(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】状態判定装置、モータ駆動システム、冷凍システム、ファンシステム、状態判定方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240710BHJP
【FI】
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2023040208
(22)【出願日】2023-03-15
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2022040385
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英之
(72)【発明者】
【氏名】土居 昭博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 剛
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動装置(20)により駆動されるモータ(50)または前記モータ(50)を搭載する機器(70)の状態を判定する状態判定装置であって、
前記モータ(50)
に供給される電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に基づいて、前記モータ(50)または前記機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する制御部(31)を備え、
前記信号が直流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、特定周波数成分(Cs)の周波数であり、
前記信号が交流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、前記信号の基本波周波数(f0)から前記特定周波数成分(Cs)の周波数を減算して得られる周波数、または、前記信号の基本波周波数(f0)に前記特定周波数成分(Cs)の周波数を加算して得られる周波数であり、
前記特定周波数成分(Cs)は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分であ
り、前記機械角周波数(fm)は、前記モータ(50)の回転数に応じて変化する回転周波数である
状態判定装置。
【請求項2】
請求項1の状態判定装置において、
前記モータ(50)は、滑り軸受により支持される回転軸(55)を回転駆動する
状態判定装置。
【請求項3】
請求項1の状態判定装置において、
前記直流信号は、前記モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の各々の二乗値の総和の平方根を示す
状態判定装置。
【請求項4】
請求項1の状態判定装置において、
前記特定周波数成分(Cs)の周波数は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)に特定比率を乗算して得られる周波数である
状態判定装置。
【請求項5】
請求項4の状態判定装置において、
前記特定比率は、自然数の逆数で表される分数比率である
状態判定装置。
【請求項6】
請求項1の状態判定装置において、
前記特定状態は、前記モータ(50)により回転駆動される回転軸または前記回転軸の軸受が摩耗している状態である
状態判定装置。
【請求項7】
請求項4の状態判定装置において、
前記特定状態は、前記モータ(50)により回転駆動される回転軸または前記回転軸の軸受が摩耗している状態であり、
前記特定比率は、1/3、または、2/3である
状態判定装置。
【請求項8】
機器(70)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、
前記モータ(50)または前記機器(70)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、
前記状態判定装置(30)は、請求項1~7のいずれか1つの状態判定装置である
モータ駆動システム。
【請求項9】
圧縮機(CC)を有する冷媒回路(RR1)と、
前記圧縮機(CC)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、
前記モータ(50)または前記圧縮機(CC)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、
前記状態判定装置(30)は、請求項1~7のいずれか1つの状態判定装置である
冷凍システム。
【請求項10】
ファン(FF)と、
前記ファン(FF)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、
前記モータ(50)または前記ファン(FF)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、
前記状態判定装置(30)は、請求項1~7のいずれか1つの状態判定装置である
ファンシステム。
【請求項11】
モータ駆動装置(20)により駆動されるモータ(50)または前記モータ(50)を搭載する機器(70)の状態を判定する状態判定方法であって、
前記モータ(50)
に供給される電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)を取得し、
前記第1周波数成分(C1)に基づいて、前記モータ(50)または前記機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定し、
前記信号が直流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、特定周波数成分(Cs)の周波数であり、
前記信号が交流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、前記信号の基本波周波数(f0)から前記特定周波数成分の周波数を減算して得られる周波数、または、前記信号の基本波周波数(f0)に前記特定周波数成分の周波数を加算して得られる周波数であり、
前記特定周波数成分(Cs)は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分であ
り、前記機械角周波数(fm)は、前記モータ(50)の回転数に応じて変化する回転周波数である
状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態判定装置、モータ駆動システム、冷凍システム、ファンシステム、状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータを含む圧縮機とモータに三相電流を出力するように構成される駆動装置とを備える空調機の故障徴候検出装置が開示されている。この故障徴候検出装置は、三相電流の測定値およびモータの回転子の回転角からモータのq軸電流を算出するように構成される変換部と、q軸電流に対して周波数分析を行なうことによって算出される評価値と基準値とを比較することにより圧縮機の異常を検出するように構成される異常検出部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータまたはモータを搭載する機器の状態は、モータの電流または電圧に基づく信号の周波数成分のうちモータの機械角周波数の1倍未満の特定周波数成分と関連のある周波数成分に変動が現れる特定状態になり得る。しかしながら、特許文献1には、上記の特定状態について開示されておらず、モータまたはモータを搭載する機器の状態が上記の特定状態であるか否かを判定することについても、何ら開示も示唆もない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、モータ駆動装置(20)により駆動されるモータ(50)または前記モータ(50)を搭載する機器(70)の状態を判定する状態判定装置に関し、この状態判定装置は、前記モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に基づいて、前記モータ(50)または前記機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する制御部(31)を備え、前記信号が直流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、特定周波数成分(Cs)の周波数であり、前記信号が交流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、前記信号の基本波周波数(f0)から前記特定周波数成分(Cs)の周波数を減算して得られる周波数、または、前記信号の基本波周波数(f0)に前記特定周波数成分(Cs)の周波数を加算して得られる周波数であり、前記特定周波数成分(Cs)は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分である。
