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特許7518453パターン膜付き基板の製造方法および含フッ素共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】パターン膜付き基板の製造方法および含フッ素共重合体
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/20 20230101AFI20240710BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20240710BHJP
   C08F 236/16 20060101ALI20240710BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240710BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20240710BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240710BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20240710BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240710BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240710BHJP
   H10K 50/10 20230101ALN20240710BHJP
   H10K 59/10 20230101ALN20240710BHJP
【FI】
H10K71/20
C08F220/22
C08F236/16
G03F7/033
G03F7/40
H10K59/122
H10K71/40
H10K77/10
H10K85/10
H10K50/10
H10K59/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023166327
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020520371の分割
【原出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2023178312
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2018098679
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】兼子 譲
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 佳子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 明日香
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146444(JP,A)
【文献】特開2017-049327(JP,A)
【文献】特開2004-111220(JP,A)
【文献】特開2015-038976(JP,A)
【文献】特開2003-300939(JP,A)
【文献】特開2005-008863(JP,A)
【文献】国際公開第2004/073566(WO,A1)
【文献】特公昭50-001004(JP,B1)
【文献】特開2003-238620(JP,A)
【文献】米国特許第03607850(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/20
C08F 220/22
C08F 236/16
G03F 7/033
G03F 7/40
H10K 59/122
H10K 71/40
H10K 77/10
H10K 85/10
H10K 50/10
H10K 59/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有するパターン膜が基板上に形成されるパターン膜付き基板であり、前記パターン膜が含フッ素共重合体を含み、前記含フッ素共重合体が式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む、パターン膜付き基板を、
UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄して第1のパターン膜付き基板を得る洗浄工程と、
前記第1のパターン膜付き基板を加熱して第2のパターン膜付き基板を得る加熱工程とを含む、パターン膜付き基板の製造方法。
【化1】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基または炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基あり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子である。)
【請求項2】
前記含フッ素共重合体が、式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含む、請求項1に記載の製造方法。
【化2】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基または炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基あり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【請求項3】
前記加熱工程では、50℃以上、350℃以下の温度で10秒以上、前記第1のパターン膜付き基板を加熱する、請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2のパターン膜付き基板がインクジェット法で表示素子を形成するための基板である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQがパーフルオロヘキシルエチル基であり、Xがカルボニル基である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記式(A)で表される繰り返し単位が式(A-1)で表される繰り返し単位である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【化3】
(式(A-1)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子、Fはフッ素原子である。)
【請求項9】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基またはカルボキシエチレン基である、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基またはカルボキシエチレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZが炭素数1~20のアルコキシ基、セトキシ基またはビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF である、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZが、ビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF である、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基、パラフェニレンカルボニル基またはパラフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF である、請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
下記の式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む、含フッ素共重合体。
【化4】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基または炭素数1~20のアルコキシ基あり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子である。)
【請求項14】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF である、請求項13に記載の含フッ素共重合体。
【請求項15】
下記の式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含む、含フッ素共重合体。
【化5】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基または炭素数1~20のアルコキシ基あり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【請求項16】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがカルボキシエチレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であ、請求項15に記載の含フッ素共重合体。
【請求項17】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基、パラフェニレンカルボニル基またはパラフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であり、Zがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF である、請求項15に記載の含フッ素共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パターン膜付き基板の製造方法および含フッ素共重合体に関する。本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法は、例えば、インクジェット法による表示素子の製造で使用することができる。表示素子としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、有機ELディスプレイ)、マイクロ発光ダイオードディスプレイ(以下、マイクロLEDディスプレイ)、または量子ドットディスプレイ等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法を用い、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、または量子ドットディスプレイ等の表示素子を製造することが知られている。
【0003】
インクジェット法を用いたこれらの表示素子の製造方法には、基板上に膜の凹凸で形成されたパターンの凹部にノズルよりインクの液滴を滴下させそれを固化させる方法、または、インクに濡れる部位である親液部とインクを弾く部位である撥液部として、予め基板上に形成されたパターン膜上にインクの液滴を滴下させ、親液部にインクを付着させる方法を挙げることができる。
【0004】
凹凸を設けたパターン膜の窪み(凹部)にノズルよりインクの液滴を滴下させそれを固化させる方法において、このようなパターン膜の作製には、基板上に形成したレジスト膜の表面をパターン状に露光することで、露光部と未露光部からなるパターンを形成し、いずれかの部位を現像液に溶解させレジスト膜に凹凸を得るフォトリソグラフィ法、または印刷技術を用いて基板上に凹凸を有するパターン膜を形成するインプリント法を採用することがきる。このような凹凸を有するパターン膜において、凹部は基板表面が露出していることが好ましく、露出した基板表面は親液性であることが好ましい。
【0005】
インクジェット法において、凹凸を有するパターン膜の凸部はバンクと呼ばれ、バンクは、インクジェットによりパターン膜の凹部にインクを滴下した際、インクが混じらないための障壁として働く。
【0006】
例えば、特許文献1には、インクジェット法による有機ELディスプレイの製造において、インクとして用いる有機EL素子用組成物が開示されている。特許文献1には、基板に予めバンクを作製し、発光層となるインク(有機EL素子用組成物)を滴下し有機ELディスプレイ用の表示素子を製造することが記載されている。
【0007】
