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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】通信端末、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/72 20210101AFI20240710BHJP
【FI】
H04M1/72
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019224018
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093660
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】皿谷 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】足立 博之
【審査官】山中 実
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02348339(GB,A)
【文献】特開2002-050994(JP,A)
【文献】特開2019-075717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末であって、
前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得部と、
記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて前記衛星への音声送信中に算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定部と、
前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知制御部とを備える通信端末。
【請求項2】
前記通信状況取得部は、前記通信状況情報として、前記通信端末が前記衛星から受信する電波の強度を取得する請求項1に記載の通信端末。
【請求項3】
前記通信端末が捕捉している前記衛星の位置を示す衛星位置情報を、当該衛星から取得する衛星位置取得部と、
前記通信端末の位置を示す端末位置情報を取得する端末位置取得部と、
前記衛星位置情報および前記端末位置情報から、前記通信端末に対する前記衛星の方向を算出する算出部とをさらに備える請求項1または2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記算出部が算出した前記方向を表示する表示装置をさらに備える請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記通信端末は、前記衛星に対して音声送信を行うためのPTTスイッチをさらに備え、
前記衛星位置取得部は、前記PTTスイッチの操作時に、前記衛星位置情報を取得する請求項3または4に記載の通信端末。
【請求項6】
低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末の制御方法であって、
前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得ステップと、
記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて前記衛星への音声送信中に算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、
前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知ステップとを含む制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の通信端末としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記通信状況取得部、および前記報知制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星通信システムにおいて衛星と通信を行う通信端末、当該通信端末の制御方法、および当該通信端末を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衛星無線端末通信システムに用いられる無線端末などが開示されている。また、特許文献1には、衛星無線端末通信システムにおいて、衛星信号が高層建築物によって遮断される可能性があるという問題について記載されている。さらに、特許文献1には、衛星無線端末通信システムで使用される周波数帯域を地上で再使用することで上記の問題に対処できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-533208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低軌道(LEO、Low Earth Orbit)衛星通信システムにおいては、衛星が地球の周囲を低軌道で周回している。このため、特許文献1に開示されている技術では、高層建築物などの遮蔽物による衛星通信への影響を十分に低減できない。
【0005】
