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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】凹形状樹脂微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/20 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
C08F2/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020148293
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042732
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】石倉 宏樹
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235180(JP,A)
【文献】特開2020-045399(JP,A)
【文献】特開2011-148860(JP,A)
【文献】特開2017-069006(JP,A)
【文献】国際公開第2015/133492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和炭化水素基を有する重合性単量体を、水を主体とした分散媒に分散させ、懸濁化し、重合させる樹脂微粒子の重合において、少なくとも式(1)で表される界面活性剤を分散剤として用い、かつ、水溶性開始剤を用いることで、凹形状樹脂微粒子を得る、凹形状樹脂微粒子の製造方法であって、
前記水溶性開始剤の使用量が、前記重合性単量体の使用量の100質量部に対して、3.0質量部未満であり、
前記重合性単量体と前記界面活性剤と油溶性開始剤を分散させた第1分散液に、前記水溶性開始剤を含む水溶液を添加し、連続相を前記重合性単量体とし、かつ、分散相を水とした第2分散液を調製し、
前記第2分散液と、第2の界面活性剤を含む水溶液とを混合し、連続相を水とし、かつ、分散相を前記重合性単量体とした第3分散液を得ることを特徴とする、凹形状樹脂微粒子の製造方法。
O-(RO)(EO)-T ・・・(1)
式(1)中、Tは水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基であり、Tは水素原子、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基又はアンモニウム基であり、ROは炭素数3~18のオキシアルキレン基であり、nは1~50の整数であり、EOはオキシエチレン基であり、mは0~200の整数である。
【請求項2】
前記水溶性開始剤が無機過酸化物である、請求項1に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記無機過酸化物が、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)において前記Tが炭素数~18のアルケニル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記凹形状樹脂微粒子の平均粒子径が0.5~500μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹形状樹脂微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異形粒子はその独特の形状から光拡散性に優れ、光拡散シートや導光板等への応用が期待されている(特許文献1)。異形粒子としては様々な形状の粒子が知られているが、例えば、凹凸を有する粒子はその形状から高い吸水量、吸油量を有し、化粧品等に用いられるのに好適とされる(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3827617号公報
【文献】特許第3229011号公報
【文献】特許第3574673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異形粒子は特異的な形状から、一般的な真球状の粒子に比べ機能面で優れることも多いが、その製造過程で多量の不純物を含むことが多く、その場合、重合により粒子を得た後、不純物を除去する工程を必要とする。特許文献1~3の異形微粒子の製造方法についても、製造過程で重合反応に関与しない疎水性物質を多量に添加する必要があり、それら疎水性物質を除去するためには製造工程が煩雑となる。またそれら疎水性物質を除去する工程を設けないと、粒子に残存した疎水性物質が不純物となり、不具合の原因となり得る。
【0005】
本発明者は、簡素な方法で異形粒子を得るべく検討を重ねたところ、特定の構造を有する界面活性剤と水溶性開始剤を樹脂微粒子の重合に用いることで、重合に関与しない疎水性物質、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、流動パラフィンといった液状飽和炭化水素やシリコーンオイル等を添加することなく凹形状の樹脂微粒子を得られることを見出した。
【0006】
本発明は、簡素な方法で凹形状樹脂微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 重合性不飽和炭化水素基を有する重合性単量体を、水を主体とした分散媒に分散させ、懸濁化し、重合させる樹脂微粒子の重合において、少なくとも式(1)で表される界面活性剤を分散剤として用い、かつ、水溶性開始剤を用いることで、凹形状樹脂微粒子を得る、凹形状樹脂微粒子の製造方法であって、
前記水溶性開始剤の使用量が、前記重合性単量体の使用量の100質量部に対して、3.0質量部未満であることを特徴とする、凹形状樹脂微粒子の製造方法。
O-(RO)(EO)-T ・・・(1)
式(1)中、Tは水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基であり、Tは水素原子、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基又はアンモニウム基であり、ROは炭素数3~18のオキシアルキレン基であり、nは1~50の整数であり、EOはオキシエチレン基であり、mは0~200の整数である。