【0006】
第1の態様では、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定することができる。
【0007】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記モータ(50)は、滑り軸受により支持される回転軸(55)を回転駆動する状態判定装置である。
【0008】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記直流信号は、前記モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の各々の二乗値の総和の平方根を示す状態判定装置である。
【0009】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記特定周波数成分(Cs)の周波数は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)に特定比率を乗算して得られる周波数である状態判定装置である。
【0010】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、前記特定比率は、自然数の逆数で表される分数比率である状態判定装置である。
【0011】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、前記特定状態は、前記モータ(50)により回転駆動される回転軸または前記回転軸の軸受が摩耗している状態である状態判定装置である。
【0012】
第6の態様では、回転軸または軸受が摩耗している状態を検出することができる。
【0013】
本開示の第7の態様は、第4の態様において、前記特定状態は、前記モータ(50)により回転駆動される回転軸または前記回転軸の軸受が摩耗している状態であり、前記特定比率は、1/3、または、2/3である状態判定装置である。
【0014】
第7の態様では、回転軸または軸受が摩耗している状態を検出することができる。
【0015】
本開示の第8の態様は、モータ駆動システムに関し、このモータ駆動システムは、機器(70)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、前記モータ(50)または前記機器(70)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、前記状態判定装置(30)は、第1~第7の態様のいずれか1つの状態判定装置である。
【0016】
本開示の第9の態様は、冷凍システムに関し、この冷凍システムは、圧縮機(CC)を有する冷媒回路(RR1)と、前記圧縮機(CC)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、前記モータ(50)または前記圧縮機(CC)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、前記状態判定装置(30)は、第1~第7の態様のいずれか1つの状態判定装置である。
【0017】
本開示の第10の態様は、ファンシステムに関し、このファンシステムは、ファン(FF)と、前記ファン(FF)に搭載されたモータ(50)を駆動するモータ駆動装置(20)と、前記モータ(50)または前記ファン(FF)の状態を判定する状態判定装置(30)とを備え、前記状態判定装置(30)は、第1~第7の態様のいずれか1つの状態判定装置である。
【0018】
本開示の第11の態様は、モータ駆動装置(20)により駆動されるモータ(50)または前記モータ(50)を搭載する機器(70)の状態を判定する状態判定方法に関し、この状態判定方法は、前記モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)を取得し、前記第1周波数成分(C1)に基づいて、前記モータ(50)または前記機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定し、前記信号が直流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、特定周波数成分(Cs)の周波数であり、前記信号が交流信号である場合、前記第1周波数成分(C1)の周波数は、前記信号の基本波周波数(f0)から前記特定周波数成分の周波数を減算して得られる周波数、または、前記信号の基本波周波数(f0)に前記特定周波数成分の周波数を加算して得られる周波数であり、前記特定周波数成分(Cs)は、前記モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分である。
【0019】
第11の態様では、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態のモータ駆動システムの構成を例示する回路図である。
【
図2】
図2は、直流信号と交流信号とを例示する波形図である。
【
図3】
図3は、直流信号に含まれる第1周波数成分を例示するグラフである。
【
図4】
図4は、交流信号に含まれる第1周波数信号を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、第1判定処理を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2判定処理を例示するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2判定処理を例示するタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、第3判定処理を例示するフローチャートである。
【
図9】
図9は、第3判定処理を例示するタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、第4判定処理を例示するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第4判定処理を例示するタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、冷凍システムの構成を例示する概略図である。
【
図13】
図13は、ファンシステムの構成を例示する概略図である。
【
図14】
図14は、回転軸および軸受を例示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0022】
(モータ駆動システム)
図1は、実施形態によるモータ駆動システム(10)の構成を例示する。モータ駆動システム(10)は、交流電源(60)から供給された電力を用いて三相交流のモータ(50)を駆動する。モータ(50)は、機器(70)に搭載される。例えば、モータ(50)は、IPMモータ(Interior Permanent MagnetMotor)である。機器(70)には、機器(70)の動作を制御する制御装置(71)が設けられる。この例では、モータ駆動システム(10)は、モータ駆動装置(20)と、状態判定装置(30)とを備える。
【0023】
〔モータ駆動装置〕
