(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラムおよび学習装置
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20240710BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240710BHJP
【FI】
E02D1/02
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020151362
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】板東 真平
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157346(JP,A)
【文献】特開2020-051213(JP,A)
【文献】特開2019-167751(JP,A)
【文献】特開2019-127701(JP,A)
【文献】特許第4958028(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工予定場所に関する
土質区分と地盤強度情報との少なくとも一方を含む地質情報を取得する取得部と、
施工終了場所に関する
前記地質情報を入力データとし、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記取得部にて取得した前記施工予定場所に関する前記地質情報を入力することで、想定電流値を生成するモデル実行部と、
前記モデル実行部にて生成された前記想定電流値を表示装置に表示させる表示制御部と、を具備する情報処理装置。
【請求項2】
前記正解データは、前記施工予定場所
に関する前記地質情報と前記施工終了場所に関する前記地質情報との類似度が閾値以上である
ときの前記施工終了場所に関するデータである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記正解データは、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所に関するデータである、請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記想定電流値と、前記施工予定場所の掘削中に得られる電流値とを並列して表示する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記電流値と、前記施工予定場所の掘削中に得られる電流値とを重畳して表示する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
施工予定場所に関する
土質区分と地盤強度情報との少なくとも一方を含む地質情報を取得する取得手段と、
施工終了場所に関する
前記地質情報を入力データとし、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記取得手段にて取得した前記施工予定場所に関する
前記地質情報を入力することで、想定電流値を生成するモデル実行手段と、
前記モデル実行手段にて生成された前記想定電流値を表示装置に表示させる表示制御手段として機能させるための情報処理プログラム。
【請求項7】
施工終了場所に関する
土質区分と地盤強度情報との少なくとも一方を含む地質情報と、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値とを対応付けた施工データを格納する格納部と、
前記地質情報を入力データとし
、前記電流値を正解データとした学習用データを用いてモデルを学習させ、学習済みモデルを生成する学習部と、を具備する学習装置。
【請求項8】
施工予定場所に関する前記地質情報を取得する取得部と、
前記格納部から、前記施工予定場所
に関する前記地質情報と前記施工終了場所に関する前記地質情報との類似度が閾値以上であるときの前記施工終了場所に関する施工データを前記学習用データとして選択する選択部と、をさらに具備し、
前記学習部は、前記選択部により選択された前記学習用データを用いてモデルを学習させ、前記学習済みモデルを生成する、請求項7に記載の学習装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所の施工データを選択する、請求項
8に記載の学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理プログラムおよび学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に杭を設置する杭工事において、施工予定場所の地質状況を把握することは重要である。特に、構造物の重量を支持する支持層の深度を把握することが重要である。
【0003】
施工予定場所に杭を施工する際は、実際の施工に先駆けて施工予定場所で試験掘削を実施する。試験掘削では、実際に孔を掘削して掘削機のオーガモータの電流値の変動や掘削ヘッドに付着した土砂を採取することにより、予め調査された地質情報と実際の地質とが一致しているかを確認する。施工予定場所全体において満遍なく試験掘削を実施することが望ましいが、コストや工期の関係から試験掘削は1~数カ所のみ実施する場合が多い。
