(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】異常検知装置及び乗り物
(51)【国際特許分類】
A61B 5/18 20060101AFI20240710BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240710BHJP
G08B 21/06 20060101ALI20240710BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240710BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240710BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240710BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240710BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
A61B5/18
A61B5/0245 C
G08B21/06
G08B25/04 K
G08B25/10 A
G08B25/00 510M
G08G1/16 F
A61B5/00 102A
(21)【出願番号】P 2023046100
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2017157348の分割
【原出願日】2017-08-17
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219632(JP,A)
【文献】特開2012-093867(JP,A)
【文献】特開2011-128966(JP,A)
【文献】特開2013-120409(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102614(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/03
A61B 5/06 - 5/22
G08B 19/00 -21/24
G08B 23/00 -31/00
G08G 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち早く判断した方による判断結果を最終的な判断として採用し、
前記第一検出手段は、前記第一検出手段が検出した第一検出値を求めるよう構成され、
前記注意喚起手段は、異常が発生した場合と、異常が発生していない場合であっても、前記第一検出手段が検出した前記第一検出値を報知することを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち早く判断した方による判断結果を最終的な判断として採用し、
前記注意喚起手段が注意喚起を行った場合には、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信することを特徴とする異常検知装置。
【請求項3】
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第一検出手段及び前記第二検出手段は、検出した乗員の状態を数値として検出するよう構成されており、
前記第一判断手段及び前記第二判断手段は、検出された前記数値が所定の数値範囲内にあるか否か、又は前記数値が所定の閾値を超えたか否かによって異常の有無を判断するよう構成されており、
判断が遅い方の判断手段は、判断が早い方の判断手段の判断結果に基づいて、前記数値範囲又は閾値を補正することを特徴とする異常検知装置。
【請求項4】
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第二検出手段は、シートにおける着座した乗員と近接する部位の表層部に設けられていることを特徴とする異常検知装置。
【請求項5】
前記第三判断手段は、前記第一判断手段による判断結果と前記第二判断手段による判断結果の両方に基づいて異常の有無を最終的に判断することを特徴とする請求項3または4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記注意喚起手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち判断が早い方の判断手段が異常ありと判断した場合に、表示や音、振動を出力する報知手段による第一注意喚起を行い、判断が遅い方の判断手段が異常ありと判断した場合に、前記報知手段によって前記第一注意喚起よりも強調された表示や前記第一注意喚起よりも強い音、振動による第二注意喚起を行うことを特徴とする請求項1
から5のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記注意喚起手段が前記第一注意喚起を行った場合には、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信せず、