モータ駆動装置(20)は、モータ(50)を駆動する。具体的には、モータ駆動装置(20)は、交流電源(60)から供給された電力を所定の周波数および電圧を有する出力交流電力(三相交流電力)に変換し、出力交流電力をモータ(50)に供給する。この例では、モータ駆動装置(20)は、コンバータ(21)と、直流部(22)と、インバータ(23)とを有する。
【0024】
コンバータ(21)は、交流電源(60)から供給された電力を整流する。この例では、コンバータ(21)は、交流電源(60)から供給された交流電力を全波整流する。例えば、コンバータ(21)は、複数の整流ダイオードがブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路により構成される。直流部(22)は、コンバータ(21)の出力を平滑化する。この例では、直流部(22)は、コンデンサを有する。
【0025】
インバータ(23)は、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチング動作により直流部(22)の出力を所定の周波数および電圧を有する出力交流電力(三相交流電力)に変換する。
【0026】
この例では、インバータ(23)は、ブリッジ結線された6つのスイッチング素子と、6つのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続された6つの還流ダイオードとを有する。詳しく説明すると、インバータ(23)は、それぞれが直列に接続された2つのスイッチング素子からなる3つのスイッチングレグを有する。それらの3つのスイッチングレグの中点(具体的には上アーム側のスイッチング素子と下アーム側のスイッチング素子との接続点)は、モータ(50)の3つの巻線(U相,V相,W相の巻線)にそれぞれ接続される。
【0027】
〔各種センサ〕
モータ駆動装置(20)には、相電流検出部(41)や電気角周波数検出部(42)などの各種センサが設けられる。
【0028】
相電流検出部(41)は、モータ(50)の3つの巻線(図示を省略)をそれぞれ流れる三相の相電流(U相電流(iu)とV相電流(iv)とW相電流(iw))を検出する。例えば、相電流検出部(41)は、三相の相電流(iu,iv,iw)の全部を検出するものであってもよいし、三相の相電流(iu,iv,iw)のうち2つの相電流を検出し、その検出された二相の相電流に基づいて残りの1つの相電流を導出するものであってもよい。また、相電流検出部(41)は、直流部(22)に設けられたシャント抵抗(図示省略)により検出された直流電流とスイッチングパターンから三相の相電流(iu,iv,iw)を導出してもよい。
【0029】
電気角周波数検出部(42)は、モータ(50)の電気角周波数(ω)を検出する。各種センサの検出信号は、制御部(31)に送信される。電気角周波数検出部(42)は本発明に必須の構成ではなく、モータ(50)の電気角周波数(ω)は他の方法で算出及びセンサレスにより推定されても良い。
【0030】
〔状態判定装置〕
状態判定装置(30)は、モータ(50)または機器(70)の状態を判定する。状態判定装置(30)は、制御部(31)を備える。なお、この例では、状態判定装置(30)は、モータ(50)または機器(70)の状態の判定に加えて、モータ駆動装置(20)を制御してモータ(50)を制御する。
【0031】
〔制御部〕
制御部(31)は、判定処理を行う。判定処理において、制御部(31)は、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。判定処理は、状態判定方法の一例である。
【0032】
上記の信号は、直流信号または交流信号である。
図2は、直流信号と交流信号とを例示する。
図2には、直流信号の一例である「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の各々の二乗値の総和の平方根」と、交流信号の一例である「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)」とが例示されている。
【0033】
図3に示すように、上記の信号が直流信号である場合、第1周波数成分(C1)の周波数は、特定周波数成分(Cs)の周波数である。
【0034】
特定周波数成分(Cs)は、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分である。特定周波数成分(Cs)の周波数は、モータ(50)の機械角周波数(fm)に特定比率を乗算して得られる周波数である。特定比率は、自然数の逆数で表される分数比率である。例えば、特定比率は、1/3、または、2/3である。
【0035】
図3の例では、特定周波数成分(Cs)の周波数は、モータ(50)の機械角周波数(fm)に「1/3」を乗算して得られる周波数「1/3fm」、または、モータ(50)の機械角周波数(fm)に「2/3」を乗算して得られる周波数「2/3fm」である。第1周波数成分(C1)の周波数は、「1/3fm」または「2/3fm」である。
【0036】
図4に示すように、上記の信号が交流信号の場合、第1周波数成分(C1)の周波数は、上記の信号の基本波周波数(f0)から特定周波数成分(Cs)の周波数を減算して得られる周波数(第1周波数)、または、上記の信号の基本波周波数(f0)に特定周波数成分(Cs)の周波数を加算して得られる周波数(第2周波数)である。
【0037】
図4の例では、特定周波数成分(Cs)の周波数は、モータ(50)の機械角周波数(fm)に「1/3」を乗算して得られる周波数「1/3fm」である。第1周波数は、「f0-1/3fm」であり、第2周波数は、「f0+1/3fm」である。第1周波数成分(C1)の周波数は、「f0-1/3fm」または「f0+1/3fm」である。
【0038】
〔特定状態〕
特定状態は、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に変動(例えば振幅変動)が現れる状態である。第1周波数成分(C1)は、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の特定周波数成分(Cs)と関連のある周波数成分である。
【0039】
言い換えると、特定状態は、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の特定周波数成分(Cs)の振幅変動がモータ(50)のトルクに生じる状態である。第1周波数成分(C1)は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態である場合に、モータ(50)のトルクに生じる振幅変動(特定周波数成分(Cs)の振幅変動)に応じた振幅変動が生じる周波数成分である。
【0040】
具体的には、特定状態は、モータ(50)により回転駆動される回転軸または回転軸の軸受が摩耗している状態である。言い換えると、特定状態は、回転軸または軸受の摩耗量が許容量を上回る状態である。
【0041】
このような摩耗が回転軸または軸受に生じると、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満(具体的には1/3または2/3)の特定周波数成分(Cs)の振幅変動がモータ(50)のトルクに生じ、その結果、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に変動(例えば振幅変動)が現れる。
【0042】
〔制御処理〕
この例では、制御部(31)は、制御処理を行う。制御処理では、制御部(31)は、モータ駆動装置(20)を制御してモータ(50)を制御する。具体的には、制御部(31)は、モータ(50)の電気角周波数(ω)の指令値などの目標指令値、モータ駆動装置(20)に設けられた各種センサの検出信号などを入力する。そして、制御部(31)は、目標指令値、各種センサの検出信号などに基づいて、インバータ(23)のスイッチング動作を制御してインバータ(23)からモータ(50)に供給される交流電力を制御する。
【0043】