【0004】
地盤を評価する手法として、例えば特許文献1では、試験掘削にて取得される各深度の電流値、掘削速度等を入力要素とする入力層と、所定の深度間隔で取得されるN値を出力層とした教師データにより機械学習したN値算出モデルを用いて、実際の杭施工時に取得した入力要素に対して所定深度のN値(以下、推定N値という)を推定する地盤評価システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、所定の深度間隔、一般的には1m間隔で測定されるN値を教師データとして用いるので1本の孔を掘削して取得できる測定値は数個~数十個程度である。したがって、試験掘削により取得されるデータ数が少ないため、生成されたN値算出モデルの精度が低いという問題点がある。このため、実際の杭の施工時に取得できる電流値や掘削速度等に基づいて推定N値を算出しても実際の地質を反映した結果が得られないという問題点がある。
そこで、本発明は教師データとして多量に取得可能な電流値に基づいて、施工予定場所に関する想定電流値を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る情報処理装置は、取得部と、モデル実行部と、表示制御部とを備える。取得部は、施工予定場所に関する地質情報を取得する。モデル実行部は、施工終了場所に関する地質情報を入力データとし、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する前記地質情報を入力することで、想定電流値を生成する。表示制御部は、前記想定電流値を表示装置に表示させる。
上記構成(1)によれば、教師データである電流値を多量に取得できるので、施工終了場所を掘削した際の電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルを精度良く生成できる。
そして、学習済みモデルの精度が高いので、施工予定場所に関する想定電流値を精度良く算出することができる。
さらに、想定電流値の精度が高いので、表示制御部によって表示される推定電流値を見ながらユーザが地盤評価を正確に行うことができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)において、
前記正解データは、前記施工予定場所の地質と類似度が閾値以上である地質を有する施工終了場所に関するデータである。
上記構成(2)によれば、地質が似たデータで学習した学習済みモデルを用いることで、施工予定場所の地質に適した想定電流値を得ることができる。
【0009】
(3)いくつかの実施形態では、上記構成(1)または上記構成(2)において、
前記正解データは、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所に関するデータである。
上記構成(3)によれば、施工予定場所近くのデータで学習した学習済みモデルを用いることで、施工予定場所の地質に適した想定電流値を得ることができる。
【0010】
(4)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(3)のいずれか1つにおいて、
前記表示制御部は、前記想定電流値と、前記施工予定場所の掘削中に得られる電流値とを並列して表示する。
上記構成(4)によれば、想定電流値と掘削中の電流値とを、データが一見して分かるように並列表示することで、ユーザの判断を支援することができる。具体的には、掘削が支持層に到達したか否かを視覚的に判断することができる。
【0011】
(5)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(3)のいずれか1つにおいて、
前記表示制御部は、前記想定電流値と、前記施工予定場所の掘削中に得られる電流値とを重畳して表示する。
上記構成(5)によれば、想定電流値と掘削中の電流値とを、データが一見して分かるように重畳表示することで、ユーザの判断を支援することができる。具体的には、掘削が支持層に到達したか否かを視覚的に判断することができる。
【0012】
(6)本発明の一態様に係る情報処理プログラムは、コンピュータを、施工予定場所に関する地質情報を取得する取得手段と、施工終了場所に関する地質情報を入力データとし、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する地質情報を入力することで、想定電流値を生成するモデル実行手段と、前記想定電流値を表示装置に表示させる表示制御手段として機能させる。
上記構成(6)によれば、ユーザの判断を支援することができる。
【0013】
(7)本発明の一態様に係る学習装置は、施工終了場所に関する地質情報と、前記施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値とを対応付けた施工データを格納する格納部と、前記施工終了場所に関する前記地質情報を入力データとし、前記施工終了場所を掘削した際の前記電流値を正解データとした学習用データを用いてモデルを学習させ、学習済みモデルを生成する学習部と、を具備する。