前記注意喚起手段が前記第二注意喚起を行った場合に、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信することを特徴とする請求項
6に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記注意喚起手段は、携帯端末
と通信可能な通信部を備えており、
前記注意喚起手段が、前記第二注意喚起を行った場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を
前記通信部より前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項
6または7に記載の異常検知装置。
【請求項9】
前記第一検出手段は、乗員の画像を撮影するカメラであり、乗員を撮影することが可能な位置に設けられていることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項10】
前記第一検出手段は、乗員と直接接触することにより乗員を検出する接触式検出手段であることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項11】
前記第三判断手段は、前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断の両方に基づいて判断を行う場合に、前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のそれぞれの異常の有無の組み合わせにより判断を行い、当該判断の結果が異常ありの場合に前記注意喚起手段が所定の注意喚起を行うことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項12】
第一検出手段と第二検出手段とをそれぞれ複数備え、
前記第一判断手段及び前記第二判断手段は、前記第一検出手段が検出した複数の第一検出値及び前記第二検出手段が検出した複数の第二検出値のうちの少なくとも2つの検出値に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置を備えたことを特徴とする
乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の異常を検知する異常検知装置及びこれを備えた乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転する運転者の健康状態が悪化した場合、車両の運転に悪影響を及ぼすおそれがあるため、健康状態の悪化を事前に検知して何らかの対策を施すことが望ましい。このような対策として、シートの座面及び背面部に埋め込まれるようにして設けられた非接触式の血流センサーによる脈波等の計測結果に基づいて、血流や血圧等の生体情報を検出推定して運転者の健康状態を把握する技術が知られている(特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-190022号公報
【文献】特開2016-077890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載されたように、カメラとセンサーからそれぞれ得られた情報に基づいて血圧を求めようとすると、処理が複雑になってしまい、装置の製造コストが高くなってしまう。
また、処理が複雑になることで、血圧値が正常か否かの判断が遅くなってしまう。そのため、例えば、運転を行っている乗員の健康状態に異常ありと判断する前に乗員が重篤な状態に陥ってしまい、乗員が運転操作を誤って事故を引き起こしてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、複数種類の検出手段を用いて乗員の生体情報を検出することにより乗員の健康状態を監視する異常検出装置において、製造コストを低減するとともに、迅速な判断を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、異常検知装置であって、
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち早く判断した方による判断結果を最終的な判断として採用し、
前記第一検出手段は、前記第一検出手段が検出した第一検出値を求めるよう構成され、
前記注意喚起手段は、異常が発生した場合と、異常が発生していない場合であっても、前記第一検出手段が検出した前記第一検出値を報知することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、異常検知装置であって、
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち早く判断した方による判断結果を最終的な判断として採用し、
前記注意喚起手段が注意喚起を行った場合には、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、異常検知装置であって、
