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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】シェルアンドプレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20240710BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240710BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20240710BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F28F9/22
F28F3/08 311
F28F3/04 B
F28D9/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020003837
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110516
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 光春
(72)【発明者】
【氏名】寺井 航
(72)【発明者】
【氏名】柴田 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤野 宏和
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03372941(EP,A1)
【文献】特表2006-527835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00-3/14,9/22,13/06
F28D 9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(21)を形成するシェル(20)と、
横方向に重ね合わされて互いに接合された複数の伝熱プレート(50a,50b)を有して、上記シェル(20)内の上記内部空間(21)に収容されるプレート積層体(40)とを備え、
上記シェル(20)内の上記内部空間(21)へ流入した冷媒を蒸発させるシェルアンドプレート式熱交換器であって、
上記プレート積層体(40)には、上記シェル(20)の上記内部空間(21)に連通して冷媒が流れる冷媒流路(41)と、上記シェル(20)の上記内部空間(21)から遮断されて熱媒体が流れる熱媒体流路(42)とが、上記伝熱プレート(50a,50b)を挟んで隣り合うように複数ずつ形成され、
上記伝熱プレート(50a,50b)は、
上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)へ熱媒体を導入する第1連通孔(52a,52b)と、
上記第1連通孔(52a,52b)の下方に形成され、上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)から熱媒体を導出する第2連通孔(54a,54b)とを有し、
上記熱媒体流路(42)には、上記第1連通孔(52a,52b)と上記第2連通孔(54a,54b)との間を横断するように設けられ、上記第1連通孔(52a,52b)から上記熱媒体流路(42)に流入した熱媒体を上記伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって案内するガイド部(70)が設けられ
上記ガイド部(70)の下端は、上記第2連通孔(54a,54b)の上端よりも下方に位置することを特徴とするシェルアンドプレート熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
上記第2連通孔(54a,54b)の下端と上記伝熱プレート(50a,50b)の下端との距離は、上記第1連通孔(52a,52b)の上端と上記伝熱プレート(50a,50b)の上端との距離よりも大きいことを特徴とするシェルアンドプレート熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記第2連通孔(54a,54b)の中心の高さ位置は、上記ガイド部(70)の下端の高さ位置よりも高いことを特徴とするシェルアンドプレート熱交換器。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1つにおいて、
上記ガイド部(70)は、上記伝熱プレート(50a,50b)に形成された凸部(57a,57b)または凹部(56a,56b)によって構成されることを特徴とするシェルアンドプレート熱交換器。
【請求項5】
内部空間(21)を形成するシェル(20)と、
横方向に重ね合わされて互いに接合された複数の伝熱プレート(50a,50b)を有して、上記シェル(20)内の上記内部空間(21)に収容されるプレート積層体(40)とを備え、
上記シェル(20)内の上記内部空間(21)へ流入した冷媒を蒸発させるシェルアンドプレート式熱交換器であって、
上記プレート積層体(40)には、上記シェル(20)の上記内部空間(21)に連通して冷媒が流れる冷媒流路(41)と、上記シェル(20)の上記内部空間(21)から遮断されて熱媒体が流れる熱媒体流路(42)とが、上記伝熱プレート(50a,50b)を挟んで隣り合うように複数ずつ形成され、
上記伝熱プレート(50a,50b)は、
上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)へ熱媒体を導入する第1連通孔(52a,52b)と、
上記第1連通孔(52a,52b)の下方に形成され、上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)から熱媒体を導出する第2連通孔(54a,54b)とを有し、
