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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】含フッ素イソシアヌル化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20240710BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240710BHJP
   C07D 251/34 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08G65/333
C09K3/18 103
C07D251/34 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021093373
(22)【出願日】2021-06-03
(62)【分割の表示】P 2020130332の分割
【原出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2021175807
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019143218
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019165215
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019228924
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020076866
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】能勢 雅聡
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/056413(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/147142(WO,A1)
【文献】国際公開第03/002628(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110698(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00- 67・04
C09K 3/18
C07D 251/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中:
F1は、Rf-R-O-であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
は、2価のフルオロポリエーテル基であり;
qは、0または1であり;
は、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
[式中、
121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
a1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(ここに、各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。]
で表される基であり;
但し、R F1 -X -は、-O-O-結合を含まず;
A1は、-RA6-RA4-ORACまたは-RA6-RA5-(ORACであり;
A4は、C1-10アルキレン基であり;
A5は、炭素数1~10の三価の炭化水素基であり;
A6は、単結合または-C1-10アルキレン-O-であり;
Acは、(メタ)アクリロイル基であり;
は、-X -X であり;
は、-[(R c1 t1 -(X c1 t2 ]-X c2 -で表される基であり;
c1 は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC 1-12 アルキレン基であり;
c1 は、各出現においてそれぞれ独立して、O、NR x1 、S、SOまたはSO であり;
x1 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC 1-6 アルキル基であり;
c2 は、OまたはNR x2 であり;
x2 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC 1-6 アルキル基であり;
t1は、1~6の整数であり;
t2は、1~6の整数であり;
ここに、[(R c1 t1 -(X c1 t2 ]において、R c1 およびX c1 の存在順序は式中において任意であり;
は、-CO-NR d2 -、-OCO-NR d2 -、-NR d2 -CO-、または-NR d2 -COO-であり;
d2 は、水素原子またはC 1-6 アルキル基であり;
但し、-X -R A1 は、-O-O-結合を含まず;
は、RF1-X-またはRA1-X-である。]
で表される化合物。
【請求項2】
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Faは、フッ素原子である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
は、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5):
-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
eおよびfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、eおよびfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
は、-(CHm22-(式中、m22は1~3の整数である。)で表される基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
A1は、-RA4-ORACまたは-RA5-(ORACであり、
A4は、C1-10アルキレン基であり、
A5は、炭素数1~10の三価の炭化水素基であり、
ACは、(メタ)アクリロイル基である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
は、-CO-NRd2-であり、
d2は、水素原子またはC1-6アルキル基である、
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
A1は、-RA5-(ORACであり、
A5は、炭素数4~6の三価の炭化水素基であり、
ACは、(メタ)アクリロイル基である、
請求項1~のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
は、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C1-6アルキレン基であり、
c1”は、C1-12アルキレン基であり、
c1は、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
c2は、OまたはNRx2であり、
x2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
は、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C2-4アルキレン基であり、
c1”は、C2-12アルキレン基であり、
c1は、Sであり、
c2は、Oである
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
は、RA1-X-である、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
1種またはそれ以上の請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物を含む、表面処理剤。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物または請求項12に記載の表面処理剤;および
マトリックスを形成する組成物
を含む、硬化性組成物。
【請求項14】
基材と、該基材の表面に請求項12に記載の表面処理剤あるいは請求項13に記載の硬化性組成物により形成された層とを含む物品。
【請求項15】
上記物品が光学部材である、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素イソシアヌル化合物および該含フッ素イソシアヌル化合物を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の含フッ素化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。このような含フッ素化合物として、(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネートと、(B-1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテルおよび(B-2)活性水素と炭素-炭素二重結合を有するモノマーを反応させた含フッ素化合物(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2003/002628号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の含フッ素化合物は、基材に撥水撥油性などの機能を与え得るが、溶剤に対する溶解性が十分でなく、表面処理層の形成に不具合を生じ得る場合がある。
【0005】
本開示は、樹脂を含む種々の材料から成る基材に、撥水性、撥油性および防汚性を有し、かつ摩擦耐久性が高い表面処理層を与えることができる含フッ素イソシアヌル化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式中:
F1は、Rf-R-O-であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
は、2価のフルオロポリエーテル基であり;
qは、0または1であり;
は、単結合または2価の有機基であり;
A1は、ORAc基含有基であり;
Acは、(メタ)アクリロイル基であり;
は、少なくとも2つのヘテロ原子を含有する二価の有機基であり;
は、RF1-X-またはRA1-X-である。]
で表される化合物。
[2] Rは、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]に記載の化合物。
[3] RFaは、フッ素原子である、上記[2]に記載の化合物。
[4] Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)または(f5):
-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり;
eおよびfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり;
c、d、eおよびfの和は、10~200の整数であり;
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり;
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり;
gは、2~100の整数である。]、
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] Xは、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
[式中、
121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
a1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(ここに、各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。]
で表される基である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] Xは、-(CHm22-(式中、m22は1~3の整数である。)で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] RA1は、-RA6-RA4-ORACまたは-RA6-RA5-(ORACであり、
A4は、C1-10アルキレン基であり、
A5は、炭素数1~10の三価の炭化水素基であり、
A6は、単結合または-C1-10アルキレン-O-であり、
ACは、(メタ)アクリロイル基である、
上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の化合物。
[8] RA1は、-RA4-ORACまたは-RA5-(ORACであり、
A4は、C1-10アルキレン基であり、
A5は、炭素数1~10の三価の炭化水素基であり、