[2] 前記水溶性開始剤が無機過酸化物である、[1]に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
[3] 前記無機過酸化物が、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及び過酸化水素からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
[4] 前記式(1)において前記Tが炭素数1~18のアルケニル基である、[1]~[3]のいずれかに記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
[5] 前記凹形状樹脂微粒子の平均粒子径が0.5~500μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
[6] 前記重合性単量体と前記界面活性剤とを分散させた第1分散液に、前記水溶性開始剤を含む水溶液を添加し、連続相を前記重合性単量体とし、かつ、分散相を水とした第2分散液を調製する、[1]~[5]のいずれかに記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
[7] 前記第2分散液と、第2の界面活性剤を含む水溶液とを混合し、連続相を水とし、かつ、分散相を前記重合性単量体とした第3分散液を得る、[6]に記載の凹形状樹脂微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凹形状樹脂微粒子の簡素な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程1を模式的に説明するための図である。
図1B】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程1を模式的に説明するための図である。
図1C】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程1を模式的に説明するための図である。
図1D】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程2を模式的に説明するための図である。
図1E】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程2を模式的に説明するための図である。
図1F】本発明実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法の工程3を模式的に説明するための図である。
図2】実施例1の凹形状樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】実施例4の凹形状樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】実施例5の凹形状樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例1の樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例2の樹脂微粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の変形が可能である。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲には「~」の両側の数値を含む。
本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の総称である。同様に、「(メタ)アクリル基」は「アクリル基」及び「メタクリル基」の総称であり、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの総称である。
本発明において、「重合開始剤」を「開始剤」と記載することがある。
【0011】
[凹形状樹脂微粒子の製造方法]
本発明の一実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法は、重合性不飽和炭化水素基を有する重合性単量体を、水を主体とした分散媒に分散させ、懸濁化し、重合させる樹脂微粒子の重合において、少なくとも式(1)で表される界面活性剤を分散剤として用い、かつ、水溶性開始剤を用いることで、凹形状樹脂微粒子を得る。
O-(RO)(EO)-T ・・・(1)
式(1)中:
は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基である。
は、水素原子、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基又はアンモニウム基である。
ROは炭素数3~18のオキシアルキレン基である。
EOはオキシエチレン基である。
mは0~200の整数である。
nは1~50の整数である。
【0012】
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法によれば、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子内部に中空構造を有する凹形状を有する樹脂微粒子が得られる。
なお、本実施形態において、「凹形状樹脂微粒子」とは、粒子の一部が開口して粒子内部に中空構造を有する凹形状を有する樹脂微粒子を含むと定義される。
【0013】
「水を主体とした分散媒」とは、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲においては、特に限定されないが、分散媒中の水は、通常、50質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0014】
以下に、本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法に用いる構成成分と、製造方法と、得られる凹形状樹脂微粒子について、詳細に説明する。