特許文献2には、遮光性部位の形成された光透過性基板上の遮光部位上に、表面張力または臨界表面張力が2.5×10-2[N/m]以下の撥水・撥油性化合物を含有する感光性化合物層をフォトリソグラフィ法により形成した後、インクジェット記録装置を用いてインクの吐出により光透過性部位に着色剤を配列させることを特徴とする液晶用カラーフィルターの製造方法が開示されている。特許文献2には、インクジェットによりパターン膜の凹部にインクを滴下した際、バンクを形成する感光性化合物層にフッ素系ポリマーまたはフッ素系界面活性剤を含有させることでバンクの撥液性を高め、インクがバンクを乗り越えて隣の凹部に侵入することを防止することが記載されている。
【0008】
特許文献3には、撥液領域および親液領域からなるパターンをフォトリソグラフィ法により得るための撥液レジスト組成物が開示されている。特許文献3には、本撥液レジスト組成物を用いることで、インクジェット法により明瞭なインクの濡れのコントラストを有する撥液-親液パターンを基板上に形成することができること、およびインクジェット法によりパターン膜の凹部にインクを滴下した際に、バンクを越えて隣の凹部にインクが侵入することを防止する手段として、凹部である基板表面は親液性とし、バンク表面は撥液性とすることが記載されている。
【0009】
特許文献4には、インクジェット法により使用される、所定の高さのバンクおよび該バンクにより区切られた被塗布領域が形成された薄膜を有するパターニング用基板が開示されている。特許文献4には、凹部である被塗布領域は親液性であり、凸部であるバンクは撥液性であることが記載されている。
【0010】
特許文献5には、高い撥水性と撥油性を硬化膜表面に有する画像を形成可能なポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。特許文献5には、このポジ型感光性樹脂組成物が、液晶ディスプレイやELディスプレイにおける層間絶縁膜、インクジェット方式に対応した遮光材料や隔壁材料として用いるのに好適であることが記載されている。
【0011】
また、特許文献4および5には、基板上にパターン膜をフォトリソグラフィで形成した場合にはパターン膜の凹部である基板表面が有機物で汚染され、インプリント法で形成した場合にはパターン膜の凹部に膜残りが発生する等の不具合により、パターン膜の凹部が撥水性になるため、親水性インクを用いたパターン膜付き基板に対し親水化処理を行い、パターン膜の凹部を親水性とすることが記載されている。親水化処理を行った場合、インクジェットにおいて、パターン膜の凹部がインクを弾くことなく、パターン膜付基板に対しインクの滴下を良好に行うことができる。
【0012】
特許文献4には、パターン膜付き基板を酸素プラズマガスおよびフッ素プラズマガスと接触させることにより、パターン膜の凹部である基板表面には親水性を持たせ、凸部のバンクには撥水性を持たせることが記載されている。
【0013】
特許文献5に記載されたポジ型感光性樹脂組成物によれば、親水化処理の際のUVオゾン洗浄後もバンクであるパターン膜の表面に高い撥液性を維持するパターン膜付き基板を得ることが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平11-54270号公報
【文献】特開平10-197715号公報
【文献】特開2012-220860号公報
【文献】特開2000-353594号公報
【文献】国際公開第2017/126610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献4および5に記載されているように、パターン膜の凹部である基板表面の親液性を高めるために、パターン膜付き基板にUVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄を行った場合、洗浄後にバンクの撥液性が低下し、インクジェット法によりパターン膜の凹部にインクを滴下した際に、インクがバンクを乗り越える、またはバンクがインクに溶解する問題があった。
【0016】
本開示では、上記問題を解決するパターン膜付き基板の製造方法が提供される。また、本開示では、上記パターン膜が含有する新規な含フッ素共重合体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らが上記問題を解決するために、鋭意検討を行ったところ、特定の含フッ素共重合体を含むパターン膜付き基板に、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄を行うと、パターン膜の撥液性は一旦低下するが、その後、加熱することで撥液性が得られる(撥液性が復元する)ことが分かった。
【0018】
特定の含フッ素共重合体を含むパターン膜は、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後、水、およびインクジェット法においてインク溶媒として使用されるアニソールに対して、撥液性の低下が見られたものの、そのパターン膜を加熱することで、低下した撥液性が、水、アニソールともに復元した(本明細書の[実施例]の表2および表3参照)。同様に、特定の含フッ素共重合体を含むパターン膜は、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、およびキシレンに対しても、撥液性の低下が見られたものの、そのパターン膜を加熱することで、低下した撥液性が、PGMEA、キシレンともに復元した(本明細書の[実施例]の表4および表5参照)。このように、本発明者らは、特定の含フッ素共重合体を含むパターン膜は、意外なことにUV洗浄後の加熱により、顕著に撥液性が復元することを見出した。
【0019】
加熱により、撥液性が復元したのは、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄により、膜表面が酸化され親液性となったものの、重合体主鎖の開裂を抑制可能な特殊な含フッ素共重合体を用いることで加熱による分子運動に伴い、表面自由エネルギーの小さいフッ化アルキル部が膜表面に移動したことによるものと推測される。
【0020】
本開示において、UVオゾン洗浄とは、紫外線をパターン膜付き基板に照射し、パターン膜およびパターン膜付き基板凹部に付着した有機汚染物質の結合を分解すると同時に、紫外線照射により発生したオゾンから分離した活性酸素が、有機汚染物質と化学的に結合し、二酸化炭素や水などの揮発性物質に分解し、有機汚染物質を除去する方法のことをいう。紫外線照射装置には、通常、低圧水銀ランプが用いられる。
【0021】
また、酸素プラズマ洗浄とは、酸素分子を含む気体に対し高電圧をかけ、酸素分子を解離させ発生させた活性酸素によって、パターン膜付き基板の表面に付着する有機汚染物質を、二酸化炭素や水などの揮発性物質に分解し除去する方法のことをいう。
【0022】
以下の発明1~17が開示される。
【0023】
[発明1]
パターンを有するパターン膜が基板上に形成されるパターン膜付き基板であり、前記パターン膜が含フッ素共重合体を含み、前記含フッ素共重合体が式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む、パターン膜付き基板を、
UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄して第1のパターン膜付き基板を得る洗浄工程と、
前記第1のパターン膜付き基板を加熱して第2のパターン膜付き基板を得る加熱工程とを含む、パターン膜付き基板の製造方法。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子である。)
【0026】
[発明2]
前記含フッ素共重合体が、式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含む、発明1の製造方法。
【0027】
【化2】
【0028】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【0029】
[発明3]
前記加熱工程では、50℃以上、350℃以下の温度で10秒以上、前記第1のパターン膜付き基板を加熱する、発明1または2の製造方法。
【0030】
[発明4]
前記第2のパターン膜付き基板がインクジェット法で表示素子を形成するための基板である、発明1~3のいずれかの製造方法。
【0031】
[発明5]
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基である、発明1~4のいずれかの製造方法。
【0032】
[発明6]
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQがパーフルオロヘキシルエチル基であり、Xがカルボニル基である、発明5の製造方法。
【0033】
[発明7]
前記式(A)で表される繰り返し単位中のQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基である、発明5の製造方法。
【0034】
[発明8]
前記式(A)で表される繰り返し単位が式(A-1)で表される繰り返し単位である、発明1~4のいずれかの製造方法。
【0035】
【化3】
【0036】
(式(A-1)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子、Fはフッ素原子である。)
【0037】
[発明9]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基またはカルボキシエチレン基である、発明2~4のいずれかの製造方法。
【0038】
[発明10]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基またはカルボキシエチレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがアルコキシ基、カルボキシル基、アセトキシ基またはビストリフルオロメチルビニル基である、発明2~4のいずれかの製造方法。
【0039】
[発明11]
前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZが、ビストリフルオロメチルビニル基である、発明2~4のいずれかの製造方法。
【0040】
[発明12]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基、パラフェニレンカルボニル基またはパラフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがビストリフルオロメチルビニル基である、発明2~4のいずれかの製造方法。
【0041】
[発明13]
下記の式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む、含フッ素共重合体。
【0042】
【化4】
【0043】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子である。)
【0044】
[発明14]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがビストリフルオロメチルビニル基である、発明13の含フッ素共重合体。
【0045】
[発明15]
下記の式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含む、含フッ素共重合体。
【0046】
【化5】
【0047】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【0048】
[発明16]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがカルボキシエチレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であり、Zが炭素数1~4のアルキルカルボニルオキシ基である、発明15の含フッ素共重合体。
【0049】
[発明17]
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基、パラフェニレンカルボニル基またはパラフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であり、Zがビストリフルオロメチルビニル基である、発明15の含フッ素共重合体。
【発明の効果】
【0050】