上記構成(7)によれば、ユーザの判断を支援することができる。
【0014】
(8)いくつかの実施形態では、上記構成(7)において、
前記施工予定場所に関する前記地質情報を取得する取得部と、前記格納部から、前記施工予定場所に類似する施工終了場所に関する施工データを前記学習用データとして選択する選択部と、をさらに具備し、前記学習部は、前記選択部により選択された前記学習用データを用いてモデルを学習させ、前記学習済みモデルを生成する。
上記構成(8)によれば、施工予定場所にあわせて学習済みモデルを生成でき、適した想定電流値を出力することができる。
【0015】
(9)いくつかの実施形態では、上記構成(8)において、
前記選択部は、前記施工予定場所の地質と類似度が閾値以上である地質を有する施工終了場所の施工データを選択する。
上記構成(9)によれば、地質が似た学習済みモデルを生成でき、適した想定電流値を出力することができる。
【0016】
(10)いくつかの実施形態では、上記構成(8)または構成(9)において、
前記選択部は、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所の施工データを選択する。
上記構成(10)によれば、場所が似た学習済みモデルを生成でき、適した想定電流値を出力することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工予定場所に関する想定電流値を精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る情報処理装置を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置のモデル学習時の概念図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置のモデル利用時の概念図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る情報処理装置の動作の別例を示すフローチャートである。
【
図6A】学習済みモデルの出力データの表示例を示す図である。
【
図6B】学習済みモデルの出力データの表示の他の例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る情報処理装置の動作の別例を示すフローチャートである
【
図8】本実施形態に係る情報処理装置のモデル学習の再生成の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る情報処理装置、情報処理プログラムおよび学習装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態中では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0020】
本実施形態に係る情報処理装置について
図1のブロック図を参照して説明する。
本実施形態に係る情報処理装置1は、処理回路11、格納部12、通信インタフェース13を含み、それぞれバスを介して接続される。本実施形態に係る情報処理装置1は、管理者端末として、サーバ、PC、タブレット型情報端末、専用のコンピュータなどに実装されてもよいし、杭打ち機に搭載される管理装置に実装されてもよいし、情報処理装置1単独のデバイスとして構成されてもよい。情報処理装置1が単独のデバイスとして構成される場合は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力部、およびディスプレイなどの表示部を備えてもよい。
【0021】
処理回路11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのいずれかまたはこれらの組合せにより実現される。処理回路11は、取得部111と、学習部112と、モデル実行部113と、表示制御部114と、選択部115とを含む。
【0022】
取得部111は、後述する学習済みモデルの利用時に、施工予定場所に関する位置情報および地質情報を取得する。本実施形態では「施工予定場所」は、杭を地盤内に設置する予定の場所を想定するが、これに限らず、アンカーなど地盤内に対象物を埋め込む際に実測データを参照する必要がある作業にも適用可能である。位置情報は、住所でもよいし、緯度および経度の座標情報でもよい。地質情報は、少なくとも、深さ方向に沿った地質の状態を示す土質区分等の地質データ(例えば柱状図等)と、深さ方向に対する地盤の硬軟の程度を示す地盤強度情報(例えばN値、圧縮強度等)とを含む。地質情報は、その他にも地質調査日時、支持層と判定した深さ情報、地下水位情報等を含んでもよい。
【0023】
学習部112は、施工済みである施工終了場所に関する位置情報および地質情報を入力データとし、施工終了場所を掘削した際の掘削抵抗を示す電流値を正解データとして、ネットワークモデルを学習させることで、学習済みモデルを生成する。入力データと正解データとの組を学習用データと呼ぶ。本実施形態では「施工終了場所」は、杭が施工された既知の地質情報、電流値を有する場所を想定するが、杭の施工に限らず地質情報、電流値等のデータを有する場所であればよい。