上記熱媒体流路(42)には、上記第1連通孔(52a,52b)と上記第2連通孔(54a,54b)との間を横断するように設けられ、上記第1連通孔(52a,52b)から上記熱媒体流路(42)に流入した熱媒体を上記伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって案内するガイド部(70)が設けられ、
上記ガイド部(70)は、重ね合わされて互いに接合された上記複数の伝熱プレート(50a,50b)を貫通するように設けられた板部材(75)であることを特徴とするシェルアンドプレート熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シェルアンドプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の熱交換プレートによって構成されたプレートパッケージと、該プレートパッケージを収容するタンクとを有するシェルアンドプレート式の熱交換器(熱交換器装置)が開示されている。この熱交換器は、タンク内の下部空間に液冷媒が貯留される満液式である。タンク内の液冷媒は、プレートパッケージを流れる流体と熱交換して蒸発する。蒸発した冷媒は、シェルの上部からシェル外へ流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-527835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱交換プレートにおいて、入口流路が上部に位置し、出口流路が下部に位置する場合、流体は上から下に向かって流れる。流体は流れる過程で熱交換されるため、出口流路近傍での流体は比較的低温となる。熱交換プレートの下部では、冷媒と温度差が比較的小さくなり、冷媒と流体の熱交換量が少なくなるため、熱交換器の性能が低下する。
【0005】
本開示の目的は、シェルアンドプレート式熱交換器の性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、内部空間(21)を形成するシェル(20)と、
横方向に重ね合わされて互いに接合された複数の伝熱プレート(50a,50b)を有して、上記シェル(20)内の上記内部空間(21)に収容されるプレート積層体(40)とを備え、
上記シェル(20)内の上記内部空間(21)へ流入した冷媒を蒸発させるシェルアンドプレート式熱交換器であって、
上記プレート積層体(40)には、上記シェル(20)の上記内部空間(21)に連通して冷媒が流れる冷媒流路(41)と、上記シェル(20)の上記内部空間(21)から遮断されて熱媒体が流れる熱媒体流路(42)とが、上記伝熱プレート(50a,50b)を挟んで隣り合うように複数ずつ形成され、
上記伝熱プレート(50a,50b)は、
上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)へ熱媒体を導入する第1連通孔(52a,52b)と、
上記第1連通孔(52a,52b)の下方に形成され、上記熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)から熱媒体を導出する第2連通孔(54a,54b)とを有し、
上記熱媒体流路(42)には、上記第1連通孔(52a,52b)と上記第2連通孔(54a,54b)との間を横断するように設けられ、上記第1連通孔(52a,52b)から上記熱媒体流路(42)に流入した熱媒体を上記伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって案内するガイド部(70)が設けられる。
【0007】
第1の態様では、熱媒体流路(42)を流れる熱媒体は、ガイド部(70)によって、伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって流れた後、第2連通孔(54a,54b)へ流れる。ガイド部(70)が無い場合と比べて、第1連通孔(52a,52b)から第2連通孔(54a,54b)へ短絡する熱媒体の流れが抑制される。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において上記ガイド部(70)の下端は、上記第2連通孔(54a,54b)の上端よりも下方に位置する。
【0009】
第2の態様では、第1の態様において、熱媒体流路(42)を流れる熱媒体は、ガイド部(70)によって、伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって流れた後、ガイド部(70)の下端を回り込んで第2連通孔(54a,54b)へ流れる。ガイド部(70)が無い場合と比べて、熱媒体は、温度がそれほど低下しない状態で伝熱プレート(50a,50b)の下部に至る。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)下部において、冷媒と熱媒体との温度差を確保できる。その結果、熱交換効率の低下を抑制でき、熱交換器(10)の性能を向上させることができる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において
上記第2連通孔(54a,54b)の下端と上記伝熱プレート(50a,50b)の下端との距離は、上記第1連通孔(52a,52b)の上端と上記伝熱プレート(50a,50b)の上端との距離よりも大きい。
【0011】
第3の態様では、第2連通孔(54a,54b)が、伝熱プレート(50a,50b)の下端より高い位置に形成される。そのため、第1連通孔(52a,52b)に流入した流体は、ガイド部(70)により案内されて伝熱プレート(50a,50b)の下端近傍を流れた後、第2連通孔(54a,54b)に向かって上昇する。この熱媒体の流れにより、伝熱プレート(50a,50b)の下部の熱媒体は、第2連通孔(54a,54b)近傍の熱媒体よりも高温となる。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)の下部における熱媒体と冷媒の熱交換が促進され、熱交換器(10)の性能が向上する。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様において、
