(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】判定装置、判定プログラムおよび学習装置
(51)【国際特許分類】
E02D 1/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
E02D1/00
(21)【出願番号】P 2020151368
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】板東 真平
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157346(JP,A)
【文献】特開2020-051213(JP,A)
【文献】特開2019-167751(JP,A)
【文献】特開2019-127701(JP,A)
【文献】特開2011-038257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工予定場所に関する地質情報と、当該施工予定場所の掘削状況に関する掘削情報とを取得する取得部と、
施工終了場所に関する地質情報および当該施工終了場所を掘削した際に取得された掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する前記地質情報および前記掘削情報を入力することで、前記到達情報を出力するモデル実行部と、
を具備
し、
前記地質情報は、深さ方向に沿った地質の状態を表す柱状図と、地盤の硬軟の程度を表す地盤強度情報とのうちの少なくとも1つを含み、
前記掘削情報は、掘削用モータの瞬時電流値と、当該瞬時電流値を積分した積分電流値とのうちの少なくとも1つを含む、判定装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記施工予定場所の試験掘削時におけるデータを前記掘削情報として取得する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記取得部が取得する
前記掘削情報は、
前記積分電流値と、
地盤が前記地質情報に示される地質である場合を想定したときの、過去の積分電流値に基づく深さ方向に沿った積分電流値の想定値である想定積分電流値とを含み、
前記モデル実行部から前記支持層に到達したことを示す到達情報が出力された場合、前記積分電流値と前記想定積分電流値との差分が閾値以下であるか否かを判定する判定部をさらに具備する、請求項1または請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記入力データは、前記施工予定場所
に関する前記地質情報と前記施工終了場所に関する前記地質情報との類似度が閾値以上である
ときの前記施工終了場所に関するデータである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項5】
前記入力データは、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所に関するデータである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項6】
コンピュータを、
施工予定場所に関する地質情報と、当該施工予定場所の掘削状況に関する掘削情報とを取得する取得手段と、
施工終了場所に関する地質情報および当該施工終了場所を掘削した際に取得された掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する前記地質情報および前記掘削情報を入力することで、前記到達情報を出力するモデル実行手段として機能させるための判定プログラム
であって、
前記地質情報は、深さ方向に沿った地質の状態を表す柱状図と、地盤の硬軟の程度を表す地盤強度情報とのうちの少なくとも1つを含み、
前記掘削情報は、掘削用モータの瞬時電流値と、当該瞬時電流値を積分した積分電流値とのうちの少なくとも1つを含む、判定プログラム。
【請求項7】
施工終了場所に関する地質情報と、前記施工終了場所を掘削した際に取得された施工開始から支持層に到達するまでの掘削情報とを格納する格納部と、
前記地質情報および前記掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとした学習用データを用いてモデルを学習させ、学習済みモデルを生成する学習部と、を具備する学習装置
であって、
前記地質情報は、深さ方向に沿った地質の状態を表す柱状図と、地盤の硬軟の程度を表す地盤強度情報とのうちの少なくとも1つを含み、
前記掘削情報は、掘削用モータの瞬時電流値と、当該瞬時電流値を積分した積分電流値とのうちの少なくとも1つを含む、学習装置。
【請求項8】
施工予定場所に関する地質情報を取得する取得部と、
前記取得部にて取得した
前記施工予定場所に関する前記地質情報
と前記施工終了場所に関する前記地質情報との類似度が閾値以上であるときの前記施工終了場所の前記掘削情報を前記格納部から選択する選択部と、をさらに具備し、
前記学習部は、前記選択部により選択された前記掘削情報を前記入力データとして前記モデルを学習させ、前記学習済みモデルを生成する、請求項
7に記載の学習装置。
【請求項9】
前記選択部は、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の前記施工終了場所の前記掘削情報を選択する、請求項
