気調和装置は、建物の同一の室内空間を空気調和する。管理部は、第1~第N空気調和装置を管理する。第1~第N空気調和装置それぞれは、冷媒回路と、1つの筐体とを有する。冷媒回路は、圧縮機、放熱器、膨張弁および蒸発器を有する。大気圧において空気よりも密度が大きい可燃性の冷媒が、冷媒回路を循環する。筐体は、建物の内部に配置され、冷媒回路を収容する。管理部は、第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1台の空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、冷媒漏洩が検知された空気調和装置を運転停止状態あるいは運転禁止状態にし、且つ、それ以外の残りの空気調和装置を運転継続状態あるいは運転許容状態にする。
【0006】
ここでは、同一の室内空間を空気調和する第1~第N空気調和装置それぞれを、1つの筐体に冷媒回路が収容された装置としている。第1~第N空気調和装置がそれぞれ個別の冷媒回路を有しているため、第1観点の空気調和システムでは、いずれかの空気調和装置で冷媒漏洩が検知されても、その空気調和装置の冷媒漏洩箇所を通じて他の空気調和装置の冷媒が漏れることは無い。これに鑑み、ここでは、冷媒漏洩の検知時に、冷媒漏洩が検知された空気調和装置を運転停止状態あるいは運転禁止状態にする一方、それ以外の残りの空気調和装置を運転継続状態あるいは運転許容状態にしている。これにより、空調対象の室内空間の快適性を保つことができる。
【0007】
なお、冷媒漏洩を検知するセンサ等の検知器は、必ずしも全ての空気調和装置に配備されていなくてもよいが、冷媒回路の容量が大きい空気調和装置には冷媒漏洩検知器を備えさせることが好ましい。
【0008】
第2観点の空気調和システムは、第1観点の空気調和システムであって、第1~第N空気調和装置それぞれは、送風機をさらに有する。送風機は、放熱器又は蒸発器を通って空気調和された空気を、筐体の中から室内空間に向けて吹き出させる。管理部は、冷媒漏洩が検知された空気調和装置を運転停止状態にするときに、圧縮機を停止させ、送風機を動かし続ける。
【0009】
ここでは、圧縮機が停止する一方、送風機が動き続けるため、冷媒が漏洩した室内空間において、送風機による空気流れによって冷媒が拡散される。このため、室内空間において漏洩した冷媒が偏在することが抑制され、室内空間の部分的な冷媒濃度の上昇が抑えられる。
【0010】
第3観点の空気調和システムは、第2観点の空気調和システムであって、管理部は、第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、さらに、別の送風機を動かす。別の送風機は、冷媒漏洩が検知された空気調和装置以外の残りの空気調和装置のうち、運転停止状態にある空気調和装置の送風機である。
【0011】
ここでは、さらに別の送風機を動かすため、室内空間において漏洩した冷媒が偏在することがさらに抑制され、室内空間の部分的な冷媒濃度の上昇が抑えられる。
【0012】
第4観点の空気調和システムは、第1観点から第3観点のいずれかの空気調和システムであって、選択部をさらに備える。選択部は、冷媒漏洩が検知されたときの処理を行わない選択を行う。選択部により、冷媒漏洩が検知されたときの処理を行わない選択が行われた場合、管理部は、空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたか否かに関わらず、第1~第N空気調和装置全てを、運転継続状態あるいは運転許容状態にする。
【0013】
第1~第N空気調和装置によって空気調和を行う室内空間の床面積が十分に大きいときには、1又は複数の空気調和装置から冷媒が漏洩したとしても、室内空間において冷媒濃度が燃焼下限濃度に至らない。この場合には、冷媒漏洩があったとしても、運転に必要な冷媒が冷媒回路に残っている限り、空気調和装置の運転を継続、あるいは許容状態にすることができる。これに鑑み、第4観点の空気調和システムでは、管理部は、空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたか否かに関わらず、第1~第N空気調和装置全てを、運転継続状態あるいは運転許容状態にしている。
【0014】
第5観点の空気調和システムは、第1観点から第4観点のいずれかの空気調和システムであって、報知部をさらに備える。報知部は、第1~第N空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、冷媒漏洩に関する報知を行う。
【0015】
ここでは、室内空間に居る人などに、冷媒漏洩の事実を周知させることができる。
【0016】
第6観点の空気調和システムは、第1観点から第5観点のいずれかの空気調和システムであって、管理部は、第1~第N空気調和装置のうちM(Mは、2以上N以下の整数)台以上の空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、第1~第N空気調和装置全てを、運転停止状態あるいは運転禁止状態にする。
【0017】