【0015】
[構成成分]
〈界面活性剤A〉
O-(RO)(EO)-T ・・・(1)
式(1)中:
は、水素原子、炭素数1~18のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基である。
は、水素原子、スルホン酸基、スルホン酸塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、アミノ基又はアンモニウム基である。
ROは、炭素数3~18のオキシアルキレン基である。
EOは、オキシエチレン基である。
mは、0~200の整数である。
nは、1~50の整数である。
【0016】
式(1)で表される界面活性剤Aは、市販品のアニオン界面活性剤としては、例えば、アクアロンKHシリーズ及びハイテノーXJ-630S(いずれも第一工業製薬社製)、並びにラムテルPD-104及びラムテルPD-105(いずれも花王社製)が挙げられる。
また、市販品のノニオン界面活性剤としては、例えば、ノイゲンXLシリーズ(第一工業製薬社製)、ラムテルPD-420、ラムテルPD-430、ラムテルPD-450、エマルゲンLSシリーズ、エマルゲンMSシリーズ及びエマルゲンPPシリーズ(いずれも花王社製)、並びにファインサーフNDBシリーズ、IDEPシリーズ、ワンダーサーフNDRシリーズ、IDシリーズ及びSシリーズ(いずれも青木油脂工業社製)が挙げられる。
【0017】
本実施形態における界面活性剤の使用量は、特に限定されないが、後述する重合性単量体100質量部に対して、0.05~5.0質量部が好ましい。
界面活性剤Aの使用量が上記範囲内であると、安定的に凹形状樹脂微粒子が得られやすい。
また、界面活性剤Aの使用量が上記範囲内であると、凹形状樹脂微粒子の中空構造が完全なものとなりやすく、粒子を構成する樹脂の特性を損ないにくい。
また、得られる凹形状樹脂微粒子中に界面活性剤が残存した場合に、ブリードを抑制できるという点で、Tは、炭素数2~18のアルケニル基が好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、界面活性剤Aを「式(1)で表される界面活性剤(第1の界面活性剤)」という場合もあり、「第2の界面活性剤」という場合もある。
界面活性剤Aを「第1の界面活性剤」、「第2の界面活性剤」と示すことがあるのは、以下に詳述する製造工程において、複数回界面活性剤Aを別途用いて樹脂微粒子を調製する場合があるためである。
すなわち、樹脂微粒子の調製において、例えば、2回の工程に分けて、界面活性剤Aを添加する際に、2回の工程で界面活性剤Aを区別して示す場合に、理解を容易にするために、「第1の界面活性剤」、「第2の界面活性剤」と称するときがある。
なお、「第2の界面活性剤」としては、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述の界面活性剤Aとは異なる界面活性剤を用いてもよい。
なお、「第2の界面活性剤」に代えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、後述する「任意の分散剤」を用いてもよい。
「第2の界面活性剤」及び「任意の分散剤」は、任意の1種類を単独で用いてもよく、任意の2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、樹脂微粒子の調製において、例えば、2回の工程に分けて、界面活性剤Aを添加する際にも、界面活性剤Aの使用量の合計は、後述する重合性単量体A100質量部に対して、0.05~5.0質量部であることが好ましい。
【0019】
〈重合性単量体〉
重合性単量体は、重合性不飽和炭化水素基を有する重合性単量体であり、例えば、(メタ)アクリル単量体及び芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
なお、本明細書において、「重合性不飽和炭化水素基を有する重合性単量体」を、単に「重合性単量体」と呼ぶ場合がある。
【0020】
(メタ)アクリル単量体は、例えば、単官能(メタ)アクリレート及び二官能以上の重合性官能基を有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(n-ブトキシ)プロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキシド(EO)が1~9の(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、炭素数4~9のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、ジビニルベンゼンが挙げられ、スチレン系モノマーが好ましい。
前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本実施形態に係る重合性単量体においては、上記(メタ)アクリル単量体において、上記単官能(メタ)アクリレートと、上記多官能(メタ)アクリレートと、を組み合わせて用いてもよく、(メタ)アクリル単量体と、芳香族ビニルモノマーと、を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る中空樹脂微粒子を製造する際の重合性単量体における、上記単官能(メタ)アクリレート、上記多官能(メタ)アクリレート及び芳香族ビニルモノマーの比率は特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレートが20~95質量部であってもよく、多官能(メタ)アクリレートが1~30質量部であってもよく、芳香族ビニルモノマーが10~50質量部であってもよい。
他のモノマーとしては、本発明の効果を阻害せずに、アクリルモノマーと共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリルなどを用いてよい。
また、必要に応じて連鎖移動剤等の添加剤を用いてもよい。
【0025】
〈油溶性開始剤〉
油溶性開始剤は、例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイル等の過酸化物系開始剤、並びに2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)等の油溶性アゾ系開始剤である。