8に記載の学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、判定プログラムおよび学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内に杭を設置する杭工事において、施工予定場所の地質状況を把握することは重要である。特に、構造物の重量を支持する支持層の深度を把握することが重要である。
【0003】
施工予定場所に杭を施工する際は、実際の施工に先駆けて施工予定場所で試験掘削を実施する。試験掘削では、実際に孔を掘削して掘削機のオーガモータの電流値の変動や掘削ヘッドに付着した土砂を採取することにより、予め調査された地質情報と実際の地質とが一致しているかを確認する。施工予定場所全体において満遍なく試験掘削を実施することが望ましいが、コストや工期の関係から試験掘削は1~数カ所のみ実施する場合が多い。
【0004】
地盤を評価する手法として、例えば特許文献1では、試験掘削にて取得される各深度の電流値、掘削速度等を入力要素とする入力層と、所定の深度間隔で取得されるN値を出力層とした教師データにより機械学習したN値算出モデルを用いて、実際の杭施工時に取得した入力要素に対して所定深度のN値(以下、推定N値という)を推定する地盤評価システムが開示されている。
また、例えば特許文献2では、掘削ヘッドが支持層に到達したか否かは、掘削機のオーガ―モータの電流値の変化等に基づいて判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-157346号公報
【文献】特許第4958028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、所定の深度間隔、一般的には1m間隔で測定されるN値を教師データとして用いるので1本の孔を掘削して取得できる測定値は数個~数十個程度である。したがって、試験掘削により取得されるデータ数が少ないため、生成されたN値算出モデルの精度が低いという問題点がある。このため、実際の杭の施工時に取得できる電流値や掘削速度等に基づいて推定N値を算出しても実際の地質を反映した結果が得られないという問題点がある。
また、特許文献2では、電流値とN値とは必ずしも比例関係ではないため、掘削作業の担当者が電流値のグラフを目視すると共に掘削状況全体を確認することにより、掘削ヘッドが支持層に到達したか否かを判定する必要がある。よって、掘削ヘッドが支持層に到達したか否かを的確に判定できるまでに相当程度の経験が必要である。このため、経験値や個人差によるばらつきが生じる可能性がある。
そこで、本発明は、支持層到達の判定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る判定装置は、取得部と、モデル実行部とを含む。取得部は、施工予定場所に関する地質情報と、当該施工予定場所を掘削する際に取得される掘削情報とを取得する。モデル実行部は、施工終了場所に関する地質情報および当該施工終了場所を掘削した際に取得された掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する前記地質情報および前記掘削情報を入力することで、前記到達情報を出力する。
上記構成(1)によれば、施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データとし、当該入力データに対応して支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させるため、精度の高い学習済みモデルを生成できる。
そして、学習済みモデルの精度が高いので、施工予定場所に関する到達情報を精度良く算出することができる。
さらに、到達情報の精度が高いので、掘削作業の担当者や管理者は到達情報に基づいて支持層到達の判定を正確に行うことができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記構成(1)において、
前記取得部は、前記施工予定場所の試験掘削におけるデータを前記掘削情報として取得する。
上記構成(2)によれば、施工予定場所を実際に試験掘削した際の掘削情報を用いて学習した学習済みモデルを用いることができる。これにより、施工予定場所の地質に適した到達情報を出力することができる。
【0009】
(3)いくつかの実施形態では、上記構成(1)または構成(2)において、
前記取得部が取得する掘削情報は、掘削用モータの瞬時電流値を積分した積分電流値と、前記地質情報および前記積分電流値から生成される想定積分電流値とを含む。判定装置は、判定部をさらに含む。判定部は、前記モデル実行部から前記支持層に到達したことを示す到達情報が出力された場合、前記積分電流値と前記想定積分電流値との差分が閾値以下であるか否かを判定する。
上記構成(3)によれば、積分電流値と想定積分電流値との差分が閾値以下であれば到達情報の精度が高いといえる。そして、閾値以下の場合に、この学習済みモデルをこのまま本施工で用いることにより支持層到達を正確に判断することができる。
【0010】
(4)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(3)までのいずれか1つにおいて、