また、低軌道衛星通信システムにおいては、地球側に存在する通信端末から見通すことができる上空範囲内に位置する低軌道衛星の個数が数機程度と少ないうえに、低軌道衛星の位置が時々刻々と変わる。このため、通信端末は、建築物や山岳などの遮蔽物により低軌道衛星と通信できない可能性が多々生じ得る。ところが、通信端末のユーザは、低軌道衛星の位置が見えないことに加え、相手の側における通信端末の状況が分からないため、通信状況が悪化した場合に、その原因が自分の側にあるのか相手の側にあるのかが分からないという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、低軌道衛星との通信状況が悪化した場合に、その旨をユーザに報知する通信端末などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る通信端末は、低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末であって、前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得部と、前記衛星への音声送信中に、前記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定部と、前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知制御部とを備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末の制御方法であって、前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得ステップと、前記衛星への音声送信中に、前記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知ステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る通信端末などによれば、低軌道衛星との通信状況が悪化した場合に、その旨をユーザに報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る通信端末を備える衛星通信システムの概要を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る通信端末と通信する衛星の通信エリアを示す模式図である。
図3】実施形態1に係る通信端末の要部の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態1に係る通信端末が衛星の方向および距離をディスプレイに表示させる処理の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態1に係る通信端末から衛星への通信状況が悪化した場合にスピーカからビープ音を出力させる処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態2に係る通信端末の要部の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態3に係る通信端末の要部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施形態1に係る通信端末1を備える低軌道衛星通信システム100の概要を示す模式図である。図1に示すように、低軌道衛星通信システム100は、衛星110、120、および通信端末1、2を備える。なお、図1に示されている衛星110、120、および通信端末1、2は、低軌道衛星通信システム100の一部であり、低軌道衛星通信システム100はさらに多くの衛星および通信端末を備えていてもよい。
【0013】
衛星110、120は、地球表面から2000km以下の高度に位置し、1時間~2時間程度で地球を1周する低軌道衛星である。衛星110、120は、通信端末1、2と通信する機能、および、衛星同士で通信する機能を有する。
【0014】
通信端末1、2は、衛星110、120と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末である。通信端末1、2は、PTT(Push To Talk)方式で音声通信を行う。
【0015】
図1に示すように、通信端末1が衛星110を捕捉し、通信端末2が衛星120を捕捉している場合、通信端末1と通信端末2との通信は、通信端末1と衛星110とが通信し、衛星110と衛星120とが通信し、衛星120と通信端末2とが通信することにより実現される。つまり、低軌道衛星通信システム100は、地上の基地局などを使用せず、衛星110、120のみを介して通信端末1、2間の通信を行う。
【0016】
図2は、衛星110、120の通信エリアを示す模式図である。衛星110、120はそれぞれ、地球との位置関係に応じた通信エリアA、Bを有する。通信端末1、2は、自身が存在する通信エリアに対応する衛星110、120を捕捉し、通信を行う。
【0017】
図2に示すように、通信エリアA、Bは、オーバーラップする重複エリアCを有する。このため、通信端末1、2は、その位置によっては複数の衛星を捕捉可能である。具体的には、通信端末1、2は、重複エリアCに存在する場合には、衛星110、120のそれぞれから受信する電波強度に基づいて、衛星110、120のいずれか一方を捕捉する。その後、衛星110、120のうち、捕捉した一方から受信する電波強度が、他方から受信する電波強度と比較して十分高いと判断できる限りは、当該一方を捕捉した状態を継続する。
【0018】
なお、低軌道衛星通信システム100は、例えば静止軌道を周回する衛星(静止衛星)を用いる衛星通信システムと比較して、通信の遅延が低減される。一方で、静止衛星と比較すると、個々の衛星の通信エリアは狭いため、衛星および/または通信端末の移動に伴い、通信端末と通信を行う衛星が切り替わる頻度が高くなる。
【0019】