ACは、(メタ)アクリロイル基である、
上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の化合物。
[9] Xは、-X-X-であり、
は、ヘテロ原子を含有する二価の有機基であり、
は、-CO-NRd2-、-OCO-NRd2-、-NRd2-CO-、または-NRd2-COO-であり、
d2は、水素原子またはC1-6アルキル基である、
上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の化合物。
[10] Xは、-X-X-であり、
は、ヘテロ原子を含有する二価の有機基であり、
は、-CO-NRd2-であり、
d2は、水素原子またはC1-6アルキル基である、
上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の化合物。
[11] RA1は、-RA5-(ORACであり、
A5は、炭素数4~6の三価の炭化水素基であり、
ACは、(メタ)アクリロイル基である、
上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[12] Xは、-[(Rc1t1-(Xc1t2]-Xc2-であり、
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1-12アルキレン基であり、
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
c2は、OまたはNRx2であり、
x2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
t1は、1~6の整数であり、
t2は、1~6の整数であり、
ここに、[(Rc1t1-(Xc1t2]において、Rc1およびXc1の存在順序は式中において任意である、
上記[9]~[11]のいずれか1項に記載の化合物。
[13] Xは、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C1-6アルキレン基であり、
c1”は、C1-12アルキレン基であり、
c1は、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
c2は、OまたはNRx2であり、
x2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基である、
上記[9]~[12]のいずれか1項に記載の化合物。
[14] Xは、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C2-4アルキレン基であり、
c1”は、C2-12アルキレン基であり、
c1は、Sであり、
c2は、Oである
上記[9]~[13]のいずれか1項に記載の化合物。
[15] Rは、RA1-X-である、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の化合物。
[16] 1種またはそれ以上の上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の化合物を含む、表面処理剤。
[17] 上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の化合物または上記[16]に記載の表面処理剤;および
マトリックスを形成する組成物
を含む、硬化性組成物。
[18] 基材と、該基材の表面に上記[16]に記載の表面処理剤あるいは上記[17]に記載の硬化性組成物により形成された層とを含む物品。
[19] 上記物品が光学部材である、上記[18]に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示の含フッ素イソシアヌル化合物は、樹脂を含む種々の材料から成る基材に、撥水性、撥油性および防汚性を有し、かつ摩擦耐久性が高い表面処理層を与えることができ、表面処理剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に記載が無い限り、炭化水素基またはその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、スルホキシド、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。また、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基および5~10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
以下、本開示の含フッ素イソシアヌル化合物について説明する。
【0012】
本開示は、下記式(1)または式(2):
【化2】

[式中:
F1は、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0または1であり;
qは、0または1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
A1は、各出現においてそれぞれ独立して、ORAc基含有基であり;
Acは、(メタ)アクリロイル基であり;
は、少なくとも2つのヘテロ原子を含有する二価の有機基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、RF1-X-またはRA1-X-である。]
で表される化合物を提供する。
【0013】
上記式(1)において、RF1は、Rf-R-O-である。
【0014】
上記式(2)において、RF2は、-Rf -R-O-である。
【0015】
上記式において、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0016】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0017】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15ペルフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16ペルフルオロアルキル基である。
【0018】
上記C1-16ペルフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6ペルフルオロアルキル基、特にC1-3ペルフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6ペルフルオロアルキル基、特にC1-3ペルフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、または-CFCFCFである。
【0019】
上記式において、Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0020】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0021】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0022】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF-、-CFCF-、または-CFCFCF-である。
【0023】
上記式において、pは、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0024】
上記式において、qは、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0025】
上記式(1)および(2)において、Rは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0026】
は、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0027】
Faは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。
【0028】
a、b、c、d、eおよびfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0029】
a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。
【0030】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、上記繰り返し単位は、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-および-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-および-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-および-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0031】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩擦耐久性等を向上させることができる。
【0032】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0033】
一の態様において、Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)~(f5)のいずれかで表される基である。
-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f4)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0034】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)は、好ましくは、-(OCFCFCF-または-(OCF(CF)CF-で表される基であり、より好ましくは、-(OCFCFCF-で表される基である。
【0035】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0036】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OCおよびOCから選択される基である。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、および-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10およびOC12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-または-(OC-OC-である。
【0037】
上記式(f4)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0038】
上記式(f5)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0039】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0040】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0041】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0042】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0043】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0044】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩擦耐久性および耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性および摩擦耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0045】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.2~0.95であり、より好ましくは0.2~0.9である。
【0046】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0~2.0である。
【0047】
上記フルオロポリエーテル基含有化合物において、RF1の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1およびRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0048】
別の態様において、RF1の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0049】
別の態様において、RF1の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0050】
