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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】セキュリティ機器の筐体カバー構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20240710BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240710BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/14
H05K5/03 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020166971
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059313
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】磯部 利雄
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012558(JP,A)
【文献】特開2012-142435(JP,A)
【文献】特開2005-114986(JP,A)
【文献】特開2016-153187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0274219(US,A1)
【文献】特開2019-093564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0105905(US,A1)
【文献】特開2015-205494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/16
B29C 45/14
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ機器の筐体を覆う樹脂カバーの構造であって、
光透過性が無い樹脂からなるベース部材と、光透過性が有る樹脂からなり外部に露出する本体部を1つ以上有する窓部材との組み合わせからなり、
前記窓部材は、前記ベース部材の一方側に寄せて配置され、
成型された際に前記ベース部材の内部に組み合わされる部分であり、前記本体部の一方側より延びる第1鍔部と、前記一方に対向する方向側に延びる第2鍔部とを備え、
前記第1鍔部及び前記第2鍔部は、何れも曲げを有する形状であり、
前記ベース部材の一方側も、前記セキュリティ機器の前面に繋がる部分に曲げを有する形状であり、
前記第1鍔部は、前記ベース部材の曲げの形状に沿った形状を有し、その先端部分は、前記前面と平行になるように下方を向いており、
前記第2鍔部は、対向する方向側に延びる途中で下方に折れる曲げを有しているセキュリティ機器の筐体カバー構造。
【請求項2】
前記第1鍔部及び前記第2鍔部は、基部側よりも先端側が太くなる形状である請求項1記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造。
【請求項3】
複数の本体部が、それらが並ぶ方向に沿って連結されている請求項1又は2記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造。
【請求項4】
複数の本体部の間に、スリットが形成されている請求項記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ機器の筐体を覆うカバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばRFIDタグのリーダのようなセキュリティ機器の筐体は、金属製のロワーケース内に通信回路などを収容しており、そのロワーケースをアッパーケースである樹脂製のカバーで覆うことで構成されているものが多い。また、筐体には、リーダの動作状態に応じて点灯させるLEDを駆動する回路も収容されており、カバーには、LEDの光を外部に透過させてユーザに認識させるための窓部を設けている。そのため、カバーは、光透過性が無い樹脂からなるベース部材と光透過性が有る樹脂からなる窓部材とを組み合わせた二色成形品となっている。
【0003】
図10から図12は、従来のカバーの構造の一例を示している。ベース部材1は、例えばPBT-GF30等の線膨張係数が金属に近い樹脂である。窓部材2は、例えば光拡散ポリカーボネートのように光透過性が有る樹脂である。窓部材2は、本体より図12中の左右方向にそれぞれ伸びる鍔部2F,2Rを有しており、これらにより成形時にベース部材1と接合される。尚、特許文献1はセキュリティ機器の筐体に関するものではないが、二色成形品の製造方法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-209481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セキュリティ機器の筐体には、JISにおける耐水性の基準であるIPx6が要求される場合もある。