例えば、制御部(31)は、プロセッサ(コンピュータ)と、プロセッサと電気的に接続されてプロセッサを動作させるためのプログラムや情報を記憶するメモリとにより構成される。メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより、制御部(31)の各種の機能が実現される。
【0044】
〔対処動作〕
また、制御部(31)は、判定処理において、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であると判定すると、対処動作を行う。対処動作は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であることを示す第1情報を出力する出力動作と、モータ(50)の運転条件を変更する変更動作とのうち少なくとも一方の動作である。
【0045】
出力動作の例としては、以下の第1出力動作、第2出力動作、第3出力動作、これらの組合せなどが挙げられる。第1出力動作は、リモートコントローラなどに設けられた表示装置(図示を省略)に第1情報を出力することにより第1情報を表示装置に表示させる動作である。第2出力動作は、機器(70)の動作を制御する制御装置(71)に第1情報を出力することにより、特定状態に対処するための動作を制御装置(71)に行わせる動作である。第3出力動作は、クラウド上のデータ蓄積部(図示を省略)に第1情報をアップロードする動作である。
【0046】
変更動作の例としては、以下の第1変更動作、第2変更動作、異3変更動作、これらの組合せなどが挙げられる。第1変更動作は、モータ(50)を停止させる動作である。第2変更動作は、モータ(50)を加速させる動作である。第3変更動作は、モータ(50)を減速させる動作である。
【0047】
〔実施形態の効果〕
以上のように、実施形態のモータ駆動システム(10)では、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定することができる。具体的には、モータ(50)により回転駆動される回転軸または回転軸の軸受が摩耗している状態を検出することができる。
【0048】
なお、特定周波数成分(Cs)は、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満の周波数成分である、具体的には、特定周波数成分(Cs)の周波数は、機械角周波数(fm)に特定比率を乗算して得られる周波数である。そして、特定周波数成分(Cs)と関連のある第1周波数成分(C1)は、モータ(50)の回転数や負荷が正常且つ定常な状態である場合に生じない周波数成分である。一方、モータ(50)の機械角周波数(fm)のN倍(Nは1以上の数)の周波数成分は、モータ(50)の回転数や負荷が正常且つ定常な状態である場合にも生じる周波数成分であり、モータ(50)の回転数や負荷の大きさに応じて変化する。
【0049】
したがって、特定周波数成分(Cs)と関連のある第1周波数成分(C1)に基づいて状態判定を行うことにより、モータ(50)の機械角周波数(fm)のN倍(Nは1以上の数)の周波数成分に基づいて状態判定を行う場合よりも、状態を判定するための基準となる閾値の設定を容易に行うことができる。
【0050】
また、交流信号の第1周波数成分(C1)を監視する場合、第1周波数成分(C1)は、交流信号の基本波周波数(f0)を中心とする基本波周波数成分から近くなる。例えば、第1周波数成分(C1)は、基本波周波数成分の側帯波として現れる。基本波周波数成分は、周波数幅を有する。そのため、第1周波数成分(C1)が基本波周波数成分に近くなるほど、第1周波数成分(C1)が基本波周波数成分の影響を受けやすくなり、第1周波数成分(C1)を基本波周波数成分から分離することが困難となる。例えば、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号が交流信号である場合、第1周波数成分(C1)を基本波周波数成分から分離するために、減衰傾度が急峻なフィルタの実装が要求されるが、そのようなフィルタの実装は困難である。また、第1周波数成分(C1)が基本波周波数成分の側帯波として2つに分離されて現れるので、交流信号の第1周波数成分(C1)の振幅は、直流信号の第1周波数成分(C1)の振幅よりも小さくなる。
【0051】
一方、直流信号の第1周波数成分(C1)を監視する場合、直流信号の基本波周波数成分は、直流量となる。モータ(50)の電流または電圧に基づく信号が直流信号である場合、基本波周波数成分は、平均などの簡単な処理により求めることができるゼロヘルツ成分となるので、簡単な計算により基本波周波数成分と第1周波数成分(C1)とを容易に分離することができる。また、直流信号の第1周波数成分(C1)の振幅は、交流信号の第1周波数成分(C1)の振幅よりも大きくなるので、第1周波数成分(C1)のSN比を良好にすることができる。これにより、第1周波数成分(C1)の精度を向上させることができる。なお、第1周波数成分(C1)の振幅は、そもそも小さい値であるので、直流にしてSN比を改善することが好ましい。
【0052】
以上のとおり、直流信号の第1周波数成分(C1)を監視することにより、交流信号の第1周波数成分(C1)を監視する場合よりも、第1周波数成分(C1)の抽出を容易にすることができる。
【0053】
なお、上記の判定処理とは異なる別の手法として、モータ(50)または機器(70)における振動を検知する振動センサの出力に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定することが考えられる。しかしながら、この手法では、振動センサの出力にノイズが重畳しやすいので、モータ(50)または機器(70)の状態の判定を正確に行うことが困難である。また、振動センサを別途設ける必要がある。なお、このようなノイズの要因としては、振動センサの設置位置の誤差などが挙げられる。
【0054】
この実施形態のモータ駆動システム(10)では、制御部(31)は、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。この「モータ(50)の電流または電圧に基づく信号」には、上記のようなノイズが重畳しにくい。そのため、上記の手法よりも、モータ(50)または機器(70)の状態の判定を正確に行うことができる。また、既設の電流センサまたは電圧センサを利用することができる。
【0055】
(信号の具体例)
次に、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の具体例について説明する。この信号は、直流信号と、交流信号とに大別される。
【0056】
〔直流信号の具体例〕
直流信号の例としては、「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)に相関する信号」と、「モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)に相関する信号」と、「モータ(50)の電力に相関する信号」が挙げられる。
【0057】
直流信号の別の例としては、「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)をモータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の位相(ωi・t)で座標変換して得られる電流(iγ,iδ)」と、「モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)をモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)の位相(ωv・t)で座標変換して得られる電圧(Vγ,Vδ)」と、「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)をモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)の位相(ωv・t)で座標変換して得られる電流(iζ,iη)」と、「モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)をモータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の位相(ωi・t)で座標変換して得られる電圧(Vζ,Vη)」が挙げられる。