例えば、第1~第4空気調和装置によって室内空間を空気調和する空気調和システムにおいて、まず第1空気調和装置で冷媒漏洩が生じ、その第1空気調和装置を運転停止状態にしたとする。その後、第2空気調和装置でも冷媒漏洩が生じた場合、2つの空気調和装置からの冷媒漏洩によって室内空間の冷媒濃度が許容範囲内で上昇した状態になる。ここで、もしも第3空気調和装置あるいは第4空気調和装置でも冷媒漏洩が生じると、室内空間における冷媒濃度が燃焼下限濃度を超えるとする。すると、そのような事態を避けるべく、予め対策を打つことが好ましい。これに鑑み、第6観点の空気調和システムでは、第1~第N空気調和装置のうちM台以上の空気調和装置において冷媒漏洩が検知されたときに、第1~第N空気調和装置全てを、運転停止状態あるいは運転禁止状態にしている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】建物の1階の室内空間を3台の空気調和装置によって空気調和する空気調和システムの構成を示す図。
【
図4】冷媒漏洩チェック及び対応の制御フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)全体構成
図1に、建物80内に設置される空気調和システム100を示す。空気調和システム100は、建物80の1階の室内空間S1を、3台の空気調和装置10(第1空気調和装置10A、第2空気調和装置10B、第3空気調和装置10C)によって冷房あるいは暖房するシステムである。建物80の2階以上の各室内空間に対しても、空気調和システム100と同様のシステムが配備されているが、ここでは、1階の室内空間S1に対して設置されている空気調和システム100について説明を行う。
【0020】
空気調和システム100は、主として、3台の空気調和装置10と、それらを管理、制御する管理ユニット90とを備えている。
図1に示すように、各空気調和装置10は、1階の天井裏の空間CS1に配備されている。管理ユニット90は、1階の室内空間S1の側壁に固定されている。
【0021】
空気調和装置10は、冷媒として、微燃性の冷媒であるR32を使用している。R32は、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い「2Lクラス」と判断される冷媒である。R32が室内空間S1に漏洩して室内の冷媒濃度が高くなると、冷媒の有する可燃性から、燃焼事故が発生するおそれがある。この燃焼事故を防止することが要求されている。
【0022】
(2)詳細構成
(2-1)空気調和装置
図1に示す、第1空気調和装置10A、第2空気調和装置10B及び第3空気調和装置10Cは、基本的に同じ構成である。したがって、
図2では、これらの構成を空気調和装置10として説明する。
図2では、図の左側が上、図の右側が下となっており、天井85を挟んで、右側が室内空間S1、左側が天井裏の空間CS1である。
【0023】
なお、構成は同じであるが、第1空気調和装置10Aは3馬力、第2空気調和装置10B及び第3空気調和装置10Cは2馬力の装置である。言い換えると、第1空気調和装置10Aの容量は、第2空気調和装置10B及び第3空気調和装置10Cそれぞれの容量より大きい。このため、第1空気調和装置10Aの冷媒回路20に充填されている冷媒の量は、第2空気調和装置10B及び第3空気調和装置10Cそれぞれの冷媒回路20に充填されている冷媒の量よりも多い。
【0024】
空気調和装置10は、
図2に示すように、冷媒回路20と、1つの筐体40とを備えている。冷媒回路20は、主として、圧縮機21と、放熱器あるいは蒸発器として機能する熱源熱交換器22と、膨張弁23と、蒸発器あるいは放熱器として機能する利用熱交換器24と、四路切換弁25とを有している。この冷媒回路20には、上述の冷媒R32が充填されている、R32は、大気圧において空気よりも密度が大きい、可燃性の冷媒である。
【0025】
筐体40は、建物80内の天井裏の空間CS1において、図示しない梁から吊り下げられる形で固定、配置されている。筐体40は、冷媒回路20の全てを収容している。また、筐体40は、室内空間S1に露出する露出面41を有している。露出面41には、室内空間S1の空気を吸い込む吸込口41aと、その吸込口41aから吸い込まれた空気を室内空間S1に吹き出す吹出口41bと、が形成されている。筐体40内における空気の流れは、給気ファン31及び排気ファン32によって生成される。給気ファン31が作動すると、室内空間S1から吸込口41a、給気ファン31、利用熱交換器24、吹出口41bを順に流れ、再び室内空間S1に戻る空気の流れF1が生成される。この空気の流れF1は、筐体40内に設けられる第1空気流路31aを通る。言い換えると、第1空気流路31aは、室内空間S1から吸い込んだ空気を利用熱交換器24を通して室内空間S1に吹き出す空気流路である。一方、排気ファン32が作動すると、天井裏の空間CS1から排気ファン32熱源熱交換器22、と順に流れ、再び天井裏の空間CS1に戻る空気の流れF2が生成される(
図2参照)。この空気の流れF2は、筐体40内に設けられる第2空気流路32aを通る。言い換えると、第2空気流路32aは、天井裏の空間CS1から吸い込んだ空気を熱源熱交換器22を通して天井裏の空間CS1に吹き出す空気流路である。
