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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】車室内照明システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/80 20170101AFI20240710BHJP
   B60Q 3/76 20170101ALI20240710BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240710BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20240710BHJP
   B60Q 3/20 20170101ALI20240710BHJP
【FI】
B60Q3/80
B60Q3/76
F21V23/00 115
B60Q3/217
B60Q3/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021056476
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153779
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】押野 優汰
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-094708(JP,A)
【文献】特開2015-212125(JP,A)
【文献】特開2018-199391(JP,A)
【文献】特開2016-107863(JP,A)
【文献】特開平5-270314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/00-3/88
F21V 23/00
B60H 1/00
B60H 1/24
G08G 1/16
F21V 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の複数のシートの各々に対応して設けられた複数の照明部と、
前記複数のシートの各々に着座している乗員の感温情報に基づいて、各シートに対応する前記照明部の照明色を個別に制御する照明制御部と、を備えることを特徴とする車室内照明システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車室内照明システムにおいて、
前記感温情報は、車室内温度または車室内空調装置の空調設定温度と、前記シートを加熱するシート温調装置の温調設定温度との温度差であることを特徴とする車室内照明システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車室内照明システムにおいて、
前記感温情報は、車室内温度または車室内空調装置の空調設定温度と、乗員の生体情報であることを特徴とする車室内照明システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車室内照明システムにおいて、
前記生体情報は前記シートに着座している乗員の体温であり、
前記照明制御部は、車室内温度または車室内空調装置の空調設定温度と前記体温との温度差に基づいて、前記照明部の照明色を個別に制御することを特徴とする車室内照明システム。
【請求項5】
請求項3に記載の車室内照明システムにおいて、
前記生体情報は、臭気センサにより検出される、前記シートに着座している乗員の生体ガスであることを特徴とする車室内照明システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の車室内照明システムにおいて、
複数の前記照明部は、対応する前記シートに対応して設けられた空調風吹き出し口の近傍に配置され、
前記照明制御部は、空調設定温度と車室内温度との温度差に応じて照明色の色調を変化させることを特徴とする車室内照明システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の車室内照明システムにおいて、
複数の前記照明部は、対応する前記シートに対応して設けられた空調風吹き出し口の近傍に配置され、
