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  • 特許-架橋性組成物および成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】架橋性組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20240710BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20240710BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20240710BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240710BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K3/34
C08K3/22
C08L27/16
C08L27/18
C08K5/14
F01N3/08 B ZAB
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023119724
(22)【出願日】2023-07-24
(65)【公開番号】P2024016005
(43)【公開日】2024-02-06
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022118090
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 一良
(72)【発明者】
【氏名】竹村 光平
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094370(JP,A)
【文献】特表2014-504674(JP,A)
【文献】国際公開第03/051987(WO,A1)
【文献】特開2016-131953(JP,A)
【文献】特表2017-500397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
F01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品を形成するために用いられる架橋性組成物であって、
フッ素ゴム、ならびに、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する
架橋性組成物。
【請求項2】
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムおよびテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の架橋性組成物。
【請求項3】
添加剤が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、および、酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項4】
添加剤が、酸化アルミニウムである請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項5】
添加剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.5~10質量部である請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項6】
架橋剤をさらに含有する請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項7】
架橋剤が、有機パーオキサイドである請求項6に記載の架橋性組成物。
【請求項8】
多官能架橋助剤をさらに含有する請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項9】
アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、および、アルカリ土類金属の塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物を含有するか、または、含有しておらず、前記金属化合物の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0~1質量部である請求項1または2に記載の架橋性組成物。
【請求項10】
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品であって、請求項1または2に記載の架橋性組成物を架橋することにより得られる成形品。
【請求項11】
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する接触面を有しており、少なくとも前記接触面が、請求項1または2に記載の架橋性組成物を架橋することにより得られる成形品により構成されている成形品。
【請求項12】
尿素SCRシステムを構成する部品である請求項10に記載の成形品。
【請求項13】
フッ素ゴムおよび添加剤を含有しており、
添加剤が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムおよびテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である架橋性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、架橋性組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、尿素およびアンモニアの少なくとも1つに接触される表面を有する、アンモニアおよび/または尿素接触向けの構成要素であって、表面が、フルオロポリマーおよびハイドロタルサイト化合物を含む、フルオロエラストマー組成物を含む、構成要素が記載されている。
【0003】
特許文献2には、ガラス転移温度が25℃以下である含フッ素ポリマーと架橋剤とを含む架橋性組成物を架橋して得られ、前記含フッ素ポリマーは、ビニリデンフルオライド及び下記一般式(1):
CH=CFRf (1)
(式中、Rfは炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基である。)
で表される含フッ素単量体(1)からなる共重合体であることを特徴とする尿素SCRシステム用部品が記載されている。
【0004】
特許文献3には、フッ素ゴム、並びに、ケイ酸アルミニウムおよび合成ケイ酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするフッ素ゴム組成物が記載されている。
【0005】
特許文献4には、含フッ素エラストマー成分100重量部に対して、一次平均粒径が5μm以下の無機フィラーを0.5~100重量部含む架橋性含フッ素エラストマー組成物を架橋して得られる架橋された含フッ素エラストマー成形品であって、無機フィラーが、アルミニウムを含有する無機フィラーを少なくとも1種含むエラストマー成形品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2017-500397号公報
【文献】特開2016-131953号公報
【文献】特開2019-094370号公報