【0026】
空気調和装置10は、
図3に示すように、さらに温度センサ92及び冷媒漏洩検知センサ94を有している。温度センサ92は、筐体40内に吸い込む室内空間S1の空気の温度を測る機器である。冷媒漏洩検知センサ94は、第1空気流路31aに配置され、冷媒回路20から冷媒が漏洩したことを検知する。冷媒漏洩検知センサ94は、筐体40内の所定場所における冷媒の濃度が閾値を上回ったときに、冷媒漏洩を示す信号を装置制御部11に送る。
【0027】
(2-2)管理ユニット
3台の空気調和装置10を管理、制御する管理ユニット90は、
図3に示すように、各空気調和装置10の装置制御部11と信号線によって接続され、それぞれの空気調和装置10を個別に管理、制御する。
【0028】
管理ユニット90は、主として、システム制御部91と、タッチパネル96と、ブザー97とを備えている。
【0029】
システム制御部91は、コンピュータにより実現されるものである。システム制御部91は、制御演算装置や記憶装置を備える。制御演算装置には、CPU又はGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。この管理ユニット90のシステム制御部91と、各空気調和装置10の装置制御部11とが協働して、空気調和システム100の制御部を構成する。
【0030】
タッチパネル96は、表示機能及び入力機能を併せ持つ画面を有するデバイスであり、画面上の表示を押すことで空気調和装置10に関する指示等を行うことができる。
【0031】
ブザー97は、室内空間S1に居る人に対して、音によって報知を行う機器である。
【0032】
管理ユニット90のシステム制御部91は、それぞれの装置制御部11に対して指示コマンドを送ることができる。システム制御部91は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれの運転状態及び停止状態を、個別に切り換える。また、システム制御部91は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれの冷房運転状態及び暖房運転状態を、個別に切り換える。
【0033】
また、管理ユニット90のシステム制御部91は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれの冷房運転あるいは暖房運転における設定温度を、個別に設定する。具体的には、タッチパネル96からユーザーに設定温度の入力をさせる。そして、システム制御部91から第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれの装置制御部11に設定温度の情報が送られると、各装置制御部11は、温度センサ92の測定値と設定温度とに基づいて、測定値が所定の設定温度近傍の範囲に維持されるように、必要に応じて圧縮機21などを一時的に止める。言い換えると、システム制御部91及び各装置制御部11から成る空気調和システム100の制御部は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれを、個別に、一時的に第1運転停止状態にする。システム制御部91及び各装置制御部11から成る空気調和システム100の制御部が行う、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれを、個別に、一時的に第1運転停止状態とする制御は、所謂サーモオフの制御のことである。サーモオフの制御とは、温度センサ92の測定値が設定温度(正確には、設定温度から0.5℃あるいは1.0℃ずらした温度)になった場合に、圧縮機21および排気ファン32の運転を停止して、給気ファン31を最低回転数で駆動させる運転のことを言う。
【0034】
(3)動作
上述のように、3台の空気調和装置10(第1空気調和装置10A、第2空気調和装置10B、第3空気調和装置10C)は、建物80の1階の室内空間S1を冷房あるいは暖房する。
【0035】
冷房運転時には、四路切換弁25が
図2に示す実線の状態に切り換えられる。各空気調和装置10の圧縮機21から高温高圧の冷媒が吐出され、熱源熱交換器22において凝縮する。熱源熱交換器22の内部を流れる冷媒は、排気ファン32の作動によって熱源熱交換器22の周囲を流れる空気(
図2の空気の流れF2を参照)との間で、熱交換を行う。熱源熱交換器22を経て液状態となった冷媒は、膨張弁23において膨張する。膨張弁23によって減圧された低温低圧の二相状態の冷媒は、利用熱交換器24において蒸発する。利用熱交換器24の内部を流れる冷媒は、給気ファン31の作動によって利用熱交換器24の周囲を流れる空気(
図2の空気の流れF1を参照)との間で、熱交換を行う。これにより、室内空間S1から取り込まれ吹出口41bから室内空間S1に吹き出される空気が冷却され、室内空間S1が冷房される。利用熱交換器24を経てガス状態となった冷媒は、圧縮機21に吸入され、圧縮機21において圧縮され、再び熱源熱交換器22に向けて吐出される。
【0036】
なお、上述のとおり、冷房運転において、空気調和装置10は、天井裏の空間CS1に、熱源熱交換器22で冷媒から熱を奪った空気を放出する(