【0026】
前記油溶性開始剤の使用量は、前記重合性単量体100質量部に対して、0.05~3.0質量部が好ましく、0.1~2.0質量部がより好ましく、0.2~1.5質量部がさらに好ましい。
前記油溶性開始剤の使用量が0.05質量部以上であれば、前記重合性単量体の未反応のモノマーの割合をより減らすことができる。
一方、前記油溶性開始剤の使用量が3.0質量部以下であれば、前記油溶性開始剤が分解した分解物が不純物として残ることをより抑制できる。
【0027】
〈水溶性開始剤〉
水溶性開始剤は、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及び過酸化水素水等の無機過酸化物である。
前記水溶性開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記水溶性開始剤としては、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及び過酸化水素水からなる群から選択されス少なくとも1種が好ましく、ペルオキソ二硫酸カリウムがより好ましい。
【0028】
前記水溶性開始剤の使用量は、前記重合性単量体100質量部に対して、0.05~3.0質量部が好ましく、0.1~2.0質量部がより好ましく、0.2~1.0質量部がさらに好ましい。
前記水溶性開始剤の使用量が、前記重合性単量体100質量部に対して、0.05質量部以上であれば、凹形状の粒子を得ることができる。
一方、前記水溶性開始剤の使用量が、前記重合性単量体の100質量部に対して、3.0質量部以下であれば、粒子の形状を維持することができる。
【0029】
〈任意の界面活性剤〉
本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤A以外の界面活性剤として、以下に示す任意の界面活性剤(界面活性剤Aとは異なる界面活性剤)を用いてもよい。
換言すれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記界面活性剤Aに加えて、適宜界面活性剤を加えてもよい。
【0030】
前記任意の界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0031】
アニオン界面活性剤としては、具体的には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム等のアルキル(もしくはアリール)スルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル(もしくはアルケニル)硫酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキル(もしくはアルケニル)エーテル硫酸塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩、又はこれらの誘導体類などが挙げられる。これらアニオン界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
カチオン界面活性剤としては、具体的には、ドデシルベンジルメチルアンモニウムクロライド等のアルキルベンジルメチルアンモニウム塩;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライト等のアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩;などの四級アンモニウム塩が挙げられる。これらカチオン界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記任意の界面活性剤を使用する場合、その使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.05~5.0質量部が好ましく、0.05~3.0質量部がより好ましく、0.05~1.5質量部がさらに好ましい。
前記任意の分散剤の使用量が上記範囲内であると、安定的に凹形状の粒子を得ることができ、且つ、残存する不純物の量を少なくすることができる。
【0034】
〈任意の分散剤〉
重合の安定性を向上させるため、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の分散剤を用いてもよい。任意の分散剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
有機系分散剤としては、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
無機系分散剤としては、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記任意の分散剤を使用する場合、その使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.05~5.0質量部が好ましく、0.05~3.0質量部がより好ましく、0.05~1.5質量部がさらに好ましい。
前記任意の分散剤の使用量が上記範囲内であると、重合時の安定性を維持しつつ、残存する不純物の量を少なくすることができる。
【0036】
〈分散媒〉
分散媒はイオン交換水等の公知の水を単独で用いてもよく、適宜、アルコール等の水と混和する公知の溶媒を併用してもよい。
なお、本実施形態における「水を主体とした分散媒」とは、本発明の目的及び効果を阻害しない範囲においては、水とアルコール等の水と混和する公知の溶媒を併用してよく、特に限定されないが、分散媒中の水が50%以上であってよく、70%以上であってよく、90%以上であってもよく、分散媒が水のみであってもよい。
なお、界面活性剤と同様に、本明細書において、分散媒、溶媒として用いる水を「第1の水」、「第2の水」と呼ぶことがある。
例えば、2回の工程に分けて、水を添加する際に、2回の工程で水を区別して示す場合に、理解を容易にするために、「第1の水」、「第2の水」のように呼ぶことがある。
【0037】
〈凹形状樹脂微粒子の製造方法〉