説明を簡略化するため、以下では特に必要がない限りは通信端末1についてのみ説明する。また、通信端末1が捕捉する衛星を衛星110とする。
【0020】
図3は、通信端末1の要部の構成を示すブロック図である。図3に示すように、通信端末1は、アンテナ10、制御部20、端末位置センサ30、PTTスイッチ35、ディスプレイ40(表示装置)、スピーカ50および記憶部60を備える。また、通信端末1は、音声の入力を受け付けるマイク、入力操作を受け付けるボタンなどの、通信端末が通常備える機能を有している。
【0021】
アンテナ10は、衛星110との間での通信を行うためのアンテナである。アンテナ10は、ホイップアンテナであってもよいし、あるいは、別の種類のアンテナであってもよい。
【0022】
端末位置センサ30は、地球上における通信端末1の位置を検出するセンサである。端末位置センサ30は、例えばGPS(Global Positioning System)センサである。
【0023】
PTTスイッチ35は、衛星110に対して音声送信を行うための操作部である。PTTスイッチ35が操作されると、通信端末1は、捕捉している衛星110に対して、音声通信の接続を要求する信号を送信する。そして、衛星110から、音声通信の接続を許可する信号を受信すると、通信端末1は音声送信可能な状態となる。この状態において通信端末1に入力された音声は、衛星110を介して、予め設定されたトークグループに含まれる通信端末へ一斉に送信される。
【0024】
なお、同じトークグループに通信端末1、2が含まれている場合、通信端末1のPTTスイッチ35が操作されている期間において、通信端末2のPTTスイッチ35が操作されても、通信端末2が音声送信可能な状態にならないように衛星が制御している。つまり、同じトークグループ内で複数台の通信端末が同時に音声送信可能な状態になることはない。
【0025】
ディスプレイ40は、後述する算出部23が算出した、通信端末1に対する衛星110の方向を表示する。ディスプレイ40は、例えば液晶ディスプレイ、または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。スピーカ50は、音声出力装置である。記憶部60は、制御部20による通信端末1の制御に必要となる各種情報を記憶する記憶装置である。
【0026】
制御部20は、通信端末1の動作を制御する。図3に示すように、制御部20は、衛星位置取得部21、端末位置取得部22、算出部23、通信状況取得部24、判定部25、および報知制御部26を備える。また、制御部20は、衛星を捕捉するための機能、音声通信を行うための機能(符号化、復号化、セッション制御など)などの、通信端末の制御部が通常備える機能を有している。
【0027】
衛星位置取得部21は、通信端末1が捕捉している衛星110の位置を示す情報(以下では「衛星位置情報」と称する)を、リアルタイムに(例えば1秒ごとに)、衛星110から取得する。さらに、衛星位置取得部21は、PTTスイッチ35の操作時に、衛星位置情報を取得する。このため、音声送信を開始するタイミングで、当該音声送信に用いる衛星の衛星位置情報を取得できる。
【0028】
端末位置取得部22は、端末位置センサ30から、通信端末1の位置を示す情報(以下では「端末位置情報」と称する)を取得する。端末位置取得部22が端末位置情報を取得するタイミングは、特に限定されるものではないが、衛星位置取得部21が衛星位置情報を取得するタイミングと同じであってよい。
【0029】
算出部23は、衛星位置取得部21が取得した衛星位置情報、および、端末位置取得部22が取得した端末位置情報から、通信端末1に対する衛星110の方向を算出する。ここでいう「方向」は、地表面における方位のみであってもよく、地表面に対する仰角を含んだ3次元の方向であってもよい。算出部23は、算出した衛星110の方向を示す情報をディスプレイ40に表示させる。当該情報は、例えば、文字列および画像の少なくともいずれかである。
【0030】
さらに、算出部23は、衛星位置取得部21が取得した衛星位置情報、および、端末位置取得部22が取得した端末位置情報から、通信端末1と衛星110との距離をさらに算出してもよく、また、当該距離を示す情報をディスプレイ40に表示させてもよい。
【0031】
通信状況取得部24は、通信端末1と衛星110との通信状況を示す情報(以下では「通信状況情報」と称する)を、衛星110から取得する。
【0032】
通信状況情報の好ましい典型例は、通信端末1が衛星110から受信する電波の強度であるが、これに限定されるものではない。
【0033】
判定部25は、通信端末1から衛星110への音声送信中に、(1)通信状況取得部24が取得した通信状況情報、(2)衛星110から受信した信号の復号状況、および、(3)衛星110から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況、の少なくともいずれかに基づいて、通信端末1と衛星110との通信状況に関する指標(以下では「通信指標」と称する)を算出する。上記(2)の復号状況とは、より詳しくは、衛星110から受信した信号が正常に復号されている状況にあるか否かである。上記(3)の実行可能状況とは、より詳しくは、衛星110から受信した信号に基づいて音声通信が実行可能なレベルにあるか否かである。
【0034】
そして、判定部25は、通信指標が所定条件を満たすか否かを判定する。通信状況の良好度合と通信指標とが比例する場合、判定部25は、通信指標が所定の閾値未満であることを所定条件とすればよい。所定の閾値は、例えば、(1)電波強度が基準より低い、(2)復号誤り率が基準より高い、(3)音声通信が実行可能レベルにない、等の原因により通信端末1での音声の聞き取りが困難となるレベルに通信状況が悪化するときの値に設定されることが好ましい。