上記式(1)および(2)において、Xは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。
【0051】
は、式(1)および(2)の環に直接結合する単結合または二価の連結基である。Xとしては、単結合、アルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、または、エーテル結合およびエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0052】
としては、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、または、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、または、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0または1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0053】
上記Xa1としては、-O-または-C(=O)O-が好ましい。
【0054】
上記Xとしては、下記式:
-(CFm11-(CHm12-O-(CHm13
(式中、m11は1~3の整数であり、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm14-(CHm15-O-CHCH(OH)-(CHm16
(式中、m14は1~3の整数であり、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm17-(CHm18
(式中、m17は1~3の整数であり、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm19-(CHm20-O-CHCH(OSi(OCH)-(CHm21
(式中、m19は1~3の整数であり、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基、または、
-(CHm22
(式中、m22は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0055】
上記Xとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH-、-C-、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-(CFn5-(n5は0~4の整数である。)、-(CFn5-(CHm5-(n5およびm5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CFCFCHOCHCH(OH)CH-、-CFCFCHOCHCH(OSi(OCH)CH
等が挙げられる。
【0056】
上記式(1)および(2)において、RA1は、各出現においてそれぞれ独立して、ORAc基含有基である。
【0057】
上記RAcは、(メタ)アクリロイル基である。ここに、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包含する。
【0058】
本開示の化合物は、(メタ)アクリロイル基を含有することにより、溶剤への溶解性が向上し、さらに、かかる化合物から得られる表面処理層の摩擦耐久性が向上し得る。
【0059】
一の態様において、上記RACは、アクリロイル基である。
【0060】
別の態様において、上記RACは、メタクリロイル基である。
【0061】
好ましい態様において、上記RA1は、-RA6-RA4-ORACまたは-RA6-RA5-(ORACである。
【0062】
一の態様において、上記RA1は、-RA4-ORACまたは-RA5-(ORACである。
【0063】
一の態様において、上記RA1は、-RA4-ORACまたは-RA6-RA4-ORACである。RA1を-RA4-ORACまたは-RA6-RA4-ORACとすることにより、本開示の化合物から得られる表面処理層の初期接触角が高くなり得る。
【0064】
別の態様において、上記RA1は、-RA5-(ORACまたは-RA6-RA5-(ORACである。RA1を-RA5-(ORACまたは-RA6-RA5-(ORACとすることにより、本開示の化合物の溶媒への溶解性がより向上し得、また、本開示の化合物から得られる表面処理層の耐久性がより高くなり得る。
【0065】
上記RA4は、C1-10アルキレン基、好ましくはC2-6アルキレン基、より好ましくはC2-4アルキレン基である。
【0066】
上記RA5は、炭素数1~10の三価の炭化水素基、好ましくは炭素数4~6の三価の炭化水素基である。
【0067】
好ましい態様において、RA5は、下記の基である。
(式中、*は、ORACに結合し、**は、Xに結合する。)
【0068】
上記RA6は、単結合または-C1-10アルキレン-O-であり、
【0069】
一の態様において、上記RA6は、単結合である。
【0070】
別の態様において、上記RA6は、-C1-10アルキレン-O-である。
【0071】
上記-C1-10アルキレン-O-は、好ましくは-C1-6アルキレン-O-、より好ましくは-C2-6アルキレン-O-、さらに好ましくは-C2-4アルキレン-O-であり得る。
【0072】
上記式(1)および(2)において、Xは、少なくとも2つのヘテロ原子を含有する二価の有機基である。
【0073】
本開示の化合物は、Xに少なくとも2つのヘテロ原子を含有することにより、溶剤への溶解性がより向上し得、さらに、かかる化合物から得られる表面処理層の摩擦耐久性がより向上し得る。
【0074】
好ましい態様において、Xは、-X-X-である。
【0075】
上記Xは、ヘテロ原子を含有する二価の有機基である。
【0076】
好ましい態様において、Xは、下記式
-[(Rc1t1-(Xc1t2]-Xc2
[式中、
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合またはC1-12アルキレン基であり、
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
c2は、OまたはNRx2であり、
x2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
t1は、1~6の整数であり、
t2は、1~6の整数であり、
ここに、[(Rc1t1-(Xc1t2]において、Rc1およびXc1の存在順序は式中において任意である]
で表される基である。
【0077】
本開示の化合物は、Xとして上記の基を有することにより、かかる化合物から得られる表面処理層の摩擦耐久性がより向上し得る。
【0078】
一の態様において、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-12アルキレン基である。
【0079】
上記Rc1において、C1-12アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC2-10アルキレン基、例えば、C2-9アルキレン基である。
【0080】
上記Xc1は、各出現においてそれぞれ独立して、好ましくは-S-、-SO-または-SO-であり、より好ましくは-S-である。
【0081】
上記Xc2は、好ましくは、Oである。
【0082】
上記t1は、1~6の整数、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2~3、さらに好ましくは2である。
【0083】
上記t2は、1~6の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数、さらに好ましくは1である。
【0084】
好ましい態様において、t1は2であり、かつ、t2は1である。
【0085】
好ましい態様において、
は、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C1-6アルキレン基であり、
c1”は、C1-12アルキレン基であり、
c1は、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
c2は、OまたはNRx2であり、
x2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基である。
【0086】
より好ましい態様において、
は、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C1-6アルキレン基であり、
c1”は、C1-12アルキレン基であり、
c1は、S、SOまたはSOであり、
c2は、Oである。
【0087】
さらに好ましい態様において、
は、-Rc1’-Xc1-Rc1”-Xc2-であり、
c1’は、C2-4アルキレン基であり、
c1”は、C2-12アルキレン基であり、
c1は、Sであり、
c2は、Oである。
【0088】
上記Xは、-CO-NRd2-、-OCO-NRd2-、-NRd2-CO-、または-NRd2-COO-である。
【0089】
上記Rd2は、水素原子またはC1-6アルキル基である、
【0090】
好ましい態様において、上記Xは、-CO-NRd2-である。
【0091】
上記式(1)および(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、RF1-X-またはRA1-X-である。ここに、RがRF1-X-である場合、式(1)中にRF1-X-が2つ存在するが、これらは同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、RがRA1-X-である場合、式(1)および(2)中にRA1-X-が複数存在するが、これらは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0092】
一の態様において、Rは、RF1-X-である。RをRF1-X-とすることにより、本開示の化合物から得られる表面処理層の初期接触角が高くなり得る。
【0093】
好ましい態様において、Rは、RA1-X-である。RをRA1-X-とすることにより、本開示の化合物の溶媒への溶解性がより向上し得、また、本開示の化合物から得られる表面処理層の耐久性がより高くなり得る。
【0094】
上記式(1)および(2)で表される含フッ素イソシアヌル化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば1,000~30,000、好ましくは2,000~20,000、より好ましくは2,500~6,000、さらに好ましくは2,500~5,000である。本明細書において、含フッ素イソシアヌル化合物の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。含フッ素イソシアヌル化合物の数平均分子量を上記の範囲にすることにより、含フッ素イソシアヌル化合物の溶剤への溶解性が向上する。また、該化合物から得られる表面処理層の初期接触角および摩擦耐久性が向上し得る。
【0095】
一の態様において、本開示の化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0096】
別の態様において、本開示の化合物は、式(2)で表される化合物である。
【0097】
別の態様において、本開示の化合物は、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物である。即ち、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物の混合物として用いられる。
【0098】
上記混合物中、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対して、式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%または10モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下または5モル%以上10モル%以下である。式(2)で表される化合物をかかる範囲とすることにより、より摩擦耐久性を向上させることができる。
【0099】
本開示の含フッ素イソシアヌル化合物は、例えば、下記のようにして合成することができる。
【0100】
下記式(1a):
【化3】
[式中:
F1は、Rf-R-O-であり;
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
は、2価のフルオロポリエーテル基であり;
qは、0または1であり;
は、単結合または2価の有機基であり;
Baは、RF1-X-またはアリル基である。]
で表される化合物に、下記式(2a)
HXc1-Rb2-OH (2a)
[式中:
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、O、NRx1、S、SOまたはSOであり、
x1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキル基であり、
b2は、C1-10アルキレン基である。]