図2の点線の空気の流れF2を参照)。
【0037】
暖房運転時には、四路切換弁25が
図2に示す点線の状態に切り換えられる。各空気調和装置10の圧縮機21から高温高圧の冷媒が吐出され、利用熱交換器24において凝縮する。利用熱交換器24の内部を流れる冷媒は、給気ファン31の作動によって利用熱交換器24の周囲を流れる空気(
図2の空気の流れF1を参照)との間で、熱交換を行う。これにより、室内空間S1から取り込まれ吹出口41bから室内空間S1に吹き出される空気が加熱され、室内空間S1が暖房される。利用熱交換器24で放熱・凝縮し、液状態となった冷媒は、膨張弁23において膨張する。膨張弁23によって減圧された低温低圧の二相状態の冷媒は、熱源熱交換器22において蒸発する。熱源熱交換器22の内部を流れる冷媒は、排気ファン32の作動によって熱源熱交換器22の周囲を流れる空気(
図2の空気の流れF2を参照)との間で、熱交換を行う。熱源熱交換器22を経てガス状態となった冷媒は、圧縮機21に吸入され、圧縮機21において圧縮され、再び利用熱交換器24に向けて吐出される。
【0038】
なお、上述のとおり、暖房運転において、空気調和装置10は、天井裏の空間CS1に、熱源熱交換器22で冷媒に熱を奪われた空気を放出する(
図2の点線の空気の流れF2を参照)。
【0039】
(4)各空気調和装置に充填される微燃性冷媒R32の充填量
(4-1)
上述のように、空気調和装置10の冷媒回路20には微燃性の冷媒が充填されているため、空気調和装置10からの冷媒漏洩が生じたときにも室内空間S1において燃焼事故が起こらないように対策する必要がある。
【0040】
いずれかの空気調和装置10の冷媒回路20から室内空間S1に冷媒が漏洩した場合にも、燃焼事故が発生しないように、ここでは、ISO817で定められたLFL(Lower Flammability Limit;燃焼下限界または燃焼下限濃度)を使って、空気調和装置10の冷媒の充填量を決めている。LFLは、冷媒と空気を均一に混合させた状態で火炎を伝播することが可能な冷媒の最小濃度である。LFLは、冷媒毎に決まる値である。R32、R1234yf、R1234ze(E)など、それぞれの冷媒のLFLは、別々の固有の値になっている。
【0041】
冷媒漏洩時の冷媒が滞留することになる室内空間S1の床面積を、A(m2)、
室内空間S1の床面86から空気調和装置10の吸込口41aまでの高さ、及び、室内空間S1の床面86から空気調和装置10の吹出口41bまでの高さのうち、小さいほうの高さを、H0(m)、
冷媒回路20に充填される冷媒の充填量を、M(kg)、
冷媒の燃焼下限濃度を、LFL(kg/m3)、
としたときに、冷媒の充填量M(kg)は、
式1:M<(1/SF)×LFL×A×H0
を満たす。
【0042】
ここで、
図2に示すように、空気調和装置10の吸込口41aも吹出口41bも室内空間S1の天井85の高さ位置と同じであるため、H
0(m)は、
図1に示すように室内空間S1の床面86から天井85までの高さ距離になっている。室内空間S1の床面積A(m
2)は、
図1に示す床面86の面積である。
【0043】
式1のSFは、安全率である。この安全率SFとして、1、4、6などを選択することができる。ここでは、SF=1を選択する。
【0044】
以上のように、3台の空気調和装置10(第1空気調和装置10A、第2空気調和装置10B、第3空気調和装置10C)それぞれの冷媒回路20に充填する冷媒の量M(kg)が決められている。それぞれの冷媒回路20に充填される冷媒の充填量M(kg)は、式1を満たすため、いずれかの空気調和装置10から充填されている全ての冷媒が漏洩したとしても、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることはない。
【0045】
(4-2)
それぞれの空気調和装置10の冷媒の充填量M(kg)は、上記のとおり決定されている。一方、3台の空気調和装置10それぞれの冷媒の充填量M(kg)の合計量ΣM(kg)については、空気調和システム100では、以下の式2を満たすように決めている。
式2:(1/SF)×LFL×A×H0<ΣM
【0046】
また、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれに充填される冷媒の充填量のうち、最大の量を、Mmax(kg)、としたときに、
式3:Mmax<(1/SF)×LFL×A×H0
を満たすようにしている。上述の式1と同じく、SFは、安全率であり、SF=1を選択している。ここでは、第2空気調和装置10B及び第3空気調和装置10Cそれぞれの冷媒回路20に充填されている冷媒の量よりも、第1空気調和装置10Aの冷媒回路20に充填されている冷媒の量が多いため、Mmax(kg)は、第1空気調和装置10Aの冷媒回路20に充填されている冷媒の量である。
【0047】
言い換えると、第1空気調和装置10Aの冷媒回路20、あるいは、それよりも冷媒の充填量が少ない第2空気調和装置10B又は第3空気調和装置10Cの冷媒回路20から冷媒が漏洩しても、1つの空気調和装置10からだけ冷媒が漏洩している限り、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることはない。