前記照明制御部は、前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の風向および/または風量を表す照明形態に前記照明部を制御することを特徴とする車室内照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両室内の実際温度と車両乗員によって設定された目標温度との偏差に依存して、照明光の色が変化可能な照明システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の照明システムでは、例えば、エアコンディショナまたはヒータが暖房運転をしていること、ないしは、温度センサにより検出される車両室内温度が目標温度を下回ったことが確認された場合には、照明光の色として暖かく感じられる色がセットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-525799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の照明システムでは、車両室内の実際温度と設定された目標温度との偏差に依存して照明光の色を変化させているので、複数の乗員の個々の状態に応じた温度調整と照明との関係において、さらなる改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による車室内照明システムは、車室内の複数のシートの各々に対応して設けられた複数の照明部と、前記複数のシートの各々に着座している乗員の感温情報に基づいて、各シートに対応する前記照明部の照明色を個別に制御する照明制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、室温に対する感じ方が異なる乗員の各々に対して、個別に照明制御を行うことができるので、複数の乗員の各々に対して適切な照明を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、車室の概略構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、ドアトリムに設けられた照明部の第1の照明形態を示す図である。
図3図3は、ドアトリムに設けられた照明部の第2の照明形態を示す図である。
図4図4は、ピラーに設けられた照明部の第1の照明形態を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態における車室内照明システムの概略構成を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施の形態における照明制御の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施の形態において体温センサを用いる場合の、車室内照明システムの概略構成を示すブロック図である。
図8図8は、第2の実施の形態において臭気センサを用いる場合の、車室内照明システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
-第1の実施の形態-
図1は本発明の車室内照明システムの一実施の形態を説明する図であり、車両の車室1の概略構成を模式的に示す斜視図である。車室1内には、フロント側のシート2a,2bとリア側のシート2c,2dとを合わせて合計4つのシート2a~2dが設けられている。各シート2a~2dは、乗員の臀部を支持するシートクッション20と、乗員の腰部および背部を支持するシートバック21と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト22とを有する。
【0009】
シートクッション20には、シートヒータ30が設けられている。シートヒータ30には、例えば、不織布のシートに電熱線を組み込んだものが用いられる。シートヒータ30のオンオフおよび温度設定は、ドアトリムに設けられた操作部31を操作することにより行われる。各シート2a~2dのシートヒータ30の操作部31は、それぞれのシート2a~2dに対応して設けられたドア4a~4dのドアトリムに設けられている。
【0010】
シート2aに対応して設けられたドア4aのドアトリムには、照明部5aが設けられている。シート2cに対応して設けられたドア4cのドアトリムには、照明部5cが設けられている。なお、図示は省略しているが、シート2b,2dに対応して設けられたドア4b,4dのドアトリムにも、照明部5a,5cと同様の照明部5b,5cが設けられている。
【0011】
図1に示す例では、各ドア4a~4dのドアトリムに照明部5a~5dを設けているが、これに限らず、各シート2a~2dに着座した乗員が目視可能な位置に配置されるのが好ましい。例えば、シート2cに対応する照明部5cの場合、ピラー6、足元付近のドアトリム下部領域、シート2aの背面等に設けても良い。
【0012】
インストルメントパネル7の両サイドには空調風の吹き出し口8a,8b(吹き出し口8bは不図示)が設けられ、中央部にはデフロスタ用の吹き出し口8eが設けられている。左サイドの吹き出し口8aの近傍に設けられたピラー9のトリムには、照明部10aが設けられている。図示は省略しているが、インストルメントパネル7の右サイドに設けられた吹き出し口8b(不図示)の近傍に設けられたピラーのトリムにも、照明部10b(不図示)が設けられている。また、左右のピラー6にもシート2c,2dの方向に空調風を吹き出す吹き出し口8c,8dが設けられている。ただし、図1では、右側のピラー6および吹き出し口8dは図示を省略している。照明部5a~5d、10aおよび10bは、例えば、赤色で発光するLED、緑色で発光するLEDおよび青色で発光するLEDを備え、種々の色での照明色が可能に構成されている。