しかし、ベース部材1と窓部材2とは線膨張係数が異なるため、両者の接合面積が少ないと温度ストレスを受けた際に接合面にクラックが入り易く、両者の密着性が維持されないおそれがある。また、窓部材2が図12中の上方向からストレスを受けた際に、接合面の剛性が不足して下方に脱落するおそれもある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、窓部材とベース部材との密着性をより確実に維持できるセキュリティ機器の筐体カバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造によれば、光透過性が無い樹脂からなるベース部材と、光透過性が有る樹脂からなり外部に露出する本体部を1つ以上有する窓部材との組み合わせからなり、窓部材はベース部材の一方側に寄せて配置される。そして、窓部材は、成型された際にベース部材の内部に組み合わされる部分として、本体部の一方側より延びる第1鍔部と前記一方に対向する方向側より延びる第2鍔部とを備え、それらは何れも曲げを有する形状である。
【0008】
すなわち、窓部材の第1及び第2鍔部の形状を、曲げを有する程度の長さにすることで、ベース部材との接合面積がより大きく確保されるようになる。これにより、両者の密着性を向上させて、外的ストレスに対する剛性を維持できる。また、第1及び第2鍔部が曲げを有した形状であることによって、両者が密着する強度を更に高めることができ、ベース部材と窓部材との界面に剥離が生じることを防止できる。
【0009】
より具体的には、ベース部材の一方側も、セキュリティ機器の前面に繋がる部分に曲げを有する形状であり、第1鍔部は、ベース部材の曲げの形状に沿った曲げの形状を有し、その先端部分は、前面と平行になるように下方を向いている。すなわち、カバーの意匠としてベース部材の一方側に曲げが形成されている際に、第1鍔部の形状をその曲げに沿ったものとすることで第1鍔部の長さを確保して、密着強度を向上させることができる。加えて、第2鍔部は、対向する方向側に延びる途中で下方に折れる曲げを有している。
【0010】
請求項記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造によれば、第1及び第2鍔部は、基部側よりも先端側が太くなる形状である。このように構成することによっても、ベース部材と窓部材との密着強度を高めて、両者の界面に剥離が生じることを防止できる。
【0011】
請求項記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造によれば、複数の本体部が、それらが並ぶ方向に沿って連結されている。これにより、筐体のカバーに本体部を複数備える際にはそれらの間隔が予め固定されるので、成型を容易に行うことができる。
【0012】
請求項記載のセキュリティ機器の筐体カバー構造によれば、複数の本体部の間にスリットを形成するので、筐体カバーを成形する際に、スリット部分にベース部材の樹脂が入り込むので、窓部材との密着強度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態であり、RFIDタグリーダのアッパケースを示す斜視図
図2】窓部材を示す斜視図
図3図1のA-A断面を示す図
図4】アッパケースとロワーケースとを示す斜視図
図5】図10におけるベース部材と窓部材との接合界面をモデル的に示す図
図6】本実施形態の第2鍔部と同程度の長さの鍔部を備える構成についての図5相当図
図7】本実施形態の第2鍔部を備える構成についての図5相当図
図8】RFIDタグリーダの実際の使用形態の一例を示す図
図9】第2実施形態であり、図1のA-A断面相当図
図10】従来構成を示す図1相当図
図11図2相当図
図12図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図8を参照して説明する。図4は、セキュリティ機器の一例であるRFIDタグリーダの筐体11を示している。筐体11は、例えばアルミダイカストからなる金属製のロワーケース12と、樹脂製のアッパーケース13とを備える。ロワーケース12は、上面が開口した概ね矩形箱状であり、内部には図示しない通信回路等が収容される。図8は、RFIDタグリーダの実際の使用形態の一例を示しておいる。タグリーダは、製造ラインにおいて搬送される例えば部品等が入ったボックスに添付されているRFIDタグと通信を行い、ボックスのIDを読み取る。読み取ったIDはロット管理等に使用される。
【0015】
ロワーケース12の1つは図示しない四隅には、筐体11を固定するためのねじ穴部14が形成されている。また、ロワーケース12の図中前方には、内部の通信回路等に接続されるケーブルなどを外部より挿通するための挿通穴15が、例えば3つ形成されている。
【0016】
アッパーケース13は、光透過性が無い例えばPBT-GF30等の樹脂からなるベース部材16と、ケース13の手前側に配置される窓部材17とを備えている。窓部材17は、例えば光拡散ポリカーボネートからなり、光透過性を有している。ロワーケース12には、通信回路等と共にLED及びその駆動回路も登載されており、タグリーダの動作状態に応じてLEDが点灯する。窓部材17は、そのLEDの点灯状態をユーザに視認させるために配置され、例えば5個の窓を備えており、図2に示すように一体の部材である。