前記入力データは、前記施工予定場所の地質と類似度が閾値以上である地質を有する施工終了場所に関するデータである。
上記構成(4)によれば、地質の傾向毎の学習済みモデルを作成できる。これにより、施工予定場所の地質に適した到達情報を得ることができる。
【0011】
(5)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(3)までのいずれか1つにおいて、
前記入力データは、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所に関するデータである。
上記構成(5)によれば、エリア毎の学習済みモデルを作成できる。これにより、施工予定場所の地質に適した到達情報を得ることができる。
【0012】
(6)いくつかの実施形態では、上記構成(1)から構成(5)のいずれか1つにおいて、
前記施工予定場所に関する前記地質情報は、深さ方向に沿った地質の状態を表す柱状図と、地盤の硬軟の程度を表す地盤強度情報とのうちの少なくとも1つを含み、
前記施工予定場所に関する前記掘削情報は、掘削用モータの瞬時電流値と、当該瞬時電流値を積分した積分電流値と、前記地質情報および前記積分電流値から生成される想定積分電流値とのうちの少なくとも1つを含む。
上記構成(6)によれば、施工予定場所に関する様々な情報を含むため、施工予定場所の到達情報を精度良く取得できる。すなわち、掘削作業の担当者や管理者の判定を高精度で支援することができる。
【0013】
(7)本発明の一態様に係る判定プログラムは、コンピュータを、施工予定場所に関する地質情報と、当該施工予定場所の掘削状況に関する掘削情報とを取得する取得手段と、
施工終了場所に関する地質情報および当該施工終了場所を掘削した際に取得された掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させた学習済みモデルに対して、前記施工予定場所に関する前記地質情報および前記掘削情報を入力することで、前記到達情報を出力するモデル実行手段として機能させる。
上記構成(7)によれば、施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データとし、当該入力データに対応して支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させるため、精度の高い学習済みモデルを生成できる。
そして、学習済みモデルの精度が高いので、施工予定場所に関する到達情報を精度良く算出することができる。
さらに、到達情報の精度が高いので、掘削作業の担当者や管理者は到達情報に基づいて支持層到達の判定を短時間で正確に行うことができる。
【0014】
(8)本発明の一態様に係る学習装置は、格納部と、学習部とを含む。格納部は、施工終了場所に関する地質情報と、前記施工終了場所を掘削した際に取得された施工開始から支持層に到達するまでの掘削情報とを格納する。学習部は、前記地質情報および前記掘削情報を入力データとし、前記入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとした学習用データを用いてモデルを学習させ、学習済みモデルを生成する。
上記構成(8)によれば、施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データとし、当該入力データに対応して支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させるため、精度の高い学習済みモデルを生成できる。
そして、学習済みモデルの精度が高いので、施工予定場所に関する到達情報を精度良く算出することができる。
【0015】
(9)いくつかの実施形態では、上記構成(8)において、
学習装置は、取得部と、選択部を含む。取得部は、施工予定場所に関する地質情報を取得する。選択部は、前記格納部から、前記施工予定場所に類似する施工終了場所に関する掘削情報を選択する。前記学習部は、前記取得部にて取得した前記地質情報に類似する地質を有する前記施工終了場所の前記掘削情報を前記格納部から選択する。
上記構成(9)によれば、施工予定場所にあわせて学習済みモデルを生成でき、当該現場に適した到達情報を出力することができる。
【0016】
(10)いくつかの実施形態では、上記構成(9)において、
前記選択部は、前記施工予定場所の地質と類似度が閾値以上である地質を有する施工終了場所の掘削情報を選択する。
上記構成(9)によれば、地質が似た学習済みモデルを生成でき、施工予定現場に適した到達情報を出力することができる。
【0017】
(11)いくつかの実施形態では、上記構成(8)または構成(9)において、
前記選択部は、前記施工予定場所からの距離が閾値以内の施工終了場所の掘削情報を選択する。