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法を用いれば、パターン膜の凹部である基板表面の親液性を維持したまま、パターン膜に充分な撥液性を持たせることができ、パターン膜の表面にUVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄を行った後も、パターン膜を加熱することで、パターン膜の撥液性が復元される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0052】
1.UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後の加熱処理
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法は、パターン膜付き基板をUVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄して第1のパターン膜付き基板を得る洗浄工程と、第1のパターン膜付き基板を加熱して第2のパターン膜付き基板を得る加熱工程とを含む。
【0053】
前記加熱工程における、加熱温度は、好ましくは、50℃以上、350℃以下であり、より好ましくは、100℃以上、300℃以下であり、さらに好ましくは、150℃以上、250℃以下である。加熱温度が50℃より低いと、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後に低下したパターン膜付き基板の撥液性が、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前と同程度に復元する効果が得られ難い。
【0054】
加熱時間は、上限に特に制限はないが、パターン膜付き基板のパターン形成に使用されたフォトレジストの耐熱性により調整することが好ましい。上限に特に制限はないが、実質的に1時間以下である。下限については、好ましくは、10秒以上であり、より好ましくは、30秒以上である。加熱時間が10秒より短いと、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後に低下したパターン膜付き基板の撥液性が、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前と同程度に復元する効果が得られ難い。
【0055】
加熱手段については、一般的に利用可能な加熱装置が利用可能である。例えば、ホットプレートまたはオーブンを挙げることができる。
【0056】
加熱する環境は、窒素ガス中、または減圧下であってもよいが、市販の加熱装置が使えることから、常圧(101.325kPa)の大気(空気)下であることが好ましい。
【0057】
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法によれば、特定の繰り返し単位を有する含フッ素共重合体を含むパターン膜が基板上に形成されたパターン膜付き基板をUVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄後に加熱することで、インクジェット法により、パターン膜付き基板のパターン膜の凹部にインク液滴を滴下した際に、インクがバンクを乗り越える、またはバンクがインクに溶解するなどの問題が抑制される。
【0058】
2.含フッ素共重合体
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法において、パターン膜付き基板は、パターンを有するパターン膜が基板上に形成されたものである。上記パターン膜は、含フッ素共重合体を含む。上記含フッ素共重合体は、式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む。
【0059】
[式(A)で表される繰り返し単位および式(C)で表される繰り返し単位をともに含む含フッ素共重合体]
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法において、含フッ素共重合体は、下記の式(A)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A)ということがある)および式(C)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(C)ということがある)をともに含む。
【0060】
【化6】
【0061】
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子である。)
【0062】
前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基(-C(=O)-)であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するZがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF)であることが好ましい。
【0063】
好ましくは、以下に示す繰り返し単位(A)および繰り返し単位(C)の組み合わせである。
【化7】
【化8】
【0064】
<繰り返し単位の含有率>
上記含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)および(C)を合わせた量に対する繰り返し単位(A)の含有率は、モル%で表して、好ましくは5%以上、80%以下であり、より好ましくは10%以上、60%以下である。
【0065】
上記含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)および(C)を合わせた量に対する繰り返し単位(C)の含有率は、モル%で表して、好ましくは3%以上、90%以下であり、より好ましくは5%以上、80%以下である。
【0066】
上記含フッ素共重合体は、必要に応じて、繰り返し単位(A)および(C)以外の繰り返し単位を、有機溶媒への溶解性、膜とした際の基板との密着性または硬さを向上させるために含んでいてもよい。繰り返し単位(A)および(C)以外の繰り返し単位の含有率は、繰り返し単位(A)および(C)を合わせた量に対し、モル%で表して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下である。50%より多いと撥液性が得られ難い傾向がある。
【0067】
[式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含む含フッ素共重合体]
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法において、含フッ素共重合体は、下記の式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(B)ということがある)、および式(C)で表される繰り返し単位を全て含むことが好ましい。
【0068】
【化9】
【0069】
(式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。XおよびYは、それぞれ独立に、単結合または2価の基である。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【0070】
上記含フッ素共重合体において、前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQがヘキサフルオロイソプロピル基(-CH(CF)であり、Xがカルボニル基(-C(=O)-)であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがカルボキシエチレン基(-C(=O)-O-CHCH-)であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であり、Zが炭素数1~4のアルキルカルボニルオキシ基であることが好ましい。
【0071】
好ましくは、以下に示す繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)の組み合わせである。
【化10】
【0072】
また、上記含フッ素共重合体において、前記式(A)で表される繰り返し単位が有するQが炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、Xがカルボニル基(-C(=O)-)であり、前記式(B)で表される繰り返し単位が有するYがパラフェニレン基(-C-)、パラフェニレンカルボニル基(-C-C(=O)-)またはパラフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基(-C-C(CF-)であり、前記式(C)で表される繰り返し単位が有するRが水素原子またはメチル基であり、Zがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF)であることが好ましい。
【0073】
好ましくは、以下に示す繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)および繰り返し単位(C)の組み合わせである。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0074】
<繰り返し単位の含有率>
上記含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)、(B)および(C)を合わせた量に対する繰り返し単位(A)の含有率は、モル%で表して、好ましくは5%以上、80%以下であり、より好ましくは10%以上、60%以下である。
【0075】
上記含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)、(B)および(C)を合わせた量に対する繰り返し単位(B)の含有率は、モル%で表して、好ましくは10%以上、85%以下であり、より好ましくは20%以上、70%以下である。
【0076】
上記含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)、(B)および(C)を合わせた量に対する繰り返し単位(C)の含有率は、モル%で表して、好ましくは3%以上、90%以下であり、より好ましくは5%以上、80%以下である。
【0077】
上記含フッ素共重合体は、必要に応じて、繰り返し単位(A)、(B)および(C)以外の繰り返し単位を、有機溶媒への溶解性、膜とした際の基板との密着性または硬さを向上させるために含んでいてもよい。繰り返し単位(A)、(B)および(C)以外の繰り返し単位の含有率は、繰り返し単位(A)、(B)および(C)を合わせた量に対し、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下である。50%より多いと撥液性が得られ難い傾向がある。
【0078】
[含フッ素共重合体の分子量]
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法において、パターン膜が含む含フッ素共重合体の数平均分子量Mnは、好ましくは1,000以上、100,000以下であり、より好ましくは3,000以上、60,000以下である。また、数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比で定義される分子量分散Mw/Mnは、好ましくは1以上、4以下であり、より好ましくは1以上、2.5以下である。
【0079】
数平均分子量Mnが1,000以上であると、含フッ素共重合体を含むパターン膜が適度な硬さになり、また、所望の厚さの膜を形成し易いため好ましい。また、撥液部位および親液部位からなる微細なパターンを形成し易く、パターンの耐久性の観点からも好ましい。数平均分子量Mnが100,000以下であると、基板に含フッ素共重合体を含むパターン形成用組成物を調製する際、含フッ素共重合体が溶剤に溶け易く、塗布し易く、製膜後、ひび割れを生じ難いため好ましい。
【0080】
重合体の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwは、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCということがある。東ソー株式会社製、形式HLC-8320GPC)を使用し、ALPHA-MカラムとALPHA-2500カラム(ともに東ソー株式会社製)を1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定される。検出器には、屈折率差測定検出器が用いられる。
【0081】
3.繰り返し単位