【文献】国際公開第2003/051987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示では、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品であって、耐尿素水性および耐アンモニア水性に優れるとともに、耐酸性にも優れる成形品を得ることができる架橋性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品を形成するために用いられる架橋性組成物であって、フッ素ゴム、ならびに、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する架橋性組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品であって、耐尿素水性および耐アンモニア水性に優れるとともに、耐酸性にも優れる成形品を得ることができる架橋性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】尿素SCRシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
特許文献1には、尿素および/またはアンモニアに接触させた場合でも耐性を有するフルオロエラストマー組成物として、フルオロポリマーおよびハイドロタルサイト化合物を含むフルオロエラストマー組成物が提案されている。
【0013】
フッ素ゴムにハイドロタルサイト化合物を配合すると、得られる成形品の耐酸性が悪化することが明らかになった。アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品は、たとえば、アンモニアまたは尿素を利用する製造システムにおいて用いる成形品(たとえば、反応容器、管、シール材)として用いることができる。アンモニアまたは尿素を利用する製造システムにおいては、尿素が加熱されることによりアンモニアが発生する場合があるし、薬品をアンモニアまたは尿素から酸に変更する場合もある。耐酸性に劣る従来の成形品は、耐尿素水性および耐アンモニア水性に優れていたとしても、利用する薬品に酸が含まれるか、利用する薬品が酸に変更され得る製造システムの一部においては用いることができず、その部分には別の材料から形成された成形品を用いる必要が生じる。このことは、コストを増加させるだけでなく、製造システムの構築や管理の負担をも増大させる。したがって、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品を形成するために用いられる架橋性組成物であって、耐尿素水性および耐アンモニア水性に優れるとともに、耐酸性にも優れる成形品を得ることができる架橋性組成物が求められる。
【0014】
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴム、ならびに、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する。本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴムに、これらの添加剤を配合したものであることから、本開示の架橋性組成物を架橋して成形品とすることによって、耐尿素水性および耐アンモニア水性に優れるとともに、耐酸性にも優れる成形品を得ることができる。
【0015】
本開示において、「耐尿素水性」とは、尿素水と接触しても成形品の体積および質量が変化しにくい性質を意味する。尿素には、尿素およびポリ尿素が含まれる。尿素は、尿素水であってよい。
【0016】
本開示において、「耐アンモニア水性」とは、アンモニア水と接触しても成形品の体積および質量が変化しにくい性質を意味する。アンモニアには、アンモニア、水酸化アンモニウムおよびアンモニウムアルコキシドが含まれる。アンモニアは、ガス状であっても、液状であってもよい。アンモニアは、アンモニア水であってよい。
【0017】
本開示において、「耐酸性」とは、酢酸などの酸と接触しても成形品の体積および質量が変化しにくい性質を意味する。
【0018】
(フッ素ゴム)
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴムを含有する。本開示において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度20℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度20℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
【0019】
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
【0020】
本開示において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
【0021】
本開示において、パーフルオロゴム(パーフルオロエラストマー)とは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
【0022】
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
【0023】
架橋部位を与えるモノマーとは、架橋剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
【0024】
本開示で用いるフッ素ゴムとしては、特に限定されず、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムなどが挙げられる。また、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム型塩を用いた架橋が可能なフッ素ゴムであってもよい。
【0025】
ポリオール架橋可能なフッ素ゴムは、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムである。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、ポリオール架橋可能な部分フッ素化ゴムが好ましい。ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては、特に限定されず、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴムが挙げられる。
【0026】
フッ素ゴムとしては、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができることから、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムが好ましい。パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとしては、特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ素ゴムが有するヨウ素原子、臭素原子、CN基;フッ素ゴムの主鎖または側鎖に存在する炭素-炭素間の不飽和結合;などが挙げられる。
【0027】
フッ素ゴムがヨウ素原子を含有する場合のヨウ素含有率としては、好ましくは0.001~10質量%であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0028】
フッ素ゴムは、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。フッ素ゴムとしては、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができ、コスト面でも有利であることから、部分フッ素化ゴムが好ましく、パーオキサイド架橋可能な部分フッ素化ゴムがより好ましい。以下では、フッ素ゴムの単量体組成について詳述するが、以下で詳述する単量体組成は、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムおよびポリオール架橋可能なフッ素ゴムの単量体組成として好適であり、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムの単量体組成として特に好適である。
【0029】