上記第2連通孔(54a,54b)の中心の高さ位置は、上記ガイド部(70)の下端の高さ位置よりも高い
第4の態様では、第2連通孔(54a,54b)に流入する熱媒体は、第2連通孔(54a,54b)の下方から流れる。そのため、伝熱プレート(50a,50b)の下端での熱媒体の流通量が増加し、伝熱プレート(50a,50b)下端での熱交換効率の低下を抑制できる。
【0013】
第5の態様は、第1~第4のいずれか1つの態様において、
上記ガイド部(70)は、重ね合わされて互いに接合された上記複数の伝熱プレート(50a,50b)を貫通するように設けられた板部材(75)である。
【0014】
第5の態様では、ガイド部(70)を一枚の板部材(75)により形成できる。板部材(75)により既成の伝熱プレートにガイド部(70)を設けることができる。
【0015】
第6の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて
上記ガイド部(70)は、上記伝熱プレート(50a,50b)に形成された凸部(57a,57b)または凹部(56a,56b)によって構成される。
【0016】
第6の態様では、ガイド部(70)をプレス等により容易に成形できる。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)を同じ金型で製造できるため、ガイド部が設けられたプレート積層体(40)の製造を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る熱交換器の正面図及び、該正面図のI-I断面を示す概略図である。
図2図2は、プレート積層体の縦断面の一部を拡大した概略図である。
図3図3は、第1プレート及び第2プレートの概略正面図である。
図4図4は、プレート積層体内の熱媒体の流れを示す概略図である。
図5図5は、伝熱プレート上の熱媒体の流れを示す概略図である。
図6図6は、第1変形例に係る熱交換器の図5相当図である。
図7図7は、第2変形例に係る熱交換器の図5相当図である。
図8図8は、第3変形例に係る伝熱プレートの概略正面図である。
図9図9は、第4変形例に係る熱交換器の図3相当図である。
図10図10は、第5変形例に係る熱交換器の図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0019】
《実施形態》
〈全体構成〉
本実施形態のシェルアンドプレート熱交換器(10)(以下では、「熱交換器」という)は、冷凍装置の冷媒回路(図示省略)に接続されている。この冷凍装置では、圧縮機で圧縮された冷媒が、凝縮器(放熱器)で放熱し、減圧機構で減圧される。減圧された冷媒は、蒸発器として機能する熱交換器(10)で蒸発して圧縮機に吸入される。このように冷凍装置の冷媒回路では、冷凍サイクルが行われる。
【0020】
図1に示すように、熱交換器(10)はシェル(20)とプレート積層体(40)とを有する。プレート積層体(40)は、シェル(20)の内部空間(21)に収容される。シェル(20)の内部空間(21)には液冷媒が流入する。液冷媒は、プレート積層体(40)内を流通する熱媒体と熱交換する。このように、熱交換器(10)は、シェル(20)内の内部空間(21)へ流入した冷媒を蒸発させることによって、蒸発器として機能する。なお、熱媒体としては、水とブラインが例示される。
【0021】
-シェル-
シェル(20)は、横長の円筒状の密閉容器で構成される。シェル(20)は、胴部(20a)と第1側壁(20b)と第2側壁(20c)とを有する。胴部(20a)は円筒状に形成される。第1側壁(20b)は、円形に形成され、胴部(20a)の左端を閉塞する。第2側壁(20c)は、円形に形成され、胴部(20a)の右端を閉塞する。シェル(20)は、胴部(20a)、第1側壁(20b)、第2側壁により、内部空間(21)を形成する。内部空間(21)内に液冷媒が貯留される。
【0022】
胴部(20a)は、冷媒入口(32)と冷媒出口(33)とを有する。冷媒入口(32)は、胴部(20a)の底部に設けられる。冷媒入口(32)から内部空間(21)に冷媒が導入される。冷媒出口(33)は、胴部(20a)の頂部に設けられる。冷媒出口(33)から内部空間(21)において蒸発した冷媒がシェル(20)外に導出される。冷媒入口(32)及び冷媒出口(33)は、配管を介して冷媒回路に接続される。
【0023】
第1側壁(20b)には、熱媒体入口(23)と、熱媒体出口(24)とが設けられる。熱媒体入口(23)及び熱媒体出口(24)は、管状の部材である。
【0024】
熱媒体入口(23)は、第1側壁(20b)の略中央を貫通する。熱媒体入口(23)は、プレート積層体(40)の熱媒体導入路(43)に接続し、熱媒体をプレート積層体(40)へ供給する。
【0025】
熱媒体出口(24)は、第1側壁(20b)において、熱媒体入口(23)と第1側壁(20b)の下端との略中間位置を貫通する。熱媒体出口(24)は、プレート積層体(40)の熱媒体導出路(44)に接続し、プレート積層体から熱媒体を導出する。
【0026】
-プレート積層体-
プレート積層体(40)は、横方向に重ね合わされて互いに接合された複数の伝熱プレート(50a,50b)によって構成される。プレート積層体(40)は、伝熱プレート(50a,50b)の積層方向が横方向となる姿勢で、シェル(20)の内部空間(21)に収容される。
【0027】
図1(a)に示すように、プレート積層体(40)を構成する伝熱プレート(50a,50b)は、概ね半円形の板状の部材である。プレート積層体(40)は、伝熱プレート(50a,50b)の円弧状の縁部が下向きとなる姿勢で、シェル(20)の内部空間(21)の底部寄りに配置される。図示しないが、シェル(20)の内面には、プレート積層体(40)を支持する突起状の支持部が設けられる。シェル(20)の内部空間(21)に収容された状態で、プレート積層体(40)はシェル(20)の内面から離間しており、プレート積層体(40)を構成する伝熱プレート(50a,50b)の下向きの縁部とシェル(20)の内面との間に隙間(25)が形成される。内部空間(21)において、プレート積層体(40)の上側部分には上部空間(21a)が形成される。