以下、含フッ素共重合体が含む繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、および繰り返し単位(C)について説明する。
[繰り返し単位(A)]
【0082】
【化15】
【0083】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Qは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、水素原子、酸素原子または窒素原子を有していてもよい。Xは、単結合または2価の基である。Oは酸素原子である。)
【0084】
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-C(CFH)、またはヘプタフルオロイソプロピル基を例示することができる。特に好ましくは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0085】
Qは、好ましくは、炭素数3~10のフルオロアルキル基であり、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-C(CFH)、ヘプタフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、パーフルオロブチルエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンチルメチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基、またはパーフルオロアダマンチル基を例示することができる。特に好ましくは、パーフルオロヘキシルエチル基またはヘキサフルオロイソプロピル基である。
【0086】
Xは、単結合または2価の基であり、2価の基が含む水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。2価の基は、炭素数2~10の2価の基であることが好ましく、メチレン基、炭素数2~10のアルキレン基、炭素数2~10アルケニレン基、炭素数6~10の2価のアリール基、または炭素数4~10の2価の脂環式炭化水素基を挙げることができる。アルキレン基またはアルケニレン基の内部に、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-O-)またはオキシカルボニル基(-O-C(=O)-)を含んでいてもよい。2価の基中の脂肪族鎖が長鎖となると撥液性が低下することより、より好ましくは、単結合、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシエチレン基(-O-CH-CH-)、カルボキシエチレン基(-C(=O)-O-CH-CH-)、カルボキシフェニレン基(-C(=O)-O-C-)、フェニレン基(-C-)またはフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基(-C-C(CF-)を例示することができる。特に、好ましくは、カルボニル基である。
【0087】
また、繰り返し単位(A)として、好ましくは式(A-1)で表される構造も挙げられる。
【0088】
【化16】
【0089】
(式(A-1)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Oは酸素原子、Hは水素原子、Fはフッ素原子である。)
【0090】
[繰り返し単位(B)]
【0091】
【化17】
【0092】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Yは、単結合または2価の基である。Oは酸素原子、Hは水素原子である。)
【0093】
は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-C(CFH)、またはヘプタフルオロイソプロピル基を例示することができる。特に好ましくは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0094】
Yは、単結合または2価の基であり、好ましくは2価の基は、炭素数2~10の2価の基であり、メチレン基、炭素数2~10のアルキレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数4~10の2価の脂環式炭化水素基を挙げることができる。アルキレン基またはアルケニレン基の内部に、エーテル結合(-O-)、カルボニル基(-C(=O)-)、カルボキシル基(-C(=O)-O-)またはオキシカルボニル基(-O-C(=O)-)を含んでいてもよい。2価の基中の脂肪族鎖が長鎖となると撥液性が低下することより、好ましくは、単結合、カルボニル基(-C(=O)-)、オキシエチレン基(-O-CH-CH-)、カルボキシエチレン基(-C(=O)-O-CH-CH-)、カルボキシフェニレン基(-C(=O)-O-C-)、フェニレン基(-C-)、またはフェニレンヘキサフルオロイソプロピレン基(-C-C(CF-)を例示することができる。特に、好ましくは、パラフェニレン基またはカルボキシエチレン基である。
【0095】
[繰り返し単位(C)]
【0096】
【化18】
【0097】
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1~20のアルキル基であり、本アルキル基中の炭素原子に結合する水素原子の一部または全部は、フッ素原子に置換されていてもよい。Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。)
【0098】
は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基(-C(CFH)またはヘプタフルオロイソプロピル基を例示することができる。特に好ましくは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0099】
Zは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のフェニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニルオキシ基またはカルボキシル基であり、これらの基が有する水素原子が、フッ素原子、酸素原子または窒素原子に置換された基であってもよい。加熱による撥液性の復元効果が高いことから、特に好ましくは、Zがビストリフルオロメチルビニル基(-CH=C(CF)である。
【0100】
4.含フッ素共重合体の合成
4-1.単量体
以下、繰り返し単位(A)を与える単量体(A1)、繰り返し単位(B)を与える単量体(B1)、繰り返し単位(C)を与える単量体(C1)を示す。
繰り返し単位(A)および繰り返し単位(C)をともに含む含フッ素共重合体は、単量体(A1)と単量体(C1)の共重合により得ることができる。繰り返し単位(A)、繰り返し単位(B)、および繰り返し単位(C)を全て含む含フッ素共重合体は、単量体(A1)と単量体(B1)と単量体(C1)の共重合により得ることができる。
【0101】
[単量体(A1)]
【化19】
【0102】
(R、X、Qは、式(A)に示すところと同義である。)
【0103】
[単量体(B1)]
【化20】
【0104】
(R、Yは、式(B)に示すところと同義である。)
【0105】
単量体(B1)としては、以下の単量体を例示することができる。前述の通り、Rは特に好ましくは、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0106】
【化21】
【0107】
[単量体(C1)]
【化22】
【0108】
(R、Zは、式(C)に示すところと同義である。)
【0109】
4-2.含フッ素共重合体の合成方法
含フッ素共重合体の合成方法は、上記単量体(A1)、(B1)、(C1)を原料として用い、一般的に使用される重合方法から選択することができる。ラジカル重合、イオン重合が好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合を選択することができる。また、重合においては、重合溶媒を用いてもよい。以下、ラジカル重合について説明する。
【0110】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤またはラジカル重合開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合等の公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式のいずれかの操作で行うことができる。
【0111】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、過酸化物系化合物またはレドックス系化合物を挙げることができる。アゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリルを例示することができる。過酸化物系化合物としては、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド、i-ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素または過硫酸アンモニウムを例示することができる。レドックス系化合物としては、酸化剤と還元剤とを組み合わせた化合物が用いられ、過酸化水素水に2価の鉄イオンを組み合わせた化合物(フェントン試薬)を例示することができる。
【0112】
<重合溶媒>
重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、炭化水素系溶媒またはアルコール系溶媒を挙げることができる。他に水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系または芳香族系の溶媒を用いてもよい。
【0113】
重合溶媒としては、エステル系溶媒としての酢酸エチルまたは酢酸n-ブチル、ケトン系溶媒としてのアセトンまたはメチルイソブチルケトン、炭化水素系溶媒としてのトルエンまたはシクロヘキサン、アルコール系溶媒としてのメタノール、イソプロピルアルコールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルを例示することができる。
【0114】
これらの重合溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。
【0115】
<重合条件>
重合温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の種類により適宜選択すればよい。重合温度が例えば20℃以上、200℃以下、好ましくは30℃以上、140℃以下となるように、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の種類を適宜選択することが好ましい。含フッ素共重合体の分子量は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源の選択、および重合条件を調整することにより制御可能である。
【0116】
また、重合後の含フッ素共重合体を含む溶液または分散液から、有機溶媒または水等の重合溶媒を除去する方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、再沈殿、濾過または減圧下での蒸留を挙げることができる。
【0117】
含フッ素共重合体をレジスト成分として使用する際は、含フッ素共重合体の分子量の多少により、含フッ素共重合体の現像液溶解性が異なり、リソグラフィーにおけるパターニング条件が変わり得る。含フッ素共重合体の分子量が高いと現像液への溶解速度が遅くなり、分子量が低いと溶解速度が速くなる傾向がある。含フッ素共重合体の分子量は、この重合条件を調整することにより制御可能である。
【0118】
5.レジストパターン形成用組成物
含フッ素共重合体に、感光剤または酸発生剤、塩基性化合物および溶剤を加えることにより、レジストパターン形成用組成物を得ることができる。得られたレジストパターン形成用組成物を基板に塗布した後、リソグラフィーによってパターニングすることにより、本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法に用いる、パターン膜付き基板を得ることができる。以下、レジストパターン形成用組成物を単にレジストと呼ぶことがある。
【0119】