部分フッ素化ゴムとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)および一般式:CF=CF-Rf(式中、Rfは-CFまたは-ORf(Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体に基づく単量体単位を含有することが好ましい。部分フッ素化ゴムは、なかでも、VdF単位またはTFE単位を含有することが好ましい。
【0030】
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができることから、なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
フッ素ゴムとしては、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができることから、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴム、および、パーフルオロゴムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムおよびテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0032】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる共重合体が好ましく、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる共重合体がより好ましい。
【0033】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(100):CHX101=CX102Rf101(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(170):CH=CH-(CF-X171(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。
【0034】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)がより好ましい。これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0035】
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンまたは1,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましく、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンがより好ましい。
【0036】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、なかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル、CTFEおよび一般式(100)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテルおよび2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0037】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VdF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VdF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VdF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VdF/PMVE/TFE系ゴム、VdF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。これらのなかでも、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴムおよびVdF/2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
【0038】
VdF/HFP系ゴムとしては、VdF/HFPのモル比が45~85/55~15であるものが好ましく、より好ましくは50~80/50~20であり、さらに好ましくは60~80/40~20である。
【0039】
VdF/HFP/TFE系ゴムとしては、VdF/HFP/TFEのモル比が40~80/10~35/10~35のものが好ましい。
【0040】
VdF/2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン系ゴムとしては、VdF/2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンのモル比が45~85/55~15であるものが好ましく、より好ましくは50~80/50~20であり、さらに好ましくは60~80/40~20である。
【0041】
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体が好ましい。
【0042】
パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(11):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf111は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
一般式(12):CF=CFOCFORf121
(式中、Rf121は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー
一般式(13):CF=CFO(CFCF(Y131)O)(CF
(式中、Y131はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
【0043】
一般式(11)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0044】
一般式(12)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
一般式(13)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
TFE/PMVE共重合体の組成は、好ましくは45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは55~80/20~45であり、さらに好ましくは55~70/30~45である。
【0047】
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の組成は、好ましくは45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、さらに好ましくは55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
【0048】
TFE/炭素数が4~12の一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー共重合体の組成は、好ましくは50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは60~88/12~40であり、さらに好ましくは、65~85/15~35である。
【0049】
TFE/炭素数が4~12の一般式(11)、(12)又は(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の組成は、好ましくは50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
【0050】