【0048】
一方、2つ、あるいは、3つの空気調和装置10から仮に同時に冷媒漏洩が生じた場合には、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えてしまう。しかし、ここでは3つの空気調和装置10それぞれは別体であり、それぞれ独立しているため、いずれかの空気調和装置10が冷媒漏洩を起こしたとしても、それが他の空気調和装置10に影響を与えることは殆どなく、実際には、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超える可能性は非常に小さい。
【0049】
しかし、もしも複数の空気調和装置10の冷媒回路20から同時に冷媒漏洩が生じた場合、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることも想定される。これに鑑み、空気調和システム100では、以下に示す対応を行っている。
【0050】
(5)冷媒漏洩チェック及び冷媒漏洩時の対応
図4に、空気調和装置10の冷媒回路20から冷媒が漏洩していないかを確認し、冷媒漏洩が生じているときに各種の対応を行う、管理ユニット90のシステム制御部91による制御フローを示す。システム制御部91は、
図4に示す各種の対応を、各空気調和装置10の装置制御部11と協働して行う。
【0051】
まず、ステップS11において、システム制御部91は、冷媒漏洩時に冷媒漏洩に対応した処理を行うフラグが立っているか否かを判定する。このフラグは、空気調和システム100の建物80への設置時に行う初期設定や、その後の設定変更において、必要に応じて立てられるフラグである。管理ユニット90のタッチパネル96に表示される初期設定などの設定画面において、空気調和システム100の据付業者あるいは空気調和システム100のユーザーが、冷媒漏洩時の処理が必要か否かを判断し、フラグを立てるか立てないかを選択する。言い換えると、管理ユニット90のタッチパネル96は、冷媒漏洩が検知されたときの処理を行うか行わないかを選択するための選択部としての役割を果たす。例えば、上記の式2を満たす本実施形態の空気調和システム100では、複数の空気調和装置10の冷媒回路20から同時に冷媒漏洩が生じた場合、室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることも想定されるので、フラグが立てられる。一方、仮に室内空間S1の床面86の面積が十分に大きく、全ての空気調和装置10から冷媒が漏洩したとしても室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることはないのであれば、フラグを立てる必要はなく、フラグは降ろされた状態となる。
【0052】
ステップS11において、フラグが立っている場合、ステップS12に移行する。ステップS12では、いずれかの空気調和装置10で冷媒漏洩が検知されているか否かを判定する。ここでは、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれの冷媒漏洩検知センサ94からの漏洩検知信号の有無を確認し、いずれかの冷媒漏洩検知センサ94が漏洩検知信号を送ってきている場合、ステップS13に移行する。
【0053】
ステップS13では、冷媒漏洩が検知された空気調和装置10の数を確認する。具体的には、ステップS13で、所定台数(M台)以上の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されているのか、それとも、所定台数(M台)未満の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されているのかを判定する。ここでは、空気調和装置10の全数が3であり、所定台数は2である。所定台数は、予め、上記の室内空間S1の床面積A(m2)や高さH0(m)、各空気調和装置10の冷媒回路20に充填されている冷媒の量に基づいて設定されている数である。
【0054】
なお、所定台数(M台)は、空気調査装置10を天井裏の空間CS1に据え付けした後、据付業者が管理ユニット90のタッチパネル96を操作することによって入力され、システム制御部91の記憶装置に記憶される数字であってもよい。例えば、空気調和システム100の設計会社が、据付業者に所定台数(M台)を指示し、それを据付業者が管理ユニット90において手入力する形態が想定される。
【0055】
また、所定台数(M台)は、空気調査装置10を天井裏の空間CS1に据え付けした後、据付業者が管理ユニット90のタッチパネル96を操作することによって入力される床面積A(m2)や高さH0(m)と、システム制御部91が装置制御部11から受信する各空気調和装置10の機種名等の情報から、各空気調和装置10に充填される冷媒量の合計量を得て、それから、何台の空気調和装置で冷媒漏洩が生じたら式2を満たすかを演算して求めてもよい。この場合、管理ユニット90は、空気調和装置の各機種の各種情報を予め記憶しているか、ネットワークを介してクラウドの上位サーバから必要な情報を受信するか、いずれかの構成を具備していることが好ましい。