上記レジストはその成分として、(a)含フッ素共重合体を必須とし、(b)アルカリ溶解性樹脂、(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物、(d)溶剤、(e)光酸発生剤、(f)塩基性化合物、または(g)架橋剤を必要に応じ加え、調製することができる。
【0120】
5-1.(b)アルカリ溶解性樹脂
(b)アルカリ溶解性樹脂としては、例えば、アルカリ溶解性ノボラック樹脂を挙げることができる。アルカリ溶解性ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で縮合して得ることができる。
【0121】
<フェノール類>
フェノール類としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール、4-メチル-カテコール、ピロガロール、フロログルシノール、チモール、またはイソチモールを例示することができる。これらフェノール類は単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0122】
<アルデヒド類>
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-メチルベンズアルデヒド、m-メチルベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、またはイソフタルアルデヒドを例示することができる。
【0123】
<酸触媒>
酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ジエチル硫酸、またはp-トルエンスルホン酸を例示することができる。これら酸触媒は単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0124】
(b)アルカリ溶解性樹脂成分の質量平均分子量は、ポジ型レジスト組成物の現像性、解像性から1,000~50,000が好ましい。
【0125】
5-2.(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物
(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物は、特に制限は無く、i線用レジスト組成物の感光性成分として用いられるものを使用することができ、例えば、ナフトキノン-1,2-ジアジドスルホン酸エステル化合物、オルトベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸エステル、ナフトキノン-1,2-ジアジドスルホニルハライドとヒドロキシ化合物とのエステル化物を挙げることができる。前記ナフトキノン-1,2-ジアジドスルホニルハライドとしては、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロライド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロライド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-6-スルホニルクロライドを例示することができる。
【0126】
(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物としては、溶解性に優れることから、好ましくは、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルまたはナフトキノンジアジド-6-スルホン酸エステルである。これらの化合物は1種類もしくは2種類以上混合して用いてもよい。
【0127】
(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物の配合量は、(b)アルカリ溶解性樹脂と(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物を合計した質量に対して、好ましくは10質量%以上、60質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上、50質量%以下である。60質量%を超えるとレジストとしての感度が得られなく、10質量%未満であるとフォトリソグラフィ後の未露光部の膜減り等により、精細なパターンが得られ難い。
【0128】
5-3.(d)溶剤
レジストが含む(d)溶剤は、(a)含フッ素共重合体、(b)アルカリ溶解性樹脂および(c)ナフトキノンジアジド基含有化合物を溶解して均一な溶液にできればよく、公知のレジスト用溶剤の中から選択して用いることができる。また、2種類以上の溶剤を混合して用いてもよい。
【0129】
このような溶剤として、例えば、ケトン類、アルコール類、多価アルコール類、エステル類、芳香族系溶剤、エーテル類、フッ素系溶剤、または、塗布性を高める目的で高沸点溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒を挙げることができる。
【0130】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、または2-ヘプタノンを例示することができる。アルコール類としては、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、tert-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、n-オクタノール、n-デカノール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール、イソアミルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、ラウリルアルコール、ヘキシルデカノールまたはオレイルアルコールを例示することができる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングルコールジメチルエーテル(EDC)、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)またはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、およびこれら多価アルコールの誘導体を例示することができる。エステル類としては、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチルもしくはエトキシプロピオン酸エチル、またはγ-ブチロラクトン(GBL)を例示することができる。芳香族系溶剤としては、トルエンまたはキシレンを例示することができる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジオキサン、アニソールまたはジイソプロピルエーテルを例示することができる。フッ素系溶剤としては、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールを例示することができる。
【0131】
好ましくは、エチレングルコールジメチルエーテル(EDC)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、乳酸エチル(EL)、またはγ-ブチロラクトン(GBL)である。
【0132】
レジストが含む(d)溶剤の量に関して、レジストの固形分濃度は、好ましくは1質量%以上、25質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上、15質量%以下である。レジストの固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することができる。
【0133】
5-4.(e)光酸発生剤
(e)光酸発生剤は、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる、スルホネート類またはスルホン酸エステル類を挙げることができる。
【0134】
スルホネート類としては、ヨードニウムスルホネート、スルホニウムスルホネート、N-イミドスルホネート、N-オキシムスルホネート、o-ニトロベンジルスルホネート、ピロガロールのトリスメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、またはトリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-ブタンスルホナートを例示することができる。
【0135】
フォトリソグラフィにおける露光により、これらの光酸発生剤から、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、あるいは部分的もしくは完全にフッ素化されたアリールスルホン酸またはアルカンスルホン酸等が発生する。完全にフッ素化されたアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤が好ましく、好ましくは、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、またはトリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-ブタンスルホナートである。
【0136】
5-5.(f)塩基性化合物
(f)塩基性化合物には、(e)光酸発生剤より発生する酸が、レジスト膜中に拡散する際の拡散速度を遅くする働きがある。(f)塩基性化合物の配合には、酸拡散距離を調整してレジストパターンの形状の改善、レジスト膜形成後に露光するまでの引き置き時間が長くても、所望の精度のレジストパターンを与える安定性を向上する効果が期待される。
【0137】
このような塩基性化合物としては、例えば、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環式アミン類、または脂肪族多環式アミン類を挙げることができる。好ましくは、第2級もしくは第3級の脂肪族アミン、またはアルキルアルコールアミンである。このようなアミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジオクタノールアミン、トリオクタノールアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、ビピリジン、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、インドール、またはヘキサメチレンテトラミンを例示することができる。これら塩基性化合物は単独でも2種以上組み合わせてもよい。
【0138】
レジストにおける(f)塩基性化合物の配合量は、(a)含フッ素共重合体100質量部に対して、好ましくは0.001~2質量部であり、より好ましくは0.01~1質量部である。(f)塩基性化合物の配合量が0.001質量部よりも少ないと添加剤としての効果が十分得られず、2質量部を超えると解像性や感度が低下する虞がある。
【0139】
5-6.(g)架橋剤
上記レジストには、必要により(g)架橋剤を添加してもよい。(g)架橋剤としては、公知の物を使用できる。このような架橋剤として、例えば、2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン(メチロールメラミン硬化剤)およびその誘導体、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(グリコールウリル硬化剤)およびその誘導体、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、または多官能イソシアネート化合物を挙げることができる。これら架橋剤は複数種を用いてもよい。
【0140】
6.パターンの形成
本開示のパターン膜付き基板の製造方法における、パターンの形成について説明する。パターンの形成は、前記レジストを基板上に塗布し膜を形成する製膜工程と、フォトマスクを介して波長600nm以下の電磁波または電子線を照射露光し、フォトマスクのパターンを膜に転写する露光工程と、現像液を用いて膜を現像しパターンを得る現像工程を含む。
【0141】
パターンは、含フッ素共重合体を含むレジストを用い、(a)基板上にレジストを塗布しレジスト膜を形成する製膜工程、(b)レジスト膜を加熱させた後に、パターン加工したフォトマスクを介してレジスト膜に波長600nm以下の電磁波または電子線を照射し露光する露光工程、(c)露光したレジスト膜をアルカリ現像液または有機溶剤で現像して、基板上にフォトマスクのパターンが転写されたレジストパターンを得る現像工程を経ることで形成することができる。