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
【0051】
パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(13)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(13)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー共重合体、および、TFE/一般式(11)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0052】
パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-8118号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
【0053】
フッ素ゴムは、架橋部位を与えるモノマー由来の重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋部位を与えるモノマーとしては、たとえば特公平5-63482号公報、特開平7-316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6-ジヒドロ-6-ヨード-3-オキサ-1-ヘキセン)やパーフルオロ(5-ヨード-3-オキサ-1-ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4-505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4-505345号公報、特表平5-500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。
【0054】
フッ素ゴムは、重合時に連鎖移動剤を使用して得られたものであってもよい。上記連鎖移動剤として、臭素化合物またはヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物またはヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物またはヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物またはヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物またはヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
【0055】
フッ素ゴムのフッ素含有率は、好ましくは55~73質量%であり、より好ましくは61質量%以上であり、さらに好ましくは63質量%以上であり、尚さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは67質量%以上であり、最も好ましくは69質量%以上であり、より好ましくは71質量%未満である。フッ素ゴムのフッ素含有率は、19F-NMRにて測定されたフッ素ゴムの組成から計算によって求めることができる。
【0056】
フッ素ゴムの121℃におけるムーニー粘度(ML1+10(121℃))は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また200以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることが特に好ましい。ムーニー粘度は、ASTM-D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定する値である。
【0057】
(添加剤)
本開示の架橋性組成物は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する。
【0058】
添加剤としては、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができることから、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、および、酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ケイ酸アルミニウムおよび酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、酸化アルミニウムがさらに好ましい。
【0059】
ケイ酸アルミニウムは、合成ケイ酸アルミニウムであってもよいし、天然ケイ酸アルミニウムであってもよい。ケイ酸アルミニウムとしては、たとえば、下記式:
Al・9SiO・mH
(式中、m≧0である。)で示される化合物が挙げられる。
【0060】
ケイ酸マグネシウムは、合成ケイ酸マグネシウムであってもよいし、天然ケイ酸マグネシウムであってもよい。ケイ酸マグネシウムとしては、たとえば、下記式:
2MgO・6SiO・mH
(式中、m≧0である。)で示される化合物が挙げられる。
【0061】
酸化アルミニウム(アルミナ、Al)には、様々な結晶形態および形状のものが存在するが、本開示においては、酸化アルミニウムの結晶形態および形状は問わない。酸化アルミニウムは、たとえば、α,β,γ,δ,ζ,η,θ,κ,χ,ρ型のアルミナであってよく、また、非晶質アルミナであってもよいが、なかでも、α型およびθ型アルミナから選択される少なくとも1種を用いると、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができる。酸化アルミニウムとしては、なかでも、θ型アルミナがより好ましい。酸化アルミニウムの形状は限定されない。酸化アルミニウムは、たとえば、板状アルミナ、多面体アルミナ、カードハウスアルミナまたは粒状アルミナであってよい。また、酸化アルミニウムとして、仮焼アルミナを用いることもできるし、溶融アルミナを用いることもできる。
【0062】
添加剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する架橋性組成物は、新規な架橋性組成物である。本開示は、フッ素ゴムおよび添加剤を含有しており、添加剤が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種である架橋性組成物にも関する。
【0063】
本開示の架橋性組成物において、添加剤の含有量は、耐尿素水性、耐アンモニア水性および耐酸性に一層優れる成形品を得ることができることから、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部であり、より好ましくは1.0質量部以上であり、より好ましくは8質量部以下であり、さらに好ましくは6質量部以下であり、特に好ましくは4質量部以下である。
【0064】
(架橋剤)
本開示の架橋性組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤としては、ポリオール架橋、ポリアミン架橋及びパーオキサイド架橋で通常使用される架橋剤が挙げられる。架橋剤としては、ポリヒドロキシ化合物、ポリアミン化合物、および有機パーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、有機パーオキサイドがより好ましい。部材の耐酸性を重視する場合はパーオキサイド架橋が好適であるが、フッ素ゴム架橋物を他材料と加硫接着させることにより積層体や複合部品を形成する場合であって、パーオキサイド架橋では十分に加硫接着させることが難しい場合には、ポリオール架橋を選択することにより、耐酸性および接着性を両立させる必要が生じる場合がある。
【0065】