【0028】
図2及び図3に示すように、プレート積層体(40)には、互いに形状が異なる第1プレート(50a)と第2プレート(50b)とが、伝熱プレート(50a,50b)として設けられる。プレート積層体(40)は、第1プレート(50a)と第2プレート(50b)とを複数ずつ備える。プレート積層体(40)では、第1プレート(50a)と第2プレート(50b)が交互に積層される。以下の説明では、第1プレート(50a)と第2プレート(50b)のそれぞれについて、図2における左側の面を表(おもて)面とし、図3における右側の面を裏面とする。
【0029】
〈熱媒体導入路、熱媒体導出路〉
第1プレート(50a)には、入口凸部(51a)と出口凸部(53a)とが形成される。入口凸部(51a)と出口凸部(53a)のそれぞれは、第1プレート(50a)の表面側に膨出した円形の部分である。入口凸部(51a)と出口凸部(53a)のそれぞれは、第1プレート(50a)の幅方向の中央部に形成される。入口凸部(51a)は、第1プレート(50a)の上部に形成される。出口凸部(53a)は、第1プレート(50a)の下部に形成される。入口凸部(51a)の中心部には、第1入口孔(52a)が形成される。第1入口孔(52a)は第1プレート(50a)の第1連通孔に対応する。出口凸部(53a)の中心部には、第1出口孔(54a)が形成される。第1入口孔(52a)と第1出口孔(54a)のそれぞれは、第1プレート(50a)を厚さ方向に貫通する円形の孔である。
【0030】
第1プレート(50a)では、第1出口孔(54a)の下端と第1プレート(50a)の下端との第1距離d1が、第1入口孔(52a)の上端と第1プレート(50a)の上端との第2距離d2よりも長い。また、第1距離d1は、第1出口孔(54a)の上端と第1入口孔(52a)の下端との第3距離d3よりも長い。本実施形態では、第1距離d1は、第3距離d3の2倍以上である。
【0031】
第2プレート(50b)には、入口凹部(51b)と出口凹部(53b)とが形成される。入口凹部(51b)と出口凹部(53b)のそれぞれは、第2プレート(50b)の裏面側に膨出した円形の部分である。入口凹部(51b)と出口凹部(53b)のそれぞれは、第2プレート(50b)の幅方向の中央部に形成される。入口凹部(51b)は、第2プレート(50b)の下部に形成される。出口凹部(53b)は、第2プレート(50b)の上部に形成される。入口凹部(51b)の中心部には、第2入口孔(52b)が形成される。出口凹部(53b)の中心部には、第2出口孔(54b)が形成される。第2入口孔(52b)と第2出口孔(54b)のそれぞれは、第2プレート(50b)を厚さ方向に貫通する円形の孔である。
【0032】
第2プレート(50b)において、入口凹部(51b)は、第1プレート(50a)の入口凸部(51a)に対応する位置に形成され、出口凹部(53b)は、第1プレート(50a)の出口凸部(53a)に対応する位置に形成される。また、第2プレート(50b)において、第2入口孔(52b)は、第1プレート(50a)の第1入口孔(52a)に対応する位置に形成され、第2出口孔(54b)は、第1プレート(50a)の第1出口孔(54a)に対応する位置に形成される。第1入口孔(52a)と第2入口孔(52b)は、それぞれの直径が互いに実質的に等しい。第1出口孔(54a)と第2出口孔(54b)は、それぞれの直径が互いに実質的に等しい。
【0033】
このように、第2出口孔(54b)及び第2入口孔(52b)の第2プレート(50b)における位置はそれぞれ、第1出口孔(54a)及び第1入口孔(52a)の第1プレート(50a)における位置と同じである。厳密に、第2出口孔(54b)は、第2プレート(50b)の第2出口孔(54b)の下端と第2プレート(50b)の下端との距離は、上記第1距離d1と同じである。第2入口孔(52b)の上端と第2プレート(50b)の上端との距離は、上記第2距離d2と同じである。
【0034】
プレート積層体(40)において、各第1プレート(50a)の周縁部は、その第1プレート(50a)の裏面側に隣接する第2プレート(50b)の周縁部と溶接によって全周に亘って接合される。また、プレート積層体(40)では、各第1プレート(50a)の第1入口孔(52a)が、その第1プレート(50a)の表面側に隣接する第2プレート(50b)の第2入口孔(52b)と重なり合い、重なり合った第1入口孔(52a)と第2入口孔(52b)の縁部が溶接によって全周に亘って接合される。第1入口孔(52a)と第2入口孔(52b)とが重なり合った孔が第1連通孔に対応する。第1入口孔(52a)及び第2入口孔(52b)は、熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)へ熱媒体を導入する。
【0035】
プレート積層体(40)では、各第1プレート(50a)の第1出口孔(54a)が、その第1プレート(50a)の表面側に隣接する第2プレート(50b)の第2出口孔(54b)と重なり合い、重なり合った第1出口孔(54a)と第2出口孔(54b)の縁部が溶接によって全周に亘って接合される。第1出口孔(54a)と第2出口孔(54b)とが重なり合った孔が第2連通孔に対応する。第1出口孔(54a)及び第2出口孔(54b)は、第1連通孔(52a,52b)の下方に形成され、熱媒体流路(42)に連通して該熱媒体流路(42)から熱媒体を導出する。
【0036】
プレート積層体(40)では、各第1プレート(50a)の入口凸部(51a)及び第1入口孔(52a)と、各第2プレート(50b)の入口凹部(51b)及び第2入口孔(52b)とによって、熱媒体導入路(43)が形成される。また、プレート積層体(40)では、各第1プレート(50a)の出口凸部(53a)及び第1出口孔(54a)と、各第2プレート(50b)の出口凹部(53b)及び第2出口孔(54b)とによって、熱媒体導出路(44)が形成される。