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第一検出手段及び前記第二検出手段は、検出した乗員の状態を数値として検出するよう構成されており、
前記第一判断手段及び前記第二判断手段は、検出された前記数値が所定の数値範囲内にあるか否か、又は前記数値が所定の閾値を超えたか否かによって異常の有無を判断するよう構成されており、
判断が遅い方の判断手段は、判断が早い方の判断手段の判断結果に基づいて、前記数値範囲又は閾値を補正することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、異常検知装置であって、
乗員の状態を検出する第一検出手段と、
第一検出手段とは異なる方法で乗員の状態を検出する第二検出手段と、
前記第一検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第一判断手段と、
前記第二検出手段が検出した状態に基づいて乗員の異常の有無を判断する第二判断手段と、
前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のうち少なくとも一方に基づいて乗員の異常の有無を最終的に判断する第三判断手段と、
前記第一判断手段、前記第二判断手段及び前記第三判断手段のうち少なくともいずれかが異常ありと判断した場合に、乗員に注意を喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記第二検出手段は、シートにおける着座した乗員と近接する部位の表層部に設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の異常検知装置であって、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段による判断結果と前記第二判断手段による判断結果の両方に基づいて異常の有無を最終的に判断することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記注意喚起手段は、前記第一判断手段と前記第二判断手段のうち判断が早い方の判断手段が異常ありと判断した場合に、表示や音、振動を出力する報知手段による第一注意喚起を行い、判断が遅い方の判断手段が異常ありと判断した場合に、前記報知手段によって前記第一注意喚起よりも強調された表示や前記第一注意喚起よりも強い音、振動による第二注意喚起を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の異常検知装置であって、
前記注意喚起手段が前記第一注意喚起を行った場合には、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信せず、
前記注意喚起手段が前記第二注意喚起を行った場合に、乗り物の運転を制限することを指示する信号を乗り物の制御部へ送信することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の異常検知装置であって、
前記注意喚起手段は、携帯端末と通信可能な通信部を備えており、
前記注意喚起手段が、前記第二注意喚起を行った場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を前記通信部より前記携帯端末へ送信することを特徴とする。
【0009】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記第一検出手段は、乗員の画像を撮影するカメラであり、乗員を撮影することが可能な位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記第一検出手段は、乗員と直接接触することにより乗員を検出する接触式検出手段であることを特徴とする。
【0011】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
前記第三判断手段は、前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断の両方に基づいて判断を行う場合に、前記第一判断手段による判断と前記第二判断手段による判断のそれぞれの異常の有無の組み合わせにより判断を行い、当該判断の結果が異常ありの場合に前記注意喚起手段が所定の注意喚起を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項1から11のいずれか一項に記載の異常検知装置であって、
第一検出手段と第二検出手段とをそれぞれ複数備え、
前記第一判断手段及び前記第二判断手段は、前記第一検出手段が検出した複数の第一検出値及び前記第二検出手段が検出した複数の第二検出値のうちの少なくとも2つの検出値に基づいて、異常の有無を判定することを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、乗り物であって、