本開示の架橋性組成物が、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムを含有する場合は、架橋剤として、ポリヒドロキシ化合物を含有することが好ましい。本開示の架橋性組成物が、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムを含有する場合は、架橋剤として、有機パーオキサイドを含有することが好ましい。また、フッ素ゴムとして、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム型塩を用いた架橋が可能なフッ素ゴムを用いる場合には、架橋剤としてピリジニウム塩を用いることができる。さらにフッ素ゴムとして、特表2017-538023号公報に記載の少なくとも1個のオレフィン系水素を有する末端オレフィンを含む硬化剤を用いた架橋が可能なフッ素ゴムを用いる場合には、架橋剤として、少なくとも1個のオレフィン系水素を有する末端オレフィンを用いることができる。フッ素ゴムとして、国際公開第2020/245683号に記載のフタロニトリル化合物を用いた架橋が可能なフッ素ゴムを用いる場合には、架橋剤として、フタロニトリル化合物を用いることができる。
【0066】
また、本開示の架橋性組成物は、架橋促進剤、塩基性化合物、多官能架橋助剤などを含有してもよい。
【0067】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。
【0068】
ポリヒドロキシ化合物の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0069】
ポリヒドロキシ化合物などの架橋剤を他の化合物と混合して用いることができる。架橋剤を含有する混合物としては、たとえば、架橋剤と架橋促進剤との固溶体や架橋剤とそれを溶解させることができる化合物との混合物などが挙げられる。固溶体としては、架橋剤と第4級ホスホニウム塩との固溶体が好ましい。第4級ホスホニウム塩としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドが好ましい。
【0070】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、本開示の架橋性組成物は、架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0071】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0072】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムアイオダイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムメチルスルフェート、8-エチル-1,8―ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-プロピル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムブロミド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ドデシル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-エイコシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-テトラコシル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライド(以下、DBU-Bとする)、8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムハイドロキサイド、8-フェネチル-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7―ウンデセニウムクロライド、8-(3-フェニルプロピル)-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、DBU-Bが好ましい。
【0073】
第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル-2-メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性及び諸物性が優れる点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0074】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、特開平11-147891号公報に開示されている、架橋剤としてビスフェノールAFを含有する含フッ素エラストマー用加硫促進剤、特開2010-150563号公報に記載されている、架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を含有する第4級ホスホニウム塩とポリヒドロキシ化合物の付加物を用いることもできる。架橋剤および架橋促進剤としてこれらの化合物(混合物)を用いる場合、上記架橋剤の含有量(質量部)は、フッ素ゴム100質量部に対する化合物の含有量から、化合物中の架橋促進剤の含有量を除いた値である。
【0075】
架橋促進剤の含有量は特に限定されないが、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.5~1質量部がより好ましい。
【0076】
架橋剤および架橋促進剤として、特開平11-147891号公報に開示されている含フッ素エラストマー用加硫促進剤、特開2010-150563号公報に記載されている第4級ホスホニウム塩とポリヒドロキシ化合物の付加物を用いる場合、上記架橋促進剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対するこれらの化合物の含有量から、化合物中の架橋剤の含有量を除いた値である。
【0077】
ピリジニウム塩としては、特表2018-514627号公報に記載のピリジニウム塩が挙げられる。ピリジニウム塩の好適な含有量として、特表2018-514627号公報に記載の含有量を、本開示の架橋性組成物にも適用することができる。
【0078】
架橋剤がピリジニウム塩である場合、本開示の架橋性組成物は、塩基性化合物を含有することが好ましい。塩基性化合物としては、特表2018-514627号公報に記載の塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物の好適な含有量として、特表2018-514627号公報に記載の含有量を、本開示の架橋性組成物にも適用することができる。
【0079】
有機パーオキサイドとしては、通常パーオキサイド架橋に用いられている架橋剤であればとくに限定されるものではなく、一般には、熱や酸化還元系の存在で容易にパーオキシラジカルを発生するものがよい。具体的には、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3が好ましい。
【0080】
有機パーオキサイドの含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、1.0~5質量部がより好ましい。
【0081】
架橋剤が有機パーオキサイドである場合、本開示の架橋性組成物は、多官能架橋助剤を含有することが好ましい。多官能架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。フッ素ゴムと多官能架橋助剤とを混練りする際には、多官能架橋助剤を不活性無機粉体などに含浸させたものを用いてもよい。
【0082】
多官能架橋助剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0083】
(その他の成分)