【0037】
熱媒体導入路(43)と熱媒体導出路(44)のそれぞれは、プレート積層体(40)における伝熱プレート(50a,50b)の積層方向に延びる通路である。熱媒体導入路(43)は、シェル(20)の内部空間(21)から遮断された通路であり、全ての熱媒体流路(42)を熱媒体入口(23)に連通させる。熱媒体導出路(44)は、シェル(20)の内部空間(21)から遮断された通路であり、全ての熱媒体流路(42)を熱媒体出口(24)に連通させる。
【0038】
〈冷媒流路、熱媒体流路〉
プレート積層体(40)では、伝熱プレート(50a,50b)を挟んで冷媒流路(41)と熱媒体流路(42)とが隣り合うように複数ずつ形成される。冷媒流路(41)と熱媒体流路(42)は、伝熱プレート(50a,50b)によって互いに仕切られる。第1プレート(50a)及び第2プレート(50b)にはそれぞれ、細長い畝状の凹凸とが繰り返し形成された第1凹凸パターン(62a)及び第2凹凸パターン(62b)が形成されている。図3に示すように、第1凹凸パターン(62a)及び第2凹凸パターン(62b)はそれぞれ、凹凸の稜線が水平方向Xに対する第1角度α1及び第2角度α2をもって延びている。第1角度α1と第2角度α2とは互いに逆の大きさである。例えば、第1角度α1が45度である場合、第2角度α2は135度である。第1角度α1は、15度~75度である。第2角度α2は、165度~105度である。
【0039】
第1凹凸パターン(62a)では、第1プレート(50a)の表側に膨出した第1表側凸部(55a)と、第1プレート(50a)の裏側に膨出した第1裏側凸部(57a)とが繰り返し交互に設けられる。第2凹凸パターン(62b)では、第2プレート(50b)の表側に膨出した第2表側凸部(57b)と、第2プレート(50b)の裏側に膨出した第2裏側凸部(55b)とが繰り返し交互に設けられる。
【0040】
冷媒流路(41)は、第1プレート(50a)の表面と第2プレート(50b)の裏面に挟まれた流路である。冷媒流路(41)は、シェル(20)の内部空間(21)に連通して冷媒が流れる流路である。厳密に、冷媒流路(41)は、第1流路(45)と第1空間(M)とにより形成される。第1流路(45)は、第1裏側凸部(57a)の裏面と第2表側凸部(57b)の裏面との間に形成される流路である。第1空間(M)は、第1表側凸部(55a)と第2裏側凸部(55b)との間には形成される空間である。第1流路(45)及び第1空間(M)は、プレート積層体(40)の上端から下端まで交互に繰り返し配列される。第1流路(45)の上端と下端とは第1空間(M)と連通する。上下方向に隣り合う第1流路(45)は第1空間(M)により連通する。第1流路(45)及び第1空間(M)は内部空間(21)に開放されている。
【0041】
熱媒体流路(42)は、第1プレート(50a)の裏面と第2プレート(50b)の表面に挟まれた流路である。熱媒体流路(42)は、シェル(20)の内部空間(21)から遮断されて熱媒体が流れる流路である。厳密に、熱媒体流路(42)は、第2流路(46)と第2空間(N)とにより形成される。第2流路(46)は、第1表側凸部(55a)の裏面と第2裏側凸部(55b)の裏面との間に形成される。第2空間(N)は、第1裏側凸部(57a)と第2表側凸部(57b)との間に形成される空間である。第2流路(46)及び第2空間(N)は、プレート積層体(40)の上端から下端まで交互に繰り返し配列される。第2流路(46)の上端と下端とは第2空間(N)と連通する。上下方向に隣り合う第2流路(46)は第2空間(N)により連通する。第2流路(46)及び第2空間(N)は、シェル(20)の内部空間から遮断される。
【0042】
〈ガイド部〉
図2及び図3に示すように、熱媒体流路(42)には、ガイド部(70)が設けられる。ガイド部(70)は、伝熱プレート(50a,50b)を正面から見たときに、第1連通孔(52a,52b)と第2連通孔(54a,54b)との間を横断するように設けられる。ガイド部(70)について以下詳細に説明する。
【0043】
ガイド部(70)は、第1線状平坦部(65a)と第2線状平坦部(65b)とにより形成される。厳密に、第1線状平坦部は、第1プレート(50a)の裏面において線状に形成される。第1線状平坦部(65a)は、第1プレート(50a)の裏側へ膨出し、膨出した頂部が平らに形成される。第2線状平坦部(65b)は、第2プレート(50b)の表面において線状に形成される。第2線状平坦部(65b)は、第2プレート(50b)の表側に膨出し、膨出した頂部が平らに形成される。第2線状平坦部(65b)は、第1プレート(50a)と第2プレート(50b)とが重ね合わされた状態で、第1線状平坦部(65a)に対応する位置に形成される。
【0044】
プレート積層体(40)では、第1プレート(50a)の第1線状平坦部(65a)と、その第1プレート(50a)の裏面側に隣接した第2プレート(50bの第2線状平坦部(65b)とが重なり合い、重なり合った第1線状平坦部(65a)と第2線状平坦部(65b)が、ロウ付け等によって全長に亘って接合される。ガイド部(70)は、互いに接合された第1線状平坦部(65a)と第2線状平坦部(65b)とによって構成される。
【0045】
ガイド部(70)は、第1ガイド部(70a)と第2ガイド部(70b)とを有する。第1ガイド部(70a)は、第1連通孔(52a,52b)の下端と第2連通孔(54a,54b)の上端の中間に位置し、伝熱プレート(50a,50b)の幅方向に直線状に形成される。第2ガイド部(70b)は第1ガイド部(70a)の各端部から下方に延びるように直線状に形成される。ガイド部(70)は、伝熱プレート(50a,50b)の中心線Yに対して左右対称となるように配置される。
【0046】
第1ガイド部(70a)の第1線状平坦部(65a)は、第1プレート(50a)における第1入口孔(52a)と第1出口孔(54a)との中間に位置し、第1プレート(50a)の幅方向に形成される。第1ガイド部(70a)の第1線状平坦部(65a)は、上下方向に隣り合う2つの第1表側凸部(55a)の間に位置する。