【0035】
報知制御部26は、判定部25にて通信指標が所定条件を満たすと判定した場合、その旨を通信端末1のユーザに報知する。報知形態の典型例は、スピーカ50からの所定のビープ音の出力である。
【0036】
図4は、通信端末1が衛星110の方向および距離をディスプレイ40に表示させる処理(制御方法)の一例を示すフローチャートである。まず、衛星位置取得部21が衛星位置情報を取得する(S11、衛星位置取得ステップ)。次に、端末位置取得部22が端末位置情報を取得する(S12、端末位置取得ステップ)。S11およびS12の実行順序は限定されるものではなく、また並列に実行されてもよい。
【0037】
次に、算出部23は、通信端末1に対する衛星110の方向および距離を算出する(S13、算出ステップ)。最後に、算出部23は、算出した衛星110の方向および距離をディスプレイ40に表示させる(S14)。
【0038】
なお、図4に示した例では、S14において、算出部23は、衛星110の方向および距離を算出してディスプレイ40に表示させている。しかし、上述したとおり、算出部23は、衛星110の方向のみを算出してディスプレイ40に表示させてもよい。
【0039】
図5は、通信端末1と衛星110との通信状況が悪化した場合にスピーカ50からビープ音を出力させる処理の一例を示すフローチャートである。まず、通信状況取得部24が、通信状況情報を衛星110から取得する(S21、通信状況取得ステップ)。次に、判定部25は、通信指標を算出し、当該通信指標が所定条件を満たすか否かを判定する(S22、判定ステップ)。通信指標が所定条件を満たす場合(S22でYES)、報知制御部26は、スピーカ50にビープ音を出力させる(S23、報知ステップ)。一方、通信指標が所定条件を満たさない場合(S22でNO)、処理は終了する。
【0040】
(効果)
一般に、衛星通信システムにおいて、通信状況が良好であるためには、衛星と通信端末との間に遮蔽物が存在しないことが重要である。しかし、従来の通信端末においては、当該通信端末が捕捉している衛星の位置を把握できない。このため、遮蔽物になり得る高層建築物または山岳などが近傍に複数存在する状況において通信状況が悪化した場合、ユーザはこれらの高層建築物または山岳などのうち、いずれが遮蔽物となっているのかを把握できなかった。
【0041】
このとき、スマートフォンのアプリなどを用いれば、衛星の位置を確認することは可能である。しかし、衛星通信システムを使用する状況においては、必ずしもスマートフォンによる通信が可能であるとは限らない。また、ユーザの利便性の観点から、通信端末以外の装置を併用することなく衛星の位置を確認可能であることが好ましい。
【0042】
これに対して、通信端末1によれば、ユーザは、通信端末1が捕捉している衛星110の方向をリアルタイムに把握できる。衛星110の方向が把握できれば、ユーザは、通信端末1と衛星110との間に遮蔽物が存在するか否かを把握することが可能となり、その結果、ユーザ自身の位置を移動するなどの対応を取ることができる。
【0043】
また、通信端末1によれば、通信指標が所定条件を満たす場合、すなわち通信端末1から衛星110への通信状況が悪化した場合、その旨がユーザに報知される。よって、ユーザは、通信状況が悪化している場合に、その原因が自身の側にあることを認識することができる。したがって、ユーザは、通信状況が悪化した原因が不明であることに起因して生じるストレスを解消できる。
【0044】
また、ユーザが、通信端末1と衛星110との間に遮蔽物が存在することを把握している場合には、ユーザ自身の位置を移動するなどの対応を取ることができる。
【0045】
また、通信端末1によれば、ユーザがディスプレイ40を確認せずに通信端末1を運用していた場合であっても、ビープ音が出力されることによりディスプレイ40を確認する契機を与えることができる。
【0046】
なお、上述した例では、算出部23は、衛星110の方向を、ディスプレイ40に表示させることを説明したがこれに限定されるものではない。算出部23は、衛星110の方向をディスプレイ40に表示させるとともに、または当該方向をディスプレイ40に表示させる代わりに、方向を示す音声をスピーカ50から出力させてもよい。
【0047】
また、上述した例では、報知制御部26は、通信端末1と衛星110との通信状況が悪化した場合に、スピーカ50からビープ音を出力させることを説明したがこれに限定されるものではない。報知制御部26は、スピーカ50からビープ音を出力させるとともに、または当該ビープ音を出力させる代わりに、通信状況が悪化した旨をディスプレイ40に表示させてもよい。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
図6は、実施形態2に係る通信端末3の要部の構成を示すブロック図である。図6に示すように、通信端末3において、制御部20は、衛星位置取得部21、端末位置取得部22、および算出部23を備えるが、通信状況取得部24、判定部25および報知制御部26を備えない。
【0050】
通信端末3においても、ユーザは、通信端末3が捕捉している衛星110の方向をリアルタイムに把握できる。よって、ユーザは、通信端末3と衛星110との間に遮蔽物が存在する場合には、当該遮蔽物により通信が遮断されないよう、ユーザ自身の位置を移動するなどの対応を取ることができる。
【0051】
〔実施形態3〕