で表される化合物を反応させて、下記式(1b):
【化4】
[式中:
F1、Rf、R、q、X、Xc1、およびRb2は、上記と同意義であり、
Bbは、RF1-X-または-(CH-Xc1-Rb2-OHである。]
で表される化合物を得る。
【0101】
さらに、上記で得られた式(1b)で表される化合物に、下記式(2b)
OCN-RA1 (2b)
で表される化合物を反応させて、本開示の式(1)で表される含フッ素イソシアヌル化合物を得ることができる。
【0102】
本開示の化合物は、種々の用途に使用し得る。次に、本開示の化合物の用途の例を説明する。
【0103】
本開示の化合物は、重合性コーティング剤モノマーとともに使用できる。本開示の化合物、および、重合性コーティング剤モノマーを含むことを特徴とする組成物も本発明の1つである(本明細書において組成物(a)ということがある)。組成物(a)は、上記構成を有することから、水またはn-ヘキサデカンに対する静的接触角が大きく、透明であり、離形性に優れ、指紋が付きにくく、指紋が付いても完全に拭き取ることができる塗膜が得られる。
【0104】
上記重合性コーティング剤モノマーとしては、炭素-炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。
【0105】
上記重合性コーティング剤モノマーとしては、例えば、特に限定されるものではないが、単官能および/または多官能アクリレートおよびメタクリレート(以下、アクリレートおよびメタクリレートを合わせて、「(メタ)アクリレート」とも言う)、単官能および/または多官能ウレタン(メタ)アクリレート、単官能および/または多官能エポキシ(メタ)アクリレートである化合物を含有する組成物を意味する。当該マトリックスを形成する組成物としては、特に限定されるものではないが、一般的にハードコーティング剤または反射防止剤とされる組成物であり、例えば多官能性(メタ)アクリレートを含むハードコーティング剤または含フッ素(メタ)アクリレートを含む反射防止剤が挙げられる。当該ハードコーティング剤は、例えば、ビームセット502H、504H、505A-6、550B、575CB、577、1402(商品名)として荒川化学工業株式会社から、EBECRYL40(商品名)としてダイセルサイテック株式会社から、HR300系(商品名)として横浜ゴム株式会社から市販されている。当該反射防止剤は、例えばオプツールAR-110(商品名)としてダイキン工業株式会社から市販されている。
【0106】
組成物(a)は、さらに、酸化防止剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、シリカなどの無機微粒子、アルミニウムペースト、タルク、ガラスフリット、金属粉などの充填剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェノチアジン(PTZ)などの重合禁止剤などを含んでいてもよい。
【0107】
組成物(a)は、さらに、ウレタン化用の触媒、例えば、スズ系触媒、チタン系触媒、ジルコニア系触媒、ビスマス系触媒、有機アミン系触媒を含んでいてもよい。
【0108】
上記スズ系触媒としては、ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)が挙げられる。
上記チタン系触媒としては、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンテトラアセチルアセトナートが挙げられる。
上記ジルコニア系触媒としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
上記ビスマス系触媒としては、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)が挙げられる。
上記有機アミン系触媒としては、ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0109】
組成物(a)は、更に、溶媒を含むことが好ましい。上記溶媒としては、フッ素含有有機溶媒またはフッ素非含有有機溶媒が挙げられる。
【0110】
上記フッ素含有有機溶媒としては、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン、パーフルオロデカリン、パーフルオロアルキルエタノール、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロアルキルアミン(フロリナート(商品名)等)、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、ポリフルオロ脂肪族炭化水素(アサヒクリンAC6000(商品名))、ハイドロクロロフルオロカーボン(アサヒクリンAK-225(商品名)等)、ハイドロフルオロエーテル(ノベック(商品名)、HFE-7100(商品名)、HFE-7300(商品名)等)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、含フッ素アルコール、パーフルオロアルキルブロミド、パーフルオロアルキルヨージド、パーフルオロポリエーテル(クライトックス(商品名)、デムナム(商品名)、フォンブリン(商品名)等)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、メタクリル酸2-(パーフルオロアルキル)エチル、アクリル酸2-(パーフルオロアルキル)エチル、パーフルオロアルキルエチレン、フロン134a、およびヘキサフルオロプロペンオリゴマーが挙げられる。
【0111】
上記フッ素非含有有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ダイグライム、トリグライム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、2-ブタノン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、メタノール、およびジアセトンアルコールが挙げられる。
【0112】
なかでも、上記溶媒として、好ましくは、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサデカン、酢酸ブチル、アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、ジアセトンアルコールまたは2-プロパノールである。
【0113】
上記溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0114】
上記溶媒は組成物(a)中に、30~95質量%の範囲で用いられることが好ましい。より好ましくは50~90質量%である。
【0115】
例えば、組成物(a)を基材に塗布することにより、防汚層を形成することができる。また、塗布した後、重合することによって、防汚層を形成することも可能である。上記基材としては、樹脂(特に、非フッ素樹脂)が挙げられる。
【0116】
本開示の化合物は、硬化性樹脂または硬化性モノマーとともに使用できる。上記の化合物、および、硬化性樹脂または硬化性モノマーを含むことを特徴とする組成物も本発明の1つである(本明細書において組成物(b)ということがある)。組成物(b)は、上記構成を有することから、指紋が付きにくく、指紋が付いても完全に拭き取ることができる塗膜が得られる。
【0117】
上記硬化性樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、耐熱性、強度を有する樹脂であれば特に制限されないが、光硬化性樹脂が好ましく、紫外線硬化性樹脂がより好ましい。
【0118】
上記硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、環状ポリオレフィン系ポリマー、含フッ素ポリオレフィン系ポリマー(PTFE等)、含フッ素環状非結晶性ポリマー(サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標)AF等)などが挙げられる。
【0119】
上記硬化性樹脂または上記硬化性樹脂を構成するモノマーとして具体的には、例えば、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、酢酸ビニル、ビニルピバレート、各種(メタ)アクリレート類:フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロール、プロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N-ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレートシリコン系のアクリレート、無水マレイン酸、ビニレンカーボネート、鎖状側鎖ポリアクリレート、環状側鎖ポリアクリレートポリノルボルネン、ポリノルボルナジエン、ポリカーボネート、ポリスルホン酸アミド、含フッ素環状非結晶性ポリマー(サイトップ(登録商標)、テフロン(登録商標)AF等)等が挙げられる。
【0120】
上記硬化性モノマーは、光硬化性モノマー、熱硬化性モノマーのいずれであってもよいが、紫外線硬化性モノマーが好ましい。
【0121】
上記硬化性モノマーとしては、例えば、(a)ウレタン(メタ)アクリレート、(b)エポキシ(メタ)アクリレート、(c)ポリエステル(メタ)アクリレート、(d)ポリエーテル(メタ)アクリレート、(e)シリコン(メタ)アクリレート、(f)(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0122】
上記硬化性モノマーとして具体的には、以下の例が挙げられる。
(a)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートに代表されるポリ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕イソシアヌレートが挙げられる。
(b)エポキシ(メタ)アクリレートはエポキシ基に(メタ)アクリロイル基を付加したものであり、出発原料としてビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、脂環化合物を用いたものが一般的である。
(c)ポリエステル(メタ)アクリレートのポリエステル部を構成する多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられ、多塩基酸としては、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、トリメリット酸、イタコン酸、コハク酸、テレフタル酸、アルケニルコハク酸などが挙げられる。
(d)ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(e)シリコン(メタ)アクリレートは、分子量1,000~10,000のジメチルポリシロキサンの片末端、あるいは、両末端を(メタ)アクリロイル基で変性したものであり、例えば、以下の化合物などが例示される。
【0123】
【化5】
【0124】
(f)(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチル-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)(メタ)アクリルレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが例示される。
【0125】
上記硬化性樹脂および硬化性モノマーの内、市場から入手可能で好ましいものとしては以下のものが挙げられる。
【0126】
上記硬化性樹脂としては、シリコン樹脂類PAK-01、PAK-02(東洋合成化学社製)、ナノインプリント樹脂NIFシリーズ(旭硝子社製)、ナノインプリント樹脂OCNLシリーズ(東京応化工業社製)、NIAC2310(ダイセル化学工業社製)、エポキシアクリレート樹脂類EH-1001、ES-4004、EX-C101、EX-C106、EX-C300、EX-C501、EX-0202、EX-0205、EX-5000など(共栄社化学社製)、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート類、スミジュールN-75、スミジュールN3200、スミジュールHT、スミジュールN3300、スミジュールN3500(住友バイエルンウレタン社製)などが挙げられる。
【0127】
上記硬化性モノマーとして、シリコンアクリレート系樹脂類、多官能アクリレート類、多官能メタクリレート類およびアルコキシシラン基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0128】
シリコンアクリレート系樹脂類としては、サイラプレーンFM-0611、サイラプレーンFM-0621、サイラプレーンFM-0625、両末端型(メタ)アクリル系のサイラプレーンFM-7711、サイラプレーンFM-7721およびサイラプレーンFM-7725等、サイラプレーンFM-0411、サイラプレーンFM-0421、サイラプレーンFM-0428、サイラプレーンFM-DA11、サイラプレーンFM-DA21、サイラプレーン-DA25、片末端型(メタ)アクリル系のサイラプレーンFM-0711、サイラプレーンFM-0721、サイラプレーンFM-0725、サイラプレーンTM-0701およびサイラプレーンTM-0701T(JCN社製)等が挙げられる。