また、本実施形態では積分電流値を用いた場合について説明するが、これに限定されるものではない。積分電流値は、掘削機のオーガモータの電流値を所定深度間隔で積分した積分値であり、深さ方向に沿って所定の深度間隔で算出される。
【0024】
モデル実行部113は、学習済みモデルに対して、施工予定場所に関する位置情報および地質情報を入力することで、想定積分電流値を出力する。想定積分電流値は、深さ方向に沿った積分電流値の想定値である。
【0025】
表示制御部114は、例えば後述の通信インタフェース13を介して、想定積分電流値を含む表示データを表示装置(図示しないが、例えばディスプレイ、プロジェクタを介したスクリーン)に表示させるように制御する。なお、表示制御部114は、通信インタフェース13とは異なる表示用のインタフェース(図示せず)を介して表示装置に表示データを表示させてもよい。
【0026】
選択部115は、所与の条件に応じて学習用データを選択する。学習用データの選択方法については、
図4および
図5のフローチャートを参照して後述する。
【0027】
格納部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成され、施工終了場所に関する位置情報、地質情報と当該場所を掘削した際の掘削情報を対応付けた施工データを格納する。
また、格納部12は、施工予定場所に関する位置情報および地質情報を対応付けて格納する。さらに、学習用データ、学習済みモデルなどを格納する。
なお、施工終了場所に関する掘削情報は、少なくとも、モータの電流値および積分電流値の時系列データを含むことを想定するが、掘削日時、掘削機の機種情報、掘削速度、供給水量などのデータを含んでもよい。
【0028】
通信インタフェース13は、所定の通信規格に準拠した、情報処理装置1と外部装置との間でデータ送受信を行うためのインタフェースである。通信規格としては、4G、5Gなどのモバイルネットワーク、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)などの無線ネットワーク、あるいは有線LAN、USB(Universal Serial Bus)などの有線ネットワークなどを想定する。
【0029】
次に、本実施形態に係る情報処理装置のモデル学習時について
図2の概念図を参照して説明する。なお、格納部12と、学習部112と、選択部115とをまとめて学習装置とも呼ぶ。
【0030】
学習部112は、地質調査済みの施工終了場所に関する位置情報、地質情報を入力データ21とし、当該施工終了場所を実際に施工した際に実測した積分電流値を正解データ22とした学習用データを用いて、ネットワークモデル20を学習させて学習済みモデル23を生成する。このように学習させることにより、学習済みモデル23は、地質情報に対する積分電流値を出力できるように学習される。
【0031】
学習方法としては、一般的な手法を用いて機械学習させればよい。例えば、ネットワークモデルは、ニューラルネットワーク、線形回帰、ランダムフォレストなどを用いればよい。さらに、ニューラルネットワークとしては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、多層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN:Deep CNN)、ResNet(Residual Network)、DenseNetなどに代表される多層ネットワークを用いればよい。
【0032】
なお、学習済みモデル23が、施工終了場所の地質情報に基づく類似グループごとに生成されてもよい。例えば、選択部115が、学習用データとして、似たような地質を有するデータを選択する。つまり、選択部115が、地質の傾向が類似する(地質の類似度、例えば柱状図の類似度が閾値以上の)施工終了場所に関する地質情報と掘削測定結果とを複数のグループに分けて予め用意する。複数のグループそれぞれの学習用データを用いてネットワークモデル20を機械学習することで、柱状図の傾向ごとに学習済みモデル23が生成される。なお、学習用データは、柱状図に限らず、N値の類似度に応じてグループ分けされてもよいし、柱状図とN値との組合せに応じてグループ分けされてもよく、その他の地質情報に基づいてグループ分けされてもよい。
【0033】
また、選択部115は、学習用データを、似たような位置情報、つまり住所が近い施工終了場所に関する地質情報と掘削測定結果とを複数のグループに分けて用意してもよい。類似する位置情報でグルーピングした複数のグループそれぞれの学習用データを用いて同様にモデルを学習させることにより、エリアごとの学習済みモデル23が生成される。
【0034】
もちろん、学習用データは、地質情報と位置情報との組合せに応じてグループ分けされて用意されてもよい。地質情報と位置情報との組合せに応じて学習用データをグループ分けする場合は、どちらのパラメータを優先させるか、地質情報と位置情報とを重み付けして学習用データが選択されてもよい。
【0035】
なお、学習用データは、施工予定場所に応じて作成されてもよい。学習用データの選択方法としては、例えば2つの方法が挙げられる。
【0036】