【0047】
第1ガイド部(70a)の第2線状平坦部(65b)は、第2プレート(50b)における第2入口孔(52b)と第2出口孔(54b)との中間に位置し、第2プレート(50b)の幅方向に形成される。第1ガイド部(70a)の第2線状平坦部(65b)は、上下方向に隣り合う2つの第2裏側凸部(55b)の間に位置する。第1ガイド部(70a)の長さL1は、伝熱プレート(50a,50b)の一側端から他側端までの長さの概ね半分である。
【0048】
第2ガイド部(70b)の第1線状平坦部(65a)は、第1プレート(50a)の裏面における第1線状平坦部(65a)の各端部から下方へ延びるように形成される。第2ガイド部(70b)の第2線状平坦部(65b)は、第2プレート(50b)の表面における第1線状平坦部(65a)の各端部から下方へ延びるように形成される。第2ガイド部(70b)の長さL2は、第1ガイド部(70a)の長さL1の概ね3分の1程度である。第2ガイド部(70b)の下端は、第2連通孔(54a,54b)の上端よりも下方に位置する。厳密に、第2ガイド部(70b)の下端は、第2連通孔(54a,54b)の中心(O)の高さ位置よりも低い。より厳密に、第2ガイド部(70b)の下端は、第2連通孔(54a,54b)の中心(O)と第2連通孔(54a,54b)の下端との略中間の高さに位置する。
【0049】
-熱媒体及び冷媒の流れ-
熱交換器(10)内における熱媒体及び冷媒の流れについて、図4及び図5を参照して具体的に説明する。なお、図4中に示す矢印は、熱媒体の流れを示す。図5ではシェル内に液冷媒が貯留されている状態が示され、実線の矢印は、熱媒体の流れを表し、破線の矢印は冷媒の流れを表す。
【0050】
図4に示すように、熱媒体は、熱媒体入口(23)から熱媒体導入路(43)に流入する。熱媒体導入路(43)を流通する熱媒体は、第1連通孔(52a,52b)から第2連通孔(54a,54b)に向かって各熱媒体流路(42)を流通する。厳密に、熱媒体導入路(43)を流通する熱媒体は、第2流路(46)に流入する。この熱媒体は、第2流路(46)を伝って流れると同時に、第2空間(N)を通過して該第2流路(46)の下側に隣接する第2流路(46)に流れる。このように、熱媒体は、伝熱プレート(50a,50b)の両側端に亘るように流れつつ、下方に向かって流れる。
【0051】
図5に示すように、第1連通孔(52a,52b)から熱媒体流路(42)に流入した熱媒体は、ガイド部(70)により伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって案内される。厳密に、第1ガイド部により、熱媒体流路(42)を流通する熱媒体は下方に移動することができず、伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって流れる。第1ガイド部(70a)によって伝熱プレート(50a,50b)の側部へ流れた熱媒体は、第2ガイド部(70b)に沿って、伝熱プレート(50a,50b)の下方へ流れる。第2ガイド部(70b)の下端を通過した熱媒体は、伝熱プレート(50a,50b)の下端近傍を、伝熱プレート(50a,50b)の幅方向の中央部に向かって流れる。第2連通孔(54a,54b)の周囲では、第2連通孔(54a,54b)の両側から第2連通孔(54a,54b)に向かう流れと、第2連通孔(54a,54b)の下側から第2連通孔(54a,54b)に向かう流れが生じる。第2連通孔(54a,54b)の両側及び下側から流れる熱媒体が第2連通孔(54a,54b)に流入する。
【0052】
次に冷媒の流れについて説明する。冷媒回路において膨張弁を通過した冷媒は、熱交換器(10)に向かって流れる。この液冷媒は、冷媒入口(32)からシェル(20)の内部空間(21)に流入する。内部空間(21)において、液冷媒はプレート積層体(40)の上端近傍まで貯留される。プレート積層体(40)は、液冷媒に浸った状態である。内部空間(21)に貯留される冷媒は比較的低圧である。この低圧冷媒は、熱媒体流路(42)を流れる熱媒体と熱交換する。厳密に、冷媒流路(41)と熱媒体流路(42)とは、伝熱プレート(50a,50b)を挟んで隣接しているため、熱媒体流路(42)に熱媒体が流れると、液冷媒は、該熱媒体から吸熱して蒸発する。蒸発した冷媒は、冷媒流路(41)から内部空間(21)の上側部分の上部空間(21a)に移動する。上部空間(21a)内の冷媒は、冷媒出口(33)より冷媒回路へ流出する。
【0053】
-実施形態の特徴(1)-
熱媒体流路(42)には、第1連通孔(52a,52b)と第2連通孔(54a,54b)との間を横断するように設けられ、第1連通孔(52a,52b)から熱媒体流路(42)に流入した熱媒体を伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって案内するガイド部(70)が設けられる。
【0054】
ここで、従来より、シェルアンドプレート式熱交換器のプレート積層体には、伝熱プレートを挟んで隣り合うように形成される熱媒体流路と冷媒流路とが設けられる。各伝熱プレートには、熱媒体流路に連通する2つの孔が設けられ、熱媒体は、熱媒体流路を一方の孔から他方の孔に向かって流れる。一方の孔から流入した熱媒体が、他方の孔に短絡するように流れると、熱媒体は伝熱プレート全体に行き渡りにくい。例えば、伝熱プレートの幅方向の端部のような孔から離れた箇所では、熱媒体は滞留した状態となり、冷媒との熱交換が行われなくなる。そのため、伝熱プレート全体を熱交換に有効に利用できず、少ない熱交換量しか得られないおそれがある。
【0055】