本開示の架橋性組成物は、本開示の架橋性組成物が奏する所望の効果を損なわない範囲で、受酸剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。受酸剤としては、たとえば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト、酸化ビスマス、酸化亜鉛等の金属酸化物、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、メタケイ酸ナトリウム等の特表2011-522921号公報に記載されたアルカリ金属ケイ酸塩、特開2003-277563号公報に記載された弱酸の金属塩等が挙げられる。弱酸の金属塩としては、Ca、Sr、Ba、Na、Kの炭酸塩、安息香酸塩、蓚酸塩、亜リン酸塩などが挙げられる。
【0084】
受酸剤としては、金属酸化物、金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、ハイドロタルサイト、および弱酸の金属塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0085】
本開示の架橋性組成物の一実施形態においては、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、および、アルカリ土類金属の塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物を含有するか、または、含有しておらず、前記金属化合物の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0~1質量部である。本開示の架橋性組成物がこのような構成を備える場合、得られる成形品の耐酸性が一層向上する傾向がある。前記金属化合物の含有量は、好ましくは0.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以下であり、含まないことが特に好ましい。
【0086】
本開示の架橋性組成物の一実施形態においては、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの受酸剤を含有するか、または、含有しておらず、受酸剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0~1質量部である。本開示の架橋性組成物がこのような構成を備える場合、得られる成形品の耐酸性が一層向上する傾向がある。
【0087】
本開示の架橋性組成物には、必要に応じてフッ素ゴム架橋性組成物に配合される通常の添加物、たとえば充填剤(カーボンブラック、瀝青炭、硫酸バリウム、珪藻土、焼成クレー、タルク等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、粘着性付与剤(クマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂等)、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、発泡剤、国際公開第2012/023485号に記載の酸化防止剤などの各種添加剤を配合することができ、前記のものとは異なる常用の架橋剤、架橋促進剤を1種またはそれ以上配合してもよい。
【0088】
充填剤としては、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;珪藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤、ポリテトラフルオロエチレン、含フッ素熱可塑性樹脂、マイカ、シリカ、セライト、クレー等が挙げられる。
【0089】
カーボンブラックなどの充填剤の含有量は、特に限定されるものではないが、フッ素ゴム100質量部に対して0~300質量部であることが好ましく、1~150質量部であることがより好ましく、2~100質量部であることが更に好ましく、2~75質量部であることが特に好ましい。
【0090】
ワックス等の加工助剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることが更に好ましい。加工助剤、可塑剤や離型剤を使用すると、得られる成形品の機械物性やシール性が下がる傾向があるので、目的とする得られる成形品の特性が許容される範囲でこれらの含有量を調整する必要がある。
【0091】
本開示の架橋性組成物は、ジアルキルスルホン化合物を含有してもよい。ジアルキルスルホン化合物としては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジブチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジフェニルスルホン、スルホラン等が挙げられる。ジアルキルスルホン化合物の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0~5質量部であることがさらに好ましく、0~3質量部であることが特に好ましい。本開示の架橋性組成物がジアルキルスルホン化合物を含有する場合には、ジアルキルスルホン化合物の含有量の下限値は、たとえば、フッ素ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であってよい。
【0092】
本開示の架橋性組成物は、フッ素ゴム、添加剤、架橋剤、多官能架橋助剤、架橋促進剤、充填剤などを、一般に使用されているゴム混練り装置を用いて混練りすることにより得られる。ゴム混練り装置としては、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー、二軸押し出し機などを用いることができる。
【0093】
(成形品)
本開示の架橋性組成物を架橋することにより成形品を得ることができる。本開示の架橋性組成物は、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品を得るために用いられる。また、本開示は、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触した場合の体積変化および質量変化が抑制された成形品を得るための架橋性組成物の使用にも関する。
【0094】
本開示の架橋性組成物を架橋する方法としては、プレス架橋、スチーム架橋、オーブン架橋など通常用いられている方法はもちろんのこと、常圧、加圧、減圧下においても、また、空気中においても、どのような条件下においても架橋反応を行うことができる。架橋条件としては、使用する架橋剤の種類などにより適宜決めればよいが、通常、150~300℃の温度で、1分~24時間加熱を行う。プレス架橋、スチーム架橋の場合、150~180℃の温度で行うことが好ましく、架橋時間は、少なくとも架橋時間T90の時間まで行えばよいが、例えば1分~2時間である。その後(プレス架橋又はスチーム架橋を行った後)のオーブン架橋の場合、170℃~250℃の温度で行うことが好ましいが、必ずしも行う必要はなく、オーブン架橋の架橋時間は例えば、0~48時間であることが好ましい。
【0095】
本開示の架橋性組成物を成形することにより成形品を得てもよい。成形は従来公知の方法により行うことができ、たとえば、圧縮成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形などが挙げられる。
【0096】
成形品の使用形態としては、たとえば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。シール材としては、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、非粘着性が要求される用途に用いることができる。
【0097】
成形品は、また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
【0098】
上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、たとえば、四角、O字、へルールなどの形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字などの異形状であってもよい。