【0142】
以下、各工程について、例を示して説明する。
【0143】
6-1.(a)製膜工程
(a)製膜工程では、基板としてのシリコンウエハ等に、スピンコートによって、含フッ素共重合体を含む前記レジストを塗布し、シリコンウエハをホットプレート上で例えば60℃以上、200℃以下、10秒以上、10分間以下、好ましくは80℃以上、150℃以下、30秒以上、2分間以下加熱し、基板上にレジスト膜を形成する。
【0144】
基板としては、例えば、シリコンウエハ、金属基板またはガラス基板を用いることができる。また、基板上には有機系あるいは無機系の膜が設けられていてもよい。例えば、反射防止膜、多層レジストの下層があってもよく、それにパターンが形成されていてもよい。
【0145】
6-2.(b)露光工程
(b)露光工程では、フォトマスクを露光装置にセットし、波長600nm以下の電磁波、または電子線を、露光量が例えば1mJ/cm以上、200mJ/cm以下、好ましくは10mJ/cm以上、100mJ/cm以下となるようにフォトマスクを介して前記レジスト膜に照射した後、ホットプレート上で例えば60℃以上、150℃以下、10秒以上、5分間以下、好ましくは80℃以上、130℃以下、30秒以上、3分間以下加熱し、フォトマスクのパターンをレジスト膜に転写する。
【0146】
電磁波の波長は、100~600nmが好ましく、300~500nmがより好ましい。特に、i線(365nm)、h線(405nm)またはg線(436nm)を含む光が好ましい。また、必要に応じて330nm以下の光をカットしてもよい。
【0147】
光源としては、例えば、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、F2エキシマレーザ光(波長157nm)を挙げることができる。
【0148】
6-3.(c)現像工程
(c)現像工程では、現像液として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の例えば0.1質量%以上、5質量%以下、好ましくは2質量%以上、3質量%以下の濃度の水溶液、または有機溶剤を用い、前記(b)露光工程における、レジスト膜露光部または未露光部のいずれかを溶解させパターンを形成し、基板上にパターン膜を得る。有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、酢酸ブチル等を例示することができる。現像工程においては、ディップ法、パドル法、スプレー法等の公知の方法を用い、レジスト膜に前記現像液を例えば10秒以上、3分間以下、好ましくは30秒以上、2分間以下接触させることによって、目的のパターンを有するパターン膜付き基板が得られる。
【実施例
【0149】
以下の実施例により、本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法および含フッ素共重合体を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0150】
1.単量体の合成
含フッ素共重合体を得るための含フッ素単量体を合成した。
【0151】
1-1.MA-CH2-OFCPの合成
[1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノールの合成]
窒素雰囲気下、300mlのステンレス鋼製耐圧容器に室温(20℃、以下同じ)でメタノール、31.5ml(0.75mol)、ベンゾイルパーオキシド(BPO)、1.11g(0.0045mol)、オクタフルオロシクロペンテン(セントラル硝子株式会社製)、31.2g(0.12mol)を加え容器を密封し、120℃まで加熱した後に24時間攪拌し、以下の反応を行った。容器を冷却後、内容物を常圧蒸留し、1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノール、28.8gを収率80%で得た。
【0152】
【化23】
【0153】
核磁気共鳴分析(NMR)の結果を以下に示す。
<NMR分析結果>
H-NMR(CDCl,TMS基準)
δ(ppm):4.21-4.05(2H,m)、5.22(1H,m)
【0154】
[MA-CH2-OFCPの合成]
攪拌機付き300mlガラス製フラスコに、上記合成で得た1,2,2,3,3,4,4,5-オクタフルオロシクロペンタンメタノール、24.3g(0.1mol)、トリエチルアミン、15.1g(0.15mol)、重合禁止剤としてメトキシフェノール(1000ppm)を採取し、反応系に30℃でメタクリル酸無水物、16.9g(0.11mol)を滴下し2時間攪拌した。攪拌終了後、ジイソプロピルエーテル40ml、純水30mlを加え、分液した。その後、1質量%水酸化ナトリウム水20mlを加え、1時間攪拌した後、分液ロートに移し、有機層を得た。純水30mlを用い、有機層を2回洗浄した後、圧力1.0kPa、温度70~72℃で減圧蒸留し、以下に示すMA-CH2-OFCP、26.5gを収率85%で得た。
【0155】
【化24】
【0156】
<NMR分析結果>
H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm):1.92(3H,s),4.21-4.05(2H,m)、5.22(1H,m)、5.65(1H,q)、6.12(1H,q)
【0157】
1-2.1,1-ビストリフルオロメチルブタジエン(BTFBE)の合成
攪拌機付き1000mlガラス製フラスコ内の濃硫酸、400gを100℃まで加温し、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-4-ペンテン-2-オール、300gを1時間かけて徐々に濃硫酸中に滴下し、以下の反応を行った。反応系に炭酸水素ナトリウムを加えた後、常圧蒸留により68~70℃の留分を回収し、1,1-ビストリフルオロメチルブタジエン(BTFBE)を収率58%で得た。
【0158】
【化25】
【0159】
<NMR分析結果>
H-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:TMS);δ(ppm):5.95(1H,dd)6.05(1H,dd)、6.85(1H,m)、7.04(1H,m)
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:C);δ(ppm):-58.4(3F,m)、-65.3(3F,m)
【0160】
2.重合体の合成
[各繰り返し単位のモル比の測定]NMR
重合体における各繰り返し単位のモル比は、NMRによるH-NMRおよび19F-NMRの測定値から決定した。
【0161】
[重合体の分子量の測定]GPC
重合体の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwは、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー株式会社製、形式HLC-8320GPC)を使用し、ALPHA-MカラムとALPHA-2500カラム(ともに東ソー株式会社製)を1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定した。検出器には、屈折率差測定検出器を用いた。数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwから、分子量分散Mw/Mnを算出した。
【0162】
2-1.含フッ素共重合体1の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(MA-C6F)、43.2g(0.1mol)、BTFBE、19.0g(0.1mol)に、溶媒としてTHF、62gを採取し、重合開始剤としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、0.8g(0.005mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度75℃に昇温し6時間反応させた。反応系を減圧しTHFを留去した後、反応系を、n-ヘプタン、300gに滴下したところ、透明の粘性物質を析出させた。この粘性物質の上澄みをデカンテーションにより分離し、温度60℃にて減圧乾燥を行い、透明粘性物質としての含フッ素共重合体1を22g、収率37%で得た。
【0163】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体1中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位=28:72であった。
【0164】
【化26】
【0165】
<GPC測定結果>
Mw=7,300、Mw/Mn=1.4
【0166】
2-2.含フッ素共重合体2の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、MA-C6F、43.2g(0.1mol)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(4-ビニルフェニル)プロパン-2-オール(4-HFA-St)、27.0g(0.1mol)、BTFBE、19.0g(0.1mol)にTHF、90gを加え、さらにAIBN、0.8g(0.005mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度75℃に昇温した後6時間反応させた。反応終了後の溶液を減圧濃縮しTHFを留去後、n-ヘプタン350gに滴下し、透明な粘性物質が析出した。この粘性物質の上澄みをデカンテーションにより分離し、温度60℃にて減圧乾燥を行い、透明粘性物質としての含フッ素共重合体2を48g、収率52%で得た。
【0167】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体2中の各繰り返し単位の含有比はmol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:4-HFA-Stによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位:=17:37:46であった。
【0168】
【化27】
【0169】
<GPC測定結果>
Mw=13,300、Mw/Mn=1.3
【0170】
2-3.含フッ素共重合体3の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、MA-C6F、43.2g(0.1mol)、パラアセトキシスチレン(AcO-St)、16.2g(0.1mol)、BTFBE、19.0g(0.1mol)、THF、80gを採取し、AIBN、0.8g(0.005mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度75℃に昇温し6時間反応させた。反応系を減圧しTHFを留去した後、反応系にn-ヘプタン350gを滴下したところ、透明な粘性物質が析出した。この粘性物質の上澄みをデカンテーションにより分離し、メタノール100gに溶解させた後、トリエチルアミン(TEA)、10.1g(0.1mol)を加え、アセトキシ基を加溶媒分解するため50℃に昇温し8時間攪拌した。アセトキシ基が脱離したことを確認した後、濃縮後、温度60℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としての含フッ素共重合体3を35g、収率55%で得た。
【0171】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体3中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:パラヒドロキシスチレン(p-HO-St)による繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位:=12:38:50であった。
【0172】
【化28】
【0173】
<GPC測定結果>
Mw=17,500、Mw/Mn=1.4
【0174】
2-4.含フッ素共重合体4の合成
前述の含フッ素共重合体3の合成において使用したMA-C6Fの替わりにヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIP-M)を用いた以外は、含フッ素共重合体3の合成と同様の手順で、以下の繰り返し単位を含む含フッ素共重合体4を合成し、含フッ素共重合体4を収率51%で得た。