【0056】
ステップS13で、所定台数以上の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されていると判定された場合、ステップS14に移行する。ステップS14では、全ての空気調和装置10の圧縮機21を停止状態とし、さらに、給気ファン31及び排気ファン32を運転状態とする。言い換えると、ステップS14では、運転中であった空気調和装置10については、圧縮機21を止め、給気ファン31及び排気ファン32は継続して作動させる。また、ステップS14では、停止中であった空気調和装置10については、圧縮機21の作動を禁止するとともに、止まっている給気ファン31及び排気ファン32を作動させる。
【0057】
ステップS14に続くステップS18では、管理ユニット90において表示機能を担うタッチパネル96に、冷媒漏洩が生じていることと、それに伴って所定の空気調和装置10の運転を止めるといった対応を行っていることとを表示する。また、ステップS18で、システム制御部91は、ブザー97を鳴らし、室内空間S1に居る人に異常を知らせる。
【0058】
ステップS13で、所定台数未満の空気調和装置10においてのみ冷媒漏洩が検知されていると判定された場合、ステップS15に移行する。ステップS15では、冷媒漏洩が検知された運転中の空気調和装置10がある場合、その空気調和装置10の圧縮機21を停止させる一方、給気ファン31及び排気ファン32は継続して動かし続ける。さらに、ステップS16において、システム制御部91は、冷媒漏洩が検知された停止中の空気調和装置10がある場合、その空気調和装置10の圧縮機21を運転禁止状態にする一方、給気ファン31及び排気ファン32は作動させる。続けて、システム制御部91は、ステップS17において、冷媒漏洩が検知されていない停止中の空気調和装置10の給気ファン31を動かし始める。また、システム制御部91は、冷媒漏洩が検知されていない停止中の空気調和装置10について、運転許容状態とする。残りの、冷媒漏洩が検知されていない運転中の空気調和装置10については、それまでの運転を継続させる。
【0059】
ステップS17に続くステップS18では、タッチパネル96に、冷媒漏洩が生じていることと、それに伴って所定の空気調和装置10の運転を止めるといった対応を行っていることとを表示する。また、ステップS18で、システム制御部91は、ブザー97を鳴らし、室内空間S1に居る人に異常を知らせる。
【0060】
なお、最初のステップS11においてフラグが立っていなければ、ステップS12以降の冷媒漏洩の確認や冷媒漏洩時の対応制御は行われない。言い換えると、室内空間S1の床面86の面積が十分に大きく、全ての空気調和装置10から冷媒が漏洩したとしても室内空間S1の冷媒濃度がLFLを超えることはないとして、据え付け業者やユーザーがフラグを立てないという選択を行った場合、システム制御部91は、空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたか否かに関わらず、第1~第3空気調和装置10A,10B,10C全ての運転継続状態あるいは運転許容状態を維持する。
【0061】
(6)特徴
(6-1)
上記の実施形態の空気調和システム100では、管理ユニット90のシステム制御部91は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cのうち少なくとも1台の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときに、冷媒漏洩に対応した処理を行う。具体的には、
図4に示すステップS15及びステップS16に示すように、冷媒漏洩が検知された運転中の空気調和装置10を運転停止状態にし、冷媒漏洩が検知された停止中の空気調和装置10を運転禁止状態にする。一方、
図4のステップS17に示すように、冷媒漏洩が検知されなかった、それ以外の残りの空気調和装置10については、そのまま運転継続状態あるいは運転許容状態にしている。これは、同一の室内空間S1を空気調和する第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cそれぞれを、1つの筐体40に冷媒回路20が収容された装置としているためである。3台の空気調和装置10がそれぞれ個別の冷媒回路20を有しているため、空気調和システム100では、いずれかの空気調和装置10で冷媒漏洩が検知されても、その空気調和装置10の冷媒漏洩箇所を通じて他の空気調和装置10の冷媒が漏れることは無い。これに鑑み、空気調和システム100では、冷媒漏洩の検知時に、冷媒漏洩が検知された空気調和装置10を運転停止状態あるいは運転禁止状態にする一方、それ以外の残りの空気調和装置10を運転継続状態あるいは運転許容状態にしている。これにより、空調対象の室内空間S1の快適性を保つことができている。
【0062】
(6-2)
上記の実施形態の空気調和システム100では、管理ユニット90のシステム制御部91は、