【0013】
図2および3は照明部5a~5dの照明形態を示す図であり、図2は第1の照明形態を示し、図3は第2の照明形態を示す。なお、図2,3では照明部5cを例に図示しているが、照明部5a,5b,5dも同様の構成である。図2において、図示上側は照明オフ時の照明形態を示す、図示下側は照明オン時に形態(すなわち第1の照明形態)を示す。照明部5cは、複数の発光部51~56を備えている。各発光部51~56は、赤色のLED、緑色のLEDおよび青色のLEDを有しており、種々の色で照明することができる。照明オフ時には全ての発光部51~56を消灯し、照明オン時には全ての発光部51~56を発光する。図2では、発光している発光部51~56にハッチングを施している。すなわち、ハッチングで発光していることを表しており、図3に示す第2の照明形態の場合も同様とする。
【0014】
図3に示す第2の照明形態では、発光領域が車室の前方から後方に流れるような形態で照明を行う。図3は照明オン時の照明形態を示しており、6つの発光パターンが所定の時間間隔Δtで繰り返される。以下では、図3の上から順に第1の発光パターン、第2の発光パターン、第3の発光パターン、第4の発光パターン、第5の発光パターンおよび第6の発光パターンと呼ぶことにする。
【0015】
第1の発光パターンでは発光部51だけが発光し、第2の発光パターンでは発光部52だけが発光し、第3の発光パターンでは発光部53だけが発光し、第4の発光パターンでは発光部54だけが発光し、第5の発光パターンでは発光部55だけが発光し、第6の発光パターンでは発光部56だけが発光する。このような第1~6の発光パターンが時間間隔Δtで順に繰り返されることにより、照明部5cの発光領域が前方から後方に流れるように見える視覚効果が得られる。
【0016】
第2の照明形態では、発光領域が前方から後方に流れるような制御を行うことにより、吹き出し口8cから吹き出される空調風の流れを視覚化することができる。また、空調風の時間間隔Δtを、風量が大きい場合には小さく、風量が小さい場合には大きく設定することにより、風量の大小を照明領域の流れの速さで視覚化することができる。さらにまた、冷房時には照明光を寒色系の色(例えば青色)とし、暖房時には照明光を暖色系の色(例えば赤色)とすることで、冷房設定・暖房設定を視覚化することができる。暖色系の色としては赤色、橙色、黄色等があり、寒色系の色としては紺色、青色、水色等がある。
【0017】
図4は照明部10aの照明形態を示す図である。なお、不図示の照明部10bの照明形態も、図4に示す形態と同様である。照明部10aに関しても、図2に示したような第1の照明形態と、図3に示したような第2の照明形態を有する。図4に示すように、照明部10bは複数の発光部101~106がピラー9の延在方向、すなわち上下の矢印方向に並んでいる。吹き出し口8eから吹き出される温調風は、ほぼピラー9に沿って上方向に吹き出される。
【0018】
図4は、図2と同様の第1の照明形態を示したものであり、照明オフ時には全ての発光部101~106を消灯し、照明オン時(すなわち第1の照明形態)には全ての発光部101~106を点灯する。第2の照明形態は図示を省略するが、第1の発光パターンでは発光部101だけが発光し、第2の発光パターンでは発光部102だけが発光し、第3の発光パターンでは発光部103だけが発光し、第4の発光パターンでは発光部104だけが発光し、第5の発光パターンでは発光部105だけが発光し、第6の発光パターンでは発光部106だけが発光する。図3の場合と同様に、第1~6の発光パターンを時間間隔Δtで順に繰り返すことにより、照明領域が照明部10aの発光領域が下方から上方に(すなわち、温調風の流れの方向に)流れるように見える視覚効果が得られる。
【0019】
(照明制御の説明)
次に、照明部5a~5d、10aおよび10bに関する照明制御について説明する。図5は、車室内照明システム200の概略構成を示すブロック図である。車室内照明システム200は、照明部5a~5d、10aおよび10bと、照明部5a~5d、10aおよび10bによる照明を制御する照明制御装置201とを備えている。照明制御装置201は各種の演算処理を行なうCPU(Central Processing Unit)の他、制御プログラムを格納したROMや前記検出信号等のデータを一時的に格納するRAM 等のメモリを備えている。
【0020】
照明制御装置201には、空調設定温度T1、室内温度センサ230で計測された室内温度Tr、風量等の空調情報が、空調制御装置210から入力される。また、照明制御装置201には、シート温調制御装置220から温調設定温度T2a~T2dが入力される。シート温調制御装置220は、図1に示した操作部31を含み、各操作部31からの温調設定温度T2a~T2dに基づいて各シート2a~2dのシートヒータ30に供給される電流を制御することで、シートヒータ30の温度を制御する。