【0058】
直流信号のさらに別の例としては、「永久磁石による電機子鎖交磁束に合わせて座標変換したdq軸磁束(λd,λq)」と、「永久磁石の電機子鎖交磁束と電機子反作用を合成した電機子鎖交磁束ベクトルの大きさλ0」が挙げられる。
【0059】
なお、以下の説明において、「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)」は、相電流検出部(41)により検出されるモータ(50)の相電流(iu,iv,iw)のことである。「モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)」は、制御部(31)の内部において用いられる電圧指令値に示されるモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)、または、モータ駆動装置(20)に設けられた相電圧検出部(図示を省略)により検出されるモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)のことである。「モータ(50)の電気角周波数(ω)」は、電気角周波数検出部(42)により検出されるモータ(50)の電気角周波数(ω)のことである。
【0060】
〔1.モータの相電流に相関する信号の具体例〕
モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)に相関する信号の具体例としては、電流ベクトル振幅(Ia),電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2),相電流振幅(I),相電流実効値(Irms)などが挙げられる。
【0061】
なお、電流ベクトル振幅(Ia)および電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、モータ(50)の三相の相電流(iu,iv,iw)の各々の二乗値の総和に応じた値の一例である。モータ(50)の三相の相電流(iu,iv,iw)の各々の二乗値の総和に応じた値は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の大きさの整数乗に比例する値の一例である。
【0062】
(1)電流ベクトル振幅
電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)に基づいて導出される。また、電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を固定座標系に変換して得られるα相電流(iα)およびβ相電流(iβ)に基づいて導出されてもよい。また、電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電流(iM)およびT軸電流(iT)に基づいて導出されてもよい。また、電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電流(id)およびq軸電流(iq)に基づいて導出されてもよい。具体的には、電流ベクトル振幅(Ia)は、次の式のように表現できる。
【0063】
【0064】
(2)電流ベクトル振幅の二乗値
電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)に基づいて導出される。また、電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を固定座標系に変換して得られるα相電流(iα)およびβ相電流(iβ)に基づいて導出されてもよい。また、電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電流(iM)およびT軸電流(iT)に基づいて導出されてもよい。また、電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電流(id)およびq軸電流(iq)に基づいて導出されてもよい。具体的には、電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)は、次の式のように表現できる。
【0065】
【0066】
(3)相電流振幅
相電流振幅(I)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)のうち1つの相電流(例えばU相電流(iu))と、相電流の位相(ωi)とに基づいて導出される。なお、相電流の位相(ωi)は、例えば、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)に基づいて導出される。具体的には、相電流振幅(I)は、次の式のように表現できる。
【0067】
【0068】
(4)相電流実効値
相電流実効値(Irms)は、相電流振幅(I)に基づいて導出される。具体的には、相電流実効値(Irms)は、次の式のように表現できる。
【0069】
【0070】
(5)その他
以上の説明では、電流ベクトル振幅(Ia)がモータ(50)の三相の相電流(iu,iv,iw)に基づいて導出される場合を例に挙げたが、電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ(50)の三相の相電流(iu,iv,iw)のうち二相の相電流に基づいて導出されてもよい。また、電流ベクトル振幅(Ia)は、モータ駆動装置(20)に設けられた直流電流検出部(例えばシャント抵抗、図示を省略)により検出されるインバータ(23)の直流電流に基づいて導出されてもよい。電流ベクトル振幅の二乗値(Ia2)についても同様である。
【0071】
〔2.モータの相電圧に相関する信号の具体例〕
モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)と相関する信号の具体例として、電圧ベクトル振幅(Va),電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2),相電圧振幅(V),相電圧実効値(Vrms)などが挙げられる。
【0072】
なお、電圧ベクトル振幅(Va)および電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、モータ(50)の三相の相電圧(Vu,Vv,Vw)の各々の二乗値の総和に応じた値の一例である。モータ(50)の三相の相電圧(Vu,Vv,Vw)の各々の二乗値の総和に応じた値は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)の大きさの整数乗に比例する値の一例である。
【0073】
(1)電圧ベクトル振幅
電圧ベクトル振幅(Va)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)に基づいて導出される。また、電圧ベクトル振幅(Va)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を固定座標系に変換して得られるα相電圧(Vα)およびβ相電圧(Vβ)に基づいて導出されてもよい。また、電圧ベクトル振幅(Va)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電圧(VM)およびT軸電圧(VT)に基づいて導出されてもよい。また、電圧ベクトル振幅(Va)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電圧(Vd)およびq軸電圧(Vq)に基づいて導出されてもよい。具体的には、電圧ベクトル振幅(Va)は、次の式のように表現できる。
【0074】
【0075】
(2)電圧ベクトル振幅の二乗値