【0129】
多官能アクリレート類としては、A-9300、A-9300-1CL、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、A-TMMT(新中村工業社製)等が挙げられる。
【0130】
多官能メタクリレート類としてTMPT(新中村工業社製)等が挙げられる。
【0131】
アルコキシシラン基含有(メタ)アクリレートとしては、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン(別名(トリイソプロポキシシリル)プロピルメタクリレート(略称:TISMA)およびトリイソプロポキシシリル)プロピルアクリレート)、3-(メタ)アクリルオキシイソブチルトリクロロシラン、3-(メタ)アクリルオキシイソブチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシイソブチルトリイソプロポキ3-(メタ)アクリルオキシイソブチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0132】
組成物(b)は、架橋触媒を含むことも好ましい。上記架橋触媒としては、ラジカル重合開始剤、酸発生剤等が例示される。
【0133】
上記ラジカル重合開始剤は、熱や光によりラジカルを発生する化合物であり、ラジカル熱重合開始剤、ラジカル光重合開始剤が挙げられる。本発明においては、上記ラジカル光重合開始剤が好ましい。
【0134】
上記ラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等のパーオキシド化合物、並びに、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等が挙げられる。
【0135】
上記ラジカル光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等の-ジケトン類、ベンゾイン等のアシロイン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン等のアセトフェノン類、アントラキノン、1,4-ナフトキノン等のキノン類、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類、フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物、アシルホスフィンオキシド類、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。
【0136】
上記ラジカル光重合開始剤の市販品としては、以下のものが例示される。
IRGACURE 651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、
IRGACURE 184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、
IRGACURE 2959:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、
IRGACURE 127:2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、
IRGACURE 907:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、
IRGACURE 369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、
IRGACURE 379:2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、
IRGACURE 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、
IRGACURE 784:ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、
IRGACURE OXE 01:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、
IRGACURE OXE 02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、
IRGACURE261、IRGACURE369、IRGACURE500、
DAROCUR 1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、
DAROCUR TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、
DAROCUR1116、DAROCUR2959、DAROCUR1664、DAROCUR4043、
IRGACURE 754 オキシフェニル酢酸:2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、
IRGACURE 500:IRGACURE 184とベンゾフェノンとの混合物(1
:1)、
IRGACURE 1300:IRGACURE 369とIRGACURE 651との混合物(3:7)、
IRGACURE 1800:CGI403とIRGACURE 184との混合物(1:3)、
IRGACURE 1870:CGI403とIRGACURE 184との混合物(7:3)、
DAROCUR 4265:DAROCUR TPOとDAROCUR 1173との混合物(1:1)。
なお、IRGACUREはBASF社製であり、DAROCURはメルクジャパン社製である。
【0137】
また、上記架橋触媒としてラジカル光重合開始剤を用いる場合には、増感剤として、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどを併用することもでき、重合促進剤として、DAROCUR EDB(エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート)、DAROCUR EHA(2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート)などを併用しても良い。
【0138】
上記増感剤を用いる場合の増感剤の配合量としては、上記硬化性樹脂若しくは上記硬化性モノマー100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1~2質量部である。
【0139】
また、上記重合促進剤を用いる場合の重合促進剤の配合量としては、上記硬化性樹脂若しくは上記硬化性モノマー100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1~2質量部である。
【0140】
上記酸発生剤は、熱や光を加えることによって酸を発生する材料であり、熱酸発生剤、光酸発生剤が挙げられる。本発明においては、光酸発生剤が好ましい。
【0141】
上記熱酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、ニトロベンジルトシレート(特に、4-ニトロベンジルトシレート)、他の有機スルホン酸のアルキルエステル等が挙げられる。
【0142】
上記光酸発生剤は、光を吸収する発色団と分解後に酸となる酸前駆体とにより構成されており、このような構造の光酸発生剤に特定波長の光を照射することで、光酸発生剤が励起し酸前駆体部分から酸が発生する。
【0143】
上記光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、CFSO、p-CHPhSO、p-NOPhSO(ただし、Phはフェニル基)等の塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン-ジアジドスルホニルクロリド、またはスルホン酸エステル等が挙げられる。その他、光酸発生剤として、2-ハロメチル-5-ビニル-1,3,4-オキサジアゾール化合物、2-トリハロメチル-5-アリール-1,3,4-オキサジアゾール化合物、2-トリハロメチル-5-ヒドロキシフェニル-1,3,4-オキサジアゾール化合物なども挙げられる。なお、上記有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化水素酸(例えば、塩化水素)を形成する化合物である。
【0144】
上記光酸発生剤の市販品として以下のものが例示される。
和光純薬工業社製のWPAG-145[ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン]、WPAG-170[ビス(t-ブチルスルホニル)ジアゾメタン]、WPAG-199[ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン]、WPAG-281[トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート]、WPAG-336[ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート]、WPAG-367[ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルホニウム p-トルエンスルホネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のIRGACURE PAG103[(5-プロピルスルホニルオキシミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル]、IRGACURE PAG108[(5-オクチルスルホニルオキシミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)]、IRGACURE PAG121[5-p-トルエンスルホニルオキシミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル]、IRGACURE PAG203、CGI725、三和ケミカル社製のTFE-トリアジン[2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン]、TME-トリアジン[2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリ-クロロメチル)-s-トリアジン]MP-トリアジン[2-(メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン]、ジメトキシ[2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリ-クロロメチル)-s-トリアジン]。
【0145】
上記架橋触媒の配合量としては、上記硬化性樹脂若しくは上記硬化性モノマー100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。このような範囲であると、充分な硬化体が得られる。上記架橋触媒の配合量としてより好ましくは、0.3~5質量部であり、更に好ましくは、0.5~2質量部である。
【0146】
また、上記架橋触媒として上記酸発生剤を用いる場合には、必要に応じて酸捕捉剤を添加することにより、上記酸発生剤から発生する酸の拡散を制御してもよい。
【0147】
上記酸捕捉剤としては、特に制限されないが、アミン(特に、有機アミン)、塩基性のアンモニウム塩、塩基性のスルホニウム塩などの塩基性化合物が好ましい。これらの酸捕捉剤の中でも、有機アミンが、画像性能が優れる点でより好ましい。
【0148】
上記酸捕捉剤としては、具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4-ジメチルアミノピリジン、1-ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ピリジニウムp-トルエンスルホナート、2,4,6-トリメチルピリジニウムp-トルエンスルホナート、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルホナート、およびテトラブチルアンモニウムラクテート、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、4-ジメチルアミノピリジン、1-ナフチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール類、ヒドロキシピリジン類、ピリジン類、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の有機アミンが好ましい。
【0149】
上記酸捕捉剤の配合量は、上記酸発生剤100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、更に好ましくは0.5~5質量部である。