図4のステップS15に示すように、冷媒漏洩が検知された空気調和装置10を運転停止状態にするときに、圧縮機21を停止させ、給気ファン31を動かし続ける。このため、冷媒が漏洩した室内空間S1において、給気ファン31による空気流れによって冷媒が拡散される。このため、室内空間S1において漏洩した冷媒が偏在することが抑制され、室内空間S1の部分的な冷媒濃度の上昇が抑えられる。
【0063】
(6-3)
上記の実施形態の空気調和システム100では、管理ユニット90のシステム制御部91は、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cのうち少なくとも1つの空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときに、さらに、別の空気調和装置10の給気ファン31を動かす。具体的には、冷媒漏洩が検知された空気調和装置10以外の残りの空気調和装置10のうち、運転停止状態にある空気調和装置10の給気ファン31が作動する(
図4のステップS17を参照)。
【0064】
空気調和システム100では、冷媒漏洩時に、冷媒漏洩が検知された空気調和装置10の給気ファン31に加え、停止中の空気調和装置10の給気ファン31も動き始めるため、室内空間S1において漏洩した冷媒が偏在することがさらに抑制され、室内空間S1の部分的な冷媒濃度の上昇が抑えられる。
【0065】
(6-4)
上記の実施形態の空気調和システム100では、上述のように、建物80への設置時に行う初期設定などにおいて、管理ユニット90のタッチパネル96を用いて、冷媒漏洩時の処理が必要か否かを判断し、フラグを立てるか立てないかを据付業者やユーザーが選択することができる。選択部として機能するタッチパネル96によって、冷媒漏洩が検知されたときの処理を行わない選択が行われた場合、フラグは立たない。すると、
図4に示すステップS12以降の冷媒漏洩時の対応を行う処理には進まず、空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときにも、全ての空気調和装置10(第1~第3空気調和装置10A,10B,10C)は、運転継続状態あるいは運転許容状態が維持される。
【0066】
例えば、3台の空気調和装置10によって空気調和を行う室内空間S1の床面積が十分に大きいときには、全ての空気調和装置10から冷媒が漏洩したとしても、室内空間S1において冷媒濃度が燃焼下限濃度に至らない。この場合には、冷媒漏洩があったとしても、運転に必要な冷媒が冷媒回路20に残っている限り、空気調和装置10の運転を継続、あるいは許容状態にすることができる。これに鑑み、上記の実施形態の空気調和システム100では、システム制御部91は、空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたか否かに関わらず、第1~第3空気調和装置10A,10B,10C全てを、運転継続状態あるいは運転許容状態にしている。
【0067】
(6-5)
上記の実施形態の空気調和システム100では、
図4のステップS18に示すように、管理ユニット90において報知部として機能するタッチパネル96及びブザー97が、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cのうち少なくとも1つの空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときに、冷媒漏洩に関する報知を行う。これにより、室内空間S1に居る人などに、冷媒漏洩の事実を周知させることができる。
【0068】
(6-6)
上記の実施形態の空気調和システム100では、管理ユニット90のシステム制御部91は、複数の空気調和装置10のうちM(Mは、2以上の整数)台以上の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときに、複数の空気調和装置10全てを、運転停止状態あるいは運転禁止状態にしている(
図4のステップS13及びステップS14を参照)。具体的には、システム制御部91は、3台の空気調和装置10のうち、2台以上の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されている場合に、全ての空気調和装置10の圧縮機21を停止し、給気ファン31及び排気ファン32だけを作動させている。
【0069】
例えば、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cによって室内空間S1を空気調和する空気調和システム100において、まず第1空気調和装置10Aで冷媒漏洩が生じ、その第1空気調和装置10Aを運転停止状態にしたとする。その後、第2空気調和装置10Bでも冷媒漏洩が生じた場合、2つの空気調和装置10A,10Bからの冷媒漏洩によって室内空間S1の冷媒濃度が許容範囲内で上昇した状態になる。ここで、もしも第3空気調和装置10Cでも冷媒漏洩が生じると、室内空間S1の容積によっては、室内空間S1における冷媒濃度が燃焼下限濃度を超える。すると、そのような事態を避けるべく、予め対策を打つことが好ましい。これに鑑み、上記の実施形態の空気調和システム100では、第1~第3空気調和装置10A,10B,10Cのうち2台以上の空気調和装置10において冷媒漏洩が検知されたときに、第1~第3空気調和装置10A,10B,10C全てを、運転停止状態あるいは運転禁止状態にしている。