請求項1から12のいずれか一項に記載の異常検知装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、第一、第二判断手段それぞれの判断結果に基づいて最終的な判断を行うので、各検出手段から得られた複数の数値を演算して一つの判断を行う場合に比べて簡素な処理で異常有無の判断を行うことが可能となるため、装置の製造コストを低減することが可能になる。
また、判断の仕組みが簡素であるため、迅速な判断を行うことが可能となる。
さらに、注意喚起を受けた乗員やその同乗者は、当該乗員が急に体調を崩した場合に備えておくことが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、乗員の健康状態に異常が発生した場合に、乗員やその同乗者に迅速に知らせることが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、異常が発生し、かつ、乗員がアクセルを踏み込んでしまっている場合等であっても、大きな事故が生じるのを抑制することが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、異常有無の判断を数値の比較のみで行うことができるため、装置をより簡素かつ処理の早いものにすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、第二検出手段が発する光や電磁波等を減衰させることなく透過させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、一方の判断手段のみで最終的な判断を行う場合に比べて異常の有無をより正確に判断することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、乗員の好みに応じて用いる検出値の組み合わせを変えることにより、異常有無の判断の精度を調節することができる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、第二検出手段が乗員の近傍に位置することになるため、乗員の状態をより正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1,第2実施形態に係る異常検知装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】
図1の異常検知装置を備えた乗り物の乗員室内を後方から見たときの概略図である。
【
図3】
図1の異常検知装置を備えたシートの側面図である。
【
図4】
図1の異常検知装置における異常有無の判断を表す概念図である。
【
図5】同実施形態の変形例に係る異常検知装置の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態 >
まず、本発明の第1実施形態に係る異常検知装置の概略構成について説明する。
図1は異常検知装置10のブロック図、
図2はこの異常検知装置10を備えた乗り物100の乗員室内を後方から見たときの概略図、
図3はこの異常検知装置10を備えたシート200の側面図である。
なお、
図2には、乗り物100の乗員室内として乗用車のものを例示したが、本発明は、バスやトラック等の他の自動車にも適用可能であることは勿論、鉄道や船舶、航空機等の自動車以外の乗り物にも適用可能である。
【0035】
本実施形態に係る異常検知装置10は、乗り物100に備えられるものであって、乗員の健康状態に異常が生じていないかどうかを監視するためのものである。この異常検知装置10は、
図1に示したように、第一検出部1、第二検出部2、報知部3、装置本体4等を備えて構成されている。
これらは、有線又は無線で通信可能に接続されている。有線接続とする場合には、乗り物に配設されたワイヤーハーネスを利用してもよいし、専用の配線を設けるようにしてもよい。一方、無線接続とする場合には、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を利用するのが好ましい。
【0036】
第一検出部1は、生体情報を含む乗員の状態を検出するためのものであり、本実施形態においては、カメラで構成されている。カメラは静止画を撮影するスチルカメラであっても動画を撮影するビデオカメラであってもよいが、乗員の状態を、乗員が乗車している間撮影し続ける必要があることからビデオカメラとするのが好ましい。
第一検出部1は、専用の装置としてもよいし、市販のカメラに通信機能を搭載したものとしてもよい。
第一検出部1の電力や装置本体4との接続方式は、特に限定されるものではないが、第一検出部1は、長時間の使用が見込まれるため、装置本体4と有線で接続し、装置本体4から電源の供給を受けるようにするのが好ましい。
【0037】
第一検出部1は、装置本体4から制御信号を受信したことに基づいて撮影を開始したり行っていた撮影を終了したりするようになっている。
また、第一検出部1は、撮影した画像の画像データを装置本体4へ送信するようになっている。
【0038】
また、第一検出部1は、一の乗り物に対して、一つ又は複数備えることが可能である。