【0150】
組成物(b)は、溶媒を含むものであってもよい。上記溶媒としては、水溶性有機溶媒、有機溶媒(特に、油溶性有機溶媒)、水等が挙げられる。
【0151】
上記水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコール、3-メトキシブチルアセテート(MBA)、1,3-ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、乳酸エチル、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
【0152】
上記有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、HFC141b、HCHC225、ハイドロフルオロエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。これら溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0153】
上記溶媒としては、レジスト組成物に含まれる成分の溶解性、安全性の観点から、特にPGMEA、MBAが好ましい。
【0154】
上記溶媒は組成物(b)中に、10~95質量%の範囲で用いられることが好ましい。より好ましくは20~90質量%である。
【0155】
例えば、組成物(b)を基材に塗布することにより、レジスト膜を形成できる。上記基材の材料としては、合成樹脂等が挙げられる。
【0156】
上記合成樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エボキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば2層以上の積層体として)用いることができる。
【0157】
上記レジスト膜は、ナノインプリントに使用可能である。たとえば、上記レジスト膜に、微細パターンを表面に形成したモールドを押し付けて微細パターンを転写する工程、該転写パターンが形成された上記レジスト膜を硬化させて転写パターンを有するレジスト硬化物を得る工程、および、該レジスト硬化物をモールドから離型する工程、を含む製造方法により、パターン転写されたレジスト硬化物を得ることができる。
【0158】
本開示の化合物は、溶媒とともに使用できる。上記の化合物、および、溶媒を含むことを特徴とする組成物も本発明の1つである(本明細書において組成物(c)ということがある)。
【0159】
組成物(c)において、上記化合物の濃度としては、0.001~5.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましく、0.01~0.5質量%が更に好ましい。
【0160】
上記溶媒としては、フッ素系溶媒が好ましい。上記フッ素系不活性溶剤としては、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC-225)等を挙げることができる。
【0161】
組成物(c)は、含フッ素オイルを含むことも好ましい。上記含フッ素オイルとしては、
式:R111-(R112O)-R113
(R111およびR113は、独立に、F、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のフッ素化アルキル基、-R114-X111(R114は単結合または炭素数1~16のアルキレン基、X111は-NH、-OH、-COOH、-CH=CH、-OCHCH=CH、ハロゲン、リン酸、リン酸エステル、カルボン酸エステル、チオール、チオエーテル、アルキルエーテル(フッ素で置換されていてもよい)、アリール、アリールエーテル、アミド)、R112は炭素数1~4のフッ素化アルキレン基、mは2以上の整数)で表される化合物がより好ましい。
【0162】
111およびR113としては、独立に、F、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のフッ素化アルキル基または-R114-X111(R114およびX111は上記のとおり)が好ましく、F、炭素数1~3の完全フッ素化アルキル基または-R114-X111(R114は単結合または炭素数1~3のアルキレン基、X111は-OHまたは-OCHCH=CH)がより好ましい。
【0163】
mとしては、300以下の整数が好ましく、100以下の整数がより好ましい。
【0164】
112としては、炭素数1~4の完全フッ素化アルキレン基が好ましい。-R112O-としては、例えば、
式:-(CX112 CFCFO)n111(CF(CF)CFO)n112(CFCFO)n113(CFO)n114(CO)n115
(n111、n112、n113、n114およびn115は、独立に、0または1以上の整数、X112はH、FまたはCl、各繰り返し単位の存在順序は任意である)で表されるもの、
式:-(OC-R118
(R118は、OC、OCおよびOCから選択される基であり、fは、2~100の整数である)で表されるもの
等が挙げられる。
【0165】
n111~n115は、それぞれ、0~200の整数であることが好ましい。n111~n115は、合計で、1以上であることが好ましく、5~300であることがより好ましく、10~200であることが更に好ましく、10~100であることが特に好ましい。
【0166】
118は、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、および-OCOCOC-等が挙げられる。上記fは、2~100の整数、好ましくは2~50の整数である。上記式中、OC、OCおよびOCは、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、式:-(OC-R118-は、好ましくは、式:-(OC-OC-または式:-(OC-OC-である。
【0167】
上記フルオロポリエーテルは、重量平均分子量が500~100000であることが好ましく、50000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましく、6000以下が特に好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、測定することができる。
【0168】
市販されている上記フルオロポリエーテルとしては、商品名デムナム(ダイキン工業社製)、フォンブリン(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製)、バリエルタ(NOKクリューバー社製)、クライトックス(デュポン社製)などが挙げられる。
【0169】
上記含フッ素オイルは、本開示の式(1)および(2)で表される化合物(2種以上の場合はその合計)に対して、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下含まれ得る。一の態様において、上記含フッ素オイルは、本開示の式(1)および(2)で表される化合物(2種以上の場合はその合計)に対して、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、例えば5質量%以上含まれ得る。
【0170】
組成物(c)を使用して、基材上に離型層を形成できる。上記離型層は、組成物(c)に上記基材を浸漬する方法、組成物(c)の蒸気に上記基材を暴露し蒸着させる方法、上記組成物(c)を上記基材に印刷する方法、インクジェットを用いて上記組成物(c)を上記基材に塗布する方法等が挙げられる。上記浸漬、上記蒸着、上記印刷、上記塗布の後に、乾燥させてもよい。上記基材として、凹凸パターンが形成されたモールドが使用でき、離型層が形成された上記モールドは、ナノインプリントに使用可能である。
【0171】
上記基材としては、例えば、樹脂、例えばシリコーン等の高分子樹脂などが挙げられる。
【0172】
本開示は、上記の化合物、または、上記の組成物を含むことを特徴とする防汚剤も提供する。
【0173】
上記防汚剤は、樹脂(特に、非フッ素樹脂)に塗布して使用できる。
【0174】
上記防汚剤は、表面防汚性、膨潤性を必要とする物品(特に、光学材料)にさまざま使用できる。物品の例としては、PDP、LCDなどディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;、フォルダブルディスプレイ、ローラブルディスプレイおよびベンディングディスプレイのカバーウィンドウ、;携帯電話、携帯情報端末などの機器;タッチパネルシート;DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスク;メガネレンズ;光ファイバー;筐体;自動車の内装物品(具体的には、自動車内部の座席シートとその裏側、車内天井、壁面および床、ダッシュボードとその下部、運転席周辺のパネル、スイッチ、レバー等、トランクの内部)などが挙げられる。
【0175】
光ディスクなどの光学材料は、炭素-炭素二重結合含有組成物中、または炭素-炭素二重結合含有組成物からなる重合物中、炭素-炭素二重結合含有組成物および炭素-炭素二重結合含有モノマーの重合物中のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含有量が0.01重量%~10重量%となるように添加されて形成された被膜により表面コーティングされていることが好ましい。0.01重量%~10重量%では、PFPE添加の特長的な物性(防汚等)が現われ、表面硬度が高く、かつ透過率が高い。
【0176】
本開示は、本開示の化合物、または、本開示の組成物を含むことを特徴とする離型剤でもある。
【0177】
上記離型剤からは、基材上に離型層を形成できる。上記離型層は、上記離型剤に上記基材を浸漬する方法、上記離型剤の蒸気に上記基材を暴露し蒸着させる方法、上記組成物を上記基材に印刷する方法、インクジェットを用いて上記組成物を上記基材に塗布する方法等が挙げられる。上記浸漬、上記蒸着、上記印刷、上記塗布の後に、乾燥させてもよい。上記基材として、凹凸パターンが形成されたモールドが使用でき、離型層が形成された上記モールドは、ナノインプリントに使用可能である。
【0178】
上記基材としては、例えば、金属、金属酸化物、石英、シリコーン等の高分子樹脂、半導体、絶縁体、またはこれらの複合体などが挙げられる。
【0179】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、0.05~60μm、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは0.5~20μmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0180】
上記のように本開示の組成物(a)~(c)は、いわゆる表面処理剤として用いられる。
【0181】
以上、本開示の表面処理剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本開示の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0182】
以下、本開示について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、以下に示されるポリマーの化学式はすべて平均組成を示す。
【0183】
合成例1
特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法に準じて、以下のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含化合物(A)を合成した。
【0184】
PFPE含化合物(A):
【化6】
【0185】
合成例2 PFPE含化合物(B)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(A)(10.0g)を、m-ヘキサフルオロキシレンに溶解させ、メルカプトエタノール(0.74g)を加えて撹拌しながら加熱した。反応の終点はH-NMRによって確認した。反応液にパーフルオロヘキサンとアセトンを加えて分液させ、下層を濃縮することで、PFPE含化合物(B)を10.1g得た。
【0186】
PFPE含化合物(B):
【化7】
【0187】
合成例3 PFPE含化合物(C)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(B)(10.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(6.2mg)および1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(商品名:カレンズBEI(昭和電工社製))(2.3g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(7.4mg)を加えてしばらく撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を加えて、フィルターで濾過して、PFPE含化合物(C)を20wt%含む溶液を60.5g得た。