上記構成(11)によれば、地質が似た学習済みモデルを生成でき、施工予定現場に適した到達情報を出力することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支持層到達の判定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る判定装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る判定装置のモデル学習時の概念図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る判定装置のモデル利用時の概念図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る判定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る判定装置、判定プログラムおよび学習装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態中では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0021】
本実施形態に係る判定装置について
図1のブロック図を参照して説明する。
本実施形態に係る判定装置1は、処理回路11、格納部12、通信インタフェース13を含み、それぞれバスを介して接続される。本実施形態に係る判定装置1は、管理者端末として、サーバ、PC、タブレット型情報端末、専用のコンピュータなどに実装されてもよいし、杭打ち機に搭載される管理装置に実装されてもよいし、判定装置1単独のデバイスとして構成されてもよい。判定装置1が単独のデバイスとして構成される場合は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力部、およびディスプレイなどの表示部を備えてもよい。
【0022】
処理回路11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのいずれかまたはこれらの組合せにより実現される。処理回路11は、取得部111と、学習部112と、モデル実行部113と、表示制御部114と、選択部115と、判定部116とを含む。
【0023】
取得部111は、施工予定場所に関する位置情報と、地質情報と、掘削情報とを取得する。本実施形態では、「施工予定場所」は、杭を地盤内に設置する予定の場所を想定するが、これに限らず、アンカーなど地盤内に対象物を埋め込む際に実測データを参照する必要がある作業にも適用可能である。位置情報は、住所でもよいし、緯度および経度の座標情報でもよい。地質情報は、少なくとも、地質の状態を示す土質区分等の地質データ(例えば、柱状図等)と、深さ方向に対する地盤の硬軟の程度を示す地盤強度情報(例えば、N値、圧縮強度等)とのうちの少なくとも1つを含む。地質情報は、その他にも地質調査日時、支持層と判定した深さ情報、地下水位情報などを含んでもよい。
掘削情報は、掘削開始時から計測される、瞬時電流値と、積分電流値と、想定積分電流値とのうちの少なくとも1つを含む。積分電流値は、掘削機のオーガモータに供給される電流値を所定深度間隔で積分した積分値であり、深さ方向に沿って所定の深度間隔で算出される。想定積分電流値は、地質情報および積分電流値から生成される深さ方向に沿った積分電流値の想定値である。
また、掘削情報には、掘削日時、掘削機の機種情報、掘削速度、供給水量などのデータがさらに含まれてもよい。
【0024】
学習部112は、施工済みである施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データとし、当該入力データが示す掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとしてネットワークモデルを学習させることで、学習済みモデルを生成する。到達情報は、支持層に到達した場合を「1」、支持層に到達していない場合を「0」とするフラグ情報でもよいし、「到達」または「未達」といった文字情報でもよい。つまり、支持層に到達した場合と到達していない場合を区別可能な情報であればよい。なお、入力データと正解データとの組を学習用データと呼ぶ。
【0025】
モデル実行部113は、学習済みモデル23に対して、施工予定場所に関する地質情報と掘削情報とを入力することで、到達情報を出力する。
【0026】
表示制御部114は、例えば後述の通信インタフェース13を介して、到達情報を含む表示データを表示装置(図示しないが、例えばディスプレイ、プロジェクタを介したスクリーン)に表示させるように制御する。なお、表示制御部114は、通信インタフェース13とは異なる表示用のインタフェース(図示せず)を介して表示装置に表示データを表示させてもよい。
【0027】
選択部115は、所与の条件に応じて学習用データを選択する。学習用データの選択方法については、
図4および
図5のフローチャートを参照して後述する。
判定部116は、モデル実行部113により支持層に到達したことを示す到達情報が、支持層に到達したことを示すか否かを判定する。具体的には、支持層に到達したことを示す到達情報が出力された場合、積分電流値と想定積分電流値との差分が閾値以下であるか否かを判定する。
【0028】
格納部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成され、施工終了場所に関する位置情報、地質情報と当該場所を掘削した際の掘削情報を対応付けた施工データを格納する。
また、格納部12は、施工予定場所に関する位置情報および地質情報を対応付けて格納する。さらに、格納部12は、学習用データ、学習済みモデルなどを格納する。
【0029】