第一検出部1の設置箇所は、乗り物の種類にもよるが、乗員を撮影することが可能な位置でさえあれば特に限定されるものではない。
乗り物が自動車である場合には、例えば
図2に示したように、バックミラー110や、天井120、インパネ130、ドア140等に、後方を撮影できるように設けることが考えられる。
なお、
図2には、第一検出部1を運転席の周囲にのみ設けた場合を例示したが、助手席等の他の座席の周囲に設けるようにしてもよい。
また、本発明を適用しようとする乗り物が、前後方向に複数並ぶシートを備えたものである場合には、前側のシートの背面に、後ろ側のシートの方向を撮影できるように設けることもできる。
【0039】
第二検出部2は、第一検出部1と異なる方法で乗員の状態を検出するものである。本実施形態においては、乗員の体温、脈拍、血圧、呼吸数等のうち少なくともいずれかの生体情報を、乗員と直接接触することにより、又は乗員から得られる情報(反射又は透過してきた光や電磁波等)に基づいて間接的に検出するものとなっている。
第二検出部2は、専用の装置として構成してもよいし、市販の血圧計や体温計、生体センサー等に通信機能を搭載したものとしてもよい。
【0040】
なお、第二検出部2を、間接的に状態を検出するものとする場合には、装置本体4から制御信号を受信したことに基づいて光や圧力波(音波や電磁波)、振動等を乗員の方向に向けて出力するように構成する。ここで、電磁波とは、100MHz程度の電波やマイクロ波を始め、赤外光、可視光、紫外光、X線等を含む広義の電磁波を意味しており、人体に悪影響を及ぼさない範囲で好適な電磁波が使用される。
また、この場合、第二検出部2を、乗員の体表で反射した、あるいは乗員を透過した光や圧力波等を検出するように構成する。このようにすれば、第二検出部2は、乗員と接する必要が無くなるため、比較的自由な位置に設けることが可能となる。
【0041】
また、第二検出部2は、検出した情報に基づく第二検出値(第一検出値については後述する)を算出するようになっている。なお、第二検出値の算出は、後述する装置本体4の制御部41で行うようにしてもよい。
また、第二検出部2は、装置本体4から測定開始を指示する制御信号を受信したり、算出した第二検出値を装置本体4へ送信したりするようになっている。
【0042】
なお、第二検出部2の電力や装置本体4との接続方式は、特に限定されるものではないが、第二検出部2は、乗り物が走行している間、乗員の状態を検出し続けるようにする必要があることから、装置本体4と有線で接続し、装置本体4から電源の供給を受けるようにするのが好ましい。
【0043】
また、第二検出部2は、一のシート200に対して、一つ又は複数備えることが可能である。
第二検出部2の取り付け位置は、特に限定されるものではないが、
図3に示したように、シート200における着席した乗員と近接する部位、すなわち、シートボトム210の上側表層部、シートバック220の前側表層部、あるいはヘッドレスト230の前側表層部等とするのが、第二検出部2が発する光や電磁波等を減衰させることなく透過させる観点から好ましい。
なお、シート200が、図示しないオットマンやフットレスト、ネックレスト等を備える場合には、これらに備えるようにしてもよい。
【0044】
報知部3は、例えば、モニターやスピーカー、振動機等で構成される。そして、後述する装置本体4から受信した制御信号に基づいて、異常の有無を、表示や音声、振動等によって乗員に報知するようになっている。
報知部3を振動機とする場合には、振動が伝わりやすいよう、シート200における着席した乗員と近接する部位に設けるのが好ましい。
【0045】
一方、報知部3をモニターで構成する場合には、被測定者の視認しやすい位置に設けるのが好ましい。具体的には、シート200の前方(自動車の場合にはインパネ130や、前後方向に複数並ぶシートを備えたものである場合には、前側のシートの背面等)に設けるとよい。
また、報知部3をモニターで構成すれば、異常発生の報知の他、第一検出部1が撮影した画像や検出値を必要に応じて表示する事もできる。このようにすれば、異常がない場合であっても、乗員の現状の状態を確認することが可能となる。
【0046】
装置本体4は、
図1に示したように、制御部41、通信部42、記憶部43等を備えて構成されている。
制御部41は、CPU、RAM等で装置本体4の各部の動作を統括的に制御するように
構成されている。具体的には、乗り物のエンジンがかけられたことや、乗員がシートに着席したこと、第一検出部1や第二検出部2から信号を受信したこと等に基づいて、記憶部43に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行する。
【0047】
通信部42は、制御信号を第一検出部1や第二検出部2へ送信したり、第一検出部1から画像データを受信したり、第二検出部2から第二検出値を受信したり、制御信号を報知部3へ送信したり、乗り物100の図示しない制御装置との間で制御信号を送受信したりすることが可能となっている。
【0048】