これに対して、本実施形態の特徴(1)によると、熱媒体流路(42)を流れる熱媒体は、第1ガイド部(70a)によって、伝熱プレート(50a,50b)の側部に向かって流れる。その後、熱媒体は、第1ガイド部(70a)の端部から第2ガイド部(70b)に沿って流れる。第2ガイド部(70b)に沿って流れる熱媒体は、伝熱プレート(50a,50b)の第2ガイド部(70b)の外側の領域だけと接触しながら流れる。そのため、熱媒体が伝熱プレート(50a,50b)の幅方向の全体と接触しながら流れる場合に比べて、伝熱プレート(50a,50b)の下端付近に到達する熱媒体の温度は高くなる。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)の下部において、冷媒と熱媒体との温度差を確保できるため、熱交換器(10)の性能を向上させることができる。加えて、第1連通孔(52a,52b)は、伝熱プレート(50a,50b)の上部に設けられている。第1連通孔(52a,52b)から流入した熱媒体は、第1ガイド部(70a)により伝熱プレート(50a,50b)の側部に行き渡る。このことにより、プレート積層体(40)上部での冷媒の蒸発が促進されるので、ガス冷媒と共に熱交換器から流出する滴状の液冷媒の量を減らすことができる。
【0056】
-実施形態の特徴(2)-
ガイド部(70)の下端は、第2連通孔(54a,54b)の上端よりも下方に位置する。
【0057】
この特徴(2)によると、熱媒体は、ガイド部(70)の下端を回り込んで第2連通孔(54a,54b)へ流れる。ガイド部(70)が無い場合と比べて、熱媒体は、温度がそれほど低下しない状態で伝熱プレート(50a,50b)の下部に至る。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)下部において、冷媒と熱媒体との温度差を確保できる。その結果、熱交換効率の低下を抑制でき、熱交換器(10)の性能を向上させることができる。
【0058】
-実施形態の特徴(3)-
本実施形態の熱交換器において、第2連通孔(54a,54b)の下端と伝熱プレート(50a,50b)の下端との距離は、第1連通孔(52a,52b)の上端と伝熱プレート(50a,50b)の上端との距離よりも大きい。
【0059】
この特徴(3)によると、第2連通孔(54a,54b)は、伝熱プレート(50a,50b)の下端よりある程度離れた位置にある。熱媒体流路(42)を流れる熱媒体は、第2ガイド部(70b)の下端を流通した後、第2連通孔(54a,54b)まで上昇するように流れる。そのため、伝熱プレート(50a,50b)の下端付近を流れる熱媒体の温度は、第2連通孔(54a,54b)へ流入する熱媒体の温度よりも高くなる。その結果、伝熱プレート(50a,50b)の下端での熱媒体の温度低下が抑制されることにより、熱交換器(10)の熱交換効率の低下を抑制できる。
【0060】
-実施形態の特徴(4)-
本実施形態の熱交換器において、第2連通孔(54a,54b)の中心の高さ位置は、ガイド部(70)の下端の高さ位置よりも高い。
【0061】
この特徴(4)によると、第2連通孔(54a,54b)に流入する熱媒体は、第2連通孔(54a,54b)の下方から流れる。そのため、伝熱プレート(50a,50b)の下端近傍を通らずに第2連通孔(54a,54b)に流れ込む熱媒体の割合が減り、伝熱プレート(50a,50b)の下端近傍を流通する熱媒体の割合が多くなる。下端近傍を流通する熱媒体は比較的高温であるため、伝熱プレート(50a,50b)下端での冷媒と熱媒体との熱交換効率を向上させることができる。
【0062】
-実施形態の特徴(5)-
上記ガイド部(70)は、上記伝熱プレート(50a,50b)に形成された凸部(57a,57b)または凹部(58a,58b)によって構成される。
【0063】
この特徴(5)によると、ガイド部(70)をプレス加工などで一体形成できる。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)の製造を容易できると共に、プレート積層体(40)の製造工程が煩雑になることを抑制できる。
【0064】
《その他の実施形態》
実施形態の熱交換器(10)については、次のような変形例を適用してもよい。なお、以下の変形例は、熱交換器(10)の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0065】
-第1変形例-
図6に示すように、第1変形例の伝熱プレート(50a,50b)は、概ね円形に形成される。第1連通孔(52a,52b)は、伝熱プレート(50a,50b)の上端近傍に設けられる。第2連通孔(54a,54b)は第1連通孔(52a,52b)の下端と伝熱プレート(50a,50b)の中心との間に設けられる。図中の矢印は熱媒体の流れを示す。
【0066】
第1変形例のガイド部(70)の第1ガイド部(70a)は、第1連通孔(52a,52b)の下端と第2連通孔(54a,54b)の上端との中間の高さ位置に形成される。第1ガイド部(70a)の長さL1は、伝熱プレート(50a,50b)の半径の概ね同じである。第2ガイド部(70b)は、第1ガイド部(70a)の端部のそれぞれから、伝熱プレート(50a,50b)の下部まで延びるように形成される。厳密に、第2ガイド部(70b)の下端の高さ位置と第2連通孔(54a,54b)の下端の高さ位置との距離は、第2ガイド部(70b)の下端の高さ位置と伝熱プレート(50a,50b)の下端の高さ位置との距離よりも大きい。また、第2ガイド部(70b)の長さL2は、第1ガイド部(70a)の長さL1よりも長い。
【0067】
この第1変形例によると、熱媒体は第1連通孔(52a,52b)から第1ガイド部(70a)に沿って側方に流れた後、第2ガイド部に沿って伝熱プレート(50a,50b)の下部まで流れる。熱媒体は、第2ガイド部(70b)の下端から第2連通孔(54a,54b)まで上昇する。このことにより、第1連通孔(52a,52b)から第2連通孔(54a,54b)までの距離を十分確保できるため、熱媒体と冷媒との熱交換効率の低下を抑制できる。第2ガイド部(70b)の下端から第2連通孔(54a,54b)まで熱媒体が上昇する距離は比較的長い。そのため、伝熱プレート(50a,50b)下端における熱媒体と、第2連通孔(54a,54b)における熱媒体との温度差を十分確保できる。このことにより、伝熱プレート(50a,50b)の下端の熱媒体の温度は比較的高く、伝熱プレート(50a,50b)下部での冷媒と熱媒体との熱交換を促進できる。加えて、第2連通孔(54a,54b)が比較的高い位置にあるため、液冷媒を比較的多く貯留できる。