第1の選択方法としては、選択部115は、場所(位置情報)は異なるが、施工予定場所の地質情報から得られる柱状図の類似度が閾値以上となる施工終了場所の地質情報を入力データ21とし、当該施工終了場所の実測した積分電流値を正解データ22として選択する。
【0037】
第2の方法としては、選択部115は、施工予定場所から一定範囲内の距離における施工終了場所の地質情報を入力データ21とし、当該施工終了場所の実測した積分電流値を正解データ22として選択する。第2の方法を採用する場合は、施工予定場所から一定範囲の距離を基準として段階的に閾値を設けてもよい。具体的には、選択部115により、施工予定場所から半径100m以内の施工終了場所の地質情報を入力データとして収集したが、当該半径100m以内の地質情報のデータ数が十分でない(つまり、データ数が所定数未満である)と判定されたとする。この場合、選択部115は、半径200m以内の施工終了場所の地質情報、半径500m以内の施工終了場所の地質情報・・・といったように、データ数が所定数以上となるまで、選択対象となる施工終了場所のデータ収集範囲を拡げてもよい。
【0038】
次に、本実施形態に係る情報処理装置のモデル利用時について
図3の概念図を参照して説明する。
利用時において情報処理装置1のモデル実行部113は、施工予定場所の位置情報、地質情報を含む処理対象データを入力データ31として学習済みモデル23に入力することで、想定される掘削測定結果として、想定される積分電流値(以下、想定積分電流値ともいう)が出力データ32として生成される。施工予定場所の地質情報として、例えば、深さ方向の柱状図(地質データ)およびN値を想定するが、これに限らない。
【0039】
次に、本実施形態に係る情報処理装置1の動作について
図4のフローチャートを参照して説明する。
ステップS401では、取得部111が、施工予定場所の位置情報および地質情報を処理対象データとして取得する。
【0040】
ステップS402では、選択部115が、処理対象データに対応する学習済みモデルを選択する。例えば、処理対象データの位置情報および/または地質情報に類似するグループの学習済みモデルを選択する。
【0041】
具体的には、柱状図の傾向ごと、すなわち似た地質ごとに学習済みモデル23が生成されていれば、処理対象データに含まれる地質情報(柱状図)に基づいて、柱状図の類似度が閾値以上であるグループの学習用データにより学習された学習済みモデル23を選択すればよく、適した想定積分電流値を得ることができる。また、エリアごとに学習済みモデルが生成されていれば、入力データ31に含まれる位置情報に基づいて、当該位置情報が示す位置から一定範囲内であるグループの学習用データにより学習された学習済みモデルを選択すればよく、適した想定積分電流値を得ることができる。また、位置情報および地質情報の組合せに基づいて学習済みモデルが生成されていれば、処理対象データの位置情報および地質情報が類似する組合せに基づく学習済みモデルが選択されればよい。
【0042】
ステップS403では、モデル実行部113が、処理対象データをステップS402で選択された学習済みモデルに入力し、想定積分電流値が生成される。
ステップS404では、表示制御部114が、想定積分電流値と施工予定場所の掘削中に得られる積分電流値とをグラフ化し、ディスプレイなどに表示する。
なお、生成される学習済みモデルが1つの場合は、ステップS402の処理を省略すればよい。
【0043】
また、学習済みモデルの適用の別例として、事前に学習済みモデルを用意する代わりに、処理対象データを取得した後に、当該処理対象データに応じた学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態に係る情報処理装置1の動作の別例について
図5のフローチャートを参照して説明する。
ステップS501では、取得部111が、ステップS401と同様に、処理対象データを取得する。
【0045】
ステップS502では、選択部115が、処理対象データに基づいて学習用データを選択する。学習用データの選択方法としては、
図2で上述した学習用データの選択方法を用いればよい。例えば、処理対象データの位置情報から一定範囲内の距離における施工終了場所の地質情報を入力データとし、当該施工終了場所の実際の掘削測定結果を正解データとした学習用データを選択する。
【0046】
ステップS503では、学習部112が、ステップS502で選択された学習用データを用いて、ネットワークモデルを学習し、学習済みモデルを生成する。
ステップS504では、モデル実行部113が、生成された学習済みモデルに処理対象データを入力し、想定積分電流値を生成する。
ステップS505では、表示制御部114が、ステップS404と同様に、想定積分電流値と施工予定場所の掘削中に得られる積分電流値とをグラフ化し、ディスプレイに表示する。
【0047】
次に、学習済みモデルの出力データの表示例について
図6Aおよび
図6Bを参照して説明する。
ここでは、施工予定場所を施工中の場合に表示される例を示す。
図6Aに示すように、表示装置に表示される表示ウィンドウ60には、柱状