【0175】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体4中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、HFIP-Mによる繰り返し単位:p-HO-Stによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位:=15:39:46であった。
【0176】
【化29】
【0177】
<GPC測定結果>
Mw=15,200、Mw/Mn=1.4
【0178】
2-5.含フッ素共重合体5の合成
前述の含フッ素共重合体3の合成において使用したMA-C6Fの替わりにMA-CH2-OFCPを用いた以外は、含フッ素共重合体3の合成と同様の手順で、以下の繰り返し単位を含む含フッ素共重合体5を合成し、含フッ素共重合体5を収率54%で得た。
【0179】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体5中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-CH2-OFCPによる繰り返し単位:p-HO-Stによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位:=13:38:49であった。
【0180】
【化30】
【0181】
<GPC測定結果>
Mw=16,100、Mw/Mn=1.5
【0182】
2-6.含フッ素共重合体6の合成
前述の含フッ素共重合体3の合成において使用したMA-C6Fの替わりに2-(パーフルオロヘキシル)エチルビニルエーテル(V-C6F)を用いた以外は、含フッ素共重合体3の合成と同様の手順で、以下の繰り返し単位を含む含フッ素共重合体6を合成し、含フッ素共重合体6を収率41%で得た。
【0183】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体6中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、V-C6Fによる繰り返し単位:p-HO-Stによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位=10:38:52であった。
【0184】
【化31】
【0185】
<GPC測定結果>
Mw=11,900、Mw/Mn=1.4
【0186】
2-7.含フッ素共重合体7の合成
攪拌機付き1000mlガラス製フラスコ内に、室温で、HFIP-M、74.1g(0.31mol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、16.5g(0.12mol)、酢酸ビニル(VAc)、9.5g(0.11mol)、酢酸ブチル、50gを採取し、AIBN、1.6g(0.01mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、80℃に昇温して6時間反応させた。反応系を減圧し酢酸ブチルを留去した後、n-ヘプタン500gに滴下したところ、白色固体が析出した。濾過後、60℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としての含フッ素共重合体7を85.7g、収率78%で得た。
【0187】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体7中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、HFIP-Mによる繰り返し単位:HEMAによる繰り返し単位:VAcによる繰り返し単位=68:25:7であった。
【0188】
【化32】
【0189】
<GPC測定結果>
Mw=55,500、Mw/Mn=2.1
【0190】
2-8.含フッ素共重合体8の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、MA-C6F、84.6g(0.2mol)、パラアセトキシスチレン(AcO-St)、31.7g(0.2mol)、BTFBE、11.2g(0.06mol)、THF、127gを採取し、AIBN、2.2g(0.0135mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度70℃に昇温し6時間反応させた。反応系を減圧しTHFを留去した後、反応系にn-ヘプタン850gを滴下したところ、透明な粘性物質が析出した。この粘性物質の上澄みをデカンテーションにより分離し、メタノール100gに溶解させた後、トリエチルアミン(TEA)、10.1g(0.1mol)を加え、アセトキシ基を加溶媒分解するため50℃に昇温し8時間攪拌した。アセトキシ基が脱離したことを確認した後、濃縮後温度60℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としての含フッ素共重合体8を95g、収率86%で得た。
【0191】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体8中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:p-HO-Stによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位:=30:50:20であった。
【0192】
【化33】
【0193】
<GPC測定結果>
Mw=7,500、Mw/Mn=1.4
【0194】
2-9.含フッ素共重合体9の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、MA-C6F、110.5g(0.26mol)、p-ビニル安息香酸(VBA)、45.9g(0.31mol)、BTFBE、16.0g(0.09mol)、エチルメチルケトン(MEK)340gを採取し、AIBN、10.8g(0.065mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、温度75℃に昇温し6時間反応させた。反応系を減圧しMEKを留去した後、反応系にn-ヘプタン1350gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。濾過後、60℃で減圧乾燥を行い、濃白色固体としての含フッ素共重合体9を146.2g、収率85%で得た。
【0195】
<NMR測定結果>
含フッ素共重合体9中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:VBAによる繰り返し単位:BTFBEによる繰り返し単位=30:50:20であった。
【0196】
【化34】
【0197】
<GPC測定結果>
Mw=8,000、Mw/Mn=1.4
【0198】
3.比較重合体の合成
3-1.比較重合体1の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、HFIP-M、236.2g(1mol)、酢酸ブチル450gを採取し、AIBN、8g(0.05mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、80℃に昇温し6時間反応させた。反応系を、n-ヘプタン500gに滴下し、白色の沈殿を得た。濾過後、60℃で減圧乾燥を行い、HFIP-Mに基づく繰り返し単位のみを含む白色固体としての比較重合体1を165g、収率70%で得た。
【0199】
【化35】
【0200】
<GPC測定結果>
Mw=11,200、Mw/Mn=1.4
【0201】
3-2.比較重合体2の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、MA-C6F、43.2g(0.1mol)、酢酸ブチル、85gを採取し、AIBN、0.8g(0.005mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、80℃に昇温し6時間反応させた。内容物を、n-ヘプタン、500gに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い、MA-C6Fに基づく繰り返し単位を含む白色固体としての比較重合体2を32g、収率74%で得た。
【0202】
【化36】
【0203】
<GPC測定結果>
Mw=13,800、Mw/Mn=1.6
【0204】
3-3.比較重合体3の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、HFIP-M、23.6g(0.1mol)、MA-C6F、43.2g(0.1mol)、酢酸ブチル、130gを採取し、AIBN、0.8g(0.005mol)を加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、80℃に昇温した後6時間反応させた。反応終了後の内容物を、n-ヘプタン500gに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い、白色固体としての比較重合体3を53g、収率80%で得た。
【0205】
<NMR測定結果>
比較重合体3中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、HFIP-Mによる繰り返し単位:MA-C6Fによる繰り返し単位=51:49であった。
【0206】
【化37】
【0207】
<GPC測定結果>
Mw=14,700、Mw/Mn=1.7
【0208】
3-4.比較重合体4の合成
特許文献4の合成例6に基づき以下の合成を実施した。
【0209】
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、4-ヒドロキシフェニルメタクリレートと1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドの縮合物(HPMA-QD)、2.50g、メタクリル酸(MAA)、0.70g、MA-C6F、5.26g、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(MA-P-TTMS)、2.58g、N-シクロヘキシルマレイミド(N-CyM)、1.46gおよびシクロヘキサノン、51.3gを採取し、AIBN、0.33gを加え、110℃にて20時間攪拌し、以下の繰り返し単位を含む比較重合体4を固形分濃度20質量%で得た。
【0210】
【化38】
【0211】
<GPC測定結果>
Mw=11,000、Mw/Mn=1.5
【0212】
3-5.比較重合体5の合成
攪拌機付き300mlガラス製フラスコ内に、室温で、メタクリル酸(MAA)、7.2g(0.083mol)、MA-C6F、9.6g(0.022mol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、7.2g(0.055mol)およびエチルメチルケトン、55gを採取し、AIBN、0.6g(0.004mol)を加え、75℃にて6時間攪拌し、反応終了後の内容物を、n-ヘプタン500gに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度60℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体としての比較重合体5を19g、収率80%で得た。
【0213】
<NMR測定結果>
比較重合体5中の各繰り返し単位の含有比は、mol比で表して、MA-C6Fによる繰り返し単位:MAAによる繰り返し単位:HEMAによる繰り返し単位=14:52:34であった。
【0214】
【化39】
【0215】
<GPC測定結果>
Mw=5,000、Mw/Mn=1.4
【0216】
3-6.含フッ素共重合体1~9、比較重合体1~5の繰り返し単位のモル比と分子量
表1に、得られた含フッ素共重合体1~9、比較重合体1~5が含む繰り返し単位およびそのモル比、重量平均分子量(Mw)、分子量分散(Mw/Mn)および収率を示す。
【0217】
【表1】
【0218】
4.各重合体膜のUVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前後および加熱後の撥液性
含フッ素共重合体1~9、比較重合体1~5を用いてシリコンウエハ上に膜を形成した後、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前後および加熱後の水、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)またはキシレンに対する接触角の測定を行った。水、アニソール、PGMEAおよびキシレンはインク溶媒として用いられる。