通信インタフェース13は、所定の通信規格に準拠した、判定装置1と外部装置との間でデータ送受信を行うためのインタフェースである。通信規格としては、4G、5Gなどのモバイルネットワーク、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)などの無線ネットワーク、あるいは有線LAN、USB(Universal Serial Bus)などの有線ネットワークなどを想定する。
【0030】
次に、本実施形態に係る判定装置1のモデル学習時について
図2の概念図を参照して説明する。なお、格納部12と、学習部112と、選択部115とをまとめて学習装置とも呼ぶ。
【0031】
学習部112は、施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データ21とし、支持層に到達したか否かの到達情報を正解データ22とした学習用データを用いて、ネットワークモデル20を学習させて学習済みモデル23を生成する。このように学習させることにより、学習済みモデル23は、掘削情報の値から支持層に到達したか否かの判定結果を出力できる。
学習用データは、管理者により支持層に到達したと判定されたときの掘削情報を入力データ21とし、支持層に到達したことを示す到達情報(例えば、フラグ情報「1」)を正解データ22とすることを想定する。これにより、支持層に到達した場合は、どのような時系列の掘削情報が得られるかを学習できる一方、支持層に到達した状況以外の掘削情報の状態では、支持層に到達していないことも併せて学習できる。
なお、入力データ21として、掘削を開始してから所定の深度または所定の時間ごとに施工開始からの時系列に沿った掘削情報を複数用意してもよい。この場合、対応する正解データ22として、支持層に到達したと判定された時の掘削情報には支持層に到達したことを示す到達情報(例えば、フラグ情報「1」)を、これ以外の掘削情報には支持層に到達していないことを示す到達情報(例えば、フラグ情報「0」)を用意すればよい。
なお、入力データ21として、施工終了場所に関する位置情報をさらに用いてもよい。
学習方法としては、一般的な手法を用いて機械学習させればよい。例えば、ネットワークモデルは、ニューラルネットワーク、線形回帰、ランダムフォレストなどを用いればよい。さらに、ニューラルネットワークとしては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)、多層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN:Deep CNN)、ResNet(Residual Network)、DenseNetなどに代表される多層ネットワークを用いればよい。
【0032】
なお、学習済みモデル23が、地質情報に基づく類似グループごとに生成されてもよい。例えば、選択部115が、学習用データとして、似たような地質を有するデータを選択する。つまり、選択部115が、地質の傾向が類似する(地質の類似度、例えば柱状図の類似度が閾値以上の)施工終了場所の地質情報と掘削情報とを複数のグループに分けて予め用意する。選択部115が用意した複数のグループそれぞれで地質情報と掘削情報とを入力データ21として用いてネットワークモデル20を機械学習することで、柱状図の傾向(地質の傾向)ごとの学習済みモデル23が生成される。
【0033】
また、選択部115は、学習用データを、似たような位置情報、つまり住所が近い施工終了場所に関する地質情報と掘削情報とを複数のグループに分けて用意してもよい。類似する位置情報でグルーピングした複数のグループそれぞれの学習用データを用いて、同様にネットワークモデル20を機械学習させることにより、エリアごとの学習済みモデル23が生成される。
【0034】
もちろん、学習用データは、上述の地質情報と位置情報との組合せに応じてグループ分けされて用意されてもよい。地質情報と位置情報との組合せに応じて学習用データをグループ分けする場合は、どちらのパラメータを優先させるか、地質情報と位置情報とを重み付けして学習用データが選択されてもよい。地質情報および/または位置情報が似たデータで学習した学習済みモデルを生成することで、利用時に適した到達情報を出力することができる。
【0035】
なお、学習用データは、新規案件の施工予定場所に応じて作成されてもよい。学習用データの選択方法としては、例えば2つの方法が挙げられる。
【0036】
第1の選択方法としては、選択部115は、場所(位置情報)は異なるが、施工予定場所の地質情報から得られる柱状図との類似度が閾値以上となる施工終了場所の地質情報および掘削情報を入力データ21とし、対応する到達情報を正解データ22として選択する。これにより、施工予定場所にあわせて、地質が似た学習済みモデルが生成されるため、適した到達情報を出力できる。
【0037】
第2の方法としては、選択部115は、施工予定場所から一定範囲内の距離における施工終了場所の地質情報を入力データ21とし、対応する到達情報を正解データ22として選択する。第2の方法を採用する場合は、施工予定場所から一定範囲の距離を基準として段階的に閾値を設けてもよい。具体的には、選択部115により、施工予定場所から半径100m以内の施工終了場所の地質情報および掘削情報を入力データとして収集したが、当該半径100m以内の地質情報のデータ数が十分でない(つまり、データ数が所定数未満である)と判定されたとする。この場合、選択部115は、半径200m以内の施工終了場所の地質情報および掘削情報、半径500m以内の施工終了場所の地質情報および掘削情報・・・といったように、データ数が所定数以上となるまで、選択対象となる施工終了場所のデータ収集範囲を拡げてもよい。