電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)に基づいて導出される。また、電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を固定座標系に変換して得られるα相電圧(Vα)およびβ相電圧(Vβ)に基づいて導出されてもよい。また、電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電圧(VM)およびT軸電圧(VT)に基づいて導出されてもよい。また、電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電圧(Vd)およびq軸電圧(Vq)に基づいて導出されてもよい。具体的には、電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)は、次の式のように表現できる。
【0076】
【0077】
(3)相電圧振幅
相電圧振幅(V)は、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)のうち1つの相電圧(例えばU相電圧(Vu))と、相電圧の位相(ωv)とに基づいて導出される。なお、相電圧の位相(ωv)は、例えば、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)に基づいて導出される。具体的には、相電圧振幅(V)は、次の式のように表現できる。
【0078】
【0079】
(4)相電圧実効値
相電圧実効値(Vrms)は、相電圧振幅(V)に基づいて導出される。具体的には、相電圧実効値(Vrms)は、次の式のように表現できる。
【0080】
【0081】
(5)その他
以上の説明では、電圧ベクトル振幅(Va)がモータ(50)の三相の相電圧(Vu,Vv,Vw)に基づいて導出される場合を例に挙げたが、電圧ベクトル振幅(Va)は、モータ(50)の三相の相電圧(Vu,Vv,Vw)のうち二相の相電圧に基づいて導出されてもよい。電圧ベクトル振幅の二乗値(Va2)についても同様である。
【0082】
〔3.モータの電力に相関する信号の具体例〕
モータ(50)の電力に相関する信号の例として、瞬時電力(p),瞬時虚電力(q),皮相電力(S),有効電力(P),無効電力(Q)などが挙げられる。
【0083】
(1)瞬時電力
瞬時電力(p)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)とに基づいて導出される。また、瞬時電力(p)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を固定座標系に変換して得られるα相電流(iα)およびβ相電流(iβ)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を固定座標系に変換して得られるα相電圧(Vα)およびβ相電圧(Vβ)とに基づいて導出されてもよい。また、瞬時電力(p)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電流(iM)およびT軸電流(iT)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電圧(VM)およびT軸電圧(VT)とに基づいて導出されてもよい。また、瞬時電力(p)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電流(id)およびq軸電流(iq)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電圧(Vd)およびq軸電圧(Vq)とに基づいて導出されてもよい。具体的には、瞬時電力(p)は、次の式のように表現できる。
【0084】
【0085】
(2)瞬時虚電力
瞬時虚電力(q)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を固定座標系に変換して得られるα相電流(iα)およびβ相電流(iβ)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を固定座標系に変換して得られるα相電圧(Vα)およびβ相電圧(Vβ)とに基づいて導出される。また、瞬時虚電力(q)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電流(iM)およびT軸電流(iT)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を一次磁束の向きに基づいた角度により座標変換して得られるM軸電圧(VM)およびT軸電圧(VT)とに基づいて導出されてもよい。また、瞬時虚電力(q)は、モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電流(id)およびq軸電流(iq)と、モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)を磁極位置の向きに基づいた角度により座標変換して得られるd軸電圧(Vd)およびq軸電圧(Vq)とに基づいて導出されてもよい。具体的には、瞬時虚電力(q)は、次の式のように表現できる。
【0086】
【0087】
(3)皮相電力
皮相電力(S)は、相電圧実効値(Vrms)と相電流実効値(Irms)とに基づいて導出される。具体的には、皮相電力(S)は、次の式のように表現できる。
【0088】
【0089】
(4)有効電力
有効電力(P)は、相電圧実効値(Vrms)と、相電流実効値(Irms)と、相電圧と相電流との位相差(φ1)とに基づいて導出される。相電圧と相電流との位相差(φ1)は、1つの相電圧(例えばU相電圧(Vu))と1つの相電流(例えばU相電流(iu))との位相差であり、相電流の位相(ωi)および相電圧の位相(ωv)とに基づいて導出される。具体的には、有効電力(P)は、次の式のように表現できる。
【0090】
【0091】
(5)無効電力
無効電力(Q)は、相電圧実効値(Vrms)と、相電流実効値(Irms)と、相電圧と相電流との位相差(φ1)とに基づいて導出される。相電圧と相電流との位相差(φ1)は、例えば、U相電圧(Vu)とU相電流(iu)との位相差であり、相電流の位相(ωi)および相電圧の位相(ωv)とに基づいて導出される。具体的には、無効電力(Q)は、次の式のように表現できる。
【0092】
【0093】
〔4.相電流を相電流の位相で座標変換して得られる電流〕
モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)をモータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の位相(ωi・t)で座標変換して得られる電流(iγ,iδ)は、次の式のように表現できる。
【0094】
【0095】
〔5.相電圧を相電圧の位相で座標変換して得られる電圧〕
モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)をモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)の位相(ωv・t)で座標変換して得られる電圧(Vγ,Vδ)は、次の式のように表現できる。
【0096】
【0097】
〔6.相電流を相電圧の位相で座標変換して得られる電流〕
モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)をモータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)の位相(ωv・t)で座標変換して得られる電流(iζ,iη)は、次の式のように表現できる。
【0098】
【0099】
〔7.相電圧を相電流の位相で座標変換して得られる電圧〕
モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)をモータ(50)の相電流(iu,iv,iw)の位相(ωi・t)で座標変換して得られる電圧(Vζ,Vη)は、次の式のように表現できる。
【0100】
【0101】
〔6.dq軸磁束と電機子鎖交磁束ベクトルの大きさ〕
永久磁石による電機子鎖交磁束に合わせて座標変換したdq軸磁束(λd,λq)と、永久磁石の電機子鎖交磁束と電機子反作用を合成した電機子鎖交磁束ベクトルの大きさλ0は、次の式のように表現できる。次の式の「Ld」はd軸インダクタンスであり、「Lq」はq軸インダクタンスである。