本実施形態に係る懸濁重合方法の模式図、概略図を図1A図1Fに示す。
詳細な工程は、以下の通りである。
【0038】
(工程1)
油溶性開始剤を重合性単量体4と式(1)で表される界面活性剤A(第1の界面活性剤)の混合液(油溶性開始剤-重合性単量体4-界面活性剤A混合液、第1A混合液、第1分散液)1を調製し、油溶性開始剤-重合性単量体4-界面活性剤A混合液1をホモミキサー等の撹拌機100を用いて撹拌する(図1A)。
撹拌された油溶性開始剤-重合性単量体4-界面活性剤A混合液1中に、水溶性開始剤を溶解した水(第2A混合液)2を添加し、分散させて、連続相を重合性単量体4、分散相を水6とした分散液(W/O型(Water in Oil型)の分散液、第2分散液)11を調製する(図1B図1C)。
前記水溶性開始剤の使用量は、重合性単量体4の使用量の100質量部に対して、通常、3.0質量部未満であり、0.01~2.0質量部が好ましく、0.01~1.0質量部がより好ましい。
すなわち、油溶性開始剤-重合性単量体-界面活性剤A混合液1中に第2A混合液2が分散した分散液11を得る。
【0039】
(工程2)
工程1の後、式(1)で表される界面活性剤A(第2の界面活性剤)を混合した水(界面活性剤A-水混合液、第3A混合液)3を、撹拌機100で撹拌中の分散液11に加えることにより、連続相が水6、分散相が重合性単量体4となるよう相転換(分散相転換)をした懸濁液(W/O/W型(Water in Oil in Water型)の懸濁液、第3分散液)12を製造する(図1D図1E)。
【0040】
すなわち、連続相が水6となり、分散相が重合性単量体4となるように調製された(水6に重合性単量体4が分散した)懸濁液12を得る。
換言すれば、本実施形態においては、前記懸濁液を準備する際に、(工程1)として、界面活性剤A(第1の界面活性剤)と重合性単量体4と前記油溶性開始剤とを含む第1A混合液1と、水及び前記水溶性開始剤を含む第2A混合液2と、を準備し、第1A混合液1に第2A混合液2を加え、(工程2)として、さらに界面活性剤A(第2の界面活性剤)を含む第3A混合液3を第1A混合液1と第2A混合液2とにより形成された分散液11に添加することにより懸濁液12を調製できる。
【0041】
(工程3)
さらに、(工程2)の後、懸濁液12を懸濁重合することによって、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子内部に中空構造を有し、凹形状を有する樹脂微粒子15を製造できる(図1F)。
なお、懸濁重合を行う際には、図1に示すように、重合する懸濁液12の濃度調整のために、懸濁液12に水6を加えてもよい。
【0042】
(凹形状になる原理の推測)
第2分散液11(W/O型の分散液)の水相に水溶性開始剤を含むことで、懸濁液12(W/O/W型の懸濁液)の懸濁重合時、油相中の重合性単量体4液滴内部で乳化重合も同時に進行する。そのため、本来、球状を維持しつつ重合性単量体4液滴が懸濁重合し、球状樹脂微粒子になるところ、重合性単量体4液滴内部で起こる乳化重合により、重合性単量体4液滴の内側より重合性単量体4が消費されることで、球状を維持し得る樹脂成分が不足し、重合中の重合性単量体4液滴が球状を維持できず、凹形状の粒子が得られると推測する。よって、添加する水溶性開始剤の量が少ないと、重合性単量体4液滴内側の重合性単量体4消費量が少ないため、球状に近い形を維持できる。一方、添加する水溶性開始剤の量が多いと、重合性単量体4液滴内部の重合性単量体4消費量が多く、粒子の形状を維持できず、破れた膜のような形状となる。
【0043】
[凹形状樹脂微粒子]
本実施形態に係る製造方法によって得られる凹形状樹脂微粒子は、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子内部に中空構造を有する凹形状を有する微粒子である。
なお、後述する実施例でも示すが、凹形状を有する本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子は、例えば、真球上樹脂微粒子に比べ光拡散性に優れており、光拡散シートや導光板等への応用が期待できる。また、真球状粒子に比べ吸油性にも優れるため、化粧品等への応用も期待できる。
【0044】
〈平均粒子径〉
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~500μmが好ましく、0.5~100μmがより好ましく、1~50μmがさらに好ましい。
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、安定的に樹脂微粒子を重合することができる。
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製)によって測定される50%体積平均粒子径である。
【0045】
〈光拡散性〉
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の光拡散性は、凹形状樹脂微粒子と同等の屈折率を有する樹脂に凹形状樹脂微粒子を分散せしめた試験片を作成し、得られた試験片の全光線透過率とヘーズ値とをヘーズメーター(村上色彩技術研究所製)にて測定し、以下の基準に従って評価する。
(A評価)全光線透過率が80%以下かつヘーズ値が30%以上である。
(B評価)全光線透過率またはヘーズ値が前記範囲外である(「全光線透過率80%以下かつヘーズ値が30%以上」でない)。
なお、A評価を光拡散性試験の結果が良好であるといい、B評価を光拡散性試験の結果が良好でないという場合がある。
【0046】
〈吸油量〉
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の吸油量は、JIS K 5101-13-1:2004に準拠して測定される、精製あまに油の吸油量である。
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の吸油量は、特に限定されないが、60g/100gが好ましい。吸油量が60g/100g以上であると、本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子を、例えば、化粧品等に配合した場合、肌へのすべり性を維持しつつ、密着性を向上させる効果が期待できる。