【0099】
本開示の成形品の一実施形態においては、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する接触面を有しており、少なくとも接触面が、架橋性組成物を架橋することにより得られる成形品により構成されている。すなわち、架橋性組成物から得られる成形品は、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品のうち、少なくともアンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する接触面を形成するために使用することができる。
【0100】
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品には、標準的な使用中、アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する可能性がある成形品(たとえば、容器、ホース、シール、ガスケットなど)が含まれる。これらの成形品としては、たとえば、自動車の排気システムにおいて用いる成形品、アンモニアまたは尿素を利用する製造システムにおいて用いる成形品(たとえば、反応容器、管、シール材)が挙げられる。
【0101】
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品は、アンモニアまたは尿素の保管、供給、輸送、反応、計量および管理のために使用することができる。アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品としては、たとえば、タンク、ホースおよびタンクキャップシール;ホースまたは管などの供給用構成要素;バルブ;ダイアフラム;注入用構成要素;反応用構成要素(たとえば、SCR);反応用容器(すなわち、反応が起こる容器);シャフトシール;およびO-リングなどの接続用構成要素などが挙げられる。
【0102】
成形品は、尿素SCRシステムを構成する部品として特に好適に利用できる。
【0103】
尿素SCRシステムは、ディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物を、尿素水を使用して浄化する排気ガス浄化装置である。尿素SCRシステムを構成する部品は、尿素SCRシステムに用いられるものであり、たとえば、シール材、ガスケット材、パイプ又はタンクであってよい。
【0104】
図1に尿素SCRシステムを構成する部品を使用した尿素SCRシステムの一例を示す。尿素SCRシステム10は、エンジン(図示せず)から排出される排気ガスを外部に放出するための排気パイプ12を含む。エンジン排気パイプ12には、酸化触媒11、SCR触媒13、及び、酸化触媒14が備えられている。尿素水18は、タンク15に貯蔵されており、ポンプ16及び噴射装置17によって、排気パイプ12中に噴霧され、高温下で加水分解されることによりアンモニアガスに変わる。エンジンから排出された窒素酸化物を含む排気ガスは、酸化触媒11を通過したのち、尿素水(アンモニアガス)と共にSCR触媒13に至り、排気ガス中の窒素酸化物が選択的に還元されて、浄化される。浄化された排気ガスは、酸化触媒14を通過した後、外部に排出される。酸化触媒11の直後に、排気ガス中の微粒子状物質(PM)を捕集するためのDPF(Deiesel particulate filter(ディーゼル微粒子捕集フィルター):図示せず)を備えることも可能である。
【0105】
尿素SCRシステムを構成する部品は、アンモニアおよび尿素の一方または両方と接触する部品として好適に使用することができ、アンモニアおよび尿素の一方または両方と接触しても、体積および質量が変化しにくく、高温環境下で使用されても、引張強さが低下しにくい。
【0106】
従って、尿素SCRシステムを構成する部品は、タンク15から排気パイプ12まで尿素水18を供給するための尿素水供給パイプ19として使用することもできるし、尿素水供給パイプ19をタンク15、ポンプ16又は噴射装置17と接続する際に使用するシール材(図示せず)としても使用可能であり、各種センサー用のシール材、ガスケット材としても使用可能である。尿素SCRシステムを構成する部品を継ぎ手のシール材(図示せず)として使用し、複数のパイプを接続して、尿素水供給パイプ19とすることも好適である。
【0107】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0108】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品を形成するために用いられる架橋性組成物であって、
フッ素ゴム、ならびに、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、および、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含有する
架橋性組成物が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
フッ素ゴムが、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムおよびテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種である第1の観点による架橋性組成物が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
添加剤が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、および、酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種である第1または第2の観点による架橋性組成物が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
添加剤が、酸化アルミニウムである第1~第3のいずれかの観点による架橋性組成物が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
添加剤の含有量が、フッ素ゴム100質量部に対して、0.5~10質量部である第1~第4のいずれかの観点による架橋性組成物が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
架橋剤をさらに含有する第1~第5のいずれかの観点による架橋性組成物が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
架橋剤が、有機パーオキサイドである第6の観点による架橋性組成物が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
多官能架橋助剤をさらに含有する第1~第7のいずれかの観点による架橋性組成物が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、および、アルカリ土類金属の塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物を含有するか、または、含有しておらず、前記金属化合物の含有量が、フッ素ゴム00質量部に対して、0~1質量部である第1~第8のいずれかの観点による架橋性組成物が提供される。
<10> 本開示の第10の観点によれば、
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する成形品であって、第1~第9のいずれかの観点による架橋性組成物を架橋することにより得られる成形品が提供される。
<11> 本開示の第11の観点によれば、