【0102】
【0103】
〔7.直流信号のその他の例〕
また、直流信号は、モータ(50)の相電流や相電圧や線電流や線間電圧を3相2相変換し、さらに、回転座標変換を施した直流信号であってもよい。例えば、直流信号は、モータ(50)の相電流を3相2相変換したα軸電流およびβ軸電流を、モータ(50)の回転子の磁極の向きに基づく角度で回転座標変換したd軸電流およびq軸電流であってもよい。また、直流信号は、α軸電流およびβ軸電流を、モータ(50)の回転子の一次磁束の向きに基づく角度で回転座標変換したM軸電流およびT軸電流であってもよい。
【0104】
また、直流信号は、モータ駆動装置(20)のコンバータ(21)に入力される電力、コンバータ(21)から出力される電力、直流部(22)から出力される電力、コンバータ(21)と直流部(22)との間を流れる電流、直流部(22)とインバータ(23)の間を流れる電流などであってもよい。
【0105】
〔交流信号の具体例〕
交流信号の例としては、「モータ(50)の相電流(iu,iv,iw)」と、「モータ(50)の相電圧(Vu,Vv,Vw)」と、「各相の鎖交磁束(Ψfu,Ψfv,Ψfw)」とが挙げられる。
【0106】
各相の鎖交磁束(Ψfu,Ψfv,Ψfw)は、次の式のように表現できる。
【0107】
【0108】
交流信号の別の例としては、上記の交流信号を三相二相変換した固定座標の電流、電圧鎖交磁束が挙げられる。
【0109】
また、交流信号は、モータ(50)の線電流、線間電圧などであってもよい。また、交流信号は、相電流や相電圧や線電流や線間電圧を3相2相変換した2相の交流電流(例えばα軸電流およびβ軸電流)や2相の交流電圧であってもよい。また、交流電流は、商用電源系統(具体的には交流電源(60))とモータ駆動装置(20)のコンバータ(21)との間を流れる電流であってもよい。
【0110】
(判定処理の具体例)
次に、判定処理について、4つの具体例(第1~第4判定処理)を挙げて説明する。なお、以下では、第1周波数成分(C1)の振幅に基づいて判定処理が行われる場合を例に挙げて説明する。以下の説明における「第1周波数成分(C1)」は、「第1周波数成分(C1)の振幅」のことである。
【0111】
〔第1判定処理〕
次に、
図5を参照して、第1判定処理について説明する。第1判定処理では、制御部(31)は、第1周波数成分(C1)の瞬時値に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。具体的には、制御部(31)は、予め定められた検出周期毎に以下の処理(ステップ(S11)~ステップ(S13))を行う。
【0112】
〈ステップ(S11)〉
制御部(31)は、第1周波数成分(C1)の瞬時値を取得する。
【0113】
〈ステップ(S12)〉
次に、制御部(31)は、ステップ(S11)において取得された第1周波数成分(C1)の瞬時値が予め定められた上限値以上であるか否かを判定する。第1周波数成分(C1)の瞬時値が上限値以上である場合には、ステップ(S13)の処理が行われる。一方、そうでない場合には、第1判定処理が終了する。
【0114】
〈ステップ(S13)〉
ステップ(S12)において第1周波数成分(C1)の瞬時値が上限値以上である場合、制御部(31)は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であると判定する。そして、制御部(31)は、対処動作を行う。
【0115】
〔第2判定処理〕
図6および
図7を参照して、第2判定処理について説明する。第2判定処理では、制御部(31)は、第1周波数成分(C1)の変化率に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。具体的には、制御部(31)は、予め定められた検出周期毎に以下の処理(ステップ(S21)~ステップ(S23))を繰り返し行う。
【0116】
〈ステップ(S21)〉
制御部(31)は、第1周波数成分の変化率を取得する。例えば、制御部(31)は、第1周波数成分(C1)の瞬時値を時間で微分することで第1周波数成分(C1)の変化率を導出する。
図7の例では、時刻(t1,t2,t3)の各々において第1周波数成分(C1)の変化率が変化する。
【0117】
〈ステップ(S22)〉
制御部(31)は、ステップ(S21)において取得された第1周波数成分(C1)の変化率が予め定められた上限値以上であるか否かを判定する。第1周波数成分(C1)の変化率が上限値以上である場合には、ステップ(S23)の処理が行われる。一方、そうでない場合には、第2判定処理が終了する。
図7の例では、時刻(t2)において第1周波数成分(C1)の変化率が上限値以上となる。
【0118】
〈ステップ(S23)〉
ステップ(S22)において第1周波数成分(C1)の変化率が上限値以上である場合、制御部(31)は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であると判定する。そして、制御部(31)は、対処動作を行う。
【0119】
〔第3判定処理〕
図8および
図9を参照して、第3判定処理について説明する。第3判定処理では、制御部(31)は、第1周波数成分(C1)が上限値以上となる時間を累積して得られる累積時間に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。具体的には、制御部(31)は、予め定められた検出周期毎に以下の処理(ステップ(S31)~ステップ(S33))を繰り返し行う。
【0120】
〈ステップ(S31)〉
制御部(31)は、第1周波数成分(C1)が上限値以上となる時間の累積値(累積時間)を取得する。
【0121】
例えば、制御部(31)は、検出周期における代表値となる第1周波数成分(C1)の瞬時値を取得し、第1周波数成分(C1)の瞬時値が上限値以上であるか否かを判定する。そして、制御部(31)は、第1周波数成分(C1)の瞬時値が上限値以上である場合には、カウント値をインクリメントし、第1周波数成分(C1)の瞬時値が上限値以上ではない場合には、カウント値をインクリメントしない。このカウント値は、第1周波数成分(C1)が上限値以上となる時間の累積値(累積時間)に対応する。例えば、カウント値に検出周期に相当する時間を乗算して得られる値が累積時間となる。
【0122】
図9の例では、時刻(t1~t12)の各々において第3判定処理が行われ、時刻(t1~t12)のうち時刻(t2~t5,t9~t12)においてカウント値がインクリメントされる。
【0123】
〈ステップ(S32)〉
次に、制御部(31)は、ステップ(S31)において取得された累積時間(この例ではカウント値)が予め定められた閾値を上回るか否かを判定する。累積時間が閾値を上回る場合には、ステップ(S33)の処理が行われる、一方、そうでない場合には、第3判定処理が終了する。
図9の例では、制御部(31)は、時刻(t11)においてカウント値が閾値を上回ると判定する。
【0124】
〈ステップ(S33)〉
ステップ(S32)において累積時間が閾値を上回る場合、制御部(31)は、制御部(31)は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であると判定する。そして、制御部(31)は、対処動作を行う。
【0125】
〔第4判定処理〕
図10および
図11を参照して、第4判定処理について説明する。第4判定処理では、制御部(31)は、予め定められた判定時間内において第1周波数成分(C1)が予め定められた上限値以上となる時間が占める割合(時間割合)に基づいて、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であるか否かを判定する。具体的には、制御部(31)は、予め定められた検出周期毎に以下の処理(ステップ(S41)~ステップ(S43))を繰り返し行う。
【0126】
〈ステップ(S41)〉
制御部(31)は、判定時間内において第1周波数成分が上限値以上となる時間が占める割合(時間割合)を取得する。
【0127】