【0070】
(7)変形例
(7-1)変形例1A
上記の実施形態の空気調和システム100では、冷房運転と暖房運転とを切り換えることができる空気調和装置10を採用しているが、室内空間S1に対して、冷房運転及び暖房運転のいずれか一方だけを行う空気調和装置を設置してもよい。
【0071】
(7-2)変形例1B
上記の実施形態の空気調和システム100では、全ての空気調和装置10に冷媒漏洩検知センサ94を配備しているが、冷媒漏洩を検知するセンサは、必ずしも全ての空気調和装置10に配備されていなくてもよい。但し、少なくとも冷媒回路20の容量が大きい空気調和装置10(上記の実施形態では、第1空気調和装置10A)には、冷媒漏洩検知センサを備えさせることが好ましい。
【0072】
(7-3)変形例1C
上記の実施形態の空気調和装置10では、冷媒回路20に、冷媒として、R32を充填している。しかし、上記の一体型の空気調和装置10を利用した技術は、燃焼性を有する他の冷媒が冷媒回路20に充填されている場合にも有効である。いわゆる微燃性を有する冷媒である、R32、R1234yf、R1234ze若しくはR744の単一冷媒または該冷媒を含む混合冷媒が充填されている場合にも、上記の技術は有効である。なお、上記R32はジフルオロメタン(HFC-32)であり、R1234yfは2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)であり、R1234zeは1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)であり、R744は二酸化炭素である。
【0073】
また、冷媒回路20に充填され冷媒回路20を流れる冷媒として、微燃性の冷媒のほか、弱燃性の冷媒あるいは強燃性の冷媒も想定される。微燃性の冷媒は、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い「2Lクラス」と判断される冷媒である。弱燃性の冷媒は、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い「2クラス」と判断される冷媒である。強燃性の冷媒は、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に従い「3クラス」と判断される冷媒である。
【0074】
ここで、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格は、可燃性ガスの評価基準に関する米国の規格である。世界各国で化学物質の規制が為されており、規制される内容の一つに化学物質の燃焼性が挙げられる。各国で規格を設け、各々の評価基準のもと、気体においては可燃性ガスかどうかの分類が行われている。日本の高圧ガス保安法では、可燃性ガスの判断基準として、爆発限界の値が用いられている。可燃性ガスの評価基準は、米国の規格ではASHRAE34、DOT、欧州の規格ではEN378-1、CLP規制、国際的な規格ではGHS、ISO10156が挙げられる。米国ANSI/ASHRAE34-2013規格に相当する欧州の規格は、例えば、DIN EN378-1(2008)である。ここでも、米国ANSI/ASHRAE34-2013規格と同様の「Class3:強燃性」、「Class2:弱燃性」、「Class2L:微燃性」が規定されている。また、ISO/FDIS(Final Draft International Standard)817(2013)においても、同様の「Class3:強燃性」、「Class2:弱燃性」、「Subclass2L:微燃性」が規定されている。
【0075】
(7-4)変形例1D
上記の実施形態の空気調和システム100では、3台の空気調和装置10によって室内空間S1を空気調和しているが、言うまでもなく、4台以上の空気調和装置によって対象空間を空気調和してもよい。
【0076】
(7-5)変形例1E
上記の実施形態の空気調和システム100では、3台の空気調和装置10の筐体40を、建物80内の天井裏の空間CS1に固定、配置する形式のものを例示して説明したが、筐体の背面が室内と室外を区切る壁に対向して配置される床置き型の空気調和装置、いわゆるウォールスルー型の空気調和装置であってもよい。
【0077】
(7-6)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0078】
10(10A,10B,10C) 空気調和装置
20 冷媒回路
21 圧縮機
22 熱源熱交換器(放熱器あるいは蒸発器)
23 膨張弁
24 利用熱交換器(蒸発器あるいは放熱器)
31 給気ファン(送風機)
32 排気ファン
40 筐体
80 建物
90 管理ユニット(管理部)
96 タッチパネル(選択部;報知部)
97 ブザー(報知部)
100 空気調和システム
S1 室内空間
CS1 天井裏の空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】