【0017】
窓部材17は、概ね矩形状の窓を成す5つの本体部18と、各本体部18の一辺側より前方に延びる第1鍔部19と、上記辺と対向する辺側より後方に延びる第2鍔部20とを備えている。但し、両端に位置する本体部18は、ベース部材16の意匠に合わせた台形状となっている。また、2つの本体部18の間には、スリット21が形成されている。アッパーケース13は筐体カバーに相当する。
【0018】
図3は、図1のA-A断面を示している。ベース部材16は、上面22から図中左となる前面23との間に鈍角の曲げ部24を有している。そして、第1鍔部19は、曲げ部24の形状に合わせた曲げを有しており、その先端部分は前面23と平行になるように下方を向いている。また、第2鍔部20は、途中で下方側に折れるように曲げを有した形状である。アッパーケース13は、ベース部材16と窓部材17及びとを二色成形して構成されている。第1鍔部19及び第2鍔部20は、成型された際にベース部材16の内部に組み合わされる部分である。
【0019】
図5は、図10におけるベース部材1と窓部材2との接合界面をモデル的に示したもので、図7は第2鍔部20とベース部材16との接合界面を同様にモデル的に示したものである。図5に示す従来構成の場合は、両者の接合面の密着性が弱いため、最悪のケースでは、両者の界面が剥離して筐体の外部と内部が貫通してしまうおそれがある。それに対して、図6に示すように、本実施形態の第2鍔部20と同程度の長さの鍔部を備えれば、両者の接合面積が広くなり、たとえ界面剥離が発生しても上述のような貫通を防止できる。
【0020】
そして、本実施形態の第2鍔部20のように、下方に屈曲した形状を有することで両者の接合面も屈曲することになり、両者の密着性が向上する。一例として、従来構成の接合面の図中横方向長さが3.7mmであるのに対し、第2鍔部20による同長さは20.5mm程度確保できている。
【0021】
以上のように本実施形態によれば、アッパーケース13は、光透過性が無い樹脂からなるベース部材16と、光透過性が有る樹脂からなり外部に露出する本体部18を有する窓部材17との組み合わせてなり、窓部材17はベース部材16の一辺側に寄せて配置される。そして、窓部材17は、本体部18の一辺側より延びる第1鍔部19とその辺に対向する辺側より延びる第2鍔部20とを備え、それらを何れも曲げを有する形状とした。
【0022】
すなわち、第1鍔部19及び第2鍔部20の形状が曲げを有する程度の長さであることで、窓部材17とベース部材16との接合面積がより大きく確保されるようになる。これにより、両者の密着性を向上させて、外的ストレス,例えば図3における上方より本体部18に係るストレスや温度ストレス等に対する剛性を維持できる。また、第1及び第2鍔部19及び20が曲げを有した形状であることで、両者が密着する強度を更に高めることができ、ベース部材16と窓部材17との界面に剥離が生じることを防止できる。
【0023】
また、第1鍔部19が、ベース部材16の一辺側の形状に沿った曲げの形状を有することで第1鍔部19の長さを確保して、密着強度を向上させることができる。また、複数の本体部18を、それらが並ぶ方向に沿って連結したので、アッパーケース13に窓を複数備える際にはそれらの間隔が予め固定されるので、成型を容易に行うことができる。加えて、複数の本体部18の間にスリット21を形成したので、ケース13を成形する際に、スリット21にベース部材16の樹脂が入り込むので、窓部材17との密着強度を更に向上させることができる。
【0024】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図9に示すように、第2実施形態の窓部材31は、第1鍔部19,第2鍔部20に替わる第1鍔部32,第2鍔部33を備えている。これらの鍔部32,33は何れも、基部側よりも先端側が太くなる形状となっている。このように構成することによっても、ベース部材16と窓部材31との密着強度を高めて、両者の界面に剥離が生じることを防止できる。
【0025】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
第1,第2鍔部の曲げの方向や角度は、それぞれ同じでも異なっていても良い。
スリット21は必要に応じて形成すれば良い。
複数の本体部18を必ずしも連結する必要はない。
本体部は1つ以上あれば良い。
【0026】
ベース部材はPBT-GF30に限らず、窓部材は光拡散ポリカーボネートに限らない。前者は光透過性が無い樹脂であれば良く、後者は光透過性が有る樹脂であれば良い。
セキュリティ機器は、RFIDタグリーダに限らない。
【符号の説明】
【0027】
図面中、11は筐体、12はロワーケース、13はアッパーケース、16はベース部材、17は窓部材、18は本体部、19は第1鍔部、20は第2鍔部、31は窓部材、32は第1鍔部、33は第2鍔部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12