これにより、施工予定場所にあわせて、場所が似た学習済みモデルが生成されるため、適した到達情報を出力できる。
【0038】
次に、本実施形態に係る判定装置1のモデル利用時について
図3の概念図を参照して説明する。
利用時において判定装置1のモデル実行部113は、施工予定場所の地質情報および掘削中の掘削情報(以下、処理対象データという)を入力データ31として学習済みモデル23に入力することで、入力された処理対象データの掘削状況で支持層に到達したか否かを示す到達情報が出力データ32として生成される。
【0039】
次に、本実施形態に係る判定装置1の動作について
図4のフローチャートを参照して説明する。ここでは、処理対象データとして、施工予定場所の地質情報および試験掘削時の掘削情報を用いることを想定する。
ステップS401では、試験掘削時において取得部111が、施工予定場所の地質情報および掘削情報を処理対象データとして取得する。
【0040】
ステップS402では、モデル実行部113が、処理対象データを学習済みモデルに入力し、到達情報を出力する。このとき、表示制御部114が、想定積分電流値と、施工予定場所の掘削中に得られる積分電流値とをグラフ化し、到達情報を併せてディスプレイなどに表示してもよい。
ステップS403では、到達情報が支持層に到達したことを示すか否かを判定部116が判定する。到達情報が支持層に到達したことを示す場合、ステップS404に進み、支持層に到達していないことを示す場合、ステップS401に戻り、同様の処理を繰り返す。
ステップS404では、判定部116が、処理対象データの掘削情報に含まれる積分電流値と想定積分電流値との差分が閾値以下であるか否かを判定する。差分が閾値以下であれば、ステップS405に進み、差分が閾値よりも大きい場合、ステップS406に進む。
ステップS405では、試験掘削でも本施工の掘削情報と同様のデータを取得できていると判定できるため、当該試験掘削で設定された施工に関するパラメータを本施工時のパラメータとして採用する。パラメータとしては、拡大掘削部、根固め部の長さ、体積などが挙げられる。これにより、効率的に施工管理できる。
ステップS406では、学習部112が、学習済みモデルの学習用データとして、当該処理対象データを学習用データとして用い、学習済みモデルを更新(または再学習)、または新たなモデルの学習時に適用する。
【0041】
なお、学習済みモデルが類似するグループ毎に生成されている場合は、ステップS401の処理の後に、選択部115が、処理対象データに対応する学習済みモデルを選択してもよい。例えば、処理対象データの位置情報および/または地質情報に類似するグループの学習済みモデルを選択すればよい。
【0042】
具体的には、柱状図の傾向ごとに学習済みモデル23が生成されていれば、処理対象データに含まれる地質情報(柱状図)に基づいて、柱状図の類似度が閾値以上であるグループの学習用データにより学習された学習済みモデル23を選択すればよい。また、エリアごとに学習済みモデルが生成されていれば、入力データ21に含まれる位置情報に基づいて、当該位置情報が示す位置から一定範囲内であるグループの学習用データにより学習された学習済みモデルを選択すればよい。また、位置情報および地質情報の組合せに基づいて学習済みモデルが生成されていれば、処理対象データの位置情報および地質情報が類似する組合せに基づく学習済みモデルが選択されればよい。
【0043】
また、学習済みモデルの適用の別例として、事前に学習済みモデルを用意する代わりに、処理対象データを取得した後に、当該処理対象データに応じた学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0044】
以上に示した実施形態によれば、施工終了場所に関する地質情報および掘削情報を入力データとし、支持層に到達したか否かを示す到達情報を正解データとして学習させた学習済みモデルを生成する。当該学習モデルに対し、施工予定場所の地質情報および掘削情報を学習済みモデルに入力することで、支持層に到達したか否かの到達情報を出力できる。これにより、管理者の経験が浅いなどの個人差によらず、支持層の到達判定について適切な判定を下すことができ、ユーザの判定を支援することができる。
【0045】
上述の実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記録媒体に記憶しておき、記憶されたプログラムを読み込むことにより、上述した識別装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。さらに、本実施形態における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・判定装置、11・・・処理回路、12・・・格納部、13・・・通信インタフェース、20・・・ネットワークモデル、21,31・・・入力データ、22・・・正解データ、23・・・学習済みモデル、32・・・出力データ、111・・・取得部、112・・・学習部、113・・・モデル実行部、114・・・表示制御部、115・・・選択部、116・・・判定部。