記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成されている。記憶部43には、各種処理プログラムや、当該プログラムの実行に用いる所定の閾値や数値範囲等を記憶している。
閾値は、例えば、目と認識した領域における開いた状態とみなすことのできる瞳の面積(濃度値の低い画素数)の割合や、上眼瞼と下眼瞼との距離、あるいは頭部と認識した領域における通常範囲とみなすことのできる移動距離や移動速度の上限値等が記憶されている。
【0049】
数値範囲は、第二検出部2が測定する項目及び第一検出部1で生体情報を検出する場合の測定項目に対応したもので、その測定項目における標準的なもの(いわゆる正常値)が記憶されている。なお、複数の測定項目に対応した複数種類の数値範囲を記憶しておいて、接続する第二検出部2に応じて切り替えできるようにしてもよい。
また、記憶部43は、第一検出部1や第二検出部2から受信した検出値を記憶することが可能となっている。
【0050】
このように構成された装置本体4の制御部41は、記憶部43に記憶されている処理プログラムに従って以下のような動作をする。
例えば、制御部41は、乗員の操作や、乗り物のエンジンがかけられたことや、乗員がシートに着席したこと等に基づいて、撮影の開始を指示する信号を、通信部42を介して、第一検出部1へ送信するようになっている。
また、制御部41は、撮影の開始を指示する信号の送信と同時又は送信した後、測定の開始を指示する信号を、通信部42を介して、所定期時間毎に第二検出部2へ繰り返し送信するようになっている。
【0051】
また、制御部41は、検出した乗員の状態から第一検出値を求めるようになっている。具体的には、第一検出部1から受信した画像データから、脈波等の生体情報を直接抽出したり、画像から目や頭部を認識し、例えば、目の面積における瞳の面積割合(黒い画素の割合)や上眼瞼と下眼瞼との距離の時間変化、頭部が動いた場合の移動速度等を算出したりする。すなわち、制御部41は、本発明における第一検出手段をなす。
なお、第一検出値の算出は、第一検出部1において行うようにしてもよい。
【0052】
また、制御部41は、撮影された画像に基づいて異常の有無を判断するようになっている。具体的には、求めた第一検出値を対応する閾値又は数値範囲と比較することにより判断する。
瞳の面積や上眼瞼と下眼瞼との距離等を判断に用いる場合には、第一検出値が閾値未満である状態が所定時間続いた場合に、瞼を閉じている、すなわち居眠りや体調不良が疑われる状態であると判断する。
一方、頭部の動き等を判断に用いる場合には、第一検出値が閾値以上であると、異常に速い速度で首を曲げたことになるため、居眠りや意識の低下が疑われる状態であると判断する。
【0053】
一方、画像データから生体情報を検出する場合、血圧値や呼吸数等を第一検出値として求め、第一検出値が数値範囲内にあるか否かによって異常の有無を判断する。
このような処理を行うことにより、制御部41は、本発明における判断手段(第一判断手段)をなす。
【0054】
また、制御部41は、第二検出部2から第二検出値を受信する度に、予め記憶部に格納されている所定の数値範囲R(
図4参照)と比較し、第二検出値が数値範囲R内にあれば異常なし、数値範囲R外にあれば何らかの異常ありと判定するようになっている。すなわち、第二検出部2及び制御部41は、本発明における判断手段(第二判断手段)として機能する。こうすることで、比較的簡素なプログラム(仕組み)で判断条件の補正を行うことが可能となる。
【0055】
また、制御部41は、第一検出値に基づく判断と、第二検出値に基づく判断のうち少なくともいずれかを用いて最終的な異常の有無を判断するようになっている。すなわち、本実施形態では、第一検出値に基づく判断と第二検出値に基づく判断の両方に基づいて最終的な判断をする場合と、いずれか一方に基づいて最終的な判断をする場合と、がある。
本実施形態においては、両方の判断に基づいて最終的な判断を行うことを基本としているが、ユーザーの操作や検出部1,2が検出する項目等に応じて、両方に基づく判断、一方に基づく判断のいずれかを予め設定する構成としてもよい。
いずれか一方の判断に基づいて最終的な判断を行う場合については後述する。
【0056】
制御部41は、第一検出値に基づく判断と第二検出値に基づく判断の両方が異常なしであった場合は異常なし、両方が異常ありであった場合は異常ありと判断する。
ここで、第一検出値に基づく判断と第二検出値に基づく判断が異なる場合が考えられる。そこで、装置本体4は、(a)一方が異常なしでも他方が異常ありであれば異常ありと最終判断する、(b)一方が異常ありでも他方が異常なしであれば異常なしと最終判断する、のいずれかを選択するようになっている。こうすることで、(a)が選択された場合には、異常ありと判断されやすくなるため、乗員の健康状態をより慎重に監視することができる。一方、(b)が選択された場合には、異常なし判断されやすくなるため、乗員が必要以上に不安を感じてしまうのを抑制することができる。
【0057】
なお、第一検出値に基づく判断と第二検出値に基づく判断が異なる場合の設定として、(c)判断結果に関わらず、第一検出値(第二検出値)に基づく判断を優先して採用する、という選択が行えるようにしてもよい。