【0188】
PFPE含化合物(C):
【化8】
【0189】
合成例4~6 PFPE含化合物(D)、PFPE含化合物(E)、PFPE含化合物(F)の製造方法
特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法と、合成例2および3に記載した方法に準じて、以下のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含化合物(D)、PFPE含化合物(E)、およびPFPE含化合物(F)を含む溶液をそれぞれ調製した。
【0190】
PFPE含化合物(D):
【化9】
【0191】
PFPE含化合物(E):
【化10】
【0192】
PFPE含化合物(F):
【化11】
【0193】
合成例7および8 PFPE含化合物(G)、PFPE含化合物(H)の製造方法
特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法と、合成例2に記載した方法に準じて、以下のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含化合物(G)およびPFPE含化合物(H)をそれぞれ合成した。
【0194】
PFPE含化合物(G):
【化12】
【0195】
PFPE含化合物(H):
【化13】
【0196】
合成例9 PFPE含化合物(I)の製造方法
PFPE含化合物(H)(10.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(5.4mg)および2-イソシアナートエチルアクリレート(商品名:カレンズAOI(昭和電工社製))(0.70g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(6.4mg)を加えてしばらく撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を加え、フィルターで濾過して、PFPE含化合物(I)を20wt%含む溶液を52.9g得た。
【0197】
PFPE含化合物(I):
【化14】
【0198】
合成例10 PFPE含化合物(J)の製造方法
PFPE含化合物(A)の代わりにPFPE含化合物(G)を用い、メルカプトエタノールの代わりにメルカプトプロパノールを用いたこと以外は、合成例2の方法に準じることで、PFPE含化合物(J)を得た。
【0199】
PFPE含化合物(J):
【化15】
【0200】
合成例11 PFPE含化合物(K)の製造方法
PFPE含化合物(B)の代わりにPFPE含化合物(J)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(K)を20wt%含む溶液を得た。
【0201】
PFPE含化合物(K):
【化16】
【0202】
合成例12 PFPE含化合物(L)の製造方法
PFPE含化合物(H)の代わりにPFPE含化合物(J)を用いたこと以外は、合成例9の方法に準じることで、PFPE含化合物(L)を20wt%含む溶液を得た。
【0203】
PFPE含化合物(L):
【化17】
【0204】
合成例13 PFPE含化合物(M)の製造方法
PFPE含化合物(A)の代わりにPFPE含化合物(G)を用い、メルカプトエタノールの代わりにメルカプトヘキサノールを用いたこと以外は、合成例2の方法に準じることで、PFPE含化合物(M)を得た。
【0205】
PFPE含化合物(M):
【化18】
【0206】
合成例14 PFPE含化合物(N)の製造方法
PFPE含化合物(B)の代わりにPFPE含化合物(M)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(N)を20wt%含む溶液を得た。
【0207】
PFPE含化合物(N):
【化19】
【0208】
合成例15 PFPE含化合物(O)の製造方法
PFPE含化合物(H)の代わりにPFPE含化合物(M)を用いたこと以外は、合成例9の方法に準じることで、PFPE含化合物(O)を20wt%含む溶液を得た。
【0209】
PFPE含化合物(O):
【化20】
【0210】
合成例16 PFPE含化合物(P)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(G)(10.0g)を、m-ヘキサフルオロキシレンに溶解させ、4-メルカプト-1-ブタノール(0.53g)を加えて撹拌しながら加熱した。反応の終点はH-NMRによって確認した。反応液にパーフルオロヘキサンとアセトンを加えて分液させ、下層を濃縮することで、PFPE含化合物(P)を10.2g得た。
【0211】
PFPE含化合物(P):
【化21】
【0212】
合成例17 PFPE含化合物(Q)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(P)(10.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(5.7mg)および1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(商品名:カレンズBEI(昭和電工社製))(1.13g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(6.8mg)を加えてしばらく撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を加えて、フィルターで濾過し、PFPE含化合物(Q)を20wt%含む溶液を54.3g得た。
【0213】
PFPE含化合物(Q):
【化22】
【0214】
合成例18 PFPE含化合物(R)の製造方法
合成例13で得られたPFPE含化合物(M)(10.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(6.6mg)および2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート(商品名:カレンズMOI―EG(昭和電工社製))(0.94g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(7.7mg)を加えてしばらく撹拌した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を加えて、フィルターで濾過し、PFPE含化合物(R)を20wt%含む溶液を53.3g得た。
【0215】
PFPE含化合物(R):
【化23】
【0216】
合成例19 PFPE含化合物(S)の製造方法
PFPE含化合物(M)の代わりに合成例8で得られたPFPE含化合物(H)を用いたこと以外は、合成例18の方法に準じることで、PFPE含化合物(S)を20wt%含む溶液を得た。
【0217】
PFPE含化合物(S):
【化24】
【0218】
合成例20 PFPE含化合物(T)の製造方法
PFPE含化合物(A)の代わりにPFPE含化合物(G)を用い、メルカプトエタノールの代わりに9-メルカプト-1-ノナノールを用いたこと以外は、合成例2の方法に準じることで、PFPE含化合物(T)を得た。
【0219】
PFPE含化合物(T):
【化25】
【0220】
合成例21 PFPE含化合物(U)の製造方法
PFPE含化合物(B)の代わりにPFPE含化合物(T)を用い、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(U)を20wt%含む溶液を得た。
【0221】
PFPE含化合物(U):
【化26】
【0222】
合成例22
特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法に準じて、以下のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含化合物(V)を合成した。
【0223】
PFPE含化合物(V):
【化27】
m、nの値は平均の値である。
【0224】
合成例23 PFPE含化合物(W)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(V)(10.0g)を、m-ヘキサフルオロキシレンに溶解させ、メルカプトエタノール(0.41g)を加えて撹拌しながら加熱した。反応の終点はH-NMRによって確認した。反応液にパーフルオロヘキサンとアセトンを加えて分液させ、下層を濃縮することで、PFPE含化合物(W)を9.5g得た。
【0225】
PFPE含化合物(W):
【化28】
【0226】
合成例24 PFPE含化合物(X)の製造方法
上記で得られたPFPE含化合物(W)(9.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(5.3mg)および1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(商品名:カレンズBEI(昭和電工社製))(1.1g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(6.1mg)を加えてしばらく撹拌した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて、フィルターで濾過して、PFPE含化合物(X)を20wt%含む溶液を49.5g得た。
【0227】
PFPE含化合物(X):
【化29】
【0228】
合成例25
特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法に準じて、以下のパーフルオロポリエーテル(PFPE)含化合物(Y)を合成した。
【0229】
PFPE含化合物(Y):
【化30】
m、nの値は平均の値である。
【0230】
合成例26 PFPE含化合物(Z)の製造方法
PFPE含化合物(V)の代わりにPFPE含化合物(Y)を用いたこと以外は、合成例23の方法に準じることで、PFPE含化合物(Z)を得た。
【0231】
PFPE含化合物(Z):
【化31】
【0232】
合成例27 PFPE含化合物(AA)の製造方法
PFPE含化合物(W)の代わりにPFPE含化合物(Z)を用いたこと以外は、合成例24の方法に準じることで、PFPE含化合物(AA)を得た。
【0233】
PFPE含化合物(AA):
【化32】
【0234】
合成例28 PFPE含化合物(AB)の製造方法
PFPE含化合物(A)の代わりにPFPE含化合物(G)を用い、メルカプトエタノールの代わりに11-メルカプト-1-ウンデカノールを用い、アゾイソブチロニトリルを35mg添加し、加熱温度を80℃で行ったこと以外は、合成例2の方法に準じることで、PFPE含化合物(AB)を得た。
【0235】
PFPE含化合物(AB):
【化33】
【0236】
合成例29 PFPE含化合物(AC)の製造方法
PFPE含化合物(B)の代わりにPFPE含化合物(AB)を用い、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(AC)を20wt%含む溶液を得た。
【0237】
PFPE含化合物(AC):
【化34】
【0238】
合成例30 PFPE含化合物(AD)、PFPE含化合物(H)およびPFPE含化合物(AB)を含む混合物の製造方法
PFPE含化合物(G)(10.0g)を、m-ヘキサフルオロキシレンに溶解させ、アゾイソブチロニトリルを35mg添加した後、メルカプトエタノール(0.18g)と11-メルカプト-1-ウンデカノール(0.46g)を同時に加えて撹拌しながら80℃に加熱した。反応の終点はH-NMRによって確認した。反応液にパーフルオロヘキサンとアセトンを加えて分液させ、下層を濃縮することで、PFPE含化合物(AD)、PFPE含化合物(H)およびPFPE含化合物(AB)を含む混合物を10.0g得た。
【0239】
PFPE含化合物(AD):
【化35】
【0240】
合成例31 PFPE含化合物(AE)、PFPE含化合物(F)およびPFPE含化合物(AC)を含む混合物の製造方法
合成例30で得られたPFPE含化合物(AD)、PFPE含化合物(H)およびPFPE含化合物(AB)を含む混合物を用い、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(AE)、PFPE含化合物(F)およびPFPE含化合物(AC)を含む混合物を20wt%含む溶液を得た。
【0241】
PFPE含化合物(AE):
【化36】
【0242】
合成例32 PFPE含化合物(AF)とPFPE含化合物(M)、PFPE含化合物(T)を含む混合物の製造方法
PFPE含化合物(G)(10.0g)を、m-ヘキサフルオロキシレンに溶解させ、メルカプトヘキサノール(0.31g)と9-メルカプト-1-ノナノール(0.40g)を同時に加えて撹拌しながら加熱した。反応の終点はH-NMRによって確認した。反応液にパーフルオロヘキサンとアセトンを加えて分液させ、下層を濃縮することで、PFPE含化合物(AF)とPFPE含化合物(M)、PFPE含化合物(T)を含む混合物を10.2g得た。
【0243】
PFPE含化合物(AF):
【化37】
【0244】
合成例33 PFPE含化合物(AG)、PFPE含化合物(N)およびPFPE含化合物(U)を含む混合物の製造方法