例えば、制御部(31)は、現在時刻を終端とする所定時間期間(少なくとも判定時間に相当する期間)内における第1周波数成分(C1)を記憶する。そして、制御部(31)は、その記憶された第1周波数成分(C1)に基づいて、現在時刻を終端とし且つ期間長さが判定時間に相当する判定期間内において第1周波数成分(C1)が上限値以上である時間(上限値超過時間)を導出し、上限値超過時間を判定時間で除算することで時間割合を導出する。
図11の例では、時刻(t2)が現在時刻であり、時刻(t1)から時刻(t2)までの期間が判定期間であり、時間(T1)と時間(T2)が上限値超過時間であり、時間(T1)と時間(T2)の合計を判定時間(T0)で除算して得られる値が時間割合である。
【0128】
〈ステップ(S42)〉
次に、制御部(31)は、ステップ(S41)において取得された時間割合(判定時間内において第1周波数成分が上限値以上となる時間が占める割合)が予め定められた閾値を上回るか否かを判定する。時間割合が閾値を上回る場合には、ステップ(S43)の処理が行われる。一方、そうでない場合には、第4判定処理が終了する。
【0129】
〈ステップ(S43)〉
ステップ(S42)において時間割合が閾値を上回る場合、制御部(31)は、モータ(50)または機器(70)の状態が特定状態であると判定する。そして、制御部(31)は、対処動作を行う。
【0130】
なお、以上の判定処理の説明では、第1周波数成分(C1)と上限値とが比較される場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、第1周波数成分(C1)と予め定められた下限値とが比較されてもよい。つまり、上記の「上限値以上」を「下限値以下」に読み替えてもよい。また、第1周波数成分(C1)と予め定められた許容範囲とが比較されてもよい。つまり、上記の「上限値以上」を「許容範囲外」に読み替えてもよい。
【0131】
(冷凍システム)
図12は、冷凍システム(RR)の構成を例示する。冷凍システム(RR)は、冷媒が充填された冷媒回路(RR1)と、モータ駆動装置(20)と、状態判定装置(30)とを備える。
【0132】
冷媒回路(RR1)は、圧縮機(CC)と、放熱器(RR5)と、減圧機構(RR6)と、蒸発器(RR7)とを有する。この例では、減圧機構(RR6)は、膨張弁である。冷媒回路(RR1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0133】
圧縮機(CC)は、圧縮機構(CCa)と、モータ(50)とを有する。圧縮機構(CCa)は、回転軸によりモータ(50)に連結される。モータ(50)は、回転軸を回転駆動することで圧縮機構(CCa)を回転駆動する。モータ駆動装置(20)は、モータ(50)を駆動する。状態判定装置(30)は、モータ(50)またはモータ(50)を搭載する圧縮機(CC)の状態を判定する。
【0134】
冷凍サイクルでは、圧縮機(CC)から吐出された冷媒は、放熱器(RR5)において放熱する。放熱器(RR5)から流出した冷媒は、減圧機構(RR6)において減圧され、蒸発器(RR7)において蒸発する。そして、蒸発器(RR7)から流出した冷媒は、圧縮機(CC)に吸入される。
【0135】
この例では、冷凍システム(RR)は、空気調和機である。空気調和機は、冷房専用機であってもよいし、暖房専用機であってもよい。また、空気調和機は、冷房と暖房とを切り換える空気調和機であってもよい。この場合、空気調和機は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。また、冷凍システム(RR)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0136】
(ファンシステム)
図13は、ファンシステム(FF)の構成を例示する。ファンシステム(FF)は、ファン(FF1)と、モータ駆動装置(20)と、状態判定装置(30)とを備える。
【0137】
ファン(FF1)は、羽根を有する回転体(FFa)と、モータ(50)とを有する。回転体(FFa)は、回転軸によりモータ(50)に連結される。モータ(50)は、回転軸を回転駆動することで回転体(FF2a)を回転駆動する。モータ駆動装置(20)は、モータ(50)を駆動する。状態判定装置(30)は、モータ(50)またはモータ(50)を搭載するファン(FF1)の状態を判定する。
【0138】
(軸受の具体例)
図14に示すように、モータ(50)により回転駆動される回転軸(55)を支持する軸受(80)は、滑り軸受であってもよい。言い換えると、モータ(50)は、滑り軸受により支持される回転軸(55)を回転駆動するものであってもよい。滑り軸受は、軸受(80)の一例である。
【0139】
モータ(50)により回転駆動される回転軸(55)を支持する軸受(80)が「滑り軸受」である場合、回転軸(55)または軸受(80)に摩耗が生じると、モータ(50)の機械角周波数(fm)の1倍未満(具体的には1/3または2/3)の特定周波数成分(Cs)の振幅変動がモータ(50)のトルクに生じ、その結果、
図3または
図4に示すように、モータ(50)の電流または電圧に基づく信号の第1周波数成分(C1)に変動(例えば振幅変動)が現れる。
【0140】
これは、回転軸(55)または軸受(80)の摩耗量が許容量を上回ると、軸受(80)に緩みやガタが発生して軸受(80)(具体的には滑り軸受)に支持される回転軸(55)の回転の軌道に変化が生じることが原因であると推測される。
【0141】
(その他の実施形態)
以上の説明において、判定処理は、複数(
図3および
図4の例では2つ)の第1周波数成分(C1)の各々に基づいて行われてもよいし、複数の第1周波数成分(C1)のいずれかに基づいて行われてもよい。また、判定処理は、直流信号および交流信号の一方のみに基づいて行われてもよいし、直流信号および交流信号の各々に基づいて行われてもよい。
【0142】
また、以上の説明では、第1周波数成分(C1)の振幅に基づいて判定処理が行われる場合を例に挙げたが、第1周波数成分(C1)の位相に基づいて判定処理が行われてもよいし、第1周波数成分(C1)のスペクトル幅に基づいて判定処理が行われてもよい。
【0143】
また、制御部(31)は、ニューラルネットワークまたは機械学習により構築されたアルゴリズム(信号の変化に基づいて状態を判定するためのアルゴリズム)を用いて判定処理をするように構成されてもよい。
【0144】
また、制御部(31)は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、複数のプロセッサにより実現されてもよい。また、制御部(31)は、通信ネットワークを経由して互いに通信する複数の演算処理装置(コンピュータ)により実現されてもよい。
【0145】
また、以上の説明では、直流部(22)がコンデンサを有する場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、直流部(22)は、コンデンサとリアクトルとを有するLC回路であってもよい。このような構成により、インバータ(23)のスイッチング素子によるスイッチング動作に伴うノイズ電流が交流電源(60)に流入することを抑制することができる。なお、上記のコンデンサの静電容量値は、コンバータ(21)の出力をほとんど平滑化することができない一方で、インバータ(23)のスイッチング動作により発生するリプルを平滑化することができる静電容量値に設定されてもよい。具体的には、上記のコンデンサは、一般的な電力変換装置においてコンバータ(21)の出力を平滑化するために用いられる平滑コンデンサ(例えば電解コンデンサ)の静電容量値の1/100程度の静電容量値を有する小容量コンデンサにより構成されてもよい。
【0146】
また、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上説明したように、本開示は、状態判定技術として有用である。
【符号の説明】
【0148】
10 モータ駆動システム
20 モータ駆動装置
30 状態判定装置
31 制御部
41 相電流検出部
42 電気角周波数検出部
50 モータ
60 交流電源
C1 第1周波数成分
Cs 特定周波数成分
RR 冷凍システム
FF ファンシステム