【0021】
図6は、第1の実施の形態における照明制御の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、車両には5つのシート2a~2dが設けられており、各シート2a~2dに対応して設けられた照明部5a~5dの各々に対して、図6に示す照明制御が独立して実行される。ここでは、シート2cに対応して設けられた照明部5cを例に説明する。この照明制御は照明制御装置201により実行されるものであり、車両電源がオンされると照明制御処理がスタートする。
【0022】
図6のステップS10では、空調制御装置210による空調制御がオン状態か否かを判定する。ステップS10でオン(yes)と判定されると、ステップS20へ進んで空調フラグFをONに設定する。一方、ステップS10でオフ(no)と判定されると、ステップS12へ進んで空調フラグFをOFFに設定する。ステップS30では、シート2cに関するシート温調がオンか否か、すなわち、シート2cに着座している乗員が操作部31してシート温調をオンとしたか否かが判定される。ステップS30でシート温調がオフであると判定されると、ステップS70へ進んで照明部5cによる照明をオフし、ステップS80へ進む。すなわち、空調制御のオンオフに関係なくシート温調がオフの場合には、照明部5cによる照明をオフする。
【0023】
一方、ステップS30でシート温調がオン(yes)であると判定されると、ステップS40へ進んで、空調フラグFがONか否かを判定する。ステップS40でF=OFFと判定されると、すなわち、空調制御がオフ状態でかつシート温調がオン状態の場合にはステップS72へ進む。ステップS72では、暖色系の色(例えば、赤色)、かつ、図2の第1の照明形態(照明オン)で、照明部5cによる照明を制御する。
【0024】
ステップS40でF=ONと判定されてステップS50へ進んだ場合には、ステップS50において、|T1-T2c|≧ΔTthか否かを判定する。左辺の|T1-T2c|は空調設定温度T1と温調設定温度T2cとの差の大きさであり、右辺のΔTthは、この設定温度の差を乗員が感知できない温度差か否かを判定する閾値である。すなわち、|T1-T2c|<ΔTthであれば温度差を感じないものと判定する。ステップS50で|T1-T2c|<ΔTthと判定された場合は、ステップS70へ進んで照明部5cをオフする。
【0025】
一方、ステップS50で|T1-T2c|≧ΔTthと判定されると、ステップS60へ進んで空調設定温度T1が温調設定温度T2cよりも大きいか否かを判定する。ステップS60で空調設定温度T1が温調設定温度T2cよりも大きい(T1>T2c)と判定されると、ステップS70へ進んで照明部5cをオフする。逆に、ステップS60でT1>T2cでないと、すなわち、T1<T2cであると判定された場合には、ステップS72へ進んで、暖色系の色(例えば、赤色)、かつ、図2の第1の照明形態(照明オン)で照明部5cによる照明を制御する。
【0026】
ステップS80では、車両電源がオフされたか否かを判定し、オン状態であると判定されるとステップS10へ戻り、オフ状態と判定されると一連の照明制御を終了する。
【0027】
以上説明した図6の照明制御の作用効果をまとめると以下のようになる。
(a)空調制御およびシート温調制御の両方がオフ状態の場合には、照明部5cはオフ状態とされる。
(b)空調制御およびシート温調制御がオン状態であっても、空調設定温度T1および温調設定温度T2aが条件「|T1-T2c|<ΔTth」を満たす場合には、照明部5cはオフ状態とされる。
(c)空調制御およびシート温調制御がオン状態であっても、空調設定温度T1および温調設定温度T2cが条件「T1>T2c」を満たす場合には、照明部5cはオフ状態とされる。
上記(a)~(c)のいずれの場合においても、照明制御装置201は「シート2cに着座している乗員は寒さを感じておらず、照明部5cの照明による乗員の温度感情へのコミットは必要ない」と判断し、照明部5cをオフ状態とする。
【0028】
(d)シート温調制御がオン状態、かつ、空調制御がオフ状態である場合には、暖色系の色(例えば、赤色)、かつ、図2の第1の照明形態(照明オン)で照明する。
(e)空調制御およびシート温調制御がオン状態であって、空調設定温度T1および温調設定温度T2cが条件「T1<T2c」を満たす場合には、暖色系の色(例えば、赤色)、かつ、図2の第1の照明形態(照明オン)で照明する。
上記(d),(e)のいずれの場合においても、照明制御装置201は「シート2cに着座している乗員は寒さを感じている」と判断し、照明色の影響で乗員が視覚的に温かいと感じるように、暖色系の照明色で照明部5cによる照明を行う。