合成例32で得られたPFPE含化合物(AF)、PFPE含化合物(M)およびPFPE含化合物(T)を含む混合物を用い、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いたこと以外は、合成例3の方法に準じることで、PFPE含化合物(AG)、PFPE含化合物(N)およびPFPE含化合物(U)を含む混合物を20wt%含む溶液を得た。
【0245】
PFPE含化合物(AG):
【化38】
【0246】
合成例34 PFPE含化合物(G)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AI)を含む混合物の製造方法
下記3つのPFPE含化合物(x)(y)および(z)の混合物(重量比 x:y:z=60:25:15)を準備した。
(x)CFCFCFO-(CFCFCFO)25-CFCFCHOH
(y)CFCFCFO-(CFCFCFO)25-CFCF
(z)HOCHCFCFO-(CFCFCFO)25-CFCFCHOH
上記の混合物から、特許文献1(WO2018/056413A1)に記載の方法に準じて、PFPE含化合物(G)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AI)を含む混合物を合成した。
【0247】
PFPE含化合物(AH):
CFCFCFO-(CFCFCFO)25-CFCF
(なお、PFPE含化合物(AH)は上記PFPE含化合物(y)である)
【0248】
PFPE含化合物(AI)
【化39】
【0249】
合成例35 PFPE含化合物(M)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AJ)を含む混合物の製造方法
PFPE含化合物(A)の代わりに合成例34で得られたPFPE含化合物(G)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AI)を含む混合物(10.0g)を用い、メルカプトエタノールの代わりにメルカプトヘキサノールを用い、更にアゾビスイソブチロニトリル(80mg)を加えたこと以外は、合成例2の方法に準じることで、PFPE含化合物(M)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AJ)を含む混合物を10.5g得た。
【0250】
PFPE含化合物(AJ):
【化40】
【0251】
合成例36 PFPE含化合物(N)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AK)を含む混合物の製造方法
合成例35で得られたPFPE含化合物(M)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AJ)を含む混合物(10.0g)を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンに溶解させ、加温しながら撹拌した。ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(9.5mg)および1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート(商品名:カレンズBEI(昭和電工社製))(1.3g)を更に加えて撹拌を続けた。反応の終点はIRとH-NMRで確認した。2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(9.5mg)を加えてしばらく撹拌した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて、フィルターで濾過し、PFPE含化合物(N)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AK)を含む混合物を20wt%で含む溶液(A)を得た。溶液中、PFPE含化合物(N)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AK)の重量比は、61:22:17であった。
【0252】
PFPE含化合物(AK):
【化41】
【0253】
合成例37 PFPE含化合物(T)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AL)を含む混合物の製造方法
メルカプトヘキサノールの代わりに、9-メルカプト-1-ノナノールを加えたこと以外は、合成例35の方法に準じることで、PFPE含化合物(T)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AL)を含む混合物を得た。
【0254】
PFPE含化合物(AL):
【化42】
【0255】
合成例38 PFPE含化合物(U)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AM)を含む混合物の製造方法
合成例37で得られたPFPE含化合物(T)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AL)を含む混合物を用いたこと以外は、合成例36の方法に準じることで、PFPE含化合物(U)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AM)を含む混合物を20wt%で含む溶液(B)を得た。溶液中、PFPE含化合物(U)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AM)の重量比は、62:22:16であった。
【0256】
PFPE含化合物(AM):
【化43】
【0257】
合成例39 PFPE含化合物(U)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AM)を含む混合物の製造方法
合成例38で用いた触媒を、ジラウリン酸ジ-n-ブチルスズ(IV)(9.5mg)の代わりにジルコニウムテトラアセチルアセトナート(商品名:ZC-700(マツモトファインケム社製))(80.0mg)に変更し、メチルイソブチルケトン(MIBK)の代わりに2-ブタノン(MEK)に変更したこと以外は、合成例38の方法に準じることで、PFPE含化合物(U)、PFPE含化合物(AH)およびPFPE含化合物(AM)を含む混合物を20wt%で含む溶液(C)を得た。
【0258】
実施例1~21
ビームセット575CB(荒川化学工業社製)(1.5g)とメチルイソブチルケトン(1.5g)とを混合し、PFPE含化合物(C)、(D)、(E)、(F)、(I)、(K)、(L)、(N)、(O)、(Q)、(R)、(S)、(U)、(X)、(AA)、(AC)、(AE)および(AG)が、それぞれビームセット575CBに対して0.5質量%となるよう加え、遮光下、回転ミキサーにて1時間攪拌し、PFPE含有ハードコート材料1~18(実施例1~18)を得た。また、溶液(A)~(C)を用いて、その固形分濃度がビームセット575CBに対して0.5質量%となるようにして、PFPE含有ハードコート材料19~21(実施例19~21)を得た。
【0259】
比較例1および2
PFPE含化合物を、DAC-HP(ダイキン工業株式会社製)に変更した以外は、上記と同様にして、ハードコート材料22(比較例1)を得た。また、PFPE含化合物未添加のビームセット575CBとメチルイソブチルケトンとの混合溶液のみのハードコート材料23(比較例2)を調製した。
【0260】
(評価)
<硬化膜の特性評価>
A4サイズの1/4の大きさに切断したPETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4100)に、上記で得られたハードコート材料1~23(1.0ml)を載せ、バーコーターにて均一な塗膜を形成した。得られた塗膜に、窒素雰囲気下365nmのUV光を含む光線を600mJ/cmの強度で照射し、各ハードコート材料を硬化させて硬化膜(表面処理層)を得た。これら硬化膜の初期特性を測定した。
【0261】
各硬化膜について、各評価は、以下の方法により行った。
【0262】
(静的接触角)
静的接触角は全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いて次の方法で測定した。
【0263】
<静的接触角の測定方法>
静的接触角は、水平に置いた基板にマイクロシリンジから水またはn-ヘキサデカンを2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求めた。水またはn-ヘキサデカンの静的接触角の測定値について、基材の表面処理層の異なる5点を測定し、その平均値を算出して用いた。実施例1~18のPFPE含有ハードコート材料1~21と比較例1および2のハードコート材料22および23の硬化膜について、初期の値を測定したので、結果を表1に示す。
【0264】
(外観)
硬化膜の外観は目視にて確認した。評価は、つぎの基準とした。結果を表1に示す。
G:透明である。
NG:白化、または表面に微細な凹凸などの異物がある。
【0265】
(Hazeの測定)
各硬化膜について、Hazeを測定した。具体的には、ヘイズメーター(Nippon densyoku社製、7000SP)を用いて、ASTMに準拠した測定方法で、基材上の異なる3点を測定し、その平均値を算出して用いた。測定結果を表1に示す。
【0266】
(離形性)
硬化膜の離形性を、テープ剥離試験にて評価した。評価は、つぎの基準とした。結果を表1に示す。
G:容易に剥離するか、粘着しない。
NG:テープの粘着層が付着する。
【0267】
(指紋付着性)
硬化膜に指を押し付け、指紋の付きやすさを目視で判定した。評価はつぎの基準とした。結果を表1に示す。
G:指紋が付きにくいか、付いても指紋が目立たない。
NG:明確に指紋が付着する。
【0268】
(指紋拭き取り性)
上記の指紋付着性試験後、付着した指紋をキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で5往復拭き取り、付着した指紋の拭き取りやすさを目視で判定した。評価はつぎの基準とした。結果を表1に示す。
G:指紋を完全に拭き取ることができる。
NG:指紋の拭取り跡が拡がり、除去することが困難である。
それぞれの評価において得られた結果を表1に示す。
【0269】
【表1】
【0270】
(スチールウール(SW)摩擦耐久性評価)
各硬化膜について、スチールウール摩擦耐久性評価を実施した。具体的には、表面処理層を形成した基材を水平配置し、スチールウール(番手♯0000、寸法5mm×10mm×10mm)を基材の表面処理層に接触させ、その上に1,000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態でスチールウールを53.3mm/秒(摩擦速度40rpm)の速度で往復させた。往復回数500回毎に水の静的接触角(度)を測定し、接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。最後に接触角が100度を超えた時の往復回数を、表2に示す。
【0271】
(消しゴム摩擦耐久性評価)
各硬化膜について、消しゴム摩擦耐久試験により、摩擦耐久性を評価した。具体的には、表面処理層を形成したサンプル物品を水平配置し、消しゴム(Minoan社製、硬度81(Durometer A type)、平面寸法0.6cm直径の円形)を表面処理層の表面に接触させ、その上に1000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で消しゴムを48mm/秒(摩擦速度40rpm)の速度で往復させた。往復回数500回毎に水の静的接触角(度)を測定した。接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。最後に接触角が100度を超えた時の往復回数を、下記表2に示す。
【0272】
【表2】

【0273】
上記表1の結果から理解されるように、本開示の含フッ素イソシアヌル化合物を含む実施例1~21のハードコート材料から得られた硬化膜を有する処理基材は、透明できれいな外観であった。さらに、かかる処理基材は、優れた撥水性および撥油性を示し、離型性、指紋付着性および指紋拭き取り性に優れていた。
【0274】
さらに、上記表2の結果から理解されるように、実施例1~21のハードコート材料から得られた表面処理層は、スチールウール(SW)および消しゴムの摩擦耐久性に優れていた。
【0275】
一方、比較例1のハードコート材料から得られた硬化膜を有する処理基材は、硬化膜表面に微細な凹凸などの異物が目視で確認され、また摩擦耐久性も十分に満足できる結果が得られなかった。
【0276】
以上の結果から、本開示の表面処理剤は、従来品に比べ、透明できれいな膜を作成できる上、かかる表面処理剤から得られる表面処理層は、高いレベルの摩擦耐久性を発揮できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本開示の含フッ素イソシアヌル化合物および該含フッ素イソシアヌル化合物を含有する表面処理剤は、種々多様な樹脂基材について、防汚性が求められる用途に幅広く利用することができる。