【0047】
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子は、凹形状を有し、粒子内部に空間を有する凹形状樹脂微粒子である。
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子は、一般的な球状粒子(例えば、内部に空間や中空構造を持たずに密に形成された粒子)と比較して、例えば、光拡散性に優れる。また表、面積が大きく、吸油量が高い。
【0048】
〈用途〉
本実施形態に係る製造方法により得られた凹形状樹脂微粒子の用途は特に限定されないが、例えば、光反射材や液晶バックライト用光拡散板などの光拡散材、化粧品等へ用いることができる。
【0049】
〈作用効果〉
本実施形態に係る凹形状樹脂微粒子の製造方法によって得られた凹形状樹脂微粒子は、例えば、液晶バックライト用光拡散板などの光拡散材として用いた場合、優れた光拡散効果を示す。
また、化粧品に配合した場合、肌へのすべり性を維持しつつ、密着性を向上させる効果が期待できる。
【実施例
【0050】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例及び比較例で製造した粒子について以下に示す。
【0051】
[実施例1]
〈状樹脂微粒子の調製〉
以下に示す手順にて、表1に示す組成にて、実施例1に係る樹脂微粒子を調製した。
重合性単量体(メタクリル酸メチル、富士フイルム和光純薬社製97質量部及び二官能(メタ)アクリレート(エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、東京化成工業社製)3質量部)に、前記重合性単量体の100質量部に対して、界面活性剤(ノイゲンXL-400D、第一工業製薬社製)を0.2質量部となるように、かつ、油溶性開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、富士フイルム和光純薬社製)を1.0質量部となるように、添加し、混合液(第1A混合液)を調製した。
調製した第1A混合液をホモミキサーに入れて、撹拌した。
次に、前記重合性単量体の100質量部に対して0.5質量部となる水溶性開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム、富士フイルム和光純薬社製)と、前記重合性単量体の100質量部に対して10質量部となる水(脱イオン蒸留水、富士フイルム和光純薬社製)との混合液(第2A混合液)を調製した。
次に、第1A混合液を撹拌しながら、調製した第2A混合液を添加した。これにより、連続相を前記重合性単量体、分散相を水とする分散液11(W/O型(Water in Oil型)の分散液)を得た。
次に、前記重合性単量体の100質量部に対して150質量部となる水(脱イオン蒸留水、富士フイルム和光純薬社製)と、前記重合性単量体の100質量部に対して1.0質量部となる界面活性剤(ノイゲンXL-400D、第一工業製薬社製)との混合液(第3A混合液)を調製した。
次に、分散液11を撹拌しながら、調製した第3A混合液を添加した。これにより、連続が水、分散相が前記重合性単量体となるように相転換をした懸濁液12(W/O/W型(Water in Oil in Water型)の懸濁液)を得た。
次に、得られた懸濁液12を、撹拌機、コンデンサ、温度計及び窒素同入管を付した4口フラスコに投入し、窒素封入下で75℃まで昇温し、75℃で4時間反応させた。
その後、得られた懸濁液をろ過し、前記重合性単量体の100質量部に対して250質量部となる水道水で洗浄後、60℃で12時間乾燥して樹脂微粒子15を得た。
【0052】
〈粒子形状〉
製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡(日本電子社製)による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子の内部に空間を有する凹形状を有する凹形状樹脂微粒子が観察された。
表1に下記基準で評価した粒子形状の評価結果を記載する。
A…凹形状
B…一部凹形状
C…凹形状(一部破れ)
D…破れ
E…真球状
また、図2に透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0053】
〈平均粒子径〉
レーザ回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製)を用いて、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0054】
〈光拡散性〉
得られた中空樹脂微粒子2.0gとポリメタクリル酸メチル樹脂の40質量%トルエン溶液45gをガラス瓶に投入し、振とう機で30分間混合することで、樹脂トルエン溶液-中空樹脂微粒子分散体を得た。前記分散体を厚さ1mmのガラス板にギャップ150μmのアプリケーターで塗工し、100℃で10分間乾燥し、試験片を得た。得られた試験片の全光線透過率とヘーズ値とをヘーズメーター(村上色彩技術研究所製)にて測定し、光拡散性を評価した。表1において、光拡散性試験の結果が良好であった場合を「A」と示し、光拡散性試験の結果が良好でなかった場合を「B」と示した。
光拡散性試験の結果が良好(A評価)とは、試験結果が全光線透過率80%以下かつヘーズ値が30%以上の場合であり、光拡散性の結果が良好でない(B評価)とは、試験結果が前記範囲外の場合(「全光線透過率80%以下かつヘーズ値が30%以上」を満たさない場合)と定義した。
得られた試験片の全光線透過率は72.3%、ヘーズ値は40.2%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はAであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
以下の実施例および比較例においても、同様に評価した。
【0055】
〈吸油量〉
JIS K 5101-13-1:2004に準拠して、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は89g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0056】