アンモニアおよび尿素の一方または両方に接触する接触面を有しており、少なくとも前記接触面が、第1~第9のいずれかの観点による架橋性組成物を架橋することにより得られる成形品により構成されている成形品が提供される。
<12> 本開示の第12の観点によれば、
尿素SCRシステムを構成する部品である第10または第11の観点による成形品が提供される。
<13> 本開示の第13の観点によれば、
フッ素ゴムおよび添加剤を含有しており、
添加剤が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種である
架橋性組成物が提供される。
【実施例
【0109】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0111】
<フッ素ゴムの単量体組成>
19F-NMR(Bruker社製AC300P型)を用いて測定した。
【0112】
<ヨウ素含有率>
NaCOとKCOとを1対1(重量比)で混合し、得られた混合物を純水20mlに溶解することにより、吸収液を調製した。試料(フッ素ゴム)12mgにNaSOを5mg混ぜて混合物を調製し、石英製のフラスコ中、酸素中で燃焼させ、発生した燃焼ガスを吸収液に導入した。得られた吸収液を30分間放置した後、吸収液中のヨウ素イオンの濃度を、島津20Aイオンクロマトグラフを用いて測定した。ヨウ素イオン0.5ppmを含むKI標準溶液および1.0ppmを含むKI標準溶液を用いて作成した検量線を用いて、ヨウ素イオンの含有率を決定した。
【0113】
<ムーニー粘度>
ASTM D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定した。測定温度は121℃である。
【0114】
<融解熱>
示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e、もしくは、日立ハイテクサイエンス社製、X-DSC7000)を用い、試料10mgを20℃/分で昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさから融解熱を算出した。
【0115】
<架橋特性(最大トルク(MH)、最適架橋時間(T90))>
架橋性組成物について、一次架橋時に加硫試験機(MDR H2030、エムアンドケー社製)を用いて、表1に記載の条件で架橋曲線を求め、トルクの変化より、最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を求めた。
【0116】
<引張強さおよび切断時伸び>
厚さ2mmの架橋シートを用いて、ダンベル6号形状の試験片を作製した。得られた試験片および引張試験機(エー・アンド・デイ社製テンシロンRTG-1310)を使用して、JIS K6251:2010に準じて、500mm/分の条件下、23℃における引張強さおよび切断時伸びを測定した。
【0117】
<硬さ>
厚さ2mmの架橋シートを3枚重ねたものを用いて、タイプAデュロメーターを使用して、JIS K6253-3:2012に準拠して、硬さ(Peak値、3秒後の値)を測定した。
【0118】
<耐尿素水性>
尿素水(新日本化成株式会社製、アドブルー(登録商標))中に、厚さ2mmの架橋シートを90℃で168時間浸漬させ、架橋シートを回収した。浸漬前後の架橋シートの比重と質量を測定して、体積変化率および質量変化率を以下の式に従って算出した。比重は、自動比重計DMA-220H(新光電子社製)を用いて測定した。
体積変化率(%)={[(浸漬後の架橋シートの質量)/(浸漬後の架橋シートの比重)]-[(浸漬前の架橋シートの質量)/(浸漬前の架橋シートの比重)]}/[(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの比重)]×100
質量変化率(%)=[(浸漬後の架橋シートの質量)-(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの質量)×100
【0119】
<耐アンモニア水性>
10質量%アンモニア水中に、厚さ2mmの架橋シートを40℃で168時間浸漬させ、架橋シートを回収した。浸漬前後の架橋シートの比重と質量を測定して、体積変化率および質量変化率を以下の式に従って算出した。比重は、自動比重計DMA-220H(新光電子社製)を用いて測定した。
体積変化率(%)={[(浸漬後の架橋シートの質量)/(浸漬後の架橋シートの比重)]-[(浸漬前の架橋シートの質量)/(浸漬前の架橋シートの比重)]}/[(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの比重)]×100
質量変化率(%)=[(浸漬後の架橋シートの質量)-(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの質量)×100
【0120】
<耐酸性>
1N酢酸水溶液中に、厚さ2mmの架橋シートを90℃で72時間浸漬させ、架橋シートを回収した。浸漬前後の架橋シートの比重と質量を測定して、体積変化率および質量変化率を以下の式に従って算出した。比重は、自動比重計DMA-220H(新光電子社製)を用いて測定した。
体積変化率(%)={[(浸漬後の架橋シートの質量)/(浸漬後の架橋シートの比重)]-[(浸漬前の架橋シートの質量)/(浸漬前の架橋シートの比重)]}/[(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの比重)]×100
質量変化率(%)=[(浸漬後の架橋シートの質量)-(浸漬前の架橋シートの質量)]/(浸漬前の架橋シートの質量)×100
【0121】
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。
フッ素ゴムA
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン:50/20/30(モル比)
ヨウ素含有率:0.25質量%
ムーニー粘度(ML1+10(121℃)):25
融解熱:セカンドランでは認めず
【0122】
カーボンブラック:MTカーボン(NSA=8m/g、DBP吸油量=43ml/100g)
パーオキサイド:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
多官能架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート
【0123】
添加剤-A:合成ケイ酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製 キョーワード600)
添加剤-B:合成ケイ酸アルミニウム(協和化学工業株式会社製 キョーワード700)
添加剤-C:酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 AKP-G07 θ型結晶)
添加剤-D:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業ノイシリンUFL2)
添加剤-E:板状アルミナ(DIC株式会社製AP-05 α型結晶)
添加剤-F:酸化ジルコニウム(新日本電工株式会社製N-PC)
添加剤-G:ハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製 DHT-4A)
添加剤-H:酸化亜鉛(東京化成株式工業会社より購入)
【0124】
実施例1~6および比較例1~3
表1の処方に従ってそれぞれの成分を配合し、オープンロール上で混練りして、架橋性組成物を調製した。得られた架橋性組成物の最大トルク(MH)および最適架橋時間(T90)を表1に示す。次に、表1に記載の条件の一次架橋(プレス架橋)、および、表1に記載の条件の二次架橋(オーブン架橋)により、架橋性組成物を架橋させ、架橋シート(厚さ2mm)を得た。得られた架橋シートの評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
図1