【0219】
[膜付きシリコンウエハの作製]
なお、含フッ素共重合体1~6、8、9および比較重合体1~5は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に所定の膜厚となるように溶解し、シリコンウエハ上にスピンコータで塗布し塗膜を形成した。その後、ホットプレート上で230℃60分間加熱し、膜付きシリコンウエハを得た。
【0220】
含フッ素共重合体7はOH基を多く含み、OH基が架橋することで撥液性を発現する。そこで、以下の塗布液の調製を行った後に、シリコンウエハ上にスピンコータで塗布し塗膜を形成した。その後、ホットプレート上で100℃150秒間プリベークを行った後、膜全面を露光し230℃で60分間、加熱した。なお、露光装置には、ズース・マイクロテック株式会社製マスクアライナ、MA6を用いた
【0221】
[含フッ素共重合体7を含む塗布液の調製]
含フッ素共重合体7、1gに対し、架橋剤として2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン、0.2g、光酸発生剤(2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)、0.01gをPGMEA、4gに溶解し、室温で3時間攪拌し、含フッ素共重合体7を含む塗布液を調製した。塗膜とした後の露光により光酸発生剤が分解し酸が発生し、酸よる架橋によりOH基が減少し、撥液性が得られる。
【0222】
[洗浄工程および加熱工程]
UVオゾン洗浄装置にセン特殊光源株式会社製、型番、PL17-110、酸素プラズマ洗浄装置にヤマト科学株式会社製、プラズマドライクリーナーPDC210型を用い、各膜付きシリコンウエハを10分間、UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄した。その後、200℃で60秒間、加熱を行った。
【0223】
[接触角の測定]
UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のシリコンウエハ上の膜表面の水、アニソール、PGMEAまたはキシレンに対する接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製、DMs-601)を用い測定した。
【0224】
[膜厚の測定]
UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のシリコンウエハ上の膜の膜厚を、接触式膜厚計を用い測定した。
[分子量の測定]
UVオゾン洗浄または酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のシリコンウエハ上の膜をTHFに溶解させ、上述のGPCを用い測定した。
【0225】
表2に、UVオゾン洗浄前後およびその後の加熱後の水またはアニソールに対する接触角および膜厚測定の結果を示す。
【0226】
【表2】
【0227】
表2に示すように、シリコンウエハ上の含フッ素共重合体1~9を含む膜は、UVオゾン洗浄後に水およびアニソールに対する接触角が低下するものの、加熱後には接触角がUVオゾン洗浄前とほぼ同じ値に復元した。比較して、比較重合体1~5の接触角は、加熱により、僅かに復元するに留まった。
【0228】
表3に、酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後の水またはアニソールに対する接触角および膜厚測定の結果を示す。
【0229】
【表3】
【0230】
表3に示すように、シリコンウエハ上の含フッ素共重合体1~9を含む膜は、酸素プラズマ洗浄後に水およびアニソールに対する接触角が低下するものの、加熱後には接触角が酸素プラズマ洗浄前とほぼ同じ値に復元した。比較して、比較重合体1~5の接触角は、加熱により、僅かに復元するに留まった。
【0231】
表4に、UVオゾン洗浄前後およびその後の加熱後のPGMEAまたはキシレンに対する接触角および膜厚測定の結果を示す。
【0232】
【表4】
【0233】
表4に示すように、シリコンウエハ上の含フッ素共重合体1~9を含む膜は、UVオゾン洗浄後にPGMEAおよびキシレンに対する接触角が低下するものの、加熱後には接触角がUVオゾン洗浄前とほぼ同じ値に復元した。比較して、比較重合体1~5の接触角は、加熱により、僅かに復元するに留まった。
【0234】
表5に、酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のPGMEAまたはキシレンに対する接触角および膜厚測定の結果を示す。
【0235】
【表5】
【0236】
表5に示すように、シリコンウエハ上の含フッ素共重合体1~9を含む膜は、酸素プラズマ洗浄後にPGMEAおよびキシレンに対する接触角が低下するものの、加熱後には接触角が酸素プラズマ洗浄前とほぼ同じ値に復元した。比較して、比較重合体1~5の接触角は、加熱により、僅かに復元するに留まった。
【0237】
表6に、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のシリコンウエハ上の膜をTHFに溶解させ、上述のGPCを用い測定した結果を示す。
【0238】
【表6】
【0239】
表6に示すように、シリコンウエハ上の含フッ素共重合体1~9を含む膜をTHFに溶解させて測定した分子量は、UVオゾン洗浄および酸素プラズマ洗浄後に大きく分子量が変化することは見られておらず、重合体の分解が抑制されていることが分かる。比較して、比較重合体1~5の分子量は、大きく減少していくことが確認された。
【0240】
5.レジストとしての評価
含フッ素共重合体2、3、7および比較重合体4を用いて、レジスト2、3,7および比較レジスト4を調製し、各々のレジストのレジスト性能を評価および比較した。
【0241】
5-1.レジストの調製
[レジスト2]
含フッ素共重合体2、1.6gに、ネガ型レジストである東京応化工業株式会社製、品名、BMR C-1000、20g(固形分40質量%)および、イソシアネート型架橋剤である旭化成製、品名、TPA-100を0.2g添加し、調製した。
【0242】
[レジスト3]
含フッ素共重合体3、1.6gに、ネガ型レジストである東京応化工業株式会社製、品名、BMR C-1000、20g(固形分40質量%)、架橋剤として2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン、0.2g、光酸発生剤(2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)、0.01gを添加し、調製した。
【0243】
[レジスト7]
含フッ素共重合体7、1gに対し、架橋剤として2,4,6-トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン、0.2g、光酸発生剤(2-[2-(4-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)チオフェン-3(2H)-イリデン]-2-(2-メチルフェニル)アセトニトリル)、0.01gをPGMEA、4gに溶解し、室温で3時間攪拌し、含フッ素共重合体7を含むレジスト7を調製した。
【0244】
[比較レジスト4]
特許文献4に開示されるポジ型感光性樹脂組成物を、比較重合体4を用いて調製し、比較レジスト4を得た。
【0245】
5-2.レジスト膜の形成
4インチ径のシリコンウエハに超純水、次いでアセトンを噴射し、スピンコートにより洗浄後、前述のUVオゾン洗浄装置を用い、UVオゾン洗浄5分間を行った。次いで、前述のレジスト2、3、7および比較レジスト4を0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、シリコンウエハ上にスピンナーを用い回転数1,000rpmで塗布し、ホットプレート上で100℃150秒間、加熱乾燥させ、シリコンウエハ上に膜厚2μmのレジスト膜を形成した。
【0246】
5-3.レジストの現像液溶解性およびレジストパターンの解像度の評価
シリコンウエハ上に形成した各レジスト膜に対し、レジストの現像液溶解性およびレジストパターンの解像度の評価、および接触角の測定を行った。以下に測定方法を示す。
【0247】
シリコンウエハ上に形成したレジスト膜に対し、ラインアンドスペースが5μmのマスクを介し、前述のマスクアライナを用いi線(波長365nm)を照射し、露光を行った。その後、ポストエクスポーザーベークを120℃で60秒間行った。
【0248】
[現像液溶解性]
露光前後のレジスト膜付きシリコンウエハを、アルカリ現像液またはPGMEAに室温で60秒間浸漬し、現像液または有機溶剤に対する溶解性を評価した。アルカリ現像液には、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、TMAHということがある)を用いた。レジスト膜の溶解性は、浸漬後のレジスト膜の膜厚を光干渉型の膜厚計で測定することによって評価した。レジスト膜が完全に溶解している場合を「可溶」、レジスト膜が未溶解で残っている場合を「不溶」とした。
【0249】
[感度]
前記ラインアンドスペースのパターンを形成する際の最適露光量Eop(mj/cm)を求め、感度の指標とした。
【0250】
[解像度]
パターン膜付きシリコンウエハ上のレジストパターンを顕微鏡で観察した。ラインエッジラフネスが確認できないものを「優」、僅かに確認されるものを「良」、顕著であるものを「不可」とした。
【0251】
表7に、各レジストの現像液溶解性およびレジストパターンの感度および解像度の評価結果を示す。
【0252】
【表7】
【0253】
<現像液溶解性の評価>
表7に示すように、レジスト2、3は、アルカリ液またはPGMEAに対して、未露光部が可溶、露光部が不溶であり、レジスト7は、PGMEAに対して、未露光部が可溶、露光部が不溶であり、ネガ型レジストとして使用できる。比較レジスト4は、アルカリ液に対して露光部が可溶であり、ポジ型レジストとして使用できる。
【0254】
<感度>
レジスト3と比較レジスト4は、同程度の感度を示した。これらのレジストに比べ、レジスト7は高感度であった。
【0255】
<解像度>
レジスト2、3、7および比較レジスト4を用いたレジストパターンは、ともにマスクの5μmのラインアンドスペースが解像性よく転写され、特にレジスト7ではラインエッジラフネスが見受けられなく、解像度「優」であった。
【0256】
5-4.レジストパターンのUVオゾン洗浄前後および加熱後の撥液性の評価
レジスト2、3、7および比較レジスト4を用いたシリコンウエハ上のレジスト膜に対して、UVオゾン洗浄前後およびその後の加熱後のアニソールに対する接触角を測定した。レジスト膜付きシリコンウエハに対し、前述のUVオゾン洗浄装置を用いて、UVオゾン洗浄を10分間行い、その後、200℃で60秒間、加熱した。接触角計は協和界面科学株式会社製を用いた。
【0257】
【表8】
【0258】
[接触角の測定結果]
表8に示すように、レジスト2、3、7において、パターンにした際にバンクとなる露光部のアニソールに対する接触角は、UVオゾン洗浄により低下したものの、加熱により増大し、撥液性が復元した。
【0259】
5-5.レジストパターンの酸素プラズマ洗浄前後および加熱後の撥液性の評価
レジスト2、3、7および比較レジスト4を用いたシリコンウエハ上のレジスト膜に対して、酸素プラズマ洗浄前後およびその後の加熱後のアニソールに対する接触角を測定した。レジスト膜付きシリコンウエハに対し、前述の酸素プラズマ洗浄装置を用いて、酸素プラズマ洗浄を10分間行い、その後、200℃で60秒間、加熱した。接触角計は協和界面科学株式会社製を用いた。
【0260】
【表9】
【0261】
[接触角の測定結果]
表9に示すように、レジスト2、3、7において、パターンにした際にバンクとなる露光部のアニソールに対する接触角は、酸素プラズマ洗浄により低下したものの、加熱により増大し、撥液性が復元した。
【産業上の利用可能性】
【0262】
本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法は、パターン膜の凹部の親液性を維持したまま、バンクに充分な撥液性を持たせることができる。そこで、本開示におけるパターン膜付き基板の製造方法は、インクジェット法による表示素子の製造のみならず、有機半導体膜または着色樹脂等の薄膜の製造、あるいはディスプレイ用の配線、薄膜トランジスタ等のデバイスの製造に用いることが可能である。