[実施例2]
〈樹脂微粒子の調製〉
重合性単量体として、メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)の90質量部及び二官能(メタ)アクリレート(エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、東京化成工業社製)の10質量部を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0057】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子の内部に空間を有する凹形状を有する凹形状樹脂微粒子が観察された(評価:A)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
【0058】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0059】
〈光拡散性〉
実施例1と同様に、試験片を作成し、ヘーズメーターにて得られた試験片の光拡散性を評価したところ、全光線透過率は71.8%、ヘーズ値は43.2%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はAであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
【0060】
〈吸油量〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は92g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0061】
[実施例3]
〈樹脂微粒子の調製〉
重合性単量体として、メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)の60質量部、スチレン(スチレンモノマー、デンカ社製)の30質量部及び二官能(メタ)アクリレート(エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、東京化成工業社製)の10質量部を用いた点を除いて、実施例1と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0062】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子の内部に空間を有する凹形状を有する凹形状樹脂微粒子が観察された(評価:A)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
【0063】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0064】
〈光拡散性〉
実施例1と同様に、試験片を作成し、ヘーズメーターにて得られた試験片の光拡散性を評価したところ、全光線透過率は74.2%、ヘーズ値は38.5%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はAであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
【0065】
〈吸油量〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は84g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0066】
[実施例4]
水溶性開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム)を、重合性単量体の100質量部に対して0.01質量部用いた点を除いて、実施例2と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0067】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子の内部に空間を有する一部凹形状を有する凹形状樹脂微粒子が観察された(評価:B)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
また、図3に透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0068】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0069】
〈光拡散性〉
実施例1と同様に、試験片を作成し、ヘーズメーターにて得られた試験片の光拡散性を評価したところ、全光線透過率は79.2%、ヘーズ値は31.8%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はAであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
【0070】
〈吸油量〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は62g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0071】
[実施例5]
水溶性開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム)を、重合性単量体の100質量部に対して2.5質量部用いた点を除いて、実施例2と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0072】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、粒子表面が平滑であり、粒子の一部が開口して粒子の内部に空間を有する凹形状(一部破れ)を有する凹形状樹脂微粒子が観察された(評価:C)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