【0029】
ところで、寒暖の感じ方は乗員固有のものであり、また、車室内におけるシートの配置の影響により、同じ空調設定温度T1であっても寒暖の感じ方は乗員によって異なる。上述した第1の実施の形態の車室内照明システム200では、車室内の複数のシート2a~2dの各々に対応して設けられた複数の照明部5a~5dと、複数のシート2a~2dの各々に着座している乗員の感温情報である空調設定温度とシートの温調設定温度との温度差に基づいて、各シート2a~2dに対応する照明部5a~5dの照明色を個別に制御する照明制御装置201と、を備える。
【0030】
すなわち、各乗員の感じる温度感覚に応じて、照明部5a~5dによる照明を各々適切に制御することができる。その結果、空調設定温度に起因する乗員の不快感を、照明の視覚効果により和らげることができる。
【0031】
(変形例1)
上述の図6に示した照明制御では、照明部5cを図2に示す第1の照明形態(照明オン)で制御したが、図3に示すような、風向方向に照明領域が流れるような第2の照明形態を採用しても良い。ただし、空調風が吹き出し口から吹き出されている場合にのみ、第2の照明形態を採用する。例えば、図6のステップS40からステップS72へ進んだ場合には、第1の照明形態で暖色系の照明を行う。なお、空調設定温度T1の代わりに、室内温度センサで計測された室内温度Trを用いても良い。
【0032】
さらに、空調設定温度T1と室内温度Trとの差の大きさに応じて照明光の色調等を変えるようにしても良い。例えば、温度差が大きい場合から順に、赤色、橙色、黄色のように照明色を変化させたり、色の濃さを変化させたりする。このような照明制御を行うことにより、空調設定温度T1と室内温度Trとの差を、視覚的に容易に認識することができる。
【0033】
(変形例2)
照明部5a~5dの照明色に関して、冷房時には照明部の照明色を寒色系の色とし、寒さを感じていると判断される乗員が着座しているシートに対応する照明部については、暖色系の照明色とする。例えば、シート2aに着座している乗員が寒いと感じている場合には、照明部5aの照明色は暖色系とし、その他の照明部5b~5dは寒色系の照明色とする。
【0034】
(変形例3)
変形例3は、ピラー9に設けられた照明部10a,10bに関するものである。図6に示した照明制御では、照明部5a~5dの照明色の効果により、乗員の寒さの感じ方を和らげるようにした。変形例3では、乗員の寒さを感じている乗員がいることを、照明部10a,10bを利用して報知するようにした。例えば、図6のステップS72において照明部5a~5dの照明色を暖色系の色としたならば、すなわち、乗員が寒さを感じていると判断された場合には、ピラー6に設けられている照明部10a,10bを図4に示す照明オンの状態とする。または、照明オンと照明オフとを交互に繰り返しても良い。照明部10a,10bを用いて上記のような照明制御を行うことで、空調温度設定の変更を促す報知を行うことができる。
【0035】
また、デフロスタ用の吹き出し口8eから空調風が情報に吹き出されている状態を、照明部10a,10bを用いて視覚化しても良い。すなわち、デフロスタ作動時に、照明部10a,10bを第2の照明形態で制御し、照明部10a,10bの照明領域が下から上へと流れるような照明とする。その場合も、図6のステップS72において照明部5a~5dの照明色を暖色系の色としたならば、照明オンと照明オフとを交互に繰り返すような形態に照明部10a,10bの照明制御を変更する。
【0036】
なお、照明部10a,10bの照明光の色調に関して、照明部5a~5dの場合と同様に、空調設定温度と室内温度との温度差に応じて色調を変えるようにしても良い。また、空調風の風量に応じて、照明領域の流れる速度を変えるようにしても良い。
【0037】
-第2の実施の形態-
第2の実施の形態では、乗員の感温情報として乗員自身の生体情報を用いる場合について説明する。生体情報としては、乗員の体温、生体ガス、顔の表情等があげられる。以下では、体温を用いる場合と、生体ガスを用いる場合とについ説明する。
【0038】
(生体情報として体温を用いる場合)
図7は、体温を用いる場合の車室内照明システム200の概略構成を示すブロック図である。図7に示すブロック図では、図5に示すブロック図のシート温調制御装置220に代えて、乗員の体温を計測する体温センサ240を設けた。体温センサ240以外の構成は、図5のブロック図の構成と同様である。体温センサ240は、例えば、赤外線温度計であり、各シート2a~2dに対応付けて各々設けられている。
【0039】
例えば、シート2a,2bのシートバック21またはヘッドレスト22の背面側に体温センサ240をそれぞれ設けて、体温センサ240に対向するリア側のシート2c,2dに着座している乗員の体温(例えば、顔の温度)を個別に計測する。また、インストルメントパネル7の、各シート2a,2bが対向する位置に体温センサ240をそれぞれ配置し、シート2a,2bに着座している乗員の体温を各体温センサ240によりにそれぞれ計測する。