【0068】
-第2変形例-
図7に示すように、変形例2の伝熱プレート(50a,50b)は、概ね楕円形に形成される。第1連通孔(52a,52b)は、伝熱プレート(50a,50b)の上端近傍に設けられる。図中の矢印は熱媒体の流れを示す。
【0069】
第2連通孔(54a,54b)は第1連通孔(52a,52b)の真下であって、伝熱プレート(50a,50b)の中心近傍に設けられる。第1ガイド部(70a)の長さL1は、伝熱プレート(50a,50b)の長径の半分と概ね同じである。第2ガイド部(70b)は、第1ガイド部(70a)の端部のそれぞれから、伝熱プレート(50a,50b)の下部まで延びるように形成される。厳密に、第2ガイド部(70b)の下端は、該下端の高さ位置と第2連通孔(54a,54b)の下端の高さ位置との距離が比較的大きくなる位置にある。また、第2ガイド部(70b)の長さL2は、第1ガイド部(70a)の長さL1と同じか又はそれよりも長い。
【0070】
この変形例2によると、熱媒体は第1連通孔(52a,52b)から第1ガイド部(70a)に沿って側方に流れた後、第2ガイド部に沿って伝熱プレート(50a,50b)の下部まで流れる。熱媒体は、第2ガイド部(70b)の下端から第2連通孔(54a,54b)まで上昇する。このことにより、第1連通孔(52a,52b)から第2連通孔(54a,54b)までの距離を十分確保できるため、熱媒体と冷媒との熱交換効率の低下を抑制できる。第2ガイド部(70b)の下端から第2連通孔(54a,54b)まで熱媒体が上昇する距離は比較的長い。そのため、伝熱プレート(50a,50b)の下端における熱媒体と、第2連通孔(54a,54b)における熱媒体との温度差を十分確保できる。そのため、伝熱プレート(50a,50b)の下端の熱媒体の温度は比較的高く、伝熱プレート(50a,50b)下部での冷媒と熱媒体との熱交換を促進できる。加えて、シェル(20)の内部空間(21)において、プレート積層体の上側に空間が形成される。該空間において気化しきれない液状の冷媒はプレート積層体(40)に落下する。このことにより、冷媒出口から液冷媒が流出することが抑制され、キャリーオーバを防止できる。
【0071】
-第3変形例-
図8に示すように、第3変形例のガイド部(70)は、細長の板部材(75)により形成される。板部材(75)は、第1板部(75a)と第2板部(75b)とにより構成される。第1板部(75a)は、第1連通孔(52a,52b)と第2連通孔(54a,54b)との間に設けられる。第2板部(75b)は、第1板部(75a)の両端から下方に延びる。第1板部(75a)の長さL1は、伝熱プレート(50a,50b)の一側端から他側端までの長さの概ね半分である。第2板部(75b)の長さL2は、第1板部(75a)の長さL1の概ね3分の1程度の長さである。第2板部(75b)の下端は、第2連通孔(54a,54b)の中心Oと第2連通孔(54a,54b)の下端との中間の高さに位置する。
【0072】
-第4変形例-
図9に示すように、実施形態の熱交換器(10)はエリミネータ(15)を備えていてもよい。エリミネータ(15)は、ガス冷媒と共に流れる滴状の液冷媒を捕捉するための部材である。このエリミネータ(15)は、例えば金属製のメッシュを積層することによって形成された厚板状に形成され、その厚さ方向に冷媒が通過可能である。
【0073】
エリミネータ(15)は、シェル(20)の内部空間(21)に収容される。このエリミネータ(15)は、シェル(20)の内部空間(21)におけるプレート積層体(40)の上側の部分を横断するように設置される。エリミネータ(15)を通過したガス冷媒は、冷媒出口(33)を通ってシェル(20)の外部へ流出する。一方、エリミネータ(15)に捕捉された液冷媒は、比較的大きな液滴となって下方へ落下する。
【0074】
-第5変形例-
図10に示すように、ガイド部(70)は、伝熱プレート(50a,50b)を正面から見て、逆V字形状に形成されていてもよい。ガイド部(70)の頂点は、第1連通孔(52a,52b)の下端と第2連通孔(54a,54b)の上端との間に形成される。また、図示はしないが、ガイド部(70)は逆U字形状に形成されていてもよい。
【0075】
-第6変形例-
第1凹凸パターン(62a)の第1角度α1及び第2凹凸パターン(62b)の第2角度α2は同じ角度であってもよい。例えば、第1凹凸パターン(62a)の第1角度α1及び第2凹凸パターン(62b)の第2角度α2は共に0度、言い換えると水平方向であってもよい。
【0076】
-第7変形例-
実施形態の熱交換器(10)は、流下液膜化式のシェルアンドプレート式熱交換器であってもよい。厳密に、熱交換器(10)は、シェル(20)内におけるプレート積層体(40)の上方に、プレート積層体(40)に液冷媒を散布する散布器を備えていてもよい。また、熱交換器(10)は、液冷媒を散布する構造を有したプレート積層体を有していてもよい。
【0077】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本開示は、シェルアンドプレート式熱交換器について有用である。
【符号の説明】
【0079】
20 シェル
40 プレート積層体
41 冷媒流路
42 熱媒体流路
50a 第1プレート(伝熱プレート)
50b 第2プレート(伝熱プレート)
52a 第1入口孔(第1連通孔)
54a 第1出口孔(第2連通孔)
52b 第2入口孔(第1連通孔)
54b 第2出口孔(第2連通孔)
70 ガイド部(ガイド部)
75 板部材
57a 第1裏側凸部(凸部)
57b 第2表側凸部(凸部)
56a 第1表側凹部(凹部)
56b 第2裏側凹部(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10