また、図4に透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0073】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0074】
〈光拡散性〉
実施例1と同様に、試験片を作成し、ヘーズメーターにて得られた試験片の光拡散性を評価したところ、全光線透過率は73.4%、ヘーズ値は39.1%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はAであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
【0075】
〈吸油量〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は90g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0076】
[比較例1]
水溶性開始剤(ペルオキソ二硫酸カリウム)を、重合性単量体の100質量部に対して3.0質量部用いた点を除いて、実施例2と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0077】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、破れた樹脂微粒子が観察された(評価:D)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
また、図5に透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0078】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0079】
〈光拡散性、吸油量〉
光拡散性及び吸油量の測定は行わなかった。
【0080】
[比較例2]
界面活性剤をノイゲンXL-400D(第一工業製薬社製、式(1)で表される化合物に該当)から、アデカリアソープSR-10(アデカ社製、エーテルサルフェート型アンモニウム塩、式(1)で表される化合物に非該当)に変更した点を除いて、実施例2と同様にして、樹脂微粒子を調製した。
【0081】
〈粒子形状〉
実施例1と同様に、製造した樹脂微粒子を回収し、走査型電子顕微鏡による粒子表面と粒子形状の観察を行った。
その結果、真球状の樹脂微粒子が観察された(評価:E)。
表1に粒子形状の評価結果を示す。
また、図6に透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0082】
〈平均粒子径〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の平均粒子径の測定を行ったところ、平均粒子径は10μmであった。
表1に平均粒子径の測定結果を示す。
【0083】
〈光拡散性〉
実施例1と同様に、試験片を作成し、ヘーズメーターにて得られた試験片の光拡散性を評価したところ、全光線透過率は91.1%、ヘーズ値は6.9%であり、樹脂微粒子の光拡散性評価はBであった。表1に光拡散性評価結果を示す。
【0084】
〈吸油量〉
実施例1と同様に、得られた樹脂微粒子の精製あまに油の吸油量の測定を行ったところ、吸油量は55g/100gであった。
表1に吸油量の測定結果を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1中の略号は下記化合物又は下記商品名を表す。
MMA:メタクリル酸メチル
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
XL-400D:ノイゲンXL-400D(第一工業製薬社製)
SR-10:アデカリアソープSR-10(アデカ社製)
表1中で、各成分の使用量は質量部で表す。また、各成分における空欄の部分は、その成分を使用していないことを意味する。
【0087】
表1に示すように、実施例1~5に係る製造方法により得られた樹脂微粒子は、凹形状樹脂微粒子であった。
これに対して、式(1)で表される界面活性剤の使用量が重合性単量体の100質量部に対して3.0質量部であった比較例1では、樹脂微粒子が破れてしまい、凹形状樹脂微粒子は製造できなかった。
また、式(1)で表される界面活性剤を使用しなかった比較例2に係る製造方法により得られた樹脂微粒子は、真球状樹脂微粒子であり、凹形状樹脂微粒子は製造できなかった。
【0088】
実施例1~5の凹形状樹脂微粒子は、比較例2の真球状樹脂微粒子と比較して、平均粒子径は同じであるが、光拡散性に優れた。これらの結果から、本発明の製造方法で製造した凹形状樹脂微粒子は光拡散材等への応用が期待できる。また吸油量も真球上樹脂微粒子と比較して、高い値を得られることから、化粧品等への応用も期待できる。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組合せなどは一例であり、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変形が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の凹形状樹脂微粒子の製造方法は簡素な製造工程で、粒子径が同じ真球状樹脂微粒子に比べて、光拡散性に優れ、また吸油量が大きな凹形状樹脂微粒子を製造できる。
本発明の凹形状樹脂微粒子の製造方法によって得られる凹形状樹脂微粒子は、例えば、
光反射材や液晶バックライト用光拡散板などの光拡散材、化粧品等への応用が期待できる。
【符号の説明】
【0091】
1…油溶性開始剤-重合性単量体-界面活性剤A混合液(第1A混合液、第1分散液)
2…水溶性開始剤を溶解した水(第2A混合液)
3…界面活性剤A-水混合液(第3A混合液)
4…重合性単量体
6…水
11…W/O型(Water in Oil型)の分散液(水溶性開始剤を含む)(第2分散液)
12…W/O/W型(Water in Oil in Water型)の懸濁液(水溶性開始剤を含む)(第3分散液)
15…凹形状樹脂微粒子(凹形状を有する樹脂微粒子)
100…撹拌機
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5
図6