本発明のさらなる他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0052】
図7は、実施形態3に係る通信端末4の要部の構成を示すブロック図である。図7に示すように、通信端末4において、制御部20は、通信状況取得部24、判定部25および報知制御部26を備えるが、衛星位置取得部21、端末位置取得部22、および算出部23を備えない。
【0053】
通信端末4においても、通信端末4と衛星110との通信状況が悪化した場合には、そのことがビープ音によりユーザに報知される。よって、ユーザは、通信状況が悪化していることを把握することができる。したがって、通信端末4によれば、通信状況が悪化した原因が不明であることに起因するストレスを低減できる。
【0054】
〔ソフトウェアによる実現例〕
通信端末1~4の制御ブロック(特に衛星位置取得部21、端末位置取得部22、算出部23、通信状況取得部24、判定部25、および報知制御部26)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0055】
後者の場合、通信端末1~4は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0056】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る通信端末は、低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末であって、前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得部と、前記衛星への音声送信中に、前記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定部と、前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知制御部とを備える。
【0057】
上記の構成によれば、通信端末から衛星への音声送信中に、衛星から取得した通信状況情報、衛星から受信した信号の復号状況、および、衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて算出される指標が所定条件を満たしている場合、その旨が通信端末のユーザに報知される。よって、ユーザは、指標が所定条件を満たしたことを容易に認識できる。
【0058】
また、本発明の態様2に係る通信端末は、態様1において、前記通信状況取得部は、前記通信状況情報として、前記通信端末が前記衛星から受信する電波の強度を取得することが好ましい。
【0059】
上記の構成によれば、判定部は、衛星から受信する電波の強度に基づいて指標を算出することができる。電波の強度に基づいて指標を算出することで、当該指標の精度を高めることができる。
【0060】
また、本発明の態様3に係る通信端末は、態様1または2において、前記通信端末が捕捉している前記衛星の位置を示す衛星位置情報を、当該衛星から取得する衛星位置取得部と、前記通信端末の位置を示す端末位置情報を取得する端末位置取得部と、前記衛星位置情報および前記端末位置情報から、前記通信端末に対する前記衛星の方向を算出する算出部とをさらに備えることが好ましい。
【0061】
上記の構成によれば、通信端末のユーザは、通信状況に関わる情報として、通信端末が捕捉している衛星の方向を容易に認識することができる。よって、通信端末が捕捉している衛星の方向に遮蔽物が存在する場合に、ユーザ自身の位置を移動するなどの対応を取ることができる。
【0062】
また、本発明の態様4に係る通信端末は、態様3において、前記算出部が算出した前記方向を表示する表示装置をさらに備えることが好ましい。
【0063】
上記の構成によれば、ユーザは、表示装置を確認するだけで、通信端末に対する衛星の方向を容易に認識できる。
【0064】
また、本発明の態様5に係る通信端末は、上記の態様3または4において、前記通信端末は、前記衛星に対して音声送信を行うためのPTTスイッチをさらに備え、前記衛星位置取得部は、前記PTTスイッチの操作時に、前記衛星位置情報を取得することが好ましい。
【0065】
上記の構成によれば、衛星位置取得部は、PTTスイッチの操作時に衛星位置情報を取得する。したがって、ユーザが音声送信を開始するタイミングで、当該音声送信に用いる衛星の衛星位置情報を取得できる。
【0066】
また、本発明の態様6に係る制御方法は、低軌道衛星通信システムが備える衛星と通信する機能を有する、地球側に存在する通信端末の制御方法であって、前記通信端末と前記衛星との通信状況を示す通信状況情報を、当該衛星から取得する通信状況取得ステップと、前記衛星への音声送信中に、前記通信状況情報、前記衛星から受信した信号の復号状況、および、前記衛星から受信した信号に基づく音声通信の実行可能状況の少なくともいずれかに基づいて算出される指標が所定条件を満たしているか否かを判定する判定ステップと、前記指標が前記所定条件を満たしていると判定された場合、前記指標が前記所定条件を満たしている旨を前記通信端末のユーザに報知する報知ステップとを含む。
【0067】
上記の構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1、2、3、4 通信端末
21 衛星位置取得部
22 端末位置取得部
23 算出部
24 通信状況取得部
25 判定部
26 報知制御部
35 PTTスイッチ
40 ディスプレイ(表示装置)
100 低軌道衛星通信システム
110、120 衛星

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7