【0058】
また、第一検出値と数値範囲の上限又は下限もしくは閾値との差がほとんど無く、第一検出値に基づく判断が正確に行われない可能性がある場合には、第二検出値を利用して判断を行うようにしてもよい。例えば、運転している乗員が瞼をうっすらと開きながら居眠りをしてしまった場合、夜間で暗い場合、日差しが強い場合等、第一検出部1による画像からは目の状態(瞼を開いているか閉じているか等)を判断しにくい場合がある。このような場合、第二検出値を用いれば、睡眠による血圧や心拍数の低下が見られるか否かを判断することで、居眠りしているか否かを精度よく発見することができる。つまり、第一検出値に基づく判断が第二検出値によって補われることとなる。
【0059】
また、制御部41は、第一検出値や第二検出値が数値範囲や閾値から極端に大きく外れる場合に、第一検出値に基づく判断と第二検出値に基づく判断のうち、先に行われた判断を最終的な判断結果として採用するようになっている。具体的には、例えば、数値範囲の上限よりも所定値分だけ高い上閾値T
U(
図4参照)と、数値範囲の下限よりも所定値分だけ低い下閾値T
Lを設定し、先の判断において、検出値が数値範囲R外にあると判定し
た場合に、予め記憶部に格納されている所定の閾値T
U,T
Lと比較し、検出値が数値範囲Rの上限と上閾値T
Uとの間又は数値範囲Rの下限と下閾値T
Lとの間にあれば、第1の異常が発生した(異常の可能性が高い)と判断して後の判断が行われるのを待ち、検出値が上閾値T
Uよりも上又は下閾値T
Lよりも下であれば、第1の異常よりもレベルの高い第2の異常が発生した(異常の可能性が大である)と判断して、後の判断を待つことなく最終的な判断結果とするようにしている。こうすることで、深刻な異常の発生をより迅速に検知し、事故の発生を抑制することが可能となる。
【0060】
また、制御部41は、遅い方の判断を行う際に、早い方の判断結果に基づいて、異常の有無の判断条件(数値範囲、閾値)を補正するようになっている。
補正の仕方は、例えばユーザーの操作等に応じて、(A)数値範囲を狭める又は閾値を前回の検出値に近づける、(B)数値範囲を広げる又は閾値を前回の検出値から遠ざける、のいずれかを選択することができるようになっている。こうすることで、(A)が選択された場合には、異常ありと判断されやすくなるため、乗員の異常をより早期に発見することが可能となるし、乗員の健康状態をより慎重に監視することが可能となる。一方、(B)が選択された場合には、異常なしと判断されやすくなるため、乗員が過度に不安を感じてしまうのを抑制することができる。
【0061】
また、制御部41は、異常ありと判断した場合に、その旨を報知するための信号を報知部3へ送信するようになっている。
これにより、報知部3は、異常が発生した場合に、注意喚起(例えば異常が発生していることの報知等)を行うため、乗員の注意が喚起される。すなわち、報知部3及び制御部41は、本発明における注意喚起手段として機能する。
なお、異常が発生していない場合にも、報知部3が、何らかの表示や音声出力を行えるようにしてもよい。
【0062】
なお、早い方の判断において異常ありとなった場合に第一注意喚起を行うための信号を報知部3へ送信し、遅い方の判断においても異常ありとなった場合に、第一注意喚起よりも強い第二注意喚起(運転を控える旨の案内等)を行うための信号を報知部3へ送信するようにしてもよい。このようにすれば、第一注意喚起によって、乗員の健康状態に異常が発生したことを乗員に速やかに報知することが可能となる。また、第二の注意喚起によって、注意喚起が二度行われることになるため、第一の注意喚起をあまり意識しなかった乗員も注意するようになる。
【0063】
また、通信部42を、図示しない携帯端末と通信可能に構成し、検出値が閾値TU,TLよりも数値範囲Rから遠ざかる方へ超えたと制御部41が判断した(注意喚起手段が第2の注意喚起を行った)場合に、緊急連絡先へ連絡することを指示する制御信号を携帯端末へ送信するようにしてもよい。このようにすれば、異常が生じた場合に、素早く助けを呼ぶことが可能となる。また、例えば意識が朦朧とする等して、携帯端末を操作することが困難となっても、声さえ出すことができれば助けを呼ぶことができるため、無事に救助される可能性が高まる。
【0064】
また、通信部42を、シートが搭載される乗り物の制御部と通信可能に構成し、検出値が閾値TU,TLよりも数値範囲Rから遠ざかる方へ超えたと制御部41が判断した(注意喚起手段が第2の注意喚起を行った)場合に、以降の運転を制限することを指示する信号(例えば、乗り物が停止中であればエンジンを作動させない信号、乗り物が走行中であれば減速及び停止させる信号を、乗り物の制御部へ送信するようにしてもよい。このようにすれば、異常が発生し、かつ、乗員がアクセルを踏み込んでしまっている場合等であっても、大きな事故が生じるのを抑制することが可能となる。
【0065】