【0040】
各体温センサ240により計測された体温Tcは、照明制御装置201に入力される。照明制御装置201は、空調設定温度T1と体温Tcとの温度差に応じて、照明部5a~5dの照明色を変化させる。例えば、T1>Tcである場合には乗員は寒く感じていると判断し、暖色系の照明色に制御する。逆に、T1<Tcである場合には乗員は暑く感じていると判断し、寒色系の照明色に制御する。また、空調設定温度T1と体温Tcとがほぼ同程度である場合には、寒さも暑さも感じていないと判断して、照明部5a~5dの照明をオフする。
【0041】
上述した第2の実施の形態の車室内照明システム200では、車室内空調装置の空調設定温度T1と、シート2a~2dに着座している乗員の体温Tcとの温度差を、乗員の感温情報として用いるようにした。空調設定温度T1と比較する温度を乗員の体温Tcとしたことにより、乗員の感温情報をより正確に判断することができる。
【0042】
(生体情報として生体ガスを用いる場合)
なお、体温センサ240に代えて、図8に示すブロック図のように臭気センサ250を設け、シートに着座している乗員の生体情報として、乗員の生体ガスを臭気センサで検出するようにしても良い。臭気センサ250を各シート2a~2dにそれぞれ設け、例えば、ヘッドレスト22やシートバック21にそれぞれ設け、それらの臭気センサ250により着座している乗員の生体ガスを個別に検出する。
【0043】
発汗には、温熱性発汗と精神性発汗とがある。温熱性発汗は、暑いときや運動した時の体温上昇(例えば、0.25~0.5℃程度の体内温度上昇)に伴う発汗であり、エクリン汗腺によるものである。精神性発汗は、人前に出て緊張したときや、驚いたとき等の精神的な刺激にともなって出る汗であり、エクリン汗腺およびアポクリン汗腺によるものである。
【0044】
臭気センサ250は、アポクリン汗腺の分泌物から放出されるガス成分を検出するセンサ250aと、エクリン汗腺の分泌物から放出されるガス成分を検出するセンサ250bとを備えている。アポクリン汗腺の発汗によるガス成分をセンサ250aが検出すると、検出信号Saが照明制御装置201に入力される。エクリン汗腺の発汗によるガス成分をセンサ250bが検出すると、検出信号Sbが照明制御装置201に入力される。
【0045】
照明制御装置201は、検出信号Sbのみが入力された場合には精神性の発汗と判断し、照明部5a~5dの照明色を、乗員の緊張感が解けて落ち着いた感じとなるような色調の色に制御する。検出信号SaおよびSbの両方が入力された場合には、照明制御装置201は温熱性発汗であると判断し、照明部5a~5dの照明色を寒色系の色に制御する。または、照明部5a~5dの照明色を寒色系の色に制御するともに、変形例3の場合と同様に照明部10a,10bを用いて、空調設定温度を下げることを促す照明制御をしても良い。その場合の照明色としては、設定温度を下げる意味合いで寒色系としても良いし、設定温度が高すぎることを示す暖色系であっても良い。
【0046】
図8に示す例では、シート2a~2dに着座している乗員の感温情報として、乗員の生体ガスを臭気センサ250で検出し、乗員の車室内温度に対する感じ方を生体ガスの成分の変化から判断するようにした。そのため、暑さだけでなく、乗員の緊張感に対しても、照明制御を適切に行うことができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態や変形例は、個別に適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。例えば、第1の実施の形態と図8に示す例とを組み合わせることにより、暑さ寒さの両方の感じ方に対して照明制御を行うことができる。乗員が暑いと感じた場合には、照明部5a~5dの照明色を暖色系とし、寒いと感じた場合には照明色を寒色系とする。
【0048】
なお、生体情報として乗員の顔の表情を利用する場合には、図7の体温センサ240に代えてデジタルカメラをそれぞれ設ける。そして、デジタルカメラにより撮影された乗員の表情により、乗員が寒さを感じているか、暑さを感じているかを判断する。
【0049】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…車室、2a~2d…シート、4a~4d…ドア、5a~5d,10a,10b…照明部、6,9…ピラー、7…インストルメントパネル、8a~8e…吹き出し口、20…シートクッション、21…シートバック、22…ヘッドレスト、30…シートヒータ、200…車室内照明システム、201…照明制御装置、210…空調制御装置、220…シート温調制御装置、230…室内温度センサ、240…体温センサ、250…臭気センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8