図61と、N値62と、積分電流値63とが並列表示される。積分電流値63のグラフ領域には、学習済モデルにより生成された想定積分電流値のグラフと、施工予定場所を掘削中の積分電流値のグラフがリアルタイムに描画される。ここでは、想定積分電流値は細線で、実測中の積分電流値は太線で示すが、線種、色で区別する、点滅表示するなど表示態様を変えるなど、想定積分電流値および実測中の積分電流値それぞれ区別可能な表示形態であればどのように表示してもよい。
なお、想定積分電流値および実測中の積分電流値は1つのグラフに重畳表示される例を示すが、
図6Bに示すように、想定積分電流値64および実測中の積分電流値65それぞれが並列表示されてもよい。並列表示する場合には、両積分電流値グラフの同一深度位置の高さが一致するように配置される。このように、データが一見して分かるように並列表示される。
【0048】
なお、柱状
図61とN値62と想定積分電流値とが並列表示されたグラフデータが、予め表示装置に表示されたり、プリントアウトなどにより外部に出力されてもよい。
【0049】
以上に示した実施形態によれば、施工終了場所に関する位置情報および地質情報を入力データとし、施工終了場所を掘削した際の積分電流値を正解データとして学習させた学習済みモデルを生成し、施工予定場所の位置情報および地質情報を学習済みモデルに入力することで、想定積分電流値を生成できる。そして、施工者または管理者は、
図6Aや
図6Bに示すような表示ウィンドウ60を作成することで、想定積分電流値に基づいて支持層に到達する深度を予測することができる。
また、想定積分電流値とリアルタイムに取得される電流値とを比較できるので支持層到達を直ちに判断することができる。
そして、教師データとして施工終了箇所の電流値を多量に用いるので学習済みモデルを精度良く生成できる。
さらに、学習済みモデルの精度が高いので、施工予定場所に関する想定電流値を精度良く算出することができる。
また、想定電流値の精度が高いので、表示制御部によって表示される電流値を見ながらユーザが地盤評価を正確に行うことができる。
【0050】
次に、他の実施形態について
図7および
図8を参照して説明する。
図7に示すように、前述した実施形態と同様にステップS401からステップS404までを実施した後、ステップS405にて施工予定場所の試験掘削が実施される。
ステップS406では、試験掘削において想定積分電流値と掘削中の積分電流値とをディスプレイに表示した状態で地盤を掘削して、当該掘削中の積分電流値のグラフ形状が想定積分電流値のグラフ形状に類似するか否かの判定処理が行われる。グラフ形状の類似度の判定は、施工者または管理者が判定してもよいし、情報処理装置1の処理回路11などで類似度が判定されてもよい。
特に、設計等によって設定した支持層深度に到達したと想定される場合に、掘削中の積分電流値のグラフ形状が想定積分電流値のグラフ形状と同様の挙動を示すか否かを確認する。
そして、掘削中の積分電流値のグラフ形状が想定積分電流値のグラフ形状に類似すると判定した場合には、学習済みモデルをそのままステップS408の本施工で使用してもよい。
【0051】
一方、掘削中の積分電流値のグラフ形状が想定積分電流値のグラフ形状に類似しないと判定された場合には、
図8に示すように、試験掘削によって取得された地質情報、積分電流値をそれぞれ入力データ、正解データとして、ステップS407にて学習済モデルを再生成する。
なお、掘削中の積分電流値のグラフ形状が想定積分電流値のグラフ形状に類似すると判定した場合であっても学習済モデルの精度を高めたい場合にはステップS407を実施してもよい。
図7に示すように、再びステップS403にて、モデル実行部113が再生成した学習済モデルに処理対象データを入力し、想定積分電流値が再生成される。
本実施形態では、想定積分電流値のグラフ形状と試験掘削中の積分電流値のグラフ形状とが類似しないと判定された場合には、試験掘削時に取得された積分電流値を正解データとして学習済モデルを修正するため、精度の高い学習済みモデルを生成することができる。
また、想定積分電流値のグラフ形状と試験掘削中の積分電流値のグラフ形状とが類似すると判定した場合であっても試験掘削時に取得された積分電流値を正解データとして学習済モデルを再生成することができるため、さらに精度の高い学習済みモデル生成することができる。
【0052】
上述の各実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記録媒体に記憶しておき、記憶されたプログラムを読み込むことにより、上述した識別装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。さらに、本実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・情報処理装置、11・・・処理回路、12・・・格納部、13・・・通信インタフェース、20・・・ネットワークモデル、21,31・・・入力データ、22・・・正解データ、23・・・学習済みモデル、31・・・入力データ、32・・・出力データ、60・・・表示ウィンドウ、61・・・柱状図、62・・・N値、63・・・積分電流値、111・・・取得部、112・・・学習部、113・・・モデル実行部、114・・・表示制御部、115・・・選択部。