また、本発明の実施に際しては、第一検出部1と第二検出部2をそれぞれ複数備え、各検出部及び各測定部によって得られた4つ以上の情報のうちの少なくとも2つの情報に基づいて、異常の有無を判定するようにしてもよい。このようにすれば、より正確に異常の有無を判断することが可能となる。また、複数の情報の用い方を変えることによって、よりきめ細かい判断が可能となる。
【0066】
また、報知部3や装置本体4の代わりに、
図5に示したように、市販のスマートフォンやタブレット等の携帯端末5を備えるようにしてもよい。
携帯端末5の制御部51及び通信部52は、記憶部53に所定のアプリケーションを予めインストールしておくことにより、上記実施形態の装置本体4の制御部41及び通信部42と同様の機能を有することになる。
また、携帯端末5の表示部54や、図示しないスピーカー、振動機等が、上記実施形態の報知部3と同様の機能を有することになる。
このように構成された異常検知装置10Aは、専用の装置本体や報知部を製造しなくてもよいため、異常検知装置の製造コストを低減することが可能となる。また、画像の表示、音声、振動等、様々な態様で報知を行うことが可能となる。更に、乗員の所持する携帯端末を利用することも可能となる。
【0067】
また、異常検知装置10に、着席までの所定期間に乗員が消費したカロリー(状態の変化)を検出する手段を備え、制御部41が、求めたカロリーに基づいて、数値範囲や閾値を補正するようにしてもよい。このようにした場合、消費カロリーを検出する手段及び制御部41は、本発明における第三検出手段として機能することとなる。
着席するまでの間に、例えば運動をする等してカロリーを消費してきた場合、乗員の肌の色が通常よりも赤みを帯びていたり、心拍数や血圧値が高めになったりしやすいため、その分だけ異常ありと誤って判断してしまう可能性が高い。そこで、このようにすれば、運動によって上昇したと考えられる(状態が変化した)分だけ生体情報の数値範囲を広げたり閾値を離したりすることで、誤判断してしまうことを抑制することが可能となる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態本発明の第1実施形態に係る異常検知装置の概略構成について説明する。
なお、ここでは、第1実施形態との相違点についてのみ説明する(記載を省略した構成や動作は、基本的に第1実施形態と同様である)。
【0069】
本実施形態の異常検知装置10Aは、主に、第一検出部1A及び第二検出部2Aの構成、及び装置本体4Aの行う制御が異なる。
【0070】
本実施形態の第一検出部1Aは、乗員の体温、脈拍、血圧、呼吸数等のうち少なくともいずれかの生体情報を乗員と直接接触することにより検出するものとなっている。
第一検出部1Aは、専用の装置としてもよいし、市販のデジタル式の血圧計や電子体温計等に通信機能を搭載したものとしてもよい。
なお、第一検出部1は、乗り物内に据え付けられるものとしてもよいし、指輪型あるいは腕輪型のような、乗り物から物理的に切り離され乗員が身に着けられるものとしてもよい。
また、脳波や血糖値等、より高度な生体情報を測定するようにしてもよい。
【0071】
第一検出部1Aは、検出した生体情報に基づく第一検出値を求めるようになっている。すなわち、第一検出部1Aは、本発明における第一検出手段をなす。
なお、第一検出値の算出は、後述する装置本体4Aの制御部41で行うようにしてもよい。
また、第一検出部1Aは、求めた第一検出値を装置本体4へ送信するようになっている。
【0072】
また、第一検出部1は、一の乗り物に対して、一つ又は複数備えることが可能である。
第一検出部1の設置箇所は、特に限定されるものでは無いが、例えば、シート200の図示しないアームレストやドア140のアームレスト等、乗員(特に肌の部分)が接し易いに備えるようにしてもよい。
【0073】
本実施形態の第二検出部2Aは、第一検出部1が測定するものと同じ生体情報を、乗員から得られる情報(反射又は透過してきた光や電磁波等)に基づいて間接的に測定するものである。
第二検出部2Aは、専用の装置として構成してもよいし、市販の生体センサー等を用いたものであってもよい。
【0074】
装置本体4Aは、記憶部43Aに記憶された処理プログラムの内容が第1実施形態と異なっている。
具体的には、第1実施形態における画像データから目や頭部を認識し、これらに基づいて第一検出値を求めるためのプログラムを有していない。
その代わりに、第一検出部1から受信した第一検出値を数値範囲Rと比較するためのプログラムが記憶されている。
本実施形態のようにすることで、カメラを用いなくても、低コストで製造でき、かつ判断の迅速な異常検知装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0075】
100 乗り物
110 バックミラー
120 天井
130 インパネ
140 ドア
200 シート
210 シートボトム
220 シートバック
230 ヘッドレスト
10,10A 異常検知装置
1,1A 第一検出部
2,2A 第二検出部
3 報知部
4,4A 装置本体
41 制御部
42 通信部
43,43A 記憶部
5 携帯端末
51 制御部
52 通信部
53 記憶部
54 表示部
R 数値範囲
TL 下閾値
TU 上閾値